2018年11月11日

【今週の風考計】11.11─51年目を迎えるASEAN への期待と日本の役割

シンガボールに熱い視線が注がれている。11日からASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催されているからだ。発足してちょうど51年目、加盟10カ国の人口を合わせると6億人を超え、EU(28カ国)の5億人を上回る。
「アジアのバルカン」とも言われた東南アジアが、平和を守り人々の生活向上を成し遂げてきた、その成果は大きい。しかし中国が南シナ海に人工島を造成している問題で、隣接諸国は緊張の度合いが増している。とりわけ米中間での争いが激しくなれば、その余波はASEANにも及ぶ。

南シナ海の領有権争いに無関係なカンボジアやラオスは親中国の立場をとるが、ベトナムは中国に対して強硬だ。全会一致を原則とする以上、議長国シンガポールの意向を反映して、中国に一定の配慮をして紛争への懸念と国際法を重視する姿勢を打ち出す。
さらに厄介なのは、中国の経済圏構想「一帯一路」がもたらしている悪影響だ。中国からの巨額の借金で苦しむ国が続出している。今年の総選挙でマハティールが首相に復帰したマレーシアは、ついに兆円単位の債務を抱える鉄道建設の中止を決めた。あまりにも中国本位の借款事業への批判は強い。

15日からは東アジアサミットが、同地で開催される。ASEAN10カ国に加えて、日本、韓国、中国、インド、ロシア、豪州、米国などが参加する。その前日14日には安倍首相とプーチン大統領の首脳会談も組まれ、北方四島の帰属と平和条約締結に関する話し合いが行われる。だが、もっと大事なのは、米ロ中の顔色を伺う対応ではなく、東南アジアで果たすべき日本の主体的な役割の発揮である。

18日からは、ASEANに加盟申請しているパプアニューギニアのポートモレスビーで、APEC(アジア太平洋経済協力会議)が始まる。そこにも安倍首相は出席する。外国人労働者の導入・移民政策などに絡む重要法案はどうするの? 盟友・プーチン大統領は、自国の「移民問題」への対応で欠席だ。(2018/11/11)
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2018年11月10日

【おすすめ本】本間 龍『ブラックボランティア』─「感動詐欺」「やりがい搾取」が進む東京オリンピックの裏側=鈴木耕(編集者)

 やたらと腹の立つ本である。だから途中で放り出すかといえばそうじゃない。ジリジリと怒りを溜め込みながら、読了せざるを得ない本なのだ。
 私は、「東京五輪」そのものに反対なのだが、著者はその反対論に明確な根拠を与えてくれる。「原子力ムラ」があるように、どうも「五輪ムラ」とでもいうような所で、“五輪貴族”どもが利権を食い漁っているようだ。

 利権だけでは食い足りず、とうとうボランティアという美名に隠れて若者たちを食い物にしようとしていると、著者は指摘する。
 本来ボランティアとは@自発性:自主性・主体性 A非営利性:相互性・相対性 B公共性 に裏付けられるべきものだが、これが全く東京五輪には当てはまらない。
 なかでもAが問題だ。スポンサーからの協賛金とテレビ放映権などで運営される営利イベントなのだから、非営利性とは相容れない。しかもそこへ、日当はおろか宿泊費も交通費も出さない無報酬ボランティアの若者を“動員”しようというのだから、五輪貴族たちは坊主丸儲け。

 大学もそれに加担し始めている。「国際スポーツボランティア人材育成プログラム」などを開催して“学徒動員”を呼びかける。財界も「就活に有利」などと甘言で後押しする。もはや官民挙げての「感動詐欺」「やりがい搾取」だと、著者は怒りをもって告発する。
 本来、世界平和を目的に始まったはずの「近代五輪」が、いつの間にかカネまみれの商業五輪となり、その結果が酷暑の夏の「東京オリンピック」だ。
(角川新書800円)
「ブラックボランティア」.jpg

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2018年11月04日

【今週の風考計】11.4─新たな改正法案「外国人受け入れ」に対する右派の困惑

★30年後には、日本の人口が15%減少する。安倍政権は、それに伴う国内の労働力不足を解消するため、外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った。
★そのため新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案を2日に閣議決定、今国会での成立を目指す。新たに「特定技能1号」は一定の日本語力と技能があれば5年間の在留を認める。さらに熟練した技能がある労働者は「特定技能2号」とし、家族の帯同と長期の在留を認める。定期的な審査を受ければ事実上の永住も可能になる。

★来年4月からの実施を目指す。まずは深刻な人手不足に悩む介護や農業、建設など14業種で受け入れる。「移民ではない」と強調するが、受け入れ人数に上限はない。2025年までに50万人の外国人労働者を受け入れる方針だ。
★とにかく安い賃金で働かせるのが本音なのだから、「外国人就労者の雇用が切れたり、違法残業が続いたりした時、抗議や暴動など治安が悪化しないか」、さらには「日本人労働者の給与が下げられ、待遇悪化につながりかねない」など、深刻な声が広がる。あまりにも“ご都合主義的な政策”ではないか。

★自民党内や安倍政権を支援する右派組織からも「中国やベトナムなど外国人が日本国内の労働力のカギを握り、日本侵略が進む」と、反対の論調に拍車がかかっている。現に極右団体は10・10「反移民デー」を設け、過激なデモ行動を展開している。

★肝心なのは、外国人労働者といえども、国籍などで差別されるのでなく、労働者としての権利、生活者としての人権が守られなければならない、それが保障されるか、この一点にかかっている。(2018/11/4)
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2018年10月30日

【焦点】 教育充実にも国家主義思想入り込む=橋詰雅博

 自民党は、衆参両院の憲法審査会で党の4項目改憲条文案を説明する。4項目は9条に自衛隊を明記、緊急事態条項の創設、参院選挙区の合区解消に加えて教育の充実だ。この中で教育の充実の中身は一般にあまり知られていない。その条文案では、第26条の第1項(教育を受ける権利)と第2項(教育の義務)は現行のままだが、第3項を加えている。加憲された文章は次の通りだ。
<国は、教育が国民一人ひとりの人格の完成を目指し、その幸福の追求にかくことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的な理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない>
 9月初旬に都内で講演した前川喜平・元文部科学省事務次官(63)は、この第3項をこう批判した。
 「『教育は国の未来を切り拓く上で重要だから環境を整備する』としている部分が問題です。逆に言えば、国の未来を切り拓けそうもない人間は対象外と解釈できます。ここに安倍晋三首賞の国家優先思想が混じり込んでいます。今春から小学校で教科として取り入れられた道徳もその一環です。
戦後は個人重視と国家主義がずっとせめぎ合ってきたが、第2次安倍内閣以降は、国家の力が強くなっている。全体主義と言い換えてもいい考えが台頭し、その勢いを増しています」
前川さんは79年4月当時の文部省に入省し、2017年1月退官した。40年近く行政官を務めてきた。
「長年の行政官生活で痛感したのは『こんな程度の政治家をなぜ国民は選ぶのか』でした。そんな有権者が日本におびただしくいます。やはり民主主義を勝ち取っていないことが淵源です」
そして今の世の中をこれほどまでに悪くしているのは「忖度だ」と指弾した。
本紙インタビューに応じた1年ほど前よりも、前川さんは舌鋒鋭く安倍首相を攻撃している。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年10月25日号 
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2018年10月28日

【今週の風考計】10.28─ 牛丼380円と消費税10%の方程式、どうしても解けない理由

消費税10%への進軍ラッパが吹き鳴らされた。2%アップで年間5兆円を、来年10月以降、毎年ずっと国民から奪いとる“徴税作戦”である。
しかし、その作戦の必然性が、ちっとも明らかにされていない。これまで消費税率引上げ分は、「社会保障の充実にあて、財政再建に使う」としていたが、いつの間にか「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保などにも充当させる」と、国民の切実な願いを“人質”にとって、消費税増税の理由付けと使い道の見直しまでする始末だ。

いまだに社会保障はよくなるどころか、負担増・給付減の改悪ばかりが進む。現に、社会保障費の自然増分を5年間で1.5兆円も削り、文教予算も3年連続で削減している。アベノミクスの破たんが現実となり、消費不況が続き、景気回復どころか株の下落から日本経済の失速までが言われだしている。消費税10%の導入は、これに拍車をかける壊滅的打撃となりかねない。

そこへ軽減税率の導入とくる。飲食料品・新聞は8%据え置きの案だ。まずわかりやすい例を挙げよう。スーパーに買い物にいって、総菜売り場に並ぶ牛丼を買って家に持ち帰れば、据え置き8%の消費税だが、レジ脇にあるイートインコーナーで食べれば10%の消費税がとられる。「吉野家」で牛丼を買い持ち帰れば8%の消費税、店内で食べれば10%の消費税がとられる。おかしくない?
蕎麦やピザの出前は8%据え置き、だが弁当の配達は会議室に並べると、配膳・ケータリングとなり10%! こんなバカみたいなマニュアルが国税庁で作られている。さらには中小小売店でクレジットを使った消費者に対しては「ポイント還元」だとか、あの評判の悪い「プレミアム商品券」の配布まで言われだしている。
かつ住宅や自動車などの耐久消費財についても、軽減措置を検討することになっている。もう何のための消費税だ。社会保障を支える財源は、能力に応じて負担する「応能負担の原則」に基くべきだ。(2018/10/28)
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2018年10月26日

【お知らせ】〈橋本進さんを偲ぶ会〉のご案内

JCJ元代表委員の橋本進さんが、8月5日、逝去されました。享年91。下記のとおり偲ぶ会を開催します。

日時:11月26日(月) 15時〜17時30分
第1部:式辞 第2部:着席での会食・懇談
場所:主婦会館プラザエフ9階(JR四ツ谷駅・麹町口から徒歩1分)☎03-3266-8111
会費:5000円 平服にてのご来場を!

★出席される方は、11月9日(金)までにJCJ本部・FAX03-3291-6478にてお知らせください。


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2018年10月21日

【今週の風考計】10.21─海洋プラゴミ1億5千万トンが漂流! ムツゴロウも青息吐息!

21日からラムサール条約会議(COP13)が、アラブ首長国連邦のドバイで開催される。干潟や湿地を守るにしても、海辺や河岸に広がるプラゴミの山には辟易する。この70年ほどの間に、世界で製造されたプラ製品は85億トン、そのうち65億トンがゴミとして捨てられた。
毎年800万トンが、世界の海に流出し汚染を拡大している。現在、1億5千万トンの海洋プラゴミが浮遊している。プラゴミによる海洋汚染が深刻だ!

プラゴミの中でも、とりわけ問題なのが、破片5mm以下の「マイクロプラスチック」と呼ばれるゴミ。その2割が「人口芝」だというデータもある。これらの破片を、魚や鳥、イルカやクジラが飲み込み、体内に蓄積され摂食障害を起こして、餓死している例が世界中で報告されている。
いったん海に流れ出たプラゴミは回収が困難で、分解されずに200年以上も残存する。このままでいくと、2050年には世界の海洋プラゴミ重量が、魚の総重量を上回るといわれている。

プラゴミの総排出量のトップは中国だが、1人当たりに換算すると、その排出量は米国が1位、2位が日本となる。日本の2016年の排出量は320万トン。しかし日本には、未だに使い捨てプラスチックを国として規制する仕組みがない。
あまつさえ今年6月にカナダのG7サミットで採択された「海洋プラスチック憲章」に、日本とアメリカだけが署名を拒む体たらくだ。この憲章は、2030年までに全プラスチックをリサイクルするか代替可能なものに切り替えることを目指すという内容。拒むとは恥ずかしい限り。

EU 諸国は2020年に使い捨てプラスチックを禁止、世界の60カ国を超える国が規制を導入する。やっと日本も環境省が「2年後にレジ袋を有料化、30年までに使い捨てプラの25%削減」というガイドラインを提示したが、業界からの反発にさらされている。(2018/10/21)

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2018年10月18日

【おすすめ本】伊藤孝司『朝鮮民主主義人民共和国 米国との対決と核・ミサイル開発の理由』─朝鮮のリアルな姿と本質を綿密な取材と調査で浮きぼりに=半田 滋(東京新聞論説兼編集委員)

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮という)の非核化をめぐる米朝交渉は6月の米朝首脳会談後、停滞している。著者はその理由をこう指摘する。
 「それは朝鮮の米国への強い不信と警戒心、米国による朝鮮への一貫した敵視にある。米国がそうした政策を続けてきた最大の理由は、朝鮮戦争で激しく戦ったことである」
 原点は朝鮮戦争にあり、停戦という不安定な状態のまま、米朝がにらみ合っている限り、非核化は難しいというのだ。朝鮮は、核とミサイルという強力な抑止力を持たなければ、米国から一方的に攻撃されたイラク、リビアの二の舞になると考えている。平和協定の締結がなければ、おそらく非核化は実現しない。

 著者の朝鮮訪問は36回。宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使とも会い「核は欲しくて持ったのではない。わが国がそうせざるを得なかった前提をなくして欲しい」の言葉を引き出している。
 米国寄りの報道が目立つ日本のメディアとは一線を隠した客観報道により、朝鮮半島の過去と現在がリアルに描写される。ほとんど知られることのなかった朝鮮戦争当時にあった米側の残虐行為なども詳細に語られる。
 返す刀で、朝鮮半島問題に何の存在感も示せない日本について、隣国との関係が悪いのは「日本外交の失敗。侵略や植民地支配の精算を不十分なままにしている」と指摘し、「日本が安全保障を軍事力強化と米国の『核の傘』に依存し、独自の外交努力を怠ってきた結果だ」と正鵠を射る。
 「外交の安倍」を信奉する人々にこそ、読んで欲しい良質のノンフィクション。
(一葉社1200円)
「朝鮮民主主義共和国」.jpg
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2018年10月14日

【今週の風考計】10.14─異常気象と「羊のゲップ」とパリ協定、改めて理解した不思議なサイクル

★今年の夏は異常だった。6〜7月にかけて北半球を熱波が襲い、世界各地で最高気温が塗り替えられた。日本では7月に観測史上41.1℃の最高を記録し、熱中症が続出した。カリフォルニアやポルトガル、そして北極圏までもが森林火災に襲われた。こうした世界に広がる異常気象は、地球温暖化に起因しているのは間違いない。

★「温暖化もたらす数千万頭のゲップ」と見出しのついた記事に驚かされた。何もとりあえず調べてみると、羊や牛のゲップには、二酸化炭素の25倍にあたる温室効果を高めるメタンガスが含まれ、一頭あたり1日500リットル吐き出すという。
★世界には牛・羊・ヤギなどの反芻動物が31億頭いるので、吐き出すメタンガスの総量は一日1兆5,500億リットル、東京ドーム1250個分に相当する。地球上の温室効果ガスの5%に当たる─こうした事実を学んだ。
★さらに糞尿が発する亜酸化窒素は、二酸化炭素の300倍もの温室効果を発揮し、オゾン層を破壊する原因になっている。オーストラリアやフランスでは、羊や牛のゲップを抑制する研究や対策に懸命である。栄養価の高い飼育肥料が、ゲップの頻発、メタンガスの発生を増進させているとの研究から、配合を変えるなどの対策が取られている。

★のんびり野山を歩き、牛や羊の反芻に見とれていたが、牛のゲップと地球温暖化の不思議なサイクルに、思いを新たにした。年末には「パリ協定」COP24が、ポーランドで開かれる。21世紀末までに温室効果ガスを実質ゼロにする画期的な協定だが、米国トランプ大統領の<脱退放言>は論外としても、他の国でもいかに実施していくか、その詳細な国際ルールが定まらない。
★ようやく日本も「パリ協定」COP24に提出する長期戦略「2050年温室効果ガス80%削減」に向けて議論が始まった。しかし世界に比べ、排出量取引や炭素税の導入など国内の実効力ある政策が、周回遅れである事実は歴然としている。(2018/10/14)

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2018年10月10日

【おすすめ本】白川優子『紛争地の看護師』─8年間・17カ所の紛争地から掬いあげた戦争被害者の叫び=横田 徹(報道カメラマン)

「なぜ紛争地へ行くのか?」─多くの人が疑問に思うだろう。紛争地へ赴く者への自己責任論が強まる日本で、20年以上戦争報道に関わってきた私自身も“なぜ?”の自問自答を繰り返す。

 本書は7歳で<国境なき医師団>を知った著者が、高校卒業後に国内外で看護の現場を経験、36歳で念願だった国境なき医師団の手術室看護師となり、8年間で17カ所の紛争地に派遣された足跡を記す初の自叙伝。
 終わりの見えない内戦が続くシリアやイスラム国掃討作戦が行われたイラクでは、最前線での医療活動に従事する。また病院が空爆されて満足な支援ができないイエメンや自衛隊が派遣された南スーダンでは、彼女自身が熾烈な戦火に巻き込まれながらも現地に留まり支援を行う。
日本のメデイアが取材できない戦争当事者に寄り添ってきた看護師だからこそ、戦争被害者の心の叫びが、余すところなく掬いあげられている。

 私は著者を数ヶ月間、密着取材したことがある。彼女は決してスーパーウーマンでも聖人君子でもない。恐怖に怯え無力感を味わい、時には煩悩に苛まれることもある。「戦地で私が味わう苦しみなど失恋の辛さに比べたら、なんてことないです」と、過去の失敗談や失恋話を面白く、自虐的に語る。
 等身大の彼女を知ればこそ、冒頭の“なぜ?”が頭によぎる。だが、紛争地へ赴く彼女の目的は明確だ。「泣いている人々の痛みや苦しみを見過ごすことは、やはり私には出来ない」
 戦争はなくなるどころか、さらに長期化し複雑化している。今後も“紛争地看護師”の彼女の活動に注目していきたい。
(小学館1400円)
「紛争地の看護師」.jpg
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2018年10月07日

【今週の風考計】10.7─ノーベル平和賞に喝采! それにしても安倍政権の「性暴力」への鈍感さ!

「性暴力を戦争の武器として使うこと」は、10年前に戦争犯罪として禁じられている。だが、いまだに世界の紛争地では、レイプや性被害が後を絶たない。これが、もっともコストの安い「戦争の武器」だからである。

今年のノーベル平和賞が、戦時下の性暴力撲滅に取り組む、コンゴの婦人科医ムクウェゲさんとイラクのナディアさんに贈られた。ムクウェゲさんは、コンゴにパンジー病院を設立し、20年前の第2次コンゴ内戦以来続く、現地での戦乱によりレイプ被害にあった3万人の女性を治療し、その精神的ケアにも当たっている。
同時授賞が決まったイラクの少数派・ヤジド教徒である女性のムラドさんは、「イスラム国」ISに誘拐され性暴力を受けた。ムクウェゲさんと同じように、傷ついた被害女性のため、支援を続けている。また世界中に広がった性被害の告発運動「#MeToo」も、側面から貢献している。

こうしたグローバルな潮流に逆らうような言動が、安倍政権やそのチルドレン・応援組織から噴き出している。「新潮45」を実質的に廃刊に追い込んだ杉田水脈衆院議員も、“「#MeToo」運動はもう辞めよう” “セクハラと騒ぐのは魔女狩り”などと主張していた。この深刻な現実を直視しなければならない。
いま世界から称賛されているムクウェゲさん本人が、2年前に来日しているのを知った。そのさい彼は、「旧日本軍が行った従軍慰安婦問題を<戦時下の性暴力>として言及し、謝罪も含め国家の責任が問われる」と述べている。しかし、安倍首相は「慰安婦問題は朝日の誤報のせい」と開き直る始末だ。

かように性暴力や性被害を矮小化し、さらにはLGBTなど性的少数者への侮蔑、ヘイトスピーチ規制にも鈍感な態度など切りがない。都道府県では初めての東京都・人権尊重条例が、5日に採択された。これにも自民党は反対している。(2018/10/7)

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2018年10月06日

【リレー時評】 道徳教科書に真珠湾での安倍演説が載る!=清水正文

 今年の春から小学校で教科としての「道徳」が導入され、授業が行われている。続いて中学校が来年度から導入される。現在、全国で中学道徳教科書の採択が行われており、結果が判明した。
 中学では8社が検定申請し合格した。その一つに今年度から新規参入した教科書会社「日本教科書」がある。安倍首相のブレーンの一人である八木秀次・麗澤大学教授(日本教育再生機構理事長)らが、2016年4月に中学の道徳教科書を出すために設立した会社だ。
 八木氏は同年9月に代表取締役を退任したが、その後任に『マンガ嫌韓流』などのヘイト本を出版する「晋遊舎」の武田義輝氏が就任。かつ日本教科書の所在地は、この出版社内にある。

 「道徳」の教科化そのものに大きな問題があることが指摘されてきた。国家が定めた徳目・価値観の押し付け、特に愛国心や伝統・文化を子どもたちに押し付ける内容が各社ともに目立っている。さらに、道徳の教科化にあたって文科省は数値による評価はしないとしてきたが、8社中5社が生徒に5段階で自己評価させる欄を設けている。生徒の内心を数値で評価させるものであり、愛国心などの価値観の押し付けが憂慮されている。

 とりわけ日本教科書の道徳教科書には突出した復古主義・国家主義的内容が含まれている。例えば、吉田松陰を登場させるために、中学生が陸上競技の走り込みで松下村塾の前を通る話を作ってみたり、新潟県長岡市がハワイと姉妹都市提携をして真珠湾で花火を打ち上げる「白菊」という教材の最後に、突然、安倍首相が行った真珠湾での演説を1ページにわたって載せている。
 自己評価についても日本教科書が最も露骨である。「礼儀を大切にし、時と場に応じた言動を判断できる心」「国を愛し、伝統や文化を受け継ぎ、国を発展させようとする心」「日本人としての自覚をもち、世界の平和や人類の幸福に貢献しようとする心」などを、4段階で評価させている。

 教科書の採択についても日本教科書は政治介入ともいえる策動を行っている。今年1月の教育再生首長会議の会合で、顧問の八木氏と代表取締役の武田氏の連名で「会社案内」とともに、市長宛に「御案内」なる文書を配布したことが明らかになった。
 「御案内」は「弊社に関する資料を同封したのでぜひご覧ください」と、市長が積極的に教科書採択に関与することを求め、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」と述べている。
 9月11日現在、全国各地での教科書採択について、現場の声を反映する公明正大な討議や採択を求める取り組みもあり、日本教科書の道徳教科書は、栃木県大田原市と石川県小松市のみ採択されたが、他では採択されていない。


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2018年09月30日

【今週の風考計】9.30─「新潮45」を廃刊に追い込んだ2人の男の経歴と感覚、そして出版の責任

「新潮45」の実質的な廃刊には、大きな疑問がはらんでいる。まずは問題の引き金となった特集「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」という企画の成立過程である。

提案は誰がしたのか、6人の編集部員はどんな議論をし、執筆者7人の選定をどう決めたのか、また編集長は企画を決定した後、執筆者の依頼や担当をどう編集者に振り分けたのか。
さらに担当重役には報告したのか、原稿を入手し一読したのちの対応はどうだったのか、執筆者への問いかけや原稿の手直しはお願いしなかったのか、校閲担当者はどう感じたのか、などなど常識上から見ても、湧く疑問や解明すべきテーマは数多い。

執筆者の一人、小川栄太郎氏の経歴や著作は、つとに知られている。右派だからと言って、ここに文字にするのもはばかれる内容の原稿を一読して、これはダメとは思わなかったのか。
「LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念だからである。満員電車に乗った時に女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。彼らの触る権利を社会は保障すべきでないのか」─痴漢という犯罪を容認しているのも同じだ。

この御仁、安倍首相<親衛隊>の一人。自著『徹底検証「森友・加計事件」―朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社刊)は、昨年末、自民党本部が約750万円使って5000部ほど“爆買い”してもらい、自民党所属の国会議員へ1冊、自民党・各都道府県連支部へ100冊ずつ送本された。挨拶状には《ご一読いただき、『森友・加計問題』が安倍総理と無関係であるという真相の普及、安倍総理への疑惑払拭にご尽力賜りたい》とある。
これだけではない。2012年発売の自著『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)は、安倍首相の資金管理団体・晋和会によって、総額700万円以上も購入されていた。

さて最後は学研「ムー」の編集部を経て、「新潮45」編集長となった、若杉良作氏の見解だ。新潮社の公式サイトに掲載された一文を、再掲載しておこう。
<編集長から LGBTを利用する野党
 今月号は、特集「『野党』百害」と特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を柱に据えた。前者は主要野党議員の採点表みたいなものだが、当然ながら後者と絡み合ってくる。間もなく秋の臨時国会が始まる。「反安倍」なら道理の通らぬことでも持ち出す野党は、この騒動を奇貨として、杉田氏本人の追及や「LGBT差別解消法案」提出に意気込んでいる。
 杉田論文がいかに誤読され、どのように騒動が作られていったかは、この特別企画の七本の論考でよくわかる。うち二本はLGBT当事者からの寄稿だ。ひとりは元民主党参議院議員でゲイであることをカミングアウトした松浦大悟氏。その記事には、バッシングが一部の当事者とそれを利用しようとする者たちが煽ったものであることや、当事者が切実に欲しているものは何か、などが冷静に綴られている。そして野党のLGBT法案には重大な問題があるとも指摘するのだ。野党は決して当事者を代表しているわけではない。>(「波」2018年10月号より)(2018/9/30)

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2018年09月29日

【訃報】元JCJ代表委員・橋本 進さんを偲んで=奥田史郎

 橋本進さんが8月5日、91歳で亡くなられた。私が大宅文庫から中央公論社へ移ったのは1959年の秋だった。当時すでに橋本さんは、中央公論社の編集者のみならず、出版労協(出版労連の前身)やJCJでも活躍していて、いつも大きな風呂敷包みを抱えて出入りしていた。
 私の職場は資料室で、そこには新刊の諸雑誌や出版・印刷の業界紙誌があるので、橋本さんは何か面白い資料はないかと立ち寄り、それがきっかけで親しくなった。
 彼は飛び級で進学した秀才で、しかも早生まれだから皆より若く入社した。大人っぽく見せたくてソフト帽を被って出社していたと、古い社員から聞いた。
 労組で意見が紛糾すると、橋本さんが「要求の原点」を根拠に、ていねいに説得する姿を何度も見た。嶋中事件や雑誌「思想の科学」をめぐる<言論の自由>擁護闘争では、理論的中枢として活躍された。
 職場独自の要求作りでは、女性ばかりの交換台や受付の環境改善に尽力し、お人柄もあり女性社員の信頼も厚かった。学生時代に柔道をしたと聞いたが、社交ダンスも好きで社員旅行の時、ホールがあると橋本さんのお相手は退きも切らず現れて、彼は休む間もないほどであった。
 橋本さんの口調をまねれば「ことほど左様に」女性社員に人気があったからか、71年に月刊誌「時代」の編集を目的に、中央公論社を去る際は、出席者は女性ばかりの送別会まで開かれた。
 橋本さんには、実に多くの先輩を紹介していただいた。60年代、JCJの事務所は中公ビルの裏口から二筋東の小路に建つ田口ビルの4階、新聞労連事務所の一隅にあった。私がデスクワークで連絡しやすかったので、よく三上正良・JCJ事務局長から呼び出され、仕事を手伝うだけでなく、新聞・放送などに携わる人達を紹介いただいた。
 その後、私は雑誌編集を10年余り続け82年秋に中公を辞めた。80年代末に、橋本さんから声をかけられ、コマエスクールの同人に加えてもらった。初めは狛江にあった岩崎勝海(元岩波書店)さんの事務所に集まったので、橋本さんがスクールと名付けた。
 93年から同人誌を刊行し15号まで続いた。橋本さんは創刊から<吉野源三郎『君たちはどう生きるか』をどう読むか>と題して、私の名著研究≠11回連載した。それと同時期に橋本さんは戦時中の言論弾圧事件「横浜事件」の再審裁判支援の活動を、勝利判決を得るまで続けられた。
 皆から好かれる橋本さんも、周囲に心配をかけることが2つあった。若い頃のヘビースモーカーと、頼まれた講演が時間オーバーすることだった。それとなく終わりを進言しても「まだ話し足りない」の答えが返ってきた。今はどうぞ思う存分お話しください。

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2018年09月28日

《焦点》 国民投票テレビCMで民放連どう動く=橋詰雅博

 衆参国会議員による超党派の新しい議員連盟が8月末に発足した。「国民投票運動としてのテレビCM」に関して公平なルールを求める議連がそれ。学者やジャーナリストなどからなる市民団体「国民投票のルール改善を考え求める会」の議連結成の要請に応じたもので、会長に自民党の船田元・憲法改正推進本部長代行が就任した。立憲民主党の山尾志桜里衆院議員と国民民主党の桜井充参院議員が副会長に、立憲民主の杉尾秀哉と無所属の真山勇一両参院議員が事務局を担当する。
 市民団体は、資金潤沢な改憲勢力が賛成を勧誘するテレビCMを大量に流すと、資金に乏しい護憲勢力は対抗できず、不公平が生じるとしてテレビCMに一定のルールを設けるべきだと主張してきた。数回の会合を経て作成した国民投票運動期間中のルールは2案ある。一つは賛成派と反対派が同じ日の同じ時間に、同じ分数の放送を行う案だ。もうひとつは英国の実施事例をモデルにしたもので、異なる放送日で同じ回数・分数の放送を行い、最終的に視聴率が同じ程度になるように調整する案である。この2案は議連に提示していて、議連はこれをたたき台にしてルールづくりを行う。
 安倍晋三首相は来年夏の参院選挙前までに国民投票を実施すると言っており、国民投票法を改正してルールを導入するのは時間的に困難だ。このため議連は自らつくった案を民放各社が集まる日本民間放送連盟(民放連)やNHKに提示し、自主的にルールを策定するよう求めていく。
 記者会見で船田会長は、賛否分れるテレビCMについてこう述べた。
 「同じ時間帯に同一分量を流すのがふさわしい。国民投票法が法制化した11年前、民放連はテレビCMで公平が保たれるよう自主的に制度設計すると発表した。だが、実現しておらず、肩すかしをくらった。9月中にも民放連やNHKと意見交換したい」
 巨額な国民投票特需≠当て込む民放連の対応に注目だ。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年9月25日号


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2018年09月23日

【今週の風考計】9.23─日本列島に「鷹が舞い降りる」! 米軍・自衛隊、一体化の現実

◆ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』ではないが、日本列島に<鷹(ミサゴ)が舞い降りる>。まず10月1日、米軍の特殊作戦機CV22オスプレイ(日本名:ミサゴ)5機が、東京・横田基地に舞い降りる。
◆この空軍仕様のCV22オスプレイは、敵地に潜入し人質を奪還するなど特殊作戦に従事する要員の運搬に使われる。日本への配備は初めてだ。沖縄・普天間基地には、米軍海兵隊仕様のMV22オスプレイ24機が配備されているが、このオスプレイと違って、CV22オスプレイは、夜間飛行や地形に沿って低く飛ぶ能力が強化されている。

◆横田基地での低空飛行訓練や小銃・重機関銃の射撃訓練が、繰り返されるのは必至だ。墜落の危険や騒音など、周辺の住民にはたまったものではない。すでに宮城県・王城寺原演習場まで、人口密集地帯の上空を飛ぶオスプレイが目撃されている。しかも横田基地には、6年後までに計10機・要員450人の増強配備が企てられている。

◆日本の自衛隊も負けていない。まず米国からオスプレイ17機をセットにして、総額3600億円で購入。1機あたり約220億円だ。これを佐賀空港へ配備する。かつオスプレイの着陸料として年5億円、20年間で計100億円を支払うというのだから呆れる。まずは購入した5機を、11月には木更津駐屯地に暫定配備する。
◆訓練は米軍と一体で、三沢対地射爆撃場(青森県)や陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)・北富士演習場(山梨県)へと、日本列島上空を飛びまわる。

◆昨年9月末の米軍海兵隊オスプレイMV22の重大事故率は、10万飛行時間あたり3.24という、過去最悪の数字である。米軍海兵隊が使う軍用機全体が起こした重大事故率2.72よりも高いのだ。この実態に目を背けて、どうして住民の安全・安心が守れるのだ。3選後の安倍政権、改憲より先にやることがあるだろう。(2018/9/23)

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2018年09月22日

【おすすめ本】 芹澤健介『コンビニ外国人』─100万人を超す外国人労働者を安く使う政府・業界の身勝手さ=栩木 誠

 しばしば立ち寄るコンビニエンスストアで、「流ちょうな日本語を駆使する」外国人店員と接した人は多いだろう。大手コンビニ3社で働く外国人店員は全国で4万人超。実にスタッフの20人に1人の割合になる。
 彼らの多くが、日本語などを学びに来た私費留学生である。深刻な人手不足に悩むコンビニ業界にとって、原則「週28時間」の範囲で働く彼らが、もはや「なくてはならない存在」になっている。

 移民への門戸を厳しく閉ざす日本だが、その実、世界第5位の「外国人労働者流入国」になっている。この10年、日本で働く外国人労働者は約2・6倍となり、2016年には100万人を超えた。
 「移民は受け入れないが、安い労働力はほしい」という政府や産業界の本音を投影するように、コンビニに限らず居酒屋チェーンなどの外食産業、さらには農業、建設業など広範な分野で、外国人労働力抜きには廻らない「ビジネスモデル」が出来あがっている。
 政府は、「留学生30万人計画」を掲げながら、留学生を支援・救済するセーフティーネット作りや就職へのケアをすることもなく、将来も日本で働きたいという希望者に「高い壁」を築く。一方で、「外国人技能性実習制度」などを活用して、「安価な」外国人労働力の一層の流入を企図しているのである。

 長年日本在住の外国人問題を取材してきた著者は、「文句も言わず辞めずに真面目に低賃金で働く」コンビニ外国人を様々な角度から見ていくことによって、日本の実相や課題を浮きぼりにする。
(新潮新書760円)
「コンビニ外国人」.jpg
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2018年09月16日

【今週の風考計】9.16─「鶴彬を二度殺させてはならぬ」に共感!1930年代の日本を思い起こせ!

<手と足をもいだ丸太にしてかへし>(鶴彬)─プロレタリア川柳の代表句である。そう田辺聖子さんは『川柳でんでん太鼓』(講談社文庫)で書いている。
鶴彬は治安維持法に問われて東京・野方署に拘留、そこで罹患した赤痢で1938年9月14日に29歳で死去。今年が没後80年となる。

さて1930年代の日本は、軍靴の音けたたましく、1931年9月18日、日本軍は中国の柳条湖で南満鉄線路を爆破。この柳条湖事件は自作自演というのが真相である。そうまでして満州事変の発端を作った。

そして、つい3年前の9月19日、自衛隊の海外での武力行使につながる「戦争法案」を国会で強行可決。この法案は多くの人びとが「違憲」とし、かつ一人ひとりが自分の「意見」を持ち、「異見」を聞くことも大切にするため、<9・19いけんの日>が、平和への思いを忘れない日として誕生した。大切な日である。
20日は自民党総裁選の投票日だ。国民の声には耳を傾けず、コップの中で9条改憲をわめいている。9条3項に自衛隊明記か、2項(戦力を持たない)削除か、どちらにせよ自衛隊を戦争に参加させたい本音は同じ。またまた「安倍一強」政権による改憲策動に拍車がかかる。
明けて21日は国際平和デーだ。世界で起きている戦争や敵対行為を停止する日である。その日はニューヨーク国連本部ビルの平和の鐘が鳴り響く。なんとこの平和の鐘、日本政府が国連に寄贈したものだ。鐘には「世界絶対平和万歳」と鋳込まれている。

おっとっと9条改憲! 真っ向から違反するじゃないか。核兵器完全禁止条約にも背をむけ、「日本を戦争する国」へもっていく。<鶴彬を二度殺させてはならぬ>(高鶴礼子)。(2018/9/16)
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2018年09月15日

山本譲司『刑務所しか居場所がない人たち 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話』─「最後の避難所」で進む想像を超えた実態に迫る=鈴木耕(編集者)

 これ、知ってた? 「受刑者の10人に2人は知的障害者の可能性」があるんだって。そりゃ驚くよね。受刑者の最終学歴も中卒が40%、高卒が30%、大卒はわずか5%。つまり、義務教育すらまともに受けていない人たちの割合が、受刑者の中では圧倒的だってこと。
 だから、学ぶ機会を制限され、さらに知的障害を持った人たちが、刑務所の中では、とても多いということになる。そうすると刑務所はどうなるのか? それを、実体験をもとに書いたのが、本書である。

 実は著者の山本さんは元衆議院議員。ところが秘書給与詐取事件を問われ、実刑でムショ暮らしを経験した。そこで著者が見たのは、想像を超える刑務所の実情だった。
 普通の人なら忌まわしい過去の記憶は封印し、別の生き方を探す。でも山本さんが選んだのは、受刑者たちと共に生きる道だったのだ。
 本書の帯にあるように「塀の中は、社会の中で行き場をなくした人たちの最後の避難所」であることを、山本さんは真正面から受け止めた。刑務所という世間から隔絶された場所で進行している「福祉施設化」とは、どういうことか。

 行き場を失った人たちが、小さな犯罪を重ねて獄中へ戻ってくる。塀の外では生きられない、いわゆる「累犯者」たちだ。そのうちの障害者や高齢者の割合の多さに驚く。生き延びる場所が塀の中にしかないというこの国の哀しさ。でも最後には希望の灯も。
 やわらかな筆致の文章だが、本書はとても重要な問題を提起しているのだ。
(大月書店1600円)
「刑務所しか居場所がない…」.jpg
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2018年09月09日

【今週の風考計】9.9─今が旬!サンマと鯖≠巡る旨い話をつまみに、酒を汲むのもよし

7月8日に解禁された今年のサンマ漁は、8月下旬から9月にかけて漁獲が回復し、水揚げ量は前年同期比140%となった。身は脂のノリがよく、去年より10gも重い。
水揚げ回復のおかげで、新サンマ1匹100円の店も現れている。財布を気にせず、秋の味覚が堪能できてうれしい。

有名な「目黒のさんま祭り」は、9日には目黒駅東口で、岩手県宮古漁港のさんまが、16日には西側「田道広場公園」で、宮城県気仙沼漁港のさんまが、それぞれ焼かれ、スダチや大根おろしを添えて、無料で振る舞われる。

青魚のもう一つの代表、鯖にも目を向けたい。サバ缶の人気が急上昇している。国産の大型サバを使う高級ブランド缶詰は、売り上げが前年比150%の伸びを示すという。
サバなどの青魚にはビタミンB12やビタミンD、DHAなどが多く含まれている。健康志向の流れにマッチし、安く購入できて、簡単レシピで美味しく食べられる重宝さが受け、筆者も酒のアテに充てている。

鯖と言えば、神奈川県・三浦観音の先にある地魚店で食べた「松輪サバ」の旨さが忘れられない。今頃から冬にかけて、三浦沖で一本釣りされた鯖は、胴体から尾にかけて黄色い筋が入り、肉づきが良く脂がのっている。炙りと〆のどちらもいける。

つい最近、赤松利市『鯖』(徳間書店)を読み終えたばかり。本書に出てくる「寒鯖のヘシコ」もいい。塩漬けした鯖の半身を、さらに米ヌカや麹・魚汁を入れた木桶で、1年以上も熟成発酵させた、若狭地方や丹後半島の伝統ある保存食である。炙っても切り身でも旨い。さて一気読みした本書、対馬海流に洗われる日本海の孤島を拠点に、鯖の一本釣りに狂奔する荒くれ漁師たちの破天荒な生き様を描いたノアールだ。おすすめ!(2018/9/9)

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2018年09月06日

≪おすすめ本≫ 立岩陽一郎『トランプ王国の素顔 元NHKスクープ記者が王国で観たものは 』─市井の人々の声を聴き会話を重ね、米国が抱える悩みや本音に迫る=植松正史(日本経済新聞記者)

 愚かな裸の王様か型破りの改革者か。トランプ大統領への論評は数多いが、「結論ありき」で書かれたものが大半。本書は貴重な例外である。トランプ政権の米国を捉えるうえで、偏りない出発点を提示してくれる。

 なぜ米国はトランプを選んだのか。著者は米国各地に足を運び、大統領の就任式会場からデモ現場、路線バス内まで、先入観や政治信条を白紙にして、年代や階層を問わず、率直な質問をぶつけて彼らと対峙する。
 沈黙する人も、怒り出す人もいる。おそらくそんな真摯な姿勢をとらなければ、会話が成り立たなかったのだろう。
 本書で紹介されるコメントはすべて実名だ。会話の文脈やニュアンスも生き生きと伝わる。取材不足の新聞記事にありがちな「関係者によると」という曖昧な主語や都合のよいコメントの切り取りは皆無だ。読者は著者と米国の人々の会話を追体験しつつ、今の米国が抱える悩みや本音に触れることになる。

 もしあなたがトランプ政権の誕生を「教養乏しい白人労働者たちの暴走」とか「ロシアからの選挙介入が生んだ番狂わせ」などと解釈しているなら、その印象は変わるかもしれない。私自身、トランプの支持層を、どこか見下していた気がする。考えを改めさせられた。
 米軍海兵隊について書かれた第9章は新鮮な驚きだ。著者のNHK沖縄放送局記者時代の取材経験も交え、海兵隊の独特の位置付けとメンタリティーが叙述されている。トランプ政権との関係だけでなく、日本の沖縄問題を考えるうえでも貴重な手掛かりになるだろう。
(あけび書房1600円)
「トランプ王国の素顔」.png
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2018年09月02日

【今週の風考計】9.2─8日を忘れるな! 沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>

■8日ナンの日、安保の日、忘れちゃいけない大事な日─今から67年前、1951年9月8日、敗戦国・日本は連合国とサンフランシスコ講和条約を結び日米安保条約に調印した。
■だがそれは対米従属にひた走るスタートの日であった。多くの米軍基地と施設がそのまま残留・存続し、とりわけ沖縄には、日本に復帰した1972年以降も、日本にある米軍基地・専用施設面積の約70%を集中させたままだ。

■「普天間が危険だから、辺野古へ移設だ、危険除去のためには沖縄が負担しろ」これを言っちゃお終いよ。なぜ米国に米軍基地を撤去せよといわないのか。日米地位協定の見直しを提言しないのか。
■それどころか政権は沖縄復興費の支給を、時の沖縄県知事の基地に対する姿勢で増やしたり減額したり、傲慢な政治手法を使い「沖縄県民の民意や自己決定権」を踏みにじって恥じない。

■沖縄県が辺野古埋め立ての承認撤回に踏み切ったのは、安倍一強政権が続ける問答無用の「国策」への、痛烈な叛旗である。
■沖縄県民の自由・平等・人権への願いを、本土の私たちが汲みあげねば、「日本の政治の堕落」に加担するのも同じだ。まさに「沖縄はこの国の<民主主義のカナリア>である」(前泊博盛)。

■8日から9日にかけて東京・代々木公園では、日中平和友好条約 40 周年を記念するチャイナフェスティバルが開催される。9日は朝鮮民主主義人民共和国が誕生して70周年。17日は<日朝ピョンヤン宣言>から16年を迎える。東北アジアの平和友好を視野に入れれば、もう沖縄に米軍基地はいらない。(2018/9/2)

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2018年08月29日

《焦点》 検察は政治資金規正法にうとい=橋詰雅博

 国会議員などの政治資金収支報告書を閲覧できる公益財団法人「政治資金センター」などが企画した「政治と金をどうチェックするのか」と題した集会が都内で7月初旬に開かれた。
 これに出向いた理由はパネラーとして興味深い人物がいたからだ。その人は前田恒彦さん(50)で、元大阪地検特捜部主任検事だ。名前と肩書で思い出された方もいるだろう。郵便不正に絡む厚生労働省の偽証明書発効で逮捕された厚労省元局長の村木厚子事件(2010年)を担当した検事だ。
 裁判で検察によるデッチ上げが明らかになり、村木さんは無罪が確定した。村木さんを犯罪者に仕立てあげるため前田さんは証拠物件のフロッピーディスクの中身を改ざんし、証拠隠滅罪で懲役1年6カ月の判決を受けた。また法務大臣から懲戒免職で処分された。12年5月に満期出所した。

 大阪・東京特捜部に合計約9年在籍した前田さんは、政治とカネの問題でこう語った。
 「政治資金規正法違反の虚偽報告は、形式犯(うっかりミスで法に触れる犯罪、悪質の度合いは低いとされる)扱いです。被疑者の記帳ミスと裁判所は甘い判断をし、下される判決は執行猶予付きです。これでは労多くして益少なし、大山鳴動してネズミ一匹だ。軽くみているから政治資金規正法の条文を読んでいる検事は極めて少ない。下地がなく、経験不足です。巨額やウラ金がなければ、政治資金規正法違反では踏み込まない」
 ただし脱税が悪質ならば起訴するケースはある。
 「目安は一般的には5000万円です。大バッチ≠キなわち国会議員ならば1億円という暗黙のルールがある。このルールに達していない事案なのに、内偵を進めたら法務省からストップがかかります」(前田さん)
 検察には政治資金収支報告書のデータベースはないそうで、頼るのはメディアだという。
 前田さんは法曹界に戻る意思はない。ブログで刑事司法に関する解説や主張を発信している。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年8月25日号



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2018年08月26日

【今週の風考計】8.26─福島原発・放射性物質トリチウム水90万トンの放流!?

福島第2原発の停止中4基も、すべて廃炉とする決定がなされて2カ月半が経つ。事故を起こした福島第1原発の全6基と合わせ、これで10基すべてが廃炉となる。
いよいよ溶け落ちたデブリの取り出しや汚染水の処理、廃棄物の受け入れ先など、緊急で困難な課題に立ち向かわなければならない。

福島第1原発では約106万トンの汚染水がタンクに保管され、もはや限界に近い。そのうち90万トンは放射性物質の濃度を下げる処理が進み、その放射性物質トリチウムを含む水について、希釈して海への放流、水蒸気放出、地下層への注入など、5つの処理方法が検討されている。
その公聴会が今月末、福島・郡山・東京で開かれる。国の基準では1リットルあたり6万ベクレルの濃度に薄めれば海に流すことができる。いまも稼働している日本の原発や再処理工場から、現実に排出されている。原子力規制委員会は健康への影響を含め、海洋放出に問題はないという。

だがトリチウムは放射性物質であるのは紛れもない。にもかかわらず人間と生物への影響が過小評価され続けてきたのではないか。福島県漁連は「トリチウム水の海洋放出には断固反対する」と抗議、海洋放出を絶対に行わないよう強く求めている。
未曾有の被害をもたらした福島原発事故、いまだ「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。くわえて多くの住民が避難生活を強いられ、放射能汚染による長期的な低線量被曝にさらされている。

政府と東電はトリチウム水を海に放流し、空いたタンクの跡地に、取り出したデブリを保管する場所を確保したいと考えている。10月には福島県知事選がある。様子見が続く。(2018/8/26)
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2018年08月19日

【今週の風考計】8.19─「トルコ危機」を通して日銀政策を問う! 異次元金融緩和の「出口」はあるのか

23 日にトランプ政権は中国への制裁関税(160 億ドル・1兆7600億円規模)を発動する。第2弾である。中国も対抗して報復関税措置に踏み切る。米中貿易戦争は激化する一方だ。
1週間ほど前に、トランプ政権はトルコに経済制裁を加えた。トルコは米国製品に関税をかける報復措置を取り、泥沼化し始めている。

いま米国の労働市況は好調を続け、インフレ率は上昇、7回実施したドル金利引き上げも、さらに年末に向けて順調なテンポですすめる方針だという。
その余波が新興国を襲い、トルコを始めアルゼンチンや南アランドでのドル売り・資本流出が止まず、自国通貨の急激な値下がりを招いている。原因は新興国に流れ込んだ大量のドルが引き揚げられ、今度は投資マネーとなって米国へ還流しているところにある。
とりわけ「トルコ通貨危機」は深刻である。トルコリラは年初から40%の下落、物価は4カ月足らずで5・6%も上昇した。世界経済への悪い連鎖波及が懸念されている。

その激動のさなか、23日から米国ワイオミング州で「ジャクソンホール会議」が開催される。主要国の中央銀行総裁らが、世界の金融政策について討議する。米国のパウエルFRB議長や日銀の黒田東彦総裁も参加する。はたして黒田総裁は、日本の金融政策について、どのような発言をするのか。
日銀が保有する国債残高は420兆円、全体に占める割合は44%でトップ。さらに市場から上場投資信託(ETF)を年間6兆円の枠で買い入れている。まさに株価を下支えしているのだ。日銀管理そのものだ。これが進めば進むほど、市場経済の健全な発展は見通せなくなり、疲弊していく。

異次元の金融緩和政策の破たんは、もう明白だ。しかし金利引き上げを図れば、保有国債の利息受け取り分が減り、当座預金の利息支払費いが増える “逆ざや”になりかねない。仮に1%の利上げをすれば、数年で日銀の自己資本8兆円を食い潰してしまう。このジレンマ、いかに「出口」を見つけるか、世界が注目している。(2018/8/19)
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2018年08月18日

【緑陰図書─私のおすすめ】 いま戦争を問う、その代償を払うのは誰?=大矢英代(ジャーナリスト)

 ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」の劇場公開が始まった。私と同じ琉球朝日放送出身の三上智恵さんとの共同監督作品だ。砲弾が降り注ぐ沖縄本島南部の地上戦ではなく、その背後で繰り広げられた裏の戦争「秘密戦」に迫った。

 さて、おすすめの第一は川満彰『陸軍中野学校と沖縄戦–知られざる少年兵「護郷隊」』(吉川弘文館)は「秘密戦」の担い手にされた沖縄の少年兵たちの実態を明かす。
 彼らにゲリラ戦、スパイ戦を仕込んだのは「陸軍中野学校」のエリート将兵たちで、沖縄戦に送り込まれたのは全部で42人。秘密のベールに隠されていた任務から、軍隊が住民を作戦に利用し、銃を取らせて戦わせた沖縄戦の真の姿が浮き彫りになる。

 沖縄戦・精神保健研究会『戦争とこころ』(沖縄タイムス社)は、地獄の戦場を生き抜いた人たちのトラウマやPTSDについて、14人の医師、研究者、記者、体験者たちの視点を通して伝える。
 戦場で死体を踏んでしまった感触が戦後も足裏に残り続けるおばあちゃん。日本兵に壕を追い出された時の心の傷。私たちが「戦後73年」と言っている間も、戦争体験者たちには一度たりとも戦後は訪れていない。
 だが、ここで私たちは問わねばならない。民衆を苦しめる戦争は、一体誰が起こすのか。

 同題映画の原作を翻訳した『ゲッベルスと私─ナチ宣伝相秘書の独白』(紀伊国屋書店)は、その問いを直に私たちに投げ掛ける。本書はナチス政権の中枢、ゲッベルスの秘書を務めたドイツ人女性の回顧録である。
 「私たちは何も知らなかった…罪はない」という彼女の言葉を社会学者ハイゼン氏はこう批判する。「彼女が確信的ナチだったかどうかは、この際、重要ではない…倫理的には見ないふりをすることだけでも罪がある」と。
 胸に手を当てて考えてみる。目を瞑ることも、耳を塞ぐことも私たちの自由である。先の戦争から教訓や体験を学ばないという選択もある。
 しかし、その代償を払うのもまた、必ず私たちなのだと。
「陸軍中野学校と沖縄戦」.jpg
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2018年08月12日

【今週の風考計】8.12─沖縄の民意を一蹴する、安倍首相と三選支援者たちの思考回路

★翁長雄志・沖縄県知事のご逝去を悼み、心からご冥福をお祈りします。11日の新基地建設反対に集まった7万人の参加者とともに、その遺志を本土でも受け継ぎたい。
★それにしても、先週の1週間、安倍首相の言動や振る舞いには、首をかしげるどころか、思考回路まで疑いたくなることばかりだ。

6日、5万人が参列した広島の平和祈念式典で、「唯一の戦争被曝国」である日本の安倍首相は、世界の願いである核兵器禁止条約には一言もふれず、核保有国と非核保有国の「橋渡し役」を務めると、従来の言葉を繰り返し、被爆者の願いを一蹴した。

8日には、俳優の津川雅彦氏が今月4日、心不全のため亡くなったのを受けて、わざわざ夜に官邸で会見を開き、極めて異例な “お悔やみ”を表明した。彼の業績を天まで持ちあげ、かつ会見の様子を首相官邸のHPに動画で公開するほどだ。
総理大臣として“お悔やみ”のコメントを首相官邸HPで公表するのは、国内外の災害・テロ発生時や、海外の元首・首相などの要人、国内の総理経験者の逝去時に限られる。津川氏は該当しないが、芸能界きっての安倍応援団のひとり。かつ特攻隊礼賛や侵略戦争の美化、徴兵制の復活などを主張してきた。
こうした自分の“お友だち”の死には、特別なかたちで弔意を表する異常さ。そんな総理大臣が、かつていただろうか。

9日、「原爆の日」を迎えた長崎市の平和式典で、田上富久市長は、日本政府に核兵器禁止条約に賛同し、世界を非核化に導く道義的責任を果たすことを求める<長崎平和宣言>を読みあげた。アントニオ・グテレス国連総長も賛同している。しかし安倍首相は、ほとんど広島のスピーチを“コピペ”した、空疎な使い回し原稿を読みあげただけ。

その午後、前日8日に急逝した沖縄の翁長知事に対し「沖縄発展のために尽くされた貢献に対し、敬意を表したい」と述べ、辺野古の新基地建設については触れず、そっけない“お悔やみ”でお茶を濁す。“お友だち”でないと、こうも粗末な扱いか。
安室奈美恵さんがホームページに綴った翁長さんへの弔意は、多くの人の心を打つ。Kiroroの金城綾乃さんや宮本亜門さんもツイッターで、沖縄の人々のために最期まで尽くした翁長知事の仕事に感謝の言葉を書いている。この落差を見るにつけ、異なる意見を持つ人であれ、人へのリスペクトを持たない安倍首相─その総裁3選に雪崩を打つ政治家たちの屈服ぶりには呆れる。

11日、沖縄での市民集会など目もくれず、昭恵夫人ともども、全日、地元の山口県を回り三選の票固めに躍起。9月21日投票での圧勝を画策する。翁長知事の急逝で知事選の投票日も23日ごろといわれる。安倍三選などどうでもいい。まず翁長知事の遺志を継ぐ知事を当選させたい。(2018/8/12)

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2018年08月09日

【緑陰図書─私のおすすめ】 韓国民衆の背景には東学農民軍の闘いがある=梅田正己(歴史研究者)

 中塚明・井上勝生・朴孟洙『東学農民戦争と日本─もう一つの日清戦争』(高文研)に書かれた歴史的事実は、ほとんど知られていない。だがそれは一般の歴史観と朝鮮観をくつがえすほど重い。
 日清戦争は清国との戦いだとされている。実は日本軍は朝鮮人民とも戦ったのだ。朝鮮に出兵した日本軍に対し朝鮮全土で蜂起した農民の数は三百万とも。その結果、日清戦争で最大の戦死者を出したのは日本でも清国でもなく朝鮮だった。
 ソウルの都心を数十万の蝋燭デモで埋めて、私欲にまみれた朴槿恵政権を引きずりおろした韓国民衆の背景には、農具を武器に戦ったこの東学農民軍の壮絶な歴史が横たわっているのである。

 いま話題の『君たちはどう生きるか』の著者には、吉野源三郎『職業としての編集者』(岩波新書)の一冊がある。
「編集者の仕事」「ジャーナリストとして」ほかの数編で構成されるが、圧巻は敗戦の年の暮れに創刊された雑誌『世界』の初代編集長となって遭遇した一件を述べた「終戦直後の津田先生」だ。
 戦時下、出版法違反(皇室の尊厳を冒涜)で起訴され、日本神話の虚構を論証した『神代史の研究』以下4冊が、発禁処分を受けた津田左右吉の『世界』原稿をめぐって書いた一編である。
進歩と反動がぶつかりあう時代の激流の中、進歩派の期待を裏切るこの大先生の原稿を受け取って、吉野編集長がとった行動は、ジャーナリストのあり方についての示唆を、深い共感とともに伝えてくれる。吉野さんは1955年、JCJ創立時の初代議長である。
 
『福沢諭吉著作集・第8巻』(慶應大学)をすすめるのは「時事小言」が含まれているからだ。
 福沢の実像は、この20年の間に徐々に知られてきたが、先駆的民主主義者のイメージは今なお強い。だが福沢は『文明論之概略』を書いてほどなく帝国主義者へと転身した。「時事小言」は明治政府の「強兵富国」を先導した帝国主義論である。
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2018年08月05日

【今週の風考計】8.5─<命の美ら海>に米軍基地も滑走路もいらない!強行埋め立てはやめろ!

いま辺野古シュワブの海岸には、これまでにもまして高い怒りの波が、打ち寄せている。4日には抗議船8隻・カヌー約40艇が、海上から<美ら海を殺すな>の声をあげている。

沖縄県・翁長知事が、シュワブ沿岸の軟弱地盤や活断層の存在を指摘し、また環境保全の対策が十分でないことを挙げ「辺野古埋め立て承認を撤回する」と表明した。すみやかに沖縄防衛局に「聴聞」を申し入れ、9日後の日程を示したにもかかわらず、「1カ月程度の準備期間が必要、9月3日以降に変更してほしい」と申し出たからだ。

3年前は聴聞期日に異議を唱えず、かつ承認取り消しへの反論陳述書を、通知の翌日、準備期間1日で提出している。今回の対応は異様だ。魂胆が透けて見える。延期要求は、本格的な埋め立て工事に着手する時間稼ぎに他ならない。
現に埋め立て予定区域の護岸には、被覆ブロックや袋詰めされた砕石が積み上げられ、予定通り17日には土砂投入を行う、その段取りが整っている。これまでも防衛局は協議すらせず工事着手を強行してきた。政府は動かず、防衛局任せにして突っ走る。いい加減にしろ!

11日には、那覇市の奥武山公園内の陸上競技場で、<土砂投入を許さない! ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8・11県民大会>が開かれる。まさに本土から、熱い暑い、連帯のエールを贈りたい!
2日後の13日、今から14年前、米軍ヘリが沖縄国際大学敷地内に墜落し炎上した。墜落事故で焼けた校内のアカギの木は、日本全体の70%に及ぶ広大な面積の米軍施設・基地が、わずか国土面積0.6%の狭い沖縄県にある─その現実を告発している。何度でも言う。沖縄に米軍基地はいらない!(2018/8/5)
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2018年08月02日

≪おすすめ本≫青木美希『地図から消される街 3.11後の「言ってはいけない真実」』─福島復興と帰還─その背後に潜む偽装除染という病巣を抉る=坂本充孝(東京新聞編集委員)

 被災から7年、福島の復興は遅々として進まず、問題が山積み。その原因は、原発を巡る歪んだシステムにある。この闇に包まれた病巣に切り込み、真実を知ろうと戦った一人の新聞記者の記録が本書である。
 今、福島県では避難した住民を、元の自治体に帰還させようと、嵐のような風が吹いている。原発を推進した国が、住民に危険の残る地域へ帰れと迫る、恐るべき構図。その根にあるのは、原発を残すという国の大方針であると、著者は気がつく。

 ここから大方針を堅持するために配置された、いびつな装置の実態に順番に切り込んでいく。除染とは、帰還を進める目的のアリバイ作りではないのか。その揚げ句に生まれた偽装除染。
 2013年、南相馬市一帯の水田の米から、放射能汚染が見つかる。福島第一原発のがれき撤去の影響ではないか。いぶかる農民たちに、国は可能性を否定し続ける。
 安全確保の番人として生まれた原子力規制委員会も、実は原発政策を進める経済産業省の意向を受けていた。ある学者が「それでも安全」と主張する当時の田中俊一委員長に投げ付けた言葉は強烈だ。「学説を査読付きの論文にまとめて、世界に問うたらどうだ」
 また「経産省は、東京電力を必ず存続させる」と告白した元経産官僚もいた。「東電が破綻すれば、賠償責任を経産省が負うことになるからだ」

 著者は、偽装除染をスクープした朝日新聞の取材班の一員として、新聞協会賞を受賞している。まさに地べたを這うような取材を積み上げる手法には、定評がある。
(講談社現代新書920円)
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