2020年01月19日

【今週の風考計】1.19─60年前の258万人スト・13万人国会デモ

★19日は「60年安保」から60年となる。若い人たちに伝えたい。60年前、「昭和の妖怪」と言われた岸信介首相、なにあろう今の安倍首相のお爺さんが、米国のアイゼンハワー大統領と会談し、日本に米軍基地を置き米兵の駐留を認める「60年日米安保条約」に調印したのだ。
★「へちまに歯が生えた顔」とも比喩される岸信介さんは、東条内閣の商工大臣として太平洋戦争を始める詔書に署名し、軍備増強に辣腕を振るい、敗戦後、A級戦犯容疑で巣鴨プリズンに3年も拘束された人物だ。その戦争責任は極めて重い。だが1953年には政界に復帰し、わずか4年で首相になった。
 その岸首相が、意気揚々と帰国して「60年安保条約」案を国会に上程し承認を求めた。だが国会審議は「核の持ち込み」や「日米地位協定」の内容など、判然としない答弁が続き、未曾有の混乱をもたらした。

★5月19日には自民党は単独で「60年安保条約」案を強行採決。火に油を注ぐ暴挙に、国会外での安保闘争は、いっそう激しくなり、国会周辺は連日デモ隊に包囲された。昨年から続く「香港200万人デモ」を、思い浮かべてほしい。これとそっくりな熱い闘いが、日本でも繰り広げられたのだ。
★6月4日には560万人を超える組合員がストに入り、2万の商店がシャッターを下ろし閉店ストを行う。15日には580万人のスト、13万人の国会請願デモが展開された。
 その際、警官隊の暴行やヤクザ・右翼団体の襲撃で多数の負傷者を出し、大学生・樺美智子さんが死亡するや、反対運動は頂点に達した。しかし19日、「60年安保」が自然成立。

★「60年安保」の期限は10年、以後は1年前の予告により一方的に破棄できると定めてある。しかし60年間、同時に締結された「日米地位協定」も含め、破棄どころか全く変更も修正もされていない。核兵器を積んだ戦艦や航空機の通過には事前協議すら適用しない旨の密約まで継続されている。
★日本に米軍基地が131か所もある。その施設内での米軍特権、税金の免除、兵士・軍属の犯罪に対する裁判権放棄など、日本の法律が適用されない事態が放置されたままなのだ。そのうえ日本が提供する米軍への「思いやり予算」は、この43年間で10兆円にのぼる。

★安倍政権は19日、外務省の飯倉公館で「60年安保」60周年記念行事を開く。待てよ!まずは米兵犯罪の裁判権を日本に取り戻すのが先ではないか。 EU諸国では実現しているにもかかわらず、米国から兵器の爆買いばかりに血道をあげる、真逆な愚は、もう止めたらいい。(2020/1/19)
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2020年01月14日

【`19読書回顧─私のいちおし】「検閲」というテーマにどう迫っていくか=志田陽子(武蔵野美術大学教授)

志田陽子.jpg 
 8月以来、「あいちトリエンナーレ2019」展示中止問題に端を発して、「検閲」という言葉が浮上し、私たちを取り巻く言論環境が自由度を失っていることを改めて思い知らされた。
 憲法21条2項で禁止される「検閲」とは、最高裁判例によると、表現の思想的内容について、公表前(事前)に、行政権によって網羅的に行われる審査、となる。「これに照らせば当たらない」と答えることはできるのだが、憲法研究者として、最高裁に寄りかかるのではなく自分の論として、どう答えるか。その課題に追い立てられるように「検閲」に関する本を立て続けに読んだ。

 その中で、金ヨンロンほか編著『言論統制の近代を問い直す』(花鳥社)を挙げたい。「検閲」という制度があった時代にも実際には出版社や新聞社の自己検閲が大きな力を持ったこと、人々の感受性に直接に響く文芸の世界にもこれが及んだことが、よくわかる。
 最高裁の定義は、歴史上で起きた事例に比べてあまりにも狭い。検閲が生み出してきたもの、それがもたらしたものに迫る論考を、「表現の自由」論がどのように消化していくかが問われている。
 今の日本で、自己検閲によって回避される話題の典型が、《死》をめぐる語りだろう。報道やドラマを通じて消費される誰かの《死》ではなく、代替物としての健康ネタでもなく、自分ごととしての《死》を直接に見据え、言葉にすることは、よほどの高みにいる思索家以外には許されないかのようである。

 宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』(晶文社)は、その《高み》を二者の対話によって実現した、奇跡のような邂逅を縫い留めた記録だ。同じ主題をはさんで、合わせ鏡のように対照的なトーンで書かれた小説、カズオ・イシグロ『私を離さないで』(早川書房)を思い出さずにいられない。この作品中、その主題は語られない。その欠落が透んだ痛みとして迫ってくるのは、まるで検閲をかいくぐって生き延びたメッセージのようだからだろう。
「言論統制の近代を問いなおす」.jpg
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2020年01月12日

【今週の風考計】1.12─「エレファント・カーブ」と我が老後!

松が取れた途端、妻が新聞を見ながら、「もう年に1回の旅行は止め! 外食も贅沢、貯金はガタ減りよ」とのたまう。12日付の朝日新聞5面<長寿時代 財布のひも固く>への反応である。この紙面には、同社の世論調査の結果がまとめられている。
 年金世代は、貯蓄の目的が「老後の生活費」88%、「病気介護の備え」71%がずば抜けて高く、「旅行・レジャー」は22%だった。
 年金生活の我が身に置き換えて、妻の叱声に耳を傾けざるを得ない。晩酌も週に2回するか3回にするか、ここが思案のしどころ。

この機会に、世界や日本の経済格差や貧富について、おさらいをすることにした。まずは世界的規模で格差が拡大している実態である。2019年の「世界のビリオネア」(10億ドル以上の資産保有者)は2153人、総額8兆7千億ドル、32年間で29倍、アフリカのGDPの4年分に匹敵する。
アマゾンのCEOジェフ・ベゾスが2年連続のトップ。保有資産額を前年から190億ドル(約2兆1300億円)増やし1310億ドル(約14兆6600億円)となった。日本ではユニクロの柳井正会長が41位、資産額222億ドル(約2兆4600億円)。
 世界の1%の富裕層が強欲に遂行する資産増加ぶりは、この20年の世界経済格差を象徴的に示す「エレファント・カーブ」そのものだといえる。

金持ちの話はいい。貧富の貧に目を向けよう。日本の貧困率は、1人当たりの年間可処分所得によって算定する。最新データによる日本の可処分所得は年間245万円、その額の半分しか所得のない世帯を貧困層と呼んでいる。世界第3位の経済大国でありながら、貧困率は15.6%となり7人に1人が貧困にあえぎ、1人親世帯での貧困率は50.6%まで上昇し、半数以上が貧困に苦しんでいる。
高齢者世帯の貧困状態も深刻だ。65歳以上の高齢者のいる世帯の貧困率は27.0%になる。しかも、単身世帯での貧困率はさらに深刻で、男性単身世帯で36.4%、女性の単身世帯では実に56.2%にもなる。65歳以上の女性の一人暮らしは、2人に1人以上が貧困の状態に置かれている。

家計調査年報(2017年)によると、無職の高齢者世帯が得る収入の平均は月額で12万2千円、年換算で147万円となっている。その一方で、勤労している高齢者世帯の平均貯蓄額は70歳以上で2385万円、60代で2382万円と、現役世代に比べて圧倒的に高く、40代の2倍以上となっている。つまり高齢者世帯になればなるほど、貧富の格差が拡大しているという現実がある。
 さてさて我が老後資金は、本当に大丈夫か。正直いって現実に目を向けるのが怖い。(2020.1.12)
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2020年01月09日

【’19読書回顧─私のいちおし】 地方に生きる人々の確かな姿を掬いだす=南陀楼綾繁(ライター)

南陀楼綾繁.jpg 
 この数年、地方に出かける機会が多く、地方をテーマにした本に目が行く。山本志乃『「市」に立つ 定期市の民俗誌』(創元社)もその一冊だ。
 著者は大学院生のとき、千葉県大多喜町の朝市に通い、調査を行った。その後、30年にわたり各地の定期市を訪れ、売り手や客など市に関わる人たちの話を聞いてきた。高知の市でサカキとシキビだけを商う、いごっそう(頑固者)の男性。東北各地の市を回ってコンブを商う夫婦。彼らの生き生きとした言葉が書き留められている。
 著者は市を「他者との関わりのなかで社会の成員として生きていく、その基本的な知恵をさずかる」場だとする。
 一方、瀬尾夏美『あわいゆくころ 陸前高田、震災後を生きる』(晶文社)は、大きな力によって否応なく共同体という場が壊滅した後の物語だ。著者は震災後の3年間、陸前高田で暮らしながら、地元の人たちの話を聞いてきた。
 土地のかさ上げによって、復興したように見える町に対して、地元の人たちが抱える複雑な「あわいゆく」感情を、著者は必死にすくい上げようとする。
 藤井聡子『どこにでもあるどこかになる前に。 富山見聞逡巡記』(里山社)は、東京での夢やぶれて富山に戻ってきた著者が地元での「居場所」を求めてもがく奮闘記。
 著者は富山で、世間の物差しにまどわされない人たちに出会う。しかし、北陸新幹線の開通によって、町は地ならしされたように平坦な風景になっていく。そのことをなげく著者に対して、酔っ払いの友人が「場所がなくなっても、人さえいればなんとかなる」と言う。すでに日本中が「どこにでもあるどこか」になりつつあるが、自分がどんな場所にしたいという思いがあれば、何かが変わるかもしれない。
地方における「人」と「場」を描いた点で、この3冊が特に心に残った。
「どこにでもあるどこかになる前に。」.jpg
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2020年01月05日

【今週の風考計】1.5─トランプ大統領の無謀なイラン先制攻撃

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年末年始、子供や孫に囲まれ、年越しそばを啜り、「おせち」に舌鼓を打ちながら、若い世代の息吹を感じとらせてもらった。

年末はNHK紅白歌合戦、小中学生5人組ユニット・Foorinが “パプリカダンス”に合わせて歌いだすと、小学1年の孫も歌いつつノリノリでステップを踏み始める。知らなかったのが恥ずかしい。いま2020年応援歌として、<パプリカ花が咲いたら…種をまこう…ハレルーヤ…この指とまれ>と、ダンスと共に大ブームであるのが分かった。
その後に続く歌唱も初めて聴くものばかり。半ば頃になって、これも初めて耳にする「白日」の歌唱に釘づけになった。ラフな服装だが熱のこもった裏声を響かせる。テレビ画面の下に載る<時には誰かを…傷つけてしまったり…後悔ばかりの人生だ…降りしきる雪よ、全てを包み込んでくれ…>の歌詞を追う。
 何か琴線に触れる情感とシンパシーが交錯しつつ聴き入る。脇で40歳になった息子が、4人組バンド「King Gnu」の大ヒット曲だという。
後で調べてみると、「King Gnu」は東京芸大出身の4人で構成され、1年前にメジャーデビューしたばかりだ。「白日」は配信限定のシングルだが、すでに再生回数は1億回を突破している。この15日に、初CD「ceremony」 (アリオラ・ジャパン)が発売される。待ち遠しい。年始はスポーツ観戦にふけった。孫とのチャンネル争いも忙しかった。

さて、その間、IRカジノ汚職で自民党議員が逮捕され、他にも特捜部から事情聴取されている政治家5人、さらに疑われる政治家は15人ともいわれる。強行採決までして成立させた安倍政権の目玉政策が、ワイロまみれだったとは呆れはてる。
さらに新年3日、トランプ大統領の命令で、米軍はイラクの首都バグダッドを空爆し、隣国のイラン革命防衛隊「コッズ部隊」を率いるガセム・ソレイマニ司令官を殺害した。イラクの主権すら侵害する前代未聞の作戦は、中東地域に深刻で危険な事態を生み出し、戦争への導火線に火を近づける無謀な挑発となった。
イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい復讐」に言及し、国内では3日、各地で総勢10万人が「米国に死を!」と叫んで司令官の殺害を非難し、反米デモが広がっている。
 米国は、昨年12月末に約750人の米部隊を増派したが、それに加え、4日には3500人の部隊を追加増派し、イランの52か所の重要施設を爆撃すると脅す。これに対抗するイランは、すぐにでもホルムズ海峡の封鎖に踏み切ることも視野に入るだろう。
 またイラン近隣諸国も、一斉に「犯罪的な米国の攻撃」を非難し始めている。湾岸諸国の米軍基地やホルムズ海峡を航行する石油タンカーや貨物船への攻撃が始まる可能性すらある。

だが日本の安倍首相は、この間、フィットネスクラブ通いと映画鑑賞と4日で4回のゴルフ三昧に興じていた。あまつさえイランに対する米国の先制攻撃について一言も言及せず、自衛隊の中東派遣がもたらす深刻な事態への対応にも触れない。
 安倍首相はイランのハメネイ師やロウハニ大統領と昨年6月・12月に会談して、「イランの最高指導者とサシで話せる関係を築いた」と、米国・イランの仲を取り持つ日本の外交を誇っていたが、トランプ大統領に今回の暴挙を諫める覚悟はあるのか。1月中旬の中東訪問は、逆に手痛いしっぺ返しを食らう公算は大きい。(2020/1/5)
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2019年12月31日

ワンテーマをずっと追求 フリーランスライター・畠山さん=橋詰雅博

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 「広報担当者から『あなたは誰ですか』と聞かれて、フリーランスライターと答えてもラチが明かないときは、『日本国民です』と言います。これキラー・フレーズ≠ナすよ」――フリーランスライターの畠山理仁さん(46)は大まじめにこう言った。 
12月11日のジャーナリスト講座「フリーランスの世界―その利点と難しさ」は、笑いと驚きが混じるちょっと愉快なJ講座だった。
勤め人経験ない
 講師の畠山さんは早稲田大学第一文学部在学中から雑誌などに原稿を書いてきた。勤め人の経験はなく、26年間もフリーでライター活動を続けている。 
注力するテーマは政治家と選挙だ。とりわけ泡沫候補者≠精力的に取材。大手メディアから無視され、誰も関心を持たないからだ。勝ち目がなくても実現したい政策を訴えたくて出馬する泡沫を畠山さんは無頼系独立候補≠ニ呼ぶ。約20年間のその独自の戦いをまとめた著書「黙殺 報じられない無頼系独立候補≠スちの戦い」(集英社)は、2017年開高健ノンフィクション賞を受賞した。
 畠山さんはフリーランスの利点をこう挙げた。
・個人事業主だから上司も面倒な部下もいない
・毎日満員電車に乗らなくて済む
・嫌な仕事は断れる
・自分の興味や関心で仕事ができる
畠山さんは「興味あるテーマを追い続けられるのが最大の利点」と言う。畠山さん場合、そのテーマは無頼系独立候補者だ。
「どの候補者もインパクトがあり、政治を真剣に考えている人が多い。よく『選挙に出れば』と言われるが、取材する方がはるかに面白い」(畠山さん)。
アルバイトも
 一方、不利な点は何か。
・会社の看板がない
・相手から信用されない
・潜在的無職
・お金のことが心配
 畠山さんは「やはり経済的に苦しい。ライターの仕事のほかに掃除や引っ越しの手伝い、エキストラなどのアルバイトもやっています。ノンフィクション賞の賞金300万円は借金の返済であっという間に消えてしまった」と話す。
 とはいえ落ち込んではいられない。
「後ろ向きの考えになったら精神的に参ってしまう。好きな仕事をやっていることを忘れないように心掛けています」(畠山さん)
 フリーランスの世界は厳しい。しかし、これと思ったテーマを長く深く取材ができる。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月30日

アマゾン「ひとでなし」企業だ 秘密主義、労働者酷使、税金逃れ、潜入ルポ・横田増生さん講演=土居秀夫

出版部会では、あらゆる分野の支配を狙うアマゾンの実像を知ろうと、流通現場への潜入ルポを執筆・刊行した横田増生さんを講師に招き、「『amazon帝国』の現場を撃つ―いま何が起きているか」と題した講演会を11月22日、都内で開いた。
5人死んでいる
 横田さんがアマゾンの小田原流通センターに作業員として再度の潜入を果たしたのは2017年。02年の潜入時と比べ、東京ドーム4つ分というセンターの巨大化と、かつては本が中心だった商品の多様化に驚かされたが、何よりも労働者管理の徹底が凄まじかった。
 商品を棚から抜き取るピッキング作業にもハンディスキャナーが使われるようになって、各人の作業効率が記録・公表され、労働者を追い立てる。しかしいまだに手作業が中心で、自ら計測した横田さんは、センター内を一日20qも歩いたという。
 小田原センターでは13年以降、5人が死亡している。人が倒れても、現場から119番通報ができない。アルバイト作業員から上の社員まで情報が伝わるのに時間がかかって、手遅れになるのだ。秘密主義のアマゾンは、労働者の死亡について一切語らない。横田さんは自身の潜入経験から、ユニクロは「ろくでなし」だが、アマゾンは「ひとでなし」だと言い切った。
世界3位の市場
 イギリスでは11年、議会でアマゾン問題の公聴会が開かれた。以来、サンデーミラー紙やBBCなどが毎年のように潜入取材を行っているが、日本では自ら取材するマスメディアはない。今やあらゆる商品を扱うアマゾンにとって、日本はアメリカ、ドイツに次ぐ世界3位の市場だが、政治家も含めてものを言う人が少ないのはおかしい、と横田さんは訴えた。
 アマゾンの最大の問題のひとつが租税回避(タックスヘイブン)だ。創業者のジェフ・ベゾス氏は、創業前、アメリカ先住民居住地に本社を置いて税逃れを企てるなど、その手法は一貫している。いくつもの州では売上税をめぐる裁判を起こされ、アマゾンは敗訴した。とはいえ、アマゾンジャパンが日本で払った法人税は14年の10億円のみ。書籍だけでも2000億円近い売り上げがあるので、限りなく違法に近い状態だ。
狙われる出版界
 アマゾンは送料無料のプライム会員制、学生割引などで書籍の再販売価格維持制度を無視している。それだけでなく、中小出版社に対し、好条件の直接取引を持ちかけるが、最終的には本来書店の取り分であった価格の22%を40%にするなど、アマゾンが最も利益を得ることになる。これに反旗を翻すどころか、出版社の多くはアマゾンに対して口をつぐんでいると、横田さんは指摘した。
 講演の終わりに、ドイツのアマゾンで労働組合が結成され、ライプチヒでは1500人中700人まで組織したこと、組合員の増加に伴い時給が上がったことを紹介。労働者軽視を止めさせるには労働組合が必要だと、横田さんは強調した。そして、大手メディアがアマゾンの租税回避や労働の実態をもっと取り上げるべきだし、政官の監視と指導が欠かせないと締めくくった。
 講演後の質疑では、アマゾンの消費税の支払い方への疑問やフェイクレビュー、売り上げの半分以上を占めるマーケットプレイスの問題などが取り上げられ、充実した議論になった。 
土居秀夫
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号

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2019年12月29日

【今週の風考計】12.29─見過ごせない中国の人権弾圧と覇権主義

★今年を振り返る各種<10大ニュース>、そこには天皇陛下即位・令和改元、ラクビーW杯・日本ベスト8、消費税10%、などの項目が上位に並ぶ。
 だが「徴用工」問題で日韓関係が悪化した事態こそ、トップにおいてよい重大なニュースだ。いまだに解決しないのも、日本が朝鮮を侵略し、「徴用工」として韓国人労働者を強制的に働かせてきた「加害責任」に、安倍政権が向き合わないことに根源がある。

★また隣の中国で起きている事態も、見過ごしてはならない。今年は中華人民共和国が誕生して70年(10/1)、チベット民衆が中国の支配に抵抗して蜂起した「チベット動乱」から60年(3/10)、中国の学生・市民の民主化要求を武力弾圧した「天安門事件」から30年(6/4)。
 重大な出来事が起きた銘記すべき年なのに、中国政府は、中国辺境地域のチベット族やウイグル人、そして香港の学生や市民への弾圧を、今もなお続けている。
★新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人住民が、中国当局の手で強制収容所に入れられていると、国連は懸念を強めている。「香港問題」への中国の介入も、6月に起きた200万人・平和デモの当初から、「組織的暴動」とレッテルを貼って抑圧のうえ、さらに丸腰の若者に向かって実弾を撃つまでに至った。これを習近平国家主席の督励のもとで実行している。まさに人権弾圧そのもの。
★日本が実効支配している尖閣諸島の周辺海域では、中国公船による領海侵入など延べ1053隻、去年の1・7倍の過去最多。威嚇による現状変更は海洋法違反だ。中国の覇権主義は露骨さを増している。そこへ習近平主席の来春「国賓訪日」が上積みされれば、どうなるか。過去にも中国で天皇陛下の政治利用がなされた歴史を踏まえれば、手放しで喜べるものではない。

★台風や火災による被害・文化財の消失も記憶しておきたい。発生した台風は29個に及ぶが、中でも台風19号は、東日本および東北地方に記録的な豪雨をもたらした。7県71河川の128箇所で堤防が決壊した。
 また10月31日、沖縄・首里城から出火、正殿など計8棟が焼損した。政府は再建に全力を挙げる方針だが、このバーターに辺野古基地埋め立ての加速を強いるのはゴメンこうむる。
★パリのノートルダム大聖堂も、4月15日夕から16日朝にかけて発生した大規模な火災で、高さ約90メートルの尖塔が焼失。幸いにも大聖堂正面の鐘楼は焼け残り、聖遺物「キリストのいばらの冠」は無事だった。現在も修復作業が続き、恒例のクリスマスミサは、216年ぶりに中止。

★その代わり、ギヨーム・ド・マショー作曲「ノートルダム・ミサ曲」に耳を傾ける。9月に発売されたCDは、ベルギーのシュメルツァーが率いる古楽集団グランドラヴォアの歌唱演奏(Glossa/PGCD-P32110)。<聖母マリア>を讃える荘厳な歌声に浸りながら除夜を迎えたい。皆さん、よいお年をお迎えください。(2019/12/29)
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2019年12月28日

【焦点】 政府推進の5G 人体への悪影響ひそむ

 国家安全保障会議(議長・安倍晋三首相)の事務局を担う国家安全保障局(局長・北村滋前内閣情報官)に来年4月に経済政策を立案する「経済班」が新設される。米国家経済会議(NEC)にならったこの日本版NEC≠ヘ、経済的手段を介して国の安全保障を追求する「経済安保」がその役割だという。手がける目玉政策が次世代の高速移動通信方式「5(ファイブ)G」の普及と促進だ。
 5Gは、超高速、大容量、低遅延、多接続が特長とされる。AI(人工知能)や自動走行車、ロボットなどにつなげて実用化すれば、あらゆるモノがネットでつながるIoTが実現されて日常生活が飛躍的に便利になると喧伝されている。経済班が練った計画をベースに安倍晋三政権は来春実用化サービス開始に向けて企業が5G投資を前倒しできるよう税制優遇支援策を打ち出し通信網の拡充を早急に実現しようとしている。ここには5G関連機器で先行する中国ファーウェイの市場への進出を阻む狙いがある。これはトランプ米政権の意向も反映されている。
 しかし5Gには人体への悪影響が懸念される。周波数が現在のスマホに用いられる4G(3、6GHz以下)よりも高く、最高が28GHzだ。今でも携帯電話などの電磁波による頭痛やめまい、睡眠障害など「電磁波過敏症」が増えている。日本では人口の3〜6%が電磁波過敏症と言われる。その上、電磁波は周波数が高くなるほど波長が短いので、建物などに阻まれ、遠くまで届きにくい。このため5G基地局を約100bごとに設置が必要。東京では、都有施設、公園、電柱、地下鉄、バス停などに設けられる。
 そうなると電磁波被曝量が著しく増える。「健康への恐れがある」とベルギーのブリュッセル首都圏地域やスイスの4州などでは5G導入の一時停止を決めた。
 日本でも市民団体が基地局設置の反対運動を始めている。5Gのウラには健康を害する危険リスクが潜む。
 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年12月25日号
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2019年12月22日

【今週の風考計】12.22─伊藤詩織さん勝訴が問いかける重い内容

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、性的暴行を受けたとして元TBS記者・山口敬之氏を訴えた裁判で、18日、東京地裁は「酒を飲んで意識を失った伊藤氏に対し、合意のないまま性行為に及んだ」と認め、330万円の賠償を命じる画期的な判決を言い渡した。
地裁は、タクシー運転手やホテルドアマンの証言、そしてホテルの監視カメラの映像などを検証し、山口氏の「性行為には合意があった」とする主張を退け、「重要部分の陳述には不合理な変遷があるとし、合意のないまま本件行為に及んだ事実、意識を回復して性行為を拒絶したあとも体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実は認めることができる」と認定した。
さらに「伊藤氏は性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況の改善につながると考え、自身の体験を明らかにした」と述べ、その行動には公益を図る目的があったと認め、山口氏が名誉毀損を訴え1億3千万の賠償金を求めるスラップ訴訟も退けた。

だが、こともあろうに判決の翌日、加害者の山口氏は日本外国特派員協会で記者会見を開き、内外からの記者50人近くが出席した場で、即日控訴した理由について、「伊藤さんの発言はすべて嘘、本当の性犯罪被害者は会見で笑ったりしない」などのトンデモない発言を弄した。
会見の司会は花田紀凱・「月刊Hanada」編集長、同席者は弁護士に加え小川榮太郎氏。このメンバーは<安倍応援団>、伊藤さんバッシングを繰り広げてきた面々だ。
そもそも、山口氏はTBS時代から“安倍の太鼓持ち”と呼ばれるほど、安倍首相と個人的に親しく、自分の結婚披露宴に安倍首相を招き、また2016年参院選挙の1か月前には、山口敬之『総理』(幻冬舎)を刊行してヨイショ!

許せないのは伊藤さんが、勇気をふるって告発すると、山口氏に同調するネトウヨたちが「あなたにも落ち度があったとか、ハニートラップとか、枕営業とか」などとバッシングし、セカンドレイプで二重三重に傷つけた行為である。この責任はどうとるのか。
 思いおこしてほしい。今から4年半前、当時TBSのワシントン支局長だった49歳の山口氏が、就職活動のアドバイスを求め訪問してきた26歳の伊藤さんを、酒に酔わせて強姦するなど、社会常識からみても許されることではない。
ネット上には、伊藤さんを擁護し、判決を支持する痛烈な書き込みがあふれている。
「性被害にあったら、暗く俯いて隅っこで暮らしとけ、とでも言いたいのか? じゃあ山口氏は、妻子がいる50代の男性なのに20代女性と性的な関係を持った人らしく、申し訳なさそうな顔していてくださいよ。妻子側から見たら、合意があろうがなかろうが、あなたのやったことは不貞行為で妻子に対する裏切りであることに間違いないでしょ」

さて伊藤さんは、この判決が出る前に、準強姦容疑で刑事告訴したにも関わらず、山口氏の逮捕状が取り消されたり、不起訴処分にされたりしている。その背景には、捜査への圧力があったのではないかという、疑惑は今なお消えない。
実際、「週刊新潮」が山口氏へ送った<伊藤問題>での質問メールに、山口氏が<北村さま、週刊新潮より質問状が来ました。 伊藤の件です。取り急ぎ転送します。 山口敬之>と、誤送信を「週刊新潮」編集部にしている。
この「北村」とは誰か。山口氏は「弁護士だった父親の知人の北村さん」と釈明しているが、内閣情報調査室のトップだった北村滋内閣情報官(現・国家安全保障局長)ではないのか、彼に取材の対応を相談したのではないか、今や確実な筋書きだという。ああ、山口さん!(2019/12/22)

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2019年12月19日

【おすすめ本】安田純平+危険地報道を考えるジャーナリストの会『自己検証・危険地報道』─「危険な取材」が担う役割と教訓=鵜塚健(毎日新聞)

 2014年4月、シリアで拘束されていた4人のフランス人ジャーナリストを空港で出迎えたのは、当時のオランド大統領だった。だが日本では必ず「自己責任論」が出て、政府がジャーナリストに旅券返納を命じるなど介入の動きが目立つ。
「危険を冒さないと得られないような情報はいらない」「外国メディアの情報で十分」との声も少なくないのが現実だ。

 フリージャーナリスト・安田純平さんが3年4カ月、シリアで武装勢力に拘束後、解放されて1年が経過。本書で安田さんが自身の取材の歩みを詳細に報告。また中東や北朝鮮、アフリカなどの現場で取材するフリーや元新聞記者で作る「危険地報道を考えるジャーナリストの会」のメンバーが、今回の拘束事案での課題と今後の教訓を徹底的に討議。
 熱量の高い議論の裏には、遠い国の現実を伝える重要性、ジャーナリストの役割が軽視される危機感と苦悩がある。

 2015年にシリアでフリーの後藤健二さんと知人の湯川遙菜さんが殺害された直後、世論調査の内閣支持率は上昇した。2004年にイラクで旅行者の香田証生さんが拘束、殺害された際にも、政府の姿勢を巡っての議論は起きなかった。
 会のメンバー、綿井健陽氏は「彼らを処刑した実行犯は過激派組織だが、それを容認したのは誰だったか」と命題を投げかける。危険地報道というテーマを通じて問うているのは、政府やメディアのあり方だけでなく、社会を構成する私たち一人一人の意識だ。(集英社新書860円)
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2019年12月15日

【今週の風考計】12.15─自衛隊の中東派遣etc.トンデモ閣議決定

国会が閉幕したとたん、トンデモ閣議決定が頻発している。まずは10日の閣議決定、その中身は噴飯ものだ。「反社会的勢力の定義」について「その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであり、限定的・統一的な定義は困難だ」とする答弁書を閣議決定したのだ。
 安倍総理主催の「桜を見る会」の参加者をめぐる疑惑を隠すため、ついに政府指針まで捻じ曲げたのである。

12年前の第1次安倍政権時に、政府の<犯罪対策閣僚会議幹事会>が決めた指針には、「反社会的勢力」とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である」と明確に定義している。
 この定義をもとに金融庁は各金融機関や業界団体に「反社データベース」の充実などを求め、また芸能プロダクションを含め民間企業でも反社会的勢力との関係遮断に、懸命に取り組んできた。
 定義が曖昧になってしまえば、「反社」勢力が復活・伸長するだけでなく、政府に都合の悪い人物や団体が、「反社」勢力に仕立て上げられる危険だって、ありうるのだ。

20日には、2020年度予算案102兆円を閣議決定する。そのうち防衛関係費は、8年連続して増額の5兆3223億円と過去最大。
 日本主導の下で自衛隊F2戦闘機の後継機を開発する費用100億円、地上配備型迎撃ミサイルパトリオット改修費に加え、最新鋭ステルス戦闘機F35の取得費、宇宙やサイバー空間などの新領域の防衛力強化などへの対策費、米国からの装備品の調達費なども盛り込まれている。国会に上程するからいいというものではない。
翌週の27日、海上自衛隊の中東派兵を、国会の審議にもかけず、閣議決定に持ち込む算段である。中東海域へ自衛隊270人、海上自衛隊の護衛艦1隻の派遣に加え、ジブチに駐留しているP3C哨戒機1機を転用する。派遣海域はオマーン湾、アラビア海北部の公海、バベルマンデブ海峡の東側の公海が中心になる。
 来年1月下旬にも活動が本格化する米国主導の有志連合「センチネル作戦」に対応して、情報収集などでトランプ大統領にイイ顔するためだ。もし自衛隊員や民間人の命にかかわる不測の事態が起きた場合には、海上警備行動を発令し、日本関連船舶の保護も想定するという。
 いくら派遣期限1年と区切っても、 憲法9条を無視し集団的自衛権の行使、実戦協力へ踏み込む閣議決定の無謀さは変わらない。

閣議決定とは何ぞや。国政に関する重要事項に関して、内閣の意思決定が必要なものについて、全閣僚の賛成を得て政府の方針を決定する手続きである。
 だが待てよ、国会や両院での委員会の招集は拒否して審議を妨げ、国会が閉会すれば閣議決定で事を進める、こんな手法がまかり通っていいのか。三権分立が踏みにじられ、内閣が国会や司法を抑え込む官邸政治の横暴は極まりない。
首相官邸内にある閣議室は広さ110u、そこにある5.2メートルの円卓を、閣僚が取り囲むように着席するという。決定文書に花押を記す墨汁入り硯と細筆が用意されている。会議は非公開だが、その議事録は5年前から作成が義務づけられている。
 10日に閣議決定した<「反社」勢力の定義変更の文書>に、一人でも「おかしい」と異議を唱える閣僚は、いなかったのか。警察・公安を統べる国務大臣、また下駄の雪と揶揄される公明党の閣僚は、どんな発言をし、どんな顔で署名・花押を認めたのだろうか。議事録の公開が待たれる。(2019/12/15)
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2019年12月12日

【おすすめ本】古賀 誠『憲法九条は世界遺産』─自民党の重鎮が訴える「九条の改正だけは許さない」=五十嵐仁(法政大学名誉教授)

 いささかの感慨をもって本書を読んだ。まさか、自民党重鎮の著作を書評することになるとは思わなかったからだ。それも批判するのではなく評価する立場で。講演を基にした本書は示唆に富み、憲法9条の意義と著者の思い入れなどが、余すところなく語られている。
「安倍総理の努力は評価をしなければならない」という点には同意できないが、そういう立場だからこそ、「少しでも憲法九条改正につながるようなことは針の穴程度でもやってはダメ」という主張には説得力がある。

 父はフィリピンのレイテ島で戦死し、未亡人となった母は行商などで働きづめだった。このような未亡人や戦争犠牲者のためにも「再び戦争を繰り返してはならないと思い」政治を志した。
「だからこそ、私の一番大事な仕事は、わが国が永久に平和であるために努力すること」で、「憲法九条については一切改正してはダメだというのが私の政治活動の原点」なのである。
 「平和の国として不戦を貫くことができ」たのは「憲法九条の力であり、だからこそ憲法九条は世界遺産なのです。これはどんなことがあっても次の世代につないでいかなければならない」「そう簡単に、この憲法九条を改正する議論をやってもらっては困るし、やるべきではない」などの言葉には聞くべき点が多い。

なによりも自民党など9条改憲に躍起となっている人々に一読を薦めたい。著者の言うように「平和について言うならばみんな一緒」なのだから。(かもがわ出版1000円)
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2019年12月08日

【今週の風考計】12.8─いま鋭く問われている日本の加害責任

★78年前の12月8日、日本は太平洋戦争に突入した。それ以前からの中国侵略を含め、アジア諸地域や南洋諸島への戦争拡大は15年に及ぶ。もたらした戦争被害はアジア諸国で2000万人以上、国内でも310万人を超えるといわれる。

★この6日、ドイツのメルケル首相は、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所を訪問。来年1月27日にソ連軍による解放75年を迎えるにあたり、数多くのユダヤ人を銃殺した「死の壁」といわれる塀の前で献花し、黙とうした。
★さらにメルケル首相は、数多くの犠牲者の写真が掲げられた部屋で演説し、アウシュビッツで「ドイツ人が犯した蛮行を、深く恥じる」と謝罪した。人種差別や不寛容が広がる現代こそ、「反ユダヤ主義と闘うためには、絶滅収容所の歴史が共有され、語られる必要がある」と指摘。アウシュビッツは「この記憶を生かし続けることを要求している」と述べた。
 メルケル首相が訪問する前日の5日、ドイツ政府は同収容所の関連財団へ新たに6000万ユーロ(約72億円)を寄付すると発表した。

★それに引き換え、日本の安倍首相はどうか。南京事件、日本軍「慰安婦」問題、中国からの強制連行・朝鮮半島からの「徴用工」問題などなど、日本軍の加害責任や反省に触れた真摯な言葉もなければ、誠意ある実践もない。いまや贖罪意識すらないといってよい。
★とりわけ韓国の「徴用工」問題について、「被害者個人の請求権は存在している」と公式に認められている以上、「非人道的労働に対する慰謝料」として、日本政府・企業は誠実に向きあい、支払う努力をするのは当たり前ではないか。
★なぜしないのか。そこには安倍首相自らが、A級戦犯合祀の靖国神社へ玉ぐし料・真榊の奉納を続け、過去の侵略戦争と植民地支配に対する責任を放棄するどころか、逆に正当化する立場に固執し、ネトウヨや右派人脈が煽る<反中嫌韓>の露骨なヘイトに同調しているからに他ならない。メルケル首相の態度や覚悟、政策と比べ、天と地の開きだ。

★首相在任2900日を超す、憲政史上最長となった安倍首相、この約8年の間、中国や韓国の戦争被害者を記念する施設に訪問したことがあるだろうか。例えば中国の平頂山殉難記念館や韓国・天安市にある独立記念館はどうだろうか。
★前者は日本軍が中国・撫順炭鉱近くの平頂山の住民3000人を機銃掃射により集団虐殺、村を焼き払った事件を記念する。後者は日本軍が韓国人にした拷問や慰安婦の話など、韓国が自由と独立を勝ち取る闘いの歴史を記録した記念館だ。訪問したという話は聞かない。

★ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、先月24日、長崎・広島の両被爆地を訪問し、核の廃絶を求めるメッセージを発した。
 米国のオバマ大統領も、3年前、被爆地・広島を訪れ、原爆資料館を見学した後、原爆死没者慰霊碑に献花した。その場で所感を読みあげ、「核兵器なき世界」への決意を強調した。
★ちなみに原爆資料館や平和記念公園を訪れた世界の大統領や首相は、2009年から2019年の10年間で19人、外国からの賓客や要人は598人にのぼる。安倍首相も、海外に行くのなら、もっともっとアジア諸国の戦争被害者を祀る施設を行脚したら良い。(2019/12/8)
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2019年12月05日

【おすすめ本】横田増生『潜入ルポ amazon帝国』─秘密だらけの巨大企業アマゾン、隠された“不都合な真実”を暴く=一本麻衣(ライター)

 翌日配送は当たり前。動画配信サービスやAIスピーカーなど、あらゆる場面で私たちの生活の一部となったアマゾン。
 快適なサービスの裏で何が行われているか。アマゾンの実態を多方面から炙りだした本著は、著者自ら小田原の物流センターに潜入し、そこでの鮮烈な描写から始まる。

 『ユニクロ潜入一年』など、“企業にもっとも嫌われるジャーナリスト”として知られる著者のアマゾン潜入取材は、今回が15年ぶり2度目。作業員が使用するハンディ端末には、「次のピッキングまであと何秒」と作業の所要時間が表示され、常に追い立てられる。
 1日20qを歩く重労働は15年前と変わらない。倉庫の完全機械化が未だ実現しない中、作業員は逐一管理され、限界まで仕事に駆り立てられる。
衝撃的なのは、物流センター内で5件の死亡事故が発生していた。にもかかわらず、未公表かつメディアにも報じられなかったことだ。ニューヨークタイムズ紙のコラムニストが「最も秘密主義のテクノロジー企業」と評した通り、この会社の不都合な真実は、なかなか表に出てこない。

 この他、アマゾンの市場における弱肉強食的な商法、税逃れの企業体質など、多角的な分析で明らかにし、世界から厳しい視線が注がれていることを指摘する。
 その上で著者は、批判精神の乏しい日本の消費者に警鐘を鳴らす。何も疑わずキチンと翌日配送される商品を注文することが、実は何を意味するのか。アマゾンの恩恵に授かる全国民が知るべきだろう。(小学館1700円)
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2019年12月01日

【今週の風考計】12.1─ほっかぶりの安倍首相に桜が泣いている

先週末、遅まきながら「桜を見る会」に夫婦で参加した。新宿御苑のそれではない。旅行会社が企画した観光ツアーに組み込まれていたもの。もちろん自費で参加。名づけて<小原の四季桜を見る会>。場所は愛知県・豊田市の北東、岐阜県との県境近くにある小原地区、そこに咲く四季桜を堪能するのが目的。
約1万本の四季桜が、国道419号線に沿って山の斜面を淡くピンクに、光の加減では白く、びっしりと彩る。しかもその斜面に、ぽんぽんと絵筆を挿すように、色づいた紅葉が赤のマダラ模様をつけていく。さらに銀杏の大木が、枝の黄葉を横に広げて、アクセントをつける。その彩りの見事さ。

「四季桜公園」では店も出て、ふるさと自慢のグルメや特産品が並ぶ。五平餅の匂いが食欲をそそる。興味しんしんで食べたのが<へぼ飯>、蜂の子を炊き込んだご飯といったら良いか、醤油味のきいた、ほのかに甘みが広がる不思議な味だ。
ほかにも、きわめて細長い天然自然薯やアユの干物を見ると買いたくなる。だが、なんといっても驚いたのは<愛宕ナシ>、そのジャンボぶりといったらない。1個で1キロはあるだろう。値段も1300円と高い。スライスしたのを試食すると、果汁が多くシャキシャキして歯切れがよい。重いのも構わず2個購入した。

桜を堪能したら、次は紅葉となる。おなじ観光バスで香嵐渓に向かった。足助町を七曲りにくねって流れる巴川に沿い、まるで山が燃えるように紅葉で包まれる。巴橋、待月橋を経て吊り橋の香蘭橋まで北側の道は紅葉のトンネルが続く。
手にした観光マップを見ながら中ほどにある山門をくぐって香積寺へと歩く。応永34 (1427) 年に白峰禅師によって開創された曹洞宗の古刹。一帯はもみじや杉木立が生い茂り、もみじの開祖・三栄和尚が植えたとされる杉も、いまだ2本残っている。
 本堂のわきを回って十六羅漢像や装束塚を見ながら、飯盛山へ足を延ばす。下っては足助八幡宮・足助神社をお参りし、香嵐渓の紅葉に別れを告げた。

さらに下って新城市にある鳳来寺山に向かう。ここも紅葉の名所として名高い。1300年前に利修仙人が開山したと伝わる霊山で、山全体が国の名勝・天然記念物に指定されている。緑の杉木立の間から赤く色づいた広葉樹の葉が光を受けて輝く。
 断崖絶壁・鏡岩の直下にある鳳来寺本堂に到着。ここで放浪の俳人・種田山頭火が16首ほど句を詠んだという。その扁額がある休み処から、奥三河の山々を望む。この山には“声の仏法僧”とも呼ばれる愛知県の県鳥・コノハズクが棲息しているという。

桜・紅葉を満喫し、家に帰ってさっそく、香嵐渓・香積寺の山門から本堂へと続く参道に広がる、鮮やかな紅葉の写真を、わがパソコンのデスクトップの背景に貼りつけた。
 安倍首相が毎回5500万円もの税金を使い、反社会勢力メンバーまで招待し、8回も開催していた「桜を見る会」よりも、ずっとずっと素朴で純心に桜や紅葉を愛でるツアーだった。新宿御苑の桜が泣いている。(2019/12/1)
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2019年11月29日

JCJ12月集会「日韓問題とメディア」8日に開催 岡本厚・金平茂紀氏が講演

韓国での徴用工判決をきっかけに日本政府は輸出規制に踏み切り韓国を追い詰め、日韓が最悪の関係に陥っている。この問題の背後に何があるのか、また日本のメディアは的確に報じているのか。 元「世界」編集長で岩波書店社長・岡本厚さんとTBS「報道特集」キャスター・金平茂紀さんがじっくりと解説します。会場は専修大神田キャンパス5号館561号、資料代は500円(学生と専大教職員無料)問い合わせ先=日本ジャーナリスト会議(JCJ)電話03−3291−6475
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2019年11月28日

【おすすめ本】吉澤文寿編著『歴史認識から見た戦後日韓関係 「1965年体制」の歴史学・政治学的考察』─「徴用工問題」でこじれる日韓関係、その根源を明かした地道な検証=梅田正己(歴史研究者)

 本書は韓国人4人を含む研究者10人が、05年から14年までの裁判闘争で開示された文書を駆使して日韓会談を軸に日韓関係を検証した論文集。
 日韓会談は朝鮮戦争さなかの1952年に始まる。そこで日本側が真っ先に主張したのは、何と植民地支配や戦争動員に対する補償・賠償問題ではなく、日本が韓国に残してきた不動産などの財産請求権であった。

 当然、韓国の対日請求権と真正面からぶつかる。そこで日本側が持ち出したのが日韓両国請求権の「相殺」方式であり「相互放棄」だった。
 会談は第一次、二次とも決裂、第三次で飛び出したのが日本首席代表の「久保田発言」である。「日本も鉄道や港を造ったり、農地を造成したり」有益なことをしたではないかというのだ。
これで会談は5年間の中断となるが、60年代に入って日本は「経済協力」方式で妥協を図る。それを裏付ける外務省の内部文書が新たな開示資料で見つかった。
「早期妥結のためには韓国に何らかの経済協力が不可避だから、過去の償いということではなしに経済協力ないし援助は意義ありと認められる」
 こうして65年6月、基本条約と合わせて締結された請求権協定により、無償で3億ドル、長期低利の貸付で2億ドルを、「日本国の生産物及び日本人の役務」で供与することになったのである。

 したがって同協定の第2条では確かに「両国及び国民間の請求権に関する問題」は「完全かつ最終的に解決された」と書かれているが、植民地支配や戦争動員の補償・賠償問題は日韓会談では終始欠落していた。つまり「歴史認識」は完全に抜け落ちていたのである。
(社会評論社3800円)
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2019年11月26日

【焦点】 フリー置き去り ハラスメント指針案=橋詰雅博

 厚生労働省によると、2018年度に寄せられた個別労働相談のうちパワーハラスメントなどの「いじめ・嫌がらせ」は8万件超に上り過去最多。相談内容別でも25・6%を占めて7年連続トップだ。
 増え続けるハラスメントに関し、正社員より立場が弱いフリーランスの実態を日本俳優連合とMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)フリーランス連絡会、フリーランス協会の3団体が調査し、9月末に公表している。1218人がアンケートに答えた中で具体的なケースはこんな内容だ。
・打ち合わせと称して、ホテルに呼び出されレイプされた(女性40代、映像制作者)
・元大学教授の財団理事長からヒヤリングの場所を日帰りが難しい距離にある別荘を指定された。双方の仕事場が都内にあるのに、毎回、別荘以外では会わないと電話で言われる(女性40代、研究職)
・社長から打ち合わせの後にホテルのバーに連れていかれました。早めに帰ろうとしたら、手を握られました。拒否して帰りましたが、以来、それまでべた褒めだった私の原稿をことごとくけなすようになりました(女性20代、脚本家)
・ファックスで送れば自宅でできる仕事なのに、夜中にわざわざ自宅から2時間もかかるオフィスに来るように強要された(女性50代、編集者)
・主催者の自宅で稽古をすると言われて行ったら、お酒を飲まされて性的な行為をさせられた(女性20代、女優)
 問題はこのようなフリーランスが5月に成立したハラスメント規制法の対象外になっていることだ。厚労省が10月末に労働政策審議会に提示した同法指針素案では、企業は注意を払って欲しいにとどまっている。これでは横行するフリーランスを取り巻くハラスメント状況は、一向に改善されないだろう。
 6月に採択されたハラスメント禁止を求める国際労働機関(ILO)条約の基準より緩い指針案は、フリーランスを置き去りにしようとしている。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年11月25日号
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2019年11月24日

【今週の風考計】11.24─またも沖縄に配備の米軍弾道ミサイル!

先週、沖縄県宮古島市の海岸で、「ウランペレット(核燃料棒)」と記されたプラスチック製の筒状容器が発見された。すぐ自衛隊が出動し放射線量を測定したが検知されなかった。ホッと一安心。
 その後、メルカリに「教育用燃料見本キット」が出品されていて、それと類似しているのが分かった。イタズラでやったとしたらトンデモナイことだ。
ただでさえ沖縄には、返還時の「核抜き」合意が反故にされ、米軍の「核弾頭」貯蔵への疑念も、いまだに払拭されていない。
 あまつさえ米国と中国との緊張は続き、この2、3年のうちに日本が実効支配している尖閣諸島付近で、米中間での艦船攻撃など、紛争が起きると想定されている。そのため米国は沖縄の米軍基地を強化する対策を急いでいると、琉球新報(10/3付)が報じている。その概要について補足を加え紹介しよう。

この8月、中距離核戦力(INF)廃棄条約が失効した。その結果、中距離弾道ミサイルの開発・製造禁止のタガがなくなり、米中ロによる開発競争が始まった。いま新たな緊張状態が生まれている。とくに米国は2020年末から21年にかけて、新鋭ミサイルを沖縄や北海道など日本本土に大量配備する計画を立てている。
米国が開発中の弾道および巡航ミサイルには、車載移動式ミサイルと潜水艦搭載用新型トマホークがある。いずれも「核弾頭」装備が可能だ。威力は10〜50キロトン、最低でも広島に投下された原爆12キロトン級の威力がある。発射すれば数分で目標に到達し、迎撃は困難を極める。純然たる先制攻撃用の兵器だ。
こうした能力がある地上発射型の中距離弾道ミサイルを日本に配備するとなったら、すでにPAC3が配備されている嘉手納基地はうってつけ、すぐにも配備したいのが本音だ。さらには新型トマホーク搭載の原子力潜水艦も、沖縄うるま市・ホワイトビーチに寄港させたいのは明らかだ。

先月18日、玉城デニー沖縄県知事は、米軍高官に対して、沖縄への新型ミサイル配備について問い質したところ、「開発にまだ時間がかかり、どこに配備するか発表できる段階ではない」と、述べたという。
 だが、沖縄へのオスプレイ配備の際には、日米両政府は直前まで秘匿していた経緯があり、どこまで信用できるか油断はできない。
すでに日本の陸上自衛隊は、奄美大島に地対艦ミサイルを配備し、さらに宮古島や石垣島でも導入を進め、米軍の作戦に主体的に関与している。ますます米国の核弾頭搭載ミサイルによって引き起こされる「核戦争」に巻き込まれる危険が増す。

沖縄だけではない。近いうちにイージス・アショアの配備が予定される秋田市・新屋演習場、山口県・むつみ演習場にも中距離弾道ミサイルが追加配備されるだろう。新型トマホーク搭載の原潜も神奈川県・横須賀、長崎県・佐世保などへ、頻繁に寄港するだろう。
 まさに「日米安保条約」が文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換しかねない事態だ。(2019/11/24)
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2019年11月17日

【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!

◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。

◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
 この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!

◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。

◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
 幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。

◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向けて、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
 まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
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2019年11月15日

【おすすめ本】高遠菜穂子『命に国境はない 紛争地イラクで考える戦争と平和』─静かに続けるイラク支援活動、人間に対する優しさと動かぬ信念=鈴木耕(編集者)

 ああ、こんな人がいるからまだ日本も捨てたもんじゃない…と思わせるような人が少数だけどいる。例えば、最近アフガンから名誉市民権を授与された中村哲医師。自身が被害者であり冤罪被害も受けた松本サリン事件の河野義行さん。90歳を超えてなお沖縄辺野古で米軍基地建設反対のテント小屋に通う島袋文子おばあ。そして本書の著者の高遠菜穂子さん…。
 じわりと胸が熱くなる。自己責任、無鉄砲、無思慮、さらには死ねばよかったとまで、異様なバッシングを受けた「イラク人質事件」(2004年)の当事者だった著者は、だが静かにイラク支援の活動を再開する。その人間に対する優しさと動かぬ信念は、いったいどこから来るのだろう。

 著者の筆致は、悲惨な情景を描いても、とてもやわらかい。見たこと聞いたこと知ったことを、淡々と記述していく。「これがアメリカのいうデモクラシーなのか」「虐殺を行った米軍の主力部隊は沖縄のキャンプ・シュワブから派遣された」「医療者たちは、あらゆる薬、綿、ガーゼ、包帯など全てが足りません、と繰り返す」と、静かに言葉を紡ぐ。
 日本政府による自衛隊派遣に「日本に裏切られた」と激高したイラクの人たちに、著者らは拉致される。親日的だった人たちの、逆に高まる怒り。だがこんなシーンもある。静かに語る著者に、やがて見張りの戦闘員は静かに銃を床に置き「君と友だちになれるだろうか?」著者のイラク支援活動の、これが原点だろう。読んでいて胸が熱くなる…。
 すべての人に薦めたい。(岩波ブックレット620円)
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2019年11月10日

【今週の風考計】11.10─ますます深まる「桜を見る会」への疑惑

大臣の連続辞任に続いて、河井案里・参議院議員が広島県議へ配った現金疑惑など、政治スキャンダルが相次ぐなか、安倍首相が主催する「桜を見る会」への疑惑が浮上した。安倍首相自らが先頭にたち、公的行事・税金を私物化している疑惑である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員が追究して明らかとなった。
「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。

参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。

さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
 「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。
ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
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2019年11月09日

【私のオピニオン】知ってますか、日韓請求権協定の原文=梅田正己(歴史研究者)

 泥沼化した日韓関係の打開に韓国政府が苦慮している。しかし日本政府は「徴用工問題は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み、国と国との約束は守ってほしい」と繰り返すだけだ。
 本当はどうだったのか。
 1965年締結の日韓基本条約の最大の問題点は「1910年8月(韓国併合)以前に日韓間で締結された条約は、もはや無効と確認される」という条項だった。
 日本が併合条約は「合法」と主張したのに対し、韓国は、併合は3年前に軍隊を解体させられた上での強制によるもので「非合法」と主張、結局どちらも自国流に解釈できる玉虫色の条文になったのだった。

 基本条約と同時に締結された請求権協定第一条には、日本は韓国に対し3億ドル相当の「日本国の生産物及び日本人の役務」を供与し、あわせて2億ドル相当の「日本国の生産物及び日本人の役務」を長期低利で貸付ける、となっている。
 一般に無償3億ドル、有償2億ドルといわれるが、実態は日本の国費を使って日本の企業が重化学工業製品と技術者を韓国に提供するというものだった。つまり日本企業の韓国進出である。
 ともあれ、条約・協定は当時の政治的経済的情勢を色濃く反映する妥協の産物だった。金科玉条とはとても言えないのである。
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2019年11月03日

【今週の風考計】11.3─W杯ラグビーの後味と東京五輪の酷暑

先月末の秋晴れの日、東京・調布にある神代植物園のバラを見たあと、深大寺へと散策した。境内に入り「達磨まつり」で有名な元三大師堂や国宝の本堂を拝観し、山門へと辿る途中で、ラグビーのユニホームが飾られた堂宇に目がいった。
にわかラグビー・フアンとなっていた筆者には、興味津々、なんとオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の全員がサインしたユニホームだ。達磨の<七転び八起き>がラグビー精神につながるとの縁で、祈願した際に贈呈されたという。

くしくも翌日、調布にある東京スタジアムで、ニュージーランド対ウェールズの3位決定戦、もうテレビにかじりついた。そして昨日2日、イングランド対南アフリカの決勝戦、テレビの前で「行けー、押せ…」と声が出てしまう。結果はご承知の通り、南アフリカが32−12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たした。
44日間・170万人の観客を動員し、テレビ視聴率は最高53.7%を記録したW杯ラグビー。秋篠宮さまや安倍首相、日本ラグビー協会の名誉会長でもある森喜朗元首相も出席し、大会を締めくくる閉会・表彰式で、後味の悪いシーンが演じられた。
イングランドの選手が2位の銀メダルを首にかけられることを嫌がり、さらには授与された直後に銀メダルを首から外す選手まで続出。<ラグビー発祥の地>の選手たちが、ノーサイド精神を踏みにじる行為に走るとは、内外からブーイングが起きている。

さて東京五輪。組織委員会会長である森喜朗さん、前日の1日、マラソン・競歩の札幌への変更を決定した。絶大なる権限を持つIOCには逆らえず、東京も「合意なき決定」に従った。しかし、森喜朗さん、「日本が世界にウソをつき続けた結果、今回の事態を招いた」という責任は免れない。
JOCがオリンピック招致の際に作った「立候補ファイル」の、「2020年東京大会の理想的な日程」という項目に、こう書かれている。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉

なんとなんと、日本みずからが蒔いた種なのだ。2013年IOC総会の最終プレゼンでも、福島原発事故問題に触れて、安倍首相は「アンダー・コントロール」との恐るべき言葉を発したが、天気までウソをついていたとは呆れかえる。もう「任命責任」なんて言葉は、取りもしないのに軽々しく言うな。(2019/11/3)
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2019年11月01日

【おすすめ本】森口 豁『紙ハブと呼ばれた男 沖縄言論人 池宮城秀意の反骨』─権力に果敢に噛みついた言論人 その生涯を辿り、沖縄の今を問う=坂巻克巳(元岩波書店編集者)

 沖縄では新聞記者のことを「紙ハブ」と呼ぶ。権力に喰ってかかる毒ヘビ。その呼称がピタリと当てはまる人、池宮城秀意の評伝である。
 戦前、青年期に社会主義思想に傾倒した彼は、東京・八王子の拘置所、さらに沖縄刑務所で三年を過ごした。拘置所ではこぶしを握ってコツコツと壁を叩き、隣りの房の作家・三角寛と「モールス会話」をしたという。

 38歳で召集され、沖縄戦を体験。左足が麻痺し、生涯その不自由を抱えることになった。戦後の活躍の舞台となったのは「琉球新報」だが、同紙誕生の経緯が興味深い。創刊は1945年7月25日。沖縄戦の後、まだ「戦争と平和が同居する」時期に、なんと米軍の支援によって生まれた。第二代社長が瀬長亀次郎で、彼から声がかかり、池宮城は編集局長として就任。
 その後の新聞人としての歩みは、実に波乱に満ちていた。占領軍の干渉との闘い、沖縄人民党の中央委員、第三代の社長…。一時退職、復職を経て再び編集局長、社長などを歴任、祖国復帰、米基地批判などに健筆を揮(ふる)う。

 晩年は老人性痴呆が進み、80歳で老人ホームに入った。夜中、枕元の壁を右手こぶしでコツコツと壁を叩くのを知り、長女は思い当たった。かつて父が独房で用いた通信手段。痴呆により言葉を奪われた彼の体から、その伝心術が噴き出しているのだ、と。胸を打つエピソードではないか。
 その死から30年。新聞・テレビなどを通して長く沖縄報道に携わってきた著者の熱い共感が伝わってくる。
(彩流社2400円)
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2019年10月27日

【今週の風考計】10.27─<ビブリオバトル>で読みたくなった一冊の本

■秋の読書週間が始まった。「本の街」東京・神保町では、ブックフェスティバルや古本祭りなど、数多くのイベントが展開されている。その一つ<大学生によるビブリオバトル>の会場を訪問し、その様子を見学した。
■いま大学生の半分は、1日の読書時間ゼロ、読書習慣がないという。そうした中で大学生バトラー5人が、みんなに読んでほしい本を1冊取りあげ、いかに魅力的で読み甲斐があるかを、持ち時間5分でアピールする。会場からの質問タイムもあり、最後に40人ほどの観戦者が挙手をして「チャンプ本」を決める。

■それぞれ工夫しての説明を聞きながら、惹きつけられたのは、千葉大学4年生が推す坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)だった。路上生活者の姿を克明に追ってきた著者が、衣食住もタダで手に入れ、生活する方法を克明に描いていることを、大学生の若い視点からとらえて、とつとつと述べる。その語り口がまたいい。
■多くの支持を得て優勝した。読みたくなって、後で調べたら、刊行されたのは9年前の本。彼はどこでこの本に出会ったのか。芦田愛菜『まなの本棚』(小学館)にある、「気づいたら出会ってしまう」本だったのだろう。ちなみに単行本は入手しがたいが、幸い角川文庫に収められている。

■もう一つのイベント<青空古本市>、秋晴れにも恵まれ、靖国通りに面して500メートルに及ぶ「本の回廊」は、歩くのが困難なほど大賑わい。すずらん通りでは本のワゴンセールのかたわら、焼き鳥・ビールなどの出店コーナーまである。
■さすがこの賑わいの中を、時間をかけて稀覯本や掘り出し本を探しまわる気力はなかったが、とにかく古本屋の意気込みや熱気が、ひしひしと伝わってくる。内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)を、思い浮かべた。イタリア・トスカーナ州のモンテレッジォという山村では、毎夏、本祭りが開かれている。そこからカゴいっぱいの本をかついで、イタリアじゅうを旅して本を商う人たちの足跡をたどる物語。
■帰りに新刊だが、門井慶喜『定価のない本』(東京創元社)を買い、神保町の古書業界の歩みなどをつかみたい。(2019/10/27)
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2019年10月25日

【焦点】政党スポットCM禁止だけでは不十分=橋詰雅博

 安倍晋三首相は、自民党内での求心力維持とレガシーづくりのため憲法改正の旗を振り続けている。今国会では改憲手続きを定める国民投票法の改正と改憲案の提示を狙う。国民投票法改正案の焦点になっているのは投票運動時での有料テレビCM規制だ。  
 与党の自公を中心とする改憲勢力が金に物をいわせ大量にテレビCMを流せば不利と、野党はその規制を求めている。

 いち早く英国に倣った国民投票法改正案を公表した国民民主党は、政党のスポットCM禁止を打ち出している。10月7日に東京都内で開かれた「国民投票のルール改善を考え求める会」に講師として出席した著述家・本間龍さんは「一応の評価はできる」と前置きした上で、政党スポットCM禁止だけでは不十分だと指摘した。本間さんはこう続けた。
 「改正案では、国民投票運動による支出金額が1000万円を超える『特定国民投票運動団体』(支出上限額は5億円)は、テレビCMは禁止ではない。その数も制限がありません。改憲勢力の息のかかった団体が極端に言えば、47都道府県に一つずつ置かれ、各団体がテレビCMを流すことが可能です。禁止されるCMもスポット15秒ものだけで、タイムCM(番組の中で30秒間流れる)では放映できる。そのタイムCM枠をもつ企業などがテロップにより『改憲(護憲)を支持する○○社』と表示あるいは読み上げさせるのもOKです」
 テレビで流す広報宣伝は抜け道≠フような手段がいろいろあるのだ。

 放送業界の対応はどうなのか。日本民間放送連盟は、テレビCM規制には反対を貫き通している。表現の自由の抑圧につながるというが、本当の理由は巨額な国民投票特需≠当て込んでいるからだ。一向に動かない民放連は頼りにならない。国民民主党の政党スポットCM禁止はもとよりさまざまな抜け道を潰す徹底したテレビCM規制などが盛り込まれた国民投票改正法が望まれている。
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2019年10月24日

【おすすめ本】立岩陽一郎『ファクトチェック最前線 フェイクニュースに翻弄されない社会を目指して』─事実をチェックする市民活動の大きな役割=鈴木賀津彦(東京新聞)

 デモに参加するような気軽さで、大勢の市民がファクトチェッカーになり、世に氾濫する情報の確認作業を皆でする。そんな社会の姿が、本書を読んで浮かんでくる。
 ファクトチェックとは何か、これまでの自らの取り組みを振り返りながら、実践的に分かりやすく解説している。著者が米国で初めてこの言葉を耳にしたのが2011年、その後17年6月に日本で設立した「NPOファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」に発起人として関わり、同年10月の総選挙や、18年9月の沖縄県知事選挙、19年4月の大阪ダブル選挙などで、何をやってきたのかを具体的に示し、蓄積したノウハウを説明している。

 ここで強調しているのは「あなたもファクトチェッカーに」という訴えだ。「実はあまり難しい作業ではない。物事を普通に見て、普通に考えて、普通に調べる作業です。ファクトチェックは誰にでもできる作業です」と呼び掛ける。
 「調査報道」が、長い時間をかけて一つの問題に取り組む取材手法で、訓練を積んだジャーナリストの仕事なのに比べ、ファクトチェックはそこまでの訓練は必要としないし、「ジャーナリストが調査報道を担い、さらに幅の広い層がファクトチェックを担うというのが理想」と、説いている。
 フェイクニュース(虚偽の情報)が拡散されてしまう中で、市民活動としてのファクトチェックの役割は、ますます大きくなっている。「多くの人が取り組みに参加することで、事実を大事にする社会が実現できる」展望を示す。
(あけび書房1400円)
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2019年10月20日

【今週の風考計】10.20─即位パレードの延期と日本各地の秋祭り

22日の天皇陛下即位に伴う「祝賀御列の儀」、いわゆる祝賀パレードを、11月10日午後3時からに延期した。台風19号の被害を踏まえ、国民感情に配慮したためだという。だが「即位礼正殿の儀」や「饗宴の儀」、さらに安倍首相夫妻が主催する晩餐会は、予定通り22日に行う。当日は今年限りの祝日とすることにも変更なし。はてさて、これで被災者の気持ちを汲んだことになるのだろうか。
IOCは「東京五輪」のマラソンや競歩種目を、札幌に変更して開催すると、びっくり仰天の宣告。戸惑いが広がる。同じように突然の「即位パレード」の変更にも、何かモヤモヤ感が残る。

政府は26年ぶりに政令恩赦を22日に実施する。罪種は絞らず、対象者は約55万人。被害に遭った人々の感情を配慮すれば、犯罪者を審査せずに一律に政令恩赦を実施する閣議決定に、批判の声が挙がる。
 海外では恩赦は限りなく縮小され、かつ対象人物の名前や罪状、量刑などが公開されている。日本の恩赦の基準や運用のいい加減さは、いたずらに社会不安をもたらすだけだ。
さらに天皇「即位の礼」と結びつけて恩赦を行うことになれば、天皇は<国政に関する権能を有しない>という憲法第4条とのかかわりで、天皇の政治利用につながる大きな問題が出てくる。

毎年10月22日に開催される京都の「時代祭」が延期された。約2千人が各時代の衣装を着て京都市街を行列して歩く。京都に都が移されて1100年を記念し、1895(明治28)年から始まった。今年で124回を迎える。みな楽しみにしている平安神宮の例大祭である。
ところが今年は、天皇陛下即位に伴う儀式や即位パレードがあるため、異例だが「時代祭」の開催を26日に延期した。その配慮も実らず、即位パレードそのものが延期されてしまった。「覆水盆に返らず」。来年は元に戻そう。

京都三大奇祭の一つ「鞍馬の火祭」も、22日に開催。だがこれは変更なしのようだ。家の前に積まれた松明にかがり火が灯され、火のついた松明を掲げ「サイレイ、サイリョウ」の掛け声とともに町内を練り歩く。
こうして20日以降は日本列島各地が、お祭りでにぎわう。とりわけ京都では市街いたるところで祭りのオンパレード。20日だけでも恵比須神社の「ゑびす講」をはじめ斎宮行列、繁昌大国秋祭、笠懸神事、天門祭、餅祭りと続く。

神無月には日本中の神様が出雲大社に行ってしまう。その間、留守番をする「ゑびす様」に感謝し、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願する。右手で釣竿を持ち、左手には大きな鯛を持つ「えべっさん」は、日本各地で人々から敬われ、親しまれる日本の土着の神様だ。(2019/10/20)

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