2018年09月23日

【今週の風考計】9.23─日本列島に「鷹が舞い降りる」! 米軍・自衛隊、一体化の現実

◆ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』ではないが、日本列島に<鷹(ミサゴ)が舞い降りる>。まず10月1日、米軍の特殊作戦機CV22オスプレイ(日本名:ミサゴ)5機が、東京・横田基地に舞い降りる。
◆この空軍仕様のCV22オスプレイは、敵地に潜入し人質を奪還するなど特殊作戦に従事する要員の運搬に使われる。日本への配備は初めてだ。沖縄・普天間基地には、米軍海兵隊仕様のMV22オスプレイ24機が配備されているが、このオスプレイと違って、CV22オスプレイは、夜間飛行や地形に沿って低く飛ぶ能力が強化されている。

◆横田基地での低空飛行訓練や小銃・重機関銃の射撃訓練が、繰り返されるのは必至だ。墜落の危険や騒音など、周辺の住民にはたまったものではない。すでに宮城県・王城寺原演習場まで、人口密集地帯の上空を飛ぶオスプレイが目撃されている。しかも横田基地には、6年後までに計10機・要員450人の増強配備が企てられている。

◆日本の自衛隊も負けていない。まず米国からオスプレイ17機をセットにして、総額3600億円で購入。1機あたり約220億円だ。これを佐賀空港へ配備する。かつオスプレイの着陸料として年5億円、20年間で計100億円を支払うというのだから呆れる。まずは購入した5機を、11月には木更津駐屯地に暫定配備する。
◆訓練は米軍と一体で、三沢対地射爆撃場(青森県)や陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)・北富士演習場(山梨県)へと、日本列島上空を飛びまわる。

◆昨年9月末の米軍海兵隊オスプレイMV22の重大事故率は、10万飛行時間あたり3.24という、過去最悪の数字である。米軍海兵隊が使う軍用機全体が起こした重大事故率2.72よりも高いのだ。この実態に目を背けて、どうして住民の安全・安心が守れるのだ。3選後の安倍政権、改憲より先にやることがあるだろう。(2018/9/23)

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2018年09月22日

【おすすめ本】 芹澤健介『コンビニ外国人』─100万人を超す外国人労働者を安く使う政府・業界の身勝手さ=栩木 誠

 しばしば立ち寄るコンビニエンスストアで、「流ちょうな日本語を駆使する」外国人店員と接した人は多いだろう。大手コンビニ3社で働く外国人店員は全国で4万人超。実にスタッフの20人に1人の割合になる。
 彼らの多くが、日本語などを学びに来た私費留学生である。深刻な人手不足に悩むコンビニ業界にとって、原則「週28時間」の範囲で働く彼らが、もはや「なくてはならない存在」になっている。

 移民への門戸を厳しく閉ざす日本だが、その実、世界第5位の「外国人労働者流入国」になっている。この10年、日本で働く外国人労働者は約2・6倍となり、2016年には100万人を超えた。
 「移民は受け入れないが、安い労働力はほしい」という政府や産業界の本音を投影するように、コンビニに限らず居酒屋チェーンなどの外食産業、さらには農業、建設業など広範な分野で、外国人労働力抜きには廻らない「ビジネスモデル」が出来あがっている。
 政府は、「留学生30万人計画」を掲げながら、留学生を支援・救済するセーフティーネット作りや就職へのケアをすることもなく、将来も日本で働きたいという希望者に「高い壁」を築く。一方で、「外国人技能性実習制度」などを活用して、「安価な」外国人労働力の一層の流入を企図しているのである。

 長年日本在住の外国人問題を取材してきた著者は、「文句も言わず辞めずに真面目に低賃金で働く」コンビニ外国人を様々な角度から見ていくことによって、日本の実相や課題を浮きぼりにする。
(新潮新書760円)
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2018年09月16日

【今週の風考計】9.16─「鶴彬を二度殺させてはならぬ」に共感!1930年代の日本を思い起こせ!

<手と足をもいだ丸太にしてかへし>(鶴彬)─プロレタリア川柳の代表句である。そう田辺聖子さんは『川柳でんでん太鼓』(講談社文庫)で書いている。
鶴彬は治安維持法に問われて東京・野方署に拘留、そこで罹患した赤痢で1938年9月14日に29歳で死去。今年が没後80年となる。

さて1930年代の日本は、軍靴の音けたたましく、1931年9月18日、日本軍は中国の柳条湖で南満鉄線路を爆破。この柳条湖事件は自作自演というのが真相である。そうまでして満州事変の発端を作った。

そして、つい3年前の9月19日、自衛隊の海外での武力行使につながる「戦争法案」を国会で強行可決。この法案は多くの人びとが「違憲」とし、かつ一人ひとりが自分の「意見」を持ち、「異見」を聞くことも大切にするため、<9・19いけんの日>が、平和への思いを忘れない日として誕生した。大切な日である。
20日は自民党総裁選の投票日だ。国民の声には耳を傾けず、コップの中で9条改憲をわめいている。9条3項に自衛隊明記か、2項(戦力を持たない)削除か、どちらにせよ自衛隊を戦争に参加させたい本音は同じ。またまた「安倍一強」政権による改憲策動に拍車がかかる。
明けて21日は国際平和デーだ。世界で起きている戦争や敵対行為を停止する日である。その日はニューヨーク国連本部ビルの平和の鐘が鳴り響く。なんとこの平和の鐘、日本政府が国連に寄贈したものだ。鐘には「世界絶対平和万歳」と鋳込まれている。

おっとっと9条改憲! 真っ向から違反するじゃないか。核兵器完全禁止条約にも背をむけ、「日本を戦争する国」へもっていく。<鶴彬を二度殺させてはならぬ>(高鶴礼子)。(2018/9/16)
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2018年09月15日

山本譲司『刑務所しか居場所がない人たち 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話』─「最後の避難所」で進む想像を超えた実態に迫る=鈴木耕(編集者)

 これ、知ってた? 「受刑者の10人に2人は知的障害者の可能性」があるんだって。そりゃ驚くよね。受刑者の最終学歴も中卒が40%、高卒が30%、大卒はわずか5%。つまり、義務教育すらまともに受けていない人たちの割合が、受刑者の中では圧倒的だってこと。
 だから、学ぶ機会を制限され、さらに知的障害を持った人たちが、刑務所の中では、とても多いということになる。そうすると刑務所はどうなるのか? それを、実体験をもとに書いたのが、本書である。

 実は著者の山本さんは元衆議院議員。ところが秘書給与詐取事件を問われ、実刑でムショ暮らしを経験した。そこで著者が見たのは、想像を超える刑務所の実情だった。
 普通の人なら忌まわしい過去の記憶は封印し、別の生き方を探す。でも山本さんが選んだのは、受刑者たちと共に生きる道だったのだ。
 本書の帯にあるように「塀の中は、社会の中で行き場をなくした人たちの最後の避難所」であることを、山本さんは真正面から受け止めた。刑務所という世間から隔絶された場所で進行している「福祉施設化」とは、どういうことか。

 行き場を失った人たちが、小さな犯罪を重ねて獄中へ戻ってくる。塀の外では生きられない、いわゆる「累犯者」たちだ。そのうちの障害者や高齢者の割合の多さに驚く。生き延びる場所が塀の中にしかないというこの国の哀しさ。でも最後には希望の灯も。
 やわらかな筆致の文章だが、本書はとても重要な問題を提起しているのだ。
(大月書店1600円)
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2018年09月09日

【今週の風考計】9.9─今が旬!サンマと鯖≠巡る旨い話をつまみに、酒を汲むのもよし

7月8日に解禁された今年のサンマ漁は、8月下旬から9月にかけて漁獲が回復し、水揚げ量は前年同期比140%となった。身は脂のノリがよく、去年より10gも重い。
水揚げ回復のおかげで、新サンマ1匹100円の店も現れている。財布を気にせず、秋の味覚が堪能できてうれしい。

有名な「目黒のさんま祭り」は、9日には目黒駅東口で、岩手県宮古漁港のさんまが、16日には西側「田道広場公園」で、宮城県気仙沼漁港のさんまが、それぞれ焼かれ、スダチや大根おろしを添えて、無料で振る舞われる。

青魚のもう一つの代表、鯖にも目を向けたい。サバ缶の人気が急上昇している。国産の大型サバを使う高級ブランド缶詰は、売り上げが前年比150%の伸びを示すという。
サバなどの青魚にはビタミンB12やビタミンD、DHAなどが多く含まれている。健康志向の流れにマッチし、安く購入できて、簡単レシピで美味しく食べられる重宝さが受け、筆者も酒のアテに充てている。

鯖と言えば、神奈川県・三浦観音の先にある地魚店で食べた「松輪サバ」の旨さが忘れられない。今頃から冬にかけて、三浦沖で一本釣りされた鯖は、胴体から尾にかけて黄色い筋が入り、肉づきが良く脂がのっている。炙りと〆のどちらもいける。

つい最近、赤松利市『鯖』(徳間書店)を読み終えたばかり。本書に出てくる「寒鯖のヘシコ」もいい。塩漬けした鯖の半身を、さらに米ヌカや麹・魚汁を入れた木桶で、1年以上も熟成発酵させた、若狭地方や丹後半島の伝統ある保存食である。炙っても切り身でも旨い。さて一気読みした本書、対馬海流に洗われる日本海の孤島を拠点に、鯖の一本釣りに狂奔する荒くれ漁師たちの破天荒な生き様を描いたノアールだ。おすすめ!(2018/9/9)

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2018年09月06日

≪おすすめ本≫ 立岩陽一郎『トランプ王国の素顔 元NHKスクープ記者が王国で観たものは 』─市井の人々の声を聴き会話を重ね、米国が抱える悩みや本音に迫る=植松正史(日本経済新聞記者)

 愚かな裸の王様か型破りの改革者か。トランプ大統領への論評は数多いが、「結論ありき」で書かれたものが大半。本書は貴重な例外である。トランプ政権の米国を捉えるうえで、偏りない出発点を提示してくれる。

 なぜ米国はトランプを選んだのか。著者は米国各地に足を運び、大統領の就任式会場からデモ現場、路線バス内まで、先入観や政治信条を白紙にして、年代や階層を問わず、率直な質問をぶつけて彼らと対峙する。
 沈黙する人も、怒り出す人もいる。おそらくそんな真摯な姿勢をとらなければ、会話が成り立たなかったのだろう。
 本書で紹介されるコメントはすべて実名だ。会話の文脈やニュアンスも生き生きと伝わる。取材不足の新聞記事にありがちな「関係者によると」という曖昧な主語や都合のよいコメントの切り取りは皆無だ。読者は著者と米国の人々の会話を追体験しつつ、今の米国が抱える悩みや本音に触れることになる。

 もしあなたがトランプ政権の誕生を「教養乏しい白人労働者たちの暴走」とか「ロシアからの選挙介入が生んだ番狂わせ」などと解釈しているなら、その印象は変わるかもしれない。私自身、トランプの支持層を、どこか見下していた気がする。考えを改めさせられた。
 米軍海兵隊について書かれた第9章は新鮮な驚きだ。著者のNHK沖縄放送局記者時代の取材経験も交え、海兵隊の独特の位置付けとメンタリティーが叙述されている。トランプ政権との関係だけでなく、日本の沖縄問題を考えるうえでも貴重な手掛かりになるだろう。
(あけび書房1600円)
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2018年09月02日

【今週の風考計】9.2─8日を忘れるな! 沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>

■8日ナンの日、安保の日、忘れちゃいけない大事な日─今から67年前、1951年9月8日、敗戦国・日本は連合国とサンフランシスコ講和条約を結び日米安保条約に調印した。
■だがそれは対米従属にひた走るスタートの日であった。多くの米軍基地と施設がそのまま残留・存続し、とりわけ沖縄には、日本に復帰した1972年以降も、日本にある米軍基地・専用施設面積の約70%を集中させたままだ。

■「普天間が危険だから、辺野古へ移設だ、危険除去のためには沖縄が負担しろ」これを言っちゃお終いよ。なぜ米国に米軍基地を撤去せよといわないのか。日米地位協定の見直しを提言しないのか。
■それどころか政権は沖縄復興費の支給を、時の沖縄県知事の基地に対する姿勢で増やしたり減額したり、傲慢な政治手法を使い「沖縄県民の民意や自己決定権」を踏みにじって恥じない。

■沖縄県が辺野古埋め立ての承認撤回に踏み切ったのは、安倍一強政権が続ける問答無用の「国策」への、痛烈な叛旗である。
■沖縄県民の自由・平等・人権への願いを、本土の私たちが汲みあげねば、「日本の政治の堕落」に加担するのも同じだ。まさに「沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>である」(前泊博盛)。

■8日から9日にかけて東京・代々木公園では、日中平和友好条約 40 周年を記念するチャイナフェスティバルが開催される。9日は朝鮮民主主義人民共和国が誕生して70周年。17日は<日朝ピョンヤン宣言>から16年を迎える。東北アジアの平和友好を視野に入れれば、もう沖縄に米軍基地はいらない。(2018/9/2)

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2018年08月29日

《焦点》 検察は政治資金規正法にうとい=橋詰雅博

 国会議員などの政治資金収支報告書を閲覧できる公益財団法人「政治資金センター」などが企画した「政治と金をどうチェックするのか」と題した集会が都内で7月初旬に開かれた。
 これに出向いた理由はパネラーとして興味深い人物がいたからだ。その人は前田恒彦さん(50)で、元大阪地検特捜部主任検事だ。名前と肩書で思い出された方もいるだろう。郵便不正に絡む厚生労働省の偽証明書発効で逮捕された厚労省元局長の村木厚子事件(2010年)を担当した検事だ。
 裁判で検察によるデッチ上げが明らかになり、村木さんは無罪が確定した。村木さんを犯罪者に仕立てあげるため前田さんは証拠物件のフロッピーディスクの中身を改ざんし、証拠隠滅罪で懲役1年6カ月の判決を受けた。また法務大臣から懲戒免職で処分された。12年5月に満期出所した。

 大阪・東京特捜部に合計約9年在籍した前田さんは、政治とカネの問題でこう語った。
 「政治資金規正法違反の虚偽報告は、形式犯(うっかりミスで法に触れる犯罪、悪質の度合いは低いとされる)扱いです。被疑者の記帳ミスと裁判所は甘い判断をし、下される判決は執行猶予付きです。これでは労多くして益少なし、大山鳴動してネズミ一匹だ。軽くみているから政治資金規正法の条文を読んでいる検事は極めて少ない。下地がなく、経験不足です。巨額やウラ金がなければ、政治資金規正法違反では踏み込まない」
 ただし脱税が悪質ならば起訴するケースはある。
 「目安は一般的には5000万円です。大バッチ≠キなわち国会議員ならば1億円という暗黙のルールがある。このルールに達していない事案なのに、内偵を進めたら法務省からストップがかかります」(前田さん)
 検察には政治資金収支報告書のデータベースはないそうで、頼るのはメディアだという。
 前田さんは法曹界に戻る意思はない。ブログで刑事司法に関する解説や主張を発信している。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号



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2018年08月26日

【今週の風考計】8.26─福島原発・放射性物質トリチウム水90万トンの放流!?

福島第2原発の停止中4基も、すべて廃炉とする決定がなされて2カ月半が経つ。事故を起こした福島第1原発の全6基と合わせ、これで10基すべてが廃炉となる。
いよいよ溶け落ちたデブリの取り出しや汚染水の処理、廃棄物の受け入れ先など、緊急で困難な課題に立ち向かわなければならない。

福島第1原発では約106万トンの汚染水がタンクに保管され、もはや限界に近い。そのうち90万トンは放射性物質の濃度を下げる処理が進み、その放射性物質トリチウムを含む水について、希釈して海への放流、水蒸気放出、地下層への注入など、5つの処理方法が検討されている。
その公聴会が今月末、福島・郡山・東京で開かれる。国の基準では1リットルあたり6万ベクレルの濃度に薄めれば海に流すことができる。いまも稼働している日本の原発や再処理工場から、現実に排出されている。原子力規制委員会は健康への影響を含め、海洋放出に問題はないという。

だがトリチウムは放射性物質であるのは紛れもない。にもかかわらず人間と生物への影響が過小評価され続けてきたのではないか。福島県漁連は「トリチウム水の海洋放出には断固反対する」と抗議、海洋放出を絶対に行わないよう強く求めている。
未曾有の被害をもたらした福島原発事故、いまだ「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。くわえて多くの住民が避難生活を強いられ、放射能汚染による長期的な低線量被曝にさらされている。

政府と東電はトリチウム水を海に放流し、空いたタンクの跡地に、取り出したデブリを保管する場所を確保したいと考えている。10月には福島県知事選がある。様子見が続く。(2018/8/26)
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2018年08月19日

【今週の風考計】8.19─「トルコ危機」を通して日銀政策を問う! 異次元金融緩和の「出口」はあるのか

23 日にトランプ政権は中国への制裁関税(160 億ドル・1兆7600億円規模)を発動する。第2弾である。中国も対抗して報復関税措置に踏み切る。米中貿易戦争は激化する一方だ。
1週間ほど前に、トランプ政権はトルコに経済制裁を加えた。トルコは米国製品に関税をかける報復措置を取り、泥沼化し始めている。

いま米国の労働市況は好調を続け、インフレ率は上昇、7回実施したドル金利引き上げも、さらに年末に向けて順調なテンポですすめる方針だという。
その余波が新興国を襲い、トルコを始めアルゼンチンや南アランドでのドル売り・資本流出が止まず、自国通貨の急激な値下がりを招いている。原因は新興国に流れ込んだ大量のドルが引き揚げられ、今度は投資マネーとなって米国へ還流しているところにある。
とりわけ「トルコ通貨危機」は深刻である。トルコリラは年初から40%の下落、物価は4カ月足らずで5・6%も上昇した。世界経済への悪い連鎖波及が懸念されている。

その激動のさなか、23日から米国ワイオミング州で「ジャクソンホール会議」が開催される。主要国の中央銀行総裁らが、世界の金融政策について討議する。米国のパウエルFRB議長や日銀の黒田東彦総裁も参加する。はたして黒田総裁は、日本の金融政策について、どのような発言をするのか。
日銀が保有する国債残高は420兆円、全体に占める割合は44%でトップ。さらに市場から上場投資信託(ETF)を年間6兆円の枠で買い入れている。まさに株価を下支えしているのだ。日銀管理そのものだ。これが進めば進むほど、市場経済の健全な発展は見通せなくなり、疲弊していく。

異次元の金融緩和政策の破たんは、もう明白だ。しかし金利引き上げを図れば、保有国債の利息受け取り分が減り、当座預金の利息支払費いが増える “逆ざや”になりかねない。仮に1%の利上げをすれば、数年で日銀の自己資本8兆円を食い潰してしまう。このジレンマ、いかに「出口」を見つけるか、世界が注目している。(2018/8/19)
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2018年08月18日

【緑陰図書─私のおすすめ】 いま戦争を問う、その代償を払うのは誰?=大矢英代(ジャーナリスト)

 ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」の劇場公開が始まった。私と同じ琉球朝日放送出身の三上智恵さんとの共同監督作品だ。砲弾が降り注ぐ沖縄本島南部の地上戦ではなく、その背後で繰り広げられた裏の戦争「秘密戦」に迫った。

 さて、おすすめの第一は川満彰『陸軍中野学校と沖縄戦–知られざる少年兵「護郷隊」』(吉川弘文館)は「秘密戦」の担い手にされた沖縄の少年兵たちの実態を明かす。
 彼らにゲリラ戦、スパイ戦を仕込んだのは「陸軍中野学校」のエリート将兵たちで、沖縄戦に送り込まれたのは全部で42人。秘密のベールに隠されていた任務から、軍隊が住民を作戦に利用し、銃を取らせて戦わせた沖縄戦の真の姿が浮き彫りになる。

 沖縄戦・精神保健研究会『戦争とこころ』(沖縄タイムス社)は、地獄の戦場を生き抜いた人たちのトラウマやPTSDについて、14人の医師、研究者、記者、体験者たちの視点を通して伝える。
 戦場で死体を踏んでしまった感触が戦後も足裏に残り続けるおばあちゃん。日本兵に壕を追い出された時の心の傷。私たちが「戦後73年」と言っている間も、戦争体験者たちには一度たりとも戦後は訪れていない。
 だが、ここで私たちは問わねばならない。民衆を苦しめる戦争は、一体誰が起こすのか。

 同題映画の原作を翻訳した『ゲッベルスと私─ナチ宣伝相秘書の独白』(紀伊国屋書店)は、その問いを直に私たちに投げ掛ける。本書はナチス政権の中枢、ゲッベルスの秘書を務めたドイツ人女性の回顧録である。
 「私たちは何も知らなかった…罪はない」という彼女の言葉を社会学者ハイゼン氏はこう批判する。「彼女が確信的ナチだったかどうかは、この際、重要ではない…倫理的には見ないふりをすることだけでも罪がある」と。
 胸に手を当てて考えてみる。目を瞑ることも、耳を塞ぐことも私たちの自由である。先の戦争から教訓や体験を学ばないという選択もある。
 しかし、その代償を払うのもまた、必ず私たちなのだと。
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2018年08月12日

【今週の風考計】8.12─沖縄の民意を一蹴する、安倍首相と三選支援者たちの思考回路

★翁長雄志・沖縄県知事のご逝去を悼み、心からご冥福をお祈りします。11日の新基地建設反対に集まった7万人の参加者とともに、その遺志を本土でも受け継ぎたい。
★それにしても、先週の1週間、安倍首相の言動や振る舞いには、首をかしげるどころか、思考回路まで疑いたくなることばかりだ。

6日、5万人が参列した広島の平和祈念式典で、「唯一の戦争被曝国」である日本の安倍首相は、世界の願いである核兵器禁止条約には一言もふれず、核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を務めると、従来の言葉を繰り返し、被爆者の願いを一蹴した。

8日には、俳優の津川雅彦氏が今月4日、心不全のため亡くなったのを受けて、わざわざ夜に官邸で会見を開き、極めて異例な “お悔やみ”を表明した。彼の業績を天まで持ちあげ、かつ会見の様子を首相官邸のHPに動画で公開するほどだ。
総理大臣として“お悔やみ”のコメントを首相官邸HPで公表するのは、国内外の災害・テロ発生時や、海外の元首・首相などの要人、国内の総理経験者の逝去時に限られる。津川氏は該当しないが、芸能界きっての安倍応援団のひとり。かつ特攻隊礼賛や侵略戦争の美化、徴兵制の復活などを主張してきた。
こうした自分の“お友だち”の死には、特別なかたちで弔意を表する異常さ。そんな総理大臣が、かつていただろうか。

9日、「原爆の日」を迎えた長崎市の平和式典で、田上富久市長は、日本政府に核兵器禁止条約に賛同し、世界を非核化に導く道義的責任を果たすことを求める<長崎平和宣言>を読みあげた。アントニオ・グテレス国連総長も賛同している。しかし安倍首相は、ほとんど広島のスピーチを“コピペ”した、空疎な使い回し原稿を読みあげただけ。

その午後、前日8日に急逝した沖縄の翁長知事に対し「沖縄発展のために尽くされた貢献に対し、敬意を表したい」と述べ、辺野古の新基地建設については触れず、そっけない“お悔やみ”でお茶を濁す。“お友だち”でないと、こうも粗末な扱いか。
安室奈美恵さんがホームページに綴った翁長さんへの弔意は、多くの人の心を打つ。Kiroroの金城綾乃さんや宮本亜門さんもツイッターで、沖縄の人々のために最期まで尽くした翁長知事の仕事に感謝の言葉を書いている。この落差を見るにつけ、異なる意見を持つ人であれ、人へのリスペクトを持たない安倍首相─その総裁3選に雪崩を打つ政治家たちの屈服ぶりには呆れる。

11日、沖縄での市民集会など目もくれず、昭恵夫人ともども、全日、地元の山口県を回り三選の票固めに躍起。9月21日投票での圧勝を画策する。翁長知事の急逝で知事選の投票日も23日ごろといわれる。安倍三選などどうでもいい。まず翁長知事の遺志を継ぐ知事を当選させたい。(2018/8/12)

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2018年08月09日

【緑陰図書─私のおすすめ】 韓国民衆の背景には東学農民軍の闘いがある=梅田正己(歴史研究者)

 中塚明・井上勝生・朴孟洙『東学農民戦争と日本─もう一つの日清戦争』(高文研)に書かれた歴史的事実は、ほとんど知られていない。だがそれは一般の歴史観と朝鮮観をくつがえすほど重い。
 日清戦争は清国との戦いだとされている。実は日本軍は朝鮮人民とも戦ったのだ。朝鮮に出兵した日本軍に対し朝鮮全土で蜂起した農民の数は三百万とも。その結果、日清戦争で最大の戦死者を出したのは日本でも清国でもなく朝鮮だった。
 ソウルの都心を数十万の蝋燭デモで埋めて、私欲にまみれた朴槿恵政権を引きずりおろした韓国民衆の背景には、農具を武器に戦ったこの東学農民軍の壮絶な歴史が横たわっているのである。

 いま話題の『君たちはどう生きるか』の著者には、吉野源三郎『職業としての編集者』(岩波新書)の一冊がある。
「編集者の仕事」「ジャーナリストとして」ほかの数編で構成されるが、圧巻は敗戦の年の暮れに創刊された雑誌『世界』の初代編集長となって遭遇した一件を述べた「終戦直後の津田先生」だ。
 戦時下、出版法違反(皇室の尊厳を冒涜)で起訴され、日本神話の虚構を論証した『神代史の研究』以下4冊が、発禁処分を受けた津田左右吉の『世界』原稿をめぐって書いた一編である。
進歩と反動がぶつかりあう時代の激流の中、進歩派の期待を裏切るこの大先生の原稿を受け取って、吉野編集長がとった行動は、ジャーナリストのあり方についての示唆を、深い共感とともに伝えてくれる。吉野さんは1955年、JCJ創立時の初代議長である。
 
『福沢諭吉著作集・第8巻』(慶應大学)をすすめるのは「時事小言」が含まれているからだ。
 福沢の実像は、この20年の間に徐々に知られてきたが、先駆的民主主義者のイメージは今なお強い。だが福沢は『文明論之概略』を書いてほどなく帝国主義者へと転身した。「時事小言」は明治政府の「強兵富国」を先導した帝国主義論である。
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2018年08月05日

【今週の風考計】8.5─<命の美ら海>に米軍基地も滑走路もいらない!強行埋め立てはやめろ!

いま辺野古シュワブの海岸には、これまでにもまして高い怒りの波が、打ち寄せている。4日には抗議船8隻・カヌー約40艇が、海上から<美ら海を殺すな>の声をあげている。

沖縄県・翁長知事が、シュワブ沿岸の軟弱地盤や活断層の存在を指摘し、また環境保全の対策が十分でないことを挙げ「辺野古埋め立て承認を撤回する」と表明した。すみやかに沖縄防衛局に「聴聞」を申し入れ、9日後の日程を示したにもかかわらず、「1カ月程度の準備期間が必要、9月3日以降に変更してほしい」と申し出たからだ。

3年前は聴聞期日に異議を唱えず、かつ承認取り消しへの反論陳述書を、通知の翌日、準備期間1日で提出している。今回の対応は異様だ。魂胆が透けて見える。延期要求は、本格的な埋め立て工事に着手する時間稼ぎに他ならない。
現に埋め立て予定区域の護岸には、被覆ブロックや袋詰めされた砕石が積み上げられ、予定通り17日には土砂投入を行う、その段取りが整っている。これまでも防衛局は協議すらせず工事着手を強行してきた。政府は動かず、防衛局任せにして突っ走る。いい加減にしろ!

11日には、那覇市の奥武山公園内の陸上競技場で、<土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会>が開かれる。まさに本土から、熱い暑い、連帯のエールを贈りたい!
2日後の13日、今から14年前、米軍ヘリが沖縄国際大学敷地内に墜落し炎上した。墜落事故で焼けた校内のアカギの木は、日本全体の70%に及ぶ広大な面積の米軍施設・基地が、わずか国土面積0.6%の狭い沖縄県にある─その現実を告発している。何度でも言う。沖縄に米軍基地はいらない!(2018/8/5)
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2018年08月02日

≪おすすめ本≫青木美希『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』─福島復興と帰還─その背後に潜む偽装除染という病巣を抉る=坂本充孝(東京新聞編集委員)

 被災から7年、福島の復興は遅々として進まず、問題が山積み。その原因は、原発を巡る歪んだシステムにある。この闇に包まれた病巣に切り込み、真実を知ろうと戦った一人の新聞記者の記録が本書である。
 今、福島県では避難した住民を、元の自治体に帰還させようと、嵐のような風が吹いている。原発を推進した国が、住民に危険の残る地域へ帰れと迫る、恐るべき構図。その根にあるのは、原発を残すという国の大方針であると、著者は気がつく。

 ここから大方針を堅持するために配置された、いびつな装置の実態に順番に切り込んでいく。除染とは、帰還を進める目的のアリバイ作りではないのか。その揚げ句に生まれた偽装除染。
 2013年、南相馬市一帯の水田の米から、放射能汚染が見つかる。福島第一原発のがれき撤去の影響ではないか。いぶかる農民たちに、国は可能性を否定し続ける。
 安全確保の番人として生まれた原子力規制委員会も、実は原発政策を進める経済産業省の意向を受けていた。ある学者が「それでも安全」と主張する当時の田中俊一委員長に投げ付けた言葉は強烈だ。「学説を査読付きの論文にまとめて、世界に問うたらどうだ」
 また「経産省は、東京電力を必ず存続させる」と告白した元経産官僚もいた。「東電が破綻すれば、賠償責任を経産省が負うことになるからだ」

 著者は、偽装除染をスクープした朝日新聞の取材班の一員として、新聞協会賞を受賞している。まさに地べたを這うような取材を積み上げる手法には、定評がある。
(講談社現代新書920円)
「地図から消される街」.jpg
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2018年07月30日

《編集長EYE》 捜査中止 小金井市署「疑惑の事件」=橋詰雅博

 安倍改憲に反対する署名活動をしていた東京・小金井の市民3人が「住居侵入罪」の口実で小金井警察署に連行された3月末の事件(本紙5月25日号で既報)が解決した。
5月30日に小金井署は3人の市民の弁護人に対し、電話で「これ以上の捜査は行わない。捜査を終結し、検察庁への書類送検もやらない。また刑事訴訟法上の微罪処分(軽微な犯罪で公訴提起を必要としない事件を警察段階で終結させる)でもない」と言ってきた。警察は捜査を断念・中止したのだ。市民3人の連行は不当だったことを警察自らが認めたのである。
 7月5日に市内で「不当連行事件 勝利報告」集会が行われた。
 改憲反対の署名活動を委縮させる狙いだった警察は、強引な捜査を行った。集会で弁護人の長尾宜行弁護士は、この事件の特異性をこう説明した。
 「トラブルは何も発生していないのに3人は強制連行された。権限の濫用を戒めた警察法2条2項に違反している。任意同行しか求められない状況下での強制連行は、刑事手続き上、重大な違法行為だ。事情聴取された3人とも、所属団体や署名活動の目的、いつ、どこで誰と相談したかなどを取調官から聞かれている。思想表現の自由、政治活動の自由を侵害するような取調です。
 警察権力の横暴さをむき出しにした戦慄すべき事件でした。その捜査を中止させた。民主主義が警察権力の牙をへし折った画期的な勝利です」
 小金井署を出る際、私服警察官から「もう一回、署に来てもらい調書に署名してもらう」と告げられた81歳の男性は 「精神的につらく、長い2カ月間でした。勝利によって民主主義が守られたと実感しています」と胸をなでおろした。
 3人が署名活動を行った出入り自由な問題のマンション(全18室)は警察が民間から建物を借りている「警察専用官舎」だった。共産党都議団の情報開示請求で分かった。警察によるつくられた「疑惑の事件」だった可能性が残る。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年07月29日

【今週の風考計】7.29─猛暑お見舞い、おすすめ「緑陰図書」

まだまだ猛暑は続く。本など読む気も起きない。これが本当のところだろう。それでも緑陰を見つけて、いや熱中症が怖いから、クーラーつけて室内で読むとしたら、気楽にページをめくり、ついつい読み終えてしまう本がいい。
BGMには、フィッシャー指揮・ブタペスト祝祭管弦楽団のメンデルスゾーン「夏の夜の夢」(チャンネル・クラシックスCCSSA37418)がいい。

まずは矢部太郎『大家さんと僕』(新潮社)が、おすすめだ。1階には大家のおばあさん、2階にはトホホな芸人の僕。二人が展開する「ほっこり、心和む」ハプニングは、老いも若きもない。誰しも頷く新しい「家族のかたち」である。奇跡の実話漫画だ。

続いて若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)。74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫をなくした悲しみを乗り超え、残りの人生は自分なりに生きようと、「おらの今は、こわいものなし」の気持ちで辿りついた、新たな<老いの境地>を描く。
著者の生まれ故郷、遠野地方の口承文芸にも通じる会話文と地の文章が、重なり合う叙述に圧倒された。本書のタイトルは、同郷の作家・宮沢賢治が妹トシの死に際して詠んだ、長編詩「永訣の朝」にある〈Ora Orade Shitori egumo〉からとっている。

最後は、梯 久美子『原民喜』(岩波新書)をおすすめしたい。「原爆被災時のノート」をもとに書いた『夏の花』で知られる原民喜は、39歳のときに広島で被爆した。傷ついてもなお<死と愛と孤独>を抱え、「悲しみのなかにとどまり続け、嘆きを手放さないことを自分に課し続けた」稀有な生涯を、著者は丹念に描く。
原爆ドームを背に広島平和記念公園に立つ原民喜の詩碑には、彼の作品である「碑銘」が<遠き日の石に刻み/砂に影おち/崩れ墜つ/天地のまなか/一輪の花の幻>の詩句とともに刻まれている。 8月6日が近い。(2018/7/29)
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2018年07月25日

7月例会 南スーダンPKO撤収の真相 「リスク取り除き 長期政権にらむ」 布施祐仁講演=安住邦男

 JCJ出版部会は7月13日に都内のYMCAアジア青少年センターで講演会を開いた。ジャーナリストで平和新聞編集長の布施祐仁さんによる「自衛隊が戦争に征くとき」と題した講演要旨は次の通り。
      ☆
 2016年7月に南スーダンの首都ジュバで政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘が勃発し、内戦が再燃しました。しかし日本政府は、「散発的な『発砲事案』で、武力紛争が発生したとは考えていない」と説明して活動継続の方針を表明しました。
 さらに、「「POKO5原則は維持されている」「ジュバは平穏」として、10月には派遣期間を延長することを閣議決定しました。そして11月には安保法制に基づく新任務(「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」)の付与まで閣議決定されました。
日本政府の説明に疑問を抱いた私は、南スーダン派遣部隊の日報を開示請求しました。しかし新任務付与直後の12月初め、「日報はすでに廃棄しており、存在しない」と不開示を決定しました。ところが約2カ月後の2017年2月になって、防衛省はそれまで「「存在しない」と言っていた日報を突如公表しました。
激しい戦闘の実態
 
 自衛隊宿営地のすぐ横の「トルコビル」で、激しい戦闘がありました。7月10日には「ウエストゲート付近で激しい戦闘があり」「「戦車砲を射撃してトルコビル西端に命中」しました。大臣報告文書には「10日以降、日本宿営地南西約50b付近で激しい銃撃戦が発生し、流れ弾が宿営地にも飛来した模様」との記述があります。ただし日報ではこの部分は黒塗りされています。「市内での突発的戦闘への巻き込まれに注意が必要」との記述もあります。
 さらにNHKの取材でも明らかになったように、宿営地の上空を銃弾・砲弾が飛び交い、宿営地内にも20発以上が着弾しています。避難民を保護したウガンダ軍宿営地の隊長室が直撃を受けて兵士二人が負傷しました。隣のバングラデシュ軍が反撃して、一時「交戦状態」になっています。日本隊の隊長は隊員に武器携帯と射撃許可を出し、ある隊員は「南スーダン人を殺してしまう可能性も出てくる」と述べ、自分の手帳に「遺言」を書いた隊員もいたとのことです。
 「南スーダン政府の受け入れ同意があるので、自衛隊が武力紛争に巻き込まれることはありえない」という日本政府のロジックは完全に破綻しています。だから日報は隠蔽されたのです。
 「憲法9条の問題になる言  葉は使うべきではないので、「衝突」と言う言葉を使っている」という稲田大臣の科白は、この間の事情を最もよく示しているといえましょう。
保存期間10年に

 現地情勢を隠蔽・改ざんしないと成り立たない海外派遣を25年間続けてきましたが、もうごまかしは限界です。
この事案を機に、防衛省は海外派遣部隊の日報の保存期間を1年未満から10年に変更し、期間満了後も国立公文書館に移管することを決めました。「存在しない」と説明してきたイラク派遣の日報も435日分見つかりました。公表された日報には、自衛隊が駐留していたサマワでも戦闘が発生したことが記されています。自衛隊も占領軍とみなされ、武装勢力の攻撃対象になっていたのです。迫撃砲・ロケット報による攻撃は計13回に及んでいます。
 南スーダンからの撤収の本当の理由は、「何かあったら政権に大きなダメージになる」「長期政権を見据え、リスクを取り除きたかった」というのが本音でしょう。
 JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年7月25日号
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2018年07月22日

【今週の風考計】7.22─昔は、こんなに暑かった? 懐かしくよみがえる夏の思い出

猛烈な暑さが日本列島を襲う。京都市では39.8度を記録。熱中症による死亡も相次ぐ。昔は、こんなに暑かったろうか。30度を超える日は珍しかったと記憶する。

気になって、筐底から昔の絵日記を引っ張り出した。1950年7月22日(土)晴・25°とある。埼玉・浦和の小学校に通っていた頃である。繰っていくと、28日〜30日にかけて猛烈な雨が降っている。28日は「あんまり雨がものすごいので、おへやのあちこちに雨がもりはじめた。おかあさんがたらいやせんめんきなどをもってきて、おきました」と、書いてある。
我ながら懐かしく、しばし夏の日々を想い起こす機縁となった。小さな庭にはヒマワリが、背を超える高さで、太陽に向かって咲いている。蕗の葉っぱが生い茂る隣の家の生垣の下から、トカゲが、ちょろりと這いでてくる。それを追いかけ、石で尻尾を切る。くねったり跳ねたり、ビロードのような光が、銀に赤に青に輝く。

また悪ガキ3人組は、裏の畑に実るトマトをむしり、ワラの上で熟れたスイカをくすねて風呂敷に包み、水遊びする加茂川の淵辺に作った生け簀へ放り込む。四手網を使って菱形をしたタナゴを掬いあげる。
しばしの魚とりに飽きると、川の水で冷えたトマトやスイカに齧りつき、火照った体に一息入れる。その甘いこと。夕方になると穂のつき始めた稲田の畦道を縫って家に帰る。

さて、現在に戻ろう。今週末の28日は隅田川の花火大会だ。これにも思い出がある。言問橋近くにある家の、屋根上にある物干し場から、花火を観た記憶だ。もう60年以上も前になる。父が教え子から招かれ、連れて行ってくれたのだ。
でも花火よりも食い気だった。茹でたシャコが大きなザルに盛られて出てきた。その美味しいこと。目は空に行くどころか、指がシャコの身に、しっかり取り付いていた記憶がよみがえる。(2018/7/22)
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2018年07月20日

≪おすすめ本≫瀧本邦慶(聞き手:下地 毅)『96歳 元海軍兵の「遺言」』─今も昔も戦場に行かされるのは若者、「国にだまされるな」─美辞麗句の裏側=菅原正伯

 敗戦時に20歳だった若者は、今年で93歳になる。95歳以上の人口比は0.38%にすぎず、軍人の戦争体験者は、ほとんどいなくなる。本書はその貴重な証言だ。
 著者の瀧本さんは、1939年に17歳で佐世保海兵団に志願入隊。以来、空母「飛龍」の艦上機の整備兵として、真珠湾攻撃(41年12月)やミッドウェー海戦(42年6月)などの歴史的な現場に立ち会い、戦争末期には南洋群島のトラック島に送り込まれ(43年12月)、米機動部隊による大空襲を体験した。

 本書の特徴は、武勇伝が全くないうえに、最下級の四等水兵から下士官になった一平卒の目で、戦場の実態が、リアルに語られていることだ。
下士官と古参兵の世話に追われる「内務」生活、軍人勅諭と海軍刑法での絶対服従といじめ、ミッドウェー大敗を隠す大本営発表と生存者の監禁・南方戦線への送り出し。
 内地から食糧補給が途絶した後の栄養失調・飢餓地獄。推定140万人の兵士が餓死したという。国や海軍は下っ端の兵卒を人間扱いせず、いくらでも補充がきく備品とみていると、著者は喝破する。

 復員後、著者は自分の戦争体験を熟考し、天皇の戦争責任や憲法9条を考え抜く。そして80歳をこえて「語り部」の活動を始めた。第一次安倍内閣以後の戦争への道への危機感からだ。
 「国にだまされるな」―これが著者の若者への「遺言」である。戦場に行くのは若者であり、国は「美しいことば」で若者をだます、と。
(朝日新聞出版1400円)
「96歳元海軍兵の遺言」.png
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2018年07月15日

【今週の風考計】7.15─米軍ヘリ飛来で1日29回も避難する異常、もう基地はいらない!

米軍オスプレイ14機が、16日から2週間、静岡県御殿場・東富士演習場で本格的な訓練を始める。この1カ月半ほど、首都圏で飛行訓練を行ってきたが、8月には東京・横田基地に常駐配備する期日が迫り、仕上げの訓練だという。
38℃という猛暑の上空を、この夏、オスプレイが三沢や岩国、沖縄へと我が物顔に飛ぶ。立てる騒音は65デシベルを超え、かつ低周波音に悩まされる毎日が続くのは目に見えている。

山口県・岩国基地では、米軍の空母艦載機など120機が厚木基地などから移駐してきた。その離着陸訓練がすさまじい。空母艦載機が4機編隊で広島・厳島神社に向けて飛ぶ。大声を出さないと会話が聞き取れない70デシベルの騒音が、昨年1年で894回、前年より268回も増えている。
さらに低空飛行訓練が追い打ちをかける。中国地方には「エリア567」や「ブラウンルート」と呼ばれる低空飛行訓練エリアとルートがある。広島の住宅地を、なんと上空150メートル以下で飛ぶ。その騒音は110デシベル。西日本豪雨で被害に遭われた人々の心胆を寒からしめ、さらに身をすくませる低空飛行、政府は即時禁止を米軍に申し入れよ。

沖縄での米軍機の事故もあとを絶たない。先月11日にもF15戦闘機が那覇市の沖合に墜落した。昨年12月に、米海兵隊CH53E大型輸送ヘリの部品や窓枠が落下した普天間第二小学校では、半年たっても、同型ヘリが騒音をまき散らしながら飛来する。
そのたびに監視員の指示で校庭から校舎に走って避難するという。なんと合計635回、多い時は1日29回。「45分の体育時間に3回も中断があったら授業は成り立たない」(琉球新報)。

米朝首脳会談の実現によって「北朝鮮の脅威」は遠のいた。もはや沖縄に米軍「基地」を置く根拠はない。沖縄を「基地」のくびきから解き放す絶好の時だ。(2018/7/15)
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2018年07月14日

≪おすすめ本≫佐藤 慧・文 安田菜津紀・写真『しあわせの牛乳』─大自然の中で牛を育て放牧酪農に励む男の姿に迫る=酒井憲太郎(フォトジャーナリスト・元朝日新聞写真部記者)

 「牛乳が幸せになる」?表題に首を傾げた人も、牛乳を出す牛が「幸せになる」と分かれば納得。

 プロローグで「牛乳はどうやって作られる?」と問う。答えは「日本の牛たちは狭い牛舎で暮らし、牛乳パックの絵にある光景は見られない」と明かす。日本の牛は圧倒的に不幸せなのである。
 そんな不幸せな牛に比べ、「自由に大自然の中で暮らしている」牛が、岩手県の牧場にいる。そこが、放牧酪農・山地(やまち)酪農の牧場、この本の舞台である。

 牧場長・中洞(なかほら)正さんは、1952年岩手県宮古市の生まれ。高校1年の時、埼玉の牧場を見学し、百頭もの牛が、狭い牛舎で外に出ることもなく暮らすのが近代酪農だと教えられた。
 しかし、1965年には「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の考え方が、すでに英国で提唱されていた。また中洞さんが東京農業大学に入り、映画「山地酪農に挑む」を見たのもその頃だ。

 卒業後、5ヘクタールのジャングル牧場を始め、1982年には7千万円も借金し、50ヘクタールに広げ、「なかほら牧場」が産声をあげた。
だが理想の実現は簡単ではない。気温零下20度の放牧、乳脂肪3・5%の壁など難問が続いた。何とか、しぼりたて牛乳の訪問販売を試み、購買客を増やした。
 さらに低温保持殺菌法を取り入れ、ガラス瓶容器を導入するなど、様々な工夫が功を奏し、1992年に「なかほら牧場牛乳」が誕生した。
これで、「牛もしあわせ!おれもしあわせ!」が始まり、「しあわせの牛乳」が出来上がる物語となった。
(ポプラ社1200円)
「しあわせの牛乳」.jpg
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2018年07月08日

【今週の風考計】7.8─貿易戦争と「スムート・ホーリー法」の教訓、いまトランプさんが学ぶべき大事なこと

<貿易戦争>が深刻になっている。トランプ大統領が踏み切った中国に対する制裁関税は、年間で340億ドル(約3.7兆円)、中国も負けじと米国に同規模の報復関税をかける選択に踏み切った。
これだけで済まない。さらにトランプ大統領は、20日ごろを視野に、第2弾の160億ドル(約1.8兆円)分の追加制裁を発動する。ゆくゆくは5000億ドル(約55兆円)規模にまで追加制裁を拡大する方針だ。

こうなれば中国ならずとも、世界各国が反発するのは必定である。WTOルールを無視して制裁に走るトランプ政権の「ディール」外交が、報復が報復を呼び、中国だけでなく、EUやカナダ、ロシアといった国からまで反発され、報復関税に踏み切らざるを得ない誘引剤をバラ撒いている。
11月の中間選挙、2年後の大統領選での再選を視野に、自己チュウ極まりない経済政策は、「自分の足をピストルで撃つ」(寺島実郎)結果になるのは目に見えている。共和党のトランプ大統領は、まず自国の歴史の教訓に学ぶがよい。

浜矩子氏が指摘しているのだが、「スムート・ホーリー法」である。1930年に米国の共和党フーバー政権下で成立した関税法である。1929年に始まった大恐慌にどう対処するか、フーバー大統領は、国内産業保護のため、農作物など2万品目の輸入品に、平均50%引き上げの関税を課した。これに対し多くの国が報復措置として米国商品に高い関税をかけたため、ますます世界貿易が停滞し、あの大恐慌をいっそう深刻化させたのである。
4年後には民主党のルーズベルト大統領が、この法を葬る「互恵通商協定」を成立させた。すなわち相互に市場を開放し、今あるところのWTOルールに従って貿易はしましょう、ということである。

教訓に学ばざる者は、木から落ちる猿の如し。(2018/7/8)
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2018年07月07日

≪お知らせ≫7・13講演会:自衛隊が戦争に征くとき─この危ない実態を抉る

南スーダンの首都ジュバでは、何が起きていたのか。
隠蔽された活動の記録・日報を詳細にトレースし、
自衛隊のPKO活動が直面した戦場の実態を明かす。
日本を「戦争する国」へと駆り立てる
安倍政権の暴走に警鐘を乱打する!


講師:布施祐仁 氏(ジャーナリスト、「平和新聞」編集長)
略歴:1976年、東京都生まれ。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)でJCJ賞を受賞。著書に『日報隠蔽─南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(集英社)など。
日時:7月13日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 ☎ 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html

参加費:800円(会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2018年07月06日

≪リレー時評≫ ひとり出版社から本の大切さを学ぶ=守屋龍一(JCJ代表委員)

  絵本『花ばぁば』(クォン・ユンドク絵/文)が、4月末に出版された。日本軍「慰安婦」にされた韓国人女性シムさんの物語である。彼女の好きだった花を、著者は水彩タッチで描き、全42ページを使って展開する〈恐ろしい話〉の絵の周囲に、今は亡き彼女の霊を癒すように散りばめている。
  声高に叫ぶのでなく、淡い色の滲む絵が、戦時性暴力に対する深い洞察へと昇華されていく。読後、熱き想いに浸された。

  この絵本を出版した、ひとり出版社「ころから」(東京都北区赤羽)を訪ねた。代表の木瀬貴吉さんは、
  「ある出版社でとん挫した翻訳刊行を、うちで手掛けることになったんです。だが多額な製作費の捻出に困り、今年の1月、製作費の一部をクラウド・ファンディングで募ったところ、開始から4日目で目標額95万円を突破、最終的には202人188万円の資金が寄せられた。お蔵入りの危機を救ったのは、日本の良心ある人達でした」
  と、述懐する。
  木瀬さんは、ピーズボードの事務局で15年、その後、出版社で3年修行し、2013年1月に「ころから」を起ちあげた。〈コロから車輪へ〉と発展するよう願っての命名という。
  2014年3月11日刊の加藤直樹『九月、東京の路上で─1923年関東大震災ジェノサイドの残響』が評判となり、今や6刷まできた。
 木瀬さんは「直に介入する官庁がない出版はフェアな業界、まず企画で勝負、資本の大きさではない」と言うものの、「『花ばぁば』を置いてくれる書店が極めて少ない」事態には、眉をしかめる。
 始業して5年、21点刊行、順調に進級している。

 一方、4月末、ひとり出版社「リベルタ出版」(東京都千代田区猿楽町)が、31年の出版活動に幕を下ろした。このほど代表・田悟恒雄さんの慰労を兼ねた卒業式≠ェ、後楽園「涵徳亭」で賑やかに行われた。
  田悟さんは大月書店の編集者を経て、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ『獄中ノート』(校訂版)を翻訳刊行したく、1987年9月に創業。社名もイタリア語の自由=リベルタからとっている。
  だが最初に刊行したのは、前年に起きたチェルノブイリ原発事故がテーマの、ウラジーミル・グーバレフ『石棺─チェルノブイリの黙示録』。以後、年間ほぼ6冊、原発・環境・メディアを柱に約210点を刊行してきた。田悟さんは言う。
  「他人に迷惑をかけず、本カバーのPP貼りを止めるなど環境に負荷をかけず、ひとりでどこまでできるか、これを目標にやってきた」。さらに「出版とは自己実現の手段であり、人と人との出会いを媒介する重要な仕事。そこから生み出される豊かな関係は、カネで贖えるものではない」と。

  ひとり出版社の2人の歩みを聞かせていただくと、出版の大切さが身に染みる。
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2018年07月05日

≪おすすめ本≫ 白井 聰『国体論 菊と星条旗』菊と星条旗の結合を通して、戦後の対米隷属・日本の「国体」が誕生=鈴木 耕(編集者)

 正直に言って、私は「国体」など考えたことがなかった。敗戦と同時に消え失せたものとばかり思っていた。天皇が「統帥権」を喪失した段階で、国体は「国民体育大会」の略称に萎んだはずだった。ところが本書を読んで考え込んでしまった。
 現代日本の対米隷属のあまりの惨状を読み解くには、ピッタリな言葉がこれだったのだ。なぜ日本がかくまで星条旗に跪くのか。それを誰も不思議に思わぬばかりか、沖縄の米軍基地強化にみられるように、なぜ次々に貢物を差し出すのか。「天皇」の代替に「米国」を数式に代入してみれば、その疑問は解けていく。だが事は単純じゃない。

 天皇自身が、現在の政権(安倍と言い換えても可)への闘争宣言ともいえる「お言葉」を、なぜ発しなければならなかったか、解読が鮮やかだ。
 明治という近代国家の形成期を過ぎ、天皇と臣民という疑似家族がつくられ、やがてそれは「国体」として絶対服従のシステムの構築に至る。統治機能の絶対化である。
ところが敗戦により、もろくも崩れ去る。「第四章 菊と星条旗の結合」で、「戦後の国体の起源」という新しい視座が示される。この辺りから、私は目が離せなくなった。

つまり「アメリカの日本」としての「戦後の国体」という選択こそが、この異様なほどの対米隷属日本の在り様に、そしてついに「発狂した奴隷たち」と、為政側にある人達への痛烈な批判に辿り着く。いま憲法9条と日米安保体制の狭間の矛盾が火を吹きだしている。
(集英社新書940円)
「国体論」.jpg
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2018年07月01日

【今週の風考計】7.1─7年ぶりの中道左派サンチェス政権のもと、アンダルシアからカタルーニャを旅して

◆中道左派のサンチェス政権が誕生して間もないスペインを、<キホーテと女サンチョ>さながらに、妻と共に10日ほど旅してまわった。
◆マドリードではソフィア王妃芸術センターで、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」に再会した。もう防弾ガラスはない。原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)を思い浮かべ、フランコ将軍の意を汲んだドイツ軍の空爆とニューヨーク9・11同時多発テロ、そして米国のイラク空爆への道筋をたどると、おもわず緊張が走った。決して過去のことではない。

◆足を延ばしてセゴビアへ。ローマ時代に作られた水道橋の精巧さに驚き、アルカサール城に至る道の脇に立つヒマラヤ杉のてっぺんで、コウノトリが子育てに懸命だ。続いてトレドのカテドラルを見学し、サント・トメ教会のエル・グレコ「オルガス伯爵の埋葬」を鑑賞する。
◆ラマンチャ地方を抜けてアンダルシアへ。この地にイスラム帝国が残した文化遺産は計り知れない。コルドバのメスキータにあるアーチ状の柱列、グラナダのアルハンブラ宮殿内に施されたアラベスク模様にはドキモを抜かれた。

◆その途次、渓谷の上にあるロンダの街へも立ち寄った。W杯サッカー・日本対セネガル戦を、ホテルのロビーで観る。引き分けの結果に大満足し、ソコーロ教会の前にある広場へ出かけ、赤ワインを飲みつつ食べたオックステールの煮込みが、これまた格別。
◆バレンシア港での難民受け入れの様子を報ずるTVニュースを見ながら、一足飛びにバルセロナへ。ここでは風も爽やかに連日38℃を超す気温が気にならない。2日かけてガウディが手掛けたカサミラやグエル公園、サグラダ・ファミリアをめぐって歩く。

◆目立つのが通りの街並みに沿って上に伸びる居住階のベランダにかけられた、カタルーニャ独立を標榜する「アスタラーダ」の旗である。黄色いリボンの旗も多い。前ラホイ政権の手によって収監された、カタルーニャ州政府の幹部・活動家を支援するシンボルだという。
◆昨年10月、独立への住民投票を進めた、同州のカルレス・プッチダモン前首相と前閣僚5人は、逮捕を逃れて亡命、あるいはドイツなどで身柄拘束されている。スペインに残った4閣僚は拘留されており、合わせて25人が反乱罪や国家反逆罪などの容疑で起訴されている。<LLIBERTAT PRESOS POLITICS!>「政治犯を解放せよ」と書かれた旗が目立つ。カタルーニャ音楽堂の前の3階ベランダにも掲げられている。

◆この音楽堂、ガウディと同時代に活躍したドメネク・イ・モンタネールが建築した。この地に生まれたパブロ・カザルスも演奏した。現在でもコンサートホールとして使われ、1週間前に、サイモン・ラトルがベルリンフィルを指揮している。近くにピカソ美術館もある。スペイン内戦でくくれば、チリの詩人パブロ・ネルーダを加えて<3人のパブロ>がそろう。
◆そして今日、W杯サッカー決勝トーナメント、スペイン対ロシア戦が始まる。まさにイベリア半島全体が熱狂に包まれている。(2018/7/1)
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2018年06月28日

《焦点》 鳩山元首相インタビュー 「国交正常化なしでは拉致解決せず」 東京五輪を対話のチャンスに=橋詰雅博 

――日本人拉致問題の解決法は?
 トランプ大統領や韓国の文在演大統領に頼っていてはダメです。安倍晋三首相と金正恩委員長がお互い心を開く状態にならない限り、本音は出ません。ではどうすればいいのか。金委員長は「いつでも話し合いましょう」と言っているのだから、日朝会談を実現する。会談を通じて国交正常化に向けて話を進め、信頼を高める過程で、拉致問題をきちんと取り上げる。そうすれば明快な方向性が出てきます。

日本に分断の責任

 そもそも朝鮮半島の南北分断は、日本が半島を植民地支配(1910年から45年の35年間)したことに起因している。日本に分断の責任があります。世界はそういう立場から日本を見ている。韓国も北朝鮮も日本のおかげでこうなったという気持ちがある。国家の分断の歴史をつくった日本の責任は重い。お互い過去の歴史を冷静に見ながら拉致問題を話し合う。結局は、日朝国交正常化することが拉致問題の解決につながる。
――安倍首相の外交政策をどう評価していますか。
 安倍首相は、「大日本主義」すなわち日本を強い国家にしたいという願望がある。敵視する中国と北朝鮮の脅威論を高め世論を煽る一方で、日米同盟を強化し、自衛隊の増強と配備を拡大、自衛隊を海外派遣するため安保法制を成立させた。私は安倍首相が描く大日本主義に真っ向から反対です。武力による平和はあり得ない。中国も北朝鮮も日本に侵略する可能性はゼロです。しかし、とくに北朝鮮の脅威がなくなると自衛隊増強の理由などが成り立たないから、北朝鮮を悪者と決めつけ、「対話の時代は終わった」とか「最大限の圧力をかけ続ける」と経済制裁を含む圧力の強化というメッセージを発信している。諸問題を対話路線で解決を目指す世界の潮流から安倍外交はかけ離れている。
南北首脳会談に端を発し中国、ロシア、アメリカが朝鮮半島の平和のため対話路線にのっている。支持率のアップを狙い拉致問題に取り組んでいるというポーズだけのPRはもう止めて、安倍首相は日朝会談に踏み込むべきです。

日中韓五輪会議を

――提唱する「東アジア共同体」構想にどんなプラスがありますか。
 この地域における経済の発展は重要だが、それ以上に不戦共同体≠構想でイメージしている。今までは北朝鮮はそこから抜けていた。米朝首脳会談によって、北朝鮮が不戦共同体に組み込める環境づくりの第一歩になった。ようやく方向性が見えてきた。
――2月の平昌冬季五輪に南北統一チームが参加し盛り上がった。20年の東京五輪、22年の北京冬季五輪に北朝鮮をどう組み込むか重要になってきますね。
――昨年11月末にヨーロッパでギリシャのパパンドレウ元首相と会ったとき、彼から「来年から4年間でアジアでは3回もオリンピックが開かれる。北朝鮮と対話するチャンス」とアドバイスされた。ギリシャはオリンピック発祥の地ですから五輪への思い入れが強いので、そういう言葉が出てきたのでしょう。私のおじぃちゃんの一郎が文部大臣とき、「スポーツ選手は、なみの外交官よりも外交官だ」と評価していたことをどこかの本で読んだことがある。米中関係の改善につながったピンポン外交=i1971年、名古屋市で開かれた世界卓球選手権に出場した中国選手が米国選手らを自国に招待)や今年の平昌五輪の成功を見ると、そう思います。日中韓の担当者レベル会議を設け、北朝鮮とどう協力するかなどを話し合い、平和の祭典に相応しい五輪にしてほしい。日本政府に動いてもらいたいですね。

人の命奪ったのに

――安倍首相夫妻が深く関与するモリカケ疑惑をどう思いますか。
――誰が見ても安倍首相はウソをついている。自身も分かっているけど、長く総理を続けたいから粘り腰を発揮している。私は失敗した人間だが、総理在任中、ウソは1回もついていない。それだけは言える。しかも森友学園問題では近畿財務局職員が自殺している。自殺者まで出ているのに総理を続けたいのか。人の命を奪ったという厳粛な事実をどう受け止めているのか。私なら、申し訳ないと毎日さいなまれる。潔く、総理を辞めるべきです。そうしないと日本の風土にとってよくない。子どもたちが大きくなっても、平気でウソをついてもいいという感情が頭の中に残ります。
 官僚も立身出世が目標だから官邸のいいなりです。国民不在の政治と行政に成り下がっている。こうした事態に陥らせた責任は、国民の信頼を失いかけているメディアと自己保身に走る与野党にもあります。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号8面

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2018年06月27日

《焦点》 米朝首脳会談 半島非核化への第一歩 「ディール外交」功を奏す 鳩山元首相インタビュー=橋詰雅博

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝会談は、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた具体策がなく、日本人拉致問題の前進もなかった。中身に乏しい会談だったが、歴史的な米朝首脳の対面は思わぬ成果を生み出し、米朝関係は改善に大きく踏み込んだ。東アジアの平和と安定を目指す「東アジア共同体」構想を唱える鳩山友紀夫元首相(71)は、本紙のインタビューに応じ、歴史的な米朝会談などについて語った。(橋詰雅博JCJ事務局長兼機関紙編集長)

米本土に攻撃可能

――米朝首脳会談をどう見ますか。
 会談に向かわせた大きな要因になったのは、北朝鮮が昨年11月に発射した大陸間弾道ミサイル「火星15号」(ICBM)の成功です。
すでに核実験はうまくいっていたし、これでミサイルもアメリカ本土まで届くということが証明された。今までアメリカの核兵器やミサイルの威力におびえていた北朝鮮は、この成功でアメリカ本土を攻撃できる核弾頭搭載のミサイルを用意できたわけです。本当に届くかどうかわかりませんが、北朝鮮はアメリカと対等に交渉できると考えた。つまり自分たちも非核化を追求するが、アメリカも朝鮮半島から手を引いてほしいという交渉力を持つことで、非核化が現実的な意味をもつ出来事だったと思います。このことで、もしかしたら大きな動きが出てくると予測していたら、北朝鮮は翌年2月の平昌冬季五輪に参加し、アッという間に4月の南北首脳会談まで進展した。
 北朝鮮が金日成時代からほかのことを犠牲にしてまでずっと核・ミサイル開発を進めてきたのは、アメリカとの交渉能力を持つという一点だけだった。

一朝一夕は無理だ

――アメリカの政治状況の変化も要因に?
 戦争を仕掛け利益を求める軍産複合体にのるヒラリーが大統領だったら、米朝首脳は実現しなかったでしょう。トランプ大統領は軍産複合体と距離を置いている。アメリカファーストによって政治面でも経済面でも世界をリードしていくにはディール(取引)が必要とトランプ大統領は考えている。
得意のディールで史上初の米朝会談をうまく乗り切れば、11月の中間選挙で勝てるし、2020年の大統領選での2期目の勝利を得られるという戦略を立てていたと思う。大統領がトランプだったから、アメリカも歴史的な会談のチャンスをつかむことができた。
――米国の方針「朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は実現できるのでしょうか。
 1回の首脳会談でCVIDの達成は無理です。完全な非核化は一朝一夕に行かない。首脳会談はこの先も開かれる。北朝鮮が対米交渉能力を持ったということは、朝鮮半島を核のない平和な状態にしたいという思いも北朝鮮にあるのは確かだ。アメリカと北朝鮮がどうやって核兵器や武力の両レベルを下げていくかが課題です。交渉は時間かけて段階的にステップを踏んで進めていくべきです。おそらく非核化にメドをつけるには数年かかるでしょう。
8面に続く
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月25日

《焦点》 反撃パワーがすごい韓国の放送局=橋詰雅博

 安倍晋三首相は陰に陽に放送局に手を突っ込み自分に都合のよい報道をさせようとしている。突然言い出した放送法4条撤廃はその代表格で、政権寄りの番組を増やす狙いがあった。政府の規制改革推進会議では反対意見が続出し、安倍首相に4条撤廃見送りを答申した。  
 しかし、首相は撤廃方針案を断念したわけではない。再び方針案を持ち出す危険性がある。
 政権批判報道を封じ込めるため放送局支配≠ニいう悪だくみをめぐらすのは時の権力者の常だ。民主化から31年たつ韓国でも、李明博大統領ら保守政権が強権を発動して放送局を占領≠オた。この言論統制に抵抗する記者やプロデューサーを中心にしたドキュメンタリー映画「共犯者」を都内で見た。李大統領(2008年から13年)は公共放送のKBS(韓国放送公社)と公営放送のMBC(文化放送、公営財団・放送文化振興会が大株主)にお友達をトップに送り込んで、政権批判の番組を廃止に追い込んだ。KBSとMBCの労働組合は抗議の声が上げたが、組合員は解雇、配置転換、停職、出勤停止、減給などの懲戒処分を受けた。
 権力と手を組み放送局を台無しにした「共犯者」元社長・幹部をカメラの前に立たせた崔承浩監督は、MBCの調査報道番組プロデューサーとして活躍したが、12年に不当解雇された。上映後、崔監督は 「権力による無慈悲な弾圧に対して言論の自由の確保と、市民からの『キレギ』(キジャ=記者とスレギ=ゴミの合成語。マスゴミとかゴミ記者の意味)と蔑まされたメディアの信頼を回復させるため私たちジャーナリストは闘ってきた」と強調した。
 長期ストライキなどの約9年間に及ぶ闘争でポチ社長≠追放し、KBSもMBCも正常な放送局にやっと戻る。崔監督は昨年末にMBC社長に就任した。昨年5月に革新系の文在演大統領が誕生したことも背景にある。
 ともあれ韓国放送局の権力への反撃はすさまじい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
posted by ロバの耳 at 13:33| Comment(0) | お知らせ/お願い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする