2017年08月20日

【今週の風考計】8.20─共謀罪の導入と「エックスキースコア」が忍びよる恐怖

19日に行われたJCJ賞贈賞式の記念講演で、小笠原みどり氏は「監視社会とメディア」と題し、衝撃的な報告をされた。その内容を多くの人と共有したい。米空軍横田基地で09年から2年間勤務していたエドワード・スノーデンが暴いた文書の中身である。アメリカ国家安全保障局(NSA)は、60年以上にわたり違法な監視システムを、日本にも秘密裏に導入し、私たちの日常生活に関わる全ての情報や通信を盗聴し収集してきた事実である。

しかも日本政府は、これら米国の施設や運用を財政的に支援するため、膨大な金額を負担してきた。その見返りにNSAは、ネット上の電子情報を幅広く収集・検索できる「エックスキースコア」、別名<スパイのグーグル>といわれるシステムを、防衛省情報本部電波部に提供している。東京の米軍横田基地に諜報活動の通信機器を修理・製造する施設を造る際、7億円の建設費を日本側が負担したという。ここで製造されたアンテナなどの機器は「アフガニスタンでのアルカイダ攻撃を支えた」と記載されている。

また沖縄にある米軍の諜報・通信施設「象のオリ」を、キャンプ・ハンセンに移設する600億円の費用も、日本は全額負担している。しかもスノーデンは「秘密保護法は実はアメリカがデザインした」と証言しているように、共謀罪法を始め、安倍政権の異常ともいえる数々の監視法制の強行は、日米両政府の共通目標なのだ。不都合な真実を消そうとする権力、それに抗う声をつぶすための監視─メディアに携わる私たちは、秘密を暴露し真実を知らせる作業を強めねばならない。(2017/8/20)
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2017年08月18日

≪私と仕事≫ 私がなぜ「日本ナショナリズムの歴史」にとりくんだのか─梅田正己

 1945年の敗戦の年、私は国民学校(小学校)4年生でした。 教育勅語を暗誦させられた最後の世代です。 一学期、やっと暗記できたと思ったら、夏休みに8・15を迎え、以後は一度も暗誦させられずに終わりました。 ナショナリズムは、したがって私には過去の遺物で終わっていました。
 それが今日の問題として立ち現われてきたのは、私が出版社に入り、高校生対象の月刊誌の編集を担当するようになってからです。 1965年、文部大臣の諮問機関・中教審は高校生世代に向けて「期待される人間像」中間草案を発表しました。 その中にこんな言葉があったのです。
 「われわれは日本の象徴として国旗をもち、国歌を歌い、また天皇を敬愛してきた。…われわれは祖国日本を敬愛することが、天皇を敬愛することと一つであることを深く考えるべきである」
 戦前日本の青少年にとって最高の命題は「忠君愛国」でした。 表現はソフトになっていますが、指し示している方向は同じです。

 この翌々年、「神話史観」にもとづく戦前の紀元節が「建国記念の日」として復活しました。
 その後、月刊誌が会社の方針で廃刊とされたため、72年、仲間と共に出版社・高文研(当初の社名は高校生文化研究会)を設立、『月刊・考える高校生』(後に『月刊ジュ・パンス』と改題)を創刊しました。市販の条件はなかったため創刊時のマニフェスト「生徒と教師を主権者とする高校教育の創造をめざす」に共鳴した全国の先生たちの同志的〞熱意に支えられての出発でした。
 月刊誌の刊行とあわせて教育書を中心に人文書の単行本の刊行も開始し、以後、低空飛行ながら出版活動を続けることができました。
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《遠吠え》「北朝鮮の弾道ミサイル」騒ぎの裏に蠢く怪しげな連中の思惑から目を離してはいけない!=田悟恒雄

 キム・ジョンオン氏が米領グアム周辺への弾道ミサイル発射計画をぶち上げれば、ドナルド氏は「火」だの「恐怖」だの、思いっきり物騒な言葉を並べ立て、果ては「斬首作戦」なる究極の脅しまで繰りだしました。
 「嗚呼、理性というものはこの世界から消え失せてしまったのか?」などと思っていたら、急転直下、キム氏が「賢明な判断を下した」のだそうです。
 一方、そんな馬鹿げたやりとりを「千載一遇のチャンス」とばかり蠢き出した、怪しげな連中がいたのを見逃すわけにはまいりません。いつだかもありました。「軍事評論家」と称する何やらうさん臭い人たちが、TV画面を占拠したかに思えた時期が。
 で、このドサクサに紛れ、防衛省は「北朝鮮の弾道ミサイルへの対処」を口実に、陸上配備型の新迎撃システム「イージス・アショア」の導入を決めました。
 「北朝鮮の弾道ミサイル」を言えば、何でもあり。1基800億円といわれる新迎撃システムは、2基で1600億円。その裏には、「アンメリカファースト」を叫ぶドナルド氏や米国の軍産複合体の思惑、そして日本政界の国防族や、「千載一遇のチャンス」に敏感な大手商社の思惑が蠢いているに違いありません。
 「火事場泥棒」とはこのことです。

(「零細出版人の遠吠え」08/18より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年08月13日

【今週の風考計】8.13─日米共同の軍事訓練「ノーザン・ヴァイパー」が狙う危険な企み

◆今日13日は、普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してから13年。普天間基地の返還が実現されるどころか、ちょうど8カ月前の13日には、同基地所属のオスプレイが名護市の海岸に墜落。◆その後もオスプレイは低空・夜間飛行訓練、物資つり下げ訓練を繰り返し、ますます傍若無人に沖縄の空を飛び回る。県民の怒りは限界を超え、基地撤去の決意は高まっている。

◆目を北に向ければ、北海道では「ノーザン・ヴァイパー」が展開中だ。10日から始まったアメリカ海兵隊2000人と陸上自衛隊1300人が参加する日米共同の実動訓練である。ここにもオスプレイが参加する。◆5日、オーストラリア沖で沖縄・普天間基地所属のオスプレイが墜落事故を起こしたにもかかわらず、わずか6日後にはオスプレイ4機が普天間基地を出発、青森・米軍三沢基地に着陸した。「ノーザン・ヴァイパー」に参加するのは明白だ。

◆かつ怖いのは、陸上自衛隊の海兵隊化を図り、離島奪還のみならず世界のあらゆるところへ殴り込み・侵略に向けて、オスプレイと一緒に即応機動する陸上自衛隊づくりを、大目的にしていることだ。◆72回目の終戦記念日が来る。だが日本の上空は昼夜・所かまわず、いまだにオスプレイを始め米軍機が我が物顔に飛び交っている。日本の主権を主張するどころか、米軍の横暴を追認して恥じない安倍首相、どこの国の総理か。(2017/8/13)
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2017年08月12日

≪おすすめ本≫ 猿田佐世『自発的対米従属』と野坂昭如『農を棄てたこの国に明日はない』

猿田佐世『自発的対米従属』
 安倍政権は、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認、「戦争法」の制定、原発再稼働など国民の反対に耳を貸さず強行してきた。その追い風に「ワシントン拡声器」が送ってくる「アメリカの声」を利用した。
 その「声」を発信するのは、アーミテージ元国務副長官やナイ元国防次官補ら「知日派」と称する専門家だ。日本政府は彼らの分析や政策提言を、金科玉条の如く受け入れ政策化している。
 著者はこの「アメリカの声」が、実は「日本製のアメリカの外圧=vである事実を暴き出す。日本政府や企業は米シンクタンクに資金を提供し、情報や発言の機会を与え、日本のメディアが「米政府の意向」と、大々的に伝える。

 日本政府と既得権益層は、自らの望む政策推進のために「ワシントン拡声器」を最大限利用する。米国で市民外交を展開する著者が「日米『共犯関係』とも言うべき、いびつな関係」を批判し、対米従属を絶対視する姿勢の転換を呼びかける。現場に立脚した提言は傾聴に値する。(角川新書860円) 河野慎二

野坂昭如『農を棄てたこの国に明日はない』
 「言っておきたい、いざとなったら金ではない。食いものがある国が生き残るのだ」。戦中・戦後と飢えの時代を生きた無頼派≠フ野坂昭如が、心の底から発した最期のメッセージ。
 本書には、戦争の悲惨と平和への願いを訴え続けた彼が、新聞や雑誌などに執筆してきた農業や食糧問題に関するエッセイ・対談、手紙談議が収録されている。

 「日本人よ 飢えを忘れるな」「農業問題は、消費者がまず考えなければならない」「手紙談議 農を棄てたこの国に明日はない」と、3章立てになっている。
 とりわけ引きつけられるのが、亡くなる数日前まで書き続けた、農民作家、山下惣一氏との手紙談義である。
 「飽食とは農業蔑視の時代です」、「農業は『カネを稼ぐ手段』になったから衰退したのです」、「米離れが続けば、やがて日本人は飢えるだろう」―二人の談義は、日本農業の伝統と生産者たちの矜持を傷つけ、存亡の危機に追い込もうとする「安倍新農政」に対する痛烈な「警世の語」である。(家の光協会1500円) 栩木 誠
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2017年08月09日

《遠吠え》「アンメリカファースト」「北朝鮮ファースト」が行き着くところ、「リアルニュース」=田悟恒雄

 日本とは違って「会食作戦」などでは容易に手なずけられない米国メディアに手を焼くドナルド・トランプ氏、自分に批判的なメディアを「フェイクニュースだ!」なんて罵倒するだけでは飽き足らず、とうとう自分のFacebookで、自画自賛動画「リアルニュース」の配信を始めたそう。
 キャスターを務めるのは、元CNNの女性コメンテーター、カイリー・マッキーナニー。「ハフポスト」が伝えるところによると、約1分半の番組はこんな具合だったよう─。

 「マッキーナニーは『1週間のニュースをここニューヨークのトランプタワーからお伝えします』と話し始めた。4日に発表された雇用統計を紹介し『トランプ大統領は明らかに経済を正しい方向に戻している』と実績を讃えた。
 さらに『アメリカ国民の雇用を守るため』として移民を規制する法案を発表したことやベトナム戦争の功労者らを表彰したことなどを伝えた上で『これがリアルニュースです』と動画を締めくくった。
 ロシアの介入疑惑や、相次ぐ政府高官の辞任、就任前の言葉と矛盾する17日間もの夏休みを取ったことなど、トランプ政権に都合の悪い話題には一切触れなかった。」

 そりゃそうでしょう。「リアルニュース」だなんて言うけれど、ついつい、核実験やミサイル発射の成功を伝えるキムさんちの自画自賛ニュースを思い出してしまいます。
 「アメリカファースト」に倣って「日本ファーストの会」を立ち上げたみなさま、こんなことまでトランプさんにあやかるのは止めてくださいね。

(「零細出版人の遠吠え」08/09より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年08月08日

≪おすすめ本≫「緑陰図書─私のおすすめ」異常な「監視と格差」が進む日本の現実を衝く好著2冊=山田厚史(デモクラシータイムス同人)

 テロ等準備罪処罰法が7月11日から施行された。犯罪を実行する前の共謀や準備で罪に問われる。立証するには「怪しい奴」を監視するシステムが不可欠だ。通信傍受、監視カメラに声紋、顔識別、所在確認など大量のデータを権力が握り、普通の市民まで網にかける。それが監視社会の特徴だ。

 小笠原みどり『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』(毎日新聞出版)は、私たちへの警鐘である。2009年、来日したスノーデンは、米軍横田基地内にある国防総省の諜報機関・米国国家安全保障局(NSA)の契約社員として働いていた。その経験から、日本の監視システムや秘密保護法は米国のためにデザインしたものだという。
 日本政府や政治家は監視され、気付いても抗議することさえできない。スノーデンの証言は、「諜報活動による対米従属」の実態を、鮮明な姿で突き付けてくれた。私たちが置かれた状況や日米同盟の内実を知る一冊としてお勧めしたい。

 井手英策『18歳からの格差論』(東洋経済新報社)は、新自由主義とグローバル経済によって煽られた、格差の拡大を、財政を媒介にした所得の再配分で是正しようという提案である。
 日本では、将来不安への備えは、自己責任による貯蓄だといわれてきた。その仕組みが成り立つのは、所得拡大が可能な経済成長が前提である。しかし成長は鈍化し、貯蓄や雇用が脅かされる現状では、成立しない。

 著者は成長を前提としない「分かち合う経済」を提唱する。生まれ落ちた環境で貧富が決まるような、「運に支配された人生」ではなく、全ての人に尊厳のある暮らしを保証する、均質な行政サービスを政府の責任で提供すべきだと説く。
 だが最大の課題である「負担増」を、人々にどう求めるか。著者は、ユニバーサリズムという財政の仕組みを提案する。
 タイトルにあるように18歳の素人でも分かる平易な財政論だ。行き詰まりが見えたアベノミクスへの対案でもある。政界再編の一つの軸となるのではないか。
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2017年08月06日

【今週の風考計】8.6─日本列島に響くカネの音と踊りの熱気。祭り好きの熱い10日間。

夏の祭りが熱気を拡散しながら、日本列島を南下している。まず東北3大祭りが、2日の青森ねぶた祭り、3日の秋田竿灯まつり、7日の仙台七夕祭と続き、夏の夜空をいろどった。そして地上では山形花笠まつりだ。「ヤッショ マカショ」の掛け声に合わせて踊りのパレードが繰り広げられている。

11日からは江戸三大祭りのひとつ、水かけ「深川八幡祭り」。120基の町神輿が練り歩く。中部地方では、13日から郡上おどり。浴衣姿の数万人が、次々に演奏される囃子歌に合わせ、身振り手振りを変えながら明け方まで踊り抜く。オッと忘れちゃいけない。よさこい祭りが9日から始まる。鮮やかなメイクと衣装の個性豊かな2万人の踊り子が鳴子を鳴らし、高知の夏を盛りあげる。そして12日からは「踊る阿呆に見る阿呆…」の阿波踊り、ヤットサーヤットサーという掛け声とともに、徳島一円が踊り一色に染まる。

賑やかさとは無縁な、古式ゆかしい小さな島の盆踊りもいい。岡山県笠岡港の沖合16kmの瀬戸内海に浮かぶ白石島の「白石踊り」、13日から3日間、ひとつの音頭に合わせて、女性が紫の頭巾をかぶり金と銀の扇子を翻しながら踊るなど、男踊も加え十数種類ものバリエーションを舞う。さて最後は14日から始まる、長崎県平戸市に伝わる念仏踊り「平戸のジャンガラ」。造花で飾った華やかな菅笠をかぶり、浴衣姿の腰に小さな太鼓を付けて踊る。豊作と雨乞いを祈願する伝統行事であり、かつ先祖供養の盆踊りも兼ねる。おはやしのカネの音・ジヤンに加え、太鼓の音・グワラに由来するといわれる。とにかく祭り好きには熱い1週間だ。(2017/8/6)
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2017年08月04日

《焦点》 新聞社の「押し紙」問題を追及して20年に及ぶジャーナリストの黒薮哲哉さん=橋詰雅博

 フリージャーナリストの黒薮哲哉さん(59)は、販売店が注文した部数を大きく超えて新聞社が搬入する、読まれることのない新聞紙、いわゆる「押し紙」問題を追及して20年に及ぶ。この押し紙を含む新聞経営の諸問題を扱った7冊目の著書「新聞の凋落と『押し紙』」(花伝社)を5月末に出版した。新聞社を取材対象とした週刊業界紙の記者時代に押し紙の実態を知ったのが取材のきっかけ。近著では日本新聞協会が押し紙を隠すため姑息(こそく)な手段を使ったことを問題にしている。
 「日本新聞協会の販売委員会とも言える『地区新聞公正取引協議会』は、配達中に新聞が雨などで破損したときに使われる予備紙の割合を搬入部数の2%と定めていた。公正取引委員会も販売店の注文部数は、予備紙を加えたものと定義しています。それをオーバーした部数は押し紙になります。公取委は2009年に新聞特殊指定改訂に際し、予備紙を含む注文部数以外で新聞を買い取らせることはできないとしました。目的は押し紙の取り締まりでした。ところが改訂版施行前に、新聞協会は予備紙2%ルールを廃止した。ルールがあると、2%を超える予備紙は押し紙になるが、これがなければ、残紙はすべて予備紙であり、押し紙ではないという詭弁(きべん)が成り立つ。改訂版施行後、残紙を予備紙と呼んでいる新聞社もある。販売店では予備紙が搬入部数の20%から30%にもなっている」
 3月末に国会で35年ぶりに押し紙問題が取り上げられたが、「安倍晋三内閣はメディアをコントロールする材料に使うため問題を放置している」と批判する。

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≪おすすめ本≫「緑陰図書─私のおすすめ」総がかり行動─「同円多心」の運動論に学ぶ=清水雅彦(日体大教授・憲法学)

 今年の5月3日に、安倍首相は憲法9条に自衛隊の存在を明記するという改憲案を提示し、7月の東京都議選で自民党が歴史的な大敗を喫しても、この改憲に意欲を示している。
改憲勢力が国会内で3分の2を占めている間に、なんとか改憲をしたいのであろう。

 従来、改憲派は2項削除・改正を主張してきたので、「加憲」論は後退といえる。これは平和運動の成果でもある。
「戦争法」は強引に制定されたが、この間の「戦争法」反対運動を牽引してきたのが、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」である。

 この構成主要3団体の一つ、「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」に属する高田健さんと菱山南帆子さんが、それぞれ単著を出版した。
 高田健『2015年安保、総がかり行動─大勢の市民、学生もママたちも学者も街に出た。』(梨の木舎)は、まさに運動の当事者による記録として、貴重な一冊である。
マスコミはシールズについては詳しく報じても、総がかり行動とは何かについて、あまり報じていない。連合系労組と全労連系労組が総がかり行動で共に運動するようになったことで、野党共闘も実現した。この接着剤の役割を果たした一人が「同円多心」の運動論を唱える高田さんだ。

 菱山南帆子『嵐を呼ぶ少女とよばれて−市民運動という生きかた』(はるか書房)は、この総がかり行動だけでなく、小学生の時の授業ボイコットや「君が代」拒否など、これまでの自身の「闘い」をまとめたものである。本書を読むと、こういう子どもがいてもいいと、大人にも考えさせてくれる。

 最後に、市民と野党の共闘で、安倍改憲論に対抗する一つの理論を提供するのが、渡辺治・福祉国家構想研究会編『日米安保と戦争法に代わる選択肢−憲法を実現する平和の構想』(大月書店)である。日米安保と自衛隊をどう変えていくかの道筋を、はっきり示している。
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2017年08月02日

《遠吠え》=アベ政権自家薬籠中の隠蔽体質は、チェルノブイリの「2重の棺桶」のようなもの=田悟恒雄

 1986年4月のチェルノブイリ原発事故では、爆発した4号炉にホウ素や鉛を投下し、半年かけてコンクリートで覆って放射能を閉じ込めます。これが「石棺」。
 あれから30年を経て、いよいよそれも役に立たなくなり、「石棺」の上を、高さ108m、幅257m、奥行き150mの巨大なアーチ型シェルターで覆います。いわば「2重の棺桶」というわけ。

 この間誰の目にも明らかになった「アベ政権の隠蔽体質」も、これとまったく同じこと─。

 政権にとって都合の悪いことは、何が何でも隠し通します。以前に存在していたことが明らかな文書ですら、「調査の結果、確認できなかった」などとして、始めから「なかったもの」にしてしまいます。これが「アベ政権自家薬籠中の隠蔽体質」。
 これを、防衛省の南スーダン国連PKO派遣部隊日報問題で見てみましょう─。

 1)まずは、現地で「戦闘」があったことを隠蔽するため、「日報」そのものを隠そうとします。その存在がバレ、そこに「戦闘」の語が頻出することが明るみに出てしまうと、稲田朋美前防衛相は、「法的意味での戦闘行為は発生していない」などと詭弁を弄します。
 2)防衛省による「組織的隠蔽」がいよいよ隠しきれなくなり、他人事のように「特別防衛監察」を指示するものの、実は、肝心の「隠蔽疑惑の渦中にある当人」は対象外にして、自らの周囲に煙幕を張っただけ。
 3)そして儀仗兵に送られての「辞任」。在任中は「国会から呼ばれれば出席する」としていた衆院安全保障委員会の閉会中審査にも、ぺろっと舌を出して出ないことに。

 「大臣を辞任し、一番重い責任の取り方をした」(自民党・竹下亘国会対策委員長)だなんて、きわめて悪質な冗談としか思えません。
 2重3重に「隠蔽」を図る「アベ政治」には、もはや我慢の限界!

(「零細出版人の遠吠え」08/02より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年07月31日

【今週の風考計】7.30─またもや沖縄の民意を欺く「普天間返還」の隠された条件

「基地を造ったら沖縄が戦場になる!」─26日の故大田昌秀元知事の県民葬で、安倍首相に訴える女性の声が会場に響いた。だが首相は「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と述べるだけ。かつ米軍普天間基地の返還を保障するには、「辺野古移設が唯一の解決」と強弁し続ける。

7月31日、普天間基地(約481ヘクタール)の東側4ヘクタールの土地が返還される。わずか120分の1足らず。あと120分の119は、いつ返るのか。辞職した稲田朋美・前防衛相は、辺野古新基地が完成しても、緊急時には米軍が沖縄の民間空港を使う。それができなければ普天間基地は返還されないと明言した。あまりにもひどすぎないか。辺野古新基地は滑走路が短いので、1.7倍も長い民間の那覇空港を米軍が使う、それが普天間の「返還条件」だという。何も基地負担の軽減になっていないじゃないか。普天間基地が残るのであれば、辺野古の建設工事を強行する理由は、一つもないじゃないか。

今も米軍飛行訓練は、沖縄各基地で夜間・日中を問わず激しさ増す。オスプレイの「つりさげ訓練」に始まり、2時間で数十回の旋回・離着陸、騒音や低周波音に安全と睡眠が脅かされている。政府は飛行訓練差し止めに向け、「日米合同委員会」へ提起し、在日米軍専用施設の7割を小さな沖縄に押し付ける非合理を訴える、それが先じゃないか。8月3日の内閣改造、支持率急落を挽回する目くらましには、「こんな人たち」といわれた、われわれ国民はだまされないぞ! (2017/7/30)
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2017年07月29日

≪おすすめ本≫ 奥野修司『魂でもいいから、そばにいて』─〈3・11〉後のぬくもりに満ちた不思議な体験を集める=雨宮処凛(作家・活動家)

 東日本大震災から6回目の夏がやって来る。
 奥野修司『魂でもいいから、そばにいて─3・11後の霊体験を聞く』(新潮社)は、被災地の不思議な体験を集めた一冊。

 高校時代に待ち合わせていた場所にいつも立っている、津波で流されたはずの友人。震災から3ヶ月後、やっと兄の遺体が発見され、死亡届を書いている時に兄の壊れた携帯から届いた「ありがとう」というメール。行方不明の父が遺体で発見される前夜、同時刻にドンドンと何度も叩かれた家族や親戚の家のドア。
 多くの人が震災から2年頃までは、不思議な体験について「話せなかった」と語る。が、3年を過ぎた頃から、語られ始めるようになる。妻と娘を亡くした男性は、「愛する人がいない世界は想像を絶する地獄です」と話す。が、死にたいと思った時に、不思議な体験をするのだ。そんな経験がなかったら、生きられなかったかもしれないと彼は言う。
 だからなのか、本書で綴られる不思議な体験は、ぬくもりに満ちている。「やっと会えた」という再会や「見守ってくれている」という確信を持つ物語のなんと多いことか。

 そんなふうに「魂でも会いたい」と願う人がいる一方で、生きている人間の日常は時にくだらなく、馬鹿馬鹿しいことに満ちている。それを教えてくれるのが末井昭『結婚』(平凡社)。「読んだら絶対結婚したくなくなる本だったら書きたい」という思いから、もっとも身近な他人との生活が綴られる。
 何しろ、「食欲と性欲だけで生きている下等動物のような」父親と、近所の若い男性と不倫した果てにダイナマイト心中した母親を持つ末井氏である。最初の結婚生活から離婚に至る経緯、そして再婚してからの暮らしが赤裸々に綴られる。人間ってどうしようもない。だからこそ、愛おしい。
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2017年07月27日

《遠吠え》「1月20日」にしがみつく"危険な賭け"(加計)に敗れたところで「詰みっ!」という話=田悟恒雄

 だいぶ前に、『平気でうそをつく人たち』という本が評判になったことがあります。アベ首相以下、先だっての衆参両院閉会中審査で政府側に立って口裏合わせた面々は、そんな類いの人たちってわけでしょう。
 その前頭筆頭アベノ強シンゾー氏なぞ、「獣医学部新設の提案者は今治市であり、加計学園ではない。事業主体が誰か、今治市から説明はなかった」などとして、加計学園の獣医学部新設計画を先刻承知だったことを隠蔽するために、涙ぐましいあがきを見せています。
 だいたい当の今治市の議会議事録には、菅良二市長のこんな発言が出てくるそうじゃないですか(日刊ゲンダイDIGITAL)? しかもコレ、今年の「1月20日」なんて話じゃありません。何と、その半年も前のことなのです(2016年6月)。

 「昨年〔2015年〕、構造改革特区と国家戦略特区の提案が一本化されたため、6月に国家戦略特区として、国際水準の獣医学教育特区の提案を愛媛県と共同で行い(略)本年1月、正式に国家戦略特区の指定と区域方針が決定された」「国家戦略特区に関しましては、安倍総理の強いリーダーシップにより進められており、今治市が指定を受けたことは非常に意義がある」

 では、アベ氏は何でそんな「バレバレのウソ」をついてまで、「1月20日」を死守しようとするのでしょう? 元東京地検特捜部の弁護士・郷原信郎 さんが、「首相のよんどころない事情」について、こう解説してくれます─。

 「昨年9月9日の国家戦略特区諮問会議の時点で、安倍首相が、加計学園の特区申請を認識していたとすると、そこでの議長の安倍首相の指示が、加計学園の獣医学部新設に便宜を図ったものであることを、事実上認めざるを得なくなるからだ」

 そうです(「郷原信郎が斬る」7月25日)。
 郷原さんはこのことを「"危険な賭け"に出たことで『詰将棋』に陥った安倍首相」と説いています。なーるほど。
 ってことは、この「賭け」(=加計)に敗れたところで「詰みっ!」(万事休す)ってわけですね?

(「零細出版人の遠吠え」07/27より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年07月26日

《焦点》 「豊洲移転は、最速で19年5月」、併存無理―東京中央卸売市場組合長の中澤誠さん語る=橋詰雅博

 東京都議会選挙で支持勢力の圧勝を受けて小池百合子都知事は、豊洲に市場を移し、築地を5年後に再開発する基本方針が「信任を得た」と選挙後の記者会見で述べた。両市場の併存は本当に実現できるのか。築地市場の現在地再整備を訴え続ける東京中央市場労働組合委員長の中澤誠さん(52)に、本紙4月25日号でのインタビューに続き再び築地市場移転問題で聞いた。
☆   ☆
――小池都知事の併存方針をどう思うか。
 まず都議会選挙で自民党が公約に掲げた豊洲市場への早期移転は、自民党を惨敗に追い込んだ都民が拒否した。これはよかった。併存方針は移転推進派と反対派の両方にいい顔をしたどっちつかずの案。マスコミ関係者によると、知事は築地再整備案あるいは豊洲に一時移転後に再び戻る案に傾いていたが、知事が代表を務めた地域政党・都民ファーストの会と選挙協力した公明党の了承を得られなかったそうだ。内容が整理できないままああいう基本方針を告示直前に発表せざるを得なかったという話を聞いた。

豊洲無害化困難

――来年5月をメドに豊洲に移転させると知事は言っているが、本当にできるのか。
 専門家会議は豊洲の土壌汚染を無害化するための追加対策として2つ挙げた。一つ目は水位が一向に下がらない地下水を下げるため揚水するポンプの増設です。当初は「水位を海抜1・8bで管理する」が目標でしたが、場所によっては海抜4bに達していて、目標を1度も実現していない。原因がわからないままポンプだけ増設しても水位が下がる保障はない。地層に穴が空いている可能性がある。原因究明が先ですよ。
 水銀ガス濃度の上昇を抑えるため地下空間の床面にコンクリートを敷くが2つ目の対策だ。一級建築士ら専門家の話を総合すると、現在の建物自体は耐震基準内だが、地層に30数bまで打ち込んだ杭にコンクリートをくっつけると重くなり耐震基準を満たすことができない。つまり違法建築になる。杭にくっつけずにコンクリートを置くだけの形になるが、どういう風に施工するのかが問題。ゼネコンなどが知恵を絞るのだろうが、大丈夫なのかと心配になる。こうした問題を解決しなければ豊洲の土壌汚染の無害化は達成できない。来年5月移転に向けたハードルはとても高い。

基本方針撤回を

――では移転はどうなるのか。
 選挙後に小池知事と業界6団体が話し合ったとき、移転推進派の築地市場協会の伊藤裕康会長も、同じく推進派の築地東京青果物商業協同組合の泉未紀夫理事長も、来年5月の移転はムリと言っている。土壌汚染対策などがある程度メドが立たないと、トラックを集めるなど本格的な準備に入れません。私は最速でも移転は再来年の5月、すなわち2019年5月と見ています。1年後に東京オリンピック・パラリンピックが控えている。五輪のため築地の跡地に環状2号を通す、選手らを運ぶバスなどの駐車場として跡地を活用する計画だが、実現は厳しい。このままでは五輪への影響は必至です。五輪と築地市場移転は切り離して考えるべきだ。知事選は3年後だし、ここで選挙ファーストの提案だったと認めて基本方針を撤回し、計画を練り直した方がいい。

説明責任果さず

――そもそも併存方針は現実的か。
 現場から出てきた話ではなく、うまくいかないだろう。80年代、手狭になった築地の機能を大井市場に分散させる案が出たが、現在の取扱数量はピークの半分。分散させる必要性はなく、分散となるとコストが嵩みメリットがない。経済の合理性を追求する資本主義のワクから外れる行為。両市場を統合するのならわかるが、分散する話が出てくるのはおかしい。年間100億円の赤字が出て、ムダに広く物流が非効率でコストが大幅に増える豊洲よりも、営業しながらリフォームできる築地の方が合理的です。豊洲移転によって、人件費や物流コストがどれだけ増えるのかがいまだに不明だし、買いにきてくれる人が増えるのかもわかない。むしろ食の安心・安全が揺らぐ豊洲市場を嫌いお客が減ってしまう可能性が高い。こうした不安要因を抱える一方で、大きな投資を強いられるから鮮魚を扱う仲卸を中心とした事業者の多くは移転に反対です。
――中澤さんらはこの先、どんな活動をしていくのか。
 小池知事は基本方針を説明した先月の記者会見では、記者との質疑をわずか5分で打ち切った。説明責任を果たしていない。石原慎太郎元知事のように頭ごなしで基本方針を強引に進めるのか、それともさまざまな人の意見を聞いて合意形成し大きく基本方針を転換させるのかを見極めたい。知事の姿勢を見てから次の行動を考えます。

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2017年07月25日

《焦点》 現実味を帯びてきた国民投票にいくら金がかかるのか=橋詰雅博

 不信感高まる「森友」「加計」両疑惑、自民党が惨敗した都議選、急落する内閣支持率、盛り上がる政権退陣を求めるデモと、安倍首相への風当たりが激しくなってきた。今まで国民の声を無視してきたしっぺ返しをくらっているが、ただし憲法九条を中心とした改憲の意欲は衰えていない。自民党は11月上旬までに改憲原案をまとめ、臨時国会に提出する予定。18年6月に改憲案を発議し、国民に改憲の是非を問う国民投票を実施しようとしている。
 スケジュール通りに行くかどうかはともかく、現実味を帯びてきた
国民投票はお金がどのくらいかかるのだろうか。
 10年前の2007年、衆院法制局による試算では、経費は約850億円。内訳は、投票所・開票所の設営・賃貸料が493億円、不在者投票や投票所入場券の郵送費などが224億円、公報発行費66億円、各政党に割り当てられる無料広告肩代わり費18億3000万円などの順だ。 
ところで国民投票の場合、発議後、投票前14日間の有料テレビCM禁止を除く期間は、改憲派と反対派は自由に各メディアに広告を出せる。広告費の上限は国民投票法で定められていない。宣伝効果が大きいテレビCMをメインとしたこの費用は―。「国民投票のルール改善を考え求める会」のメンバーで著述業(元博報堂社員)の本間龍さんがこう言う。
 「衆参の両選挙で各政党などがメディアに投じる広告費は約500億円。国民投票では発議後、60日から180日以内に投票が実施される。運動期間によるが、少なくとも500億円の4〜5倍、場合によっては10倍以上の広告費が使われる。資金が豊富な改憲派は絶対有利。だから国民投票のテレビCMを法規制したいが、民放の業界団体は反対。その理由はこの特需≠当て込んでいるからです」
 税金で賄われる経費と、この巨額な広告宣伝費を合わせると膨大な金が国民投票で使われる。国民投票の実施は必要なのか。


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2017年07月23日

≪メディア時評≫ 「加計ありき」の裏に「日本会議」あり!

 「国民なめるな こんな人たち」にと、逆襲の痛罵が投げつけられる安倍政権。支持率29.2%と急落し、土壇場に追いこまれた。
 衆参両院での閉会中審査でも、獣医学部の新設に「加計ありき」を慫慂した官邸の圧力や要請、山本地方創生相の発言の経緯、さらには稲田防衛相の失言や日報隠しへの虚偽答弁など、どう真摯に答えるのか。言いわけ、居直り、記憶にないを連発するのは目に見えている。

 「森友」疑惑に続き、そこに見え隠れするのは「日本会議」につながる面々だ。安倍首相の「腹心の友」である加計孝太郎理事長は、“日本会議の別動隊”といわれる、育鵬社の教科書発行団体「教科書改善の会」の賛同者に名を連ねている。現に系列の岡山理科大付属中では、歴史修正主義的な育鵬社の教科書を歴史と公民で使っている。
 獣医学部の新設を推進してきた今治市長・菅良二氏と前愛媛県知事・加戸守行氏は、安倍首相と同じく「日本会議」の活動に参加し、憲法改正を訴えてきた。

 この「日本会議」とは、天皇を元首とする戦前回帰に向け、憲法改悪を目指すウルトラ右翼団体だ。この5月3日、「日本会議」系の憲法集会で、安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記し、2020年までに改憲を行うと明言。まさに同会議の改憲案そのものだ。

 「戦後最悪の政権」といわれる「安倍一強」政権、3年前の総選挙で自民党は290議席を得たが比例得票率は33%でしかない。ひきかえ野党4党は合計で98議席、しかし比例得票率は34%と自民党を上回る。
 民意を歪める小選挙区制の弊害は明白だが、それでも比例得票率の数字から見て、今の安倍政権そのものが、「架空の多数」でしかないのは間違いない。
【今週の風考計】7.23より
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2017年07月19日

《遠吠え》自らを獄に繋いだ人々の職業と人格を尊重する劉暁波さんに「意思のオプティミスト」を見た!=田悟恒雄

 「国家政権転覆扇動罪」のかどで長らく中国当局に拘禁されていたノーベル平和賞作家で人権活動家の劉暁波さんが、囚われの身のまま肝臓がんで亡くなりました。ご冥福をお祈りいたします。
 2009年12月、劉さんが裁判審理に向けて記した陳述書「私には敵はいない:私の最後の陳述」が、「HuffPost Japan」に掲載されていたので、読ませていただきました。これは2010年12月、主役不在のまま行なわれたノーベル平和賞授賞式でも代読されたそうで、読む者の心を強く打つ文章です。
 「私には敵はおらず、憎しみの気持ちもない」として、彼を監視、逮捕し、尋問した警察官、起訴した検察官、判決を下した裁判官に対しても、その職業と人格を尊重する姿勢には、ある種、宗教的な神々しさすら感じさせます。
 そして、「高い塀を越え、鉄格子を貫く太陽の光」たる妻・劉霞さんとの変わることのない愛もさることながら、祖国・中国が「表現の自由がある場所となることを。全ての国民の発言が同等に扱われるようになることを」強く希う劉暁波さんの以下の文章には、ファシスト監獄に囚われながら、「知のペシミスト」であり「意思のオプティミスト」たらんとしたアントニオ・グラムシを思い起こさざるをえません─。

 「…そこでは異なる価値観、思想、信仰、政治的見解が互いに競い合い、平和的に共存できる。多数意見と少数意見が平等に保障され、特に権力者と異なる政治的見解も、十分に尊重され、保護される。ここではあらゆる政治的見解が太陽の光の下で民衆に選ばれ、全ての国民が何も恐れず、政治的意見を発表し、異なる見解によって迫害を受けたりしない。
 私は望んでいる。私が中国で綿々と続いてきた「文字の獄〔言論弾圧のこと〕」の最後の犠牲者となることを。そして今後、言論を理由に罪に問われる人が二度と現れないことを。
 表現の自由は人権の基礎であり、人間性の根源、真理の母である。言論の自由を封殺することは、人権を踏みにじり、人間らしさを閉じ込め、真理を抑圧することなのだ。
 憲法によって付与された言論の自由を実践するためには、公民としての社会的責任を果たさねばならない。私がしてきたあらゆることは罪ではない。たとえ罪に問われても、恨みはない。
皆さんに感謝を。」

(「零細出版人の遠吠え」07/18より。 http://www.liberta-s.com/
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≪おすすめ本≫三山 喬『国権と島と涙─沖縄の抗う民意を探る』「沖縄の保守」の葛藤と「オール沖縄」の必然、その背景を探る=菅原正伯

 俳優・菅原文太さんの足跡をたどる週刊誌の連載のために、著者は19年ぶりに沖縄を訪問し、「沖縄の変貌」を目の当たりにする。翁長知事誕生と沖縄保守のあり方への関心から、以来、著者は2年近く、沖縄の「地殻変動」の背景を訪ね歩いた。そのルポが本書である。

 描かれているのは、新基地建設を進める本土への沖縄の人々の複雑な思いである。「沖縄差別だ」と漏らす居酒屋の常連客もいれば、本土からのネトウヨ的なバッシングに涙ぐむ<シールズ琉球>の女性もいる。
 鳩山首相の「最低でも県外」発言は、県民意識を覚醒させ、沖縄の自立を促す「自己決定権」「アイデンティティー」が新しいキーワードとなった。自民党県連も「県外移設」を掲げ、安倍政権の強権的な新基地路線との矛盾が、抜き差しならないものになった。
 石破茂幹事長(当時)と沖縄選出の5人の衆参議員による会見がおこなわれ、沖縄県連の方針を転換し、事実上、辺野古移設を容認することが公表された。沖縄では「平成の琉球処分」といわれる党本部への屈服であった。

 ルポは、県議会で新基地反対を求める「建白書」が全会一致で採択され、島ぐるみ会議による「オール沖縄」が結成されたことが、「保守分裂」を招いた経過を綿密な取材で明らかにしている。
保守陣営の2つの流れのうち、翁長氏らは島ぐるみ会議に残り、自民党側は離脱した。
 離脱した側の要人に繰り返し取材したが、自民党側の大義≠ヘ、ついぞ明確に語られることはなかった、という。

(朝日新聞出版1500円)
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2017年07月14日

《出版界の動き》6月─7月 書店の新規オープンと多角化

●丸善ジュンク堂書店が8月10日、東京・池袋に都内最大級の文具専門店をオープン。売場面積400坪。文具は地下1階と地上2階、ブック&ステーショナリーカフェ「ほんのひととき」を地上1・2階で展開する。本はほとんど置かない。

●今年5月期の月刊誌・返品率51%(前年同月比+3.8%)。1950年の調査開始以来、初めて50%を超えた。ムック・コミックスの大幅な返品増が要因。

●有隣堂が立川の「ららぽーと立川立飛」に、売場面積181坪の53店舗目をオープン。文具、雑貨の併売に加え、カフェ「STORY CAFE」や児童書コーナー「Do! Kids」もつくる。

●アマゾンの「バックオーダー発注」─取次に在庫がない本の取り寄せサービスが、6月末で全面停止。アマゾンは「e託販売サービス」など、出版各社に直接取引への参加を働きかけている。「e託販売」は出版社が年間9000円の登録料を払って契約すると、アマゾンが一定の在庫を持って販売し、売れた金額の60%を翌月に支払う。6月までに全点登録した場合、正味は65%にするという。

●『週刊東洋経済』(6/24)の特集「アマゾン膨張」が注目されている。ヤマト運輸との問題、地域限定配達業者の「デリバリープロバイダ」などを追った内容。2016年のアマゾン売上げ1兆2千億円、毎年2割を超えるペースで増収を続け、全国8都道府県20ヵ所の物流センターを駆使する。出版物の年間売上高1500億円、日本最大の書店となっている。800万人に及ぶアマゾン・プライム会員(年会費3900円)を擁し、雑誌や書籍など全てアマゾンによる購読者が急増。このサービスはヤマト運輸に強いる最低運賃に加え、消費税を納めないアマゾン優遇税制に支えられている。
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2017年07月13日

《焦点》 沖縄へのデマや誤解を解く―沖縄タイムス東京支社報道部長の西江昭吾さん=橋詰雅博

 沖縄タイムス社の西江昭吾さん(42)は、この4月に東京支社報道部長として赴任。実は西江さん、東京支社勤務は2度目で、最初は08年から4年間、防衛省などを担当。09年8月の民主党(現民進党)政権誕生から12年12月の崩壊までを目の当たりにした。那覇市の本社に戻った後、在沖米軍基地などをメインに記者活動をした。沖縄タイムス社編集局による編著「これってホント!?誤解だらけの沖縄基地」(高文研)がこの3月に出版された。昨年1月から8月の沖縄タイムスの連載記事「誤解だらけの沖縄基地」を再構成したもので、沖縄の米軍基地問題が明快にわかると評判を呼んでいる。
 「連載記事に取り組むきっかけは、作家・百田尚樹さんの『普天間飛行場は田んぼの中に出来た』とか『基地地主は年収何千万円で、六本木ヒルズに住んでいる』などの発言でした。沖縄の米軍基地をめぐるこうしたデマや誤解を解くため毎回1つのテーマを設定して、具体的なデータや文献などよって反証、38回連載した。本は沖縄情報に接する機会が少ない県外向けを意識して出しました。反応はよく、出版社などに問い合わせが続々来ていて、重版になっています。また、NHK番組『クローズアップ現代+』(5月15日に放送)に本が紹介され、石川達也編集局長がコメントしました」
 沖縄ヘイトデマ放送した東京MXテレビの「ニュース女子」について「地上波であのような内容で放送したのは、大きな問題だ。ネット空間での誹謗中傷と併せ、フェイクニュースへの対処が課題」と指摘した。
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2017年07月12日

《遠吠え》閉会中審査をやり過ごし、最後の「外遊」日程を繰り上げた首相の目先に揺らぐシンキロー=田悟恒雄

 政治家の「外遊」という言葉には前々から違和感を抱いていたのですが、今回の首相訪欧の顛末を見て、「ああやっぱり "外遊" ってアリなんだぁ」と思い直しました。
 今月7-8日にハンブルクで開かれたG20サミットの後、我らが宰相は、九州北部豪雨での激甚被害をしり目に、いまとくに喫緊の課題があるわけでもない北欧3カ国、スウェーデン、フィンランド、デンマークへと(おそらく涼みに?)行っていました。これぞ「れっきとした外遊」と言うべきか、いえいえ「バカのバカンス」と言った方がよろしいかもしれません。
 ところが世間様から批判が高まり始めた9日夜になって急遽、最後に予定されていたエストニア訪問を取りやめ、11日に帰国すると発表しました。
 「九州北部豪雨で被害が出ているため」なんて言っていましたが、もしも本気で被災地の心配をしているのなら、G20閉幕の8日に出発し、9日には日本に帰っていることもできたはず。だけど、そうはしませんでした。そうはできない、何かよんどころない事情があったのでしょう。
 何せ、どこまでも姑息な男の考えることです。誰しも思いつくように、9日に帰ってしまえば、せっかく開催日をぶつけて、まんまと逃げ出した10日の国会閉会中審査に出なければならなくなってしまうからです。そこで、閉会中審査の終わった「11日に帰国」という線が出てきたわけ。
 とんだとばっちりを受けたのが小国エストニアです。同国駐日大使館の公式ツイッターが、首相の前倒し帰国を報じるNHKニュースについて以下のようにツイートした一般ユーザーを、異例のリツイートしたそうです(「リテラ」)─。

 「NHK『安倍が被災地思い予定繰り上げ帰国』 9日夜7時・8時45分報じる  3か国中、最後のエストニアだけ削るという 北欧2国も削っちゃうと、閉会中審査出られない理由がなくなる」

 2001年、ゴルフ場でハワイ沖での「えひめ丸事故」の報を受けながらプレイを続け、世論の猛批判を浴びて辞任を余儀なくされた森喜朗(シンキロー)元首相の故事を、ついつい思い出してしまいました。
 「外交で失点回復」の目論見どころか、これでまた支持率が、支持率が…、あーあ。

(「零細出版人の遠吠え」07/12より。 http://www.liberta-s.com/
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≪メディア時評≫「都民ファーストの会」代表・野田数氏の活動履歴に要注意!

 「都民ファーストの会」は、何をめざすのか。会を取り仕切る野田数・代表は、「日本国憲法破棄、大日本帝国憲法の復活を提唱していた御仁。今も変わりはないのか…、チェックする必要がある」(橋下徹‏のツイッターより)─まさに、その通り。

 検証してみよう。野田氏は7年前に「日本維新の会」公認で都議選に出馬し当選。都議会では「東京維新の会」を立ち上げ、偏向右翼ウルトラ請願に賛同した人物。
 その請願とは「『我々臣民としては、国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄』すべきであり、憲法無効論に基づく大日本帝国憲法の復活確認を求める」という内容。
 これに賛成した人物が、いまは「都民ファーストの会」代表を務め、小池百合子都知事が、もっとも信頼する影法師として、都議会最大会派55人の議員を、がっちり統率しているのだ。

 だからこそ「都民ファースト」の新人議員は、本部を通さないと取材に応じられない事態に陥り、自由に発言できない不健全な事態が続く。メディアからも疑問が数多く出てきている。
 とりわけ都知事の特別秘書が代表に就く、当事者二人で決めたやり方は、民主的な手続きといえるのか。情報公開をうたいながらもブラックボックス化している実態は、問いただされねばならない。

 9月に開催の都議会定例会では、議長人事や豊洲移転問題、東京五輪の経費負担など、すぐにも対応・解決しなければならぬ緊急テーマが目白押しだ。国政進出に向け「国民ファースト」の野望どころじゃない。

【今週の風考計】7.9より
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2017年07月11日

≪おすすめ本≫雨宮処凛『自己責任社会の歩き方─生きるに値する世界のために』“生きづらさを生きざるを得ない”この弱者を丸ごと肯定する社会へ=鈴木耕(編集者)

 徹底的に弱者に寄り添うという姿勢を、これほど鮮明にしている本も珍しい。それは、著者自身が弱者としての自己を必死に肯定し、そこからの生き方を模索してきたからに他ならない。
 副題の「生きるに値する世界のために」とは、強者が弱者に「自己責任論」を押し付ける今の世の中の仕組みを変えたいという、著者の切ないほどの宣言なのだ。

 著者の鮮烈なデビュー作『生き地獄天国』(2000年・太田出版)からすでに17年。名著『生きさせろ!』(2007年・同)からでも10年が過ぎた。
 だが「生きづらい世の中」は変わらないどころか、安倍政権下でますます息苦しくなっている。懸命に抗う著者は“生きづらさを生きざるを得ない”弱者に、とことん伴走する。

 相模原事件とその背景にある石原慎太郎の唾棄すべき差別意識。生活保護への行政サイドからのバッシング、過労死に追い込まれる若者たち、秋葉原事件の切なさ。働く権利さえ低賃金によって否定される若者たちとの連帯「エキタス」の活動。「家賃を下げろデモ」。
 さらに著者の目はアジアにも飛ぶ。韓国の兵役拒否者との交流や台湾や香港と結ぶ“まぬけな大作戦”など、独特のユーモア感には癒される。

 ここに通底するのは「自己責任なんかないんだ!」─生きることを丸ごと肯定することが、「生きるに値する世界」なのだと。本書はウェブサイト「マガジン9」(http://maga9.jp/)の連載をまとめたもの。今も連載中、アクセスしてほしい。
(七つ森書館1500円)
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2017年07月07日

《遠吠え》「個の確立」のできない日本社会は、あるべき市民社会の入口に立って戸惑っている=田悟恒雄

 けさの朝日新聞〈耕論〉は、今年の流行語大賞の有力候補「忖度」に焦点を当て、ユニークなお三方にインタビューしています(「暴走する忖度」)。
 なかでも強く共感を覚えたのは、国際基督教大学のドイツ人政治学者ヴィルヘルム・フォッセさんのお話でした(「先回りした服従、悲劇生む」)。
 よく「忖度」というのは外国語に訳しにくい言葉だと言われますが、フォッセさんは、ドイツ語に も似たような言葉 "vorauseilender Geholsam"(「先回りした服従」)がある、と指摘します。
 ドイツでは、「周囲に波風を立てないよい隣人で、異議を唱えようとしない態度が、結果として非人道的な悲劇を生む土壌になった」というヒトラー時代の苦い教訓から、「疑問を公的に発する成熟した市民になることが重要だという考えが共有され」るようになった、と言うのです。
 しかも、そのような意識転換が1968年の世界的な「若者の叛乱」をきっかけとしていたというのは、それ自体、とても興味深いことです。でも、その頃同様の社会的体験を経たはずのこの国では、その後も「先回りした服従」がしぶとく生き永らえているというのは、なぜでしょう?
 いささか古めかしくはなりますが、ジャーナリストの原寿雄さんがたいへん興味深いデータを紹介しています(『市民社会とメディア』、p. 33)─。

 「1997年11月のNHK世論調査『放送の役割』は、人々の公共性意識について『生活信条』を庶民的、市民的、私民的の三つに分類して調査しているが、『市民的意識』を持つものは回答者2543人中の2割弱にとどまっている。『庶民的意識』は『周囲の人たちとなごやかな生活を送り、世間に迷惑をかけないことや義理人情を大切にするように心がけている』で57.1%、『市民的意識』は『社会はこうあるべきだという自分なりの考え方を持ち、みんなと話し合いながら、世の中をよくするように心がけている』で17.7%、『私民的意識』は『自分の生活や楽しみを充実させることを第1に考え、他の人の生活や考え方に深く立ち入らないように心がけている』で22.0%となっている(『放送研究と調査』1998年5月号)。」

 この国の人々の意識は、おそらくその後もさほど変わっていないのかもしれません。「個の確立」のできない日本社会は、依然として「あるべき市民社会の入口に立って戸惑っている」(同書、p. 30)というわけです。

(「零細出版人の遠吠え」07/07より。 http://www.liberta-s.com/
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≪おすすめ本≫ 山崎雅弘『「天皇機関説」事件』─アジア太平洋戦争へと突っ走ったウルトラ・ナショナリズムの猛威=橋本進(ジャーナリスト)

 大日本帝国憲法公布(1989年)以来、天皇の位置づけをめぐって、@ドイツ国法流に、国家を法人とみて、天皇の権力(主権)は憲法の制限を受けるとする天皇機関説、A天皇を際限なく神格化し、天皇の権力を無制限とする天皇主権説(神権説)があった。
 1912年、@の立場の美濃部達吉とAの立場の上杉慎吉のあいだで論争があり、美濃部が圧倒した。その後、天皇機関説が憲法学の定説となった(昭和天皇も肯定)。

 ところが満州事変下、日中戦争開始前の1935年2月、貴族院で軍人出身の議員が、美濃部 (貴族院議員)の天皇機関説を非難する演説を行った。美濃部は理路整然と反論し、機関説の意義を力説した。
 だが、国会内外の右翼勢力、現役および退役(在郷軍人会)の軍人らが一体となって猛反撃を行い、35年3月、「国体に関する決議案」を、衆議院で満場一致で可決させ、天皇機関説を撲滅した。さらに8月に入ると、第1次国体明徴声明を政府に表明させた。

 明けて36年2月21日には、右翼暴漢が美濃部を襲い、26日に2・26事件が起きる。この潮流はウルトラ・ナショナリズムの典型として、その後、文部省は「国体の本義」(37年3月)、「臣民の道」(41年7月)を発行し、そしてアジア太平洋戦争へと行きつく。

 本書は、このような暴力的な言論・学問の禁圧、「立憲主義」の蹂躙、国家主義による自由主義の駆逐、理性・知性の圧殺へと行きつくプロセスを的確に描き出している。立憲主義を壊す、アベ政治の暴走が止まらない今日、示唆するところが多く感銘深く読んだ。

(集英社新書760円)
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2017年07月04日

《遠吠え》猿でもすると言われる「反省!」を絶対にできない人類もいる。それは、我らが戴く宰相=田悟恒雄

 選挙民からあれだけ厳しい審判を下されながら、自らの疑惑をよそに、「深刻に受け止め」とか、「謙虚に丁寧に」とか、「しっかり、丁寧に」とか、他人事のように「うわべだけの反省」を口にできるというのは、それはそれで「人並み外れた能力」なのかもしれません─。

 「自民党に対する、厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければならない」

 そんな言葉をにわかに信じてしまう人は、よほどのお人好しか、おっちょこちょいでしょう。
 猿でもすると言われる「反省!」ですが、そんなことも絶対にできないという人類もいるのです。それが、我らの戴く宰相です。
 都議選最終盤の秋葉原駅頭で「アベ辞めろ!」を叫ぶ聴衆に激高したこの方が叫んだ言葉は、ご当人がなぜ「反省のできない人」なのかをよーく物語っています─。

 「こんな人たちに負けるわけにはいかないっ!」

 自分への批判は絶対に許さない。楯突く者にはどこまでも攻撃的に、おべんちゃらを言いながらすり寄ってくる人(「オトモダチ」)にはどこまでも面倒見よく振る舞うのです。
 こうしていつの間にか、まわりは「おべっか使い」ばかりになってしまいます。「1強の正体」とは、そんなものなのでしょう。
 そういえばきのうの記者会見で、秋葉原の一件を「有権者軽視では?」と問われた官房長官氏が、相も変わらぬ調子でこう答えていましたっけ─。

 「全く問題ありません。きわめて常識的な発言じゃないですか」と。

(「零細出版人の遠吠え」07/04より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年07月03日

≪メディア時評≫80年前の七夕と安倍暴走「一強政権」の行方

 今年の七夕は、心して迎えたい。夜空の天の川に目を凝らすより、いま地上で起きている事態に、胸騒ぎが走って仕方がないからだ。
 この日、ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約が採択される。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は、条約交渉の国際会議にも参加せず、核兵器を「持つ国」と「持たざる国」のブリッジ役すら放棄して恥じない。
 政府が参加しない理由に挙げる、核の傘・核抑止力の考え方こそ、核兵器の拡散を招いた原因に他ならない。

 しかも、この会議に参加しない「核兵器を持つ大国」は、同日、ドイツ・ハンブルグでG20サミットを開く。
 これには環境や難民問題・人種差別への抗議など、多様なデモが企画され15万人の参加が見込まれる。<G20-Welcome to Hell>も計画されているという。

 わが永田町に目を戻すと、憲法9条つぶしの策動が勢いを増す。超党派の「日本会議国会議員懇談会」も、安倍提案に沿って、この秋の改憲発議に向けハッパをかける。
 そして丁度80年前の7日夜、盧溝橋事件が勃発。北京郊外の盧溝橋で夜間演習中の日本軍が実弾射撃音を聞いたとの理由で、近くの中国軍と戦闘になった。
 11日未明には停戦が成立したものの、軍部内の戦線拡大派に押し切られ、28日には北京・天津総攻撃を始め、日中全面戦争に突入した。

 あとは一瀉千里、10月中旬には国民に戦時意識を徹底し戦争に協力させる国民精神総動員運動が始まり、12月13日には日本軍は南京大虐殺へと走る。
 つい先日、強行可決された「共謀罪」法が、あと10日足らずして施行される。安倍暴走「一強政権」が、いつか来た道を歩む─この轍を断じて踏ませてはならない。

【今週の風考計】7.2より
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2017年06月30日

《おすすめ本》藤原聰・宮野健男『死刑捏造─松山事件・尊厳をかけた戦いの末に』自白の強要・証拠改ざんにより、死刑判決に追い込んだ警察と司法=大石芳野(写真家)

 本書は松山事件の膨大な記録とインタビューを盛り込み、他の事件にも触れつつ冤罪死刑事件の経緯と問題点を綿密に綴る。事件が決して過去になっていないと迫る。

 死刑判決を受けた斎藤幸夫は最終陳述で「逮捕された当時二十四歳、今は五十二歳です。…私のように社会的地位も名誉もない者でも真実はたった一つです」と述べた。
 彼は警察に別件逮捕され、自白を強要され、アリバイを潰され、証拠類をずさんに取り扱われ、捜査当局による捏造によって死刑判決に追い込まれた。彼の犯罪を信じ切れない両親や兄弟たち家族は離散し、財産を失いながらも懸命に立ち向かった。
 とりわけ母親の息子への深い愛情と強い信念は感動的だ。弁護士や救済者たちの熱意ある応援にも引き込まれる。

 その反面、警察権力の横暴さや悍ましさは「刑事ドラマ」さながらだ。私たちは「捜査当局による捏造」や「公正さを欠いた裁判」の実態に愕然とする。幸夫を強要自白に追い込んだ担当取調官は「これで署長になれる」と喜び、実現した。
 不安と怒りの幸夫を支えたのは「真実」だった。けれど失われた歳月は取り返しがつかないし、精神的な苦痛は拭えない。自由の身となっても世間の「犯罪者」というレッテルは付いて回り、就職もままならず、家族はその汚名に悩まされた。

 警察に疑われたら最後、なかなか逃れられないことを、本書は教えている。「共謀罪」法が強行採決された今、偏見と見込み捜査で疑われたら「一般人」でも一夜にして犯罪者に仕立てあげられかねない恐怖を抱く。冤罪が付きまとう死刑制度の根本が同時に問われている。
(筑摩書房2200円)
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2017年06月29日

《焦点》富山県議会「政活費」問題をスクープした同県チューリップテレビ報道制作局記者の砂沢智史さん=橋詰雅博

 2017年度日本記者クラブの特別賞は、富山県のチューリップテレビ報道制作局政務活動費取材チームが受賞した。市議が14人も辞職した富山市議会政活費不正取得をスクープした調査報道が評価された。最近、同取材チームの著書「富山市議はなぜ14人も辞めたか」が岩波書店から出版された。
 このチームの中心メンバーが砂沢智史さん(38)だ。広告、編成を経て記者2年目の昨年、チームの一員としてこの調査報道を手がけた。きっかけとなったのは、昨年4月中旬の議員報酬を10万円引き上げる問題だった。
 「市長の諮問機関『報酬等審議会』は、非公開の会議を2回開いただけで議員報酬の引き上げを決めた。市職員が会長のコメントを打ち切りにさせようとした。なぜここまでするのかと不信感を覚え、取材を加速。審議会会議録と、『打てる手は打ちましょう』と私の発案で不透明な全市議の政活費などの情報公開を請求した」
 これによって市議会のドンと言われた自民党の中川勇市議の白紙領収書を使った架空請求による政活費の不正取得疑惑が浮かび上がった。ハイライトは8月早朝の自宅での中川市議への直撃インタビュー。市政報告会を公民館で本当に開いたのかと砂沢記者の質問に対して中川議員は「『別なところで開いた』と自信ありげだった。答えを用意していた風に感じたが、心臓に当てた彼の手が小刻みに震えていたのが印象的でした」。
 辞職ドミノの後の市議会は政活費の閲覧など数々の議会改革を進めた。砂沢さんらのスクープの成果である。


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