2017年11月16日

《遠吠え》「泥棒を検察官に」してしまえば国会は毎度「田舎芝居と茶番劇の舞台」に=田悟恒雄

 衆院選に大勝し「いよいよ驕れる自民党」は、さっそく野党の質問時間の削減に手を付けます。
 で、そんなことをすればどうなるのか、「加計学園」問題をめぐるきのうの衆院文部科学委員会質疑は、そのことをまざまざと示してくれました。
 これまで「与党:野党=2:8」だった質問時間を「1:2」へと、与党に手厚く変えた質疑のトップバッターは、8月まで文科副大臣を務めていた自民党・義家弘介氏でした。ご存知、「加計学園獣医学部新設」問題の議論に副大臣として直接関わり、この間、文科省から続々出てきた一連の文書にも、「重要なアクター」としてお名前が登場する、「れっきとした当事者」。
 そんな人物に30分もの質問時間を与えると─、

 「恣意的な報道を繰り返したマスコミ、野党による結論ありきの追及にじくじたる思いを抱いてきた」

 などと、貴重な質問時間を使って、何と自己弁護やら、メディアや野党への批判やらを繰り広げたのでした。
 おまけに当の文科省の「再調査」で本物と認定された内部文書に対しても─、

 「恣意的に打ち替えて作成し、意図的に共有フォルダに入れられた。あるいは逆に意図的に打ち替えられたものが外部に流出させられたという疑念が払拭できない」

 などと、何の証拠もなく言ってのける始末。
 本来「チェックを受ける側」を「チェックする側」にしてしまう、もっとはっきり言わせてもらうと、「泥棒を検察官に」してしまえば、国会は毎度「田舎芝居と茶番劇の舞台」と化してしまうでしょう。

(「零細出版人の遠吠え」11/16より。 http://www.liberta-s.com/
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≪出版界の動き≫ 雑誌の売り上げは前年比マイナス14.1%、深刻な事態

●11月3日〜5日に開催の神保町ブックフェスティバルが、過去最高の12万人を超える来場者。参加出版社142社、188台のワゴンで汚損本や旧版などを割引販売。飲食店関係のワゴンを含め240台の出展は過去最多。全体の売上げも過去最高額の予想。本の値引率は「半額」が顕著だが「70%オフ」「全品100円」など、多様な価格表示がアピールした。

●トーハンが出版社に配送コスト負担のお願い─同業他社と協業・効率化を図っているものの、出版流通を維持・継続していくには出版社の協力が必要であるという。それなら出版社は返品する配送コストを書店にも負担してもらうとの提案も出てきそうだ。そうなれば書店も自衛のため、取次が勝手に書店に本を送りつける「パターン配本」を拒否するだろう。

●今年の出版物の販売金額は1兆4千億円前後と予測される。1996年のピーク時の2兆6563億円に比べれば、この20年間で販売額は半減。加えて雑誌の売り上げは前年比マイナス14.1%、返品率は最悪の40%が続く、深刻な事態となっている。書店数も半減し1万店を割るのも近い。書店がゼロの自治体・行政区は420、全体の2割に及ぶ。

●岩波書店が来年1月12日に刊行の『広辞苑』第7版の予約注文を開始。10年ぶりの改訂。第6版まで発売していたDVD-ROMの販売はなし。20万部を目標に掲げ拡売に挑む。
●マガジンハウスが、1937年に刊行の吉野源三郎『君たちはどう生きるか』をマンガ化して、8月24日に発売。約2カ月で33万部発行のヒット。10月25日に「異例の10万部重版」(8刷)を決めた。
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2017年11月12日

【今週の風考計】11.12─国民の血税を勝手にプレゼントするな!─6億値引きや武器購入

「税を考える週間」があるとは知らなかった。国税庁は11日から17日までキャンペーンを張る。アクセスしてみると<租税の意義、役割や税務行政の現状について、より深く理解し…、自発的かつ適正に納税義務を履行していただく…>とある。

ちょっと待てよ。確か国税庁トップは、あの佐川宣寿さんではなかったか。国会で「森友問題」をめぐり厳しく追及された財務省理財局長、ご当人である。「森友」への国有地払い下げに関し、「書類や記録は廃棄済み、電子データも復元できない」と公言し続けてきた。
その御仁が栄転し、国税庁長官に就いている。記者会見も開かず、国民に謝罪するどころか、自分は書類を廃棄しておいて、納税者には書類は隠すな!では、誰がまじめに「納税義務を履行して」いけるか。

このほど会計検査院は「森友」への国有地払い下げ6億円の値引きは、過大であったと指摘した。値引きした6億円の損失を血税で穴埋め!冗談じゃない。
安倍首相も同じ穴のムジナだといいたい。トランプ大統領の娘イバンカさんが来日するやいなや、「イバンカ基金に約57億円拠出する」とブチあげた。自分の財布でもないのに、「国民の血税」を使って、勝手にプレゼントする。「いい加減にしてくれ」との声が広がる。

さらに「米国から導入するF35Aや新型迎撃ミサイルに加え、イージス艦の量・質も拡充したいので、さらに武器購入を増やしていく」と、シンゾーはドナルドに尻尾を振る。霞が関も永田町も国民の血税を、なんと心得る!(2017/11/12)
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2017年11月11日

≪おすすめ本≫森永 玲『「反戦主義者なる事 通告申上げます」反軍を唱えて消えた結核医・末永敏事 』投獄・尾行・弾圧にめげず反戦を貫いた生涯を掘り起こす=藤田廣登(治安維持法国賠同盟常任理事)

 戦前、反戦・反軍を唱えたため、その生涯を抹殺されていた結核医の存在が戦後70年経った今、初めて明らかにされた。その人の名は末永敏事(すえながびんじ)。
 長崎県島原半島の旧北有馬村(現島原市)出身の医師、若くしてアメリカへ留学、大きな業績を残して帰国後、内山鑑三を師と仰ぎ、キリスト者として「非戦論」を貫く。

 本書は、地元でも忘れ去られ「実在する人物なのか」とすらいわれた末永の生涯を、著者である「長崎新聞」の森永玲氏(編集局長)が、同紙に78回にわたって執筆した長期連載(2016年6〜10月)に、その後の調査を加えて出版された。
 著者はわずかな手がかりを頼りに、徹底した取材で跡づけ、その生涯の全体像に迫っている。
 タイトル「反戦主義者なる事 通告申上げます」は、末永が医師として茨城県知事宛てに「軍務を拒否する旨」通告した文言からとられた。

 彼は「日支事変は日本の侵略戦争」「政治の実権は軍部が握っている」等と公言したため、「陸軍刑法違反・不敬罪」により水戸刑務所に投獄される。出所後、特高警察、憲兵による徹底した尾行と弾圧を受けるが、太平洋戦争期の1943年頃以降、45年8月死去までの消息は、今日も不明のまま。
 評者は、一昨年、遺族の依頼を受けて末永敏事の調査を手がけ、彼の治安維持法被弾圧者としての側面に光をあて、『治安維持法と現代』誌2015年春季号に紹介した者として、秘密保護法、戦争法、共謀罪法下の今日、本書を推薦し、多くの人々に読まれることを期待したい。
(花伝社1500円)
「反戦主義者なる事…」.jpg
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2017年11月10日

《遠吠え》「太平洋には米中を受け入れる十分な空間が…」は、悪名高い「パーセンテージ協定」の再来だ=田悟恒雄

 さすがは「笑ゥせぇるすまん」、「取引」(deal)だけはお手のものです。
 日本と韓国では「北の脅威」をかざしながら、まんまと高額な米国製兵器の大量売り込みに成功したかと思ったら、中国では「貿易不均衡是正」を大義名分に、なんと総額2500億ドル(約28兆円)超の商談をまとめてしまいました。
 やっぱりこの男、大統領職なぞ返上して、「せぇるすまん」の本分に戻ってもらうほうが、世界にとってはいくらかマシなのではないかと思います。
 一方の「紫禁城の皇帝」習近平氏ですが、「大盤振る舞い」の後の高揚した気分のなせる業なのか、「聞き捨てならぬ言葉」をさりげなく漏らしています─。

 「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」

ですと。
 実は前にも同じことを述べているのですが、要は、中国もアジア太平洋地域でのヘゲモニーを握りますよ、という決意表明にほかなりません。
 私ゃ、とたんにその昔、英ソ間で結ばれた悪名高い勢力圏構想「パーセンテージ協定」(Percentage Agreement)を思い出してしまいました。
 そう、1944年10月のモスクワ会談で、チャーチルが「これでどうだ」とスターリンに示した紙切れには、こんな数字が書かれていたと言われます─。

 「ルーマニア王国:ソ連90%、その他10%、ギリシャ王国:英国90%、ソ連10%、ユーゴスラビア王国:50%、50%…等々」

 先々、私らは「合衆国51番目の州民」にされるのか、ひょっとして「漢委奴国民」にされるのかってこと?

(「零細出版人の遠吠え」11/10より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年11月08日

《焦点》 富山市議会政活費不正を暴いた調査報道番組ディレクター・五百旗頭幸男さん=橋詰雅博

 2017年度の日本ジャーナリスト会議の放送部門でJCJ賞を受賞したのは富山県のチューリップテレビ(TUT)が制作した「はりぼて〜腐敗議会と記者たちの攻防」(昨年12月に放送)だ。五百旗頭幸男さん(39)は、政務活動費を不正取得した富山市議14人を辞職に追い込む端緒となったこの調査報道のディレクターを務めた。神戸市出身の五百頭旗さんは、15年前にTUTに入社し、記者、ディレクターを経て昨年6月から夕方ローカルニュース「N6」のキャスターをしている。
 番組をつくるため600本の取材テープを見た。
「12月30日にオンエアーが決まっていて、番組づくりの本格スタートを切ったのは11月中旬からでした。当初はオンエアーに間に合うか心配したが、2週間かけて600本の取材テープを見た結果、そんな心配はいらないことがわかった。記者と市議や市職員などのやり取りが実に面白かったからです。この素材を生かすためコテコテの悪を倒す権力追及型番組にせず、おごらず、気取らず、コメディーをつくるという意識を持ち、辞職した市議たちなどの人間的な弱さに焦点を当てて編集した。楽しかったから予想外に仕事ははかどり、3日間で51分間の番組をつくりあげた。辞職した市議たちなどの人間的な弱さを伝えることができた」
 元NHKアナウンサーの山根基世さんをナレーターに起用したのも成功につながった。「山根さんのレトロ感のあるしゃべりが番組とマッチした」
 キャスターとしては市民目線による率直なコメントをすることを心掛けており、時に自民党を批判して局内で物議を醸すこともあるそうだ。


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2017年11月07日

《遠吠え》「笑ゥせぇるすまん」(死の商人)に唆されて、進んで「カモ」になろうとする浅はかな客=田悟恒雄

 「日米同盟」なんて言うけれど…。なあーんだ結局、「北の危険」を煽るだけ煽っておいて、落とし所は、どうやら「トランプ商会」の虫のいい武器セールスにあるようじゃないですか!?

 「首相は米国からさまざまな防衛装備を購入することになる。そうすれば〔北朝鮮の〕ミサイルを撃ち落とすことができる。日本は大量に買うべきだ。〔そうすれば〕多くの雇用が私たちのために生まれるし、日本がもっと安全になる」

 とは、「笑ゥせぇるすまん」(死の商人)の露骨な売り込み口上。
 で、一方こちらは、「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ」なんて唆されて、自ら進んで「振り込め詐欺のカモ」になろうとする浅はかな客の答辞─。

 「日本は防衛装備品の多くを米国から購入している。北朝鮮情勢が厳しくなる中、日本の防衛力を質的に、量的に拡充しないといけない…〔すでに購入が決まっているステルス戦闘機や弾道ミサイルを迎撃するミサイルに加え、イージス艦も〕米国からさらに購入するだろう」

 嗚呼「属国根性ここに極まれり」といったところですが、零細出版人としては、同じ日、トランプ氏に面会した拉致被害者家族・横田早紀江さんのお話の方が、よっぽど気になりました(神奈川新聞「カナロコ」)─。

 −以前から「戦争には反対」と言っていたが。
 「拉致被害者が北朝鮮に残されているという理由だけでなく、戦争は全体の破壊、地球の破壊ですから」
 −トランプ大統領には伝えたか。
 「きょうは喉の調子が悪く、声が出なくて」
 −思いは変わらないか。
 「戦争は一番いけない。何であんなことをしているのかといつも思う。破壊しているだけ。殺戮をしても何にもならない。生命も何もみんなが無になるだけ」
 −本当は伝えたかった。
 「いろいろ言いたかったけれど。…私が話せば時間がなくなってしまう」

 「軍事力行使も厭わずとする日米両政府の強硬な態度を危ぶむ早紀江さんのお気持ちが、ひしひしと伝わってくるようです。

(「零細出版人の遠吠え」11/07より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年11月05日

【今週の風考計】11.5─読書しない人たちへ、この漫画は逃すな! 心を打つ何かがある。おすすめだ。

▼「読書週間」が始まっている。70回目を迎える。だが電車の中はスマホばかり。全員が指操作に夢中の車両もマレではない。▼高校生が本を読まない割合は57.1%、5人中3人が本をまったく読まない事態だ。読書時間が世界1位のインドでは週10.7時間、日本はその半分以下の週4.1時間である。もはや読書習慣すらない。

▼出版界の現状にも反映する。今年の出版物の販売金額は1兆4千億円前後と予測される。 1996年のピーク時の2兆6563億円に比べれば、この20年間で販売額は半減してしまった。加えて雑誌の売り上げは前年比マイナス14.1%に加え、返品率は最悪の40%を続けている。深刻な事態となっている。
▼書店数も半減し1万店を割るのも近い。書店がゼロの自治体・行政区は420にものぼる。全体の2割に及ぶ。町の本屋さんがつぶれているからだ。嘆くだけでは能がない。じゃあ、どうするか。

▼80年前の1937年に刊行された吉野源三郎『君たちはどう生きるか』を、マガジンハウスが漫画化して刊行した。発売して2カ月で33万部の売り上げを示すヒット作になった。いまなお売れ続けている。先月25日に「異例の10万部重版」(8刷)を決めた。8刷分は11月6日から市場に投入される。
▼読み継がれてきた名著を、新しい感覚で一工夫しての刊行が、若い世代にアピールした好例である。はじめから読書が嫌いなのではない。58回を迎える神田古本まつりも、東京・神保町で開かれている。この宝の山から、名著を新たに掘り起こし復活させるのもいい。(2017/11/5)
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2017年11月02日

《遠吠え》「国難」去って(?)ますます見え見えになった「幼児性とも思える姑息な動機」=田悟恒雄

 きのう第4次安倍内閣が発足。全閣僚が再任されました。
 3カ月前に発足した第3次内閣は、「仕事人内閣」の触れ込みでしたが、結局、仕事らしい仕事は何もしないまま「国難総選挙」へと突入。共産党の小池晃書記局長から揶揄されたように、「仕事し(師)ない閣」に終わった次第。
 この国の憲政史上、そんな先例はなかったわけで、そのあとどうするのか注目していたのですが、結局、何も変わるところがありませんでした。
 ならば、600億円からの税金を投じたあの騒ぎは、いったい何だったのでしょう? どう考えても、「モリ・カケ隠し」以外に、思い当たる節はありません。
 野党からの臨時国会召集要求を無視し、いっさいの国会審議を必死になって拒み続け、まんまと「国難選挙」に大勝すれば、こんどは特別国会の会期を極力短縮しようとしてみたり、野党の質問時間を大幅削減しようとしてみたり…。
 何だか「幼児性とも思える姑息な動機」が見え見えなんですよねぇ。
 で、あれほど騒ぎ立てていた「国難」ってのは、選挙さえ終われば消え去ってしまうものなんですかね? まるで「元寇」みたいなもんです。
 そうか、それで台風一過のグリーンの上で、「ロシア疑惑」に追われる大統領と、「疑惑の人」同士のよしみでゴルフに興じようって算段なのですね? きっと。

(「零細出版人の遠吠え」11/02より。 http://www.liberta-s.com/
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≪部会レポート≫ 梅田正己さんの講演:内容詳細と質疑応答

日本はどこまで右傾化するのか
「安倍政権と9条つぶし」─その源流を追う

出版部会10月講演会で、梅田正己さんは安倍政権下の現在を鋭く分析し講演した。質疑応答を含め貴重な意見が開陳された。梅田さんは、つい最近、大著『日本ナショナリズムの歴史・全4巻』(高文研)を著したばかり。改憲に暴走する今の時代を、源流にさかのぼって学ぶテキストにふさわしい。

FmA自由メディア 撮影:大場・小林 広報:小林・はた

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2017年10月30日

《焦点》前川喜平氏は「防刃チョッキを着て会見に臨んだ」=橋詰雅博

 9月号のこのコラム「編集長EYE」で前川喜平氏のインタビュー番外編を紹介した。10月号は「番外編2」をお届けする。
 前川氏は5月25日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で記者会見を開いた際、代理人の三竿径彦弁護士を同席させた。当初は違う場所で、一人で会見に臨むつもりだったが、その気持ちが変わったのは、22日に読売新聞が報じた「出会い系バー」の記事が原因。これは自分の身を守るために弁護士が必要と思ったそうだ。相談した友人から三竿弁護士を紹介された。
 「電話で代理人になってほしいとお願いしたとき、三竿さんは『相手(安倍晋三首相)が大きすぎる、大きな法律事務所の方がいいのではないか』と躊躇されました。これに対して私は『正義感のあるうってつけの弁護士と友人がほめていましたよ』と答えた。結局、引き受けてくださいました」
 会見当日、三竿弁護士は、自ら購入してきた刃物を通さない防刃チョッキを前川さんに渡し、ワイシャツの下に着るようにと指示した。
 「(暴漢に襲われるなど)万が一のことを考えて用意したのだと思います。会見場はエアコンのスイッチが入っていなかった。防刃チョッキを着たせいもあり顔から汗が噴き出た。記者から質問された出会い系バーについて答える自分の映像をテレビで見たが、汗が流れるシーンを捉えていた。視聴者は『焦っている』という印象を持ったでしょうね。あの会見以降、防刃チョッキは着てきません」
 家族もバックアップした。
 「女房は録画した民放各局のワイドショーを見て、出演していた田崎史郎さん(時事通信社特別解説委員)や山口敬之さん(元TBS記者)はこんなコメントしていたと私に教えてくれました。30代で社会人の2人の息子も協力。特に次男からは私がプレスリリースなどを書いていると、『オヤジ、遺憾を言語道断に直した方がいい』などとアドバイを受けた。息子が文章を直すと全体的に語調が強くなった」
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年10月25日号
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2017年10月29日

【今週の風考計】10.29─ジャーナリスト殺害事件と国連宣言、そしてコラム「産経抄」の異様な文章

去る16日、マルタ島の女性記者ダフネ・カルアナガリチアさんが、移動中の車ごと爆殺された。彼女はタックスヘイブンに関わる「パナマ文書」の調査報道に参加していた。また同国ムスカット首相の妻が、パナマに会社を設け資産を隠していた経緯も追求していた。

この事件を、なんと19日の産経新聞1面コラム「産経抄」が、「日本の新聞記者でよかった、と思わずにはいられない」と書いた。江川紹子さんは、ツイッターで「人でなし、とはこんなものを書く人のことを言うのだろう。人の無残な死を、同業の者として、まずは悼むということが、せめてできないのだろうか」と。同感。

24日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが会見し、同業ジャーナリストが自分に加えた性暴力被害の実態を明かし、日本の司法・社会システムのありかたについて課題を提起した。

ジャーナリストへの脅しや殺害の脅迫、そして暴力は世界中に広がっている。この10年だけでも800人近くが死亡している。7割近くは「銃撃戦や危険な取材活動によって命を落としたのではなく、むしろ政府の腐敗、犯罪、麻薬取引、反体制派の活動を取材した報道内容に対する<報復>として殺害されている」という。かつ犯人は見つからず、見つかっても処罰されず、放置されている。
こうした事態を解決するため、国連は11月2日を「ジャーナリストへの犯罪に対し、不処罰をなくす国際デー」と宣言。今年は4年目となる。世界各地のジャーナリストに安全な環境を整備し、表現の自由を守り人権を前進させ、民主主義を強めるアクションプランを展開している。「産経抄」の筆者も煎じて飲むとよい。(2017/10/29)
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《焦点》 都有地を五輪選手村用にたたき売り 「都政版森友疑惑」裁判 第1回口頭弁論11月17日に=橋詰雅博

 東京五輪・パラリンピック選手村建設用地を巡り注目すべき訴訟の第1回口頭弁論が11月17日、東京地裁で開かれる。この裁判は、中央区晴海5丁目の都有地(13・4f)を市場価格の10分の1で、選手村を建てるデベロッパー11社に不当に安く売却したとして、都を相手取り、都民33人が小池百合子知事や舛添要一前都知事、建設業者らに差額分約1209億円を請求するように求めたものだ。国が国有地を約8億円値引きして森友学園に売却した森友疑惑の「都政版」とも言える。都が棄却した住民監査請求に続き裁判でも原告側代理人を務める淵脇みどり弁護士(59)に聞いた。
    ☆     ☆
都が「一人3役」
――監査請求の結論で監視委員の「意見」が付けられていたが、異例ではないか。
 住民監査請求の結論は、行政担当者の反論を追認するケースがほとんどだが、今回、意見が付されたのは異例だと思う。その意見は〈再開発法に基づき、都が地権者、施行者、認可権者の3つの役割を併せ持つことにより土地処分を巡る手続きが,中立的かつ公正な監視や牽制の下で行われないとの懸念を生む状況が生じた〉と指摘。さらに〈今後、重要な決定に当たり、専門家の意見を十分に聞くなどの内部牽制体制を強化し、細やかな対外説明を行うなどにより、これまで以上の透明性の確保に努められたい〉と強調している。
 これは請求棄却と明らかに矛盾しているが、この問題の核心を衝いている。裏を返せば、ひどい形で本件が進んでいるのです。
 ――都のような「1人3役」による市街地再開発事業はほかの自治体であるのか。
 監査委員が聞いた都都市整備局担当者の説明が監査結果に述べられている。自治体が個人の地権者として個人施行の再開発事業を行った事例は5件あるが、都のような「1人3役」の事例はなく、極めて異常であることが鮮明になった。本来の市街地再開発事業の目的や仕組みなどから大きく逸脱している。実態は都による更地の直接売買であり、しかも適正価格の10分の1という廉価でデベロッパー11社に売却した。

背景に官民癒着
――都が東京ドーム3個分にあたる土地を投げ売りした理由は。
 再開発事業の手法を悪用したこんな頭のいいやり方を都だけで考えたわけではないと思う。デベロッパー11社のうち7社に都幹部12人が天下りしている。今回の事業だけでなく、都と民間業者の癒着が恒常的にあるのではないか。デベロッパーにとって再開発事業は建築物の容積率アップの実現や公に地上げができて、自治体から補助金も受け取れ、建てたマンションなどを売却(東京五輪の場合、終了後に選手村にマンションなどが建てられ、デベロッパーが販売)できる。おいしい話です。再開発事業では行政と民間業者は密接な関係になっている。
――そもそも都民が被るデメリットは何か。
 仮に1209億円を回収できれば、都の予算に組み入れられ、福祉や教育などの分野にお金が回され充実する可能性がある。しかし、本来、回収できるお金を回収しないので、財政面で損害が発生し、結局、納税者への公共サービスなどの低下につながる。本件は、国有地を8億円値引きして売った「森友疑惑」と同じ構図です。
聞き手 橋詰雅博
    ☆     ☆
 「都政版森友疑惑」裁判の第1回口頭弁論は11月17日(金)、13時30分から東京地裁419号法廷で開かれる。傍聴に参集を。
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2017年10月28日

《焦点》 文科省前事務次官・前川喜平氏インタビュー続報 公僕は「官邸権力」の下僕ではない=橋詰雅博

日本ジャーナリスト会議(JCJ)の機関紙「ジャーナリスト」10月25日号8面に記事を掲載しました。

 前文部科学省事務次官の前川喜平氏(62)は9月初旬、本紙インタビューに答えた。安倍晋三首相を告発した彼の動機とメディア分析を9月号に掲載。以下は前川氏インタビューの続報だ。
☆  ☆
――権力にベッタリの読売新聞と産経新聞、忖度が目立つNHKは変われるか。
 読売にも心ある記者はいるはずだし、産経だってこのままでいいのかと思う記者はいるだろう。ただ、産経までいくと、内部からひっくり返すのはムリで、外部から包囲して影響力を弱めるしかない。読売はまだ内部から改革できる可能性が残っている。(読売新聞グループ本社会長・主筆の)渡邉恒雄氏の生物学的な生命はそろそろ終わり。重しがなくなれば変わるのではないか。

現職職員に、苦しい思い
 NHKは上田良一氏が、会長に就任してから変わった。少し風通しがよくなった。『クローズアップ現代+』は独占入手の加計学園新文書(〈官邸は絶対やると言っている〉などと記された文書で、萩生田光一官房副長官が文科省担当者に指示したとされる)を6月19日に放送した。その際、出演した社会部記者と政治部記者が全く違うコメントをしていて、かなり面白い状況だった。それ自体がNHK内部の葛藤をあらわしている。前は独自に報じることすら出来なかったわけですから。「政治部記者も出て、官邸寄りのコメントをするなら放送していい」と上層部がOKしたのだと思う。社会部がそこまで押し返している。
各メディアの中で良心のある記者が権力監視というジャーナリズムの使命感を持ち、それぞれの組織で改革を求める動きに期待したい。
――前川氏の告発によって官界の空気は変わったか。
 文科省は大変な混乱状況に陥ったと思う。「あいつが漏らした」とか「あの人がチクッた」など職員は疑心暗鬼に。私は国民に対して正しいことをしたが、文科省の現役職員に苦しい思いをさせて、申し訳ないと思っている。ただし、苦しみもせず、唯々諾々とゆがんだ行政をそのままにしていたら、それこそ大問題です。将来的にそのことで悩む人も出てくる。

息苦しさから解放
 霞ヶ関の国家公務員の間に息苦しさから少し解放されたという空気が出てきた。政治家にひどいことを言われたら、国民にお知らせすればいいんだという感じです。古い役人道≠ゥらいえば、ご主人さまを裏切ることになる。バカ殿でも命をかけて守るという儒教的倫理が今でも官界に少し残っている。だけどそうじゃない。本当の殿は国民ですから。
 公務員であっても、その前に一人の個人。個人として思想や信条、良心がなければおかしい。自分自身の考えがあるはず。だが、その考え通りに仕事ができる保障は全くない。私も意に反する仕事をずいぶんさせられた。第一次安倍政権下での2006年、(愛国心を打ち出した)教育基本法の改正なんかしたくなかった。しかし、自分の意思や良心を捨ててはダメ。個人の尊厳を忘れてはならない。
 公僕は国民に仕える身だが、自分自身も国民の一人であり、主権者であることを認識すべきです。そうでないと国民の立場で仕事ができない。公僕は一部の奉仕者つまり官邸権力≠フ下僕ではありません。一国民としてどうかという視点を失わないこと。「個人の尊厳」と「国民主権」の自覚を持つことは、公務員全体に必要です。
そうなれば、公務員が政界を監視でき、権力を握る政治家も勝手な振る舞いができにくくなる。もしもやりたい放題やったら官僚の反乱が起ることが(私の告発で)分かったと思う。

国民を欺いてきた
――国会で「記録は破棄」と答弁し、安倍首相夫妻をかばい理財局長から出世した佐川宣寿国税庁長官をどう思うか。
 役人は国会での答弁を多かれ少なかれ訓練する。私も心にもない答弁を行ってきている。国民を欺いてきた。それはともかくとして、彼はやはり知っていることをしゃべった方がいい。彼にとって国税庁長官は上がりのポスト=B辞めた後「実は8億円の値引きはさるところから言われ、地下に埋もれたゴミがあることにして、予定通り1億3000万円で国有地を売った」と話したらどうですか。気持ちがラクになる。現在、本人は相当に苦しんでいるのではないか。
――加計学園の獣医学部設置は認められるのか。
 文科省の方針はこうです。獣医学部新設を審査する文科省の大学設置・学校法人審議会は、学校教育体系に基づく既存の設置基準に照らして認可するかどうか決める。国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)で決定した戦略特区での加計学園の獣医学部新設については既存の設置基準から外れているので審査事項ではない。私は国民が注視している間に、諮問会議による再検証を行う必要があると思うが、認可されるでしょう。来年4月に開学する可能性は高い。

「柳に雪折れ無し」
――なぜ「面従腹背」を座右の銘にしたのですか。
 権力者に意見を言って、受け入れてくれなければ仕方がないというのが役人の宿命です。そういう経験を積んで、だんだんと面従腹背になり、生き方としてしなやかさが備わった。「柳に雪折れ無し」ということわざがある。雪が積もっても柳はポキンと折れずに曲がり、やがて元に戻る。そんなやり方をして組織の中で生きのびてきた。確かに一般的に言葉のイメージは悪いが、面従腹背のおかげで、とくに役人の最後の頃は、教育機会確保法(不登校の子どもたちを対象としたフリースクールへの支援や自治体による夜間中学の設置など)の成立など国民のためになる仕事に多く巡り合えた。

学習ボランティア
――今、どんな活動をしていますか。
 退職後の2月から福島市の「自主夜間中学」(義務教育未修学者や外国人などに教える学習支援組織で、市民団体などが運営)と厚木市の自主夜間中学で勉強を教えるボランティアをしています。厚木では学校に行けず読み書きがほとんどできない80歳近い男性に小学校低学年レベルの国語を教えている。この人、よく生きてこられたなと思います。また、高校中退者の学習支援を行うことも考えている。
 文科省はこうした人たちがいることを分かっていながら全体から見れば、はしっこの問題だと、見て見ぬふりしてきた。私自身、罪の意識を感じている。置き去りになった人に対して基本的人権の基盤とも言える「学習権」があることを伝えていきたい。
聞き手 橋詰雅博
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2017年10月26日

《遠吠え》「排除しますっ!」は、振付師なくヒロイン自ら「緑のタヌキ劇場」の舞台設営にあたった結果?=田悟恒雄

 25日の東京新聞Web版「振付師なく『敵役』に/小池氏 過信が生んだ排除発言」は、とても読ませる記事でした。
 記事は、9月末「三都物語」をブチ上げた後の記者会見で小池氏が、前日「排除発言」を引き出したフリー記者・横田一さんを「あてないで」と書いたメモを、そっと司会者に差し出したシーンから始まります。
 実は小池氏、都議選のときにも「排除の論理」を持ちだしているのですが、その「選別作業」には周囲の「振付師」たちが水面下で進めたので、表沙汰にはなりませんでした。
 ところが今回の衆院選では、裏方の態勢を整える時間がなく、ヒロイン自ら「緑のタヌキ劇場」の舞台設営にあたるハメに。それで、ついうっかりホンネを出してしまったのだと。
 そう、「風」を期待するあまり、せっかく頭上に載せた木の葉まで吹き飛ばしてしまい、通り掛かりの人を化かすこともできなくなった、というわけです。
 でも、事の本質を鋭く衝いているのは、小池氏が師と仰ぐ細川護熙さんの次の言葉かもしれません─。

 「小池さんが昨年の知事選で大勝できたのは、彼女が自民党に排除されたことを見て、有権者が味方になってくれたからでした。にもかかわらず、今回自分が排除する側に回ってしまいました。それではうまくいくわけがありません。おごりがもたらした結果でしょう」(朝日新聞インタビュー)。

 蛇足ながら、ここで前都知事・舛添要一さんにも久々のご登場を願うとしましょう─。

 「小池都知事はパリで会見している〔敗戦の弁〕が、希望の党の代表としての行動なら、都の出張費用を使うべきではない」(ハフポスト)なんて、ね。

 舛添さんて、意外と公金の使い方に厳格なお考えをお持ちだったんですねぇ?

(「零細出版人の遠吠え」10/25より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年10月24日

《遠吠え》「謙虚」も「真摯」も「丁寧」も、ご当人には似つかわしくない「取って付けたイチジクの葉」=田悟恒雄

 今回の衆院選で「まさかの単独過半数&与党で3分の2議席」を手にしたアベ首相、さっそく「同じ総裁の下で3回続けて勝利を得たのは立党以来60年あまりの歴史の中で初めてのことだ」なんて胸を張る一方、こうも言っています─。

 「国民からより一層厳しいまなざしが注がれる。そのことをすべての与党議員が強く意識しなければならない。今まで以上に謙虚な姿勢で、そして真摯な政権運営に全力を尽くさなければならない」

 持ち前の「驕り」を反省しているのじゃないか?と早とちりする向きもあるようですが、決してそんなものではありません。このお方のこれまでの言動と行動を思い起こしてみれば、これが「取って付けたイチジクの葉」にすぎないことは、すぐにバレてしまうのがオチというもの。
 たとえば「モリカケ疑惑」─。このお方の言い分では、「これまでも丁寧に説明してきたし、これからも国会で質問されれば丁寧に答えたい」ということになるらしい。
 でも、野党やメディアの追及から必死に逃げまくり、ついには突如国会解散までしてのけた、というのがこの間の真実じゃないですか!?
 「謙虚」だの「真摯」だの「丁寧」だの、どうみてもご当人には似つかわしくない「うちゅくしい言葉」を連発していると、もう誰にも相手にしてもらえなくなりますよ。

(「零細出版人の遠吠え」10/24より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年10月23日

≪お知らせ≫ 10月27日 JCJ出版部会・講演会のご案内

日本はどこまで右傾化するのか
「安倍政権と9条つぶし」─その源流を追う


戦後72年、ついに安倍政権は、憲法9条をつぶし、日本を「戦争する国」へと駆り立てる道に踏みこんだ!
どうして、こんな事態になってしまったのか!?
戦前回帰というウルトラ右翼の母胎である「日本ナショナリズム」の源流に分け入り、 右傾化へ拍車をかけてきた影のプロセスを明かす。


講師: 梅田正己
日時: 10月27日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所: YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 Tel : 03-3233-0611
JR水道橋駅・東口改札を出て白山通りを右へ進む。「居酒屋和民」前の交差点を左に渡る。その道を
真っ直ぐに入る。神田女学園に突き当たり横の路地を右へ。
地図
参加費:800円(会員・学生500円)

梅田正己 (うめだ・まさき):1936年生まれ。書籍編集者を経て、高文研前代表。歴史学者、ジャーナリスト。著書に『これだけは知っておきたい・近代日本の戦争』『「非戦の国」が崩れゆく』『「市民の時代」の教育を求めて』『日本ナショナリズムの歴史・全4巻』(以上、高文研)、『この国のゆくえ』(岩波ジュニア新書)など著書多数。

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千国屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.gr.jp


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2017年10月22日

【今週の風考計】10.22─<私はもう、嘘をつく心には倦き果てた!>─中原中也・没後80年に想う

22日は、詩人・中原中也が没して80年。そして今年、生誕110年になる。青春の切なさや人生の悲しみを詠む詩が多い。<思へば遠く来たもんだ 十二の冬のあの夕べ…>を始め、<汚れつちまつた悲しみに…>など、今でも口ずさむ。自分の悲しみと響き合い、ひたひたと心に染みてくる。

だが忘れてならないのは、死の前年に起きた2・26事件や戦争へと傾斜するキナ臭い世相に、オノマトペや擬態語を混ぜ込みながら、「時代に抗する道化の精神」を、詩に結晶させてきた中也の感性である。佐々木幹郎『中原中也』(岩波新書)を読んで教えられた。

「嘘つきに」と題された詩がある。<私はもう、嘘をつく心には倦きはてた。/なんにも慈むことがなく、うすっぺらな心をもち、/そのくせビクビクしながら、面白半分ばかりして、/それにまことしやかな理窟をつける。…私はもう、嘘をつく心には倦き果てた!>─オッと待って、これは中也の自戒じゃない。当時の軍と議会の馴れ合いがはびこる世相に向けた痛烈なプロテストだ。そう捉えたい。

さて今の日本、何が起きているか。神戸製鋼では自社製品の品質保証データを改ざんし、日産自動車では安全点検の不正、116万台のリコールという前代未聞の事件が起きている。東芝の粉飾会計から商工中金の不正融資まで、まさに嘘のカタマリじゃないか。いやいや永田町・安倍政権が進める国会運営も、嘘と詭弁とごまかしのオンパレード。PKO日報隠し、「森友・加計」疑惑、出した資料はすべてスミヌリ、一つも明らかになっていない。まさに政官財の嘘つきトライアングル。本当に<嘘をつく心には倦き果てた!> (2017/10/22)
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2017年10月15日

【今週の風考計】10.15─またも沖縄で墜落・炎上したCH53Eヘリとストロンチウム90

◆沖縄県東村の私有牧草地に墜落し、大破・炎上した米軍ヘリコプターは、6月に久米島空港へ緊急着陸したヘリと同一機。◆このCH53E大型ヘリには、放射性物質が収納されている。7枚の回転翼ブレードを持ち、それぞれの根元付近に、放射性物質ストロンチウム90が入った計器を備える。空洞になっている回転翼ブレード内の圧力変化を、飛行中でも常に検知し、劣化や氷結による亀裂などの異常が発生していないか確認している。

◆13年前、沖縄国際大に墜落したヘリも、今度の事故と同系のCH53Dだ。回転翼などからストロンチウム90が検出されている。

◆いま事故機体のストロンチウム90が飛散した現場周辺では、不安が広がる。事故後、現場で消火作業にあたった国頭消防隊員も「被曝したのでは?」と、精神的な不安や緊張にさらされている。◆現場の西約300メートルの地点3カ所で、放射線調査を実施した矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授は、「1u当たり81ベクレルのベータ線が検出された」という。人体にはほとんど影響がないレベルというが、牧草地の所有者は、これから刈り入れする牧草や飼育している豚50頭の出荷に影響が出ると心配する。

◆沖縄防衛局と県は、現場への立ち入りを申請している。だが<日米地位協定>に阻まれ、日本政府や沖縄県の調査は拒否され、またも泣き寝入りが強いられるのは必定だ。沖縄から基地をなくせ! まさに総選挙の争点、やまとんちゅうの一票が問われている。(2017/10/15)
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2017年10月13日

《遠吠え》トカゲのシッポ切りはもとより、都合の悪いことは「妻が、妻が…」で逃げ切り図る卑怯者=田悟恒雄

 おとといのテレ朝「報道ステーション」党首討論での「森友問題」に対するアベ首相発言には、びっくりを通り越して呆れ果ててしまいました─。

 「籠池さん自体が詐欺で逮捕され、起訴されました。…こういう詐欺をはたらく人物のつくった学校でですね、妻が名誉校長を引き受けたことは、やっぱり問題があったと。こういう人だから騙されてしまったのだろうと」

 そこには、この人物の「卑怯者ぶり」が、余すところなくさらけ出されています。あからさまな「トカゲのシッポ切り」はもとより、自分に都合の悪いことはすべて「妻が、妻が…」で逃げ切りを図るつもり。
 もう記憶も薄らいでしまったことでしょうから、ご参考までに、疑惑が発覚し始めた頃の「遠吠え」を引っぱり出しておきましょう─。

 02/22 「もっと傑作、かついかがわしいのは、寄付金を募ったときのその名です。ナなんと『安倍晋三記念小学校』ですって!
 『悪い冗談』というのはふつう、このへんでお終いとなるのですが、これにはさらに続編があるのです。ナナなんと、記念に名を冠された宰相の妻・安倍昭恵氏が『名誉校長』を務めるんだそうです。
 このことを国会で質された『記念政治家』氏、血相を変えて『関係していれば総理も国会議員も辞める』などと息巻いていましたが、『妻から学園の先生の教育への熱意はすばらしいという話は聞いている』などともおっしゃっています。」

 02/24 「くだんの『小學院』の『名誉校長』にめでたく就任された安倍昭恵氏が、同学園傘下の幼稚園で行なった講演から─。
 『こちらの教育方針は大変、主人〔シンゾー氏〕も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう』」

 02/27 「世間様がくだんの学園の異常さに気づき、疑惑の目を向け始めたからなのでしょう、せっかく『名誉校長』に就任あそばされたファーストレディを辞任させ、いつの間にか『名誉校長 安倍昭恵先生 安倍晋三内閣総理大臣夫人』の写真も挨拶文も、学園HPから削除してしまいました。
 これを『隠蔽じゃないか』と国会で追及した民進党議員に、当のご仁はブッちぎれ─。
『隠蔽というのはですね、隠蔽というのは、隠蔽というのは、じゃあ、私が隠蔽したんですか! 私がですね、私が森友学園のHPに対して隠蔽しようがないじゃないですか!』」

 もう支離滅裂。ばっかばかしいったら、ありゃしない。

(「零細出版人の遠吠え」10/13より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年10月12日

≪出版界の動き≫8月・9月─共同フェア「チチカカコへ」の期待

●8月の出版・推定販売金額976億円(前年比6.3%減)、書籍464億円(同3.7%減)、雑誌511億円(同8.6%減)、返品率は書籍42.2%、雑誌44.4%。とりわけ週刊誌の落ち込みが激しい。販売金額100億円割れが続き、前年比18.3%減。

●第4回共同フェア「チチカカコへ」の内容─KADOKAWA、河出書房新社、講談社、筑摩書房、中央公論新社、平凡社の6社は、「教養はチカラだ!」を合言葉に、教養文庫シリーズを集めて行う。各社の編集長のイチ押しや書店のリクエストが多かった60点を選書、450〜500書店をめどに12月中旬より展開する。昨年の販売冊数は前年比約11%増。3カ月後の実売率55.5%(同3%増)で健闘。大手書店はもとより、地方の中小規模の書店でも好調だった。

●経済産業省監修「デジタルコンテンツ白書2017」によると、2016年のコンテンツ産業市場規模は12兆4千億円(前年比2.7%増)。1位「テレビ」約2兆円、2位「オンラインゲーム」1兆2千億円、3位「インターネット広告」1兆円、4位「新聞販売」1兆円、5位「書籍販売」7370億円。昨年5位の「雑誌販売」は、6位(7339億円)にランクダウン。
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2017年10月08日

【今週の風考計】10.8─ICANノーベル賞受賞と核廃絶に背を向ける被爆国・日本の悲劇

ICAN、YOUCAN、All Together CAN!─と叫びたくなるほど、反核団体「ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーン」の10年に及ぶ活動に、ノーベル平和賞が授与され、うれしくて嬉しくてたまらない。北朝鮮やイランの核開発が深刻化する今、「核兵器が使われれば人類は破滅的な結末を迎えると注意を喚起し、核兵器禁止条約の実現にむけて、果たしてきた画期的な努力」が高い評価を受けた。広島と長崎への原爆投下から70年以上、いまだに1万5千発の核兵器が世界に存在し、核保有9カ国は廃棄への願いを踏みにじり続けてきた。

今年7月の国連では、加盟193カ国のうち122の国と地域が賛成し、核兵器禁止条約が採択された。その中心的な役割を担ったのがICANだ。唯一の戦争による被爆国日本との関係も深い。日本の被爆者団体と連携しながら、核兵器禁止条約制定に向けたキャンペーンを展開してきた。まさに被爆者とICANの共同受賞といってよい。

だが日本政府はコメントすら出さない。被爆国の政府が、米国の「核の傘」の下にあるという理由で、条約制定の会議や交渉にも参加しない。いまや核廃絶に向けた議論をリードするどころか、被爆者からも各国のNGOからも信用されなくなっている悲劇、それこそ深刻な問題だ。あまつさえ安倍首相は、北朝鮮の脅威を「国難」といいつのり、核ミサイルの廃棄に向けて対話を促すどころか、圧力と制裁ばかりを口にして、自分の政権延命をもくろむ総選挙に血道をあげる。掲げる公約には、「核廃絶」の文字はどこにもない。(2017/10/8)

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2017年10月04日

≪おすすめ本≫大田昌秀 編著『沖縄 鉄血勤皇隊 人生の蕾のまま戦場に散った学徒兵』 92歳の誕生日に逝去された大田昌秀さん、学友の少年兵たちに捧げたレクイエム=鈴木耕(編集者)

 個人的な思い出で恐縮だが、私は『沖縄、基地なき島への道標』(集英社新書)という大田さんの著書の編集担当をして以来、ずっと大田さんには親しくしてもらった。
 沖縄へ行くたびに食事をご一緒し、たくさんのお話を伺った。その中でいつも大田さんが気にかけておられたのが、鉄血勤皇隊に召集され斃れていった学友たちのことだった。それが、まるで遺著のようにしてまとまった。奇しくも92歳の誕生日当日に旅立たれた大田さんの最期に間に合った…。

 大田さん自身が組み入れられた鉄血勤皇隊。だが、勇ましいのは名ばかり。まさに副題が切ない。ろくな武器も与えられずに戦場に放り込まれた15〜18歳ほどの少年たちが、文字どおり蕾のまま花開かずに死んでいったのだ。
 ひめゆり部隊などの看護隊は映画でも有名になったけれど、男子学徒隊は沖縄の全12校から招集されながら、実態はあまり明らかにはならなかった。多くの学友を失った大田さんにとって、少年兵たちへの鎮魂は自分の人生の終幕までに、どうしても成し遂げたかった仕事だったのだろう。

 沖縄師範学校男子部本科2年生だった大田さんは、敗戦の色濃い1945年2月に召集され、情報宣伝隊の千早隊に入れられた。それがどういう任務だったのか、本書を読んでほしい。戦争というものが、結局は人間の使い捨て、命を木の葉のように軽く扱う残酷な歴史の一齣であることがよく分かる。終生をかけて反戦を訴え続けた大田さんに、7月、私は最後のお別れをしに、沖縄へ行って来た。
(高文研2000円)
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2017年10月01日

【今週の風考計】10.1─世界が注目! 三都市が呼び起こす波紋。小池代表「三都物語」の小ささよ!

アルビル、バルセロナ、ストックホルム─いま世界が注目する三都市である。「希望の党」小池代表の<三都物語>より、ずっとずっと重要だ。

イラク北部にあるアルビルは、クルド自治政府の中心都市。住民投票を行いイラクからの独立を鮮明にした。だがイラクと周辺国は、クルド自治区を孤立させようと空路封鎖など対抗措置をエスカレートさせている。
バルセロナはスペイン・カタルーニャ州の州都。過重な税負担や独裁的な中央政府の介入に抗うため、独立を目指す住民投票が始まった。政府は他州の警察官数千人を動員して阻止する構え。双方の争いは激しくなる一方だ。ストックホルムは、ノーベル賞受賞者が発表されるスウェーデンの首都。ノーベル賞ウイークが、2日の医学生理学賞から始まる。3日に物理学賞、4日は化学賞の受賞者が決まる。この自然科学3賞は、4年連続で日本の科学者が受賞するか、大きな注目を集めている。さらに6日には平和賞、9日に経済学賞と続く。

特に日本からノーベル賞受賞者が出れば、その研究分野に関連した「ノーベル賞関連銘柄」が高騰し、思わぬ経済効果につながる。文学賞は発表の日程が、いつもの通り決まっていない。毎年、注目される村上春樹、予想では現在2位、トップは現代アフリカ文学を代表するケニア出身の男性作家で、「アフリカのトルストイ」と評価されるグギ・ワ・ジオンゴ。日本人3人目のノーベル文学賞受賞者が出るのか。これまで発表前に文教堂や丸善の株価が急騰し、受賞を逃した途端に急落する事態も。(2017/10/1)

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2017年09月28日

《焦点》前川喜平氏インタビュー3「政治家と付き合うのは嫌で嫌で」番外編=橋詰雅博

 なぜJCJ機関紙のインタビューに応じたのかについて、前川喜平氏は「コマーシャリズムに流されていない。相談した代理人の弁護士も止めなかった」と答えた。
 インタビューのテーマは多岐にわたった。その「番外編」をお届ける。
◆収入 定期的なものはない。最近は講演料、多くて3万円、メディアへのコメント料やラジオの出演料が増えてきた。顔を忘れてほしいのでテレビには出演しない。
◆教えたい 若いころ、上智大の非常勤講師を務め、教育行政学を教えた。文科省の仕事を違った視点で見ることができて幸せだった。学校法人などから手伝ってほしいと求められたら有償で教えます。きっと楽しいだろう。
◆仏教 仏教を通じて人間が形成されると考えていた祖父と父親が残した仏教の本を中学、高校のころ読んでいた。東大在学中はサークル「仏教青年会」に入っていた。京都や奈良、鎌倉などで仏像を見るのが好き。文化財部長をやりたかったが、チャンスがなかった。
◆性格 楽天的で、大概の事はどうにかなる。ただ、子どものころは、神経質で引っ込み思案だった。楽天的な性格をつくることができたのは仏教の勉強のおかげ。仏教の核心を簡単に言えば、気にするな、です。
◆好きな俳優 女優は大原麗子。ウイスキーのテレビCM「少し愛して、なが〜く愛して」、あのセリフにゾクゾク。高倉健と共演した映画「居酒屋兆治」のヒロイン役もよかった。男優は渡瀬恒彦。テレビドラマ「十津川警部シリーズ」では、TBSは渡瀬、テレビ朝日は高橋英樹が警部役に扮したが、渡瀬の方に人間的な味わいがあった。
◆酒 たくさん飲めない。今夜はゆっくりしたいなと思ったとき、チョコレートをつまみながら女房とブランデーを飲む。
◆選挙への出馬 国政も首長も関心ない。現役時代、政治家と付き合うのは嫌で嫌で仕方なかった。

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《遠吠え》窮鼠が放った「一発逆転満塁ホームラン」は、ドームの天井に球が挟まってアウトッ!=田悟恒雄

 衆院解散を前にして、きのうはあちこちで「政界ドタバタ喜劇」が上演されました。
 喜劇のヒーローは民進党・前原誠司代表。きのう開かれた同党議員との会合で、「民進党の公認候補は出さない。希望の党の公認を得てほしい」と、小池新党への事実上の「合流」、いえいえハッキリいえば「解党」の方針を出したそう。
 どうせ「離党ドミノ」を止められないのなら、丸ごと移っちまえば簡単、「これぞ一発逆転満塁ホームラン」とでも考えたのかもしれません。
 けど、事はそれほど簡単ではありません。押し掛けられる側のヒロイン・小池百合子都知事の方の関心は、もっぱら100億円ともいわれる民進党の政治資金、候補者の頭数、それに弱体ながらも一応はすでに存在する全国組織にしかないのです。

 「党と党で手を組むことは全く考えていない。一人一人が仲間として戦えるか、こちらで決める」

 というわけで、丸裸になった民進党離党者は、すぐさまヒロインによる「身体検査」、っていうか露骨な「思想調査」に掛けられます。
 「憲法」なんぞもってのほか。「リアルな安全保障政策」ということで、あれほど反対してきた「安保法制」の泥沼にズブズブ引きずり込まれてゆくことに。いったい、そんなところに「希望」を見出せるとでも言うのでしょうか!?
 とどのつまりはこうです─。たとえ「アベ政治」を終わらせることができたとしても、それ以上に危険な「ウルトラライト政治」へと持って行かれる、というのが関の山なのかもしれません。

 そんなとき『日刊ゲンダイ』に、12年前に作られた短編映画「希望の党☆」の監督・金子修介氏のインタビュー記事が載っていました。
 そもそもコレ、「政治に無関心だとこうなりますよ」というメッセージを込めた啓蒙作品なのですが、政権を握った「希望の党」なる政党が、次々斬新な手を打つうち、気がつけば「ある日、徴兵令が敷かれ、娘も戦場に…」といったストーリー。
 「悪夢が現実にならないことを祈るばかりだ」とのインタビュアーの締めの言葉に、零細出版人も強く共感。

(「零細出版人の遠吠え」09/28より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年09月26日

《焦点》前川喜平氏インタビュー2 権力に寄りすぎ、読売・産経 取材しても出ず―可哀想なNHK記者=橋詰雅博

――取材が集中した当事者として今のメディアの状況をどう見ています。
加計問題で最も先行していたのはNHKです。複数の現役官僚から情報を得ていた。私の知る限り朝日より深く取材していた。GW前の4月ごろ、メディアで最初にインタビューを受け、「この文書を見たことがあるか」「加計学園の獣医学部新設をめぐり内閣官房から働きかけがあったか」などの質問をされた。ところがいつまで経っても放送されない。どうしたのだろうと思っていた。
社会部意地の映像

 すると5月16日のNHK番組「ニュースチェック11」は文科省の大学設置・学校法人審議会が建設中の加計学園の獣医学部を実地調査するというニュースを流した。ところが画面に映っていたのは、平成28年9月26日の日付が入った内閣府伝達ペーパーでした。「平成30年4月開学を大前提」は映っていたが、「官邸の最高レベルが言っている」や当事者名などは黒塗りでした。
 私も日付入りを見たのは初めて。日付入りは課長レベル以下のための記録用で、私が見た日付なしは、ダイジェスト版で省内上層部などへの説明資料。大臣も副大臣も見ているはず。本当にヘンな形で文書が報じられました。
 この映像は私に接触していた記者に言わせると、「我々社会部の意地。黒塗りでもいいから出したかった」と。おそらく朝日はこの番組を見て翌日の朝刊で報じた。しかし、日付入りではなく、翌18日に日付入り文書を掲載した。
 NHKが私のインタビューを放送しないのは、上から抑えられているからだろうと思っていたが、断続的に接触していた記者は「いくら取材してもこのままではニュースとして出ない、記者会見してもらわないと報じる方法はない」と言うのです。取材を積み重ね、情報を持っているに、可哀想だなと思いまいた。NHK社会部からの記者会見要請もありました。
政府側に立ち報道

 読売と産経はものすごく権力寄り。特に読売は相当、政権寄りであることは間違いない。読売は全国紙で唯一教育部がある。教育問題に熱心という評価はしていた。私も使わせていただいたが、「他社には言っていません、話すのは読売だけです」と言うと、大きく書いてくれた。下村博文大臣(12年12月に就任、15年10月に退任)はそれを散々やっていた。大きく報じて欲しい時は事前に読売に話していた。義家弘介副大臣(今年8月退任)は産経に。出どころが大臣と副大臣で読売と産経がスクープしても問題にしなかった。ところが朝日や毎日が文科省の動きをスクープしたら、犯人探しを始める。読売は政府側に立って動いてくれるので便利。しかも発行部数日本一で、政府の意図を国民に浸透させるツールとして重宝していた。文科省自身もお世話になっていた。
 だが、安倍晋三首相の改憲構想を読売が憲法記念日の5月3日朝刊1面に載せたのは、どうかナと思った。安倍「広報紙」という感じがした。国会でも「読売を熟読」と発言し、とてもじゃないが一国の首相が言う言葉ではない。
私物化される読売

 安倍政権によるメディアの私物化は、読売について特にその感がある。NHKも記者があれだけ取材しているのに報じない。しかも他社がどんどんと報道しているにもかかわらずまだ報じない、どうなっているのかと思った。私は、安保法制は憲法違反だと思っているし、集団的自衛権行使容認は現憲法で認められるとはとうてい思えない。行政府が勝手に法制局の見解とか閣議決定で憲法の中身を変えるなど、あってはならない。私も現役でしたが、いたたまれず15年9月18日、国会前の安保法制反対デモに参加した。
 憲法は権力をしばるもので、しばられている本人が「しばりを解きます」などということができる話ではない。まさに立憲主義の危機で、違憲立法が行われたと思っている。これをおかしいと言った新聞と、言わなかった新聞があり、そこで線が引かれている。
 読売と産経はかなり危険です。あまりにも権力にすり寄りすぎている。私の意見に近いのは朝日、毎日、東京。念のため読売も産経も読んだりします。(1面参照)
聞き手橋詰雅博

インタビューの続きは次号10月25日号に掲載します。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年9月25日号8面

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2017年09月25日

《焦点》加計疑惑―前川喜平・前文科相事務次官にインタビュー 官邸「口封じ」で吹っ切れる=橋詰雅博

「官邸の動きがあった」―加計学園疑惑ついて国会で参考人として発言し、安倍晋三首相を告発した前文部科学省事務次官の前川喜平(62)氏が、本紙のインタビューに応じた。約3時間にわたる取材では、焦点の「総理のご意向」文書から官界の空気、今のメディアの状況、自らの生き方にも及んだ。聞き手はJCJ事務局長兼機関紙編集長の橋詰雅博。
☆   ☆
――告発に至った最大の理由は何ですか。
 告発という言葉がその時の状況を的確にあらわしているとは思えないが、成り行き上、そうなった。意を決して立ち上がったみたいな、潔さとか悲壮感はなかった。かなり政治によって行政が歪められたという意識はやはりあった。 
特定の者に対する利益誘導ではないか、国民のための権力が私物化されているとの疑念があった。これは国民が知るべき事実ではないかと思った。
また、JCJ大賞を受賞した朝日新聞は、私でなく別の文科省の現役官僚からの取材で情報を得て報じてきたわけで、私は目の前で事実が明らかになればいいと思っていました。
信用落ちたら困る
 文科省は5月19日、メディアが報じた「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向』などの文書は省内調査の結果、確認できなかったと発表した。だが、あの文書は関係者ならだれでも知っている。「出してくれ」と言えば、すぐ出てくるはず。その「存在を確認できない」のはおかしい。これでは文科省が情報を隠ぺいしていることになる。
私は天下り問題で不名誉な形で辞めている。特に文科省の評判を落としたのは、違法な再就職あっせんに加えて、事実に反するストーリーで、糊塗つまり隠ぺい工作しようしたことだった。それを繰り返すのはいけない。教育行政に対する信用が一回、地に落ちていますから信用を回復する努力をしなければいけない時期なのに、さらに信用を落とすという気持ちもあり、ちょっと複雑な心境でした。
 ただ、積極的に打って出たのかと言うと、本当ところはそうではない。すでにNHK、朝日新聞週刊文春などと接触があったし、知っていることは話した。
しかし、名前を出して告発するなんて考えてもいなかった。取材では「この文書は確かにあった」とか「経緯はこうです」などと答えたが、「名前や顔を出すのは勘弁してください」と、最初はそういうことでした。
記事は意外だった
――突き動かしたきっけは何ですか
 ひとつは今、お話した文科省の隠ぺい工作。もうひとつは5月22日付読売新聞が報じた「出会い系バー」の記事です。私がメディアと接触して(加計疑惑で)コメントしていると、総理官邸には伝わっていたと想像している。実際、「前川が漏らしていると官邸サイドが言っている」と私に伝えたメディアの記者もいました。それとは別に出会い系バーについて一部週刊誌は接触しようとしていた。
店に行っていたのは事実ですから書かれても仕方ないと思い、相手にせず取材申し込みを放置していた。そうしたら5月22日に読売の記事が出た。極めて意外だった。 
読売はメールで何回か取材申し入れをしてきたが、記事にはしないと思った。信頼するメディアの記者に話したところ、週刊誌は分からないが、いくらなんでも読売は報じないだろうなという感じだった、私もそうだろうなと思っていたので、取材申し入れを放ったらかしていた。
総理官邸が企てる
(読売の記事の)情報の出どころは官邸、これか明らか。もともと官邸は出会い系バーのことを知っていた。昨年の秋に杉田和博官房副長官(警察庁出身で、警備・公安畑を長く歩み第二次安倍政権発足時に内閣官房副長官に就任)からこの問題でご注意を受けた。
さらに今年2月にも電話で「あの問題を週刊誌が書こうとしているよ」とお知らせがあった。文春、新潮、ポスト、現代、どこだろうなと考えたが、結局、記事は出なかった。杉田さんの情報は何だっただろうなと首を傾げた。
あの記事は官邸が書かせたと確信したのは、21日に後輩の文科省幹部から和泉洋人総理補佐官(旧建設省技官出身、第二次安倍政権発足直後の13年1月から総理大臣補佐官に就任)が「会いたいと言ったら対応するお考えがありますか」とメールがきたからです。記事を出させたくないなら取引に応じろ、加計学園関係文書について、発言は控えろという風に想像した。そうとしか考えられなかった。
ためらいが消えた
 読売の記事で私自身、完全に吹っ切れた。次官辞任(1月20日)する前までは政府の中にいた人間だし、私の名前でどこまで真実を言っていいのか、国民の知るべき事実を自ら言うべきか、ためらっていた。
だが、官邸は加計問題で口封じに動き、読売新聞まで使っている。忖度する問題ではなくなった。堰が切れ、官邸に遠慮しなくていい、躊躇しなくていいという思いに変わり、5月25日に東京・霞が関の弁護士会館で記者会見。取材していた朝日、週刊文春、TBS番組「NEWS23」がその日に「文書は本物」と報じた。(8面に続く)
日本ジャーナリスト会議(JCJ)機関紙「ジャーナリスト」9月25日号に掲載
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2017年09月24日

【今週の風考計】9.24─700億の税金を政権延命に使う「逃亡解散」への重大な疑義と怒りの大波

■「仕事師内閣」が発足して58日、何も仕事しないまま国会解散とは、開いた口がふさがらない。700億もの税金を投入して総選挙を行い、安倍首相自身に降りかかる<森友・加計疑惑>をかわすための「逃亡解散」。大義など一つもない。■「加計については1月20日に初めて知った」との自分のウソ発言を、消すための「エゴイズム・リセット・延命解散」に他ならない。解散権をもてあそんでいいのか。

■東京新聞が<「7条解散」消えぬ疑問>と題して、解散は首相の専権事項という正当化に問題を提起している(9/24付)。憲法に明記されているのは「内閣への不信任決議が可決された場合、10日以内に解散か総辞職をしなければならない」とある69条のみ。7条の<天皇の国事行為>にすがる解散は、大義などいらず、党利党略・首相の恣意的な行使へとつながりかねない。■ともあれ私たちは、今の安倍政権へ厳しい審判を下さねばならない。こうも「ウソと強弁、言い逃れ」が続く政治をストップさせ、国民に目を向けた施策を実現する国会へ変えていこう。

■市民は野党の共闘が進み、憲法9条つぶしの策動に抗う議員が、少なくとも3分の1以上になるよう、心から願っている。民進党も離党続出や「希望○○」の動きなど気にせず、憲法9条を守る政党として、改めて党の一体性を作りあげるチャンスだ。■昨年夏の参院選挙で初めて行使された18歳選挙権、約240万人の若者たちが、今度は衆議院選挙で一票を投ずる。2021年10月まで任期がある衆議院議員、あわよくば安倍首相の任期延長まで目論みかねない総選挙、すべての有権者が重要な判断をしなければならない。(2017/9/24)

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2017年09月21日

《遠吠え》単純かつ空疎な首相演説のお口直しに、同じ国連でヒバクシャが行なった感動的な演説を=田悟恒雄

 日本時間の21日未明、アベ首相が国連総会で一般討論演説をしました─。

 北朝鮮の「脅威はかつてなく重大で、眼前に差し迫ったものだ」、対話の試みは「無に帰した」、核・ミサイル開発放棄のため「必要なのは圧力だ」(共同)と。

 まあ何と「単純かつ空疎な演説」なのでしょう!? そんな訴えが人々の心に響かないのはおそらく、きのうから122カ国が署名手続きに入っている「核兵器禁止条約」の採択にさいし、「唯一の被爆国」政府が、核兵器保有国とともにこれをボイコットしたからでしょう。

 先日、NHK-BS1ドキュメンタリーで、この条約の採択推進に身を粉にしてこられたカナダ在住の "ヒバクシャ" サーロー節子さん(85歳)のご活躍を知りました(「核なき世界へ/ことばを探す/@サーロー節子」8/12放送、9/18再放送)。
 「単純かつ空疎」のお口直しに、歴史的な条約が採択された日、同じ国連本部でサーローさんが行なった感動的な演説を引かせていただきましょう(朝日新聞7月9日)─。

 「亡くなった数十万の人々。彼らはみな、それぞれに名前を持っていました。そして、みな誰かに愛されていました。…
 私はこの日を70年以上待ち続けていました…
 我々は取り返しのつかない環境汚染を繰り返しません。将来世代の命を危険にさらすことを続けません。世界各国の指導者たちに懇願します。もしあなたがこの惑星を愛しているのなら、この条約に署名してください…
 核兵器はこれまでずっと、道徳に反するものでした。そして今では、法律にも反するのです。一緒に世界を変えていきましょう!」

そして、日本政府の不参加表明に厳しい批判を投げ掛けます─。

「自分の国に裏切られ、見捨てられ続けているという思いを強くしました」と。

(「零細出版人の遠吠え」09/21より。 http://www.liberta-s.com/
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