2017年02月19日

≪おすすめ本≫ 松元ヒロ著 武田美穂絵『憲法くん』─「もう…変えてもいいよ、といえるほど、わたしのことを使ってくれたんですか」=水島朝穂(早稲田大学教授・憲法)

 20年前、「憲法フェスティバル97」で、コント集団「ザ・ニュースペーパー」が<日本国憲法施行50年の「夜」>を公演した。この企画にシナリオや監修という形で関わった。
 「明日の新聞をよむ」というコンセプトで、法案段階だった通信傍受法や「代用監獄」の法制化などもネタにした。その最後の第11場が、本書の著者・松元ヒロさんの一人芝居で、そこに登場したのが「憲法くん」だった。

 このキャラは、本番の数日前に、焼きとり屋で、ヒロさんとの語りのなかで生まれた。この時、「憲法くん」は50歳だったが、いまは古稀を迎える。働き盛りとはいえない。

 本書では、こうなっている。「・・・みなさんにがんばれといわれれば、まだまだがんばります。だって、まだ70歳です。・・・でも、わたしをどうするかは、みなさんが決めることです。私は、みなさんのわたし、なんですから。わたしを、みなさんに、託しましたよ」。

 20年前の公演では「おまかせしましたよ」だったが、本書では「託しましたよ」に変わっている。憲法97条の「・・・基本的人権は・・・信託されたものである」を受けたものだろう。

 「憲法くん」はいう。「もういいよ、変えてもいいよ、というくらいまで、わたしのことを使ってくれたんでしょうか」と。

 「とにかく憲法改正」という首相が暴走している。米国にトランプ政権が誕生した。憲法にとって、今年こそ正念場である。本書はきれいでコンパクトな絵本なので、この四月に小学校に入る孫と一緒に読むことにしたい。
(講談社1400円)
posted by ロバの耳 at 09:04| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月17日

《遠吠え》「いつの間にか私たちが生きる時代が中世に似てきている」という科学史家のいとも衝撃的な警告=田悟恒雄

 「事実の軽視、まるで中世」─。うーん、ごもっとも。けさの朝日新聞「月刊安心新聞」での神里達博さん(千葉大教授)の言い分に共感。
 神里さんは、南スーダン派遣陸自部隊の「日報」をめぐる稲田防衛相の国会答弁(Cf.「零細出版人の遠吠え」02/09「『愚かなアクロバット行為』を演じる防衛大臣」)を採り上げ、いまこの国で一世を風靡する「事実の軽視」という社会的雰囲気を摘出します。
 でもこれは、日本だけでなく、「ポスト真実」(post-truth)という形で「先進諸国で同時多発的に」生じている現象で、「かなり真っ正面から『事実』が無視され、しかもそのことを多くの人々がさほど気にとめないという状況」になっている、と警告します。
 さぁて、ここからが科学史家・神里さんの本領発揮。中世ヨーロッパの『健康全書』に架空の植物「マンドラゴラ」が収録されていたことを引き合いに出して、こう言います─。

 「ここから見えてくるのは、当時を生きた人々が重視したのは、対象が実在するかどうかではなく、集合的な主観において、リアリティーを共有できているかどうかだったのではないか、ということだ。…いつの間にか私たちが生きる時代が、…中世に似てきているということはないだろうか」と。

 で問題は、「『事実行為としての殺傷行為』はあっても、これは『戦闘行為』ではなくて、『武力衝突』である」などと言い繕って涼しい顔をしている稲田大臣の「愚かなアクロバット行為」だけではありません。
 その「上司」たるアベ首相には、そんな手口を「得意芸」としている節すら見られるのです。たとえば昨年6月の、かくも厚かましい弁明も記憶に新しいところ─。

 「現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なるが、危機に陥ることを回避するため、内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきだと判断した」と。

 しかもこれは、「考えが変わった」のではなくて、「これまでのお約束とは異なる、新しい判断」なんだってさ。

(「零細出版人の遠吠え」02/17より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 10:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月15日

≪出版界の動き≫1月~2月─書協・雑協・出版協が、菅野完『日本会議の研究』の出版差止めに抗議声明

●2016年電子出版の売り上げ1909億円(前年比27.1%増)。コミック1460億(26.9%増)、書籍258億(13.2%増)、雑誌191億(53%増)。

●J:COMが電子雑誌の読み放題サービスを始める。「雑誌読み放題コース」は、月額500円で500以上のデジタル版雑誌が読める。「NHKテキストコース」は、月額400円〜700円でNHK出版の語学テキスト・趣味・実用誌が閲覧できる。

●書協・雑協・出版協が、菅野完『日本会議の研究』(扶桑社)の出版差止めに抗議声明。同書の本文中で言及された男性が、名誉棄損を理由に出版差止めの仮処分を申し立て、東京地裁が1月6日、その主張の一部を認め、出版差止めを決定。これに対し「出版・言論表現・報道の自由を制約する今回の危険な決定に強く抗議する」と訴えた。

●TSUTAYA─2016年の販売額1308億円(前年比5%増)・22年連続で前年を上回り過去最高。地域ごとに特性ある新店舗をオープンし、812店舗での発注・品揃え、デジタル書籍サービス「Airbook」の拡大、目利き書店員による「復刊プロデュース文庫」・コミック復刊企画などの成果が実った。

●出版労連が出版研究室を開設─参考資料に「1990年から2015年までの出版労連組織と関連データ」を発表。労連単組数163→89(90年比55%)、組合員数10,803→4,838(同45%)、書店28,000→13,488(同48%)

posted by ロバの耳 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 出版界の動き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

≪メディア随想≫─呆れる「安倍政権ファミリー」の劣化と見識、退くのが「ファースト」!

 安倍首相・トランプ大統領のハシャギぶり。「相性がいいんだ」とは言いえて妙。ともにウソや恫喝で政治を操るテクニックは同じ。
 トランプ氏が恫喝で買収したフロリダの豪邸「マー・ア・ラゴ」の夕食会で、安倍首相は昭恵夫人と共に、日米の「蜜月」を誇示する。明けてゴルフ場で両首脳はハイタッチ。その合間の密談、かつ2度目の夕食がクセモノ。

 「おべっか」を使う安倍首相が「日本の公的年金を米国のインフラ投資に献上」とまでバラされた、カモネギ外交・貢ぎ物外交に終始するのでは、目も当てられない。

 マティス国防長官と稲田朋美防衛相の会談でも、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル」を、自衛隊に導入するとまで約束した。
 その稲田防衛相は、南スーダンの戦況は「憲法9条のうえで問題」になるから、戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使ったという。この呆れる弁明。

 さらに安倍首相・昭恵夫人が名誉園長・校長に就く、学校法人「森友学園」をめぐる疑惑も看過できない。
 4月に開校する「瑞穂の國記念小學院」の用地獲得に向け、近畿財務局へ働きかけ、国有地を異常に安い価格で得た疑惑である。
 この学園理事長は、憲法改正を求める「日本会議」大阪の役員で、田母神俊雄、櫻井よしこ、百田尚樹といった右派文化人を招いて講演会を開催し、幼稚園では日の丸の旗を振らせて<同期の桜>を歌わせるので有名だ。昭恵夫人の見識が問われる。

 文科省のあっせん天下りといい、金田法務相が「共謀罪」を法案提出まで話題にしないよう、マスコミを使って恫喝する始末。
 この「安倍政権ファミリー」は退くのが「ファースト」。

【今週の風考計】2.12より
posted by ロバの耳 at 10:13| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月09日

《遠吠え》さすがは「反知性主義内閣の劣化閣僚の面々」、よくもこれだけの「逸材」を集めたもんだ!=田悟恒雄

 国会での質疑を恐れ、「恥の上塗り」を重ねる法務大臣がいるかと思えば、「事実行為としての殺傷行為」はあっても、そうなると「憲法9条上の問題」になってしまうから、これは「"戦闘行為" じゃなくて "武力衝突" なのだ!」などと強弁して、「愚かなアクロバット行為」を演じる防衛大臣もいる。
 さすがは「反知性主義内閣の劣化閣僚の面々」、よくもこれだけの「逸材」を集めたものだと、ただただ感心するばかりです。
 それにしてもあんまりじゃないですか? 昨秋、フリージャーナリストの布施祐仁さんが南スーダン派遣陸自部隊の「日報」の情報開示請求をしたときには、「廃棄した」として「不開示」にされていたものが、自民党の河野太郎衆院議員に再調査を求められて、「ありました、ありました、別のところに…」となる不思議。
 しかも、その文書を隠し続ける一方、国会ではアベ首相が、「戦闘行為ではなかった。衝突、いわば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」などと、きわめて不誠実な答弁を繰り返していたのですよ。
 そして、このたび発見された(!)「日報」には、「宿営地5、6時方向で激しい銃撃戦」「直射火器の弾着」「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」…などと、「戦闘」の様子も生々しい現場リポートが続いているというわけです。
 なのに、これを「武力衝突」などと言い募り、涼しい顔して愚かしい言葉遊びに興じている。これじゃ、「戦闘」現場に投げ出された自衛官が、あまりに気の毒じゃないのか!? 彼らのいのちを弄んでいることにはならないのか!?
 「福井のメガネ」の奥にきらりと光る冷たい視線を見て、押し止めようのない「愛国心」に燃える零細出版人なのでした。

(「零細出版人の遠吠え」02/09より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 10:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月08日

《焦点》神奈川新聞の看板連載記事「時代の正体」のデスクの石橋学さんの紹介=橋詰雅博

 発行部数19万の神奈川新聞の売り物記事は、2014年7月から連載がスタートした「時代の正体」だ。一般的に新聞に求められる「公正」「中立」「両論併記」を捨て去り、記者が自由に書くスタイルが最大の特徴。安倍内閣の暴走を批判し、教科書問題で最大の右翼組織・日本会議の暗躍をあぶり出し、ヘイトデモの非人道性を訴えるなど、地方紙から抜け出た異色の連載は、評価を得た。単行本「時代の正体 権力はかくも暴走する」(現代思潮新社)が15年の平和・協同ジャーナリズム基金奨励賞を、新聞連載が16年度の日本ジャーナリスト会議賞をそれぞれ受賞した。報道部の石橋学さん(45)はこの連載のデスクを務める。
 「連載のスタートは、安倍内閣が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切った2週間後。権力の暴走を止められなかったジャーナリズムは不戦敗でした。そこで地方紙であっても、きちんと権力批判をしなければいけないという動機で、論説特報面の3分2を占める大きなスペースで『時代の正体』の連載を始めた。記者が自由にのびのびと記事を書いている」
 記事が偏っている批判する読者に対しては「偏っていますが、何か」と切り返す。
「読者アンケートでは思想・主張がある、読み応えがある、新しい知見が得られると肯定的な意見が多かった『時代の正体』は、ツイッターなどで拡散されている。ありがたい。地方紙ですが、全国の人に読んでいただいている。やりがいがあります。大きな可能性が感じられる」

posted by ロバの耳 at 14:12| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ/お願い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月07日

《遠吠え》「偏見」も「憎悪」も「言論の自由」のイチジクの葉で隠そうとする新聞社論説副主幹氏のお粗末=田悟恒雄

 沖縄県東村高江のヘリパッド建設に反対する人々を「テロリスト」扱いするなど、「沖縄差別のヘイト放送」と批判された東京MXテレビの「ニュース女子」─。この報道バラエティ番組をめぐり、東京新聞と中日新聞がこの2日、深田実・論説主幹名で「お詫び記事」を出したことに対し、こんどはくだんの番組の司会を務める東京新聞の長谷川幸洋・論説副主幹が、ラジオ番組で「反論」をしています。
 きのうの産経ニュースによると、長谷川氏は6日、ニッポン放送のラジオ番組「ザ・ボイス そこまで言うか!」に出演し、東京新聞が謝罪記事を掲載したことについて、「はっきり言って、とんでもない問題だ。私に対して処分をするということは、言論の自由の侵害になる」などと反論し、さらにこう述べています─。

 「東京新聞は〔今回の問題と〕何の関係もないし、私が社外で発言することが東京新聞の報道姿勢と違っていても、何の問題もない。それを保障すること自体が言論の自由を守ることだ。…論説主幹の意見を忖度し、他の意見を排除していたら、北朝鮮と同じになってしまう」と。

 でも、どうでしょう? 問題の番組内容は、「意見の違い」などということで済まされるものではありません。論説主幹の深田氏が問題としたのは、それが「偏見を助長して沖縄の人々の心情、立場をより深く傷つけ、また基地問題が歪められて伝えられ皆で真摯に議論する機会が失われかねない」ということでした。
 「真実」や「事実」を重んじるべき新聞社の幹部が、「間違いだらけで、偏見と憎悪に基づく番組」(ジャーナリスト・津田大介さん)の司会を務めたばかりか、何の反省もすることなく、「いろいろ騒ぎになりましたけど、まあ、盛り上がっているということですよ」などと吹聴しているとは、「言論の自由」が聞いて泣きます。
 「Post truth」などと称して「虚偽」が大手を振るい、「真実」や「事実」が蔑ろにされる世界的な風潮のもとで起きた今回の事件は、決してゆるがせにしてはならないと考えます。

(「零細出版人の遠吠え」02/07より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

≪おすすめ本≫高田昌幸+大西祐資+松島佳子 編著『権力に迫る「調査報道」 』─権力の監視を目指す記者が抱いた「小さな疑問」から真実に迫る=上出義樹(元北海道新聞記者)

 メディア関係者の間で近年、調査報道への関心が高まっている。本書は権力の監視を担う記者たちが日常の取材で感じる「ふとした疑問」を出発点に、隠された事実に迫る彼らの地道な作業を紹介しながら、報道とは何かを問いかけている。
 本書は日本人記者ら8人のインタビューを中心に構成。自衛隊に絡む機密や福島原発事故の「真相と深層」、集団的自衛権行使の舞台裏に迫る報道などを取り上げている。

 例えば、イラク復興支援の名目で航空自衛隊が愛知県の小牧基地から米兵を空輸していたことを報じた2007年7月の中日新聞のスクープは、人道支援活動にしては空輸の本数が多過ぎ、「何か変だ」という記者の素朴な疑問から取材が始まった。
 また、集団的自衛権行使に関わる憲法解釈変更の経緯を、公文書に残していなかった事態をスクープした毎日新聞の2015年9月の記事は、法制局内部の議論に注目し、情報公開制度を駆使して実現した。
 本書はさらに、「パナマ文書」を読み解く国際的な記者の連携という調査報道の新しい形に挑むイタリア人ジャーナリストらにも取材している。

 8人に共通しているのは、他の記者がつい忘れがちな「小さな疑問」への徹底的な執着である。
 ジョージ・オーウェルは有名な小説「1984年」で「(権力が)報道されたくないことを報道するのがジャーナリズム。それ以外は単なる広報」との名言を残している。権力の監視を目指す本書にこそ贈りたい言葉である。

(旬報社1800円)
posted by ロバの耳 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月31日

《焦点》JCJ代表委3人による新春鼎談 ポピュリズムと対峙する年に=橋詰雅博

 2016年は英国のEU(欧州連合)離脱に続きトランプが米大統領選に当選し、世界がショックを受けた。これは反エリートを強調し、不安を煽るためウソも平気でつくポピュリズム(大衆迎合主義)の勝利という見立てが広がっている。一方、国民の声を無視続けても安倍内閣の支持率は高止まり。とうとう5年目に入った。創立61年目の日本ジャーナリスト会議(JCJ)の隅井孝雄、中村梧郎、守屋龍一の各代表委員が国内外の情勢にふれて、JCJの今後の活動を話し合った。司会は事務局長兼機関紙編集長の橋詰雅博が務めた
◇     ◇     ◇

司会 これから始まるオランダ、フランス、ドイツの欧州の選挙でポピュリズムが勢力をさらに伸ばしそうですが、この現象をどう見ますか。
隅井孝雄 民主主義の欠陥を補うという見方があるが、ボクは賛成できない。むしろ危険な方向に動いている。その象徴である米トランプ政権の閣僚人事みても、大金融資本や米軍などの出身者が目立つ。トランプ自身も核開発拡充と言っている。富める者はますます富めるという構図が強まる。貧困と格差の是正はできない。これがはっきりしたら、米国内で若者を中心とした反乱が起きるかもしれない。
 一方、安倍首相は、選挙に勝つため改憲や秘密保護法、安保法など国民から反発を受けそうなテーマを引っ込めてアベノミクスに争点を集中させた。テレビ出演も多く、大メディア幹部との会食も盛ん。安倍首相は今のポピュリズム現象より一歩速く先行している。

続きを読む
posted by ロバの耳 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月30日

《焦点》公衆便所の落書きも共謀罪に=橋詰雅博

 20日に召集された通常国会で与野党が激しく対立しそうなのが共謀罪創設法案(安倍内閣は「テロ等組織犯罪準備罪」という名称で提出予定)。安倍首相は法案を成立させなければ、2020年の東京五輪・パラリンピックが開催できないと前のめりだ。過去3回廃案になったものと今回の法案の中身はそんなに変わらない。むしろテロ防止を強調して共謀罪隠し≠しているから今回の方が悪質である。
 昨年10月に衆院議員会館会議室で開かれた反対集会で、関東学院大名誉教授の足立昌勝さん(刑事法)はこの法案の核心をこう述べている。
 「共謀罪を改め計画罪と言うべきだ。2人以上で犯罪を計画しただけで捜査が行われる。計画と判断するのは警察で、客観的な証拠など不要。法の網をかけやすく、非常に危険と言える。しかも翻意・離脱・中止を認めていないから、計画段階で犯罪が成立していると言っても過言でない」
 起訴できる見込みがなくても、警察は計画だけで逮捕や家宅捜索などの強制捜査が可能になる。「現代版治安維持法」といわれる所以だ。
 日弁連は新法律による共謀罪摘発ケースをいくつか挙げている。
・基地建設に反対する市民団体が工事阻止のため道路に座り込みを計画し、現地の地理を調べた。
・上場企業の役員らが会社の業績不振を隠すため利益を上乗せした有価證券報告書を作成することを部下に命じた。
・戦争に反対する市民団体が自衛隊の官舎に「殺すな」と書かれたステッカーを貼る計画を立て、ステッカーを買うためATMから出金した。
 また弁護士の永嶋靖久さんは「公衆便所の落書きは一人で考えるなら犯罪ではない。ところが(建造物損壊罪)に共謀罪が新設されると、2人で共謀するだけで処罰される」と指摘している。
 安倍内閣はここにきて共謀罪創設の犯罪数を300程度に減らす方針だが、狙いは変わらない。数が問題ではないのだ。



posted by ロバの耳 at 12:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

≪メディア随想≫─改憲よりも、まず大阪から「教育無償化」に向けて、一歩踏み出したらよい!

 トランプ大統領とそっくりな人が、日本にもいる。そう橋下徹氏である。大阪府・市の首長を経て丸9年。ツイッターでの「指先介入」は健在だ。

 「いよいよ安倍首相が教育無償化に乗り出した。教育大国日本へのスタートだ」と息巻き、「トランプ大統領と伍していくには、日本も原子力潜水艦を保有すべき」と語る。おいおい、<衣の下から鎧が見える>じゃないか。

 現に、国会では「日本維新の会」所属の重鎮議員が、安倍首相に「カジノ解禁法」成立へのお礼とばかりに、「教育無償化」の導入をテコに、憲法改正を要請している。
 さらに「トランプ大統領が更なる負担を求めてきたら、防衛費の見直しも検討すべき」と、GDP1%枠の規制ハズシを促す。

 とりわけ安倍首相は、「日本維新の会」代表でもある大阪府知事の松井一郎氏が、これまでに「9条も見直していくべきだ」と表明しているのを、強力な援軍にして、9条改定・国防軍創設に執念をみせる。
 「教育無償化のための改憲」という主張には、9条改憲の呼び水・先導役を買って出るコズルイ狙いがあるのは見え見え。

 まず大阪から、教育無償化に向けて一歩踏み出しらよい。松井氏自身が「自治体の予算でもできる」と、言っていたではないか。
 この12日には、中学1・2年生を対象に2回目の「チャレンジテスト」を実施した。これは「点数至上主義」に走り、テスト漬けにするだけ。
 その歪んだ教育行政は、多くの人々が即刻中止せよと声を挙げている。テストにかける経費を教育無償化の財源に充てたらよい。

【今週の風考計】1.29より
posted by ロバの耳 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月28日

≪風塵だより≫ トランプ「3G内閣」の欺瞞=鈴木 耕

 トランプ大統領の就任演説を、ぼくは翌日のニュースで見た。なんだか悲しくなった。ひたすら「アメリカ・ファースト!」を繰り返す。演説の中でいったい何度、この言葉を繰り返したことか。
 自国第一。むろん、政治家が自国の利益を最優先するのは、当たり前のことだ。しかし、それは他国との関係性の中で探られるべき方向性であって、他国を貶め、他国を無視して自国第一を掲げるなら、世界はメチャクチャになってしまう。
 毎日新聞(22日付)が、トランプ演説に、こんな見出しをつけていた。

 米国製品を買い 米国人を雇う
 みなさんは二度と無視されない
 支配階層から国民に権力を戻す
 この日から「米国第一」になる

 言葉だけを見ると、その通りと思うかもしれない。しかし、待てよ、と思う。
 「米国製品」が米国だけで出来上がっていると思うなら、言うべき言葉などない。多くの国の産品や技術を利用することによって、ようやく完成品になる。そんな道理が理解できない人。
 「米国人を雇う」なら、現在の安い賃金の他国への依存は無理。米国人のみを雇用するのであれば、製品価格の上昇は避けられない。結局、高価格品を買わされ、インフレに苦しむことになるのは米国人。当たり前のリクツだ。
 「支配層から国民に権力を」とは言うけれど、トランプ政権の閣僚たちはどうか。彼らは「3G」と言われるエスタブリッシュメントの寄せ集めである。では、3Gとは何か。
 General(将軍)、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)、Gazillionaire(ガジリオネア=大富豪という意味の新語)という。つまり、トランプ政権の閣僚たちは、ほとんどがこの3つのGの範疇に入るのだ。トランプ氏が罵倒し続けた「支配層」そのものだ。そんな支配層が、自分たちの富を減らすような政策を採るはずがない。つまり、あのトランプ氏のエスタブリッシュメント批判は、ただの選挙戦術にすぎなかったわけだ。
 トランプ氏を熱狂的に支持した白人中間層といわれる人たちが、そのことに気づくのはいつだろうか。

詳細は≪風塵だより≫「105 トランプの箱」(http://www.magazine9.jp/article/hu-jin/31993/
posted by ロバの耳 at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 風塵だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月23日

《遠吠え》「1度やったらやめられない」お役人が辞めた後も守り続けてくれる "ザル法"に3度びっくり=田悟恒雄

 文科省の「官僚天下り」が問題になっています。何と、大学の設置認可やら私学助成やらを取り仕切る「高等教育局」の前局長が、取り仕切られる側の早稲田大学に職を得たというのですから、口あんぐり。
 えっ、何々? と思って、くだんの前局長氏の名前を見て、2度びっくり。以前は文化庁にいて、「著作権法の権威」として広く知られていた人じゃありませんか!?
 おまけに以前、零細出版人が、さる希少動物繁殖販売業者から「著作権法違反」のかどで訴えられたとき、その方の法理論解説論文などを参考に本人訴訟の弁論を組み立て、おかげで訴えが棄却されたという、いわば「知的恩義」すら感じていた方だったのです。
 ところが、そんな前局長氏を教授として招いた早大は、大学での教授の役回りを「政策の動向の調査研究」「文科省の事業に関する大学への助言」とかにしたそう。どう見てもあまりに露骨。大学当局の魂胆は見え見えじゃないですか!? これで3度目のびっくり。
 では、どうして「天下り」はなくなることがないのでしょう? 元経産官僚・古賀茂明さんによる以下の解説(『日刊ゲンダイ』)には、即納得─。

「現在の天下りを規制する仕組みは、07年の国家公務員法改正でできたものですが、そもそも『ザル法』なんです。現役職員によるあっせんは規制されていますが、次官や人事課長などが役所を辞めてからあっせん行為をしても問題にならず、OBによるあっせんは今も続いています。加えて、違反した場合は懲戒処分までで刑事罰がない。あっせんをするのも懲戒処分をするのも人事当局ですから、犯人に警察権と司法権を与えるようなもので、機能するわけがありません。…抜け道がたくさんあるのです」

やっぱり、「役人と何とかは1度やったらやめられない」ってわけですね。

(「零細出版人の遠吠え」01/23より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 09:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月15日

≪メディア随想≫─「デモはテロ」の発想と共謀罪の怖さ

 安倍政権は、20日から始まる通常国会に、3度も廃案になった「共謀罪」法案を、性懲りもなく提出する。詐欺や窃盗、道交法・公選法違反など、676の犯罪に適用される。
 実行していなくとも、居酒屋での冗談・怪気炎が、共謀の準備とみなされ、「共謀罪」が適用されるやもしれない。

 「共謀準備」とは、どんな行為をいうのか、676の犯罪に則して、一つ一つ明確に定義できるのだろうか。警察官のさじ加減や袖の下によって「共謀罪」か否かの判定が下されたら、たまったものではない。
 もともと犯罪は実行された行為をもって成立し、準備段階での話し合いなどは処罰しない─この近代刑法の根本原則が覆される、最も危険な法案だ。

 犯罪の計画や相談をしただけで処罰するには、警察や国家は、日常不断に国民を広く監視していなければならない。「デモはテロ」と発言するような政治家の発想ならば、シールズや<原発NO!>活動のメンバーへの盗聴や盗撮、パソコンの押収もありえよう。
 沖縄の辺野古基地・ヘリパッド建設に反対する運動にも、「共謀罪」の適用はあるだろう。現に沖縄平和運動センターの山城博治議長らは逮捕・起訴され、80日以上も拘束され続けている。「共謀罪」で立件の予行演習か? 勘繰りたくなる。

 さらに、その共謀罪が適用される刑罰の内容が過酷だ。実行してもいないのに、話し合っただけで5年の懲役・禁固。しかも自白・密告を奨励している。
 「内心の自由」「個人の尊厳」など、憲法に保障された基本的人権が、権力によって不断に脅かされる。テロ対策に名を借りた、戦前の「治安維持法」の復活に他ならない。

【今週の風考計】1.15より
posted by ロバの耳 at 10:16| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月13日

≪出版界の動き≫12月〜1月─雑誌の<大晦日発売>で売り上げ増

●2016年度・出版界の売り上げは1兆4670億円前後と予測され、ついに1兆5000億円を割りこむ。2017年度は1兆3000億円台まで落ちこみ、1996年のピーク時2兆6538億円の半分という事態を迎える。16年の特徴は、雑誌販売額(7200億円・前年比−7.7%)が、書籍販売額(7300億円・同−1.6%)を下回り、雑誌の凋落は深刻になっている。

●雑協と取協が共同し、「12月31日特別発売日」を初めて設定し、雑誌129誌・書籍40点、部数にして雑誌700万部・書籍100万部を書店とコンビニで全国一斉発売した。

●この大晦日発売≠ナ、トーハンは売り上げ全体を3.8%押し上げ。大晦日当日の売上げは「定期雑誌」が前年比19.5%増、「ムック」も同13.7%増。また日販も、大晦日は雑誌が前年同日比17.5%増、前年より21.6%増。特別発売日の効果が顕著に現れた。

●岩波書店は文庫・新書を、朗読で配信するオーディオブックに取り組む。12月23日に齋藤孝『読書力』、25日にゲーテ『若きウェルテルの悩み』をリリース。1月には大野晋『日本語練習帳』、2月には梅棹忠夫『知的生産の技術』小熊英二『生きて帰ってきた男』を予定。
posted by ロバの耳 at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 出版界の動き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月11日

《遠吠え》週刊文春「阿吽の呼吸の驚愕スクープ」への零細出版人の「下司の勘繰り」=田悟恒雄

 きのう講談社のコミック誌「モーニング」の編集次長が、殺人容疑で逮捕されました。ジャンルの違いはあれ、同業者のひとりとして、無関心ではいられません。
 すると、「待ってました!」とばかり、けさの新聞に『週刊文春』の「驚愕スクープ」広告が−。

 「『進撃の巨人(講談社『別冊少年マガジン』)』元編集長の妻が怪死/単行本累計6千万部のベストセラーを生んだ京大卒カリスマ編集長が昨年8月、自宅で妻の首を絞め、階段から突き落とした疑いがある。妻は窒息死。夫婦には4人の子がおり、夫は育休を取得するほど子煩悩だったが、近隣には罵り合う声が響いていたとの証言もある。本人を直撃した─。」

 事件が起こったのは昨年の8月、「逮捕」はきのう。その公式発表の翌朝には早くも週刊誌の「驚愕広告!」が新聞を賑わせている。なんとまあ、タイミングのよろしいことで…
そこで、零細出版人の「下司の勘繰り」2題−。

 1)容疑者逮捕の日時について、早くから警察のリークがあった。
 2)昨夏から事件を追っていた文春の「驚愕スクープ」を察知した
   警視庁が、慌てて機先を制した。

 おそらくは後者だろうと思うのですが、それにしてもまだ証拠も証言も不十分、容疑者も容疑を否認している。「消去法による状況証拠」だけでは、立件は容易ではないでしょう。
 「推定無罪」の原則からすれば、講談社が「本人は無実を主張しており、捜査の推移を見守りたい」とコメントしたというのは、現段階でのひとつの見識かと思います。

(「零細出版人の遠吠え」01/11より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 09:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月10日

≪メディア随想≫ ホームレスの仕事をつくり自立を応援する「ビッグイシュー日本版」新年号が素晴らしい! =守屋龍一

 年初、JCJ事務所へ行く用事があり、地下鉄「神保町」駅A5出口をでたところ、左に向かってすぐの路上で、ホームレスの販売員が「ビッグイシュー日本版」新年号を手に高く掲げ、販売している。久しぶりに買い求めた。
 表紙は、絵本作家のいわむらかずお氏が画いた<14ひきシリーズ>の一枚。一本のろうそくの火を中心に、14ひきの野ネズミがお茶を飲み、お菓子を食べている一家だんらんの、ほのぼのとした情景が描かれている。心があったかになる。この号の本文では、いわむらかずお氏への特別インタビューが組まれている。

 この雑誌、ホームレスの仕事をつくり自立を応援する事業として、2003年9月に創刊された。A4版・32ページ、月の1日と15日に発行。定価350円、そのうち180円が販売者の収入になる。通巻302号を迎え、累計750万冊を販売したという。
 北は札幌の道庁北門前から、南は熊本のびぷれす熊日会館前まで、全国117か所で、ホームレスの人たちが販売している。ぜひ買い求めてほしい。

 新年号にもどろう。コンテンツは盛りだくさんだ。お正月かるたあり、リレーインタビューあり、8ページに及ぶ「特集」あり、人間の顔がよく見える世界各地のトピックもある。もちろん連載コラムも4本、バラエティーに富む。

 とりわけ引きつけられ、考えさせられたのは、<座談会 マーク・レイさんVSビッグイシュー販売者>の記事である。ヘイトや襲撃が頻発する危険な街から身を守るために、マーク・レイさんは、ニューヨークのビルの屋上に野宿し、日本のビッグイシュー販売者は公園のベンチ、いまは期限付きステップハウスに住む。
 路上生活をしてきた日本人の1人は、「行きつくところまで行くと、今ある自分を受け入れて、今に集中することで気持ちが楽になった」という。
 マーク・レイさんは、「どこで寝るか寝ないかで自分を定義したくない」という。それは人から定義されたり、格付けされたりすることへのプロテストでもある。人の人生は寝る場所で決まるものではないという確信だ。

 ホームレスが、自立した生活を営み、尊厳を持って、より良く生きていく─この人間みんなが持ちうる本当の夢を実現する。それをどうやって社会が保障するかだ。そこが問われている。ちなみに、マーク・レイさんのドキュメンタリー映画「ホームレス ニューヨークと寝た男」が、1月28日に日本で公開される。

 最後に、毎号、中身の濃いページづくりに奮闘する編集長の水越洋子さん他スタッフ27人にエールを送りたい。(2017/1/10)
posted by ロバの耳 at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

≪おすすめ本≫中野晃一『つながり、変える 私たちの立憲政治 』市民運動の原動力となる<がれきの思想>とリスペクト=菅原正伯

 著者は、安倍「壊憲」政治に対し、「立憲デモクラシーの会」や「市民連合」の中心メンバーとして「市民主導の野党共闘」を後押ししてきた。
 本書は「市民革命」の序章ともいうべき、今年の参院選に至る市民と「立憲4野党」の共同と背景を分析している。

 32の1人区すべてで候補者を1本化し、自民党が「重点区」とした選挙区で11議席も獲得したことは、「3分の2」を阻止できなかったとはいえ「大きな成果」だったといってよい。こうした市民パワーはどのようにして生まれたのか。

 東日本大震災と福島原発事故は、国民にとって、大きな転機となった。政府や国家が機能を停止したとき、国民一人一人が生きるためには、自ら考え行動し、他人と協力しなければならないという大切な経験である。
 永田町を取り巻いたシールズの世代には、この「がれきの思想」が根付いているのを、著者は強く感じるという。

 そして新自由主義の勝ち組・負け組に対し、また自己責任論を唱える風潮に対し、市民運動の中から新たな傾向が現れてきているという。
「民主主義とはなんだ」、「これだ」あるいは「保育園落ちた」、「落ちたのは私だ」といったコールが示す応答は、その新たな傾向の現れだ。
 著者は、これを問いかけに対する共感、同じ境遇にいると自ら名乗る「連帯の名乗り」だという。分断統治への抵抗運動である。

 野党共闘と立憲政治を求める市民運動に共通する、もう一つのキーワードは「リスペクト」(尊敬)である。他者を認め、リスペクトする市民パワーの発展こそ、社会や政治を変える原動力である。
(大月書店1300円
posted by ロバの耳 at 09:18| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月02日

≪メディア随想≫ 「ポスト真実」の危ない世に抗するジャーナリストとしての気概

 明けましておめでとうございます。酉年だとはいえ、<風見鶏>だけはご免だ。まず「ポスト真実」の世に抗したい。英国のEU離脱派や米国のトランプ支持者たちが駆使した手法─真実を隠蔽し、不確かで感情的な言辞を弄し、人びとを分断する怖さが身に染みる。

 20日に誕生するトランプ政権の動向から目が離せない。EUに広がる反移民の波とISテロの横行も気がかり。差別や感情むき出しの対応では解決しない。
 日本も例外じゃない。いまの安倍政権、あまりにも嘘と方便が多すぎないか。「福島原発はアンダー・コントロールにある」とか、自衛隊の南スーダンPKO派遣では、現地の「戦闘」を「衝突」と言い換え、「結党いらい強行採決は考えたこともない」などと、虚言を繰り返し、国民を愚弄する。

 沖縄・辺野古基地建設への対応は、まさに立憲主義や法治国家の理念まで投げ捨て、沖縄の人々を踏みつけにして恥じない。加えて施行70年となる憲法9条つぶしと「共謀罪」の導入を企てる。
 メディアの責任も大きい。広告スポンサーや官邸への気兼ねから、「報道の自己規制」が進む。市民感覚とのずれ、不信感が高まるにつれ、SNSやフェイスブックに関心が向く。

 しかし、これらの媒体はアクセス数が勝負。虚実ないまぜのセンセーショナルなニュース・情報が幅を利かせる。デマも拡散する。「真実か否か」を判断する根拠が、アクセス数に委ねられる。
 この恐ろしき「ポスト真実」の時代に、私たちは、嘘を見破り、真実を追求し、憲法を生かすジャーナリストとして立ち向かいたい。
【今週の風考計】1.1より
posted by ロバの耳 at 10:38| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月31日

信濃毎日新聞27日付「雑誌不振 街の書店を直撃する」の社説を読む

 やはり出版界のことは気になる。
 信濃毎日新聞が12月27日付の社説に「雑誌不振 街の書店を直撃する」を立てていた。あらためて読んだ。
 41年ぶりに、雑誌の売り上げが書籍を下回る見通しになったという。
 出版科学研究所がまとめたデータによると、2016年の雑誌の売り上げは、約7200億円となる見通しという。この数字は、前年比でいうと7・7%の大幅減。雑誌のピーク時と比較すると半減という大打撃だ。書籍のほうも約7300億円の見通しで、前年比1・6%減。

 社説は「雑誌と書籍の順位が入れ替わ」りそうだという話題から入っているため、「雑高書低」というこれまでなじんできた言葉をもちだして、それが変わりそうだと導入部で書いているが、読みすすむと「雑高書低」が「書高雑低」に変わりそうだというような話ではない。「書高雑低」と呼びかえることができるほどには、書籍のほうも強くはないのだ。悩ましい状況だ。

続きを読む
posted by ロバの耳 at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | アラカルト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月30日

≪おすすめ本≫ 飯田進『たとえ明日世界が滅びるとしても』元BC級戦犯が若者たちへ託した言葉の重さ=安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

 2016年10月、激動の人生を生き抜いた魂がまた一つ、旅立っていった。飯田進さん、享年92。第2次世界大戦時、ニューギニア戦線に派兵され、敗戦後BC級戦犯に問われ、“スガモプリズン”に収監された。

 本書は、戦禍を生き抜いた記憶を元に、今の日本に対し、強く警鐘を鳴らす飯田さんの心の震えが、そのまま言葉になったかのような一冊。
 飯田さんが派兵されたニューギニア戦線は、20万人のうち生きて帰れたのはわずか2万人、熾烈を極める、戦いの最前線だった。亡くなった方のほとんどが、銃弾や爆撃によるものではなく、飢えやマラリアによる苦しみでの死だった。
 そのニューギニアで捕虜の殺害に関与したとして、飯田さんは敗戦後、BC級戦犯に問われることとなる。上官の命令には絶対服従の、兵士一人一人に選択肢などなかった。

 しかし自分が“無実”だと訴えることもできない。あの戦争は何だったのか、と問い続ける日々の中、朝鮮戦争が起き、警察予備隊ができ、再び武力へと走っていく──自分たちは何のために収監されているのか。二度と繰り返したくない光景をありありと思い返しながら、飯田さんは声をあげ始めた。

 晩年の飯田さんが常に口にしていたのは、「戦争体験を語り続けたのは、徒労ではなかったのか」という無力感だった。
 思い出すたびに吐き気を催す実態を、実感を伴って伝えられるか、不安に思いながらも、語らずにはいられない。気力の源は飯田さんの言葉を受け取った次の世代が、確実にバトンをつなぎ、育っている実感だった。

 本書の後半では、飯田さんが講演で赴いた愛真高校の生徒たちの感想が掲載されている。その一人が、のちに安保法制を巡って路上に飛び出し抵抗を続けた青年だった。
 本のタイトルは、飯田さんが亡くなるまで心に刻み続けていた言葉。そのリンゴの苗を受け取った私たちは、どんな未来を描くべきなのか。宿題として託されている。
(梨の木舎2000円)
posted by ロバの耳 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月29日

《焦点》裁判所も大新聞の読売に屈している=橋詰雅博

 七つ森書館が、読売新聞東京本社と自社が復刊させた清武本「会長はなぜ自殺したか」の読売側の出版契約担当者だった当時の社会部次長を相手に、総額2000万円の損害賠償を求めた裁判の判決が5日、東京地裁で言い渡された。原克也裁判長は七つ森の請求を棄却した。
 この裁判が提起されたのは、清武本の出版差し止め請求をした読売と、これは出版妨害だとした七つ森が地裁と知財高裁で争った過程で問題が浮上したのである。出版契約を上司の了解を得ず独断で結んだという元次長の不法行為とこれを見逃した読売の使用者責任がそれだ。出版妨害と認められず敗訴した七つ森は、元次長と読売の不法行為責任を新たな裁判で追及したわけだ。
 判決は、当時の次長の不法行為を認めたものの彼と読売への請求権は時効で消滅とした。判決文では、出版契約解除を七つ森に申し入れた読売側が、次長に出版契約の権限がなく、契約の有効性に疑義があると指摘したにもかかわらず、七つ森は次長の権限の有無を調査しなかったとしている。この指摘を平成23年(2011年)12月26日とし、請求権の時効は3年だから請求は消滅したと述べた。
 七つ森書館の中里英章社長はこう反論した。
 「事件の背景には『清武の乱』(11年11月)がある。裁判ではこれが消えている。この出版契約が無効ということになれば、契約社会が成り立たない。読売側が抱えているメールの開示を請求したが、これも認めなかった裁判官は、市民感覚から大きく逸脱している。不当判決です。言論の自由を守り続けるためにも控訴する」
 この本の中心執筆者である清武英利さんは「良質のノンフィクションを残したいという出版社の善意が、こうも裏切られたことに驚きを感じています」とコメントした。
 本の監修・解説を行った佐高信さんは「裁判所も大新聞の読売に屈している」と話した。
 七つ森書館の闘いは終わらない。
橋詰雅博

posted by ロバの耳 at 14:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月28日

《焦点》日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞を受賞した毎日新聞社会部の青島顕記者を紹介=橋詰雅博

 今年の日本ジャーナリスト会議大賞は、情報公開制度を活用してスクープ記事を書いた毎日新聞社会部の2人の記者に贈られた。そのうちの一人である青島顕さん(50)は、昨年12月8日付の同紙朝刊で、当時閣議決定前であった特定秘密保護法案について、会計検査院が「特定秘密に指定された書類が検査院に提出されなくなる恐れがある」と内閣官房に指摘していた事実を明らかにするスクープを報じた。
 秘密保護法の前身の秘密保全法案が浮上した2011年からこの問題を追及している青島さんは、秘密保護法案作成過程で政治家がどう関与したかなどを調べるため13年末に内閣官房に対して、国会議員からの注文が分かる文書や各省庁がやり取した文書などを情報公開請求した。通常、1カ月で情報開示されるが、引き延ばしにあい、結局、開示されたのは15年6月だった。1年半も待たされたのだ。
「開示された文書は段ボール7、8箱に入っていた。しかし国会議員の発言はすべて黒塗りにされて、政治家の法案への関与を裏付けるものはなく、がっかりした。とはいえ、文書を読み込んでいったところ、法案作りをした内閣情報調査室から法案提示を受けた会計検査院が特定秘密にされた文書が見られないと、憲法90条(国の収支決算は会計検査院が検査する)上問題であると内調に提出した文書を見つけた。会計検査院の怒りが伝わってきた。これは面白いと、さらに会計検査院に情報公開を求めた。望外だったのは、内調より詳しい文書を残していたことです」

 
posted by ロバの耳 at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《遠吠え》東京の夜の街のきらきらの正体は、「生産性」と「効率」と「便利さ」の追求なのかもしれない=田悟恒雄

 電通新入社員過労自死事件から1年。亡くなった高橋まつりさんの母の手記を読みました−。

 「去年の12月25日クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。(うそ)であってほしいと思いながら…」

 そんな出だしに引きつけられて、何度も読み返してしまいました。何でそれほど引きつけられたのかといえば、クリスマスとはいえ、東京の「夜の街のきらきらの正体」を、当のまつりさんが鋭く見抜いていたからにほか成りません−。

 そう、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と。

 ところで、かつて「百万ドルの夜景」と言われた熱海のそれとも異なるそこには、「生産性」や「効率」などといったものが潜んでいるだけでなく、近年ではさらに「便利さ」(Convenience)までもが加わっているようです。
 深夜の田んぼの向こうに煌々と輝くコンビニや自動販売機…、たまにその「便利さの恩恵」に浴すことはあっても、毎晩どうしても必要というわけでもないでしょう。
 私たち日本人は、飽くことなき便利さの追求の果てに、どれだけ余計で無駄なものを作ってきたことでしょう? 「風が吹けば桶屋が…」の類いかもしれませんが、おそらくそのことも、若い女性社員を死に追いやった「長時間労働」の要因のひとつとなっているに違いありません。

(「零細出版人の遠吠え」12/26より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月27日

《焦点》ブラック企業大賞・電通の過労自殺事件について元博報堂社員で作家の本間龍氏が語る=橋詰雅博

 女性新入社員の過労自殺に端を発した電通事件。違法な長時間労働が常態化しているとして東京など各労働局は、本社や各支社を労働基準法違反容疑で家宅捜索した。幹部社員と法人としての電通の立件は、越年する見込み。元博報堂社員で広告代理店業界に詳しく、「電通と原発報道」「原発プロパガンダ」などの著書がある作家の本間龍(54)さんが、この事件について取材に応じた。
―本間さんは、石井直社長が首相官邸に呼ばれたという情報をいち早くキャッチしたそうですが……。
 10月中旬ごろ、官邸で石井社長が安倍首相から直接、注意を受けたという。首相は『事件によるイメージ悪化は、電通が担当している東京オリンピック・パラリンピック業務に支障をきたす恐れがあるので、一刻も早く事態を終息するように』と社長に告げたそうです。ところが石井社長の反応がいまいちだったので、19日に官邸で開かれた働き方改革の意見交換会で、安倍首相は電通と過労自殺した高橋まつりさんの名前をあえて口に出し、お灸を据えたと思う。

◇仕事量は変わらず

―確かにその後、電通は「全館10時消灯」「労働環境改革本部」の立ち上げ、手帳から「鬼十則」を外すことを検討(9日に削除発表)、さらに来年の「電通年賀会」の中止など矢継ぎ早に手を打った。
夜10時以降の仕事はダメという方針は、社員に評判が悪い。仕事量は減らないから、家や電通の協力会社で仕事を続けているのが実態。石井社長が、売り上げが減ってもいいと言うなら話は別ですが、そうではない。「新しい電通をつくり上げよう」と呼びかけるだけ。ライバルの博報堂などに仕事を取られたら死活問題。売り上げを維持するため従前と変わらずに仕事をこなさなければならないのです。
―今回の事件では、ツイッターなどが大きな役割を果たしたのでは……。
 高橋さんが亡くなる前にツイートした「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」「何のために生きているのか分からない」などの魂の叫びや電通を告発する母親の写真がネットで拡散された。電通と関係ない人たちがこれを見て凍りつき、この会社はおかしいとネット上で盛んに発信した。既存メディアもその勢いに押され事件や強制調査、強制捜査を報じた。ネットの力を軽視していた電通経営陣の対応の失敗が事態を悪化させてしまった。

◇指名・受注停止も

―幹部社員や会社が刑事処分される可能性があるが、電通が恐れるのか何か。
 労基署による長時間労働是正勧告を無視してきた電通は「法令違反企業」に間違いありません。官庁関連業務の指名・受注の停止もあり得る。なによりもそんな企業に世界的な五輪イベントを仕切らせていいのかという批判の声が高まる。電通はこれを一番恐れています。東京オリパラのイメージを傷つけ、企業倫理に厳しい欧米から電通独占業務に疑問視する意見も出てくるはず。誘致した安倍首相のメンツを潰しかねない。野党だって国会で追及する。窮地に立ちます、電通は。
聞き手 橋詰雅博

posted by ロバの耳 at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月22日

《遠吠え》この国の政府、官僚、司法がいくら寄ったところで、「文殊の知恵」なぞ出てくるわけがない=田悟恒雄

 政府の原子力関係閣僚会議はきのうようやく、高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉を決めました。
 1994年の稼働から20年余り、国民の血税を1兆円も投入しながら、実際の稼働日数はわずか250日−。と、そんな「無駄の見本」のような巨大プロジェクトで、いったいどれほどの「知恵」が得られたというのでしょう?
 苦し紛れに「一定の成果はあった」(松野博一文科相)などと大見得を切る御仁もいます。このお方、「フル出力運転ができなかった責任をとって」、5カ月分の大臣給与と賞与の計66万円を「自主返納する」なんて言っているそうですが、冗談じゃない。その廃炉にも、政府のアバウトな見積りで3700億円以上かかるっていうのに。
 しかも、それに輪をかけて許しがたいのは、「高速炉の実証炉(!)をめざす」などと言いだしたこと。まるで、九九(原型炉)も覚えていない小学生に割り算(実証炉)をやらせるようなものじゃないですか。
 あの方々が白昼堂々、そんな馬鹿げたことを言うのも、いったん決めた「核燃料サイクル路線」を、ただただ維持したいだけのこと−。再処理施設がコケてしまえば、菩薩様が手にする数珠ははじけてしまい、「核燃料サイクル」はたちまち御陀仏。「トイレのないマンション」は「糞詰まり」になってしまう、というわけです。
 で、突然ですが、これとまったく同じ「官僚的な発想の貧困」が、この間の沖縄の基地問題をめぐる動きにも見ることができます−。

 「役所がいったんこうすると決めたら、それを役所が自ら覆すことは難しい。たとえ多くの人の思いと違っても、当初の決定に違法な点がなければ裁判所は取り消しを認めない。」

 先日の辺野古訴訟の最高裁判決とはそんなものだと、きのうの朝日新聞社説は書いています。
 「辺野古が唯一の解決策」と念仏のように唱え続ける政府、それを追認するだけの司法…。これでは、望ましい解決策が見えてくるはずもありません。
 そう、この国の政府、官僚、司法がいくら寄ったところで、「文殊の知恵」なぞ出てくるわけがない、というお話でした。

(「零細出版人の遠吠え」12/22より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月20日

≪出版界の動き≫11月〜12月─2016年「梓会出版文化賞」に選ばれた大月書店の奮闘へ拍手!

●雑協と取協が共同し、「12月31日特別発売日」を初めて設定し、雑誌129誌・書籍40点、部数にして雑誌700万部・書籍100万部を書店とコンビニで全国一斉発売する。

●学研グループの売上高990億5千万(前期比3.2%増)、3年連続の増収。純利益13億6800万円(同416.1%増)と大幅な増益。出版事業の売上高305億(前期比3.0%増)。

●「文庫X」の中身は清水潔『殺人犯はそこにいる』(新潮文庫)。さわや書店フェザン店の長江貴士氏が発案。文庫本にオリジナル全面帯を巻き、タイトルも中身も読めないようにして販売。7月21日から開始し、同店だけで5001冊を売上げ(8日時点)。

●出版梓会が主催する「梓会出版文化賞」に大月書店が選ばれた。草の根選挙を貫いたユニークな政治人生を描いた『バーニー・サンダース自伝』や『SEALDs 民主主義ってこれだ!』など、新たな取組みなどが高く評価された。

●紀伊國屋書店─減収ながらも6期連続の増益。売上高1059億6千万円(前期比2.5%減)。純利益7億7千万円(同2.6%増)。出店2店、リニューアル11店、閉店なし。2年後にはアメリカ、アジアにある海外法人やエヌ・ビー・シーなどを連結する。

●岩波ブックセンター信山社が11月25日に破産。債務届出期限12月26日。負債は債権者数約28名、約1億2732万円。10月に柴田信会長が急逝し事業継続が困難となり破産に追い込まれた。
posted by ロバの耳 at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 出版界の動き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

≪メディア随想≫ オスプレイ墜落とストロンチウム90

 沖縄名護の安部海岸浅瀬に墜落・大破した米軍オスプレイ事故に、沖縄・米海兵隊ニコルソン調整官は「パイロットの回避操縦に感謝すべきだ」と開き直る始末。植民地意識丸出し。
 「不時着」などと言いつくろい、機体の欠陥を隠蔽しようと必死だ。

 米海軍安全センターですら、最も重大な「クラスA」事故と認め、オスプレイ1機の値段85億円を上回る被害額95億円と算定している。
 この1年間、日本で米軍が起こした「クラスA」の航空機事故は、すでに6件と頻発している。沖縄が日本に復帰した1972年以降、県内で発生した米軍機の墜落事故は47件に上る。

 さらに怖いのはオスプレイには、回転翼ブレードの監視用に「ストロンチウム90」が搭載されている。
 現に、放射線から身を守る防護服のような白い服を着用した米兵が、事故現場の海岸で、残骸機体の処理に当たっている。
 海に沈んだ容器から、「ストロンチウム90」が漏れ、海岸を汚染しているかもしれない。体内に入ると骨や歯に吸収され、長期にβ線を放出し続け、骨ガンや白血病の原因になる。

 政府は、墜落の危険や騒音で苦しめられる村民の怒りなど顧みず、もうオスプレイの飛行再開を認めてしまう。22日には、北部演習場の返還記念式典が開かれる。これも発着用ヘリパッドを、大事な<やんばるの森>を破壊してまで、高江に建設することを条件にした、バーターによるもの。
 さらに同日、過去最大となる5兆1685億円の防衛費を組み込む、来年度予算案を閣議決定する。オスプレイ17機を購入する防衛省は、岩国・横田・木更津などへの配備をもくろむ。防衛相は沖縄の人々に、どの顔向けて、返還記念式典に臨席するのか。
【今週の風考計】12.18より
posted by ロバの耳 at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア随想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月14日

《遠吠え》ほとんど前時代的な零細出版人が自由気ままに実践する「時代に潰されないための浅知恵」=田悟恒雄

 けさの朝日新聞メディア欄インタビューは、過労死弁護団全国連絡会議幹事長の川人博さん。「過労死の四半世紀」を語っています。
 川人さんは、最近起きた電通新入女性社員過労自死事件の遺族側代理人を務めていますが、25年前の同社男性社員自死事件のときも獅子奮迅され、電通の責任を認める最高裁判決を引き出しています。
 今回の女性社員のケースは、同社がいっときは「反省」するかの姿勢を示したものの、その後四半世紀にわたって悪名高い『鬼十則』を掲げ続けるなど、事態はあまり改善されてこなかったことを暴露しました。
 日本を代表する大企業にしてからがこれですから、他の多くの企業の社員や非正規社員が置かれている状況は、推して知るべしでしょう。
 で、川人さんのお話の中で、零細出版人がいちばん興味を引かれたのは、インタビュアーが「パソコンや携帯電話をだれもが持つ時代です。過労死問題には、どう影響していますか」と問うたところ−。

 「昔は日曜日は仕事から解放されていたけれど、24時間365日連絡が取れる体制では、どうすれば労働者がオフの時間を確保できるかを、真剣に考えないといけない。」

 川人さんは、そう答えています。「ケータイ持タナイシュギシャ」を自任する、ほとんど前時代的な零細出版人としては、「わが意を得たり」といったところ。
 では、その対策は?

 「労働密度の高まり、労働強化は、ほぼすべての産業に行き渡ってますね。自宅で仕事をするのも、かつては風呂敷に資料を包んで持って帰る『風呂敷残業』でしたが、今はUSBメモリー。さらにメモリーがなくたって、連動できるシステムもたくさんある。オンオフを切り替える、国家社会レベルや企業レベルのルールをよほど覚悟を持ってつくらないと、働く人はもたないと思います。」

 まったく同感。さらに零細出版人にも付け加えさせていただくなら、「職場を出たら、仕事のメールは絶対開かない」と決断すること。
 零細出版人の周辺には、そのために迷惑した方も多いかと思いますが、これが「時代に潰されないための浅知恵」であり、「リベルタのリベルタたる所以」ということで、お許しあれ!

(「零細出版人の遠吠え」12/14より。 http://www.liberta-s.com/
posted by ロバの耳 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 遠吠え | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月09日

≪おすすめ本≫ 國重惇史『住友銀行秘史 』エリート行員が決意した内部告発への「たった一人の反乱」=山田厚史(デモクラTV代表)

 会社がおかしな方向に向かっている、と気付いた時あなたはどうする?
 分かってもらえそうな仲間に話す。それとなく事情をさぐる。
 その程度のことで流れは変わらない。下手に動けば上司に睨まれる。
本書は著者・国重惇史氏による、たった一人の戦いの記録だ。

 闇の勢力が介在した経済犯罪「イトマン事件」を通して銀行の病が描かれている。支店の窓口でにこやかに対応する女子行員、預金や融資の勧誘に訪れる外回り。それが我々の知る銀行だが、本店の役員階で、お偉方がなにをしているかは知られていない。「秘史」は実名で銀行上層部の面々の動きを書き留めた。

 昇進・出世を巡る権謀術数。どう振る舞えば会長や頭取の覚えがめでたいか、それが行動原理だ。「改革派」はごく少数だがいるものの、大勢を変えることは出来ない。
 著者は内部告発に活路を求める。大蔵省・日銀に「レター」を書きつづけ、親しい新聞記者を使い頭取・会長を追い込んでいった。やがて大蔵省の調査が入り、最後は東京地検が動いた。

 「MOF坦」と呼ばれる大蔵省担当を務めたエリート行員の奮闘。誰もが出来ることではないが「たった一人の反乱」が成功したのは、メディアを通じて「銀行の隠し事」を公にしたことだ。
 監督官庁に知らせただけでは、握りつぶされる恐れがある。だが世間が知れば、筋の通らぬことを放置してきた役所が問われる。内部告発は連動するメディアがあってこそ、有効に機能することをこの本は語っている。

「秘史」は、世間に伝わることで、教訓が社会の共有財産となる。
(講談社1800円)
posted by ロバの耳 at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする