2021年04月21日

【おすすめ本】フリート横田『横丁の戦後史 東京五輪で消えゆく路地裏の記憶』─土地の古老からじっくり横丁が紡いだ物語を聞きだす=南陀楼綾繁(ライター)

 東京は成立以来、つねにスクラップ&ビルドを繰り返してきた。この数年は、二度目のオリンピックを前に古い横丁や小路が姿を消しつつある。
 著者は毎夜のごとく、狭い通りにひしめくスナックや小料理屋で飲みながら、ママや常連客に昔話を聞く。
 そうした「夜の取材」 だけでなく、土地の古老に会って話を聞き、特殊な資料を読み込んで、この場所がなぜ生まれたかを探っていく。
 その横丁の探偵ぶりに唸るのは、第二章「在日 コリアンの横丁」だ。浅 草の国際通りに面した「焼肉横丁」のあった場所は、かつて十二階下と呼ばれた売春街(石川啄木も通った)だったが、 関東大震災で消滅。その空白地帯に終戦直後、戦災者の救済目的で木造長屋が建てられる。

 著者は、この長屋をつくった二人を歴史の闇から引っ張り出し、彼らが夢見たものを描く。同時に、同じ場所が在日コリアンの楽園になっていった事情を明らかにする。
 きれいだが面白みのない街に飽きたレトロ趣味の若者は、これらの横丁にずかずか入り込み、写真をネットに載せる。取材にもそういう暴力性があることを、著者は自覚している。それでも知りたいという業のようなものが、彼を突き動かしているのだろう。
 著者の視点は過去だけでなく、現在にも向けられる。池袋のチャイナタウンには、多くの中国人がSNSで情報を得てやって来る。そして、物理 的にも人間関係的にも「密」である飲み屋は、 コロナ禍を経てどうなっていくのか。過去を通して、横丁の未来を見据える一冊になった。(中央公論新社1500円 )
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2021年04月18日

【今週の風考計】4.18─トリチウム汚染水に潜む深刻な未解決問題

ついに政府は、「3・11フクシマ」原発の汚染水を、海に放出する方針へと舵を切った。いま福島原発には処理水タンクが約1000基(容量137万トン)、すでに貯蔵量は125万トン、9割を超え1年後の秋には満水になる。これ以上タンクの増設は敷地の確保も含め、限界だとして海洋放出するという。
トリチウムは体内に取り込んでも排出しやすく健康被害は起こりにくい、海外でも原発から出る「トリチウム水」は海へ放出され、問題ないと、政府は主張している。

だが福島原発の汚染水は、トリチウム以外の放射性核種が見つかった経過がある上に、通常運転の原発から排出される処理水とは性質が異なる。
 通常の原発から海に放出される「トリチウム水」は、無機トリチウムのため、魚は摂取しても、どんどん排出するため、生体内半減期は12日と短い。
 福島原発の「トリチウム水」は、はじめは無機トリチウムでも、時間の経過とともに、タンク内の微生物に取り込まれて有機結合型トリチウムに変化している。これが海に放流されると、魚が栄養源として摂取し体内に蓄積される。
この有機結合型トリチウムの濃度は、海洋にある有機物の百万倍にもなる。生体内での半減期は40日から1年に及ぶ。国内や海外の原発から放出される「トリチウム水」とは、全く違うのだ。

福島原発の処理水に含まれるトリチウムは、総量が約860兆ベクレル。それを年間の放出水準22兆ベクレル以下、すなわち処理水1リットル当たり1500ベクレルまで薄める再処理をして海に流す。
 タンク1基分1370トンを再処理・希釈するには、なんと500倍の68万トン、原発敷地を埋めるタンクの半分500基分の海水が必要となる。そして1年間に3万1000トンの処理水を、40年かけて海に流すのだ。
海水で薄めて海へ流す? いくら薄めたってトリチウム全体の放出量は変わらない。海にはそれ以上の排出先がない以上、海や魚に累積され海の生態系を汚す。

その間、福島原発から1日140トンの汚染水が発生する。タンクに貯蔵するしかない。40年たっても住めない土地だってある。そこの地権者と話し合って、タンク設置用の土地を取得することも可能だが、検討すらしない。
さらには40年もあれば、半減期12年のトリチウムは、大幅に減衰する。トリチウム除去の開発も進むだろう。なぜ海への放出を急ぐのか。
 しかも肝心の汚染水の発生をゼロにする道のりが見えてこない。汚染水の発生元である原子炉内デブリは、なんと880トン。人も近づけない高レベルの放射線量が壁となり、取り出す見通しすら立たない。

漫画家・やくみつるの風刺絵(朝日・4/17付け)ではないが、過去のいざこざをなかったこととして和解することを、<「海」に流す>と書いた子供が、「ちがうの? ニュースで言ってたのに」と、ぶつぶつ母親に言うのを笑えない。本当に原発汚染水の処理を、「水」に流してはいけないのだ。(2021/4/18)
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2021年04月14日

【おすすめ本】榊原崇仁『福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく』─「100ミリシーベルトの少女」 を通して被ばくの歪曲に迫る=鈴木 耕(編集者)

 調査報道のお手本のような作品である。著者は東京新聞記者。福島原発事故が起きたとき、石川県の北陸本社勤務。すぐに石川県の志賀原発は果たして大丈夫なのかと疑問を持つ。
 やがて東京本社特別報道部に移り、福島に通い始めて原発事故が抱える別の恐ろしさに突き当たる。それが子ども被ばく調査の闇だった。
 著者は情報公開制度を利用し、被ばく関連のあらゆる資料を請求し始める。そこで目にしたのは「100ミリシーベルトの少女」の存在だった。
 「甲状腺等価線量100ミリシーベルト」は政府も福島県も「甲状腺がんの発症リスクが増加する数値」と認めていた。その数値に達する被ばく少女がいたとすれば大問題だと著者は思ったが、なぜか埋もれたまま。その理由は何か。記者魂がうずく。

 著者は数万枚に及ぶ資料を、情報公開制度で入手し、根気よく丹念に読み込んでいく。資料から関係者を洗い出し、インタビューを申し込む。応じてくれる人もいれば、けんもほろろに拒否する人もいる。
 著者は挫けない。まるでミステリ小説のように、謎の薄皮を1枚1枚剥ぎ取っていく。そこから見えてきたのは歪曲と工作だった、と記す。
 スリリングな展開で謎は少しずつ晴れていくものの、立ちはだかるのは、やはり<巨大な組織>だった…。
 ミステリ小説には解決の結末が待っているが、残念ながら本書にはそんなカタルシスはない。隠蔽の謎はまだ手の届かないところにあるからだ。
 だから著者には、手を緩めずに、2発目3発目の弾丸を撃ち込んでほしい。(集英社新書900円)
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2021年04月11日

【今週の風考計】4.11─コロナ「まん延防止」と大阪・吉村府知事の破綻

ついに政府は「まん延防止の重点措置」を6都府県に要請せざるを得なくなった。緊急事態宣言の解除から1カ月も経たない。
 すでに大阪、兵庫、宮城は5日から、続いて東京、沖縄、京都が12日からの実施だ。さらに地方の各県へと広がるのは確実。
期間は、東京が5月11日までの30日間、京都と沖縄は5月5日までの24日間。飲食店の営業時間を午後8時までとし、不要不急の都道府県間の移動も、極力控えるよう促す。
 だが緊急事態が解除されたかと思うと、今度は「まん延防止」、しかも自治体によっては対象外の地域もあるから、混乱ばかりでなく「コロナ慣れ」など緊張感は薄れるばかり。「まん延防止の重点措置」で、感染拡大が抑えられるのか、不安は尽きない。

ここにきて連日、テレビや新聞各紙は、トップにコロナ変異株を取り上げ、その特徴を解説し感染拡大に警鐘を乱打している。
 英国由来のコロナ変異株が猛威を振るっているからだ。従来株と比べて感染力が1.32倍も強い。南アフリカ型やブラジル型なども加え、変異株感染者が日本全体で1040人を超える。5月1日ごろには変異株の割合が7割になると言う。
 だが変異株の監視強化に必要な陽性者に対するスクリーニング検査は、全国平均32%、目標の40%に達していない。先が思いやられる。

それにしても大阪府の感染者数の急拡大は異常としか言いようがない。8日の新規感染者数が905人、9日883人、10日は過去最大の918人と続く。
 これも吉村知事が経済を最優先したいがために2月末に下した、緊急事態宣言の前倒し解除が招いた結果だ。この7日、2度目の医療非常事態宣言を出したものの、すでに病床運用率は重症患者用で9割を超えている。
 整備費約37億円を投じ、確保病床60床・設置期間2年の「大阪コロナ重症センター」も、昨年12月中旬にオープンしたものの、その後の医療従事者の確保が困難で、やっと14床ほどが機能しているだけだという。

そこに加えて、驚くなかれ、3月初めには吉村知事が、大阪にある最大236床の重症病床を150床まで減らすよう医療機関に促していたことまで明らかとなった。これでは医療崩壊が起きるのも当然だ。
 こう見てくれば「維新の会」橋下・松井・吉村知事が続けてきた、新自由主義による地域医療システムの改変による人災なのは、明らかではないか。
吉村知事 よく耳を傾けよ! コロナ変異株が拡大する中、オール大阪で力を発揮すべき時、二度も否決された大阪都構想を焼き直す、府・市の広域行政一元化プランに執着し、これ以上地域医療の拡充をないがしろにするのはよしなさい。(2021/4/11)
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2021年04月07日

【好書耕読】「うちなーぐち」に耳を傾けて=石川 旺(JCJ賞選考委員)

 「島口説」(しまくどぅち)は、東京の池袋にあるパモス青芸館の開館にあたって、企画された北島角子主演の一人芝居。1981年に文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞した。
 舞台は沖縄市の繁華街にある民謡酒場。そこの女主人の語りと歌と踊りで構成されてゆく。第一部では戦争から戦後にかけて一人の女性が直面した激動。第二部では基地に重くのしかかられた戦後沖縄の抵抗と闘いの歴史が描かれている。
 劇中では沖縄の古謡、民謡など多数が歌われ、また語りにも沖縄言葉(うちなーぐち)が豊富に取り入れられている。ささやかな個人の幸せが大きなうねりの中で翻弄される過程。続いて訪れた巨大で理不尽な力に対する人々の抵抗などが、柔らかな語り口や歌の中から次第に鮮明さを増して浮かび上がってくる。

 『謝名元慶福戯曲集 島口説』(ゆい出版)には代表作「島口説」をはじめ「美ら島」、「命口説」など六本の戯曲を収載。著者は「島口説」を二晩で書き上げたという。沖縄で生まれ育った著者の情念が噴出し、突き動かされた時間であったに違いない。
 セリフを書くとき、声を出す癖がある著者は「島口説」執筆中に自分の声が北島さんの声になり驚いたと述べている。また彼は劇作家としてだけでなく、映像作家としても優れた報道活動をしている。
 2018年3月、土木技術者の北上田毅氏が沖縄防衛局による大浦湾のボーリング調査の結果を情報公開で入手。湾内に豆腐のような軟弱地盤があることを発見した。

 謝名元氏は6月にドキュメンタリー・シリーズ「美ら海辺野古」で北上田氏を取材し、軟弱地盤の存在を広く訴えた。しかし中央の大手メディアは動かず、9月の県知事選挙に傾注し、12月には土砂投入による不可逆的な環境破壊が開始されてしまった。大手メディアは翌19年になって、ようやく軟弱地盤を報じ始めたのだ。
3月号「好書耕読」石川 旺の本「島口説」.jpg
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2021年04月04日

【今週の風考計】4.4─最高裁 孫の世話に励む祖母の「監護者」申し立てを却下! 

■誰しもオヤッと首をかしげたのではないか。娘の離婚で長い間、孫の親代わりをしてきた祖母が、孫の世話をする「監護者」として申し立てた裁判に対する判決内容である。
 最高裁は「父と母以外は監護者の申し立てはできない」と、祖母の訴えを却下した。さらに別事案での「孫との面会交流」を求める申し立てにも、「父母以外には認めない」との判決を下した。
■とりわけ「監護者」の申し立てには、下級審の判断を覆し、裁判官5人全員一致の意見による判決とくるから驚く。
 1審の大阪家裁は、子供が母親の再婚相手を拒否しており、母親らに監護させれば精神状態が悪化する恐れがあると判断。同居している祖母に「監護者」を指定している。さらに2審の大阪高裁では、「子の利益のためなら、父母以外も申し立てができる」との判断を示していた。
 それもそのはず、「監護者」とは、未成年の子供と生活し、身の回りの世話や教育をする「監護権」を持つ人、と定義されているのだから、1審・2審の判決は極めて真っ当だ。

■子どもの福祉や権利、意思の尊重を第一に置けば、最高裁が民法上の規定にある第三者への権限移譲に神経をとがらせ、実情を無視した判決で却下するのは許されない。
 すでに家族法制の見直しを議論している法制審議会や有識者らの研究会でも、子への虐待が絡むケースや父母の監護能力が欠ける場合、祖父母に「監護者」の申し立て権を与えることなど提言している。それを最高裁は、なぜ踏まえないのか。
■また離婚したら子どもの親権は、父母のどちらか一人しか認めない、今の民法の「単独親権制度」をめぐる裁判も各地で起きている。つい最近、「共同親権」を求めて起こされた裁判で、東京地裁は「単独親権制度は憲法に反するとは言えない」との判決を下した。
 憲法上の平等な権利の保有に抵触しないか、またも古い家族観で議論を深めない判決には、大いなる疑問が湧く。とりわけ最高裁を始め各級裁判が、憲法判断を避けた判決を繰り返しているのも問題だ。

■2017年当時、安倍内閣に対し野党が求めた臨時国会の召集に、3カ月以上応じなかったのは、憲法53条に違反するとして提訴した裁判の判決が出された。これまた東京地裁は憲法判断をせずに請求棄却した。
 憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定めている。
 同種訴訟は岡山など全国3地裁で提起されているが、昨年6月の那覇地裁判決では、憲法53条の要求に基づく召集は「憲法上の法的義務だ」と明言した。だが召集の時期を巡っては憲法違反かどうか、その判断を避けている。
■このほど最高裁が下した、沖縄・嘉手納基地を発着する米軍機の夜間・早朝の飛行差し止め裁判への判決も、騒音への金銭的賠償は認めるが、肝心の騒音を発する米軍機の飛行差し止めは却下した。
 米軍の勝手放題な行動が、独立国家としての日本で許されるのか、深い議論もなく憲法判断を避けた判決を下しているようでは司法の独立が泣く。(2021/4/4)
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2021年04月03日

【焦点】コロナワクチンへの不安  南ア型に効果弱い  日本に多いアナフィラキシー=橋詰雅博

 新型コロナウイルスの第4波は、感染力が強い変異株が猛威を振るいそうだ。ワクチンの効果はどうなのか、また副反応などへの不安も消えない。
 英国型、ブラジル型、南アフリカ型の変異株のうち南ア型に対して、ワクチンの効き目は落ちる。南ア型は体の免疫防禦をすり抜ける免疫回避≠備えているからだ。加えて国内では由来がわからないナゾの変異株も確認されている。この型へのワクチンの効果は不明だ。
 英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンが欧米やアジアなど15カ国、1万3500人以上を対象に実施したコロナワクチン調査によると、日本は副反応を懸念する人の割合が61%で最も高かった。その懸念は当たっている。
 ワクチン接種後にじんましんや息切れなどアナフィラキシーショックを発症した日本人は、18万人接種で36人(3月11日現在)と米20万件に1件、英10万件に1、2件と比べると相当に多い。人種の差異に由来しているのだろうか。日本では女性がほとんどで、なぜ多いかははっきりしない。

 ニューヨーク在住のジャズピアニストの大江千里は、2度目にモデルナ製ワクチンを接種した後、急激に体調を崩し、気を失った体験を『ニューズウィーク誌日本版』と月刊『文藝春秋』に書いている。
 大江は、持病はなく、過去にアレルギー反応が出たこともなかったそうだ。にもかかわらず失神したのは、迷走神経反射を起こしたのが原因とみられる。
 迷走神経は体をリラックスさせる自律神経。ワクチンの筋肉注射で強い痛みや恐怖心を感じたりすると、迷走神経反射により血圧低下などで意識が遠のくのだ。大江の症状とあてはまる。こういうケースがあることを知っておいて損はない。

 さらに注視したいのは、抗体依存性感染増強(ADE)だ。ワクチンを接種しておけば発症や重症化の予防が期待できる一方でADEはワクチン接種が災いしコロナに罹患したとき、かえって病状が悪化する現象を指す。SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、デング熱のワクチンで報告された。
 ワクチンを打ったことで偶然に生まれる悪玉抗体≠ェ引き起こす。今のところ、その症例報告はないが、ADE患者が現れないとは言い切れない。
 また人類初のワクチンゆえに長期的に人体に悪影響を与える恐れがあると警鐘を鳴らす医師もいる。
 とはいえコロナに限らず100%安全なワクチンは存在しない。感染、発症、重症化のリスクを抑制するメリットは、副反応のリスクを上回る。ありきたりの結論だが、やはりコロナワクチンは接種したほうがいいだろう。
 橋詰雅博
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2021年03月31日

【リレー時評】 桜咲く頃 なぜか怖い事件が起きる!=守屋龍一(JCJ代表委員)

 コロナ禍にあって出版界は、昨年1年間の販売額1兆6168億円(前年比4.8%増)、2年連続のプラス成長となった。
 これも「巣ごもり」により、本への関心と需要が高まったからである。典型がコミック『鬼滅の刃』(集英社)。全23巻で累計1億5千万部、この1年間だけで1億1千万部・売り上げは5百億円だ。
 私も、この1年間、多くの本を読んだ。そして最近、柳広司『アンブレイカブル』(KADOKAWA)を一気読み。スゴイ小説だ。
 日本が戦争へと突っ走る戦前・戦中にかけ、人々を恐怖に陥れた治安維持法と特高の暴虐ぶりを描く。
 プロレタリア文学の旗手・小林多喜二、反戦川柳作者・鶴彬、「横浜事件」で弾圧された編集者、そして哲学者・三木清の4人を取り上げ、犯罪のデッチあげから苛烈な拷問、ついには獄死へと追い込む叙述とミステリアスな展開は手に汗握る。
 だが、アンブレイカブル=敗れざる者たちは、人間として生きる矜持と信念を、死を賭しても貫く。彼らの重い問いかけが、ひたひたと私たちに迫ってくる。
 日本学術会議・会員6人の任命拒否を始め、為政者が目論んでいる「言論・学問・表現の自由」への介入・規制が、何をもたらすか、よくよく考えねばならぬ。

 なぜか桜咲く3月、怖い事件が歴史的に見ても頻発している。戦前では、
1925年3月19日:治安維持法が成立。以降、全ての社会運動の弾圧に利用。
1928年3月15日:日本共産党員1568人の一斉検挙。いわゆる「3・15事件」。
1929年3月5日:労農党衆院議員・山本宣治が右翼テロにより暗殺される。
1933年3月27日:日本軍部は満州侵略を正当化し国際連盟を脱退。
1945年3月10日:米軍による東京大空襲(23万戸消失・死傷者12万人)。

 戦後も怖い事件は3月に頻発する。
1954年3月1日:第5福竜丸がビキニ環礁で米国の水爆実験により被曝。
1979年3月28日:米国スリーマイル島原発で放射能漏れ事故。
2011年3月11日:東日本大震災・福島原発の爆発(死者1万5899人・行方不明2526人)。

 直近の怖い事件も忘れてはなるまい。
2017年3月13日:安倍首相の加計学園に対する優遇が発覚。
2018年3月12日:財務省は森友学園に関する公文書改ざんを、ついに認める。
2021年3月1日:東北新社と菅首相の長男による総務省接待で、内閣広報官が辞職。

 ふりかえれば「桜を見る会」とその前夜祭を巡る参加者や会費への疑惑に始まり、安倍・菅の両首相が用意した「モリ・かけ・親子丼」と揶揄される特別メニューで官僚の忖度を煽り、国会ではウソの答弁を百回以上も繰り返してきた。
 坂口安吾の小説ではないが、永田町の「桜の森の満開の下」には、国民を脅かす醜い鬼がいる。
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2021年03月28日

【今週の風考計】3.28─尖閣諸島をめぐる中・日・米の危ない軍事行動

沖縄県石垣市・尖閣諸島の周辺が緊迫している。中国は海警局の船舶に、武器使用を認める「海警法」を施行して2カ月、海上警備と称して尖閣諸島周辺の領海侵入をやめない。23日には中国海警局の船4隻が、1隻は機関砲のようなものを搭載して、相次いで領海侵入した。すでに今年に入って10回目となる。
 4年半前には中国公船が20隻以上、さらに400隻以上の中国漁船が共に押し寄せ、尖閣諸島の周辺を航行し、威嚇行動を繰り返した。漁船には退役軍人や漁民らで組織している「海上民兵」が100人ほど乗り込んでいたという。
国連海洋法条約など、沿岸各国に認められた権限を侵犯しているにも関わらず、中国国防省は「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土だ。海警局の活動は正当で合法だ」と述べ、領海侵入を正当化している。

一方、日本政府は領海に侵入した船舶に対し、海上保安庁の巡視船が行う「危害射撃」を認めるとの見解を発表している。船舶に銃口を向けず引き金を引く「警告射撃」と、乗員に危害が生じないよう注意しながら船体を狙う「船体射撃」に加え、相手に死傷者が出ることも想定して銃撃する「危害射撃」も可能とする。
「危害射撃」の要件は、あくまで正当防衛であり、相手が撃ってこなくても、領海侵犯だけで武器使用の要件を満たすのか。また不用意な「危害射撃」が、外国政府の船への「先制攻撃」と受け取られ、国際問題に発展しかねない。

さらに、ここにきて日本政府は、日米間の安全保障協議委員会(2プラス2)で合意した、尖閣諸島周辺の安全確保に向けた実践的な日米共同訓練の具体化を急いでいる。
 尖閣有事を想定した訓練には、米側は海兵隊と陸海空軍が参加するとはいえ、最前線に出て主体的に対処するのは自衛隊。米軍は側面から支援・補完する枠組みになる。その場合の実地訓練はどこでやるのか。
尖閣諸島のうち北東にある久場島と大正島は、日米地位協定に基づき、米軍が管理する演習場として提供されている。米軍が了承すれば、自衛隊との共同訓練に使うことが可能になる。
 沖縄では相次ぐ米軍機の低空飛行訓練も、尖閣情勢を念頭に中国の動きをにらんだ訓練、そして日米共同作戦への地ならしとみて、警戒を強めている。

この秋には陸上自衛隊が隊員14万人を総動員して、尖閣諸島周辺などでの有事を想定した、28年ぶりの大演習を検討している。沖縄に駐屯する第15旅団も参加する予定だという(「沖縄タイムス」3/23付)。いや増す緊迫に目が離せない。(2021/3/28)
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2021年03月26日

【焦点】なぜ米中は海底ケーブルで激突するのか=橋詰雅博

 米中が海底に敷設する光ケーブルをめぐり攻防を展開中だ。
 この光海底ケーブルは太平洋や大西洋などに張り巡らされる。メールや金融取引情報、国際電話など膨大な国際データ通信のほとんどが海底ケーブルを通る。速く、安く、安定して送れるのが売りだ。日米仏が世界シェアの9割を占めるが、ここにきて中国がその市場に食い込もうとしている。
 中国企業ファーウェイの関連会社は、3年前にカメルーンとブラジルの約6000キロメートルをつなぎアフリカ大陸と南米大陸の国際通信網を築いた。日米仏は中国の参入に驚愕。当時のポンペイ米国務長官は海底ケーブル分野から中国企業を排除し、同盟国などの企業でネットワークをつくると宣言した。
 この背景には何があるのか。米政府や米国の個人・企業の情報などが中国関与のケーブルを通過すると、中国側に筒抜けになることを危惧したからだ。

 昨年6月にはロサンゼルスと香港を結ぶグーグルやフェイスブック、香港企業による共同事業計画に米司法省は待ったをかけた。香港は中国と一体と見たためで、結局、計画はつぶれた。また、チリは南米とアジア・オセアニアをつなぐケーブルを計画し、価格が安い中国企業を選ぶ段階まできたが、一転、日本に受注が決まった。チリは米国に忖度したとみられている。
 ミクロネシア連邦とキリバス、ナウルを結ぶケーブル計画でも、最近、不可解な動きが起きている。日仏企業より安値を提示した中国企業の受注が有力だったが、突然、3カ国側は「入札は無効」と中国企業に通知した。中国参入を警戒する米日豪が要求した入札見直しを受け入れたからとみられる。
 中国に5Gで後れを取った米国は、安全保障面で深くかかわる光海底ケーブルで巻き返しを図ろうとしている。
米中の激突、果たしてどちらに軍配が上がるのだろうか。
橋詰雅博
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2021年03月24日

【出版界の動き】「巣ごもり」で高まる出版需要とアマゾン膨張

コロナ禍でも出版界の売り上げが好調─2020年の紙と電子を合わせた出版市場は1兆6168億円(前年比4.8%増)。紙は1兆2237億円(同1.0%減)、そのうち書籍6661億円(同0.9%減)、雑誌5576億円(同1.1%減)だが、電子出版3931億円(同28.0%増)の効果で、2年連続のプラス成長となった。
 コロナ禍の「巣ごもり」需要を反映し、書籍は学参・児童書の大幅な伸長に加え、文芸書、ビジネス書などの躍進が目立つ。コミックは『鬼滅の刃』(集英社)が爆発的なヒット、全23巻で累計1億5千万部、この1年間だけで1億1千万部・500億円の売り上げだ。
 また電子コミックが急伸長(同32%増)し、コミック市場は紙と電子を合わせ6126億円となった。

大手出版社の増収増益─講談社は売上高1450億円(前年比6.7%増)、純利益109億円(同50.4%増)の大幅増益。集英社は売上高1529億円 (同14.7%増)、当期純利益209億円(同112%増)。『鬼滅の刃』の大ヒットで、コロナ禍を吹き飛ばす好決算の原動力となった。

出版流通の危機─日販とトーハンによる「物流協業」の一つとして、雑誌の返品業務を埼玉・蓮田市の共同センターで実施する。併せて出版社に物流コスト負担を要請。またオンライン書店「楽天ブックス」が、千葉・市川市にある物流センターで稼働。午前中に注文すると翌日に届く「あす楽」サービスの対象商品も拡大させる。
 出版社や取次・書店の間でSkypeやZoomを使ったオンライン商談が進む。

アマゾン膨張─アマゾンが日本国内で売上げた2019年度の販売額は1兆7443億円。アマゾンの出版物販売額は3000億円近くとなる。いまやアマゾンは書籍流通で約2割のシェアを占め、KADOKAWAを始めとして、直接取引出版社は3631社(前年比689社増)、取次機能も果たすようになった。
 さらにアマゾンは、書店から注文のあった出版物の卸し事業にまで参入する。そのため物流拠点を府中、上尾、久喜、坂戸の4か所10万坪を開設し計21拠点に増やす。
 この影響を最も受けたのが出版業界で、とりわけ書店は経営が厳しく閉店・休店が続き、2020年に9762店(前年比422店の減少)、ついに1万店を切った。

出版物と外税表示─4月1日から消費税額を含めた「総額表示制度」が義務化されることに対し、出版協は消費税の「外税表示」の恒久化を要望。「再販商品である出版物については、消費税率改訂のたびに事業者に新たな諸費用・負担がかかり、在庫書籍の絶版化を再び招きかねず、読者・消費者にとって最大の文化的不利益となる」との理由から、総額表示に反対の意思を表明している。
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2021年03月21日

【今週の風考計】3.21─「直美」と「なおみ」の深い気持ちに心を寄せて

タレントの渡辺直美さんを「ブタ」に見立て、東京五輪の開会イベントに「オリンピッグ」なるキャラクターとして、登場させようというのだから呆れる。人の容姿を侮辱し嘲るルッキズムは「差別」そのもの。
 それを平気で舞台化する案をLINEに流したディレクターが辞任した。当然だ。
当の渡辺直美さんは、「私がブタになる必然性ってありますか?」と、目に涙を浮かべて語っている。
 「デブとか言ってくる人に屈したくないの。私のことは私が決める。人の見た目で、ものを決める時代じゃない」と言い切り、「同じようにコンプレックスに悩む人、乗り越えた人に…自分に自信を持って、自分のことを愛して欲しいし、自分のことを誇って欲しいと思う」と訴えている。
彼女は米国の歌姫ビヨンセのモノマネでブレイクしたが、その後、ファッションリーダーとしても支持を集め、SNSのフォロワー数は930万人を超える。3月いっぱいで日本のレギュラー番組を卒業し、4月から米国に活動拠点を移す。しかも契約した米国のエージェントは、ビヨンセも所属する会社だ。

ビヨンセといえば、大坂なおみ選手を挙げねばならぬ。昨年10月16日に、23歳の誕生日を迎えた彼女は、かねてから大ファンを公言していた歌姫ビヨンセから、バースデイメッセージをもらい大感激! あの強さの原動力にもなっている。
白人警官による黒人男性フロイドさん死亡事件を機に、人種差別や警察暴力に対する抗議の声を上げ、事件現場のミネアポリスにも出向いて抗議に参加した。
 その理由を語り、こう訴えた。「『人種差別主義者ではない』だけでは不十分だ。反人種差別主義者でなくてはならない」と。全米オープンでは、警察の手で亡くなった黒人の名前が書かれたマスクを着用して試合を続けた。
まさに「ブラック・ライブズ・マター」運動を牽引するスポーツプレイヤーであり、かつ「社会正義の活動家」とも呼ばれ、昨年の米国タイム誌<世界で最も影響力のある100人>の1人に選ばれている。
 意見すべき時は声をあげる芯の強さ、自信を持って自分らしく振る舞う姿、まさに「イケてる」とでも表現する格好良さ、素晴らしい。

今週は、人種差別と闘う人々との連帯週間である。1960年3月21日、南アフリカでアパルトヘイト反対を訴える平和的デモ行進に警官隊が発砲。69人が死亡したことから、21日を「国際人種差別撤廃デー」とし、それから1週間、世界中で人種差別の撤廃を求める運動が展開される。
 二人の「ナオミ」が提起した問いかけを、わが身に置き換え深く考え続けたい。(2021/3/21)
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2021年03月17日

【おすすめ本】秋山信一『菅義偉とメディア』─菅の<番記者>が赤裸々に暴く政治取材現場の実態=藤森 研(JCJ代表委員)

 「権力は快感」―菅義偉が口にした言葉を副題並みに扱うオビはどぎついが、内容は客観性を重 視した冷静な報告だ。菅の官房長官最後の一年を「番記者」として見てきた毎日新聞記者の著。
 政治取材の現場ルポの面白さが満杯だ。会見前 の当局による記者への「問取り」(もんとり)、曖昧な回答に記者が質問を重ねる「更問い」(さらとい)、会議室の「壁耳」、長官番のみが許される「ぶら下がり」。こうした“番記者文化”は 癒着に映るものの、著者 は「『オフレコ懇談』だから本音が何でも聞けるというような甘い世界ではない」とも書く。
 もちろん、「少しでも菅と関係を築きたい」と、更問いを控える記者が多いことも遠慮なく書く。 政治家と継続的な関係をつくらなければならない政治部記者が、批判的な姿勢を失っていく危険性を強く警告するのは、著者の“本籍”が外信部で政治部記者を観察する立場に立てたからだろう。

 さて菅とはどんな人物か。著者が挙げる第一の 特徴は「説明能力不足」だ。本心を明かさない面もあるが「そもそも性格がシャイだ」と著者は見ている。メディアとの関係では、安倍前首相とは違って、懇意なメディアを 優遇したり批判的な記者に怒って当たったりするようなことはないという。
 では首相にふさわしいか?「そうは思わない」というのが著者の結論。 リーダー性や語りかける力、未来社会を描く力はいずれも「感じなかった」という。菅は「権力は快感」という言葉を漏らした。著者は「重圧の中で政策を進める快感」だと解釈したが、その当否は、読んでみた上でのそれぞれの判断であろう。(毎日新聞出版1200円)
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2021年03月14日

【今週の風考計】3.14─コロナ禍のなか東京都は14病院を切り捨てるな!

コロナ禍が深刻を極め、感染力が強い変異株ウイルスまで広がっている。PCR検査や保健所への支援、病床の確保など地域医療の拡充は喫緊の課題だ。にもかかわらず都道府県が運営する病院を再編し、削減する動きが加速している。
厚労省は再編・統合する440病院のリストを公表し、病床削減に協力する病院には、全額国庫負担で補助金を出すという計画だ。
 さらに、この病床削減に対する支援給付金は、病床の稼働率が高いほど、すなわち地域に貢献している病院ほど補助単価が高くなり、高額の給付金がもらえるという内容には呆れる。公立病院ツブシじゃないか。

とりわけ東京都は、コロナ感染者が11万5千人と全国トップ、日本全体の25%を占めるのに、厚労省のプランを小池都知事自ら受け入れ、東京都が直接運営する14の病院を全て採算重視に切り替える。
 そのため地方独立行政法人に一括して譲渡する計画を発表した。今年度予算案には39億円もの準備経費を計上し、実行に移そうとしている。
まず人口1千4百万人の東京に、都立病院は8つ・公社病院は6つ、計14病院しかないのも驚きだ。大学病院を含め民間病院は650近くあるというのに、コロナ感染者の受け入れに積極的に応じたのは、この都が直営する14病院だ。なんと都が確保した病床4900の35%を占める。
 それも無理ないか。民間病院は採算重視で、コロナ感染者を下手に受け入れれば、経営が成り立たない。敬遠するのは目に見えている。

だからこそ民間病院では採算が取れない災害・感染症医療や救急医療、離島医療など、自治体の責任で行う「行政医療」は、都立・公社病院の重要な役割だ。だが都は予算の0.5%約400億円しか支出していない。
 都立病院は1879年(明治12年)に設立された長い歴史がある。赤痢・コレラなどの感染症、精神疾患、生活困窮者への医療機関として、「社会的弱者のために、その時代の最高の医療を提供する病院」として、地域の人々から大切にされ愛されてきた。

その病院を「独立行政法人化」すると、どうなるか。病院は「効率性」と「独立採算」が求められるため、あらゆる面で経費削減や医療の見直しが始まる。
 まずは病床の大幅削減、有料の個室病床へ切り替えたうえ使用料や差額ベッド代の引き上げ、入院保証金10万円の納入など、患者・利用者に負担を強いるのは明らかだ。
 さらに議会の監督機能・チェック機能が限りなく縮小されるので、特別室料・分娩料・診断書料など、都議会の審議なしに変更も可能となる。
病院は全て儲かればいいのか。神奈川県は早々と10年前に県立5病院を「独立行政法人化」した。ところがどうか。2018年度には25億1200万円の経常赤字を出し、繰越欠損金は94億6700万円に及んでいる。
 成功例とされた大阪でも、いま「独立行政法人化」病院の現場は、コロナ禍への対応で人員不足・医療体制のひっ迫、マスクや手袋、防護服の不足に悩む。
 <急いては事を仕損じる>の典型ではないか。小池都知事よ、これを教訓とし、コロナ感染対策に専念し、東京五輪の中止を決断するのが先ではありませんか。(2021/3/14)
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2021年03月12日

【おすすめ本】俵 義文『戦後教科書運動史』─憲法改悪と教科書攻撃は一体となって襲ってくる!=鈴木敏夫(子どもと教科書全国ネット21代表委員・事務局長)

 昨年の中学校教科書採択で、育鵬社など「新しい歴史教科書をつくる会」系の社会科教科書が激減したのは、著者が名づけた「第三次教科書『偏向』攻撃」での、市民・教職員などの運動の歴史的な勝利であり、今後の教育と 教科書を巡る現代の「教科書運動史」に新しいページを開いた。
 本書は、長年この運動 の最先端で活動してきた教科書全国ネット21の前事務局長・俵義文氏が、大学の教職課程での講義を軸に、これまでの著作も生かして、戦後の教科 書運動史として執筆・構成したものである。
 なお書名が「戦後教科書運動史」となっているが、戦後の運動の理解のため、戦前までの教科書制度と教科書の歴史について、全15章の最初の第1章を宛てている。

 著者は「教育や教科書 の改善とそれに対する反動=教科書攻撃と国家統制の強まりが繰り返されてきた」なかで、杉本判決を引き出した家永教科書裁判の運動は、教科書改 善にとどまらず、教育を子どもの学習権にそって改善させる大きな成果だと指摘している。
 特に教科書出版関係の労働者や組合の活動が大きな役割を果たし、労働組合運動を「鍛えた」との記述があるのも、出版出身である著者ならではの叙述だ。
 「教科書攻撃は日本の 再軍備問題と憲法改悪の動きが強まったときであり、軍国主義路線、憲法改悪と教科書攻撃はいつも一体のものとして出てくる」と著者は述べる。 昨今の状況をみると運動を担い、リードしてきた著者のこの言葉は重い。
 子どもの教育や教科書問題に関心のある人々だけでなく、国が教育統制に奔る危機を感ずる多くの人々が読んでほしい。(平凡社新書1600円)
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2021年03月07日

【今週の風考計】3.7─福島原発にたまる核ゴミ880トン、どう処理するの?

◆10年目の「3・11フクシマ」を迎える。筆者は東日本大地震が起きた2011年3月11日(金)14時46分、奈良の寺社を回る旅のなか、東大寺二月堂で行われる、<修二会>の「お水取り」を見るため、鹿のいる奈良公園のそばにいた。
 早めの夕食を取ろうと、町中に戻って蕎麦屋に入ったところ、店のテレビ画面に津波の襲来が大写しにされている。何事が起きたのか、携帯電話で東京の息子に連絡してみるがつながらない。
◆東北地方に大地震が起きたのは分かった。ともかく「お水取り」法要のハイライト、火のついた松明が夜空に舞い、火の粉が舞台から下へと降り注ぐのを見たく、大地震の様子は後回し、松明の燃えがらを大事に持ち帰ってきた。

◆あれから10年、福島第一原発事故はなぜ起きたのか。そして今は、どうなっているのか。NHKメルトダウン取材班『福島第一原発事故の「真実」』(講談社)が、タイミングよく明らかにしてくれる。
◆「3・11フクシマ」の被害は、半径250キロ・3千万人が被ばくする「東日本壊滅」に及ぶという最悪のシナリオまで想定されていた。1号機から4号機まで爆発し、大量の放射性物質が放出され、東日本全体がチェルノブイリ原発事故に匹敵する壊滅状態に行き着くという。これらの地域が自然放射線レベルに戻るには、数十年かかると予測された。
 また大津波の襲来を軽視したため、波をかぶって「電源喪失」事態に陥り、運転中の原発1〜3号機の全てが炉心溶融(メルトダウン)し、さらに地震発生後、1日から4日の短期間に連続して水素爆発などを起こしたのは、世界でも初めてだ。

◆福島原発4つの原子炉や格納容器内で何が起きていたのか。まずメルトダウンである。核燃料に含まれる金属ジルコニウムと水が高温状態に置かれると化学反応を起こし、水素が発発生するだけでなく炉心がメルトダウンに至る速度を速める。
 2号機が残した核燃料や金属のゴミ「デブリ」を分析すると、そこには溶け残っている金属が多く、高温に達していない事実がわかってきた。水が入らなかった2号機は、水─ジルコニウム反応が鈍くなり、1号機や3号機に比べて原子炉温度が上昇せず、メルトダウンが抑制された可能性があるという。
 1〜3号機の「デブリ」の分析から、メルトダウンや爆発の原因がさらに明らかにされる期待が強くなっている。

◆さて厄介な核燃料ゴミ「デブリ」は、いま原発格納容器内に880トンもたまっている。遠隔操作によるロボットアームの作業1回で取り出せるデブリ量は、わずか1グラム。どうやってスピードアップさせるか、思案投げ首の状態だ。
 もっと深刻なのは、今も1号機の格納容器の奥底から延びるサンドクッション管から、放射能汚染水が、勢いよく漏れ出ていることだ。しかも1号機の原子炉建屋の1階周辺では、いまだに1時間当たり630ミリシーベルトという高濃度の放射線が拡散している。2号機周辺は5.8ミリ、3号機は22ミリ、比較にならないほどの高さだ。
◆これも高さ120メートルの排気筒に伸びる配管、これは放射性物質を含む蒸気や水素ガスを外に放出する「ベント」のための配管だが、これが10年以上も前から根元で切れ、放射線などが排出されずに地表にたまったと考えられている。
 東京電力のお粗末、杜撰さは極まりない。(2021/3/7)
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2021年03月03日

【おすすめ本】平野雄吾『ルポ入管 絶望の外国人収容施設』─人権の「無法地帯」の不条理を暴く=菅原正伯

 成田空港など送迎客でにぎわう国の玄関口に、こんな深い闇が潜んでいようとは思いもよらなかった。
「絶望の外国人収容施設」という副題は、誇張 でも何でもない。まさにその通りである。
 2014年、カメルーン人男性が医師の診察を受けられず、東日本入管センター内で死亡。2018年、同センターでインド人男性が自殺。翌年には、大村入管でハンスト中のナイジェリア男性が餓死した。背筋の凍る事件が続発している。

 本書は、在留資格のない外国人(非正規滞在者)を収容する入国管理施設の非人道的な実態を報道してきた共同通信記者による渾身のルポ。
 長年、日本政府は、非正規滞在者を治安対策として扱い、入管施設は強制送還を促進するための密室となっている。
 指示に従わない収容者を数人の職員が組み伏せ手錠をかけ暴行する「制圧」や、3平方メートル の狭い部屋に閉じ込める「隔離措置」など、暴力 が日常的に施設を支配。体調が悪化しても「容体観察」と見守るだけの医療放棄により病死した例もある。

 こうした非人道的な対応が放置されている背景に、著者は「外国人の受 け入れは国家が自由に決められる」「外国人の基 本的人権は在留制度の枠内で与えられる」とした40年以上前の最高裁判決があると指摘。
 日本の入管体制の原型が植民地支配と冷戦の産物であり、在留の資格・ 期間での厳格な外国人管理、行政庁の自由裁量による強制退去、無期限の入管収容など、50年間変わらぬ入管の「無法」を告発している。(ちくま新書940円)
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2021年02月28日

【今週の風考計】2.28─真鯛とサンマ漁と「常磐もの」にエールを送りたい!

年とともに肉より魚を好むようになった。住まいから約1キロのところに、新潟・寺泊より鮮魚を直送してくるチェーン店がある。行くたびに生きのいい真鯛やサワラ、サヨリ、メバルなど、旬の魚を買う。
なかでも3月から6月頃にかけて産卵を控えた真鯛は、もっとも脂がのって美味しい。まさに色といい「桜鯛」の名がふさわしい。
 「春告魚」の名があるメバルは、刺身・塩焼きもいいが、煮付けが一番。身が反り返り、美しい白身がホロホロと骨離れも良く、非常に食べやすい。正岡子規も病床で綴った日記随筆「墨汁一滴」に、その旨さを書いている。
何も日本海側の魚ばかりではない。もう並ぶ巻貝のナガラミや5月ごろにはシッタカ、夏には宮城産のホヤも買うことができる。酒のアテにはもってこいだ。

さて、日本を取り巻く海の水温は、年々、高くなり、冬季の日本海中部では 6〜7℃も高くなっているという。魚種も変化し漁獲量も大幅に減っている。
 2017年8月に始まった暖かい日本海流・黒潮の大蛇行が、いまだに特異な潮流を作りながら日本近海を北上している。その影響で三陸沖合の漁場は、前年よりさらに沖合の公海域に移り、沿岸域にはほとんど魚群が来遊してこないという。

日本のサンマ漁が、その典型だ。今や漁獲量は10万トンを切り、昨年の水揚げ量は約3万トン・前年比27%減、2年連続で過去最低を更新している。
 深刻化するサンマ漁の実態に、北太平洋に出漁する世界8カ国は資源回復に向け、現在の漁獲枠55万6250トンを33万3750トンへ、40%削減する。このほど北太平洋漁業委員会(NPFC)で、2年間の合意として決着した。
 また日本とロシアの排他的経済水域(EEZ)でのサンマ漁獲量は13万5750トンとなった。少しでもサンマ漁が好転するのを願うばかりだ。

そこへ<「常磐もの」で、いわきの海に再び活気を!>という全面広告(朝日新聞・2/27付け)が目に入った。
 東日本大震災による津波と原発事故から10年、「3・11フクシマ」を克服し、福島の水産業の復活に向け新たな挑戦が始まっている。福島県いわき市最北の港町・久之浜に、昨年2月1日にオープンした鮮魚店「おさかなひろば はま水」の活動だ。
常磐地域の沖合は、北上する黒潮・日本海流と南下する親潮・千島海流とが合流する「潮目の海」となり、質のいい魚がたくさん獲れる。漁獲できる魚種も増え、現在は約180種類ほどの「常磐もの」を水揚げしている。
 なかでも「常磐もの」といえば、今が旬の「メヒカリ」だという。体長15cmほどの小さな深海魚だが、目が非常に大きく青緑色に光る。いわき市が市の魚として制定している。皮が薄くて、お刺身や唐揚げ、どれもイケるという。さっそく、あのチェーン店にいって買い求めよう。(2021/2/28)
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2021年02月24日

【おすすめ本】田中優子『苦海・浄土・日本 石牟礼道子もだえ神の精神』─声なき声を聴きとって書く、苦界にある命の代弁者=米本浩二(作家・石牟礼道子資料保存会研究員)

 1952年生まれの著者は、大学一年のとき、 石牟礼道子『苦海浄土』(講談社)と出会い、「この世にこういう文学があったのか」と震撼したという。
 以来、半世紀にも及ぶ道子への旅≠言語化したのが本書である。
 他人の辛苦を、わがものとする「もだえ神」たる道子の人物論、作品論を中心に展開している。
 狂気の祖母おもかさまとの日々や、「もうひとつのこの世」を求めた水俣病闘争などをたどりつつ、経済原理優先の社会と対峙した道子の生涯を浮き彫りにする。

 島原・天草一揆を描く『春の城』で、道子は天 草四郎を切支丹の先頭に立って闘った英雄としてではなく、虐げられた人々の哀しみ、憤りに寄り添う「もだえ神」とし て書いた、という。
 <四郎が、キリストのやつしなら、『苦海浄土』 における石牟礼道子は、四郎のやつしともいえる>
 道子や四郎が標榜する「もうひとつのこの世」は、現世では実現しないものだ。では絶望しかないのか。そうではあるまい。『春の城』の闘いや水俣病闘争は語っているはずだ。
 <理不尽に自分たちの生活を搾取するものに対して、否を突きつけ続ける抵抗の中にこそ、刹那の解放と希望がある>と。

 石牟礼道子とは何か。後半、著者は<その正体が最近少し見えてきた>という。<声なき声を聴き取って書く。いわば苦界にあるいのちの代弁者である>という認識だ。
 <道子さんがたたずんだいくつもの渚の風景をもっとお聞きしたかった>という、著者の道子への旅は、これからもつづくのだろう。
(集英社新書880円)
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2021年02月23日

【時事マンガ】遅れてるよ─ 日本の政治=画・八方美人

20210221●遅れてるよ〜日本の政治344KB.png

※画像をクリックすると拡大・鮮明になります。
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2021年02月21日

【今週の風考計】2.21─<小林多喜二と伊藤千代子>2人の生涯に思いをはせる

昨日20日は、“多喜二祭”─今から88年前、1933年2月20日、都内の路上にいたプロレタリア文学の旗手・小林多喜二が、スパイの通報によって特高警察により逮捕。同日夕方、東京・豊多摩刑務所で殴る蹴る、歯や指を折るなどなど、凄惨な拷問により虐殺。29歳の短い生涯が閉じられた。

この虐殺に至る背景には、1925年制定の治安維持法と特高警察による、人民弾圧の暴虐の歩みがある。
 制定3年後の1928年3月15日未明、特高は全国で数千人の反戦主義者を逮捕する大弾圧をおこなった。多喜二は、この「3・15事件」で行われた過酷な拷問を聞き、世間に国家の横暴を訴える作品『一九二八年三月十五日』を完成させている。
 実は、これによって多喜二は特高から恨みをかい、以来、尾行が着きスパイが送り込まれることになる。

名作『蟹工船』を刊行した1929年、皇軍を批判したとの理由から治安維持法違反で起訴され、豊多摩刑務所に収容。1931年1月22日、保釈出獄。多喜二は、3月から約1カ月間、密かに丹沢・七沢温泉に滞在し、作品『オルグ』を執筆。
 今から2年前、わが山仲間と丹沢・鐘ヶ嶽を登った時、帰りに訪れた七沢温泉「福元館」、その離れにある多喜二が執筆していた部屋を思い出す。そして投宿してから僅か2年後の1933年には虐殺される。

さて多喜二の虐殺から遡ること3年7カ月、1929年9月24日、特高による弾圧・拷問の影響で24歳の短い生涯を閉じた女性がいる。その名は伊藤千代子。
 諏訪の農家に生まれた伊藤千代子は、アララギ歌人・土屋文明の薫陶を受けた少女時代を経て、東京女子大学で学び、男女平等、女性の自立、反戦平和の活動に青春をささげる。紡績工場で働く女工の過酷な労働環境の改善に向けた闘いに取り組む。
そして運命の「1928年3月15日」朝、23歳の伊藤千代子は、重要文書のガリ切り原紙などを、届けに出かけた印刷所の玄関先で、特高に逮捕される。
 市ヶ谷刑務所に収監、拷問により転向を強要されるが拒否し続ける。拷問で痛めつけられるものの、侵略戦争に反対し、主権在民、ジェンダー平等の社会を目指して志を貫く。その生涯や尊し。
 いま劇映画「こころざしつつたふれし少女よ 伊藤千代子の生涯」の製作が進む。(2021/2/21)
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2021年02月18日

【焦点】コロナワクチン「実験台」と話す医療従事者 健康被害が出ても製薬会社は免責=橋詰雅博

  新型コロナワクチンの接種がようやく日本でもスタートする。副作用の不安からか全米消防士協会によると、ニューヨーク市の消防士の55%は拒否している。米高齢者介護施設職員の60%、老人ホーム入居者の20%がそれぞれ拒否だという。また、カリフォルニア州リバーサイドの病院の医療従事者も50%はうたないそうだ。
 先行接種する日本の医療従事者からも不安の声が上がる。大分県の病院で働く60代の男性看護師の元には勤務先から接種を希望するかどうかのアンケート調査が送られてきた。男性は接種を決めたが、同じ病棟の看護師らの70%は接種しないことを選んだと話す。男性はこう言う。
 「もし自分が副作用を起こしたらどうしょう≠ニか怖いイメージを持たれているので、受けたくないという方が多いのと、自分たち(医療従事者)で大丈夫かを見て、実験台にされているというとらえ方をされている人がいらっしゃるのが印象的でした」
 
  今回実用化されたワクチンは遺伝子工学技術で開発された新しいタイプ。ワクチンを早く世に送り出すため臨床試験(治験)は短縮、治験者も通常よりもはるかに少ない。効き目に人種差があるから日本でも治験は行われたがその治験者はわずか160人だ。ワクチンの安全性に不安を持つのは当然だろう。
 もしも重大な健康被害が出たら、救済はどうなるのか。損害賠償を支払わないで済むように米英製薬会社は、ワクチン供給の契約締結の際、各国政府に損害賠償を求められたら政府が肩代わりして損失を補償することを条件に入れている。すなわち副作用で深刻な被害が出ても企業は責任を負いません、国が面倒を見てくださいというわけだ。企業に免責を与えるため日本も昨年12月に改正予防接種法を成立させている。
 裏を返せば、それだけコロナワクチンは副作用のリスクが高いといえる。朝日新聞の1月下旬の世論調査では、約70%が「(ワクチン接種は)しばらく様子を見たい」と答えている。あなたはどうしますか。
 橋詰雅博
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2021年02月16日

【おすすめ本】春名幹男『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』─米国の軍産複合体が仕掛けた恐るべき細工の全貌を明かす=萩山 拓(ライター)

 今から45年前、明るみに出たロッキード疑獄。全日空の新型旅客機トライスター購入を巡り、米国ロッキード社が、巨額のカネを日本の政治家や商社役員、「政商」小佐野 賢治らにバラまいた贈収賄事件である。
 これまで米国側の秘密文書が公開されず、日米の根幹に絡む「巨悪」の 闇は放置されてきた。その結果、数多くの陰謀説が流されてきた。
 その経緯を巡り、国際ジャーナリストである著者が、米国立公文書館などの記録や資料を精読、15年に及ぶ調査と取材によって、真の「巨悪」の 正体をあぶりだし、その訴追が阻まれてきた理由に迫る。

 なぜ田中角栄は逮捕され葬られたのか?「日中国交正常化」など独自の「角栄外交」を嫌った米国は、田中角栄とキッシンジャー国務長官との対立が激化するにつれ、角栄の訴追へ導く「ある細工」が準備される。
 それはロッキード事件の捜査文書5万2千頁のうち、「Tanaka」と記された証拠文書2860頁分のみ、日本の東京地検特捜部に渡し、角栄を逮捕させ、真の「巨悪」を隠 す細工であった。
 しかも、この「巨悪」 は、ロッキード社が主眼としていた対潜哨戒機P3−Cの売り込みにも暗躍し、さらには2年後に発覚する軍用機導入を巡る、ダグラス・グラマン 疑惑にも絡むのだが、訴追を逃れてきた。
 著者は<第3部:巨悪の正体>で詳述しているが、元A級戦犯・戦後右 翼のフィクサーとして政財界に隠然たる影響力を行使した人物と指摘。
 本書は、600頁に及ぶ書下ろし。戦後一貫して日本を覆う米国の「安保利権」の裏側と謎の解明が鮮やかで、一気読みできる力作。(KADOKAWA2400円)
「ロッキード疑獄」.jpg
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2021年02月14日

【今週の風考計】2.14─日本版「マグニツキー法」が必要となる理由

いまや世界のコロナ感染者は1億820万人、死者は237万人に上る。というのに人権弾圧や専制政治が世界各地で横行し、ワクチン争奪が起き、ワクチン外交・世界支配の醜い野望すら蠢いている。
 なかでも中国の動きは、奇怪きわまりない。習近平政権はアジアやアフリカの発展途上国を中心とした計52カ国・地域を対象に、コロナ・ワクチンを無償提供し、その引き換えに中国への批判を封じ込める戦略を描いている。

12日、中国政府は、英国BBCの国際放送を禁止する処分に出た。BBCが新疆ウイグル自治区の「再教育」施設で、ウイグル族の女性が拘束され、性的暴行や虐待・拷問を受けていたとの報道への対抗措置とみられる。
 新疆ウイグル自治区の収容施設では、ウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されているという。中国は否定に躍起になっているが、米国バイデン政権は厳しい姿勢を取り、国際世論からは「ジェノサイド」の疑いまで指摘されている。
 東京新聞<本音のコラム>で、師岡カリーマさんが「ウイグル強制収容所」と題して、鋭い指摘をしている(2/13付)。

また中国政府の意向を受けた香港政府の動きも過酷さが増している。この6日には、立法会(議会)の元議員ら民主派53人および米国人弁護士を、「国家政権転覆罪」容疑で一斉に逮捕した。
 今年9月の選挙に向けた準備が、なぜ「国家転覆の企て」に当たるのか、異論や異議を許さない、民主派つぶしの暴挙は断じて許されない。
 この事態は、香港人にとどまるものではない。香港では日本人を含め世界の人々の「自由と人権」が脅かされかねないのだ。世界中の人々が中国政府に、香港の自治と人権を尊重するよう、粘り強く働きかける責任がある。

さらに中国は海警局に武器使用を認める「海警法」を施行した。さっそく海警局が活動する領域を一方的に拡大し、とりわけ尖閣諸島周辺の領海に侵入し、日本漁船に接近するなど、国連海洋法条約を無視し、国際法に違反する事態が頻発している。
 日本政府は、毅然として中国の国際法違反を指摘し、尖閣諸島周辺への威嚇侵入に抗議、すぐ止めるよう申し入れるべきだ。
やっと日本でも、世界各地での言論弾圧や拷問、虐殺などの人権侵害に関わった個人や団体に対して、制裁を求める日本版「マグニツキー法」の検討が始まった。
 議員立法をめざし、近く超党派の国会議員連盟が発足する。G7(主要7カ国)でマグニツキー法がないのは日本だけ。隣国への配慮ばかりが優先し、大事な人権や国際法が踏みにじられて、良いわけがない。(2021/2/14)
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2021年02月10日

【焦点】アマゾンのクラウド事業は世界シェアトップ 日本政府もサービスを採用=橋詰雅博

 米アマゾン・ドット・コムの創業者のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO=57)が今年9月までに退任する。突然のことで少し驚いたが、後任のCEOにはクラウド部門責任者のアンディ・ジャーシー氏(53)が昇格する。
  今や売上高13兆1800億円のアマゾンといえば、各種商品の通販企業というイメージが強いが、利益面で支えているのはジャーシー氏が立ち上げたクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」だ。売り上げに占める比率こそ1割強にとどまるが、クラウドの世界シェアは約48%とダントツである。ちなみに第二位の米マイクロソフトは約16%、三位の中国のアリババ集団が約8%だ。

  クラウド分野に詳しい駒沢大学名誉教授の福家秀紀さん(情報メディ産業論・博士)はこう言う。
 「通販事業は安売りが中心だから利益率は低い。その点、AWSは大きな仕事が多いので利益率が高いのが特徴です。アマゾンは電子商取引をやるためサーバーをたくさん持っているので、サーバーに余裕がある。それでクラウド事業を始め、成功を収めた。民間企業からの受注のほかアマゾン関係者によると、米英政府からのクラウドの仕事も請け負っているようです。しかし、安全保障情報とか重要な経済情報など国家機密に関するものは政府独自のクラウドで扱っていると思う。情報が漏れるのを防ぐためです」

 実はAWSは日本法人を通じて日本政府のクラウドサービスを手掛けている。昨年10月から運用を始めているこのクラウドサーバーに入る情報は全府省や国会、裁判所ばかりでなく自治体も含まれる。前出の福家さんは「国内サーバーに保存されたデータがひそかに米国に転送される可能性がある。米国政府が日本のこんな情報が欲しいと要求されたら米アマゾンは拒むことはできないでしょうね」と警告する。
 アマゾンは日本の通販市場をがっちり握るだけでなく、今では日本政府の機密情報も入手できる位置にのし上がっている。アマゾンは油断がならない企業だ。
 橋詰雅博
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2021年02月07日

【今週の風考計】2.7─高瀬庄左衛門から三屋清左衛門を経て上杉鷹山へ

■感動した本に出合うと、水溜まりに落ちた水滴が波紋を広げるように、思いが連鎖状につながっていく。まさに、砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)は、その1冊である。
 本書は、齢50を前に妻を亡くし、息子まで不慮の事故で失った高瀬庄左衛門の寂寥と悔恨の日々を描く時代小説だ。神山藩の郡方として農村を見回る老いた身、死んだ息子の嫁・志穂と共に、手すさびの墨絵を描きつつ、若き頃の友情や諍いを思い浮かべる。
■しかし藩の政争の嵐が襲いかかり、村人に強訴を仕掛けたとの罠にはまりかける。だが志穂が描いた似顔絵から真実が明らかになる。まさに謎ときの筆が冴える。
 加えて昔の道場仲間が落ちぶれ、カネの無心から始まる斬り会いで腕に傷を負い、絵筆を持つこともままならなくなる。また息子の死の真相も知ることとなる。抑えた静謐な筆致ながら、この緊迫感の迫力は抜群だ。

■そして場面を彩る野鳥と草木・花の描写が心憎いほど冴えている。拾っただけでも、蕗の薹、山雀、海鵜、蝉、目高、燕、瑠璃びたき、梅、雪兎、百合、油蝉、行行子、時鳥、烏瓜、桔梗、百日紅、椋鳥、紅梅、鵯、秋海棠、楮、蝉、春告鳥、鶯、桜などなど。
 香りや色・鳴き声を取りまぜ、庄左衛門の心の揺曳を際立たせる。庄左衛門の最後のシーンには、「そろそろと矢立を出し、震える指先で筆を取る。庭さきに、気の早い山雀が降り立っていた。虫でも探しているのか、首を上下させて土のおもてをつついている。」とある。見事だ。

■続く連想が、藤沢周平『三屋清左衛門残日録』(文春文庫)。52歳にして隠居生活に入った三屋清左衛門が、悠々の日々を送るはずが、町奉行が抱える事件の解決に奔走、さらには藩を二分する政争にも巻き込まれていく。その日々を「残日録」と題して綴る時代小説。
 おなじみ北大路欣也が、時代劇専門チャンネル・スカパーで毎週土曜日19:00から放映中だ。
 藤沢周平とくれば『漆の実のみのる国』(文春文庫)に思いが及ぶ。江戸時代中期の米沢藩主・上杉鷹山の生涯を描く。財政破綻に陥っていた事態を、倹約・殖産興業を柱とする改革に取り組み、領内に100万本の漆の木を植え、その実によって藩を豊かにするなど、名君としての評価は今でも変わらない。

■そこへ小関悠一郎『上杉鷹山─「富国安民」の政治』(岩波新書)に目がいく。なんと著者は1977年生まれ、44歳の気鋭の歴史学者。さっそく読んでみると、積み重ねてきた研究の成果がふんだんに盛り込まれた<目から鱗>の好著。
 殖産計画の一つ、「漆」植立ての実際を資料から明らかにし、いかに実施させていったか、その苦労も指摘している。
 著者は、「上杉鷹山は、<人民のため>の君主という考えを深く内面化した<名君>とみることができるだろう」と結ぶ。現在の為政者よ学ぶべし。(2021/2/7)
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2021年02月03日

【焦点】政府の全情報が米国に漏れる! アマゾンのクラウドサービスを採用 対米通商交渉で不利益も=橋詰雅博

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 日本政府が昨年10月から運用しているクラウドサーバーに対して「日本のIT企業は米企業に太刀打ちできないことがはっきりした。しかも怖いのは日本の政府などの情報が米国に漏れるリスクが高まったことだ」とIT業界関係者の声が強くなっている。
 このクラウドサーバーに集まる情報は全府省や国会、裁判所などに加えて自治体までが含まれる。担当する総務省行政管理局はこれを政府共通プラットフォーム(PF)と名付けている。

 AWSが手掛ける
なぜ日本のPFから米国に情報が漏れる可能性があるのと言えば、米アマゾン・ドット・コム、アマゾンジャパンの子会社であるアマゾン・ウエブ・サービス(AWS)の日本法人(AWSジャパン)がPFを手がけているからだ。
 駒沢大学名誉教授の福家秀紀さん(情報メディア産業論・博士)がこう解説する。
 「PFは運用コストの削減やセキュリティ強化を目的に2013年3月から第一期の運用が開始されている。第一期は日本の大手IT各社が受注した。5年後の18年にさらなる運用コストの大幅削減、整備・運用の効率化などをめざし政府は、情報システムにおいてクラウドサービスを利用することを基本方針と定めた。これが第二期整備計画のスタート。クラウドサービスとして昨年2月にAWSの採用を当時の高市早苗総務相が表明した。
富士通も手を挙げてサービスを提案したが、案件が大きすぎるという理由で、途中で降りてしまった。ですから競争相手がいなくなったので、AWSジャパンにすんなり決まってしまった」
 昨年2月の高市総務相の記者会見では、記者が「アマゾンのAWS採用を前提に制度設計が進んでいるが、海外企業のクラウドを採用することで、データ保護など懸念もあるかと思いますが、どのような対応をとられるのか、検討状況と併せてお願いします」と質問した。

 純国産めざしたが
これを受けて高市総務相はこう答えている。
 「もともとは『純国産クラウド』を実現できないかと考えており、国内各社のクラウドとの比較・検証も十分行いましたが、AWSはセキュリティ対策も含めて極めて優れていると判断をしました。
 安全性につきましては、『ユーザ所有データの所在地は国内とする』、『クラウドサービスは国内から提供』、『データ送受信の常時監視』、『アクセスログの取得』(誰がアクセスしたかを記録)など必要なセキュリティ対策を行います」
 大臣は米国への情報漏れを否定する。果たして本当にそうだろうか。「国内サーバーに保存されたデータが密かに米国のサーバーに転送されないという保障はあるのか」と福家さんは指摘する。そして福家さんこう警告する。
 「近年クラウドサービスで不正アクセスによる情報流失事故が国内外で多発している。昨年12月の楽天の場合、クラウド側の設定ミスが原因でした。セキュリティに万全を期していても、破られる可能性は否定できないし、人為的なミスもあり得る。アマゾンのサーバーに政府関係の情報が集約されるのはリスクが大き過ぎる。さらに米国政府が日本のデータが欲しいのでクラウドサーバーへのアクセスを米アマゾンに要求したら、アマゾンは拒否できますかね。スノーデンは、米国家安全保障局(NSA)が巨大IT企業などから通信履歴を収集している実態を暴露した。アマゾンも情報を提供している。国内にサーバーが設置されているからと言って安心はできません。情報収集の拠点である在日米軍基地からサーバーに侵入する可能性がある。AWSがそれを見て見ぬふりをする」
 情報が漏えいした場合、日本にどんな不利益がもたらされるのだろうか。
 「たとえば秘密性の高い経済情報を入手した米国は、対日通商交渉でデータを利用して自国に有利になるよう交渉を進めことが考えられる。米国企業がそれを利用することもあり得るでしょう」(福家さん)

 IT業界にも打撃
 日本のIT業界も打撃を受ける。クラウド事業市場は成長分野だ。しかし、AWSが政府共通PFでクラウドサービスを担ったことで、アマゾンによる寡占≠ェ進行するかもしれない。そうなれば日本企業の出番がなくなる。たとえあったとしてもサポート役に回る。実際、NECやNTTデータは今回のPFでは支援側に甘んじている。
 また、AWSは法人税を支払わないのではないかと危惧されている。
 「ソフト使用料を米アマゾンに支払っているから、利益は出ていません。だから法人税は支払えません。こう言い逃れする。アマゾンジャパンは、今までそんなことを言って税金逃れをやってきたからね」(福家さん)
 AWSが握ったクラウドサービスは、さまざまな問題が潜んでいるのだ。
  橋詰雅博
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2021年1月25日号                                                     P1020419.jpg
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2021年01月31日

【今週の風考計】1.31─「終末時計」は残り100秒、迫る人類・地球の危機

核兵器と気候変動による人類滅亡を午前0時に見立て、それまでの残り時間を示す「終末時計」の針が、昨年に引き続き、残り「100秒」を表示したと、米国の科学雑誌が発表した。
 世界で1億人がコロナに感染しパンデミックに陥るなか、核廃絶と気候変動という地球規模の課題に、いまだに国際社会が協調して対処できていない事態は、深刻だと指摘している。

まず核廃絶。22日に発効した核兵器禁止条約は、その後ベナン、カンボジアも批准し計52カ国となった。インドネシアやブラジルも批准に向け手続きが進んでいる。
 だが唯一の被爆国・日本が、米国の「核の傘」を理由に批准しないどころか、オブザーバー参加できる締約国会議にもソッポを向くとは、悲しくて悲しくて言葉も出ない。
米国ではバイデン大統領が、オバマ元大統領の掲げた「核なき世界」を継承するため、2月5日に期限を迎える米ロの新戦略兵器削減条約(新START)を、5年間延長することで合意した。
 これにより、2019年8月の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効して以降、唯一残されていた核軍縮の枠組みが維持されることになった。

気候変動の課題はどうか。すでにバイデン大統領は就任初日、地球温暖化に対処する「パリ協定」への復帰に署名し、2030年までのCO2削減目標の新たな策定に着手した。
 さもあろう。南極の巨大な氷山が次々に分裂している。三重県の面積にも相当する世界最大級の氷山が割れて、サウスジョージア島に向かって流れだし危機感が増す。
 地球から消えた氷の量は、この20年間で28兆トン。かつ融解の速度は加速し、年に1.3兆トンという。
 今後も地球温暖化が進み、氷山が解け、海面上昇が続けば、東京は水の都ベネチアになるとの予測すら出ている。

今年は、世界各国が気候変動への取り組みが問われる重要な年。11月には英国で国連気候サミットが開かれ、重要な対策プランの討議が始まる。
 世界50カ国120万人を対象に行った国連の世論調査によると、回答者の8割近くが気候変動を「地球規模の緊急事態」と捉えている。
国籍・性別問わず、老いも若きも、全世界の人々が再生可能エネルギーの活用増大、森林と土地の保全、気候に優しい農業技術の採用、クリーンな電気自動車やバス・自転車の利用拡大など、具体的なテーマを挙げて気候変動に対する取り組みを求めている。
 同感、当然! CO2排出による気候変動・地球温暖化は、「終末時計」の針を加速させる元凶なのだから。(2021/1/31)
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2021年01月27日

【おすすめ本】奥村皓一『米中「新冷戦」と経済覇権』─「経済2大国」の対立と抗争、その要因・実態を深く分析する=栩木誠

 新型コロナ禍の世界規模の感染拡大で深刻さを増す世界経済。さらに大きな不安定要素になっているのが「経済2大国」 米国と中国の対立の深刻化だ。再選に失敗したトランプ米大統領によって演出された、米中「新冷 戦」の深層を解明することが本書の眼目である。
 第二次世界大戦後、長期に続いてきた米国主導のパクス・アメリカーナの構造は、いま音を立てて崩れつつある。その対立軸として急速に台頭してきたのが、経済や科学技術など各分野で急成長を遂げてきた中国。
 2030年代には、GDP(国内総生産)でも中国が世界一になると推測されるほどである。一方で、「新旧2大経済大国」は、競争的依存関係を深めてきた。
 ハイテク産業はじめ各分野で「呉越同舟」の関 係から脱却が極めて困難な中でも、「軍事力さえちらつかせつつ、醜い国際政治対決劇を演じる」両国の事態を掘り下げる。

 複雑骨折する状況が生み出される背景や要因について、本書は「米中覇 権競争と多国籍企業」や「勢いづく軍産複合体」など、5つの側面から詳細に分析している。バイデンに政権移行しても、現下の状況が急展開する可能性は小さい。 
 「EUはじめ世界から米中は醜い経済覇権抗争を超えて、新型コロナウイルス、気候変動、再生 エネルギー、宇宙開発の人類・地球救済の課題に挑戦し、ハイレベルの協力関係に戻れとの圧力が強まっている」と、本書は指摘する。
 私たちの日常生活にも大きな影響を及ぼしている米中両国の暴走を食い止める力は、「核兵器禁止条約」の発効を実現させたような、平和と民主主義を希求する世界の人々の声であり、行動である。
(新日本出版社2800円)
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2021年01月24日

【今週の風考計】1.24─「深大寺そば」と「武蔵野うどん」に想いを込めて

東京・府中に住む友人が、自分のブログで「深大寺そば」の名店、「深山茶屋」が閉店した悲しみを綴っている。
 <ぼくはかき揚げ付きの中盛り蕎麦、カミさんはとろろ蕎麦が定番だった。このなじみの店に行くと、シャッターに「当店は12月25日をもちまして閉店することになりました」の貼り紙。
 年末年始といえば、蕎麦屋にとっては最大の書き入れ時。それを前にして閉店だなんて…。 ガッカリしながらトボトボと家へ帰るしかなかった>と。
コロナ禍による経営難が進み、由緒ある店の休業・閉店が相次ぐ。創業231年、江戸時代から続く東京・葛飾柴又の川魚料理の名店「川甚」も、1月末で閉店する。創業39年の東京・三鷹市のラーメン店「味の彩華」も今月末の廃業を決めた。

さて筆者の住む東京・多摩北部地域では、「武蔵野うどん」を看板にする店が多い。この「武蔵野うどん」は、やや茶色みを帯びて太くコシが強い。「ざる」か「もり」にして、かつおダシをベースに、豚肉の細切れやネギを具にした熱い「肉汁」につけて食べる。
 冠婚葬祭などの祝い事や親戚が集まる時には、手打ちの「武蔵野うどん」が「本膳」として出されることが多い。
<大寒>が過ぎたとはいえ、木枯らしの吹く日は、コシの強い「武蔵野うどん」を、アツアツの「肉汁」につけて食べたい。その旨さを想うとヨダレが出てしまう。

東村山市の北西部にも「うどん屋」の名店が数多くあるが、残念ながら我が家からは遠い。「不要不急の外出は控えよ」とあっては、ままならない。
 9月中旬に開かれる東村山「どんこい祭」は、「武蔵野うどん」と「よさこい」を掛け、「どんと来い!」の意気込みを込めて名付けられたという。これも昨年は、コロナ拡大のあおりを受けて中止。
我が町の「うどん・蕎麦屋」が閉店・休業に追い込まれてはいないか、心配がよぎる。
 かつては良く行った「しなの」を思い出し、向かってみる。西武新宿線・久米川駅から線路沿いに小平駅の方向へ徒歩5分、踏切のそばにある。暖簾が出ている、やってた! うれしくて、店の引き戸を開けるのも心がこもる。
熱い「肉汁」に漬ける「武蔵野うどん」はないが、代わりにアツアツの「鍋焼きうどん」を注文する。大きなエビ天に半熟卵半分、しいたけ、ネギ、ほうれん草、ナルト、筍、お麩が盛り上がるように入って、うどんが見えない。
 岩手出身の84歳の主人と奥さんで切り盛りして50年。調理場と客席を隔てるカウンターには、宮沢賢治の「雨ニモマケズ…」の詩すべてが白抜きされた、紺色の水引暖簾がかかる。その心意気や良し、頑張って! と店を出る際にエールを送った。(2021/1/24)
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