2019年11月17日

【今週の風考計】11.17─160年前の「日米通商条約」の轍を踏む!

◆低山ハイクを楽しむ仲間と、伊豆半島・下田にある寝姿山を歩いた。黒船見張所跡や復元された大砲を確かめ、ついた山頂から大島や利島を望む。眼下の下田港に黒船サスケハナ号が入ってくる。
◆165年前の光景が立ちのぼる。米国のペリー提督が7隻からなる艦隊を率い、煙突から煙を吐き、礼砲を響かせ、海岸へと迫ってくる。人々が恐れ慄いたのも無理はない。ついに幕府は鎖国をやめ、「日米和親条約」を結び、この下田港への出入りを認めた。
◆4年後には、ハリスが米国総領事として下田に赴任。「日米通商条約」が結ばれた。とりわけ関税自主権を放棄したため、低い関税率に固定され、かつ米国には特権的優遇措置を約束、安い外国商品が日本に流入し、貿易不均衡が生じる事態となった。

◆はからずも、読み終えたばかりの木内昇『万波を翔る』(日本経済新聞出版社)には、黒船来航から明治維新へのドラマが生き生きと描かれている。外からは老獪な欧米列強の貿易交渉に攻められ、内からは尊王攘夷に煽られ、業を煮やした幕府は、関税や取引通貨の交換レートの折衝などにあたる外国局を新設した。
 この仕事に就いたのが田辺太一という男、今でいう外務省ノンキャリア官僚、彼の奮闘が目覚ましい。オビに「この国の岐路を、異国にゆだねてはならぬ」とある。改めて今だからこそ、同感!

◆帰りの伊豆急線が伊豆高原駅を通過した際、これまた不意に、佐藤雅美『大君の通貨』を思い出した。本書は作家としてのデビュー作で、かつ新田次郎賞を受賞した。その後は『恵比寿屋喜兵衛手控え』で直木賞受賞。江戸時代の町奉行や公事宿を描き、物書同心居眠り紋蔵シリーズが評判だった。
◆佐藤さんは伊豆高原に住んでいた。そして今年の7月末に78歳で亡くなられた。打ち合わせなどで会った佐藤さんの話ぶりや表情などが思い出される。

◆さて『大君の通貨』には、ペリーの来航以来、欧米との貨幣交換レートを巡る交渉に明け暮れた水野筑後守忠徳たちの姿が描かれている。
 幕末の日本では金よりも銀の値打ちが5倍も高い。しかし海外では逆で、金が高く銀の16倍も高い。そこに目をつけた米国のハリス総領事は、銀貨で日本の小判(金)を買いつけ、上海に持っていっては小判(金)を売り、儲けを増やす。また日本に来ては小判(金)を買う。こうした繰り返しにより莫大な利益を貪ったのだ。
◆その結果、日本から大量の小判(金)が流出し、物価の高騰・インフレにつながり、武士階級が困窮、幕府崩壊へと行きついた。まさに自滅である。

◆今の日本はどうか。日米貿易交渉ひとつとっても、安倍首相は「ウィンウィンの関係」だと自画自賛した。だが米国から輸入する牛肉・豚肉・農産物などの関税は引き下げ、かつ余剰トウモロコシまで買う約束をしたのに、米国へ輸出する自動車への関税については、「撤廃に向けて、さらなる交渉を続ける」との口約束だけ。
 まさにトランプひとり「ウィン」じゃなかったのか。この「日米貿易協定」を、19日にも衆院で強行採決するに至っては、160年前の「日米通商条約」と同じ轍を踏んでいるのではないか。(2019/11/17)
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2019年11月15日

【おすすめ本】高遠菜穂子『命に国境はない 紛争地イラクで考える戦争と平和』─静かに続けるイラク支援活動、人間に対する優しさと動かぬ信念=鈴木耕(編集者)

 ああ、こんな人がいるからまだ日本も捨てたもんじゃない…と思わせるような人が少数だけどいる。例えば、最近アフガンから名誉市民権を授与された中村哲医師。自身が被害者であり冤罪被害も受けた松本サリン事件の河野義行さん。90歳を超えてなお沖縄辺野古で米軍基地建設反対のテント小屋に通う島袋文子おばあ。そして本書の著者の高遠菜穂子さん…。
 じわりと胸が熱くなる。自己責任、無鉄砲、無思慮、さらには死ねばよかったとまで、異様なバッシングを受けた「イラク人質事件」(2004年)の当事者だった著者は、だが静かにイラク支援の活動を再開する。その人間に対する優しさと動かぬ信念は、いったいどこから来るのだろう。

 著者の筆致は、悲惨な情景を描いても、とてもやわらかい。見たこと聞いたこと知ったことを、淡々と記述していく。「これがアメリカのいうデモクラシーなのか」「虐殺を行った米軍の主力部隊は沖縄のキャンプ・シュワブから派遣された」「医療者たちは、あらゆる薬、綿、ガーゼ、包帯など全てが足りません、と繰り返す」と、静かに言葉を紡ぐ。
 日本政府による自衛隊派遣に「日本に裏切られた」と激高したイラクの人たちに、著者らは拉致される。親日的だった人たちの、逆に高まる怒り。だがこんなシーンもある。静かに語る著者に、やがて見張りの戦闘員は静かに銃を床に置き「君と友だちになれるだろうか?」著者のイラク支援活動の、これが原点だろう。読んでいて胸が熱くなる…。
 すべての人に薦めたい。(岩波ブックレット620円)
「命に国境はない」.jpg
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2019年11月10日

【今週の風考計】11.10─ますます深まる「桜を見る会」への疑惑

大臣の連続辞任に続いて、河井案里・参議院議員が広島県議へ配った現金疑惑など、政治スキャンダルが相次ぐなか、安倍首相が主催する「桜を見る会」への疑惑が浮上した。安倍首相自らが先頭にたち、公的行事・税金を私物化している疑惑である。8日の参院予算委員会で、共産党の田村智子議員が追究して明らかとなった。
「桜を見る会」の参加者数・支出額は、安倍首相になってから年々増え続け、8回目となる今年4月13日の参加者数は18,200人、支出額は5,518万円、予算額の3倍。参加者一人当たり、飲食・お土産・警備などの費用を含む3,000円の税金が使われている。

参加資格は「功労・功績のある方を各府省が推薦する」とある。議員の後援会員や支持者は、招待範囲に含まれていない。税金が使われる公的行事である以上、当然だ。だが、自民党は党内で役職ごとに後援会や支援者の招待枠を割り振り、各議員は名簿を提出し、内閣府から各人へ招待状が届いている。
稲田朋美、世耕弘成、松本純、萩生田光一議員らの後援会ニュースや議会報告には、<地元後援会や女性支援グループの皆さん、選挙のうぐいす嬢の皆様、後援会の中の常任幹事などと、思いで深い「桜を見る会」となった>の記載があるという。
とりわけ安倍首相の地元・山口県の友田有県議のブログでは、<“後援会女性部の7人と同行”“ホテルから貸し切りバスで会場に移動”>と記され、安倍事務所が取りまとめ役になって前日「下関からは毎年数百人が上京する」との証言まである。こうした事実から、「桜を見る会が『安倍首相後援会・桜を見る会前夜祭』とセットになっている」と、田村議員は追及した。

さらに重大なのは、「新宿御苑で一般招待客は並んで手荷物検査がある。しかし“下関組”はバスの駐車場がある“裏口”から入るのが恒例だ」「(新宿御苑に)到着すると、安倍事務所の秘書らがバスの座席をまわって、入場のための受付票を回収する。その秘書が受け付けを済ませ、参加者用のリボンを配る。まとめてのチェックインで手荷物検査はなかった」という。安倍後援会の約850人がスルーで入園していたことになる。
当日の「首相動静」欄には<午前7時48分、東京・内藤町の新宿御苑着。午前7時49分から同8時31分まで、昭恵夫人とともに前田晋太郎山口県下関市長、地元の後援会関係者らと写真撮影>─まぎれもない証拠がある。
 「桜を見る会」の開門・受付開始は午前8時30分なのに、30分も前に安倍首相が地元後援会の人と、新宿御苑内で記念撮影をしている。田村議員の追究に「セキュリティー」を持ち出して、答弁を拒否し続けてきた安倍首相、自らが「セキュリティー」を犯している事態に、噴飯ものだとの声が挙がる。
ちなみに850人が、<バスの駐車場がある新宿御苑の“裏口”から入る>としたら、大型観光バスで17台にもなる。新宿御苑の“裏口”にあたる大木戸駐車場には、大型車は全長5m、重量2.5トンなどの駐車条件があり、かつ予約はできない。これらの条件を、どうやってクリアーしたのだろうか。(2019/11/10)
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2019年11月09日

【私のオピニオン】知ってますか、日韓請求権協定の原文=梅田正己(歴史研究者)

 泥沼化した日韓関係の打開に韓国政府が苦慮している。しかし日本政府は「徴用工問題は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み、国と国との約束は守ってほしい」と繰り返すだけだ。
 本当はどうだったのか。
 1965年締結の日韓基本条約の最大の問題点は「1910年8月(韓国併合)以前に日韓間で締結された条約は、もはや無効と確認される」という条項だった。
 日本が併合条約は「合法」と主張したのに対し、韓国は、併合は3年前に軍隊を解体させられた上での強制によるもので「非合法」と主張、結局どちらも自国流に解釈できる玉虫色の条文になったのだった。

 基本条約と同時に締結された請求権協定第一条には、日本は韓国に対し3億ドル相当の「日本国の生産物及び日本人の役務」を供与し、あわせて2億ドル相当の「日本国の生産物及び日本人の役務」を長期低利で貸付ける、となっている。
 一般に無償3億ドル、有償2億ドルといわれるが、実態は日本の国費を使って日本の企業が重化学工業製品と技術者を韓国に提供するというものだった。つまり日本企業の韓国進出である。
 ともあれ、条約・協定は当時の政治的経済的情勢を色濃く反映する妥協の産物だった。金科玉条とはとても言えないのである。
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2019年11月03日

【今週の風考計】11.3─W杯ラグビーの後味と東京五輪の酷暑

先月末の秋晴れの日、東京・調布にある神代植物園のバラを見たあと、深大寺へと散策した。境内に入り「達磨まつり」で有名な元三大師堂や国宝の本堂を拝観し、山門へと辿る途中で、ラグビーのユニホームが飾られた堂宇に目がいった。
にわかラグビー・フアンとなっていた筆者には、興味津々、なんとオーストラリア代表チーム「ワラビーズ」の全員がサインしたユニホームだ。達磨の<七転び八起き>がラグビー精神につながるとの縁で、祈願した際に贈呈されたという。

くしくも翌日、調布にある東京スタジアムで、ニュージーランド対ウェールズの3位決定戦、もうテレビにかじりついた。そして昨日2日、イングランド対南アフリカの決勝戦、テレビの前で「行けー、押せ…」と声が出てしまう。結果はご承知の通り、南アフリカが32−12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を果たした。
44日間・170万人の観客を動員し、テレビ視聴率は最高53.7%を記録したW杯ラグビー。秋篠宮さまや安倍首相、日本ラグビー協会の名誉会長でもある森喜朗元首相も出席し、大会を締めくくる閉会・表彰式で、後味の悪いシーンが演じられた。
イングランドの選手が2位の銀メダルを首にかけられることを嫌がり、さらには授与された直後に銀メダルを首から外す選手まで続出。<ラグビー発祥の地>の選手たちが、ノーサイド精神を踏みにじる行為に走るとは、内外からブーイングが起きている。

さて東京五輪。組織委員会会長である森喜朗さん、前日の1日、マラソン・競歩の札幌への変更を決定した。絶大なる権限を持つIOCには逆らえず、東京も「合意なき決定」に従った。しかし、森喜朗さん、「日本が世界にウソをつき続けた結果、今回の事態を招いた」という責任は免れない。
JOCがオリンピック招致の際に作った「立候補ファイル」の、「2020年東京大会の理想的な日程」という項目に、こう書かれている。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉

なんとなんと、日本みずからが蒔いた種なのだ。2013年IOC総会の最終プレゼンでも、福島原発事故問題に触れて、安倍首相は「アンダー・コントロール」との恐るべき言葉を発したが、天気までウソをついていたとは呆れかえる。もう「任命責任」なんて言葉は、取りもしないのに軽々しく言うな。(2019/11/3)
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2019年11月01日

【おすすめ本】森口 豁『紙ハブと呼ばれた男 沖縄言論人 池宮城秀意の反骨』─権力に果敢に噛みついた言論人 その生涯を辿り、沖縄の今を問う=坂巻克巳(元岩波書店編集者)

 沖縄では新聞記者のことを「紙ハブ」と呼ぶ。権力に喰ってかかる毒ヘビ。その呼称がピタリと当てはまる人、池宮城秀意の評伝である。
 戦前、青年期に社会主義思想に傾倒した彼は、東京・八王子の拘置所、さらに沖縄刑務所で三年を過ごした。拘置所ではこぶしを握ってコツコツと壁を叩き、隣りの房の作家・三角寛と「モールス会話」をしたという。

 38歳で召集され、沖縄戦を体験。左足が麻痺し、生涯その不自由を抱えることになった。戦後の活躍の舞台となったのは「琉球新報」だが、同紙誕生の経緯が興味深い。創刊は1945年7月25日。沖縄戦の後、まだ「戦争と平和が同居する」時期に、なんと米軍の支援によって生まれた。第二代社長が瀬長亀次郎で、彼から声がかかり、池宮城は編集局長として就任。
 その後の新聞人としての歩みは、実に波乱に満ちていた。占領軍の干渉との闘い、沖縄人民党の中央委員、第三代の社長…。一時退職、復職を経て再び編集局長、社長などを歴任、祖国復帰、米基地批判などに健筆を揮(ふる)う。

 晩年は老人性痴呆が進み、80歳で老人ホームに入った。夜中、枕元の壁を右手こぶしでコツコツと壁を叩くのを知り、長女は思い当たった。かつて父が独房で用いた通信手段。痴呆により言葉を奪われた彼の体から、その伝心術が噴き出しているのだ、と。胸を打つエピソードではないか。
 その死から30年。新聞・テレビなどを通して長く沖縄報道に携わってきた著者の熱い共感が伝わってくる。
(彩流社2400円)
「紙ハブと呼ばれた男」.jpg
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2019年10月27日

【今週の風考計】10.27─<ビブリオバトル>で読みたくなった一冊の本

■秋の読書週間が始まった。「本の街」東京・神保町では、ブックフェスティバルや古本祭りなど、数多くのイベントが展開されている。その一つ<大学生によるビブリオバトル>の会場を訪問し、その様子を見学した。
■いま大学生の半分は、1日の読書時間ゼロ、読書習慣がないという。そうした中で大学生バトラー5人が、みんなに読んでほしい本を1冊取りあげ、いかに魅力的で読み甲斐があるかを、持ち時間5分でアピールする。会場からの質問タイムもあり、最後に40人ほどの観戦者が挙手をして「チャンプ本」を決める。

■それぞれ工夫しての説明を聞きながら、惹きつけられたのは、千葉大学4年生が推す坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)だった。路上生活者の姿を克明に追ってきた著者が、衣食住もタダで手に入れ、生活する方法を克明に描いていることを、大学生の若い視点からとらえて、とつとつと述べる。その語り口がまたいい。
■多くの支持を得て優勝した。読みたくなって、後で調べたら、刊行されたのは9年前の本。彼はどこでこの本に出会ったのか。芦田愛菜『まなの本棚』(小学館)にある、「気づいたら出会ってしまう」本だったのだろう。ちなみに単行本は入手しがたいが、幸い角川文庫に収められている。

■もう一つのイベント<青空古本市>、秋晴れにも恵まれ、靖国通りに面して500メートルに及ぶ「本の回廊」は、歩くのが困難なほど大賑わい。すずらん通りでは本のワゴンセールのかたわら、焼き鳥・ビールなどの出店コーナーまである。
■さすがこの賑わいの中を、時間をかけて稀覯本や掘り出し本を探しまわる気力はなかったが、とにかく古本屋の意気込みや熱気が、ひしひしと伝わってくる。内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)を、思い浮かべた。イタリア・トスカーナ州のモンテレッジォという山村では、毎夏、本祭りが開かれている。そこからカゴいっぱいの本をかついで、イタリアじゅうを旅して本を商う人たちの足跡をたどる物語。
■帰りに新刊だが、門井慶喜『定価のない本』(東京創元社)を買い、神保町の古書業界の歩みなどをつかみたい。(2019/10/27)
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2019年10月25日

【焦点】政党スポットCM禁止だけでは不十分=橋詰雅博

 安倍晋三首相は、自民党内での求心力維持とレガシーづくりのため憲法改正の旗を振り続けている。今国会では改憲手続きを定める国民投票法の改正と改憲案の提示を狙う。国民投票法改正案の焦点になっているのは投票運動時での有料テレビCM規制だ。  
 与党の自公を中心とする改憲勢力が金に物をいわせ大量にテレビCMを流せば不利と、野党はその規制を求めている。

 いち早く英国に倣った国民投票法改正案を公表した国民民主党は、政党のスポットCM禁止を打ち出している。10月7日に東京都内で開かれた「国民投票のルール改善を考え求める会」に講師として出席した著述家・本間龍さんは「一応の評価はできる」と前置きした上で、政党スポットCM禁止だけでは不十分だと指摘した。本間さんはこう続けた。
 「改正案では、国民投票運動による支出金額が1000万円を超える『特定国民投票運動団体』(支出上限額は5億円)は、テレビCMは禁止ではない。その数も制限がありません。改憲勢力の息のかかった団体が極端に言えば、47都道府県に一つずつ置かれ、各団体がテレビCMを流すことが可能です。禁止されるCMもスポット15秒ものだけで、タイムCM(番組の中で30秒間流れる)では放映できる。そのタイムCM枠をもつ企業などがテロップにより『改憲(護憲)を支持する○○社』と表示あるいは読み上げさせるのもOKです」
 テレビで流す広報宣伝は抜け道≠フような手段がいろいろあるのだ。

 放送業界の対応はどうなのか。日本民間放送連盟は、テレビCM規制には反対を貫き通している。表現の自由の抑圧につながるというが、本当の理由は巨額な国民投票特需≠当て込んでいるからだ。一向に動かない民放連は頼りにならない。国民民主党の政党スポットCM禁止はもとよりさまざまな抜け道を潰す徹底したテレビCM規制などが盛り込まれた国民投票改正法が望まれている。
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2019年10月24日

【おすすめ本】立岩陽一郎『ファクトチェック最前線 フェイクニュースに翻弄されない社会を目指して』─事実をチェックする市民活動の大きな役割=鈴木賀津彦(東京新聞)

 デモに参加するような気軽さで、大勢の市民がファクトチェッカーになり、世に氾濫する情報の確認作業を皆でする。そんな社会の姿が、本書を読んで浮かんでくる。
 ファクトチェックとは何か、これまでの自らの取り組みを振り返りながら、実践的に分かりやすく解説している。著者が米国で初めてこの言葉を耳にしたのが2011年、その後17年6月に日本で設立した「NPOファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」に発起人として関わり、同年10月の総選挙や、18年9月の沖縄県知事選挙、19年4月の大阪ダブル選挙などで、何をやってきたのかを具体的に示し、蓄積したノウハウを説明している。

 ここで強調しているのは「あなたもファクトチェッカーに」という訴えだ。「実はあまり難しい作業ではない。物事を普通に見て、普通に考えて、普通に調べる作業です。ファクトチェックは誰にでもできる作業です」と呼び掛ける。
 「調査報道」が、長い時間をかけて一つの問題に取り組む取材手法で、訓練を積んだジャーナリストの仕事なのに比べ、ファクトチェックはそこまでの訓練は必要としないし、「ジャーナリストが調査報道を担い、さらに幅の広い層がファクトチェックを担うというのが理想」と、説いている。
 フェイクニュース(虚偽の情報)が拡散されてしまう中で、市民活動としてのファクトチェックの役割は、ますます大きくなっている。「多くの人が取り組みに参加することで、事実を大事にする社会が実現できる」展望を示す。
(あけび書房1400円)
「ファクトチェック最前線」.png
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2019年10月20日

【今週の風考計】10.20─即位パレードの延期と日本各地の秋祭り

22日の天皇陛下即位に伴う「祝賀御列の儀」、いわゆる祝賀パレードを、11月10日午後3時からに延期した。台風19号の被害を踏まえ、国民感情に配慮したためだという。だが「即位礼正殿の儀」や「饗宴の儀」、さらに安倍首相夫妻が主催する晩餐会は、予定通り22日に行う。当日は今年限りの祝日とすることにも変更なし。はてさて、これで被災者の気持ちを汲んだことになるのだろうか。
IOCは「東京五輪」のマラソンや競歩種目を、札幌に変更して開催すると、びっくり仰天の宣告。戸惑いが広がる。同じように突然の「即位パレード」の変更にも、何かモヤモヤ感が残る。

政府は26年ぶりに政令恩赦を22日に実施する。罪種は絞らず、対象者は約55万人。被害に遭った人々の感情を配慮すれば、犯罪者を審査せずに一律に政令恩赦を実施する閣議決定に、批判の声が挙がる。
 海外では恩赦は限りなく縮小され、かつ対象人物の名前や罪状、量刑などが公開されている。日本の恩赦の基準や運用のいい加減さは、いたずらに社会不安をもたらすだけだ。
さらに天皇「即位の礼」と結びつけて恩赦を行うことになれば、天皇は<国政に関する権能を有しない>という憲法第4条とのかかわりで、天皇の政治利用につながる大きな問題が出てくる。

毎年10月22日に開催される京都の「時代祭」が延期された。約2千人が各時代の衣装を着て京都市街を行列して歩く。京都に都が移されて1100年を記念し、1895(明治28)年から始まった。今年で124回を迎える。みな楽しみにしている平安神宮の例大祭である。
ところが今年は、天皇陛下即位に伴う儀式や即位パレードがあるため、異例だが「時代祭」の開催を26日に延期した。その配慮も実らず、即位パレードそのものが延期されてしまった。「覆水盆に返らず」。来年は元に戻そう。

京都三大奇祭の一つ「鞍馬の火祭」も、22日に開催。だがこれは変更なしのようだ。家の前に積まれた松明にかがり火が灯され、火のついた松明を掲げ「サイレイ、サイリョウ」の掛け声とともに町内を練り歩く。
こうして20日以降は日本列島各地が、お祭りでにぎわう。とりわけ京都では市街いたるところで祭りのオンパレード。20日だけでも恵比須神社の「ゑびす講」をはじめ斎宮行列、繁昌大国秋祭、笠懸神事、天門祭、餅祭りと続く。

神無月には日本中の神様が出雲大社に行ってしまう。その間、留守番をする「ゑびす様」に感謝し、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願する。右手で釣竿を持ち、左手には大きな鯛を持つ「えべっさん」は、日本各地で人々から敬われ、親しまれる日本の土着の神様だ。(2019/10/20)

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2019年10月13日

【今週の風考計】10.13─台風19号から気候レジリエンスへ!

太平洋を北上した台風19号は、第2の「狩野川台風」を思わせるほど、強い勢力を保ったまま上陸した。伊豆半島・天城山から関東山地を経て越後山脈へと、24時間で800ミリという観測史上初の大雨を長時間降らせ、河川の氾濫や土砂崩れなど、広範囲にわたる大災害をもたらした。

河川の氾濫は、東京の多摩川から長野の千曲川、栃木の秋山川、新潟の阿賀野川、福島・宮城の阿武隈川など、東日本全体に及ぶ。テレビから流れる映像を見るにつけ、被災に遭遇した住民の皆さんの苦しさは、いかばかりかと心が痛む。
1都6県に大雨特別警報、11都県460万人以上に避難指示・勧告が出された。停電は関東-東北で約42万軒。台風が過ぎ去っても、災害からの復旧には、膨大な労力と時間が必要になる。国からのバックアップは不可欠だ。早急に対策を講じてほしい。

台風一過の今日13日は、国際防災の日でもある。1989年より毎年10月の第2水曜日に定められていたが、2009年の国連総会で10月13日に変更された。自然災害の軽減に向け世界の国々が防災行動を強める国際デーである。国連事務総長のアントニオ・グテーレスさんが、11日にメッセージを寄せた。
<私は気候緊急事態が脆弱なコミュニティーに及ぼす壊滅的で人生を一変させるような影響を目の当たりにしてきました。災害は恐ろしい苦痛を与え、何十年もかけて積み上げられてきた開発の成果を一瞬にして無にする恐れがあります。(中略) 今こそ気候レジリエンス(気候変動への対応能力)への投資が、雇用を創出し、人間の苦難を緩和・予防できると確信します。私は世界に対し、2020年までに投資を増大させるとともに、防災を「行動の10年」の中心に据えるよう呼びかけます>

日本でも、来月9日から12日まで、「世界防災フォーラム/防災ダボス会議@仙台2019」が開催される。(2019/10/13)
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2019年10月12日

【おすすめ本】林 典子『フォト・ドキュメンタリー 朝鮮に渡った「日本人妻」 60年の記憶』 ─望郷の念、親族への思い…寄り添い丁寧に掬いあげるルポ=萩山拓(ライター)

  今年は、在日朝鮮人の「帰国事業」が始まって60年。著者は、在日朝鮮人の夫と一緒に朝鮮民主主義人民共和国へ渡った「日本人妻」を取材し、32枚の写真を添えて、60年の記憶を掬いあげる。
 2013年夏から昨年11月まで、訪朝は11回を数え、時には北京から平壌へ23時間の寝台列車に乗り、各地に住む「日本人妻」を訪ね歩いた。
高齢となった今もなお北朝鮮に暮らす「日本人妻」たちは現地で何を考え何を望んでいるのか。望郷の念、離ればなれとなった親族への思いなど時間をかけて丁寧に聞きだしている。

 1961年、夫と共に34歳で元山に渡り、夫の亡き後も娘と暮らした女性。25歳の時に夫と平壌に行き、助産師の資格を取って今も元気に暮らす女性。大学在学中に結婚し、夫とお腹の子と一緒に渡航した女性などなど。9人のケースを追う。
「帰国事業」は、1959年12月から1984年7月まで25年続いた。9万3千人が北朝鮮に向かった。親の反対を押し切って結婚し、勘当も同然で「日本人妻」として渡ったのは1830人ほど。さらに「朝鮮人の妻に付き添い日本を離れた日本人夫も少数ながらいた」と指摘する。

 著者は「故郷である日本の土をもう一度踏みたいという切実な願いを『人道的』な事業として捉えるべきだ」という。
  北朝鮮での拉致問題や日韓関係を悪化させている慰安婦および徴用工問題への対処も、「人道的」な救済事業として位置づけたら解決は早いのではないか。日本は主体性を持って積極的に交渉すべきだと説く本書は、はからずも安倍政権の対応を鋭く問うている。
(岩波新書1040円)
「朝鮮に渡った日本人妻」.png
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2019年10月06日

【今週の風考計】10.6─ノーベル賞週間とチコちゃんの関係

●きっと永遠の5歳<`コちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られるのは間違いない。今年、ノーベル平和賞が、ちょうど100回になるとは知らなかった。
 第1回ノーベル平和賞は、1901年に赤十字社を起こしたアンリ・デュナンらに授けられた。それ以来、2つの世界大戦などで19回が該当者なしだったが、この11日、第100回ノーベル平和賞がノルウェー・オスロで発表される。

●今年のノーベル平和賞候補者の推薦は2月末に締め切られ、78の団体と223名の個人が推薦されている。ノーベル財団は候補者名を伏せているが、最有力候補は、スウェーデンの16歳になる高校生グレタ・トゥンベリさんと見られている。
 さもありなん。世界に向けて気候変動の実態を告発、いまの大人世代の怠慢を痛烈に糾弾し、地球温暖化を防ぐ具体的な取り組みを訴える。その行動力と発信力は、世界中の若者たちの心をつかんでいる。史上最年少受賞の期待が集まる。
●すでに彼女は先月末、「ライト・ライブリフッド賞」を受賞。環境や人権問題などに尽くした人にスウェーデンの財団から毎年贈られ、もう1つのノーベル平和賞とも言われている。
 何でも賭けの対象にするロンドンのブックメーカーは、今年の平和賞受賞予想の掛け率を公表している。それを見ると、彼女が2倍から2.25倍でトップだ。

●さて、昨年のノーベル平和賞受賞者デニ・ムクウェゲ医師が来日し、性暴力の撲滅や女性の権利保護を訴えている。紛争が続くコンゴ(旧ザイール)で性暴力被害者の治療に多大な貢献をしている彼は、4日に安倍首相と夕方、わずか20分足らずの面会。5日には広島市の平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花し被爆者とも面談している。被爆から復興した広島の姿に「悪を過去のものにし、未来に向かう力を見た」と語っている。

●今週は、ノーベル賞ウイーク。さらに日本3連勝のラグビーW杯。テレビ観戦に夢中になっている間、国会論戦が見逃されてはならない。関西電力・原発マネーの還流、煽る改憲論議、愛知トリエンナーレ展への補助金不交付問題などなど、大事なテーマがうやむやにされたら、カラスのキョエちゃんにも「バカー」と、言われてしまいそうだ。(2019/10/6)

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2019年10月03日

【おすすめ本】瀬口晴義『オウム真理教 偽りの救済』─「14人目の死刑囚は私かも」─この“おののき”を原点に追う=鈴木耕(編集者)

 著者は死刑になった広瀬健一と同学年、同じく井上嘉浩とも同世代。その井上が書いたという詩に著者は赤面する。詩の拙さにではなく、社会に対する怒りの心象風景が、自らの青春と重なったからだという。そこから「14人目の死刑囚は私だったかもしれない」という著者の死刑囚たちへの感情移入が見えてくる。 
 優れたノンフィクション作品は、書く者と書かれる対象との距離の取り方にある。その意味で本書は著者の“おののき”が読者と見事にシンクロする。著者のふるえを感得できない者は、本書の読者には残念ながらなり得ない。
 
 もしかしたら自分もそこにいたかもしれないという“おののき”が新聞記者である著者を「オウムの真実」の探求へと駆り立てる。なぜ彼らが死刑囚になり、自分はそれを取材する側にいるのか。
 問いは根源的であり原初的だ。答えなど出るはずもないが、著者は得られぬ答えを求めて「救済」とはなんだったのか、に迫っていく。そして失望する。麻原に帰依した若者たちにではなく、彼らを闇に導いた“尊師”の世俗の欲にまみれた姿に失望するのだ。麻原とは「真理の体現者」などではなく、信者たちの「欲望の象徴」だったのだ。

 著者は麻原以外の死刑囚たちの無念を追体験する。彼らをまとめて死に至らしめたこの国の法にも疑念を抱く。
 末尾の「墓碑銘」が悲しい。著者が数百通の手紙をやりとりし、足繁く面会に通って得た、生真面目で頭の良い青年たちの寂しさが、惻々と伝わってきて胸に痛い。
(集英社クリエイティブ1600円)
「オウム真理教 偽りの救済」.png

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2019年09月29日

【焦点】「不自由展」いきなり中止は勇み足

3日で中止になった「表現の不自由展・その後」。表現・言論の自由を侵害、直ちに企画再開をという市民の抗議活動が止まない。「表現の自由を市民の手に全国ネットワーク」も6日東京都内で集会を開いた。
 同ネット世話人で武蔵野美術大学教授・志田陽子さんは、憲法学者の立場からこの問題を報告した。大会実行委員会がいきなり中止を決めたのは疑問だという。
 「会場は公共の施設です。従って行政当局や芸術監督などが、会場にふさわしい作品かどうかなどを協議し、オープンしたはずです。文化芸術基本法の前文では『表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術を行う者の自主性を尊重する』と書かれており、これに則り運営します。中止の理由は安全性が担保できないということですが、基本法の精神にそって、まず一時停止にする。そして安全性の問題が排除されれば、再開する。すぐに中止は文化芸術基本法に反します」
 問題は安全性の担保だ。ガソリンをばら撒くと県にファックスした脅迫者は警察に逮捕され、「9月5日に放送されたクローズアップ現代+から推測すると、嫌がらせ電話やメールはからかいが相当数と思いました」(志田さん)。実態が分かれば、再開を考えてもいいわけで、だから一時停止という措置にしておくべきだったというのだ。
 また河村たかし名古屋市長が中止を申し入れたことについて志田さんは「会場は表現の自由の空間が出来上がっています。公人がふさわしくない言ったときに、実行委員会は『受けつけません』と言うのが仕事です。発言は政治的な中立性から外れている」と批判した。
 河村発言や菅義偉官房長官が言及した補助金交付の検討は検閲≠ノ当たるのか。志田さんは「愛知県が設置した検証委員会が、中止は表現の内容が政治的にまずいからと結論を下したら検閲に当たります」と指摘した。
 会期は10月14日までだ。
橋詰雅博
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【今週の風考計】9.29─頻発する「How dare you!」の日本

「How dare you!」(よくもまあ、そんなことができますね)の衝撃は全世界に広がった。ニューヨークで開かれた気候行動サミットで、各国が温暖化対策に真摯に取り組まず、お金のことや経済成長というお伽話ばかりしていて、結果として若い世代を裏切っている事態に対し、スウェーデンの高校生グレタ・トゥンベリさん(16歳)が、厳しい口調で発言したイディオムだ。

何も気候変動ばかりではない。関西電力の20名の経営陣と社員に、福井県高浜町の元助役から、3億2千万円もの巨額の金品が渡されていたことが明らかになった。まさに「How dare you!」である。
2006年から高浜原発が再稼働される2018年まで続いていたという。この間、この事実をひた隠しにしてきた。いまだに経営陣が詳細を明かさない。その無責任さは極まりない。しかも原発工事の受注会社から、元助役に原発マネーが還流し、それが関西電力の経営陣らに渡っている税務調査の結果も出ている。真相が解明されるまで、原発の運転は即刻停止すべきだ。

さらにひどい「How dare you!」は、萩生田光一文科相の<あいちトリエンナーレ>への補助金取りやめ決定である。「表現の不自由展」が中止に至った最大の原因は、電凸や“ガソリン携行缶を持ってお邪魔する“というテロ予告FAXを寄せた人々や煽った集団にある。そこには触れず、警備上の混乱が予想されることを把握しながら、事前に説明がなかったとして、すでに決定している補助金7800万円の全額交付を取りやめる暴挙に出た。
「再開もけしからん、内容が気に食わないから交付を取りやめる」というのが、ホンネではないか。
前川喜平さんが〈本音のコラム〉(東京新聞9/29付け)で、不交付の「真の理由は、萩生田氏自身のゆがんだ歴史観や嫌韓感情、憲法が保障する表現の自由への無理解にある。彼は、「表現の不自由展」を中止に追い込んだ勢力と同じ思想・感情を持っているのだ」と喝破している。
海外からも「How dare you!」の声が、大きくなっている。こんな日本が恥ずかしい!(2019/9/29)
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2019年09月22日

【今週の風考計】9.22─気候変動と災害に備える安全への視点

「グローバル気候マーチ」が、20日、日本や世界各地で一斉に取り組まれた。日本では23都道府県で5000人、世界では163か国400万人が参加した。「気候正義が、今ほしい!」と、気候対策を求める活動が世界中に広がっている。

翌日、小泉進次郎環境相が、23日からニューヨークで開催される国連気候行動サミットへ初外遊した。「環境分野において、日本の存在感を発揮していければと思います」と、表情も変えずに意気込みをアピールする。
ちょっと待って、小泉環境相の地元である横須賀では、8月1日から石炭火力発電所の建設工事が始まっている。この事態はどうするの?
サミットを主催するグテーレス国連事務総長も、重要なテーマが石炭火力発電所の削減であり、世界各国に新設中止を要請している。だが日本は国のエネルギー政策の「ベースロード電源の一つ」と位置づけ、100基の石炭火力発電所が稼働し、加えて22基が計画および建設中だ。
菅官房長官の口説きにからめとられ、安倍首相の軍門に下った以上、どこまで二酸化炭素の削減に向け具体的な提案ができるのか。

小泉環境相の後を追うように、千葉県全域に甚大な被害をもたらした台風15号に続き、台風17号「ターファー」が、沖縄から対馬海峡を経て日本海に進み、日本列島全体を襲ってくる。これも気候変動がもたらした台風の進路だ。
集中して襲ってくる台風への対策はどうなっているのか。内閣改造やラグビー観戦もいいが、その前にやることがあるだろう。大規模停電の長期化など被害が拡大している。非常用発電機の拡充など、この現実を解決する手立てを急ぎ講じるべきだ。

26日は、史上最悪の伊勢湾台風が襲来して60年になる。台風は紀伊半島を縦断、伊勢湾に大きな高潮を発生させ、堤防を決壊させた。死者行方不明5098人の被害をもたらした。
地震や台風などの自然災害への対応は、福島原発事故に対する「東電旧経営陣無罪判決」を目の当たりにするにつけ、石橋をたたいても「絶対的安全の確保」を大前提にし、経済的な事情は二の次にして、人命を優先する対策をとるべきだ。この教訓を忘れてはならない。(2019/9/22)
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2019年09月19日

【おすすめ本】山崎雅弘『歴史戦と思想戦 歴史問題の読み解き方』─右派が説く「歴史戦」の中身を追い、ルーツは陸軍省の戦前思想にありと解く=鈴木耕(編集者)

 本書の著者・山崎雅弘氏には、ほんとうに頭が下がる。なぜか? 私なら吐き気がしてとても読み通せないだろう多くの“クズ本”を懸命に読み込んで、それらをきちんと批判するという作業を行ったことに感心したのだ。苦行だったろうな。

 例えばあの『ニュース女子』で、沖縄辺野古の座り込み現場から数十キロも離れた場所で「もうとても危険でこれ以上近づけない」などと、でたらめレポートをして一躍有名になった井上和彦の「大東亜戦争の真髄」(「正論」2015年4月号)を取り上げ、記事の中のシンガポール・ルポのウソを完膚なきまでに暴く。ケント・ギルバートの著書に示される参考文献は、なぜ日本語の本だけなのか、という謎も解明される。つまり“日本人スタッフ”の存在だ。本人は書いていないらしい。

 だが本書の優れている点は、そんなダメ本批判にあるのではなく、戦前の多くの文献を発掘し、そこから見えてくる「思想戦」と産経新聞や雑誌「正論」などの右翼誌が煽り立てる「歴史戦」とのつながりまでをも明らかにしたことだ。
 これまでの「自虐史観」を覆し、日本人としての誇りを取り戻そう…というのが「歴史戦」の主張だが、実はそのルーツは、戦前の陸軍省軍事調査部による「思想戦」にあるという。まるで新しい概念のように産経などが振り回す「歴史戦」は、実は古ぼけた戦前思想の焼き直しにすぎない点を、文献上から明らかにしていく手つきはまことに鮮やか。
 本来ならSNS上に跋扈するネット右翼諸士にぜひ読んでいただきたい本なのだが、それは無理か(苦笑)。
(集英社新書920円)
「歴史戦と思想戦」.jpg
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2019年09月15日

【今週の風考計】9.15─「嫌韓」をけしかけているのは誰だ!

★この2カ月、ほぼすべてのワイドショーが「嫌韓報道」に狂奔し、韓国ヘイトをあおってきた。武田邦彦・中部大学教授などは、「日本男子も韓国女性を暴行しなけりゃ」(ゴゴスマCBCテレビ)とまで言い募る。元駐韓大使の武藤正敏氏を含め、他のコメンテーターにしても、隣国を罵るヘイト発言を頻発している。
★韓国の「玉ねぎ男」=゙国(チョ・グク)氏をめぐる蓄財疑惑や娘の不正入学スキャンダルを、朝・昼のべつ幕なし、一週間以上も取り上げている。陰に陽に「嫌韓」をあおっているのは間違いない。もういい加減にしたらどうか。

★放送だけに限らない。出版でも<嫌韓炎上商法>が大手を振っている。「週刊ポスト」(9/13号)は「怒りを抑えられない韓国人という病理」、「週刊文春」(9/12号)も、「文在寅の自爆が始まった」、「週刊新潮」(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。

★こうしたメディア状況や社会の風潮を憂慮し、新聞労連が6日付で<「嫌韓」あおり報道はやめよう>との声明を発表した。大切な視点と提起が込められている。要点を挙げておこう。
<他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。(中略)
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない>

★メディアは、視聴率稼ぎや販売部数増を狙って、韓国ヘイトに血道をあげ、「玉ねぎ男」スキャンダルの追っかけに走る前に、わが国の足元にある消費税10%増税、年金問題、さらには内密にされている日米経済交渉の中身を追跡したらどうか。
 外交面でも、安倍首相はトランプ米大統領にこびへつらい、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている。この体たらくを、もっと追究したらどうか。
★もう8年近く安倍政権が続く。一向に景気は良くならず、生活の苦しさだけがつのる。国民の不満は高まるばかり。それをそらすには、安倍首相お気に入りの学者・作家・タレントらを動員し、韓国バッシングに走るのが得策と踏んでいるのだ。この策謀にメディアが手を貸す愚はない。(2019/9/15)
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2019年09月11日

【おすすめ本】樋口直人ほか著『ネット右翼とは何か』─誤った「ネット右翼」像を覆す実証研究=菅原正伯

 6人の研究者による調査・研究だが、従来の「ネット右翼」像の見直しを迫る成果をあげている。
 たとえば永吉希久子・東北大学大学院准教授は、「3・11後の社会運動」に関する8万人規模の調査に「ネット右翼」の項目を加えて調査した。
その結果、典型的なネット右翼の割合は全体の1・5%にすぎず、積極的な政治参加意識や伝統を重んじる権威主義的な態度などの共通性はあるものの、低学歴で不安定雇用の社会的に孤立した若者層という従来のイメージは、どの統計データからも浮かび上がってこなかった(第1章)。
 
 一方、樋口直人・徳島大学准教授は、2015年の日韓両政府の「慰安婦」合意に対し、安倍首相のフェイスブックに書き込まれた、右から批判する2500件のコメントを調査した。
 そのうち学歴・年齢などが判明した735人分を分析すると、大学卒業者が60%を占め、年齢もほとんどが30代から50代であった。経済的に弱い若者像ではない。
 職業が判明した289人のうち自営・経営者が137人(46%)を占めた点も注目された(第3章)。

 2014年総選挙のさいのネット右翼のツイッター投稿を分析した、ドイツの日本研究者の論文では、ネット右翼は安倍の隠れた応援団となって、botという自動投稿拡散システムを利用し、彼らを実態以上に大きく見せる世論操作的役割をはたしていると分析している(第5章)。
 市井でごく普通に暮らしている人々が、ネット右翼の担い手になりうる社会の到来は、やはり民主主義の一つの危機だと感じた。
(青弓社1600円)
「ネット右翼とは何か」.jpg
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2019年09月08日

【今週の風考計】9.8─重陽の節句から「憲法99条」への想い

重陽の節句には、菊を浮かべた<菊湯>に入り、<菊酒>を酌む習慣がある。山形では食用菊「もってのほか」のおひたしが食卓を飾る。このシャキシャキ感がいい。
もう一つ加えれば、9日は<「チョロQ」の日>。タカラトミーが“チョロチョロ走るキュートな車”をキャッチコピーに1980年に発売。子供にも大人にも広がる大ブームを起こした。わが本棚にも飾ってある。

お隣の朝鮮半島に目を向ければ、9日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日。朝鮮半島の支配権をめぐる米ソの対立から、38度線以南の地域を単独で収める大韓民国が、1948年8月15日に李承晩を首班として樹立される。朝鮮半島の分断が決定的となった。
これに対抗して38度線以北でも独立運動が加速し、同年9月9日に金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国が樹立された。しかし、70年以上が経過しても統一の悲願は遠のくばかり。

こうして9と9をたどってくると、日本の憲法9条、さらには99条に目を向けざるを得ない。安倍政権の動きを見るにつけ、今ほど99条が大事な条項に浮上している秋はない。
 日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記している。
この条文の主語は「公務員」とあるのが重要だ。「公務員」とは国家権力の行使を担う人たちである。だからこそ「国家権力の横暴を戒め、監視と抑制を行う最高の法律である」憲法の99条に、「憲法尊重擁護義務」を明記したのだ。
 この規定は、単に憲法を尊重するだけでなく、違反行為を防ぎ、憲法を守るために積極的に努力することを含んでいる。

ところが行政府の長である内閣総理大臣という「公務員」が、国会の施政演説や自衛隊観閲式の場で、改憲を勧める所信を表明し訓示を垂れるなど、99条に背く憲法違反を平気で行う事態だ。
 もともと内閣は憲法改正の提案や意見表明はできない。憲法の定める三権分立を侵しても、立法府に干渉するという異常さは極まる。さらには参議院本会議で「愚か者、恥を知れ!」と野党を罵る、自民党・女性議員まで入閣するとの噂が立つ第5次安倍改造内閣、さらなる改憲策動を許してはならない。(2019/9/8)
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2019年09月04日

【本をめぐる状況】公共図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。
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2019年09月01日

【今週の風考計】9.1─よみがえれ! 蒸気機関車「東村山D51」

蒸気機関車を見ると童心に帰る。お盆休みには<煙を吐いてシュッポ、シュッポ…>田舎へ帰る列車の窓から流れ込む煙の臭いが懐かしい。
 旅をしては秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車に胸躍らす。町を歩いては展示されている新橋駅前や中野紅葉山公園のC11型、川崎・生田緑地公園のD51型機関車に見とれる。まさに日本の文化遺産だ。

ところが筆者の住む東京・東村山市の運動公園に展示されている蒸気機関車「D51684」が、市民には何も知らされないうちに、解体・撤去されることになった。この3日から撤去工事が始まる。
市当局は5月末に目視による劣化度調査を行い、鉄錆が広がり枕木も腐食し、地震で脱輪・横転する危険性が高いとの報告を受け、6月7日の定例市議会で、修繕・維持費も高額になる以上、解体・撤去するとの方針を打ち出した。
 しかも議会最終日の7月2日には、解体工事費2030万円を盛り込んだ補正予算を提案し、審議も説明も不十分なまま自民・公明などの賛成で可決・成立させてしまった。展示されて43年間、市民の見学に供してきたのだが、ペンキの塗り直しは僅か4回。風雨にさらし放置してきた責任は免れない。

さっそく市民有志や全国のSLファンらが連絡を取り、「東村山D51684保存会」を立ち上げた。市民の力で<よみがえれ! 運動公園の機関車>を合言葉に、専門家や研究者の知恵を集め、また解体・撤去を取りやめた自治体の経験を活かしたいと張り切っている。
ちなみに市当局が挙げる修繕費1億2300万円は、「全国で実施されてきたSLの生態保存と比べて、ケタ違いの数字であり、必要のない作業を含め、意図的に膨らませていたとしか考えられません」と、SL修繕専門家は言う。
錆びた表面の薄い鉄板を張り替え、ペンキを塗りなおすなどの工事費は、100万円ほどで対応できるし、ボランティアによる協力やクラウドファンディングにも取り組めば、保存は実現可能だと強調している。解体・撤去の契約が成立しても、解体を取りやめた自治体は数多くある。諦めないで「東村山D51」を復活させよう!(2019/9/1)
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2019年08月30日

【焦点】米国への忖度で「ひろしま」幻の映画に=橋詰雅博

 幻の映画「ひろしま」を10日午後、都内で見た。奇しくも、その日の夜11時、NHKがETV特集「忘れられたひろしま=`8万8千人が演じたあの日=`」(映画はETVで17日深夜放映)を放送した。上映を主催した憲法を考える会が配布した資料と特集番組から「ひろしま」が製作された経緯はこうだ。

 映画の原作は「原爆の子〜ヒロシマの少年少女のうったえ」だ。自らも被ばくした教育学者・長田新が原爆の惨状を残したいと、子供たち105人の被ばく手記を編纂し、本は1951年に出版された。累計27万部売れ、原爆の恐怖と悲惨さを多くの国民に知らせるきっかけになった。手記を寄せた少年が映画化を発案し、日本教職員組合が製作に乗り出す。カンパを募り、総額4千万(現在の貨幣価値で2億5千万)の製作資金を集めた。監督は「きけ、わだつみの声」などの作品を手がけた関川秀雄、助監督に熊井啓、音楽が伊福部昭で、一年後にあの「ゴジラ」のテーマ曲をつくった。当時の人気女優・月丘夢路が主演し、8万8千の市民が出演。これは日本映画史上空前絶後のスケールだ。原爆が投下された直後の広島市を再現した映画は53年に完成した。

 ところが国内上映直前にアクシデントに見舞われる。試写を見た大手映画会社が反米的と配給を拒否。どこがそうなのか、例えば「日本人が新兵器の『モルモット実験にされた』」というセリフを挙げた。

 筆者はこうも感じた。上映時間104分のうち惨状シーンは30分も続き、強烈な印象を受け、見ているうちに原爆を投下した米国に怒りがこみあげてきた。

 映画は自主上映で公開され、55年ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝いたが話題にならず、いつの間にか忘れ去られた。現在、原爆のむごさを後世に伝えるため映画関係者が上映会を各地で開いている。しかし、外交、経済、防衛などあらゆる面で日本は、米国への忖度を続けている。

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2019年08月25日

【今週の風考計】8.25─2つのアマゾン、焼失と支配の恐ろしさ

●ブラジル・アマゾンで大規模な森林火災が発生している。年初からの8か月間で7万5000件も発生し、昨年比185%、過去10年で最大となっている。その主要な原因は、同国のボルソナロ政権が、環境保護より開発を優先し、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るための意図的な放火を奨励したことにあると指摘されている。
●アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素を吸収し地球温暖化を防ぐ大事な要となっている。まさに「地球の肺」とも呼ばれている。だがそこでの火災で、1億7千万トン相当もの二酸化炭素が、逆に排出される事態となった。

●さらに煙はアマゾン地域から3200キロも離れたブラジルの最大都市サンパウロの空を覆い、街は暗闇に包まれる被害も出ている。ヴェネズエラやボリヴィアにも森林火災は広がっている。
●ボルソナロ大統領の怠慢や対策を取らない姿勢に、世界から抗議が起きている。フランスのマクロン大統領は、G7でもアマゾン問題を取り上げると言明し、ついにボルソナロ大統領は、消火活動に軍の出動を指示した。

●さてアマゾン問題は、もう一つある。26日閉幕するG7首脳宣言が見送られる背景には、アマゾンを含む米国の巨大IT企業を対象とした、フランスの「デジタル課税3%」に対し、トランプ大統領が、2020年末のOECD合意を待たずに先行導入するとは何事か、と猛反発した経緯がある。

●なにもアマゾンへの課税だけでなく、大規模通信障害を始め、膨大な個人情報の収集は、きわめて深刻な問題をはらんでいる。アプリを使い検索・閲覧・買い物まですれば、自分の個人情報は全て分析されて、そのデータが時には第3者に売買されるに至る。
●現に、就職情報サイトの大手会社が、学生の閲覧履歴を分析し、内定辞退率の予測データを企業に400万〜500万円で売っていた。知らぬ間に自分が売り買いされている、オソロシイ事態が来ているのだ。

●日本の公正取引委員会も、アマゾンなど巨大IT企業による個人情報の収集に対して新しいガイドラインを策定した。8月にも公表し年内にも実施するという。まずはSNSやネット検索を控えるのも一法だ。(2019/8/25)
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2019年08月18日

【今週の風考計】8.18─『放射能測定マップ』の成果 !

17日、第62回JCJ賞贈賞式が日本プレスセンターで行われた。JCJ大賞は東京新聞の「税を追う」キャンペーンに、またJCJ 賞は4作品に贈られた。なかでも受賞した『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』(みんなのデータサイト出版)への受賞理由や受賞者スピーチには、感銘を受けた。
「市民による市民の調査が結実した貴重な特筆すべき成果。我々が見習うべき調査報道の在り方を示す」と、選考委員のメンバーが絶賛する。この本に目を通していた筆者には、改めて認識を新たにした。少し、この本の内容を記しておくべきだろう。

「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」のメンバーが、なんと東日本の青森県から静岡県までの17都県3400地点の土壌サンプルを、延べ4000人の協力で採取し、セシウム134とセシウム137の測定結果から得たデータを、地図上に分かり易くカラーでマッピングし、合わせて各県ごとに解説を加えた画期的な本なのだ。

8年前の3・11福島事故以降、政府は放射能汚染の影響を軽視し、その正確な実態調査を怠ってきた。福島事故の放射能汚染の実態は、今どうなっているか、多くの人々が知りたいと思っている。
国は、空間線量を測って公表はしているものの、長期に放射線の影響を調べるには、土壌の汚染調査は欠かせない。だがこの調査はしていない。にもかかわらず避難者へ、帰還するよう煽り急かせている。こうした事態に危うさを感じた上記メンバーが、「避難する人、しない人、すべての人に被ばくを避け、人間らしく生きる権利を!」と、土壌調査プロジェクトをスタートさせ、2014年から3年かけて測定した数値を、2011年3・11時点に合わせて汚染状況を再現した。

この取り組みの趣旨を表現した横断幕を用意し、6人のメンバーとともに登壇した受賞者代表の女性は、こう語る。
「縦10センチ、横20センチ、深さは地上から5センチ下の土壌を測ります。これはロシアのチェルノブイリと同じ方法です。採取法マニュアルを分かりやすく漫画で作り、WEBサイトに公開し多くの人に理解を促しました。根気よく呼びかけていくと、測定ポイントが増えていく喜びは格別。集まった東日本全域のデータの貴重さ、これをいかにわかりやすく市民に伝えるか、ここからみんなの議論が始まりました」

その後、議論を重ねるうちに、必要な食品についてもデータを集め加えることになった。さらにクラウドファンディングを活用し、自分たちの出版社を立ち上げるまでになる。その結果、A4版・オールカラー200ページ、チェルノブイリとの比較も視野に「日本版アトラス」を目指し、20年後・100年後の状況も加えて仕上がった。 ぜひ読んでほしい。発行所:みんなのデータサイト出版 https://minnanods.net/map-book/ (2019/8/18)
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2019年08月16日

【おすすめ本】ダニエル・エルズバーグ著 梓澤 登+若林希和訳『国家機密と良心 私はなぜペンタゴン情報を暴露したか』─広島・長崎への原爆投下─議論した13歳の授業が原点に=猿田佐世(新外交イニシアティブ代表・弁護士)

 エルズバーグは、米国防総省の機密文書「ペンタゴンペーパー」を暴露した本人であり、非暴力活動の重要性を説く人物である。生命や憲法を壊す策動には、「間違っている。続けるならまず私を逮捕してからだ」と声をあげる。
 彼は当時、泥沼化していたベトナム戦争が、すでに手詰まりであると知りながら、米国政府はそれを隠して戦争を続けた。政府高官としてこの7千頁の機密文書作成に関わった内部告発が、米国のベトナム戦争撤退の大きなきっかけを作った。

 なぜそのような行為に出たのか。ここまで確信に支えられた背景を知ることは、今なお新鮮だ。
 彼は、その後、多くの平和活動に没頭するが、そのきっかけの一つは、学校教育であったことも示唆的である。彼が広島・長崎への原爆投下を、他の米国人と違い、非人道的だと捉えたのは、13歳の頃に“原爆製造は世界にとって善いものか”を議論する機会を、授業で与えられたからだった。
 生徒がみな「人類にとって悪い知らせ」という結論を出したその後、1年もしないうちに、米国は原爆を投下する。この衝撃がその後の彼の原点となった。

 また彼は、徴兵拒否活動に取り組む先駆的な人物に励まされ、自分も行動に出たという。今、スノーデン氏が「エルズバーグがいなければ自分はなかった」との発言を誇りにしている。
 彼は秘密保護法が制定され憲法9条をないがしろにする日本政府に、もっと抗う必要性を問う。先駆者である彼の覚悟を知った私たちが、今どう動き次の世代に何を残すのか問われている。(岩波ブックレット740円)
「国家機密と良心」.jpg
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2019年08月11日

【今週の風考計】8.11─脅迫の電凸が、憲法21条をつぶす危機!

<あいちトリエンナーレ2019>の企画展「表現の不自由展・その後」が、脅迫の電凸・メル凸、さらには「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というテロ予告FAXまで送られる事態に及んで、ついに中止を余儀なくされた事件は、国内外に大きな波紋を呼んでいる。

慰安婦問題に焦点を当てる「平和の少女像」や憲法9条をテーマにした俳句、天皇に関する作品など、各地の美術館から撤去させられた20数点を展示。それを主催側の会長代行である河村たかし名古屋市長自らが、展示場に乗りこんで「日本国民の心を踏みにじる行為」などと言い、展示物を検閲するかのように、自分ひとりの判断で中止を求めるなど言語道断だ。「言論・表現の自由」を保障する憲法21条を踏みにじる、まさに最悪の違憲行為だ。
そのうえ、官邸や一部の政治家が悪のりし、主催団体や自治体などに圧力をかけ、補助金の支給にまで言及するなどして、ヘイトを増長させる。

今回の展示がこのまま中止となれば、「脅せば表現は封印できる」前例となり、同様の事件が急増するのは必定だ。また事件を恐れて萎縮が広がる可能性は高い。芸術家や日本ペンクラブ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、憲法・歴史学者、市民らが抗議と展示の再開を求めて行動に立ちあがっている。

にもかかわらず神戸市が、9〜11月に開催する「現代美術の祭典」の関連行事として、いま渦中にある津田大介氏を加え、3人による鼎談シンポジウムを中止すると決めてしまった。理由は抗議電話ばかりでなく、自民党市議からも津田氏の参加を断るよう要請されていたからだという。
「抗議電話によって催しが潰れることが続けば、気に入らない言論・表現活動は潰してしまおうとする人たちは勢いづき、次のターゲットを探すだろう」(江川紹子)。
 
自治体や主催団体は、とりわけ右派からの動きを忖度し、次なるターゲットにならないよう、物議をかもすような人物やテーマ、企画表現は除外しておこう、という空気が広がるのは目に見えている。こうして日本の「言論・表現の自由」が骨抜きにされていく。それが怖い。(2019/8/11)
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2019年08月08日

【‘19緑陰図書─私のおすすめ】歴史否定や陰謀のパラレル・ワールドを撃つ=倉橋耕平(立命館大学 非常勤講師)

 「自分が信じたいものだけが正しい」。そんな空気が、この四半世紀を貫き、パラレル・ワールドがあるのかとすら思える昨今。それが国の政治の中心にあるとなれば、寒気しかしない。
 山崎雅弘『歴史戦と思想戦』(集英社新書)は、右記の疑問を戦中の「思想戦」と産経新聞が主導する60年代の「歴史戦」との接点を、「トリック」の構造的類似性から解き明かしてくれる良書だ。日本ではなく「大日本帝国」に同一化する右派論壇の論理矛盾を解明する。
 読みどころは、第三、四、五章の展開である。戦前の「思想戦」が国益を損ね、「歴史戦」がいかに戦前の古臭い手法の焼き増し・相似形であるかが如実にわかる。山崎はいう。「『歴史戦』の論客は、戦前と戦中の「大日本帝国」の名誉を回復することではなく、戦後の『日本国』の名誉や国際的信用を高めるような方向へと論戦を転換」するべきだと。全くその通りである。

 そうした大きな流れと対照的に、斉加尚代『教育と愛国』(岩波書店)は、現代の現場レベルで教育・教科書が標的とされる事例を、深く追った労作。毎日放送の『映像‘17』で、同書の内容を見た方も多いだろう。本書は放送の「完全版」である。同作は第55回ギャラクシー賞大賞になったことでも話題を集めた。
 書籍版は、映像にはなかった各種詳細や放送できなかった部分と放送後の反応が描かれていて、その部分だけでも興味深い。個人的には、伊藤隆東大名誉教授の話が克明に記述されている点に価値があると思う。放送では、「(歴史から)学ぶ必要はないんです」「ちゃんとした日本人を作る…左翼ではない」といった言葉が強烈だったが、書籍版ではWGIPの洗脳説、歴史学会=左翼説、日教組=マルクス主義説という、とんでもない右派のロジックの根幹が、そのまま語られている。
 二書が、歴史否定論や陰謀論を放置して善いことなど何もないことを「歴史」が教えてくれる。
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2019年08月04日

【今週の風考計】8.4─制裁が席巻する世界、おかしくないか?

■地球規模の気候変動によって、世界各地で「史上最も暑い月」が続く。そのせいだろうか、制裁・除外・失効・離脱─なんとも知恵のない非生産的な言動や措置が、いま世界各国で乱舞し<いがみ合いのルツボ>と化している。

■まずは日本政府が下した2日の閣議決定である。韓国を輸出管理の優遇対象「ホワイト国」から除外する措置は、日韓両国の関係を根本的な危機に陥れかねない。元徴用工への賠償問題に端を発した日韓外交の頓挫が、韓国民衆の反日感情を煽り、さらに観光・文化・スポーツ交流の中止に加え、東京五輪ボイコットの動きすら出ている。
■8月下旬には更新期限を迎える、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄される可能性も含め、東アジアの安全保障まで不安定となりかねない。北朝鮮のミサイル発射、ロシア・中国の両国軍機による竹島領空侵犯も、日韓対立のスキをついた揺さぶりとみられている。

■続くは米国・トランプ大統領の中国への経済制裁だ。新たに中国の輸出産品3千億ドル(約32兆2千億円)に、9月1日から10%の追加関税を課すと表明。トランプ大統領による対中制裁は1年半に及ぶ。米国の小売業界も衣料品や玩具、家庭用品、パソコンなど日用品の価格が上昇し、家計が圧迫されると反発。加えて原油相場は8%近く下落し、世界経済への影響は計り知れない。

■31年前、米ソ冷戦後の核軍縮の柱となった「中距離核戦力(INF)廃棄条約」すら、2日失効してしまった。「核なき世界」を目指す国際的な軍縮の機運が後退するのは必定だ。現に米国の国防長官が、「中距離ミサイルの開発を加速させる」と表明した。
■被爆から74年、今週8・6広島と8・9長崎を迎える。いま日本政府にとって最も緊急な課題は、核兵器禁止条約に参加し、核兵器廃絶に向けて世界の先頭に立つ、これに尽きる。(2019/8/4)
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