2019年03月21日

【おすすめ本】植村裁判取材チーム編『慰安婦報道「捏造」の真実 検証・植村裁判』─明かされた右派の杜撰・欺瞞ロジック=安田浩一(ジャーナリスト)

「捏造」したのは誰か─元朝日新聞記者・植村隆さんは、訴え続けている。「捏造記者」のレッテルを張られ、誹謗中傷を受けてきた。「植村裁判」は、植村さんの尊厳をかけた闘いだ。
 裁判の傍聴に通う中で私もまた問われているのだと感じた。不正義を前に沈黙は許されるのか、植村さんの叫びは、メディアに携わるすべての者に向けられる。

 27年前、元慰安婦だった女性が韓国で名乗り出た。植村さんは必要な裏どりを重ね、記事にした結果のスクープ。人権を蹂躙された女性の悲痛な叫びが初めて報じられた。
 だが、これを「捏造」だとしたのが、櫻井よしこ氏や西岡力氏をはじめとする右派系の文化人・メディアだった。様々な悪罵がぶつけられた。それらが原因となって、植村さんは職場を追われ、本人も、さらには家族も殺害予告などの脅迫を受けてきた。

 本書は、これら一連の経緯と、櫻井・西岡両氏、出版社を相手取って起こした名誉棄損訴訟を、ジャーナリストたちからなる「取材チーム」が徹底検証したものだ。一方的に植村さんの「捏造」を叫んでいた者たちの杜撰なロジックが暴かれる。
「取材チーム」のひとり、長谷川綾さんは「資料をつまみ食いし、細部の齟齬で全体を否定する。その手法は<ガス室はなかった>と主張するホロコースト否定派を思わせる」と喝破する。そう、「植村裁判」は、日本社会を覆いつつあるヘイトな空気感との闘いでもあるのだ。
 詳細な検証記録によって、ようやく「真実」が浮かび上がってきた。
(花伝社1000円)
『慰安婦報道「捏造」の真実』.jpg
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2019年03月15日

【今週の風考計】3.17─世界で頻発する大統領包囲の民衆デモ

南アメリカのベネズエラが未曾有の危機に立たされている。2013年に就任したマドゥロ大統領は、死去したチャベスの後継者とされ、酪農やコーヒー・肥料・靴などの生産、スーパーマーケット事業などを相次ぎ国営化した。
しかし米国などからの経済制裁に加え、原油価格が下落して事態は悪化。天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥っている。2015年の選挙で野党が多数派になった国会の権限を無効化し、批判勢力を暴力的に抑圧・弾圧した責任も免れない。
野党連合出身のグアイド国会議長は、自ら暫定大統領就任を宣言し、数千人規模の反政府デモを組織して立ち上がっている。だが米ロなどの大国が軍事介入し、さらなる混乱を招く暴挙は慎まねばならぬ。

隣国のブラジルでは、今年の元旦に就任したボルソナロ大統領の言動も要注意。「ブラジルのトランプ」と評されるが、政界汚職を一掃できるか、犯罪組織による暴力が激化する“殺人大国”の汚名を返上できるか、極めつけの右翼であるだけに軍部と二人三脚での独裁政治に走らないか、不安が広がっている。

転じて北アフリカに目を向けると、アルジェリアではブーテフリカ大統領の立候補に反発する数万人規模のデモが起きている。なんと82歳になる彼は、4期20年の長期政権を率いてきた。6年前に脳卒中を患って以降、公の場にほとんど姿を見せず、健康不安が囁かれているのに、4月18日の大統領選挙へ5選をめざして立候補を表明したからたまらない。
野党勢力が結集して「空前の反乱」を呼びかけている。経済成長率は1.4%まで落ち込み、とりわけ若年層の高い失業率への反発は増大している。

アルジェリアの動きを気にしているのが、エジプトのシシ大統領だ。2014年に就任し、現在2期目・64歳の彼は2022年で任期満了の予定だった。だがシシ大統領を支持する議員が提出した、任期をさらに2期12年に延ばす改正案は、2034年までの在職(20年間)を可能とする内容。
 なんと8割の賛成多数で承認されてしまった。5月の国民投票にかけられ、過半数が同意すれば憲法改正が成立する。日本の永田町でも、安倍首相4選などの発言が飛び出している。
 シシ大統領に戻れば、人権活動家・ジャーナリストの拘束など、彼の強権姿勢は際立っており、「エジプトは記者にとって世界有数の監獄」と評されている御仁だ。

2018年に再選されたトルコのエルドアン大統領も、デモ禁止など国民への弾圧と取り締まりが激しい。仲間優先の縁故主義や独裁主義がはびこり、政治的な迫害や司法制度・法治への不信感、ビジネス環境の悪化などが、怒りに拍車をかけている。経済はぐらつき、通貨リラは急落。ついにトルコ国民も、17年には42%増の25万人超が外国へ逃げ出している。
 いま世界は大統領の言動を包囲する、怒りの民衆ネットワークを作り出している。(2019/3/17)
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2019年03月13日

【おすすめ本】日野行介『除染と国家 21世紀最悪の公共事業』福島原発事故─偽りの処理と幕引き、危ない汚染土再利用の実態を暴く=鈴木耕(編集者)

 東京新聞・望月衣塑子記者に官邸が圧力をかけている。だが圧力をかけざるを得ない事態こそ、逆にジャーナリストの強靭さを示している。同様の記者魂を持った著者の渾身の一冊が本書だ。犯人を追いつめる名探偵ごときのスリルに満ちたノンフィクション。

 サブタイトルに「21世紀最悪の公共事業」とあるように、あの福島原発事故の偽りの処理の実態に迫る。つまり放射能に汚染された土壌を“除染”との名でごまかし、最悪の原発事故の幕引きを図ろうとする安倍政権への、新聞記者の怒りを込めた告発なのだ。
 汚染土を放置し、その責任を被災者に転嫁して恥じぬ行政の実態を、著者は次々に暴いていく。福島市など地方行政だけではなく、環境省や中央省庁の凄まじいばかりの隠蔽工作にも肉迫する。著者は情報公開制度を活用し議事録を入手するが、そこからは重要な発言が消されていた…。
 だがそこでめげるようでは記者じゃない。著者は当事者たちへの直撃取材に走り、核心に迫っていく。本書の白眉「第三章・底なしの無責任」「第四章・議事録から超えた発言」である。汚染土再利用という“21世紀最悪の公共事業”の実態を明るみに引きずり出す。

 原発ムラに組み込まれた官僚や学者らの、なんと罪深いことか。帯にもある「日本のためお国のために我慢しろといえないといけない」(環境省官僚)との言葉が、この国の暗い未来を暗示する。
「お国」とはいったい何か。著者の切っ先はそこに向かう。調査報道とはこういうものだ!
(集英社新書840円)
『除染と国家』.jpg
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2019年03月10日

【今週の風考計】3.10─「ダブル選挙」など、やってる場合か!

■東に「トーケイ不正」の隠蔽あれば、西に「トーリ党略選挙」が現れる。なんと大阪維新の会の府・市両首長は、<大阪都構想>のゴリ押しを狙い、同じ穴のムジナよろしく、府知事・市長を入れ替えて、ダブル選の「党利党略・住民不在・私物化」選挙の奇策に打って出た。
■4月7日に投開票される議会選に合わせて、前倒し実施する。それぞれが同じポストでの出直し選挙では、半年の任期しかないが、ポストを変えてのダブル選で勝てば新たに任期4年が確保でき、<大阪都構想>の再住民投票に向けた、コズルイ作戦が仕組める。

■この<大阪都構想>─すでに4年前、「府と市を合わせてもフシアワセ」と、住民投票で否決されたシロモノ。なのに大阪人らしくもなく、ウダウダとしがみつく。安倍政権も貴重な「改憲勢力」である維新の代表・松井一郎氏の立場を擁護し、ダブル選を容認している。
■だが地元の自民党・大阪府連は怒り心頭だ。ついに対抗馬として俳優の辰巳琢郎氏を知事選候補として擁立する最終調整に入った。

■いま大阪は、6月28〜29日のG20開催、さらには大阪万博の会場建設やその内容をめぐって、大きな関心と議論が沸き起こっている。とりわけ2025年5月3日から6カ月間、大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催される大阪万博は、会場建設費1250億に運営費830億の経費を要する。「地盤沈下」の激しい大阪経済にとって、その財政負担に耐えられるのか、懸念されている。
■しかも万博会場に併設されるIR複合リゾート施設の内容が問題だ。巨大なカジノ建設が計画されている。このカジノ売り上げ、いわば賭博のテラ銭(客の負ける金額)を年間3800億と見込み、IR全体の年間売り上げ4800億の8割を賄うとしている。
 かつカジノ客の75%は日本人と想定しているから恐ろしい。まさに万博に必要なインフラ整備をカジノ事業者が行う図式が成り立つ。これこそカンジンの問題。(2019/3/10)
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2019年03月05日

【部会レポート】高須次郎氏講演<出版崩壊とアマゾン─どう再生への道を拓くか>

2月22日、出版部会2月例会として、高須次郎(緑風出版代表・出版協相談役)氏による講演会を開催した。その内容を、画像にて公開する。
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2019年03月03日

【今週の風考計】3.3─<サ行変格活用>で日本と世界を見通す

春はあけぼの。陽はサンサン。スタートした3月にちなんで、今週は<サ行変格活用>で見通してみたい。

まず─4日は「三線(さんしん)の日」、琉球に古くから伝わる伝統楽器「三線」を皆で弾いて、その音色を響き渡らせる。うるま市民芸術劇場で開かれる「ゆかる日まさる日さんしんの日」は第27回を迎える。
 5日は「サンゴの日」、沖縄の美ら海に生きるサンゴ礁が危機に瀕している。恩納村では「サンゴの村宣言」を発し、サンゴ礁の保全・再生へのプロジェクトを推進している。

は7日の「消防記念日」、今から71年前に消防組織法が制定された日にちなむ。春の火災予防運動の締めくくりの日でもある。
は9日の「スロバキア大統領選挙」─1993年にチェコと分離独立したスロバキア共和国はEUに加盟、人口450万、首都はブラチスラヴァ、国家元首は任期5年の大統領アンドレイ・キスカが務める。今度の選挙には出馬しない。15人が立候補、激戦の結果はどうなるか。

は5日の「山本宣治暗殺の日」─ちょうど90年前だ。「やません」と呼ばれ親しまれた労農党の衆議院議員が、国会から帰ってきた神田神保町の宿舎「光榮館」で、右翼に刺殺された。反戦平和を貫き、治安維持法の害悪や官憲の拷問を追及してきた。
 暗殺前日の3月4日には、全国農民組合大会で、「山宣ひとり(反対の)孤塁を守る。だが、背後には多くの大衆が支持している」と演説。翌日、国会で論陣を張るつもりだった。それもかなわず39歳の生涯を閉じた。

最後は─「曽我梅林」、実は陽気にほだされ、2日は梅見に出かけた。御殿場線・下曽我駅から徒歩約10分。曽我物語の十郎・五郎の史跡や、梅やみかんの産地として知られる曽我の郷。
 箱根連山を背景に延々と広がる田園風景の中に、十郎や白加賀、紅や白の枝垂れ梅が満開だ。梅が枝に下がる短冊に「白梅に触れて老人光りけり─秋光」の句あり。あいにく富士山は雲に隠れて望めず。素朴な梅香うどんで腹を満たす。満足の一日だった。(2019/3/3)
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2019年02月25日

【焦点】 東欧の陸上イージスの経費は米国が負担=橋詰雅博

 米国務省は1月末に安倍晋三政権が購入を決めている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基などの売却を承認し、米議会に通知した。売却額は21億5千万j(約2350億円)。当初は一基約800億円と算出されていたが、米国による価格つり上げで大幅にアップ。しかも30年間の維持・運用経費などを含めると合計6千億円にも跳ね上がる。
 安倍政権が爆買い≠オた陸上イージスは、強力なレーダー波の発生による電磁波問題がかねてから指摘されている。イージス艦のレーダー作動時では、乗員の甲板活動が禁じられるほどシステムが発する電磁波は強力だ。日本での配備予定地である秋田市と山口県萩市阿武町の地元でも、電磁波が健康や医療機器、防災無線、テレビ放送などに悪影響を与える恐れがあると配備反対運動は広がっている。阿武町在住の女性グループは有事の際、標的になる可能性があるので身の安全が心配だと計画撤回を求めている。
 地元住民の反対の声に押されて菅義偉官房長官はレーダーの電磁波影響調査の実施を明言。現在、防衛省は秋田と山口の両県で陸上自衛隊の対空レーダー装置を使った電磁波の影響調査を行っており、結果を4月以降に地元で説明する。しかし、そのレーダーは実際に陸上イージスに搭載される米ロッキード・マーチン社製ではない。代替品≠使った影響調査であるから結果に疑問が生じる。
 陸上イージスは2016年にルーマニアに配備され、ポーランドへの配備も近い。米国を狙うイランの弾道ミサイルを撃ち落とすためだから米国がコストを負担。日本の2基も米軍ハワイとグアムの両基地を狙う北朝鮮ミサイルに対処するためだが、コストは日本が負担する。住民を軽視した上に多額の血税を使い米国を守るというわけだ。今月末に2回目の米朝首脳会談がある。米朝関係は好転している。陸上イージスは無用の長物になるかも。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年2月25日号
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2019年02月24日

【今週の風考計】2.24─「三・一独立運動」から米朝会談への歩み

今週は、沖縄・辺野古埋め立ての是非を問う県民投票、東京・半蔵門の国立劇場で開催の「天皇在位30年記念式典」、さらには27日からベトナム・ハノイで始まる米朝首脳会談、そして韓国・ソウルや北朝鮮・平壌での「三・一独立運動100周年記念」行事の共同開催など、あわただしい内外の動きに目が離せない。
とりわけ「三・一独立運動」の内容など知らず、日本とは関係ないと思っている人々が多い。とんでもない。ちょうど100年前の1919年3月1日、朝鮮の学生や民衆5千人が、日本の植民地支配からの独立を目指し、京城のパゴダ公園に集まり「朝鮮独立万歳」を叫んだ。さらに動きは全土へと拡がるに及んで、日本の朝鮮総督府は武力を行使して弾圧、死者6千人・逮捕者5万人の悲劇を生みだしたのである。

「三・一独立運動」の1カ月前、1919年2月8日、 東京でも朝鮮からの留学生たちが、当時にして30年ぶりの大雪に見舞われるなか、東京西神田小川町の朝鮮YMCA会館に集まり、早稲田大学学生だった李光洙(当時26歳)が起草した<朝鮮青年団独立宣言>を採択し、日本政府・各国大使館・朝鮮総督府などへ送付している。
だが「朝鮮独立」はかなわず、その後も日本の植民地支配は1945年まで続いた。さらに5年後には朝鮮戦争が勃発し、朝鮮半島の分断は150年に及ぶ。

こうした歴史に翻弄されてきた韓国・北朝鮮の両国が、27日からの米朝会談によって朝鮮戦争の終戦宣言など、朝鮮半島の統一した平和づくりに向けて、新たな地平に踏み出す道が切り拓かれようとしている。
ひるがえって日本は、どうか。いまだ朝鮮に対する植民地支配や慰安婦・徴用工問題など、侵略の被害にあった朝鮮の人々への心のこもった深い謝罪や清算をしていない。いっそう日韓関係は悪化する中で、安倍政権は「明治150年」を礼賛するだけで、東北アジアの平和構築に背を向けている。(2019/2/24)
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2019年02月18日

【お知らせ】JCJ 2・22講演会:高須次郎〈出版崩壊とアマゾン〉

出版崩壊とアマゾン
─どう再生への道を拓くか─
いま出版界は存続の瀬戸際に立たされている。
値引き販売・取次外しなどのアマゾン商法″が席巻!
電子書籍の価格は自由、再販制度はズタズタ。
日本の書店・取次の倒産が続く─その出口を探る。

講演:高須次郎氏(緑風出版代表・前出版協会長)
日時:2月22日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町2-5-5 ☎ 03-3233-0611
JR「水道橋」駅東口下車、白山通りを神保町方面へ徒歩5分
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費:800円(JCJ会員・学生500円)
《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会

JCJ出版部会2・22講演会チラシ(高須次郎氏).pdfJCJ出版部会2・22講演会チラシ
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2019年02月17日

【今週の風考計】2.17─小惑星「リュウグウ」についての一夜漬け

5年前に打ち上げられた小惑星探査機<はやぶさ2>が、地球から3億キロ先にある小惑星「リュウグウ」に、22日の朝8時15分ごろ着地する。パネルを広げれば14畳にもなる探査機<はやぶさ2>を、どう着地させるのか、ハラハラドキドキする。

直径900メートルほどの小惑星「リュウグウ」は、周辺温度が100度を超える上に、岩だらけ。そこに「ピンポイントタッチダウン」方式で、岩が少ない6メートル四方の地点を選んで接地し、弾丸を発射。飛び散った表面物質を探査機の採集装置に取り込み、わずか数秒間に0.1グラムのサンプルを採取した後、すぐ離脱するという。そしてホームポジションへ向かった後、今年の12月ごろ地球へ向けて出発し20年末に地球に帰還する計画だ。

老いた身では、寒い夜空を見上げる勇気はないが、太陽系誕生の謎を解き明かす、約290億円かけた壮大なプロジェクト。その小惑星「リュウグウ」について、恥ずかしながら、さらに勉強させていただいた。

20年前に発見され、日本で「リュウグウ」と名付けられたソロバン玉に近い形状の小惑星は、地球に接近する軌道を持つ小惑星群のひとつだそうだ。しかも「リュウグウ」は太陽に近い軌道をめぐり、地球の約3倍もの速さで自転しているという。
かつ太陽系が作られたころの有機物や炭素を含む化合物、また水が多く存在し、太陽系の起源や生命誕生の秘密に迫ることが期待されている。まさに貴重な小惑星なのだ。

だが一方、地球に衝突する可能性が大きく、かつ衝突時に地球に与える影響が大きい潜在的に危険な小惑星にも分類されている。孫に教えるための勉強の一文となり、どうぞご容赦を!(2019/2/17)
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2019年02月16日

天皇代替わりと元号問題─なぜ政府は「譲位」と言わないか=梅田正己(『日本ナショナリズムの歴史』著者)

 天皇の代替わりをめぐってずっと気にかかっていることがある。用語の問題である。
 三年前、天皇が代替わりの意思を表明して以来、政府は一貫して「退位」と称してきた。メディアもそれに追随して「退位」と言ってきた。しかし天皇は「退位」とは言っていない。昨年12月の誕生日の記者会見でも、こう言っていた。
「今年も暮れようとしており、来年春の私の譲位の日も近づいてきています」
 皇后もまた昨年10月の自分の誕生日の記者会見で「陛下は御譲位と共に」と「譲位」と言っていた。
 当の天皇、皇后は「譲位」と言っているのに、政府とメディアは「退位」と言い続けているのである。
 天皇家ないしは天皇制の歴史には「退位」という用語はない。八世紀の初め持統天皇が孫の文武天皇に譲位して以来、天皇は譲位して上皇となり、上皇と天皇とが並び立つのが天皇家の伝統だった。

 ところが政府はその伝統的な用語を使わずに「退位」という新語を使い、「生前退位」が何か異常・異例のことであるかのように思わせてきたのである。そしてメディアはそれに何の疑義も呈さずに追随してきた。
 なぜ、政府は「譲位」の語を避けたのか。このことは元号の問題とも重なる。
政府が「譲位」の語を忌避した理由は、それが「生前の」ということを前提にしているからである。天皇の代替わりは元号の変更を意味する。したがって「譲位」後は前代の天皇が存命しているのに新たな元号を使うことになる。それは「一世一元」の原則に反する、と政府は判断したのである。
 一世一元制とは、天皇一代につき一つの元号、つまり天皇が死去し新たな天皇が即位するとともに新たな元号を制定するという制度のことである。
 しかし伝統的な元号制では、元号は天皇の代替わりのほか、何かめでたいこと、また逆に不幸なことがあると変更された。実際、明治天皇の父の孝明天皇の在位20年間には、弘化から嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応と6回も元号が変えられている。
 ところが維新後に生まれた新政府は、元号を慶応から明治に変えると同時に「一世一元制」と定めたのである。なぜか。
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2019年02月10日

【今週の風考計】2.10─官邸の報道規制と基地へのドローン規制

★昨年末、首相官邸は東京新聞の記者が、沖縄・辺野古基地の埋め立て区域に「赤土が広がっている」状況について質問したところ、その質問を「事実誤認」と断定し、内閣記者会に記者の質問権を制限するような申し入れを行っていた。
★年が明けて、その内容が明らかになるにつれ、市民団体でも抗議の署名活動が進み、新聞労連も抗議声明を発表、続いてJCJも抗議声明を発表した。

★記者が質問中に、官邸報道室長は数秒おきに「簡潔にお願いします」と繰り返して妨害し、質問内容が事実誤認であるかのような誹謗中傷に近い内容を記した申し入れは、記者への個人攻撃につながる行為であると指摘。報道の自由、取材の自由、国民の「知る権利」に対する攻撃であり、その危険な狙いを糾弾している。
★内閣記者会の毅然とした対応が求められる。だが、動きは鈍い。そこには安倍政権に与する「産経」も所属するので、なかなかまとまらないのか心配でならない。

★10日付の「琉球新報」が<基地にドローン規制 沖縄を狙った報道弾圧だ>と題する社説を掲載している。今国会での成立を目指すドローン規制法改正案について、新聞協会が「自衛隊や在日米軍基地上空のドローン飛行禁止に反対する」旨の意見書を政府に提出したことに賛同しつつ、米軍基地が飛行禁止対象施設に加えられると、最も影響を受けるのは、在日米軍の専用施設の約70%が集中する沖縄の報道機関であることを指摘している。
★立ち入ることのできない米軍基地内で、たびたび起きる米軍機の重大な事故を取材するには、小型無人機ドローンを使っての撮影取材は欠かせない。ドローンの「飛行禁止は沖縄を狙い撃ちにした報道弾圧だ。米軍基地を対象施設に加えてはならない」と。(2019/2/10)
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2019年02月06日

【おすすめ本】高須次郎『出版の崩壊とアマゾン─出版再販制度<四〇年>の攻防』─「出版敗戦前夜」から「戦後復興」への道を探る=田悟恒雄

 4つの妖怪が世界を彷徨っている、GAFAという妖怪が。00年にはA(アマゾン)、09年にはG(グーグル)、2隻の「黒船」が相次ぎ来襲、この国の出版界に激震が走った。後者の「大規模書籍無断スキャニング事件」については、『グーグル日本上陸撃退記』など、同じ著者の先行著作があるので、ここではほぼ割愛されている。

 アマゾン上陸後の出版界の凋落ぶりは目を覆うばかりだ。18年ほどの間に販売金額を半分近くも減らし、「もはやきりもみ的な墜落局面に突入」している、と著者は見る。書店数も出版社数も激減、取次店も立ち行かなくなってしまった。
 問題の根底には出版再販制をめぐるせめぎあいがあるのだが、それを入念に後づけながら「敗戦前夜」からの出版再生の道を探ろうとするのがこの本である。長らく出版協(流対協)会長を務め、いささかもたじろぐことなく再販擁護の論陣を張り続けてきた著者だけに、説得力は抜群。

 刮目すべきは、「敗戦の責任」を政府や公取委、アマゾンなどの外的要因だけに求めず、「ほとんど戦わずして落城前夜をまねいた出版業界、出版社団体や出版社の内部」に厳しい目を向けていること。そうした視点から提起される「戦後復興」への7つの提言(以下参照)は、真剣に検討されてしかるべきだろう。
 @紙と電子の一体的出版契約、A電子出版についての著作権法の見直し、B電子出版の価格拘束、C取引条件の改定、D大手取次のダウンサイジング、E非再販契約書店には再販商品を流さない、F租税回避型総合ネット通販の規制。
(論創社2200円)
『出版の崩壊とアマゾン』.jpg
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2019年02月03日

【今週の風考計】2.3─消えた「返せ!北方領土」の裏側にあるもの

7日は<北方領土の日>だが、これまで続けてきた「返せ!北方領土」のタスキもハチマキも、シュプレヒコールも消える。
なんと地元の根室市では、「平和条約の早期締結を」に統一するという。おそらく同日、東京で開催の全国大会でも、今年は「返せ!」の声や文字は、目にも耳にもすることはないだろう。

なぜか。安倍首相のレガシーづくりに貢献すべく、いらぬ忖度がはびこっているからだ。昨年末からロシアとの平和条約締結交渉に前のめりになっている安倍首相のホンネは、「北方四島返還」という従来の政府方針を投げ捨て、択捉島と国後島の返還は断念し、色丹島と歯舞群島の2島「引き渡し」で決着させるという、プーチン大統領とのディールが狙いだ。
6月末に大阪で開かれるG20での首脳会談で決着を目指す。そして成果を誇示して参院選に突っ込む。こんな絵図を描いているのに、国民はおろか北方領土関係者にも、「外交交渉」を理由に口を閉ざす。

7日に国立劇場で開催の「北方領土返還要求全国大会」での安倍首相のスピーチが注目される。「領土問題」の言い回しで、「北方四島返還」のへの字も言わず、あいまいな言辞を弄してウソをつくつもりか。
すでに「日本会議」は、新元号の事前公表に対し、安倍首相に「遺憾」のクレームをつけ、さらにロシアに屈服するなら、右翼だって黙ってはいられまい。

あらためて原点を確認しよう。1855年2月7日、日本とロシアとの間で日魯通好条約が調印され、国後島・択捉島は日本の領土であることが両国間で確認された。だが、1945年8月28日〜9月5日 ソ連が「北方四島」に侵入し不法占領のうえ、そこに居住する日本人1万7千人が、ソ連の命令で強制的に退去させられた。
さらに日本政府は、1951年のサンフランシスコ平和条約で、ソ連の不当な領土併合を認める形で、樺太の一部と国後・択捉両島を含む千島列島を放棄してしまう。こうした歴史的経過を踏まえれば、もともと日本領であった「北方四島」の返還要求は、国際的にも道理ある要求なのだ。
(2019/2/3)
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2019年02月01日

【おすすめ本】鈴木 耕『私説 集英社放浪記─「月刊明星」「プレイボーイ」から新書創刊まで』─「出版は紙つぶて」と信じる編集者の手に汗握る冒険譚=盛田隆二(作家)

 1970年に集英社に入社し、「月刊明星」編集部に配属された著者は、その年の秋、三島由紀夫の割腹事件に出くわす。だが、現場に駆けつけたものの芸能誌では仕事に結び付けられない。その無念さが八年後に実を結ぶ。
 78年、陸自幹部に宛てた三島の私信を入手した「PLAYBOY」編集長に「手伝ってくれないか」と声をかけられ、同幹部へのインタビューを行い、特集「三島由紀夫 憂国の建白書 全文公開」を3号連載したのだ。
 この経験が著者を編集者として鍛えたのだろう。82年には「月刊明星」の読者頁欄で、内申書裁判を闘う青年・保坂展人の連載を独断で始める。副編集長には怒られたが、読者アンケートでアイドルグラビアに交じって3位を獲得し、人気連載企画となる。これ以降、快進撃が続く。

「週刊プレイボーイ」編集部に異動した著者は、ベルリンの壁崩壊の現地に取材班を送り込み、破格料金の電事連広告を蹴って原発特集を頻繁に組み、さらには特集「敦賀湾原発銀座『悪性リンパ腫』多発地帯の恐怖!」を4週連続でぶち上げる。
 福井県知事から猛抗議を受け、集英社の社長はテレビ局から直撃される事態となり、福井県や科学技術庁などと数カ月にわたる攻防となったが、取材データには自信がある。訴訟が提起されることはなかった。そんな編集者に味方する上司もいれば、煙たがる上司もいる。それゆえ著者は2006年に退職するまで十回以上異動を繰り返す。

「出版は紙つぶて」と信じる編集者の手に汗握る冒険譚。一気に読み終えたが、著者は退職後も「マガジン9条」創刊、市民ネットTV「デモクラシータイムス」の立ち上げなど、益々意気軒高だ。(河出書房新社1600円)
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2019年01月30日

【メディア時評】 正念場を迎えた出版崩壊の危機!=守屋龍一(JCJ代表委員)

  1月7日、朝日新聞朝刊に掲載された、宝島社の見開き30段広告─「嘘つきは、戦争の始まり。」には衝撃を受けた。青空を背景に、油まみれで真っ黒な水鳥の嘴の先に、簡潔なフレーズが白抜きで刻まれている。
〈…陰謀も隠蔽も改ざんも粉飾も、つまりは嘘。/ 世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか。…嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。〉

  その通り! 出版界も例外ではない。ヘイト本やコピペ本、フェイク記事や事実も確認しない差別論文・寄稿の載る雑誌がまかり通る。
  直近では女子大生の尊厳を傷つける、扇情的な粉飾だらけの記事を載せた「週刊SPA!」(扶桑社)がある。昨年は「新潮45」10月号が典型だ。掲載された、安倍応援団の一人・小川榮太郎論文は、犯罪である痴漢を容認するなど、文字にするのも憚られる内容。「常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」との社長声明で、休刊が決まった。しかし〈出版社の社会的責任〉についての説明は、いまだにない。

  百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)も、Wikipediaなどからのコピペ疑惑≠ェ、本文やコラムなどの記述に数多くみられ、剽窃ではないかと指摘されている。ネット上では広く知られているが、幻冬舎は沈黙、新聞・TVも報じない。

  こうした憂うべき事態にある出版界だが、もっと深刻な状況が迫る。昨年の年間売上げ1兆2800億円、1996年のピーク時2兆6564億円の半分以下。そこへ10月からは消費税10%の大波が襲う。
  出版物への軽減税率は適用されず、政府側は「有害図書排除の仕組みの構築状況などを勘案のうえ、引き続き検討する」という。この「有害図書」とは何か。その基準や「出版倫理コード」の導入をめぐり、議論が続く。

  深刻なのは、出版流通の実態だ。雑誌の落ち込みにより、取次の扱う業量が急減し、出版運送の採算割れで撤退の動きが強まった。慌てて運賃値上げしたものの、運送危機は回避できていない。
  流通改善に向け、日販とトーハンは、双方の物流拠点を相互に活用し、統廃合も視野に協業体制を強化する協議が始まっている。
  郊外の雑誌や書籍の出荷場では、ベトナム人をはじめ多数の外国人労働者が、劣悪な労働条件で働いている。仕事量も減り残業代も出ず、彼らの契約破棄、配置転換など、4月から施行される「入管法」にも関わる、深刻な事態が進んでいる。

  書店はどうか。デパートやスーパーに出店する大型書店も、高いテナント料などで赤字が続き、日販・トーハンに買収され、直営店化される事態が進む。しかもアマゾンが、再販制を無視した割引販売を、ネットで全国展開している。書店が倒産するのも無理はない。
  出版崩壊の危機に、どう立ち向かうか、私たちは正念場を迎えている。
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2019年01月27日

【今週の風考計】1.27─鎌倉アルプス山歩きと「実朝暗殺」の縁、そして「承久の乱」へ。

ちょうど1週間前、仲間と一緒に鎌倉アルプスを歩いた。北鎌倉駅から建長寺の総門、三門をくぐり仏殿での参拝後、方丈の奥へ進む。
曲折した急な石段を上りきると鎮守府・半僧坊。天狗の像が立ち並び、麓の建長寺のような禅寺とは違う雰囲気を醸し出す。さらに西に張り出すテラスから青空に映える富士山を望む。十王岩から今泉台分岐への山道をたどり大平山の頂上へ。

昼食後、瑞泉寺に向かう。禅宗の高僧・夢窓疎石が開創した瑞泉寺には、鎌倉石の岩盤を巧みに彫った壮大な石庭が広がる。京都の天龍寺や西芳寺(苔寺)の庭も手がけた、日本の中世を代表する禅僧の活躍が思い浮かぶ。残念ながら境内の枝垂れ梅は、いまだ開花せず。
その代わり鳥居わきで河津桜が咲く鎌倉宮に足を延ばし、脇道を通って鶴岡八幡宮へ。夕日に照り映える朱塗りの本宮楼門、そこへと続く石段のわきに、9年前に倒伏した大銀杏のヒコバエから、小さな若芽が芽吹き、今や枝も伸びて参拝客を喜ばせている。

さて1月27日、今から800年前の建保7年1月27日である。鎌倉幕府3代将軍・源実朝が、2尺ほど積もる雪のなかを拝賀に訪れた鶴岡八幡宮で暗殺された。享年28(満26歳)。犯人は自分の兄・頼家の遺児・公暁。八幡宮の石段わきに立つ大銀杏に隠れて機会をうかがっていたと伝わる。
『金槐和歌集』などの歌人として知られていた実朝の死により、京都・朝廷と北条家が執権を握る鎌倉幕府との関係がぎくしゃくし、2年後には「承久の乱」が勃発する。朝廷に君臨する後鳥羽上皇が鎌倉幕府の執権・北条義時を討つべく、兵を挙げる。

しかし敗れた後鳥羽上皇は隠岐に配流され、以後、北条氏一門を中心とする武家勢力の執権政治が100年以上続き、威勢は全国に及ぶことになった。携行していた坂井孝一『承久の乱』(中公新書)を、往復の湘南ライン車内で熟読した。(2019/1/27)
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2019年01月26日

【焦点】 あの「ハズキルーペ」永田町で話題に=橋詰雅博

 政党支持率1%台に沈む野党第2党の国民民主党(代表・玉木雄一郎衆院議員)は、第1党の立憲民主党との違いを強調し、支持率浮上に懸命だ。国民投票法改正案を真っ先に公表したのもそのためである。@政党によるテレビCMの禁止A投票運動を行う団体の資金の上限は5億円B国政選挙との重複回避―がその骨子。  憲法問題で野党との話し合いが暗礁に乗り上げていた自民党と公明党はこの改正案に乗り気だった。
 「改憲作業を急ぎたい安倍官邸が『改正案をまるのみして、国民民主党を取り込め』と自民党の下村博文憲法改正推進本部長にハッパをかけたのです。しかし、11月の『改憲論議しない野党は職場放棄』の下村発言で野党が反発し、官邸の思惑は頓挫した。だが、改正案の取り込みを官邸はあきらめたわけでない」(国会事情通)
 また、改憲をめぐり永田町では奇妙なウワサが流れている。ウワサの主はメガネ型拡大鏡「ハズキルーペ」の製造販売会社の会長兼CEOの松村謙三氏(60)だ。松村氏は4歳年上の安倍晋三首相と同じく成蹊大出身。今までさまざまな会社を買収して築いた「松村グループ」の総帥で、経済同友会会員だ。安倍友≠ゥは、はっきりしないが……。
 ハズキルーペの何がそんなに心配なのか。国民投票法改正に絡む都内の集会に参加していた広告業界に詳しい著述家の本間龍氏は、こう指摘した。
 「ハズキルーペがメインスポンサーになっているのは43番組。急速に増えていて、情報番組系が70%占めている。発議後の国民投票運動がスタートしたら、ハズキルーペのスポンサー番組のCMの中身が変化するのではないと危惧されている。改憲を打ち出した意見CMなどが流れる可能性がある。スポンサーだからと言って、簡単にCMの中身が変えられるのかという意見もあるが、CM審査を行う考査セクションをパスすれば問題ありません」
 ウワサで終わることを願うのみだ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年1月25日号
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2019年01月20日

【今週の風考計】1.20─「オリオンビール」と「大同江ビール」の味

●創業60年を迎える沖縄の「オリオンビール」が、野村ホールディングスと米国の投資ファンド・カーライルに買収される─との報道に驚いた。
●買収の理由は、カーライルが持つ海外企業との豊富なパイプを生かし、「オリオンビール」の海外展開を本格化するというのだ。買収額は数百億円規模。地元の沖縄県では断トツの売り上げ。18年3月期の売上高は283億円だった。

●沖縄に行けば「オリオンビール」、Tシャツも星3つにOrionのロゴ入りを着る愛飲者にとっては、「あの地ビールが買収されるのは悔しい」としか言いようがない。日本の地ビールが消えてしまう。
●12年前、ベトナムをハノイからホーチミンへ、国道1号線沿いに旅する途中で飲んだ「333(バーバーバー)」や「ビア・サイゴン」の味も思い浮かぶ。確か355ml瓶で日本円にして100円ぐらいだった。

●昨年12月に刊行された、文聖姫『麦酒とテポドン』(平凡社新書)にある、「大同江ビール」(テドンガンメクチュ)の記述も新鮮だ。故金正日総書記が「人民に良質なビールを届けよう」との号令で始まったプロジェクトが、いまや北朝鮮を代表するブランドに成長した。
●味は中国の「青島ビール」に似るが、連れ立って飲みに行くビアホールは満員。若い女性も7種類の生ビールを味わう。夏には平壌でビール祭りも開かれる。缶ビールも生産され海外への輸出がもくろまれている。

●文聖姫さんは「北朝鮮は核・ミサイルの開発でなく、自慢の大同江ビールを世界中に輸出できる道を選んでほしい」と締めくくる。日本でも大同江ビールが飲めるよう、1日も早い経済交流の再開、日朝国交回復を願ってやまない。(2019/1/20)
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2019年01月13日

【今週の風考計】1.13─巨大地震が日本列島を襲う確率と危険!

年始早々から地震のニュースに身をすくめた。3日18時ごろの熊本地方地震はM5.5、震源の深さ10km。NHK大河ドラマ「いだてん」の主人公・金栗四三の生誕地でもある、和水町(なごみまち)では震度6を観測した。
この地域周辺には佐賀県の玄海原発2機、鹿児島県の川内原発2機が稼働している。11日にオープンした「日本マラソンの父 金栗四三ミュージアム」も、地震だけでなく原発事故に、いつ被災するとも限らない。

74年前の1月13日には、M6.8の三河地震が発生し、死者2306人・家屋全壊7221戸の大きな被害を出した。日本が敗戦に向かう1945年前後には、南海トラフを震源とする「昭和の4大地震」が連続し、死者1,000人を超える被害を出した。三河地震もその一つである。
17日は阪神・淡路大震災の24年目にあたる。活断層のずれによる地震の規模はM7.3、死者6,434人・家屋全壊104,906戸、8年前の東日本大震災に次ぐ甚大な被害となった。原発事故による被害がなかっただけでも、今から思えば不幸中の幸い、また原発の恐ろしさを再認識させられる。

さて巨大地震が日本列島を襲う可能性はどうか。3・11東日本大地震の震源域周辺の東北沖や房総沖は、いまだに地震が起きやすい状況が続いている。さらに北海道東部の千島海溝沿の地震も発生の確率が高い。いつM7クラスの地震が起きてもおかしくない。
西日本も油断はできない。静岡県から九州沖合にかけて伸びる南海トラフは、M8〜9クラスの巨大地震を起こす。その危機は目前に迫っている。九州の火山にも危険な兆候がある。熊本地方地震で活発化した中央構造線の上にある阿蘇山、雲仙普賢岳も注意が必要だ。もはや、日本に安全な場所などない。研究者や専門家は警鐘を鳴らす。(2019/1/13)
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2019年01月12日

【おすすめ本】 文在寅著・矢野百合子訳『運命 文在寅自伝』─二度と戦争が起きない朝鮮半島に向けて=文聖姫(ジャーナリスト・博士)

 北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返し、戦争の危機までささやかれた一昨年とはうって変わって、朝鮮半島には昨年、緊張緩和ムードが漂った。北朝鮮の平昌五輪への参加が実現したのを皮切りに、4月には韓国の文在寅大統領と金正恩委員長との間で首脳会談が行われた。首脳会談は9月まで3回開催された。金委員長のソウル訪問も予定される。
 そして6月には、史上初の米朝首脳会談がシンガポールで実現した。一昨年までは「ロケットマン」「老いぼれ狂人」と、互いをののしり合っていたトランプ米大統領と金委員長が固い握手を交わし、昼食を共にしながら談笑した。焦点の非核化の実現には紆余曲折もありそうだが、少なくとも昨年1年間は、北朝鮮は核・ミサイル実験を行っていない。

 こうした動きの背景には、文在寅大統領の存在がある。一昨年5月に大統領に就任した文氏は、二度と戦争が起きない朝鮮半島を北朝鮮の金正恩委員長とともに作るために奔走し、米朝の橋渡し役も務めた。
 文在寅とは一体どんな人物なのか。それを知るうえで参考になるのが文在寅著・矢野百合子訳『運命 文在寅自伝』(岩波書店)だ。2011年に韓国で出版されて以来、異例のロングセラーを続けてきた。
 2012年12月の大統領選に向けた「出馬宣言」として刊行された(本書・権容奭氏による解説より)本書は、文大統領の人となりや政治信条を知るうえで参考になる。何より本書の半分は「盧武鉉自伝」と言ってもいいくらい、盟友・故盧武鉉元大統領とのエピソードに溢れている。

 一方の金委員長に関するデータは少ない。それを補ってくれるのが、KBS制作班+リュ・ジョンンフン著・すんみ他訳『北朝鮮 おどろきの大転換』(河出書房新社)だ。ビッグデータを使ったパワーエリートに関する分析は特に参考になる。金委員長の人となりを知ることはできないが、少なくとも彼がどのような国造りを目指しているのか、その一端が分かる。
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2019年01月06日

【今週の風考計】1.6─50年前の出来事から新たな気概を汲む!

あけましておめでとうございます。亥年の1年、どうなるかを考えるに、まずは温故知新を旨に、クロニクルを繰った。

50年前の1月16日、チェコスロバキアで、カレル大学の学生ヤン・パラフが、ソ連の軍事介入や「プラハの春」に象徴される改革の後退に抗議し、焼身自殺を図っている。
おなじ50年前の1月18 日、日本では全共闘に占拠・封鎖されていた東大・安田講堂に、機動隊が突入し封鎖解除、ついに東大闘争は潰えた。

一方、和平への動きも加速する。ベトナム戦争終結に向けた交渉が、50年前の1 月 25日からは、アメリカと北ベトナム両代表に加え、南ベトナム政府と南ベトナム解放民族戦線も加わり、4者による拡大和平会談となった。
この年1月20日に就任したニクソン大統領は、こうした状況の下でベトナムからの「名誉ある撤退」を決意した。その下地には「いちご白書」で有名なコロンビア大学の学生闘争のほか、フランス・イタリア・西ドイツ・日本などでのベトナム反戦のスチューデント・パワーがあったのは間違いない。

もう一度、日本にフォーカスしてみよう。50年前の1月6日、沖繩いのちを守る県民共闘会議が、米軍のB52撤去を要求して「2・4ゼネスト」を決定している。9日には国防会議が、自衛隊に配備する次期主力戦闘機F4E(ダグラス社)104機の国産化を決める。
15日、米ロッキード社は児玉誉士夫をトライスター売込みのコンサルタントとして5000万円で契約。7年後の1976年に「ロッキード事件」で明るみにでる。
なんと米国の戦争ビジネスに牛耳られる、今の日本の防衛予算の根源を見る思いだ。歴史に学び事実を明らかにし真実を追求する気概を新たにしている。(2019/1/6)
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2019年01月05日

【おすすめ本】 森川聖詩『核なき未来へ』 小柴一良『FUKUSIMA』原爆と原発─二つの核被害の人体実験=鎌田慧(ルポライター)

もうじき、福島原発事故から8年になる。高熱で溶融しつづけている三基の原子炉の炉心が、どこにあるのか確かめようもない。原発サイト内、林立するタンクに溜まった放射性汚染水は、すでに100万トンを越えた。自然環境と生業から引き離され、故郷を追われたひとびとの生活は、ますます困窮を深めている。

 フクシマに降りそそぐ放射能(放射性物質)を、静かに映しだしたような写真集が、18年12月に出版された。小柴一良『FUKUSIMA』(七つ森書館)である。
 全体が暗い色調に覆われている、捨てられた牛舎の換気扇にからむ、枯れた蔦(つた)の蔓。殺処分された牛たちの卒塔婆。牛舎の窓のそばまで押し寄せる、汚染土を詰め込んだ黒色のフレコンバッグ。街には人影がなく、物音は消えた。風景のなかにいる人びとは無口だ。
 事故から七年が過ぎ、時間が経つにつれて、被災地の風景がこころの内側に定着するようになっている。そのことを感じさせられる写真集だ。

「唯一の被爆国」などといいながら、日本政府は国連の「核兵器禁止条約」加盟を、かたくなに拒否している。核大国・アメリカへの忖度のためだ。森川聖詩『核なき未来へ』(現代書館)は、サブタイトルにあるように、「被爆二世からのメセージ」である。
 フクシマの子どもたちが、避難先でバイキンあつかいされている、という話しがつたえられた。64歳の著者もおなじ体験をしていた、という記憶から書き起こされている。父親が広島で被爆していた。子どものころから身体が弱く、脱力感に悩まされていた。被爆二世、三世は「遺伝的影響は認められない」と、国から切り捨てられてきた。核開発の研究材料にされているだけだ、と著者は主張している。
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2018年12月30日

【今週の風考計】12.30─年末、拗ね者・本田靖春とジャズピアニスト・大江千里に魅せられて

「除夜の鐘」が鳴る前に、後藤正治『拗ね者たらん─本田靖春 人と作品』(講談社)を読み終えた。小生には、戌年の掉尾を飾る感動の本となった。
ノンフィクション作家・後藤正治が類い稀な織職人となって、孤高のジャーナリスト本田靖春の名作を縦糸に並べ、横糸に彼の作品群を編集した伴走者や交友関係を選び、2004年12月4日に閉じる71年の生涯を、縦糸・横糸、巧みにあやつって丹念に織りあげた壮大なタペストリーだ。

本田は、日本が歩んできた「戦後の原液」への思いを胸に、「由緒正しい貧乏人」の目で、社会的事件や人物像の真実を掘り起こし、世に問うてきた。
「スクープ記者の陥穽」を描いた代表作『不当逮捕』の「あとがき」で、本田は、<戦いとったわけでもない「言論の自由」を、(中略)まるで固有の権利のように錯覚して、その血肉化を怠り、「第四権力」の特権に酔っている間に、「知る権利」は狭められて行ったのではなかったか─。>と書いている。

今年は没後14年になる。モリ・カケ問題から、公文書改ざんなど、国民の「知る権利」は、脅かされ続けている。彼の仕事は今でも噛みしめるに充分以上の意味を持っている。

さて最後は、9月5日発売の大江千里のジャズアルバム『Boys & Girls』(Sony Music Direct MHCL30535)も、おすすめである。今や彼も58歳、ニューヨークを拠点に、ジャズピアニストとして活躍、アーティスト活動は35周年を迎えた。あの鼈甲ブチ眼鏡をかけ黒い丸帽子をかぶって弾くピアノが、まるで歌ってでもいるように鳴る。
輝きを放つ新曲「A Serene Sky」や「Flowers」もいいが、やはり彼の代表曲「ありがとう」のジャズピアノに惚れる。末尾ながら、皆さん、よいお年をお迎えください。(2018/12/30)
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2018年12月28日

【焦点】 世界に逆行 民間任せ 外資参入 水道料金高騰へ 市民をないがしろ「改正法」=橋詰雅博

 改正水道法が成立した。これで水道事業の運営権を自治体から企業が買い取ることができる。この「コンセッション方式」は1900年ごろから世界各国に広がったが、2000年以降は水道事業を再び公営化する都市が急増している。水道料金の高騰や水質悪化などが原因だ。世界が再公営化に向かっているのに、日本はそれに逆行する形だ。民営化でどうなるのか。全国の水道職員らでつくる全日本水道労働組合の辻谷貴文書記次長(45)に聞いた。
   ☆
――水道法を政府が16年ぶりに改正したのはなぜですか。
 人口減による給水収益の減少、老朽化した水道管更新費用の増大、水道職員の不足などが背景にあります。三重苦≠ェ長く続いてきたから水道事業に企業を参入させてしのごうというわけです。その手段として導入する「コンセッション方式」は、自治体には管理監督責任が残りますが、運営権はそれを買った企業に移り、水道料金は直接企業が受け取ります。契約期間は20年以上と長期にわたり、業務のやり方は企業にまかされます。

急増する再公営化
 ――ところが欧州などでは民営化の失敗が相次ぎ、水道事業は再公営化が潮流になっています。
 オランダのNGOトランスナショナル研究所によると、2000年から16年で、世界33カ国の267都市で、水道事業が再び公営化されています。
 例えばパリ市。水メジャー≠ニ呼ばれるスエズとヴェオリアの2つの多国籍企業が、85年から09年までの25年間、水道事業を運営してきました。この間、不透明な会計による利益隠しや必要な再投資を怠るなど不祥事が発覚。しかも水道料金は25年間で3・5倍にもなりました。料金が大幅アップしたのは株主配当や役員報酬、借入金の高い利子支払いのためです。契約期間が終了した後、高騰する水道料金が主な理由で、10年に再公営化に。翌11年には株主配当などが不要になったので、料金を8%値下げしました。
 ドイツのベルリン市も14年に再公営化しましたが、企業側から運営権を買い戻すため13億ユーロ(約1671億円)も企業側に支払いました。今年の7月に水道事業民営化の先進国・イギリスを訪ねましたが、民営化の時の「料金が下がる、水質がよくなる、サービスもよくなる」という約束が破られたと市民の怒りはおさまりません。労働党は「水道再公営化」の公約を掲げ、国民の7割が支持したと表明しました。
 ――欧州で商売がしづらくなった水メジャーなどは、アジアにターゲットを絞っていますね。
 スエズとヴェオリアは12年ごろからタイやシンガポール、フィリッピンなどアジア各国に進出しています。スエズはマカオ、ヴェオリアは日本にそれぞれ拠点を持っています。ヴェオリア日本法人などは浜松市の下水道事業の20年間運営権を25億円で手に入れました。

ノウハウ持つ外資
 改正水道法の成立で、水メジャーはいよいよ日本の水道事業市場に参入する可能性は高いです。浜松市の水道事業への参入に意欲を示しています。国内の水事業関連企業は水道事業運営のノウハウはありません。外資に頼るしかなく、水メジャーなどと組んで運営に乗り出すかもしれません。いずれにしても外資が主導権を握ることになります。
 ――日本でも民営化されたら、欧州のような水道料金の高騰などが起り得るのでしょうか。
 運営するのは企業ですから、株主配当や役員報酬、借入金の利子払いなどが生じます。これらの資金をねん出するには利益を上げる、施設のコストの削減が考えられます。となると水道料金の値上げ、コスト削減では例えば品質は落ちるが、価格が安い水道管を使うケースが出てくるかも。料金を引き上げたうえに仕事の手抜きで、施設の安全性は心もとないという状況に陥りかねません。
 また、地震や豪雨などに襲われて水道施設が壊れた場合、災害復旧の最終的な責任は管理者の自治体が負います。コストを切りつめたい企業は、責任がないなら災害に備えた投資をしぶりますので、災害時に被害がより大きくなる恐れがあります。

大都市進出を狙う
 ――企業が狙いそうな都市は。
 事業規模が大きくないと、儲かりませんから人口50万以上の都市が進出対象でしょう。大都市の東京都や大阪市を本命視≠オているはずです。大阪市は運営権の売却額を4000億円と試算しています。
 ――宮城県を始めいくつかの自治体は導入に前向きですが、市民はどうすればいいですか。
 運営権を企業に売り渡し、途中で問題が起きた場合、再公営化するには巨額な違約金の支払いが必要です。ベルリン市のケースは、その見本です。民営化に流されず、公営維持を訴え続け、方策を考えるべきです。
聞き手 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年12月25日号

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【おすすめ本】斎藤貴男『「明治礼賛」の正体』─いま安倍政権が目指す21世紀版「富国強兵・殖産興業」=梅田正己(歴史研究者)

 本書の書名から浮かぶのは明治美化批判だろう。確かに三章で構成される本書の第1章「国策としての『明治礼賛』」では、安倍首相の明治へのたび重なる言及をはじめ、あの手この手の明治称揚が分析紹介される。
 また第3章「虚構の『明治礼賛』とこの国のゆくえ」では、<明治には汚職もなかった>という司馬遼太郎のウソに対する反証から琉球差別など、明治期の負の側面が鋭く抉られている。

 しかし、本書の主題はそこではない。中間の第2章「安倍政権が目指す二一世紀版『富国強兵・殖産興業』」こそが、著者の主張の核心である。
アベノミクスの三本柱、金融政策、財政政策に次ぐ三番目の成長戦略こそが安倍政権の最重要の基本戦略であり、主軸となるのが官民一体の「オールジャパン体制」によるインフラシステム輸出だと、著者はいう。
 日本は今後、少子化で国内市場は縮小し、企業は海外に向かわない限り成長は望めない。今、主戦場は海外でのインフラ構築、当然大プロジェクトとなり、多数の技術者が海外に出てゆく。その彼らがテロに襲われたらどうするか。

 そこで強行採決したのが「駆けつけ警護」を含むPKO協力法改正、安保法制だった。こうして安倍政権の成長戦略は安保政策と表裏の関係で結びついているのだ。
 明治政府が追求したのは富国強兵だった。いま安倍政権が追求しているのも21世紀の富国強兵であり、それこそが「明治礼賛」の「正体」だったというわけである。

 以上の考察をへた上での著者の結論は、「この国の未来は、新しい『小日本主義』を構築する以外にはない」である。
(岩波ブックレット580円)
『「明治礼賛」の正体』.jpg
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2018年12月26日

【焦点】 「水道戦争」を衝くギリシャ映画=橋詰雅博

 ドキュメンタリー映画「最後の一滴まで―ヨーロッパの隠された水戦争」の日本語版完成記念上映会が12月初旬に都内であった。ギリシャ人が監督したこの映画は、フランス、ドイツ、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、アイルランドなど6カ国13都市で4年間取材し、水道事業の民営化に至った経過や、それに失敗して再公営化で立て直した過程などを明らかにしている。
 日本でも水道事業の民営化論が高まっていたこともあって、NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)や全水道労組などが中心となりプロジェクトチームをつくり、8月ごろから日本語制作をスタートさせた。作業にかかる費用100万円はクラウドファンディングで調達した。
 PARCの内田聖子共同代表は「8月に早くも100万円を突破し、11月に214万円にも達しました。予想外にお金が集まり、支援していただいた方に感謝しています」と語った。
 さて映画の中身だが、およそ2つに分けられる。 
財政再建計画の一環として水道事業の民営化を欧州連合(EU)から強要させるギリシャ、ポルトガル、アイルランドが展開する反対運動がその一つ。例えばOECD(経済協力開発機構)加盟国で唯一、水道料金は一般税を通じて徴収していたアイルランドでは、新料金設定に抵抗した市民は2014年11月に首都ダブリンで20万人反対デモを実施した。 
もう一つはパリ市やベルリン市で起きた水道料金の急速なアップや運営に関する情報の非開示問題などから再公営化を果たした活動(1面参照)だ。25年間の民営にストップをかけて、10年に再公営化したパリ市は、世界の水道事業の再公営化の流れをつくる大きなきっかけになった。
 一方、日本は改正水道法が成立し、民営化に走り出した。欧州だけでなく米国でも再公営化が急増しているというに。映画は民営化に前のめりの浜松市など11カ所で上映が決まっている。
橋詰雅博
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2018年12月23日

【今週の風考計】12.23─日本は貿易協定で、トランプ大統領に「毒薬条項」を飲まされる危険!

常軌を逸している<恐怖の男─トランプ大統領>は、ついに「毒薬条項」まで日本に飲ませる魂胆であるのが分かった。

年明け1月中旬にも交渉が始まる米日貿易協定(USJTA)では、まず日本製自動車の米国現地での生産増を確実にさせ、検疫の面から農産品に課す日本の高い輸入関税を削減させる。安倍首相は、しきりに「物品」をめぐる協定(TAG)だと強調したが、とんでもない。
通信やサービスから金融分野も含めた包括的な貿易協定の締結に引きずりこむ考えである。日銀の金融緩和為政策にも横やりを入れ、デフレ脱却が目的だとの説明を一蹴するかのように、為替政策への介入までもくろむ。これでは自国の金融政策すら支配されかねない。

恐ろしいのは中国を排除する貿易協定の締結を目指していることだ。9月末に妥結した「米国・メキシコ・カナダの3か国協定」には、中国との貿易協定の締結を難しくする「毒薬条項」が盛りこまれている。トランプ大統領は日米貿易交渉でも、同じように「毒薬条項」を組みこむよう要求する構えだ。
しかし日本は、中国も参加して「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」や「日中韓自由貿易協定(FTA)」を積極的に推進している。これにもトランプ政権は、圧力を加えてくるのは間違いない。いまや日本は通商外交のフリーハンドまで失われ、米中貿易戦争の挟み撃ちに遭う可能性が高くなってきた。

この1年、世界や日本が、トランプ大統領のゴリ押し外交に翻弄されてきた。この情けない事態は終わりにしなければならない。(2018/12/23)
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2018年12月22日

【部会リポート】 軍備増大の自衛隊と米軍一体化が加速 米製武器爆買い℃~まらず=田悟恒雄 

 11月30日、水道橋・YMCAアジア青少年センターに東京新聞・半田滋論説委員を講師に迎え、出版部会11月例会が開かれた。
 半田さんと言えば、4半世紀余にわたる防衛省(庁)取材経験を持つ業界きっての防衛問題通。その豊富な情報量と鋭い分析力には定評がある。この日の演題は「軍事列島・日本の全容─おそるべき自衛隊と米軍の一体化」。第2次安倍政権発足以来6年間、「普通の国の軍隊」をめざし邁進してきた自衛隊の変貌ぶりが語られた。
解釈改憲が転換点
 特定秘密保護法(13年)、安保関連法(15年)、共謀罪法(17年)と次々「壊憲」の地ならしを強行、日本国憲法の外堀を埋め尽くした。その致命的な転換点となったのが、14年7月1日の閣議決定だった─。強引な「憲法解釈」で、歴代内閣が否定してきた「集団的自衛権行使」を容認。しかも時の内閣の一存でこれを決められる、と。
 16年3月、安保関連法が施行されると、間髪を入れず「実績づくり」に着手─。
 南スーダンPKOでは、他国の武力行使との一体化を進め、駆け付け警護や宿営地の共同防衛を新たな任務に加えた。これを正当化するため、現地部隊の日報に「戦闘」とあった事案を「衝突」と言い換えたばかりか、日報そのものまで隠蔽してしまったのは記憶に新しい。また、北朝鮮対策を口実とした米艦艇防護、米航空機防護、米艦艇への洋上補給も頻繁に行われているが、それらは「特定秘密」とされ、国民に知らされるのは、実に1年以上も後になってからのことだった。
 さらに見逃せないのが、自衛隊法の改正だ。95条の2で「合衆国軍隊等の防護のための武器の使用」が定められ、現場自衛官の判断で武器使用が可能になった。「シビリアンコントロール」は、すっかり骨抜きにされてしまった。
 そもそも日本の基本政策は、@専守防衛A軍事大国にならないB非核3原則C文民統制の確保にあるとされてきたが、もはやいずれも「風前の灯火」─。
来年度7000億
 18年度予算案には「敵基地攻撃」可能な巡航ミサイルや島嶼防衛用高速滑空弾が登場。護衛艦「いずも」の空母化(近く改定の「防衛計画の大綱」では、姑息にもこれを「多用途運用護衛艦」と呼び換える)まで浮上。米国製兵器の爆買い≠ヘ止まるところを知らない。欠陥機といわれるオスプレイ、F35ステルス戦闘機(なんと100機!)、それにイージスアショアも。こうして安倍晋三政権下で増え続ける米国製武器の調達金額は、19年度には7000億円に上るという。それも見積もりに過ぎず、今後さらに増えるのは必至。
 安倍首相は、改憲の手始めに「自衛隊を憲法に明記する」ことを狙っている。
 「違憲との批判が強い安全保障関連法を改定された憲法によって合憲とし、次の段階では自衛隊を『軍隊』つまり制限のないフルスペックの集団的自衛権の行使と多国籍軍への参加に踏み切る」─その魂胆を半田さんはそう見抜いている。
 都合の悪い現実に対しては見え透いたウソと強弁を押し通し、ほとぼり冷める頃合いを見計らって一気に本望を遂げる─「モリカケから改憲までアベ政治おなじみのパターン」である。
田悟恒雄(出版部会)

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2018年12月16日

【今週の風考計】12.16─あのベストセラー本が『日本ウィ紀』と言われる理由

★百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)が、幻冬舎25周年記念出版と銘打ち、11月12日、初版15万部で発売されるや否や、1か月ほどで、5刷、50万部の売れ行き。
★しかし、その記述のズサンさが明らかになり、騒動となっている。Wikipediaなどからの“コピペ疑惑”が、本文やコラムなどの記述に数多くみられ、剽窃ではないかと指摘されている。

★百田尚樹氏も「この本を書くのにね、山のように資料を揃えた。そのなかにはね、そりゃWikipediaもあるよ!」と開き直っている。出典も明示せず、剽窃する感覚には、みな呆れている。本のタイトルも、“日本ウィ紀”“日本コピペ紀”などに変えるべきだと、皮肉られている。
★本書の内容は、従来の保守派や右派の主張をちりばめて叙述したシロモノ。日本は太古からスゴイ民族で、これまでの侵略戦争も戦争犯罪も重大なことではなく、戦後の「東京裁判史観」は荒唐無稽であり、いまこそ素晴らしい日本人の精神を復活させるべきで、とりわけ憲法9条改正は急務である─との主張である。

★『日本国紀』の版元である幻冬舎の見城徹社長は、先日、亡くなった津川雅彦氏や「新潮45」に掲載した差別論文の執筆者・小川栄太郎氏、さらには櫻井よしこ氏などの右派文化人グループとして、百田尚樹氏とともに、有名な安倍応援団の一人であるのは、つとに知られている。11月25日のAbemaTV「徹の部屋」では、見城徹氏自らが百田尚樹氏、有本香氏と鼎談し、本書を絶賛している。
★幻冬舎は、剽窃とも疑われる本を出版しながら、増刷の際に修正や記述を変えたり、引用部分に「 」をつけたりして、ごまかしている。「もし修正したならば修正箇所を公開してほしい」とのフアンからの声には、どうこたえるのか。製造者責任が問われている。(2018/12/16)
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