2020年03月31日

【焦点】 学童保育の指導員 神経すり減らす日々続く=橋詰雅博

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 安倍晋三首相が2月27日に新型コロナ禍対策のため専門家にも聞かず唐突に打ち出した全国の小中高校の一斉臨時休校。一方で保育所や放課後児童クラブ(学童保育所)は原則開所にした。だから仕事をもつ一人親や共働き家庭が子どもを預ける学童保育所は、朝から夕方まで長時間、子どもの面倒を見ている。
 東京の学童保育所で10年近く指導員(非正規職員)を務める元幼稚園教諭の女性の声を紹介しよう。彼女が勤めている学童保育所は、新型コロナ感染騒ぎの前は、100人超の小学1年生から3年生を平日の午後2時から6時まで預かっていた。指導員は10人前後だ。
 「28日に担当部署から一斉休校と学童保育の開所などが書かれたファックスが届きました。受け入れ準備が整っていないので3月2日月曜は午後1時から開きます∞3日以降は午前8時30分から開きます∞お子さんが家を出る前は、必ず体温を測り、37・5度あるなら、家で待機させてください≠ネどと書いたお手紙を子どもたちに持たせました。職員はメールで親にも知らせていたようです」
 「3月2日、来た子どもは半分以下でした。意外に少なかったですね。3日以降も60人ほどです。室内は学校より狭く子どもが密集するので感染が心配と思ったからか、子どもを祖父や祖母に預けたかもしれません。テレワークにより家で仕事ができるようになったので子どもと一緒にいるケースも考えられます」
 世話をする子どもの人数が減っても仕事の大変さは変わらない。
 「新型コロナ感染の防止のため以前よりも神経を使っています。窓や廊下に面したドアを常に開けて換気をよくし、子どもの手洗いは5、6回行い徹底させています。集団で遊んでいたら離れるように注意します。マスクを外す子はするように言います。勤務時間が長くなって、収入は増えますが、心労が絶えません」
 神経をすり減らす日々が長く続きそうだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号

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2020年03月29日

【今週の風考計】3.29─猫も感染した新型コロナウイルスの脅威

新型コロナウイルスの猛威は、ついにWHOが「何百万人の死亡もある事態に」と警告を発した。これまで新型肺炎を引き起こしているウイルスは、コウモリの体内で培養され、ヘビやハクビシン、ヒトコブラクダなどの中間宿主を経て、ヒトに感染するようになったといわれている。
 しかし最新の研究によれば、新型コロナウイルスの中間宿主はセンザンコウではないかとの研究も発表されている。
センザンコウは哺乳類で南アジアから中国、台湾、アフリカなどに分布し、中でもマレーセンザンコウは中国南部で食用にされ、そのウロコはリウマチに効く漢方薬として珍重されている。
 中国市場の需要によって密猟され、個体数が激減して絶滅危惧種に指定されている生物だ。センザンコウの体内ウイルスを調べ、その分子構造から治療対策に生かすといい。

さらにペットの猫にも新型コロナが感染するという事実が判明した。これまで飼い犬への感染は報告されていたが、世界で初めてベルギーで飼い猫への感染が確認された。まさに飼い主である人間から猫へ、コロナウイルスを感染させた珍しい事例だ。
 となれば<人間からペットへ、ペットから人間へ>の悪循環だって起きうる。「特に自分自身が感染している可能性がある場合は、ペットとの濃厚接触を避け、自分の顔をなめさせるような行為も控えるべきだ」としている。いや、もし知らずに感染したペットを抱いて、顔でもなめられたら、自分も感染する脅威が待ち受ける。まさに犬・猫・人類が共有するパンデミックとなりかねない。

対策はないのか。新型コロナウイルスを殺す薬はないのか。いま注目されている治療薬は「アビガン」だ。新型のインフルエンザが流行した場合に備えて、国内に200万人分が備蓄されている。
 さらに抗エイズウイルス薬の「カレトラ」、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」なども、ウイルスの増殖を抑える効果が期待されている。
4月には各国で有効性が確認され、その投与が進めば、一定の抑制効果を発揮することができる。だがこれらの既存薬は検証例が少なく、副作用の問題もある。どうしても新型コロナウイルス感染症の克服には、ワクチンや新薬の開発が求められている。
 EUや 英米などの製薬企業や研究所が連携してワクチンの臨床試験に踏み出し、ワクチンの生産を目指している。日本でもワクチンの開発を急ぎ、「順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するため、当局と協議したい」(田辺三菱)という。待ち遠しい。(2020/3/29)
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2020年03月26日

【焦点】 露骨な妨害やめぬ外務省 原爆展や慰安婦問題に介入=橋詰雅博

 新型コロナウイルス感染の大流行で4月下旬にニューヨークで開かれる予定だった核に絡む重要な2つの世界的イベントに影響が出た。核軍縮の大きな方向性を決める5年1度の核不拡散条約(NPT)の再検討会議が延期になった。この国連本部でのNPT再検討会議に合わせたNY初の原水爆禁止世界大会は中止に追い込まれた。
変更求める
 世界大会の呼びかけ団体の一つである日本原水禁被爆者団体協議会(日本被団協)は被爆者らの派遣を中止。さらに国連本部ロビーで行う予定だった約50枚の写真パネルを展示する「原爆展」も、開催時期の変更を含めて協議を進める方針である。
 しかし、忘れてはならないのはこの展示会を巡る外務省による横ヤリ″s為だ。日本被団協に対して写真パネルの一部を展示しないよう要請し、言うことをきかないなら後援はできないとブラフをかけたのである。
 外務省が目の敵にしたのは、東日本大震災で起きた原発事故の原因や、平和な生活を壊された多くの避難者の困窮ぶり、原発敷地内にたまり続ける汚染水の現状などを紹介した福島のパネルだ。その理由について「原子力の平和的な利用はNPTの柱になっており、原発について扱うのはふさわしくない」と説明した。
 これに対して日本被団協は5年前の原発展でも原発事故を扱ったが、外務省は変更を求めず後援した。今回、除外要求するのは「表現の自由を絶ち切る許し難いものだ」と批判した。その上で国連とは合意済みだから外務省の後援がなくても内容を変えずに展示会を開く構えだった。
7月に東京五輪を控え外務省が官邸に忖度したのは間違いない。
 外務省の忖度はほかにもある。オーストリアのウィーンで昨年9月に開かれた芸術展「ジャパン・アンリミテッド」で展示されていた安倍政権や福島原発を批判的に扱った作品を2人の自民党国会議員がネットで問題視した。すぐに外務省は日本との国交150年記念事業にふさわしくないと認定を撤回した。芸術展のオーストリア学芸員は、日本で検閲≠ェ強まっていると断じた。
設置を阻止 
 また、慰安婦問題の打ち消しになりふり構わず動いている。2019年度「外交青書」の中の「慰安婦問題の取組」ではこう書いている。
〈韓国のほか、米国、カナダ、オーストラリア、中国、フィリピン、ドイツ、台湾等でも慰安婦像の設置等の動きがある。日本政府としては、引き続き、様々な関係者にアプローチし、日本の立場(例えば、「軍や官憲による強制連行」、「性奴隷」といった主張については、史実とは認識していないこと)について説明する取組を続けていく〉
 外務省はドイツやフィリピンで慰安婦を題材にした平和の少女像などのメモリアル設置を阻止している。最近ではウガンダの慰安婦歴史館計画を中断させている。
 5年ほど前、JCJ主催で慰安婦問題について講演した米モンタナ州立大准教授の山口智美さんは、外務省の露骨な妨害をこう語っていた。
「米大手教育出版社のマグロウヒルの教科書に『慰安婦を強制連行した』などの記述が載りました。外務省担当者は執筆者のハワイ大准教授に面談し、訂正を求めました。右派勢力と外務省が手を組んで慰安婦問題の否定に躍起です」
 外務省は安倍政権を下支えする走狗≠ノ成り下がっている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年3月25日号
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2020年03月22日

【今週の風考計】3.22─<3・11フクシマ>と東京オリンピック

◆新型コロナウイルスが世界各国に拡大し、4か月後に迫る東京オリンピックにも暗雲が広がっている。日本国民の7割が期日に「開催できない」と、世論調査に答えている。
 今から6年半前の2013年9月7日、安倍首相がIOC総会で行った、「フクシマについてはアンダーコントロールされている。東京オリンピックは安心安全」とのトンデモ演説を思い出してほしい。あらためて、そのフェイクの重大さを忘れてはならない。

◆2011年3月11日に起きた東日本大震災・福島原発爆発事故─「3・11フクシマ」からの復旧もままならないなか、嘘と金をばらまいて、無理筋で招致した東京オリンピック。先日、麻生財務相が発言した「呪われたオリンピック」も、コロナは去っても放射能は残る「3・11フクシマの逆襲」と捉えたら正解かもしれない。
◆実際に、破損した福島原発の原子炉は、今もって「アンダーコントロール」などされていない。かつ漏れ出る放射性廃水は巨大なタンクに貯蔵されたまま。満杯で収容しきれず、2022年からは福島の海から太平洋へ放出する計画だ。放射性残土を詰めた20万袋に及ぶ<フレコンバッグ>も、いまだに野ざらしになっている。

◆かつ汚染廃棄物の処理費や貯蔵費が想定以上にかさみ、2014年から年間350億円、2017年からは470億円、2020年からは700億円、それ以降も、ますます膨らむという。
 政府はその財源ねん出のため、再生可能エネルギーの普及などに使い道が限られている税金を、流用できるよう法改正に躍起だ。本来の自然エネルギー開発費を、まさに原発政策の失敗の穴埋めに充てるとは、言語道断である。
◆さらにテロ対策の新基準が導入されて以降、各地の原発は再稼働に向けた安全対策費や施設の維持費、廃炉費用がかさむ。その総額は電力11社で約13兆5千億円という。もはや原発に依存せず、再生可能エネルギーを拡大するのは、世界の流れだ。
 関西電力の汚職まみれの<原発マネー>3億6千万円の還流といい、電気料金の値上げの裏で役員報酬カット2億6千万円の補填など、信じられない退廃の源となっている「原発」、元から立たなきゃダメ。

◆それにしても福島で、7月22日、東京オリンピックのソフトボール試合が、東京での開会式に先駆けて2日も早く開かれる意味は、どこにあるのか。またも「復興神話」を広げたい安倍首相のパフォーマンス? ゴメンこうむりたい。(2020/3/22)
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2020年03月15日

【今週の風考計】3.15─休校の孫2人を預かって痛切に感じる事

安倍首相が突然「小中高の一律休校」を指令してから、1週間たった8日、都心に住む息子から小学校に通う2人の子供を預かってほしいと、泣き言が入った。
 共働きの中やりくりしてきたが、どうしても昼間の面倒が見られない事態になったという。郊外の拙宅で預かるのを承諾し、この1週間、老夫婦で面倒を見てきたが、3度3度の食事だけでなく、宿題をやらせゲーム時間を抑えるなど、その大変さが実感できた。
 預ける場所や親類のいない親は、どれほど苦しんでいるか、察して余りある。

まず朝、2人の孫の体温を測り、宿題の進捗を報告せねばならない。小学3年の孫には、国語の漢字書き取り、童話の感想文。算数はドリル、理科はキッドで「おもちゃ作り」、社会はタブレットを使った新聞づくりなどが並ぶ。
これを2週間ほどで、こなさねばならないのだから、老爺心ながら子供のシンドサは思いやられる。さらに宿題一覧表の最後には、「あまった時間は読書やスタディアプリなどを使って学習しましょう。おうちですごせる工夫をしましょう。みんなで協力してこのくなんをのりこえましょう!」の一文まで書かれている。

小学3年の孫に宿題をやらせるうえで最も苦しんだのが、貸与されたB5版タブレットの小さい画面を使っての新聞づくりだった。文字入力の仕方から、割り付け、写真の取り込み、見出しづけの工夫、どれも中途半端な理解をしている孫だけに、時間のかかること甚だしい。
 四苦八苦、キーッとなる孫をなだめながら、やっと仕上がった新聞は、タブレットから担任の先生に直接送信する。いまやパソコン教育がここまで進んでいることに驚かされた。
と同時に3年生すべてが、ここまでタブレットを使いこなせるのか、疑問に思った。授業についていけず、親も手助けできなければ、落ちこぼれが進むのは必然だ。子供をパソコンン教室に通わせている親もいるという。その費用が払らえる親ならいい。貧しき者はどうなる。
 誰もが等しく教育を受け、能力が身につくよう、学校もカリキュラムへの配慮や落ちこぼれをなくす補習教室の開催など、検討してしかるべきだ。

おっと学校から「読書」の宿題もあった。図書館は閉鎖されているので、小生の書架から探し、2冊の本を引っ張り出した。かしわ哲『茅ケ崎のてっちゃん』(講談社)と中沢啓治『はだしのゲン』(全8巻 汐文社)。小学3年の孫は手に取って、字の多い本より、後者のマンガを選んだ。1週間で4巻まで読み終えた。きっと何か心に残るものがあるだろう。(2020/3/15)
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2020年03月08日

【今週の風考計】3.8─ジェンダー平等へ「#手を取り合おう」

3月8日は国際女性デー。国連開発計画が、世界人口の8割を占める75か国で、女性たち自身も含めてジェンダー調査を行ったところ、10人中9人が女性に対する偏見や先入観を持っているとの報告を発表した。
 とりわけ性差別的な偏見の割合が多かったのは、ワースト1位のパキスタンで99.81%、続くカタールとナイジェリアが99.73%だった。ジンバブエでは96%の人が、女性への暴力を容認できると答えている。

日本はどうか。女性に何らかの偏見を持つ人が、男性では73%、女性では65%いるという。先進7か国では、日本が男女ともに最高の割合でワースト1位となっている。
 驚くのは、日本の女性は女性に偏見を持つ割合が高いという現実である。そこには、これまでの古い社会通念や家族観が反映しているのは間違いない。「女は家にいるもの」「女性は男性の3歩後ろを歩く」とか、「社会のことには口を挟まない」などと説き、また積極的に立ち上がる女性に対し、女性の中から「足を引っ張る」言動も起きている。
 いまだに目に見えない枷が女性の間で浸透し作用しているのだ。もちろん男性たちが、こうした風潮を助成している責任の重大さは計り知れない。

昨年12月、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数」では、なんと日本は対象国153カ国中121位、過去最低ランクを記録した。106位の中国、108位の韓国よりも劣る。
 分野別にみると、男女間の年収格差108位、管理職の男女比の差131位。最も深刻なのは政治参画の順位で、国会議員の男女比では135位、閣僚の男女比では139位、安倍政権下では19人の閣僚中、女性はわずか3人、世界のワースト10に入ってしまった。
 昨年11月、フィンランドで世界最年少・34歳の女性首相が誕生している。2年半前にはニュージーランドで、当時38歳の女性が首相に就いている。日本は世界の流れから遠く引き離されている。
いま大事なのは、女性に靴のヒール6センチとか4センチのパンプスなどと義務づけるより、スニーカー全てOKを求める「#KuToo」の取り組みが象徴するように、身近なところから職場内のジェンダー平等を求める運動を、着実に広げていくことだろう。

3月に入って、新聞やテレビ、ウエブメディアなど10社が会社の枠を超えて連携するプロジェクトを始めた。「#手を取り合おう」「#メディアもつながる」のハッシュタグをつけて、女性の地位向上を目指し、だれもが尊重され、自由に生きられる社会に向けて、企画や情報を発信している。ここからシスターフッドが広がるよう応援したい。(2020/3/8)
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2020年03月05日

【おすすめ本】NHK「ETV特集」取材班『証言 治安維持法 「検挙者10万人の記録」が明かす真実』─人間を崩壊させて恥じない非道な運用実態の全体像に迫る=菅原正伯

 大正末期の1925年から終戦の年に廃止されるまでの20年間に、約10万人もの検挙者を出した治安維持法。本書は非道な運用実態にメスを入れ全体像に迫った労作。
 当初、治安維持法は、「国体を変革し」「私有財産制度を否認」する結社、主に日本共産党を取り締まりの対象とし、三・一五事件などの大規模な一斉検挙で弾圧した。
 その後、28年の法改正で、「結社の目的を遂行する行為」というあいまいな犯罪類型で一般市民に検挙の適用範囲を拡大していった。検挙者が急増した長野県では、33年に農民運動や労組の関係者など600人余が検挙された二・四事件が起きたが、共産党員は一人もいなかった。立澤千尋さんは教師仲間の「勉強会」に出ただけで検挙され、教壇を追われた。

 再犯率の高い思想犯への対処として警察・司法当局が「転向」政策を編み出す第三章は本書のハイライトだが、心底、ゾッとした。特に裁判官と二・四事件のリーダーとの一問一答は、転向が単なる思想放棄ではなく、国家に積極的に従う国民を作る方策であることがリアルに浮かび上がる。その結果、長野県の教育界は全国でも最多の6200余人の教え子を満州に送るという、さらなる悲劇を生むこととなった。
 治安維持法は、朝鮮、樺太、台湾など日本の植民地では、抵抗を抑えつけるため、より厳しく運用された。日本国内では1人もなかった死刑判決が朝鮮では約50人に下され、刑が執行されている。取材班の調査で、植民地での検挙者数はのべ3万3300人余で、国内の検挙者数6万8300人余の半数近くに及んだ。内外合わせて10万人を超す。
(NHK出版新書900円)
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2020年03月01日

【今週の風考計】3.1─NO! 安倍政権の思いつき・ゴリ押し手法

★「なぜ、なぜ、やらないの? なんでだろー」の声が満ち溢れている。厚労省の新型コロナウイルスのPCR検査は1日平均約900件。1日約3800件の目標に遠く及ばない。韓国では延べ4万件以上も実施。さらに中国から無償提供された1万2500人分のPCR検査キットも棚ざらし。
 政府は「感染者の数字」を抑えるに躍起で、民間の知見者の意見も仰がず、国民を不安と混迷に陥らせたままだ。

★保険適用も遅々として進まず、いまだ休業補償もあいまいだ。韓国では14日以上に及ぶ入院隔離者に対し、4人世帯で月123万ウォン(11万4千円)の生活費を支援する。またシンガポールは新型コロナ対策に約5000億円、台湾は約2200億円を計上している。日本は153億円で事足りるとし、新規予算すら組もうとしない。
 その上、突如として小中高の全国「一律休校」の号令だ。学校は混乱し、生徒や保護者らの不安は募る。休校ショックは親ばかりでなく、労働の現場にまで広がる。

★さらには検察官の定年延長を決める政府や法務省の手法もゴリ押し極まりない。「法の番人」を自認する法務省が、「検察庁法」を口頭採決で改変する暴挙に手を貸すとは、「なんでだろー」。
 2月7日に定年退官する東京高検検事長をめぐって、官邸の意向を受けた法務省や人事院は、急遽、1月の半ばになって6か月間の定年延長を画策していた。その狙いは現在の東京高検検事長は<官邸の守護神>とも呼ばれ、7月には彼を次期の検察トップ・検事総長に据えたいからだといわれる。
 また自らの政治資金規正法に抵触する「桜疑惑」や「カジノ汚職」に連なる側近政治家たちに、特捜検察の刃が向かわないようにするためと見られている。
★1981年当時の政府見解では、「檢察官の任免については、一般の国家公務員とは異にすべきであり、国家公務員法は適用されない」とされ、それが踏襲されてきた。にも関わらず急遽1月末になって、安倍首相は「一般法である国家公務員法が適用される」と変更し、強引に定年延長を閣議決定したのだ。

★その後の法務大臣や人事院の答弁は、「つじつま合わせ」の発言訂正や「口頭採決」なる荒唐無稽な言いわけなど、噴飯ものだ。
 検察官の中からも「今回の定年延長で、国民から政権と検察の関係に疑いの目が向けられている。検察は不偏不党、公平でなければならない。この人事について国民に丁寧な説明をすべき」との声が挙がっている。
 霞が関からの反乱や起こるべし。いや永田町の自民党の先生方、国を亡ぼすまで安倍さんにつき従うのですか。(2020/3/1)
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2020年02月29日

自社の報道部にカメラを入れた 映画「さよならテレビ」が面白い 東海テレビ制作 全国で公開中=橋詰雅博

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 名古屋市に本社を構える東海テレビ制作のドキュメンタリー映画「さよならテレビ」を都内の劇場で見た。実は初日の1月2日12時30分の回で見るため劇場に行ったところ、立ち見のチケットまでも売れてしまい入れなかった。
 そばにいた正月休みを利用して秋田から来たという男性は「え―入れないの。うーん悔しい。仕方ない、時間を潰して17時30分の回で見るか」とぼやいていた。 
この12時30分の回は土方宏史監督の舞台挨拶があるからそのせいもあって完売と思ったが、舞台挨拶がない午前中の回も完売だった。
 全国で公開中のこの映画は、東海テレビ開局60周年記念番組がベース。番組は2018年9月に放送エリアの愛知、岐阜、三重の3県で放送された。放送後に放送業界やメディア研究者の間でスゴイ内容という噂が広まり、番組を収録したDVDの上映会が密かに開かれたという。
 こんなに注目された理由は身内の報道部をありのままに撮影したからだ。監督の狙いは「テレビの今」を伝える。
 もっとたくさんの人に見てもらいたいと阿武野勝彦プロデュサーと土方監督は、新たな録画を32分加え映画版をつくった。ちなみに阿武野プロデュサーは取材対象に「タブーはない」が信条だ。
当然ながら取材されるデスクや部員らは苛立った。そこで「マイクは机に置かない」「打ち合わせの撮影は許可を取る」「放送前に試写を行う」―この3つを監督と報道部が取り決めて本格撮影が始まった。もちろんこのやり取りも写っている。
 報道部を漫然と撮ってもつまらない。メリハリをつけるためフォーカスされたのが男3人。看板の夕方ニュース番組のメインキャスター兼アナウンサー、1年契約の中堅記者、番組制作会社から派遣された若い記者だ。
アナは視聴率を上げることができずキャスターを下ろされ、テレビメディアでの娯楽ネタ偏重に疑問を持つ中堅記者は悶々と仕事を続け、若い記者は取材でヘマをやり1年でクビに。退職の日に上司から卒業≠ニ言われて花束を受け取った記者は「この経験を生かし、つぎ頑張りたい」と挨拶した。
 とりわけここまで写していいのかと思ったのが失業した若い元記者が「金がなくヤバイ。貸してくれませんか」と土方監督に頼むシーンだ(この場面、追加した録画部分ではないか)。
監督は2つ折りの財布から取り出した万札数枚を彼に渡した。引き上げる彼のうしろ姿は安堵の気持ちが現れているようにみえた。
 視聴率の上下に振り回される部内、ないがしろにされる権力の監視、正社員とそうでない者の待遇格差――自社の恥部≠堂々と見せた面白いドキュメンタリー映画だ。
「さよならテレビ」を2020年度JCJ賞候補作品として推したい。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2020年2月25日号
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2020年02月28日

【おすすめ本】和田春樹『韓国併合 110年後の真実 条約による併合という欺瞞』─1910年の「韓国併合条約」その成立プロセスの欺瞞を明かす=梅田正己(歴史研究者)

 ブックレットではあるが寝転んでは読めない。日韓の歴史家による最新の研究にもとづいて韓国併合条約の成立過程を検証した学術書だからだ。
 日露戦争中からの三年間で、韓国政府との三つの協約により外交権や施政権を奪い、軍隊を解散させた日本は、一方的な通告で韓国を併合できると考えていた。
 ところが1909年秋、安重根による伊藤博文暗殺に刺激され、韓国民の反日意識が激化する。
 そこで首相桂太郎は韓国皇帝から併合を願い出させる条約方式に転換、韓国統監の寺内正毅は韓国の首相李完用に強要して条約工作を進めた。
 寺内側は条約の案文はもとより韓国政府が皇帝に示す案文まで作り、それをハングル文字に書き換えさせて、詔勅をもらったのである。

 条約の署名者は日本側が寺内、韓国側が李完用である。「だからこの条約締結なるものは、寺内が寺内と署名した一人二役の演劇、一人芝居にほかならない」と、著者は本書で断言する。
 そのことを韓国の歴史家李泰鎮氏も、この併合条約の実体は「日本政府が日本政府の傀儡と結んだ条約であり、法理論的になりたたない」と指摘している。
 1910年8月10日、韓国併合を報ずる朝日新聞の1面には、丸善発行の韓国語学習本の広告が掲載され、かつ記事にこうあった。
「朝鮮に行け、朝鮮に行け、朝鮮は最早外国に非ざる也」「朝鮮は閉ざされたる宝庫也。今や此の宝庫の富は諸君に提供せられて諸君の腕次第割取するに任す」と。
(岩波ブックレット520円)
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2020年02月25日

【焦点】 特例法ある限り新聞社は希望ない=橋詰雅博

 米国の大手新聞が再編に突入している。全国紙USAトゥデーなどを発行する新聞大手ガネットは、日刊紙を含む450紙を傘下に持つ投資会社ニューメディア・インベストメント・グループによって昨年末に買収された。ガネットの社名は残るが、投資ファンドが600紙を束ねる全米トップの新聞社を誕生させた。
 74紙を抱えるトリビューン・パブリッシングも、ニューヨークのファンドが運営し、133紙を持つMNGエンタープライジズが求めた株式32%取得に応じた。合併は必至とみられている。再編を主導する投資ファンドは、合併で読者数が増えれば広告収入が上がると見込んでいる。
 7年前には米ワシントン・ポスト紙は、アマゾン・ドット・コムCEOのジェフ・ベゾスが買収した。ベゾスが紙媒体のデジタル化を推進した結果、100万を超す有料デジタル版読者を得て業績は回復した。
 質の高い報道と効率的な経営をどう両立させるかが課題だが、米大手新聞社は外部から資金を受け入れ経営不振を乗り切ろうと躍起だ。
 日本の新聞業界も部数激減に伴い業績は落ち込む一方である。19年の部数は3781万で、10年前と比べて1254万減った。売り上げも18年度1兆6600億円と04年度より7178億円失った。
 日本の新聞社も米国のように外部から資金を調達し経営を立て直すことができないのだろうか。
 1月下旬に都内で講演した「2025年のメディア」(文藝春秋)の著者の下山進さんは、こう解説した。
 「それを阻んでいるのは日刊新聞法です。1951年にできたこの特例法は、株式の譲渡を制限している。事実上、株式の譲渡はダメというのが現実です。従って買収もされない。読売新聞グループ本社の山口寿一社長は日刊新聞法のおかげで報道の自由が守られていると主張するが、私は変化を阻んでいると思います」
 日本の新聞社はこのままではもたない。
橋詰雅博



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2020年02月23日

【今週の風考計】2.23─千利休と古田織部が辿った数奇な運命

4年に一度の閏日の前日28日は「利休忌」でもあり、また「織部の日」でもある。まず「利休忌」で偲ばれる千利休は、武野紹鴎らに茶の湯を学び、信長、秀吉に仕えながら茶道の基となる「わび茶」を完成させ、<茶聖>とも称された。
 秀吉に理不尽な切腹を命じられ、天正19(1591)年2月28日自刃、享年70。今でも切腹は歴史的事実として流布している。

だが、1年前に読んだ中村修也『千利休─切腹と晩年の真実』(朝日新書)では、利休は切腹していないとの新説を打ち出している。というのも利休没後とされる1592年の秀吉の書状に、肥前・名護屋城(現在の佐賀県唐津市)で利休の茶を飲んだと書いてあるのを根拠に、利休は九州にかくまわれたのではないかという。
 秀吉が「朝鮮征伐」のために築いた名護屋城跡から、茶室の遺構が発見されている。しかも見つかった茶室は素朴でつつましく、利休が好んだ茶室にそっくりだったと推測されている。
2年前だったか、この名護屋城跡を見学したとき、高台から見晴らす玄界灘の沖には、青い海のかなたに対馬から釜山まで見通すことができた。こうした展望のある居室に座す秀吉は、思わしくない朝鮮の戦況に心鎮めるため、利休の点てる「わび茶」を喫したとの想像は、否が応でも真実味を帯びて広がってくる。
思えば千利休に魅せられて、唐木順三『千利休』(筑摩叢書)、野上弥生子『秀吉と利休』(新潮文庫)、井上靖『本覚坊遺文』(講談社文庫)、さらには山本兼一『利休にたずねよ』(PHP文芸文庫)など渉猟してきたが、中村修也さんの新説には驚かされた。

さて「織部の日」だが、千利休亡き後、秀吉の茶頭となった古田織部が、慶長4(1599)年、自分で焼いた茶器を用いて京都・伏見で茶会を開いた日に当たる。今から33年前に岐阜県土岐市が「織部の日」と制定した。
 ともあれ安土桃山時代に活躍した「へうげもの(瓢軽者)」戦国武将が、後に茶の湯の“天下一の宗匠”となるのだから驚く。だが織部は<大阪冬の陣>頃から徳川方の軍議秘密を豊臣側に漏らしたとして捕らえられ、慶長20(1615)年に切腹、享年72。流布されている千利休の運命と、くしくも同じ道を辿った。
興味津々、最新刊の伊東潤『茶聖』(幻冬舎)は、千利休をどう描いているのだろうか。利休と秀吉、二畳の茶室でどんな会話や駆け引きが展開されたのだろうか、さっそく読んでみよう。(2020/2/23)
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2020年02月21日

【おすすめ本】永江朗『私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』─「出版界はアイヒマンだらけ」、ヘイト本を流し続ける出版の責任=岩下結(ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会・事務局)

 本書のタイトルに、多くの出版人が困惑したに違いない。書店の魅力を伝え続けてきた著者が、過去形でこう言い切ったのだから。無論、著者は書店や本の魅力を否定してはいない。その魅力を知るからこそ、「ヘイト本」が幅を利かす店頭の現状を憂えているのだ。
 ヘイト本は2013年ごろ最初のピークを迎えたとされ、その後も波はあるが、すっかり定番ジャンルとして書店の一角を占めるようになった。
しかし、それでよいのかと自問した著者は、版元編集者から取次、小売書店まで取材し「なぜヘイト本が本屋に並ぶのか」を描き出した。

 そこには現在の業界の矛盾や疲弊、そして麻痺が凝縮されている。「出版界はアイヒマンだらけ」―悪意はなくとも、その影響に無思考なまま日々のルーチンを続けることで、結果的に誰かの尊厳を脅かす。脅かされた人たちは、いずれ(すでに?)書店を訪れなくなるだろう。その先に出版の未来などない、と著者は警鐘を鳴らす。
 本書には反響の一方、業界内から批判の声もあがった。とりわけ書店の責任を強調し、「つまらない本屋なら滅びても仕方ない」と言い切った点が反発されたようだ。
 書店の現場に、本を選ぶ裁量が乏しい現実は著者も再三指摘している。委託再販制のもと、同意もなく書店にヘイト本を流し続ける版元側の責任は重い。だがそれも、あくまで業界内の責任の濃淡にすぎない。業界全体が問われているのは、現にある被害に向き合う姿勢の欠如であり、出版メディアに公共性を語る資格があるかということだ。
(太郎次郎社エディタス1600円)
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2020年02月16日

【今週の風考計】2.16─新型肝炎とフェイクが作り出す「現実」

新型コロナウイルスによる肺炎は、クルーズ船内での感染者285人に加え、北海道から沖縄まで日本国内を縦断し11都道府県の各地で感染者53人、死者1人まで出ている。世界でも中国に続く第2位の338人という感染者数だ。もう水際作戦どころか、「国内感染の大流行」を想定し、緊急対策に全力を挙げるときだ。

ところが加藤勝信・厚労相は、国内感染の広がりを否定し続けている。この間、安倍政権は何をしてきたか。正確な情報を公開せず、クルーズ船の乗客を事実上の監禁状態に置き、船内感染を拡大させてきた。
 2週間たって、やっと政府は船内乗客のPCR検査を順次に実施し、70歳以上の高齢者は陰性なら下船を許可したが、多くの人は不安な状態のまま放置・監禁されている。
国内でも、これまで政府はPCR検査キットが高価なうえ検査機関が足りないという理由で、中国渡航歴がある人に限定して検査してきた。だが実際は「万単位の検査を1週間で可能」という証言まで、民間診療機関や医薬業界から出てきている。やっと検査の限定条件は外したが、判断は自治体任せ、保険適用も検討せず、感染した労働者の休業補償もなし。

さらに感染者の人数を隠ぺいするため、政府は「日本の感染者数からクルーズ船の乗客を除くよう」WHOに提案までしている。WHOのテドロス事務局長は、<WHOが主導する新型コロナウイルス対策に1000万ドルを拠出してくれた日本に感謝>とツイートしているから、人数減らし工作の効果が透けて見える。
 1000万ドル(11億円)も拠出できるのなら、まず先に日本国民のPCR検査や医療・治療体制の補充に充てるべきではないか。国民を愚弄するのもいいかげんにしろ。
この1カ月、安倍首相は「桜を見る会」など、自分に都合の悪い事実やデータは隠滅し、法に反する行為を消してしまう「フェイク」手法を続けてきた。いまや新型コロナ肺炎への対応にまで持ち込み、事態の公開や民間からの協力を妨げてきたと言わざるを得ない。
 <鯛は頭から腐る>の例え通り、トップがそうだから、他にも改ざん隠ぺいがはびこっている。防衛相まで辺野古沖にある「マヨネーズ以下の絹豆腐並み」の埋め立て軟弱地盤データを隠ぺいする。さらに日本原発は敦賀原発2号炉の建屋直下にある断層が「活断層の可能性がある」という調査資料を改ざん。もう「フェイク」の拡がりは底なしだ。

山腰修三さんの<メディア私評>(朝日2/14付)が指摘しているのだが、こうした隠ぺい・改ざんによる「フェイク」は、「フェイク」に沿った新たな「現実」を、能動的に作りだす恐ろしさである。
 例えば「反社会的勢力」の参加が問われると、「反社は定義困難」と閣議決定される。質問通告後に対象とされた文書がシュレッダーにかけられる。「桜を見る会」に参加したとされる人々が自分のブログ記事を削除する。
 これこそ事実・真実を抹消してしまう「ポスト真実」の恐怖である。政治家・官僚だけの問題ではない。メディアを含め、私たち一人ひとりに関わる深刻な問題である。(2020/2/16)
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2020年02月13日

【おすすめ本】山口二郎『民主主義は終わるのか 瀬戸際に立つ日本』─市民の正義感こそ政治改革の原動力=河野慎二

 安倍政権のもとで、公文書改ざんや政治の私物化など、腐敗や強権政治という病理が進行し、日本の民主主義は壊され続けている。著者は自由と民主主義擁護の観点から、この崩壊現象を考察し、批判の視座を構築することを試みる。
 著者は、90年代まで日本政治を支えた「戦後合意」は、60年安保闘争を契機に形成されたと指摘。日本は憲法9条で軍事大国にならないと宣言し、排外的ナショナリズムを封印した。その過程で日本の市民が主権者としての行動力を発揮した。
 しかし、社会主義体制が崩壊し、グローバル資本主義が猖獗(しょうけつ)を極める90年代に入ると「戦後合意」の前提条件が掘り崩されて行く。自民党を中心に歴史修正主義が広がり、その先頭に立ったのが安倍晋三だった。

 第2次安倍政権のもとで「戦後合意」は大きく変貌する。憲法9条のタガを外した対米依存を深化させ、東アジア諸国への外罰的態度を強める。戦後憲法体制批判を煽り、平和国家のアイデンティティは自明でなくなる。主権者の間に思考放棄と現状肯定感を広げる。
 著者は野党共闘や国会審議などについて、5項目の提言を行う。「民主主義のためのメディア」に関する提言では「放送法制の再検討が必要」として、放送事業の免許、監督を「内閣から独立した行政委員会が行う」よう提言している。
 著者は「民主主義の歩みを私たちの時代に途絶えさせるわけにはいかない」と強調し「市民の正義感は世の中を改革する原動力」と、市民のパワーに望みを託す。(岩波新書840円)
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2020年02月09日

【今週の風考計】2.9─いまも思いだす石牟礼道子さんのオーラ

◆『苦海浄土─わが水俣病』(講談社)の出版から50年、著者の石牟礼道子さんが90歳で亡くなって、この10日で丸2年になる。石牟礼さんは、チッソという会社が熊本不知火の海″を有機水銀で汚し、人間と自然を破壊した水俣病のおぞましさを告発し続けてきた。かつ苦しむ人々に寄り添い、一緒に悶えながら、見捨てられた魂の救済に生涯をささげてきた。
◆8日に開かれた講演会<石牟礼道子の世界>に参加し、語る米本浩二さんの話に聴き入りながら、あらためて「人間の尊厳とは、命の回復とは、…」考えこまざるを得なかった。
 水俣病の発生が公式に確認されたのが1956年5月、いまから64年前だ。『苦海浄土』の第三章<ゆき女きき書き>の「もう一ぺん人間に」と題された掌作の中に、次のような「ゆき」がつぶやく叙述がある。

◆<人間な死ねばまた人間に生まれてくっとじゃろうか。うちゃやっぱり、ほかのもんに生まれ替わらず、人間に生まれ替わってきたがよか。うちゃもういっぺん、じいちゃんと舟で海にゆこうたる。うちがワキ櫓ば漕いで、じいちゃんがトモ櫓ば漕いで二丁櫓で。漁師の嫁御になって天草から渡ってきたんじゃもん。>

◆「ゆき」が語る、この「じいちゃん」茂平も、そして不知火の海″沿岸の住民も、長い間なにも知らされずに、サワラやコノシロなどの魚を朝昼晩とわず食べてきた。それが猫の狂い死にから漁民の手足の痺れへと広がり、ついには足腰が立たず、目も弱くなり、言葉ももつれるようになった。まさに神経系疾患を発症し「水俣死民」を誕生させたのだ。
◆他人の苦しみに深く感応し、見過ごせない石牟礼さんは「悶え神」として患者に寄り添い、漆黒ののぼり旗に白抜きで「怨」の文字を刻み、水俣病闘争に「加勢」する。
<水俣病事件の全様相は、…公害問題あるいは環境問題という概念ではくくりきれない様相をもって、この国の近代の肉質がそこでは根底的に問われている>
との認識に立ち、3年にわたって水俣―東京間を往復し、座り込みや「死民」のゼッケンをつけての街頭行進に投入する。しかし金銭的解決に矮小化されていく道筋に、満たされぬ石牟礼さんの「魂」は、新たな地平に向けて歩みだす。

◆さて『苦海浄土』が講談社文庫に収載・刊行されたのは、1972年12月15日。「水俣病闘争」の激しい時期だ。この文庫化作業にあたった女性編集者から、「石牟礼さんは、原本に赤字をいっぱい入れてきた。それを整理して送り返すと、またも赤字を入れてくる」苦労を聞いた。それだけ文字に「魂」を、入れ込もうとしていたことが分かる。
◆その後、彼女から引き継いで担当することになり、重版の連絡や読者からの問い合わせなど、電話や手紙でコンタクトしていたが、1990年代中頃だったか、石牟礼さんが講演で上京した折、お会いすることになった。短い時間、何を話したかなど問題でなく、石牟礼さんの体から、何かオーラのような光が発しているのを感じてしまい、身がすくんだことが、今でも忘れられない。(2020/2/9)
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2020年02月07日

【イベント案内】永江朗氏・講演会のお知らせ

なぜヘイト本が作られ売られるのか
─出版倫理と人権

人格を傷つけ‶憎悪≠あおるヘイト本─なぜ本屋に並ぶのか!
書き手・出版社・取次・書店の現場を取材し、
「売れればいい」で通る出版産業の欠陥を炙りだす。
あらためて〈出版倫理と人権〉について鋭く問う。

講演:永江 朗
1958年生まれ。ライター。最新刊『私は本屋が好きでした─あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)

日時:2月21日 (金) 18:30開会(18:15〜開場)
場所:YMCAアジア青少年センター
東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会2・21永江 朗氏講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2020年02月02日

【今週の風考計】2.2─危ない!「豚コレラ」に「ピーファス汚染」

新型肺炎に対するWHOの動きにヤキモキしていたが、ついに30日「緊急事態宣言」を発した。だが遅きに失したとの批判は免れない。
 この1週間ほどで中国国内での感染者は1万3700人を超え、死者も304人と幾何級数的に増大し、国外でも26カ国・地域に拡大している。
日本では感染者20人、人から人への感染が確認されている。やっと政府は「指定感染症」と定め、入国時には診察検査を行い、従わないときは罰則も課すこととなった。さらに強制的な入院や一定期間の休業指示も可能になる。合わせて感染予防と受け入れ態勢、診療・医療へのフォローが、きわめて緊急になっている。

「新型コロナウイルス」だけではない。遅きに失しないよう、緊急にとり組まねばならぬウイルス対策は他にもある。群馬・岐阜・沖縄など、日本で広がる「豚コレラ」(CSF)への対処だ。先月末に成立した家畜伝染病予防法によって、「豚コレラ」の蔓延を防ぐ「予防的殺処分」が可能になった。
 いまアジア地域に広がる「アフリカ豚コレラ」の侵入だけは、有効なワクチンが存在しないだけに、なんとしても防がねばならない。

もっと深刻なのは、後手後手に回っている「ピーファス(PFAS)汚染」への対策である。日本の米軍基地から高濃度の有害物質がダダ洩れし、地下水の汚染や飲料水に深刻な影響をもたらしている。
 これまで指摘されてきた沖縄の米軍基地周辺で深刻化する有機フッ素化合物「ピーファス」(PFAS)による地下水の水質汚染が、東京の横田基地周辺でも確認されたのだ。
 東京都は昨年1月、横田基地に近い4カ所の井戸を調査。立川市の井戸では、米国の飲料水の適正値から超えること、19倍という数値が検出された。これを受け都は飲料水の水源を、地下水から川の水などに切り替え、急ぎ「ピーファス」濃度を下げる措置を取った。
有機フッ素化合物「ピーファス」は、耐熱・撥水に優れ、紙皿や調理道具のテフロン加工材として、また軍事訓練や防災訓練での消火剤としても使われてきた。「ピーファス」は数千年もの間、分解されずに水中や空気中を漂う。摂取すれば体内に「永遠の化学物質」として残る。しかも人体への影響が研究され、がん、肝機能障害、甲状腺疾患、発達障害との関連性が明らかとなってきた。
横田にある米軍基地では「ピーファス」を含む泡消火剤を、2010年から7年間で、総計3161リットルも使用している。これが地下水に流れ込み、汚染を招いたとの疑念はぬぐえない。
 現に沖縄では、7つの市町村45万人の水が「ピーファス」で汚染され、その源は基地内から漏出する真っ白な泡の消火剤にあるといわれている。

「日米地位協定」に阻まれ、米軍基地内で調査ができない以上、すでに沖縄県が実施しているように、横田基地周辺を包囲する形で、井戸水のモニタリング調査をし、汚染源を特定し、被害状況や今後の影響を予測するのは不可欠だ。
 WHOでも「ピーファス」の人体への影響をとらえ、国際的に製造や使用の禁止が謳われている。だが遅れに遅れる日本の厚労省は、やっと「ピーファス」汚染を防ぐためのガイドライン値までは、この春、出すまでになった。一刻も早く製造・使用の禁止へ踏み出せ。(2020/2/2)
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2020年01月31日

【おすすめ本】黒藪哲哉『名医の追放 滋賀医科大病院事件の記録』─「白い巨塔」内で起きたガン患者切り捨て事件の深層=田所敏夫(フリーライター)

 本書の名医とは、滋賀医大病院に勤務する、高リスク前立腺癌の治療実績では世界屈指の岡本圭生特任教授である。彼の治療を受ければ(骨転移などがなければ)、95%以上再発しない。
 ところが滋賀医大は、この岡本医師を病院から追い出すため、組織ぐるみで情報操作や千人を超す患者カルテの「不正閲覧」によるインシデント(有害事象)でっち上げ、治療予約の停止を強行。
 ここまで国立大学付属病院が手を染めるかと呆れるほど、医療道徳に反する行為の連続に、読者は驚嘆されるだろう。

 あまりの非道に岡本医師の治療を受けた(あるいは待っている)患者さんらが「患者会」を立ち上げ、街頭での著名活動、デモ、病院前での抗議のスタンディングなど、岡本医師の治療継続を同大学に求める運動を起こす。
「患者が病院に医師の治療継続を求める」前代未聞の対立構造は、どうして生まれたのか。著者は本事件の発生原因が何であったのか、緻密な取材で次々と明らかにする。
 「患者会」と病院の闘いは法廷に持ち込まれた。岡本医師の治療期間の延長に向け、「病院による『治療妨害禁止』」を求める仮処分申し立ては、あまたの係争でも、特筆すべき事件といえよう。
 大津地裁は19年5月20日「病院による岡本医師の治療妨害禁止」の決定を言い渡した。医療機関を巡る係争では史上初の決定内容だ。
 本書は弁護団長に井戸謙一氏を据え、大学側と闘う岡本医師と「患者会」の活動を、著者の丁寧な取材と冴えた叙述で活写した力作だ。(緑風出版1800円)
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2020年01月26日

【今週の風考計】1.26─‶新型肺炎”阻止にWHOと日本は全力を注げ!

猛威を振るっている「新型コロナウイルス」による肺炎は、昨年12月8日、中国の湖北省・武漢で最初の感染者が出て以降、いまや中国全土に広がり、感染者は1300人、死者は50人を超える。日本国内でも3人目の患者が確認されている。さらに東南アジアや米仏諸国へ14カ国・地域に広がる。

肺炎を起こす「新型コロナウイルス」は、タケネズミやヘビなどの動物に寄宿している。中国での発生源は武漢の海鮮市場だが、この海鮮市場では他にもアナグマ、ハクビシン、キツネ、野ウサギ、クジャク、サソリ、ワニなど100種以上の動物が「食品」として日常的に売られている。
 しかも目の前で殺して、調理もしない生肉を売っている。ここの価格表には生きたタケネズミ1匹85元(約1400円)、クジャク1羽500元(約8000円)、シカ1頭6千元(約9万6千円)などと記されている。
野生動物の捕獲や売買、摂取を取り締る法律はあるが、その法をかいくぐってでも、「机と飛行機以外は、なんでも食べる」中国人の食生活に加え、あえて野生動物を食べる「野味」という習慣も関係している。
 タケネズミやヘビを食べて感染したのは間違いない。しかも武漢市当局は、感染の事実を中央政府に報告せず隠ぺいしたため、ますます感染者は広がり、さらに23日の武漢「封鎖令」が出る直前には、いち早く武漢を脱出した者が数千人とも数万人とも言われている。

今回の「新型コロナウイルス」は、2003年に中国南部の広東省から広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のコロナウイルスに近い。世界30カ国8,422人が感染、916人が死亡した。また2013年の中東呼吸器症候群(MERS)も、このコロナウイルスが関係し、中東諸国や韓国など2,070人が感染し712人が死亡した。
 この二例とも感染源はコウモリ、かつコウモリを捕食した野生のヘビが第2次感染源となっている。武漢市の海鮮市場ではヘビも販売されていたことから、コウモリからヘビに感染した「新型コロナウイルス」が人へとうつり、今回の流行を引き起こした可能性が高い。

恐ろしいのは「新型コロナウイルス」には効く薬がないことだ。感染を防ぐワクチンもない。感染した場合は、安静にして熱・せきを和らげる「対症療法」しかない。
 しかも「新型コロナウイルス」には、すでに「スーパー・スプレッダー」が存在しているといわれる。すなわち多くの人への感染拡大の源となった患者からの「アウトブレイク」(集団感染)が起きている危険である。
1月25日の「春節」を挟むおよそ40日間、中国では延べ約30億人が国内のみならず世界中を大移動する。「新型コロナウイルス」による“大規模肺炎”の拡大は、SARSの再来を招きかねない。
 今のところ死亡率がSARSより低いことが救いだが、感染拡大を封じ込めないと、「新型コロナウイルス」に変異が生じて、さらに毒性が強くなるかもしれない。
 日本とWHO は検疫体制を強化し、各国共同の水際作戦で感染拡大を阻止しなければならない。(2020/1/26)
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2020年01月25日

【焦点】 安全性に疑義のゲノム編集食品うられる=橋詰雅博

 ゲノム編集した受精卵を用い双子を含む赤ちゃん3人を誕生させたことを公表した中国の研究者に対し、昨年暮れ広東省深圳市の裁判所は医学倫理の最低ラインを超えたと厳しく批判し、懲役3年と罰金3百万元(約4800万円)を言い渡した。ゲノム編集は、狙った遺伝子を自在に改変できる遺伝子操作の技術だ。発展途上国の爆発的な人口増による食糧難の解決策として期待がもてるとされる。農水畜産物の品種改良で利用が広がる。
 筑波大は、血圧上昇を抑えストレスを緩和する成分GABA(ギャバ)を数倍増やしたトマト、産業技術総合研究所は、生んだ卵にアレルギー物質が少ないニワトリ、大阪大や理化学研究所は、芽に含まれる天然毒素が極めて少ないジャガイモを開発した。京大は、肉の量が多いマッチョマダイ≠誕生させた。夢のバイオテクノロジーと評されるゆえんだ。
 とはいえ、ゲノム編集食品につきまとうのは安全性の問題。
昨年11月に都内で講演した 「食べものが劣化する日本」(食べもの通信社)の著者・安田節子さんはこう話した。
「米国コロンビア大学や米FDA(食品医薬品局)などの研究では、標的遺伝子を破壊・切断すると予期し得ない変異が起る恐れがあると指摘しています。つまりゲノム編集技術の安全性に疑義生じている。だからドイツやニュージーランドはゲノム編集食品を規制し、欧州連合(EU)司法裁判所も規制適用すべきと判断した」
 ところが日本の安倍晋三首相は、ゲノム編集技術を成長戦略と位置付け大胆な政策を実行すると決めた。これを受けて厚生労働省は、昨年10月からゲノム編集食品について、国産も輸入品も届け出だけで販売できる新制度をスタートさせた。
 「新制度はゲノム編集などを使った遺伝子組み換え食品市場の拡大を狙うトランプ米大統領の意向にそったものです」(安田さん)
 疑念をはらせないゲノム編集食品。何らかの規制が必要だ。
 橋詰雅博
 


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2020年01月23日

【おすすめ本】玉城デニー『沖縄・辺野古から考える、私たちの未来 多様性の時代と民主主義の誇り』─米軍基地へ日本の主権を! ねばり強い調査と不屈の挑戦=山岡淳一郎(ノンフィクション作家)

 著者の玉城デニーは、幼少期に実母と育ての母の影響を強く受けている。父は米海兵隊員で、誕生時には本国に帰還していて会ったことはない。「誰一人とり残さない」と子どもの貧困対策に心血を注ぐのは「母性」の反映だろう。AERAの「現代の肖像」で玉城に何度も長いインタビュ―をした私の実感だ。

 本書は、その玉城が沖縄の基地問題に日本の未来が託されている現実を裁断的に説いた「父性」の書である。知事就任半年後、早稲田大学での講演をもとに編まれた。随所にねばり強い考えがちりばめられている。
 例えば日本全体の米軍基地を規定する「日米地位協定」。米軍に基地の「排他的管理権」を認め、約60年一度も改正されていない。
沖縄県はドイツ、イタリア、ベルギー、英国を訪ね、「これらの国においては、航空法など自国の法律や規則を米軍にも適用させることで自国の主権を確立させ、米軍の活動をコントロールしている」事実を明らかにした。
 だが首相の安倍晋三は「NATO加盟国間には相互防衛義務。日米安保条約は米国への基地提供義務。背景の違いも考えて比較しなくてはならない」と自己正当化を図る。

 玉城は「今後、調査の対象国を韓国、フィリピン、オーストラリアなどアジア諸国にも拡大し、日米地位協定の問題点をさらに明確化する」と、本書に記す。ネットで沖縄県の「地位協定ポータルサイト」を見てほしい。
 今年11月、予告どおり「オーストラリアの状況」をアップ。豪州でも米軍に国内法が適用されている。「絶対に諦めない」が玉城の口癖。民主主義を取り戻す挑戦は続く。(高文研1200円)
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2020年01月19日

【今週の風考計】1.19─60年前の258万人スト・13万人国会デモ

★19日は「60年安保」から60年となる。若い人たちに伝えたい。60年前、「昭和の妖怪」と言われた岸信介首相、なにあろう今の安倍首相のお爺さんが、米国のアイゼンハワー大統領と会談し、日本に米軍基地を置き米兵の駐留を認める「60年日米安保条約」に調印したのだ。
★「へちまに歯が生えた顔」とも比喩される岸信介さんは、東条内閣の商工大臣として太平洋戦争を始める詔書に署名し、軍備増強に辣腕を振るい、敗戦後、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに3年も拘束された人物だ。その戦争責任は極めて重い。だが1953年には政界に復帰し、わずか4年で首相になった。
 その岸首相が、意気揚々と帰国して「60年安保条約」案を国会に上程し承認を求めた。だが国会審議は「核の持ち込み」や「日米地位協定」の内容など、判然としない答弁が続き、未曾有の混乱をもたらした。

★5月19日には自民党は単独で「60年安保条約」案を強行採決。火に油を注ぐ暴挙に、国会外での安保闘争は、いっそう激しくなり、国会周辺は連日デモ隊に包囲された。昨年から続く「香港200万人デモ」を、思い浮かべてほしい。これとそっくりな熱い闘いが、日本でも繰り広げられたのだ。
★6月4日には560万人を超える組合員がストに入り、2万の商店がシャッターを下ろし閉店ストを行う。15日には580万人のスト、13万人の国会請願デモが展開された。
 その際、警官隊の暴行やヤクザ・右翼団体の襲撃で多数の負傷者を出し、大学生・樺美智子さんが死亡するや、反対運動は頂点に達した。しかし19日、「60年安保」が自然成立。

★「60年安保」の期限は10年、以後は1年前の予告により一方的に破棄できると定めてある。しかし60年間、同時に締結された「日米地位協定」も含め、破棄どころか全く変更も修正もされていない。核兵器を積んだ戦艦や航空機の通過には事前協議すら適用しない旨の密約まで継続されている。
★日本に米軍基地が131か所もある。その施設内での米軍特権、税金の免除、兵士・軍属の犯罪に対する裁判権放棄など、日本の法律が適用されない事態が放置されたままなのだ。そのうえ日本が提供する米軍への「思いやり予算」は、この43年間で10兆円にのぼる。

★安倍政権は19日、外務省の飯倉公館で「60年安保」60周年記念行事を開く。待てよ!まずは米兵犯罪の裁判権を日本に取り戻すのが先ではないか。 EU諸国では実現しているにもかかわらず、米国から兵器の爆買いばかりに血道をあげる、真逆な愚は、もう止めたらいい。(2020/1/19)
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2020年01月14日

【`19読書回顧─私のいちおし】「検閲」というテーマにどう迫っていくか=志田陽子(武蔵野美術大学教授)

志田陽子.jpg 
 8月以来、「あいちトリエンナーレ2019」展示中止問題に端を発して、「検閲」という言葉が浮上し、私たちを取り巻く言論環境が自由度を失っていることを改めて思い知らされた。
 憲法21条2項で禁止される「検閲」とは、最高裁判例によると、表現の思想的内容について、公表前(事前)に、行政権によって網羅的に行われる審査、となる。「これに照らせば当たらない」と答えることはできるのだが、憲法研究者として、最高裁に寄りかかるのではなく自分の論として、どう答えるか。その課題に追い立てられるように「検閲」に関する本を立て続けに読んだ。

 その中で、金ヨンロンほか編著『言論統制の近代を問い直す』(花鳥社)を挙げたい。「検閲」という制度があった時代にも実際には出版社や新聞社の自己検閲が大きな力を持ったこと、人々の感受性に直接に響く文芸の世界にもこれが及んだことが、よくわかる。
 最高裁の定義は、歴史上で起きた事例に比べてあまりにも狭い。検閲が生み出してきたもの、それがもたらしたものに迫る論考を、「表現の自由」論がどのように消化していくかが問われている。
 今の日本で、自己検閲によって回避される話題の典型が、《死》をめぐる語りだろう。報道やドラマを通じて消費される誰かの《死》ではなく、代替物としての健康ネタでもなく、自分ごととしての《死》を直接に見据え、言葉にすることは、よほどの高みにいる思索家以外には許されないかのようである。

 宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』(晶文社)は、その《高み》を二者の対話によって実現した、奇跡のような邂逅を縫い留めた記録だ。同じ主題をはさんで、合わせ鏡のように対照的なトーンで書かれた小説、カズオ・イシグロ『私を離さないで』(早川書房)を思い出さずにいられない。この作品中、その主題は語られない。その欠落が透んだ痛みとして迫ってくるのは、まるで検閲をかいくぐって生き延びたメッセージのようだからだろう。
「言論統制の近代を問いなおす」.jpg
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2020年01月12日

【今週の風考計】1.12─「エレファント・カーブ」と我が老後!

松が取れた途端、妻が新聞を見ながら、「もう年に1回の旅行は止め! 外食も贅沢、貯金はガタ減りよ」とのたまう。12日付の朝日新聞5面<長寿時代 財布のひも固く>への反応である。この紙面には、同社の世論調査の結果がまとめられている。
 年金世代は、貯蓄の目的が「老後の生活費」88%、「病気介護の備え」71%がずば抜けて高く、「旅行・レジャー」は22%だった。
 年金生活の我が身に置き換えて、妻の叱声に耳を傾けざるを得ない。晩酌も週に2回するか3回にするか、ここが思案のしどころ。

この機会に、世界や日本の経済格差や貧富について、おさらいをすることにした。まずは世界的規模で格差が拡大している実態である。2019年の「世界のビリオネア」(10億ドル以上の資産保有者)は2153人、総額8兆7千億ドル、32年間で29倍、アフリカのGDPの4年分に匹敵する。
アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが2年連続のトップ。保有資産額を前年から190億ドル(約2兆1300億円)増やし1310億ドル(約14兆6600億円)となった。日本ではユニクロの柳井正会長が41位、資産額222億ドル(約2兆4600億円)。
 世界の1%の富裕層が強欲に遂行する資産増加ぶりは、この20年の世界経済格差を象徴的に示す「エレファント・カーブ」そのものだといえる。

金持ちの話はいい。貧富の貧に目を向けよう。日本の貧困率は、1人当たりの年間可処分所得によって算定する。最新データによる日本の可処分所得は年間245万円、その額の半分しか所得のない世帯を貧困層と呼んでいる。世界第3位の経済大国でありながら、貧困率は15.6%となり7人に1人が貧困にあえぎ、1人親世帯での貧困率は50.6%まで上昇し、半数以上が貧困に苦しんでいる。
高齢者世帯の貧困状態も深刻だ。65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率は27.0%になる。しかも、単身世帯での貧困率はさらに深刻で、男性単身世帯で36.4%、女性の単身世帯では実に56.2%にもなる。65歳以上の女性の一人暮らしは、2人に1人以上が貧困の状態に置かれている。

家計調査年報(2017年)によると、無職の高齢者世帯が得る収入の平均は月額で12万2千円、年換算で147万円となっている。その一方で、勤労している高齢者世帯の平均貯蓄額は70歳以上で2385万円、60代で2382万円と、現役世代に比べて圧倒的に高く、40代の2倍以上となっている。つまり高齢者世帯になればなるほど、貧富の格差が拡大しているという現実がある。
 さてさて我が老後資金は、本当に大丈夫か。正直いって現実に目を向けるのが怖い。(2020.1.12)
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2020年01月09日

【’19読書回顧─私のいちおし】 地方に生きる人々の確かな姿を掬いだす=南陀楼綾繁(ライター)

南陀楼綾繁.jpg 
 この数年、地方に出かける機会が多く、地方をテーマにした本に目が行く。山本志乃『「市」に立つ 定期市の民俗誌』(創元社)もその一冊だ。
 著者は大学院生のとき、千葉県大多喜町の朝市に通い、調査を行った。その後、30年にわたり各地の定期市を訪れ、売り手や客など市に関わる人たちの話を聞いてきた。高知の市でサカキとシキビだけを商う、いごっそう(頑固者)の男性。東北各地の市を回ってコンブを商う夫婦。彼らの生き生きとした言葉が書き留められている。
 著者は市を「他者との関わりのなかで社会の成員として生きていく、その基本的な知恵をさずかる」場だとする。
 一方、瀬尾夏美『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』(晶文社)は、大きな力によって否応なく共同体という場が壊滅した後の物語だ。著者は震災後の3年間、陸前高田で暮らしながら、地元の人たちの話を聞いてきた。
 土地のかさ上げによって、復興したように見える町に対して、地元の人たちが抱える複雑な「あわいゆく」感情を、著者は必死にすくい上げようとする。
 藤井聡子『どこにでもあるどこかになる前に。 富山見聞逡巡記』(里山社)は、東京での夢やぶれて富山に戻ってきた著者が地元での「居場所」を求めてもがく奮闘記。
 著者は富山で、世間の物差しにまどわされない人たちに出会う。しかし、北陸新幹線の開通によって、町は地ならしされたように平坦な風景になっていく。そのことをなげく著者に対して、酔っ払いの友人が「場所がなくなっても、人さえいればなんとかなる」と言う。すでに日本中が「どこにでもあるどこか」になりつつあるが、自分がどんな場所にしたいという思いがあれば、何かが変わるかもしれない。
地方における「人」と「場」を描いた点で、この3冊が特に心に残った。
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2020年01月05日

【今週の風考計】1.5─トランプ大統領の無謀なイラン先制攻撃

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年末年始、子供や孫に囲まれ、年越しそばを啜り、「おせち」に舌鼓を打ちながら、若い世代の息吹を感じとらせてもらった。

年末はNHK紅白歌合戦、小中学生5人組ユニット・Foorinが “パプリカダンス”に合わせて歌いだすと、小学1年の孫も歌いつつノリノリでステップを踏み始める。知らなかったのが恥ずかしい。いま2020年応援歌として、<パプリカ花が咲いたら…種をまこう…ハレルーヤ…この指とまれ>と、ダンスと共に大ブームであるのが分かった。
その後に続く歌唱も初めて聴くものばかり。半ば頃になって、これも初めて耳にする「白日」の歌唱に釘づけになった。ラフな服装だが熱のこもった裏声を響かせる。テレビ画面の下に載る<時には誰かを…傷つけてしまったり…後悔ばかりの人生だ…降りしきる雪よ、全てを包み込んでくれ…>の歌詞を追う。
 何か琴線に触れる情感とシンパシーが交錯しつつ聴き入る。脇で40歳になった息子が、4人組バンド「King Gnu」の大ヒット曲だという。
後で調べてみると、「King Gnu」は東京芸大出身の4人で構成され、1年前にメジャーデビューしたばかりだ。「白日」は配信限定のシングルだが、すでに再生回数は1億回を突破している。この15日に、初CD「ceremony」 (アリオラ・ジャパン)が発売される。待ち遠しい。年始はスポーツ観戦にふけった。孫とのチャンネル争いも忙しかった。

さて、その間、IRカジノ汚職で自民党議員が逮捕され、他にも特捜部から事情聴取されている政治家5人、さらに疑われる政治家は15人ともいわれる。強行採決までして成立させた安倍政権の目玉政策が、ワイロまみれだったとは呆れはてる。
さらに新年3日、トランプ大統領の命令で、米軍はイラクの首都バグダッドを空爆し、隣国のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」を率いるガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。イラクの主権すら侵害する前代未聞の作戦は、中東地域に深刻で危険な事態を生み出し、戦争への導火線に火を近づける無謀な挑発となった。
イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐」に言及し、国内では3日、各地で総勢10万人が「米国に死を!」と叫んで司令官の殺害を非難し、反米デモが広がっている。
 米国は、昨年12月末に約750人の米部隊を増派したが、それに加え、4日には3500人の部隊を追加増派し、イランの52か所の重要施設を爆撃すると脅す。これに対抗するイランは、すぐにでもホルムズ海峡の封鎖に踏み切ることも視野に入るだろう。
 またイラン近隣諸国も、一斉に「犯罪的な米国の攻撃」を非難し始めている。湾岸諸国の米軍基地やホルムズ海峡を航行する石油タンカーや貨物船への攻撃が始まる可能性すらある。

だが日本の安倍首相は、この間、フィットネスクラブ通いと映画鑑賞と4日で4回のゴルフ三昧に興じていた。あまつさえイランに対する米国の先制攻撃について一言も言及せず、自衛隊の中東派遣がもたらす深刻な事態への対応にも触れない。
 安倍首相はイランのハメネイ師やロウハニ大統領と昨年6月・12月に会談して、「イランの最高指導者とサシで話せる関係を築いた」と、米国・イランの仲を取り持つ日本の外交を誇っていたが、トランプ大統領に今回の暴挙を諫める覚悟はあるのか。1月中旬の中東訪問は、逆に手痛いしっぺ返しを食らう公算は大きい。(2020/1/5)
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2019年12月31日

ワンテーマをずっと追求 フリーランスライター・畠山さん=橋詰雅博

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 「広報担当者から『あなたは誰ですか』と聞かれて、フリーランスライターと答えてもラチが明かないときは、『日本国民です』と言います。これキラー・フレーズ≠ナすよ」――フリーランスライターの畠山理仁さん(46)は大まじめにこう言った。 
12月11日のジャーナリスト講座「フリーランスの世界―その利点と難しさ」は、笑いと驚きが混じるちょっと愉快なJ講座だった。
勤め人経験ない
 講師の畠山さんは早稲田大学第一文学部在学中から雑誌などに原稿を書いてきた。勤め人の経験はなく、26年間もフリーでライター活動を続けている。 
注力するテーマは政治家と選挙だ。とりわけ泡沫候補者≠精力的に取材。大手メディアから無視され、誰も関心を持たないからだ。勝ち目がなくても実現したい政策を訴えたくて出馬する泡沫を畠山さんは無頼系独立候補≠ニ呼ぶ。約20年間のその独自の戦いをまとめた著書「黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)は、2017年開高健ノンフィクション賞を受賞した。
 畠山さんはフリーランスの利点をこう挙げた。
・個人事業主だから上司も面倒な部下もいない
・毎日満員電車に乗らなくて済む
・嫌な仕事は断れる
・自分の興味や関心で仕事ができる
畠山さんは「興味あるテーマを追い続けられるのが最大の利点」と言う。畠山さん場合、そのテーマは無頼系独立候補者だ。
「どの候補者もインパクトがあり、政治を真剣に考えている人が多い。よく『選挙に出れば』と言われるが、取材する方がはるかに面白い」(畠山さん)。
アルバイトも
 一方、不利な点は何か。
・会社の看板がない
・相手から信用されない
・潜在的無職
・お金のことが心配
 畠山さんは「やはり経済的に苦しい。ライターの仕事のほかに掃除や引っ越しの手伝い、エキストラなどのアルバイトもやっています。ノンフィクション賞の賞金300万円は借金の返済であっという間に消えてしまった」と話す。
 とはいえ落ち込んではいられない。
「後ろ向きの考えになったら精神的に参ってしまう。好きな仕事をやっていることを忘れないように心掛けています」(畠山さん)
 フリーランスの世界は厳しい。しかし、これと思ったテーマを長く深く取材ができる。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月30日

アマゾン「ひとでなし」企業だ 秘密主義、労働者酷使、税金逃れ、潜入ルポ・横田増生さん講演=土居秀夫

出版部会では、あらゆる分野の支配を狙うアマゾンの実像を知ろうと、流通現場への潜入ルポを執筆・刊行した横田増生さんを講師に招き、「『amazon帝国』の現場を撃つ―いま何が起きているか」と題した講演会を11月22日、都内で開いた。
5人死んでいる
 横田さんがアマゾンの小田原流通センターに作業員として再度の潜入を果たしたのは2017年。02年の潜入時と比べ、東京ドーム4つ分というセンターの巨大化と、かつては本が中心だった商品の多様化に驚かされたが、何よりも労働者管理の徹底が凄まじかった。
 商品を棚から抜き取るピッキング作業にもハンディスキャナーが使われるようになって、各人の作業効率が記録・公表され、労働者を追い立てる。しかしいまだに手作業が中心で、自ら計測した横田さんは、センター内を一日20qも歩いたという。
 小田原センターでは13年以降、5人が死亡している。人が倒れても、現場から119番通報ができない。アルバイト作業員から上の社員まで情報が伝わるのに時間がかかって、手遅れになるのだ。秘密主義のアマゾンは、労働者の死亡について一切語らない。横田さんは自身の潜入経験から、ユニクロは「ろくでなし」だが、アマゾンは「ひとでなし」だと言い切った。
世界3位の市場
 イギリスでは11年、議会でアマゾン問題の公聴会が開かれた。以来、サンデーミラー紙やBBCなどが毎年のように潜入取材を行っているが、日本では自ら取材するマスメディアはない。今やあらゆる商品を扱うアマゾンにとって、日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界3位の市場だが、政治家も含めてものを言う人が少ないのはおかしい、と横田さんは訴えた。
 アマゾンの最大の問題のひとつが租税回避(タックスヘイブン)だ。創業者のジェフ・ベゾス氏は、創業前、アメリカ先住民居住地に本社を置いて税逃れを企てるなど、その手法は一貫している。いくつもの州では売上税をめぐる裁判を起こされ、アマゾンは敗訴した。とはいえ、アマゾンジャパンが日本で払った法人税は14年の10億円のみ。書籍だけでも2000億円近い売り上げがあるので、限りなく違法に近い状態だ。
狙われる出版界
 アマゾンは送料無料のプライム会員制、学生割引などで書籍の再販売価格維持制度を無視している。それだけでなく、中小出版社に対し、好条件の直接取引を持ちかけるが、最終的には本来書店の取り分であった価格の22%を40%にするなど、アマゾンが最も利益を得ることになる。これに反旗を翻すどころか、出版社の多くはアマゾンに対して口をつぐんでいると、横田さんは指摘した。
 講演の終わりに、ドイツのアマゾンで労働組合が結成され、ライプチヒでは1500人中700人まで組織したこと、組合員の増加に伴い時給が上がったことを紹介。労働者軽視を止めさせるには労働組合が必要だと、横田さんは強調した。そして、大手メディアがアマゾンの租税回避や労働の実態をもっと取り上げるべきだし、政官の監視と指導が欠かせないと締めくくった。
 講演後の質疑では、アマゾンの消費税の支払い方への疑問やフェイクレビュー、売り上げの半分以上を占めるマーケットプレイスの問題などが取り上げられ、充実した議論になった。 
土居秀夫
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号

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2019年12月29日

【今週の風考計】12.29─見過ごせない中国の人権弾圧と覇権主義

★今年を振り返る各種<10大ニュース>、そこには天皇陛下即位・令和改元、ラクビーW杯・日本ベスト8、消費税10%、などの項目が上位に並ぶ。
 だが「徴用工」問題で日韓関係が悪化した事態こそ、トップにおいてよい重大なニュースだ。いまだに解決しないのも、日本が朝鮮を侵略し、「徴用工」として韓国人労働者を強制的に働かせてきた「加害責任」に、安倍政権が向き合わないことに根源がある。

★また隣の中国で起きている事態も、見過ごしてはならない。今年は中華人民共和国が誕生して70年(10/1)、チベット民衆が中国の支配に抵抗して蜂起した「チベット動乱」から60年(3/10)、中国の学生・市民の民主化要求を武力弾圧した「天安門事件」から30年(6/4)。
 重大な出来事が起きた銘記すべき年なのに、中国政府は、中国辺境地域のチベット族やウイグル人、そして香港の学生や市民への弾圧を、今もなお続けている。
★新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人住民が、中国当局の手で強制収容所に入れられていると、国連は懸念を強めている。「香港問題」への中国の介入も、6月に起きた200万人・平和デモの当初から、「組織的暴動」とレッテルを貼って抑圧のうえ、さらに丸腰の若者に向かって実弾を撃つまでに至った。これを習近平国家主席の督励のもとで実行している。まさに人権弾圧そのもの。
★日本が実効支配している尖閣諸島の周辺海域では、中国公船による領海侵入など延べ1053隻、去年の1・7倍の過去最多。威嚇による現状変更は海洋法違反だ。中国の覇権主義は露骨さを増している。そこへ習近平主席の来春「国賓訪日」が上積みされれば、どうなるか。過去にも中国で天皇陛下の政治利用がなされた歴史を踏まえれば、手放しで喜べるものではない。

★台風や火災による被害・文化財の消失も記憶しておきたい。発生した台風は29個に及ぶが、中でも台風19号は、東日本および東北地方に記録的な豪雨をもたらした。7県71河川の128箇所で堤防が決壊した。
 また10月31日、沖縄・首里城から出火、正殿など計8棟が焼損した。政府は再建に全力を挙げる方針だが、このバーターに辺野古基地埋め立ての加速を強いるのはゴメンこうむる。
★パリのノートルダム大聖堂も、4月15日夕から16日朝にかけて発生した大規模な火災で、高さ約90メートルの尖塔が焼失。幸いにも大聖堂正面の鐘楼は焼け残り、聖遺物「キリストのいばらの冠」は無事だった。現在も修復作業が続き、恒例のクリスマスミサは、216年ぶりに中止。

★その代わり、ギヨーム・ド・マショー作曲「ノートルダム・ミサ曲」に耳を傾ける。9月に発売されたCDは、ベルギーのシュメルツァーが率いる古楽集団グランドラヴォアの歌唱演奏(Glossa/PGCD-P32110)。<聖母マリア>を讃える荘厳な歌声に浸りながら除夜を迎えたい。皆さん、よいお年をお迎えください。(2019/12/29)
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