2017年05月22日

≪メディア時評≫ いまや世界が危惧する「共謀罪」を廃案に!

 「共謀罪」が強行採決された。人の「内心」を探るには、日常的に市民や団体を監視し、メールやSNS・ LINEの盗み読みは不可欠。
 捜査機関は盗撮、密告奨励、スパイ潜入など、あらゆる手法を使うにきまっている。
 さらには別件で逮捕し、留置場という「代用監獄」で長期勾留、執拗な自白の強要、証拠のねつ造へとエスカレートするだろう。

 ここに一冊の本がある。藤原聡・宮野健男『死刑捏造─松山事件・尊厳をかけた戦いの末に』(筑摩書房)だ。
 24歳の若者が別件逮捕され、自分の留置場に送りこまれた前科5犯の警察スパイから「自白」をそそのかされ、殺人犯にデッチあげられた。死刑が確定。
 だが獄中29年の闘いで、証拠とされた血痕が、警察の捏造であるとされ、無罪を勝ちとる軌跡を追うドキュメント。

 共著者の一人・藤原聡さんは「足利事件の無罪といい、袴田事件の冤罪も含め、死刑まで捏造して、無実の人間がズタズタにされる悲劇を繰り返してはならない。今も代用監獄での取り調べ・自白の強要が続き、捜査や刑事司法の在り方が問われている」と言う。
 さらに無実なのに虚偽自白した事例の研究では「取り調べが6時間を超えると虚偽自白が増える」という報告もある。

 昨年10月に逮捕され、5カ月も長期勾留された沖縄平和運動センターの山城博治議長は、6月中旬にスイスのジュネーブで開かれる国連の人権理事会で、「表現・内心の自由」が侵害されている実態などについて発言する。
 また国連特別報告者ケナタッチ氏は、「共謀罪」がプライバシーや表現の自由を侵す危険を指摘する書簡を、安倍晋三首相宛てに送り、回答を求めている。いまや世界が危惧する「共謀罪」を廃案に追いこもう。

【今週の風考計】5.21より
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2017年05月21日

≪おすすめ本≫ 本田雅和『原発に抗う 「プロメテウスの罠」で問うたこと』─読むのが苦しいほどの<哀しみと怒りと呻き>=鈴木耕(編集者)

 私は時間と体調さえ許せば、毎週金曜日の夕方、首相官邸〜国会議事堂前の反原発デモに参加する。
 そのデモの場で何度か不思議なものを見た。鉄骨で造られた牛の像だ。その異様な像を乗せたトラックから「被曝した牛を飼い続ける哀しみと怒り」を語る野太い声が響いていた。それが本書の主人公のひとり「希望の農場」の吉沢正巳さんだった。

 本書は、評価の高かった朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」の中から、原発事故に翻弄されながらも、意志を捨てずに“抗い続ける人たち”を取りあげたルポルタージュ。凡百の小説を超える迫力と哀切に満ちている。
 中でも胸に突き刺さるのは、被爆牛の命を守ることで国家に異議申し立てをし続ける吉沢さんの姿だ。立ち向かおうとすれば過激といわれる。だが、真の過激こそが人を動かす。この生き方は凄いとしか言いようがない。

 小学生の時に「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語を作った大沼勇治さん。事故後、この標語が書かれた双葉町の看板が、撤去されることに怒り、「原発事故の痛みを伝え続けるために残すべき」と主張し続ける。
 その標語の陰で展開された双葉町の原発を巡る政治の変遷。反対派のリーダーが容認派の町長になる葛藤。

 また自死した妻への謝罪を求め続けた渡辺幹夫さんの東電と国との闘い。花好きで陽気な妻のはま子さんは、なぜ追い詰められたのか。読むのが苦しい。それは他の人たちにも共通する。原発とは人間を破壊するシステムだという著者の呻きが響く。

(緑風出版2000円)
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2017年05月15日

《遠吠え》「これ以上つまらないことはない」といった風情の記者会見は、またまたの「電波ジャック」か?=田悟恒雄

 毎週日曜日の朝、NHK地上1の「自然百景」と「小さな旅」を楽しみにしている零細出版人なのですが、きのうは「小旅」が始まったばかりの8時02分、突如「プツッ」と放送中断。旅人の女性アナウンサーの映像は、「世の中にこれ以上つまらないことはない」といった表情で鬱陶しそうにしゃべる官房長官の緊急記者会見へと切り替わってしまいました。
 で、「北のミサイル発射」について、記者たちが次々質問するのですが、官房長官氏はますますつまらなそうに、「それはまだ調査中」を繰り返すだけ。「じゃあ何でいま、そんな問答を聞かされなきゃいけないんだっ!?」と、何だか無性に腹が立ってきました。
 そんな程度の話だったら、通常番組を中断させることもなく、ストレートニュース枠で伝えるだけで十分じゃないですか? だって、「北のミサイル」なるものは、とっくに日本の排他的経済水域の外に落下していて、これからこっちに向かって翔んでくるという話じゃないのですから。
そういえば先月末の「北ミサイル発射失敗騒ぎ」では、東京のメトロが全路線で10分間運転を見合わせ、1万3000人に影響したなんてこともありました。
「そもそも」この手の「重大情報」が、ことさら大げさに流布されだしたのは、忘れもしません、3月10日のことでした─。あの日、森友学園・カゴイケセンセの記者会見がいよいよ佳境に入らんとするとき、突如、「南スーダンPKO撤収」のテロップが入り、カゴイケセンセそっちのけで、「アベ首相独演会」へと切り替えられ、官邸はまんまと「電波ジャック」に成功したのでした(Cf.「零細出版人の遠吠え」03/13)。
 マスメディアは、官邸の姑息な思惑に簡単にノセられることのなきよう、十分心していただきたいもの。いつまでもこんな馬鹿げたことを続けていると、いまに「狼少年」の話のようになってしまうのがオチじゃないか、と憂える次第です。

(「零細出版人の遠吠え」05/15より。 http://www.liberta-s.com/
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≪メディア時評≫ 限りなく不透明な「共謀罪」法案の罪と罰

「共謀罪」法案の強行採決を許すな! 疑問は解明されず、ごまかし答弁の30時間で採決する暴挙に怒りが湧く。

「共謀罪」にいう「団体の性格」「準備行為」とは何か。判断するのは誰か。「一般人」に及ばないという根拠は? 疑問は限りない。
「共謀罪」で処罰するには準備行為が必要となるが、どんな行為が該当するのか。
 実は捜査当局の判断・解釈に委ねられる。まず逮捕し、代用監獄で長期拘留のうえ自白の強要、証拠のねつ造など、恣意的な捜査・検挙による事件は、これまでに数多くの事例がある。
 最近でも、風力発電所の建設に反対する一般市民を警察が監視する大垣事件が起きている。現職の刑事が情報収集を目的に忍びこみ、内容を電力会社に提供していた。

 このように市民運動がターゲットになりうる。またメールやLINE の盗み読みも進むだろう。いったん「共謀罪」の仕組みを作ると、捜査機関は結果を出そうと、任意捜査から盗聴・密告奨励、挑発など、成績主義に走るのは目に見えている。
 その結果、さらに冤罪事件が発生しかねない。いまの日本の刑法では、犯罪が成り立つのは「着手したが完遂できなかった」事実が必要となる。「計画」だけでは犯罪にはならない。

 だが「共謀罪」が成立したら、「未必の故意」の黙示的「共謀」まで含まれてしまう。<森友疑惑>が象徴するように、「空気」「忖度」が行われる日本の社会では、「共謀罪」の適用範囲が極めてあいまいで、大きくなってしまう危険性をはらんでいる。
 ところが日本の政治家が関係する犯罪は、なんと「共謀罪」の適用対象から、ちゃんと外されているのだ。

【今週の風考計】5.14より
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2017年05月10日

《遠吠え》首相を拡張団にお迎えしてほくそ笑む「オトモダチ新聞」と「やじ馬回帰?」の週刊誌=田悟恒雄

 憲法記念日に大々的に「2020年改憲」を打ち出したアベ首相(いえいえあれは、「自民党総裁として」言ったことなんだそう)、8日の党役員会でも、「本年いよいよ歴史的な一歩を踏み出したい」と、いよいよもって前のめり。
 それにしても、「二つの顔」を持っているというのは、コンビニも顔負けするほど便利なことこの上ない─。
 で、衆院予算委員会の集中審議でくだんの発言の意図や具体的な改憲項目について問われた「かい人二面相」氏、「首相としてこの場に立っているので詳細は控える」などと、今度は都合よくスルリと逃げの一手。そればかりか、「総裁としての考えは読売新聞を熟読していただきたい」などと、「オトモダチ新聞」の拡張員のような答弁までして、予算委員会委員長に注意される始末。

 「『2020年に新憲法施行を』とまで明言したのは首相本人だ。ところが国会で質問されると、首相と総裁の立場を使い分け、『後は与野党で』とゲタを預けてしまう。
 これではあまりに無責任でご都合主義だ。首相が狙ったという『憲法議論の活性化』も阻むことになる。」

 「首相答弁に改めて驚」いたのは、9日の毎日新聞社説子だけではないでしょう。

 それにしても、首相の口から出た「読売新聞熟読推奨」発言ほど、昨今のこの国の政治の歪みを端的に表すものはないのではないか、と思います。
 そもそも、国会論戦で野党議員から問われた首相が、質問に対してはまともに答えず、「一新聞のインタビュー記事を読め」ということからして国会軽視の極みなのですが、「そう言われて(おそらく)喜んでいる報道機関」があることは、それと同じくらいおかしな話。
 「権力監視」(Watch dog)という「ジャーナリズムのレゾンデートル」をかなぐり捨てたマスメディアが、この国の民主主義をどれだけ壊してしまったか、改めて深く考えてみる必要があろうというものです。
 そんなとき、けさの新聞の週刊誌広告に、おやっと思わせる見出しを見つけました─。

 「被害女性が告発! 『警視庁刑事部長』が握り潰した
 『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦逮捕状』」

 『週刊新潮』5月18日菖蒲月増大号の全5段広告です。このところスクープを続ける『週刊文春』に触発され、『新潮』もおおっぴらに「権力批判」のスタンスを強めたということなのでしょうか?

 「安倍総理がもっとも信頼しているジャーナリストは誰か? 現時点では、元TBSワシントン支局長にして、『総理』の著書もある山口敬之氏(51)に違いない。だが、連日、テレビで安倍官邸の動向を解説する彼には、人に言えない過去があった。2年前、婦女暴行の嫌疑を掛けられ、逮捕状まで発付されていたのだ。逮捕の寸前、彼を救ったのは、安倍官邸で重用され、大出世した刑事部長。一強の権力者への忖度は犯罪まで消してしまうのか」と。

 かつての『週刊新潮』のスタンスを知る者としては、これは大変驚愕すべき事象なのですが、週刊誌というメディアが「やじ馬ジャーナリズム」という本来的な使命を取り戻しつつあるのだとすれば、大いに歓迎すべきことです。
 となれば、いつまでも「オトモダチ新聞」に安住している読売新聞は、やがて読者から見放されていく運命にあるのかもしれませんよ。

(「零細出版人の遠吠え」05/09-10より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年05月07日

≪おすすめ本≫カジノ問題を考える大阪ネットワーク編『これでもやるの? 大阪カジノ万博』─昔の栄光と誇大な経済効果にすがるカジノ万博の欺瞞を正面から衝く=松本創(ノンフィクションライター)

 2025年万博の大阪誘致が正式決定され、誘致活動が本格化する。だが、「いのち輝く未来社会」を掲げる博覧会の中身は、遺伝子データ活用の「万博婚」や死を体感するバンジージャンプなど空疎で悪趣味なもの。
 しかも博覧会事務局に提出する招致提案書では、万博とセットで進むカジノ計画には、一切触れないのだという。宗教上の理由から、ギャンブルをタブー視する国も少なくないからだ。

 こうした動きは、「万博にかこつけてカジノ」という本書の指摘を裏付けている。「健康と長寿の万博」は方便で、真の目的は賭博解禁、産廃の島・夢洲の開発、それに伴う巨大なインフラ整備と大企業の利益なのだ。市民の生活や福祉の向上は一切考慮されていない。
 本書では、各分野の専門家が、この計画に潜む数多くの問題点を列挙し、警鐘を鳴らしている。

 カジノ法案の拙速な審議と可決。地震が起これば津波と液状化に襲われる夢洲の防災上の欠陥。背景にある大阪湾岸開発失敗の歴史。ギャンブル依存対策がないまま賭博を解禁する危険性。本書に引用されている、パチンコ依存の母親に育てられた人の告白は痛ましい。

 そもそも万博がどれほどの意味を持つのか。都市の「成長戦略」や「経済効果」につながるのか。1970年の大阪万博は、高度成長期ゆえに成立した過去の神話に過ぎないのではないのか。
 昔日の栄光にすがり、誇大な経済効果を夢見て強引に計画を進める大阪政界と財界の欺瞞を正面から突く検証の書である。

(日本機関紙出版センター900円)
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2017年04月29日

《焦点》 長時間残業を認める「働き方改革」では過労自殺減らない=橋詰雅博

 長時間残業など「勤務問題」を原因とする正社員の過労自殺者は、年間2000人を超えている(昨年10月に厚労省が初めて公表した「過労死等防止対策白書」)。1日に5、6人が亡くなっているのだ。安倍内閣は過労自殺などの元凶となる長時間残業の是正などを中心とした働き方改革実行計画をまとめ、2019年度から実施する見込み。
 注目された残業時間の上限規制は、繁忙期の特例として「単月100時間未満」「2〜6カ月平均80時間」の上限を設けた。厚生労働省は、「1カ月に100時間か、2〜6カ月に月80時間を超える残業は過労で亡くなる恐れがある」として、過労死認定の基準としている。定めた上限規制は過労死認定基準と同じ水準であり、これでは長時間残業にお墨付きを与えるものだ。実際、15年末、過労自殺した電通の新入社員・高橋まつりさんの母・幸美さんは「(過労死を)なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません」と批判した。
 まつりさんの労災認定を勝ち取った代理人の川人博弁護士は、3月末にJCJ広告支部例会で「過労死問題」を報告した際、安倍内閣の実行計画についてこう述べた。
 「最近、各企業では月の残業時間を100時間切るとか80時以下にするなど長時間残業を抑制していこうという流れになっていた。そこに月100時間残業を認めた実行計画が出てきたことで、100時間残業はOKになった、それならば抑制に走らなくてもいいという心理が働きます。残業時間を減らすという流れがストップする恐れがある」
 しかも研究部門で働く人は対象外で、運輸や建設の従事者、医師も最低5年間適用されない。
 「特に研修医に過労死が目立ちます。医師は死んでもいいのかと思ってしまうほど医療現場は深刻だ」(川人弁護士)
 関連法案は秋の臨時国会で審議される。このままでは過労死・自殺は減らない。

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2017年04月28日

《焦点》 豊洲市場への移転反対運動を続ける東京中央卸売市場労組の中澤委員長にインタビュー=橋詰雅博

 豊洲市場への移転派と反対派が真っ向からぶつかる築地市場問題。移転の可否を東京都の小池百合子知事は、今夏にも総合的に判断して下す。個人加盟の東京中央卸売市場労働組合委員長で10年前から築地市場内で反対運動を展開し、昨年末に共著「築地移転の闇をひらく」(大月書店)を出版した中澤誠さん(52)に築地問題でインタビューした。
     ☆
 ―都議会百条委員会の証人喚問で証言した浜渦武生元副知事の偽証の疑いが濃厚になったが、どう思うか。
 浜渦さんは副知事を辞職した後、06年7月に参与に任命されて東京都に戻った。13年3月末まで参与を務めた。副知事、参与を通じて築地移転問題に深く関与していた。市場内の移転反対運動が盛り上がってきた07年ごろ、それを見るためかマスクをかけた浜渦さんが目撃されています。また、市場事業者らに土地の値段を聞いて回っていたとある団体の理事長から聞いた。01年7月の都と東京ガスとの基本合意以降、担当を外れたと浜渦さんは証言したが、彼が都政を牛耳っていたのは事実です。
 ―三つのグループが市場問題を検証している。まず3月19日に5回目の会合を開いた豊洲市場の土壌汚染対策専門家会議への評価は。
 一般傍聴者からの質問にも答えるという討議を公開する姿勢は高く評価できる。19日の報告で「(市場がある)地上部分は安全」とマスコミは報じたが、これはミスリード。報告では「将来想定されるリスク」があると指摘していて、さまざまな対応策を挙げている。豊洲移転派にとっては厳しい内容だ。
 ―次に都知事特命の「市場問題プロジェクトチーム」の小島敏郎座長(元青山学院大教授で弁護士)らは8日に築地は7年計734億円で整備でき、維持管理費も豊洲より安いとする案を提示。実現性はあるのか。
 事業者などに十分に聞き取り調査していないので、たくさん問題が出てくるだろうが、現在地での再整備計画のたたき台として優れた案で実現性がある。最大の魅力は、いまの築地市場の扇型の形状をそっくり取り入れている点です。この形状だと、デットスペースが少なく、車両が入り込めて、卸業者と仲卸業者が密着しているから、市場の基本である水産物の「集荷」と「分化」の作業が引き裂かれず効率よくできる。営業を続けながら工事をするので、店舗などの仮移転先となる「種地」が必要ですが、手当てできる。たとえば昨年11月オープンした市場に隣接した場外の「築地魚河岸」(2棟に分かれ、広さは合計約8000平方b)はその有力候補施設。1990年代に400億円を投じて築地再整備を進めて頓挫したころと比べて、水産物取扱数量は70%に減っていて、事業者も減少している。99年に卸売市場法が改正されてセリが撤廃された。セリの時間がなくなった分、市場の混雑が分散した。こうした状況を踏まえると、営業しながら建て替えはできる。
 ―庁内組織「市場のあり方戦略本部」をどう見るか。
 本部長の中西充副知事は豊洲移転推進派だが、頭がきれる真っ当な人。会合を1回開いただけだが、公正に運営することを期待している。
 ―豊洲市場への移転に反対する最大の理由は何か。
 豊洲市場は真ん中を通る道路によって施設が左右に分断されている。土地の形状が市場に向いていない。4階建ての立体配置も問題。要するに品物を動かす物流が非効率の極みだ。物流コストがはね上がり、利益が見えない。採算性が不透明な市場と分かっていながら、そこに投資しろというのは、理不尽な話だ。大規模な土壌汚染がなくても反対します。
 ―移転に反対する市場の事業者はどのくらいいますか。
 築地市場には卸や仲卸など合わせて約1000事業者がいる。その多くが移転に反対。仲卸業者の場合、移転のための設備費用を半分ほどすでに使っている。移転延期によって、残ったお金を築地に再び投資している。お金がない状態なのに、豊洲市場への早期移転を都議選の公約に掲げた自民党は簡単に考えている。豊洲に移転が決まったら100事業者は廃業する。また、大手スーパーなどの小売業者は通告通り安心・安全でない豊洲市場から食品を購入しなくなります。
 ―築地市場の土壌汚染も問題視されているが、大丈夫か。
 検出されたフッ素やヒ素などは自然由来と考えられ、懸念する必要はない。アスベストも問題にならない程度だ。戦後、米軍のクリーニング工場があり、いろんな薬品が使われたが、その場所は市場の端っこで、汚染はごく一部。約100億円かけても土壌汚染対策に失敗した豊洲は、汚染を片づけられないから強引に施設を建てた。事情がまったく違う。


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2017年04月26日

《遠吠え》劣化閣僚の辞任劇を見ていてガッテン、「正直者はバカを見る」ってのは、やっぱりホント=田悟恒雄

 「バッカだねぇー」は、車寅次郎氏の "おいちゃん" の常套セリフですが、そう言ってみたくもなります─。

 「皆さまのおかげで東日本大震災の復興も着々と進んでいる。…これがまだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な、甚大な被害があったと思っている。」

 つい先だっては、原発事故の自主避難者に対し「自己責任だ」と言い放ち、しぶしぶ発言を「謝罪」したばかりの今村雅弘復興相が、またまたやってくれました。
 このご仁、ご自分のバカさ加減が一向にお分かりいただけないようで、「辞任」は遅すぎたくらい。
 で、その「バカさ加減の因って来るところは奈辺にあるのか?」といえば、弱者(この場合は東北地方)に対する「救いがたい差別意識」ではないかと思われます。
 でも、これは決して今村氏に限ったことではありません─。もっぱら大都市で大量消費する電力を確保するのに、「原発の危険」は過疎地に押し付けてしまう。迷惑千万な「米軍基地の危険」は、地元の民意を踏みにじってまで、狭い沖縄に押し付けてしまう。
 今村某氏は、そうした「弱者差別」という政権中枢の本心を、2度もポロッと漏らしてしまっただけなのかもしれません。というわけで、 "おいちゃん" のセリフを投げつけられはしても、「実は正直者なんだ」と言えなくもありません。
 だって、思い起こしてもみてください。稲田朋美防衛相や財務省・佐川宣寿理財局長らは、国会の場で、いまだに見え透いた虚偽答弁を繰り返していても、決しておとがめを受けることなく、平然としていられるじゃありませんか。
 それに、忘れちゃいけません。「森友問題」で尻尾を掴まれたアベ首相夫妻も、「疑惑の解明」どころか、もっぱら「逃げ切り」を図るばかりじゃないですか。
「正直者はバカを見る」ってのは、やっぱりホントなんですかね。

(「零細出版人の遠吠え」04/26より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年04月24日

《メディア時評》 天皇「退位」問題の本質は何か=梅田正己

 天皇「退位」の問題が、与野党間で政治問題化している。
 昨年8月のテレビ放送による「天皇メッセージ」は国民の多くの共感を呼んだ。翌9月の朝日新聞の世論調査では、退位の「恒久制度化」を求める声が76%に上り、「今の天皇に限り」というのは17%しかなかった。
 この国民世論に従えば、皇室典範の一部を改正するだけでさしたる問題もなかったはずである。
 しかし政府はそうしなかった。有識者会議なるものを設け、専門家からのヒアリングを重ね、なんとか理屈をつけて退位の「恒久制度化」を阻止しようとしてきた。なんで、だろうか。
 根底にあるのは「一世一元」制の問題である。一人の天皇には一つの元号、譲位は死去によってしか行われず、したがって元号もその際にしか改元しないという、この「一世一元」制が、生前譲位を認めれば崩れてしまうということから、政府は手段を尽くしてその実現を阻もうとしているのである。
*        *

 しかしこの「一世一元」制にはまだ一五〇年の歴史しかない。それ以前の千数百年に及ぶ天皇家の歴史においては「生前譲位」がむしろ常態だった。そのため天皇と共にその父の太上天皇(だいじょうてんのう、略して上皇または院)が存在するのが普通であり、平安時代の末期にはその上皇による「院政」が百年も続いた。
 また元号も、一代の天皇の間にも吉兆や凶兆に応じて改元された。明治天皇の父の孝明天皇の場合は在位21年の間に嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応と6回も改元されている。
 それを、慶応4年から明治元年へと切り替えた一八六八年9月、維新の新政権は「一世一元」制へと根底から転換したのである。
 なぜか。新たに創ってゆく中央集権国家の政治的・理念的支柱として、神の権威・権力をそなえた絶対的な「神権天皇」が必要だったからである。
 もともと元号というのは、君主が土地、人民とともに時間をも支配するという観念からつくられた。その原理どおり、天皇は即位から死去するまでその生涯をつうじて在位し、元号も一つで通すことにしたのである。
 こうして、明治天皇の在位期間がそのまま「明治時代」として国民に意識されることになった。徳富蘆花は日誌風の随想集「みゝずのたはごと」に、明治天皇逝去の翌日、大正元年7月31日の日付でこう書いている。
 「陛下の崩御は明治史の巻を閉じた。明治が大正となって、余は吾生涯の中断されたかの様に感じた。明治天皇が余の半生を持って往っておしまひになったかの様に感じた」
 明治天皇の死が、「明治」という一つの時代の終焉を痛切に蘆花に伝えたのである。
*        *

 この「一世一元」制は昭和20年まで続いたが、アジア太平洋戦争での敗戦により大日本帝国が崩壊し、「神権天皇制」が「象徴天皇制」へと転換するとともに連合国の民主化政策によって皇室典範から除かれた。
 しかしやがてその復活の動きが始まる。一九六六年、建国記念の日(旧紀元節)の制定が実現すると、のちに今日の日本会議へと発展する政治勢力の運動によって一九七九年、「元号法制化」が実現する。これにより実質的に「一世一元」制もよみがえった。
 その「一世一元」制が、敗戦時はまだ11歳、その後は「平民」出身の皇后とともに戦後民主主義の時代を生き、一九八九年に「即位以来…日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごしてきた」(放送メッセージ)天皇によって修正されようとしているのである。
 安倍政権が「生前譲位」を食い止めようと躍起になっている背後にはこういう・歴史≠ェある。現在公表されている自民党の改憲草案では、天皇は国家の「元首」と位置づけられている。

DailyJCJ04月22日より
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2017年04月20日

《遠吠え》森友問題で「誰よりも名を上げた」佐川理財局長のウソを完膚なきまで暴く財務省新発掘資料=田悟恒雄

 つい「原発事故なんかなかったかのように」思えてしまうこの国で、「まるで何もなかったかのように」消え行く森友疑惑。
 この問題が明るみに出てから「誰よりも名を上げた男」財務省・佐川宣寿理財局長のウソを完膚なきまで暴き出す「新資料」が発覚しました。
 これを発掘したのは、フリーライターの菅野完さん。菅野さんがかざすその紙には「今後の手続きについて(説明資料)」とあります。書いたのは、財務省近畿財務局。
菅野さんの「絵解き」に耳を傾けると─、

 「この紙で説明される内容は、土地取得要望書の提出から始まり、国有財産近畿地方審議会が平成27年2月に開催される予定であることや、財務局と航空局による現地確認のスケジュール感、有益費に関す事項や、定借後の定期報告のあり様などなど、微に入り細にわたっており、かつまた、網羅的だ。さらには、貸付契約の話だけでなく、最終的に売買契約に至る道筋まで、すべて、完全に説明しきっている。…近畿財務局は森友学園に『もっとも手早く土地を入手する方法』を手取り足取り教えているとしか思えない。」

 こんな文書が何と2014(平成26)年12月17日に、森友学園側に手渡されていたのです。
 この間、何度も国会答弁に立った佐川理財局長は、「第123回国有財産近畿地方審議会より前に、貸せるだろうとの見通しや、売買契約の見通しを伝えたことはない」などと明確に否定していたのですが、それがまったくの虚偽であったことを、この近畿財務局資料が雄弁に明かしてくれました。
 菅野さんの手元にはまだ「段ボール4箱ほどの〔カゴイケセンセからの〕資料の束」があるそうで、「もう少し丹念にこの資料の束を掘り返してみるとする。佐川局長は期待して待っていてほしい」と言っています。
 そりゃあ、こちとらも大いに楽しみ。

(「零細出版人の遠吠え」04/20より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年04月19日

≪おすすめ本≫ 山城博明 写真 伊波義安 解説『沖縄 抗う高江の森 なぜ世界の宝を壊すのだ!』─60年余も虐げられてきた沖縄の人びとの抵抗の記録=中村梧郎(フォトジャーナリスト)

 やんばる…。沖縄本島北部全域を亜熱帯の照葉樹林が覆う。イタジイの下には巨大シダ(ヘゴ)が林立する。高江のヘリパッド周辺では絶滅危惧種・貴重種に指定される植物、1313種が確認されている。動物ではノグチゲラや飛べないヤンバルクイナなど、5種の絶滅危惧種が細々と生きる。

 70年代から沖縄を記録してきた写真家・山城博明は、もともとは読売新聞の写真部員であった。後に琉球新報に転じ、2015年以降はフリーとなった。本書は、60年余の写真報道をまとめた抵抗の記録である。
 彼は、辺野古の人々、壊されるやんばる、米軍・北部演習場という三つの角度から沖縄を見据える。ヤンバルは南ベトナムの森に似ている。当時米軍はそこをベトナムでの訓練の場とした。森に「ベトコン」村が作られ、村民として高江の住民が駆り出された歴史もある。

 北部訓練場が部分返還される代わりに、6つのヘリパッドが高江に作られる。既設とあわせれば28ヵ所。そこをオスプレイが飛び回る。昨年暮れ、米海兵隊中将が「不時着だ、沖縄は感謝せよ」との傲慢な発言をした墜落機も山城はいち早く撮っている。
 本書の記録は、虐げられた沖縄の歴史を反映する。機動隊に抗う非暴力の人々の表情も印象的である。年初に東京MXTVが沖縄の運動を「金で雇われている」とデマ放送したのは許しがたい事件であった。虚報はジャーナリズムではない。

 今年末からはオスプレイが本土上空のコースを飛ぶ。沖縄はまさに日本全体の問題なのである。

(高文研1600円)
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2017年04月12日

≪おすすめ本≫ 小笠原みどり『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』─「日本で成立した秘密保護法は、実はアメリカがデザインした」=桂 敬一(元東京大学新聞研究所教授)

 ジュリアン・アサンジによるアメリカの戦争をめぐる秘密情報の暴露(ウィキリークス・2010年)に続き、かつてCIAの職員だった、エドワード・スノーデンによる米NSA(国家安全保障局)の世界同時監視の実態暴露(2013年)も、国際的に大きな衝撃を与えた。

 本書は、そのスノーデンとのインタビューの記録である。なぜそうしたインタビューを思いつき、実現することになったかを著者が述懐する序章が、まず興味深い。
 朝日の若手女性記者だった著者は、自衛隊出動体制整備のための「新ガイドライン関連法案」・「周辺事態法案」などと共に、盗聴法や住民基本台帳ネット=国民総背番号制の仕上げを急ぐ政府の動きや、至るところに監視カメラが増える社会の変化を追い、国民全部が権力にすっかりプライバシーを奪われていくことに危惧を深めてきた。

 ところが、そうした感度が鈍磨した社内の出来事に遭遇、失望するに至って退社を決意、カナダの大学に留学、監視社会の研究に本格的に取りかかったのだ。本題とは逸れるが、メディア内の危機感の衰えという問題も、実は今、たいへん重たい意味を持つ、と思えるのだ。

 著者は、スノーデンが横田基地にもいたことを知り、当時の工作活動の内容にも興味を持ち、モスクワに亡命中の彼を大学のビデオ会議室のスクリーンに呼び出し、約二時間半に及ぶインタビューを実現した。
 その内容は、現代の監視社会の危うさを証す重要な情報を多く含んでおり、実に参考になる。「日本で近年成立した秘密保護法は、実はアメリカのデザイン」という証言には、愕然としながらも、否応なく納得させられてしまった。

(毎日新聞出版1400円)
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2017年04月10日

≪出版界の動き≫ いま出版社・取次・書店・愛書家を襲う6つの激動の波

 先日、「出版界の動向を予測する」と題した、星野渉(「文化通信」編集長)氏の講演を拝聴した。とりわけ深刻な問題として6つのポイントを挙げ、詳述された内容に衝撃を受けた。

 1つは、出版物流の危機である。運転手不足やマージンの低さがネックとなり、書店やコンビニに本を配送できない事態が生まれている。運賃を2倍の要求に、どう取次や出版社が応えるのか、激しい攻防が予測される。

 2つは、アマゾンが出版社との直接取引で仕入れた書籍をネット販売し、かつ重版未定の本でもプリント・オンデマンドで、1冊から注文に応ずるなど、書籍流通の見直しが起きている。

 3つは、雑誌の電子化・デジタル化が加速し、コンテンツもネットやイベント、通販などと連携したサービス提供にシフトするという。

 4つは、紙媒体のコミックが激減し、電子版コミックが1460億円(前年比+27%)の売り上げ、急速に伸びている。

 5つは、書店の統廃合が進行する。トーハン・日販の2大取次による書店系列化のあおりを受け、1万4千軒の本屋さんが半減の7千軒になるといわれる。いま日本全国で2割の自治体が、新刊を扱う書店ゼロだ。町の本屋さんは消えるのみ。

 6つは、出版社のコングロマリット化・再編に向けた動きが顕在化する。KADOKAWAは、所沢市に図書館・美術館・博物館を融合させた文化コンプレックスを建設する。また蔦屋書店などを経営するCCCグループが、徳間書店を子会社化して、CCCの映像・音楽事業と連携した出版物の刊行を手がける。
 この激動に愛書家の不安は尽きない。

【今週の風考計】4.9より
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2017年04月06日

《焦点》 客観報道が沖縄ヘイトを煽ると沖縄タイムス東京支社報道部長語る=橋詰雅博

 沖縄タイムス社の東京支社報道部長の宮城栄作さん(45)が4月から那覇市の本社に戻る。宮城さんは、14年11月に翁長雄志沖縄県知事が誕生後に東京支社に赴任した。
 「当時、辺野古新基地建設阻止を掲げる翁長県知事の発言を本土メディアは大きく報道し、沖縄への関心が高まっていると感じた。市民運動も沖縄問題を取り上げ心強く思った。だが、一方で日本の国防のためには沖縄の米軍基地は必要だからお前たち黙っていろ、基地に反対するのは日本人じゃないというヘイト発言が目立った。やりきれない気持ちでした」
 最近では東京MXテレビ番組「ニュース女子」の沖縄ヘイトデマ放送がその代表格だ。
 「沖縄への偏見とデマが地上波で放送される事態にまでなった。取材・事実に基づかない伝聞情報だけで番組をつくるのは、報道とはいえない。地上波は拡散力が強く、市民に浸透しやすい。にもかかわらずデマを流すのは、日本社会が危ない状況になっているからだと思う。本土と沖縄の分断につながります」
 また「ニュース女子」問題について全国紙の報道も「甘い」と指摘する。
「例えば朝日新聞は、放送の中身が正しいのかそうでないのか自ら取材・調査すべきなのに、専門家と称する人のコメントを中心とした記事でした。こんな客観報道は、ヘイト発言を容認することなる。ネット空間にあふれる沖縄ヘイトを煽ります。両論併記は悪しき記事だ」
 住民の暮らしや安全、人権に軸足を置く報道が沖縄メディアの特徴だという。
 宮城さん、今後は政経部で仕事をする。

 
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2017年04月05日

《遠吠え》森友が「十八番の復古教育」を捨て去ろうとするとき、国が「教育勅語」を持ち上げる不思議=田悟恒雄

 菅官房長官は4月3日の記者会見で、「教育勅語の教材活用を否定しない」とした先の政府答弁書の閣議決定からさらに踏み込んで、「道徳教育の教材」として使うことを「否定できない」と述べました。
 この問題をめぐっては、「教材として使うことは差し支えない」(14年4月、参院文教科学委員会での下村博文文科相答弁)、「教育勅語に流れているところの核の部分は取り戻すべきだ」(17年2月、衆院予算委員会での稲田朋美防衛相答弁)などの「不規則発言」(?)が相次いでいましたが、ついに政府として大っぴらにこれを追認したことになります。
 そもそもいまになってなぜ「教育勅語」かといえば、ご存知「森友学園・塚本幼稚園」の「教育勅語暗唱教育」の衝撃的な実態が明るみに出たことが、きっかけでした。
 いまでこそ口をぬぐって逃げ回っているアベ首相夫人昭恵氏も、つい先だってまでは「こちらの教育方針は、主人も大変素晴らしいと思っています」などと公言していた事実は、消そうにも消すわけにはまいりません。
 そんなとき、このたびカゴイケセンセに代わって森友学園の理事長に就任した長女・町浪氏が、学校法人塚本幼稚園幼児教育学園のHPに、「新理事長より皆様へ」と題する「とても興味深い挨拶文」を寄せています─。

 「マスコミ等の報道やご批判にありますように、ともすると、『愛国教育』、『国粋主義』と捉えられ、具体的には『教育勅語を暗唱させる幼稚園』、『自衛隊行事に参加する幼稚園』とのご指摘を受け、社会問題化するに至りました。これらは全て、教育基本法が平成18年(2006)年に改正された際に新たに設定された『我が国と郷土を愛する態度を養う』との教育目標を、幼児教育の現場で生かそうとした前理事長なりの努力と工夫の結果であると理解しております。」

 ここで注目すべきは、第1次アベ内閣でお坊ちゃまの「お腹が痛く」なる前に強行した「改正」教育基本法の教育目標を生かそうとした結果、あの「ウルトラ右翼教育」になった、と「理解して」いることです。
 カゴイケセンセの薫陶を強く受けてきたであろう町浪氏が、実際にどこまでやれるかは不明ですが、次の決意表明は注目されてしかるべきでしょう─。

 「教育基本法が昭和32〔22年の誤り〕(1947)年に制定された際に示された『われらは、個人の尊重を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を徹底普及しなければならない。』との指針を常に念頭におきつつ、内容・カリキュラムを柔軟に見直してまいります。」

 つまり町浪氏は、第1次アベ内閣による2006年「改正」教育基本法の目標を達成しようとして躓いた前理事長の「教育理念と方針及び指導法を批判的に総括」し、新たに1947年制定の教育基本法の精神に立ち返って、幼稚園を再建しようと決意しているのです。
 でも、何だか妙ですね?
 世間様からあれだけ猛烈に叩かれたカゴイケ・ファミリーが、ファーストレディから「主人も大変素晴らしいと思っています」とまで誉めちぎられた「十八番の復古的教育方針」を捨て去ろうとしているとき、国の方はそれとは真逆に、問題の「教育勅語」を道徳教育の教材として認める姿勢を鮮明にしているってわけですから。

(「零細出版人の遠吠え」04/04-05より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年04月03日

≪おすすめ本≫ 吉田敏浩『「日米合同委員会」の研究 謎の権力構造の正体に迫る』─傍若無人にふるまう在日米軍、その秘密のベールを剥ぎとる=末浪靖司(ジャーナリスト)

 米軍はこの日本で憲法や法令を無視して自由に振る舞っている。それは、米軍への憲法の適用を拒否する最高裁とともに、日米合同委員会での密室協議に支えられている。それほど重大な役割を果たしている日米合同委員会だが、これについて書かれた本は出てこなかった。それには理由がある。
 米占領下に作られたこの機関は、米軍司令部が実質的に支配しており、完全な秘密のベールに覆われている。そのベールをはぎ取ったのが本書。

 たとえば冒頭に1972年の沖縄市役所の文書が出てくる。これにより著者は、米側委員が日本大使館参事官を除き、すべて軍人であることを突きとめた。米軍人が日本政府を動かす機関なのだ。政府公表の分科委員会・部会一覧には米側委員は書かれていない。

 本書を読むと、情報公開法による資料請求権も駆使し、厳重に閉ざされた秘密の扉をこじ開ける著者の執念が伝わってくる。著者は犯罪米兵を免罪する刑事裁判権、航空管制による空の支配、基地管理権など具体的事実で、それを明らかにする。
 著者はこれまで米軍の秘密を明らかにする多くの著書を書いてきた。合同委員会にメスを入れることができるのは、そうした蓄積があるからだ。

 日米合同委員会の重要な事実は、米国の解禁文書にもほとんど出てこない。なぜなのか。国立公文書館でアーキビストに尋ねたら、最近は軍事関係の重要な文書はこないという。それだけに日米合同委員会を通じての米軍支配の仕掛けを明らかにした本書の価値は高い。

(創元社1500円)
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2017年03月31日

《焦点》 原発推進の社論に逆らえない=橋詰雅博

 東京電力福島第一原発事故から6年が過ぎた。事故当時、政府が報道関係者の現地への立ち入りを規制したこともあって、原発報道は政府・東電の意向に沿い国民がパニックに陥らないようにと、自己規制した「大本営発表」になってしまった。このため市民の原発報道不信が強まったのである。
 メディアのこうした福島原発事故報道について、実際、取材にあたった記者たちは自己規制をどの程度感じていたかを示す貴重なデータがある。先月の12日に「報道の自己規制を検証する」をテーマに講演(JCJ主催)した上智大メディア・ジャーナリズム研究所スタッフの上出義樹さん(新聞学博士)が、提示した。それは2011年5月から7月に実施されたメディア12社51人の聞き取り調査だ。
 調査に応じたのは、政府・東電の共同記者会見や経済産業省原子力安全・保安院(原子力規制委員会の発足により組織は廃止)の会見に出席した記者。改めて読んだ上出さんの著書「報道の自己規制」(リベルタ出版)によると、朝日(8人)もNHK(7人)も、「政府や東電などの圧力はない」と自己規制を否定した。読売(7人)の記者3人は「正力松太郎(元読売社主)以来の原発推進の社論に逆らう記事は書きにくい」などと社内に自己規制があることを濃淡の差はあるが認めている。さらにその一人は、原発反対デモを読売は小さめでしか扱わないことに対し、「普通の人たちが多数参加した原発反対デモは大きく報じるべきだ」と自社の編集方針に反発。しかし「この手の記事はデスクが取り合ってくれない」と吐露した。
 講演で上出さんはこう解説した。
 「51人のうち自己規制を認めたのは7人で、13.7%。他のメディアに比べ読売は自己規制を認める記者の割合が高く、社論に反発や違和感を持っている」
 抑制的な原発報道を強いられ、不満を持つ読売の記者は結構いるようだ。
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《遠吠え》貧すれば鈍し、社会的責任を忘れ、防衛予算に食指を伸ばすフランケンシュタインたちへの警鐘=田悟恒雄

 昨夜のNHK・BS1「フランケンシュタインの誘惑/科学史 闇の事件簿」シリーズ「宇宙に魂を売った男」は、なかなか見ごたえがありました。
 宇宙(月)への憧れから、ナチスのもとでV-2ロケットの開発に従事し、敗戦後素早く米国へ移住、大陸間弾道ミサイルの開発やアポロ計画の月面着陸を実現したドイツ出身の「天才科学者」ヴェルナー・フォン・ブラウンの生涯を追いながら、「科学者の隠れた闇」を照らします。
 「科学の光と闇」の二面性を浮き彫りにする宇宙物理学者・池内了さんと天文学者・阪本成一さんの解説が光りました。
 ちょうどきのう、この問題に関わる日本出版者協議会(出版協)声明の起草作業をしていたところでしたので、大きな関心を持って視聴することができました。
 事のついでに、きのう発表の声明文を披露させていただきましょう─。

 ■軍事目的の科学研究に反対する

 一昨年、防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」を発足させて以来、いわゆる「デュアルユース(軍民両用)研究」に応募する大学や研究機関が顕著に見られるようになった。
 この「研究推進制度」は、「将来の装備開発につなげるという明確な目的に沿って公募・審査が行われ、外部の専門家でなく同庁〔防衛装備庁〕内部の職員が研究中の進捗管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」(日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」2017年3月24日)ことが指摘されている。
 学術・研究の健全な発展のためには、政治や軍事からの介入を排し、科学者・研究者の自主性と自律性を最大限尊重しなければならないというのが、悲惨な戦争からこの国が学んだ重要な教訓であった。
 しかるに昨今、大学や研究機関の間に軍事的安全保障研究が「学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあること」(同)を軽視し、「軍事目的の科学研究」に安易に与してしまう傾向が見られるのは、「学問の自由」(日本国憲法第23条)にとっても、ひいては「言論・出版の自由」(同第21条)にとっても由々しきことである。
 前述の日本学術会議声明が「むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である」と訴えているように、その背景には、「潤沢な防衛予算と貧困な文教予算」というこの国の歪んだ予算配分の問題がある。こうして研究費の乏しい研究者が「デュアルユース研究」という名の「軍事研究」に仕向けられている、と見ることもできよう。
 日本出版者協議会(出版協)は、前述の日本学術会議「軍事的安全保障研究に関する声明」に賛同し、「科学者の自主性・自律性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実」を政府に要求するとともに、科学者・研究者には「科学者の社会的責任」を十分果たされるよう強く望むものである。

(「零細出版人の遠吠え」03/31より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年03月29日

《焦点》 安倍政権「情報隠し」一段と強化。経産省施錠、メディアの抗議を一蹴。「知る権利」阻害=橋詰雅博

 2月末から「情報管理を徹底する」という名目ですべての執務室の扉を日中でも施錠した経済産業省の異様な措置に、取材が規制されると経済産業記者会は撤回を申し入れた。だが世耕弘成大臣は拒否。メディアの要求を一蹴する安倍政権の情報隠し≠ヘひどくなる一方だ。
疑問抱く閣僚も
 執務室を施錠したのは経産省が入る本館と、資源エネルギー庁や特許庁、中小企業庁などが入る別館も含まれる。解錠できるのは職員だけに限られる。東京・霞が関の中央省庁の中で、全執務室を施錠したのは経産省だけ。前身の通産省時代を含め経産省は、それまでは民間人も自由に出入りできるオープンな役所だった。それがガラリと変わったのだ。経産省のやり方を疑問視する閣僚もいる。山本有二農林水産相は「閉鎖社会をつくるようなイメージであるなら、検討を加える必要がある」と指摘。山本公一環境相も「好ましいことだとは思っていない」と発言した。
世耕大臣は指示していないと言うが、「密室化」に加えて、広報室は、作成した非公表の取材対応マニュアルを職員に配布。取材には課長、室長以上の幹部が応接スペースで対応し、同席した別の職員がメモを取り、その内容を広報室に報告する、庁舎外での取材は原則応じないなどと定められている。
社説などで反論
メディアの反発は速かった。テレビは施錠された執務室の映像を流し、新聞各紙は一斉に批判記事を掲載。社説でも「異常な情報官制の発想」(毎日)「世耕氏には記者が『敵』なのか」(読売)「密室化は不振を招く」(朝日)などと主張した。日頃、安倍政権寄りの紙面づくりをしている読売が、何回か大きく報じていたのは意外だった。社論に反するような事柄ではないので正面切って反論した。
本紙は経産省広報室と、記事に共鳴したので経済分野を束ねる経済部長の話を聞きたいと読売新聞東京本社広報室にそれぞれ取材を申し入れたが、残念ながら返事はなかった。
経産省担当記者がこう言う。
「職員は『すいませんね、大臣が勝手に始めたことで、ご迷惑かけて』とまず断り、取材に応じていますよ。これが職員の本音でしょう」
安倍首相の信頼を取り戻すため
 世耕大臣がこんな措置に踏み切った理由について、2日の参院予算委でこの問題を取り上げた民進党の杉尾秀哉議員がこう解説する。
 「2月の日米首脳会談で日本政府はトランプ大統領へのお土産として年金積立金管理運用独立行政法人が米国のインフラ事業に投資する計画を立てていた。ところが安倍首相の訪米前に新聞が報じた。経産省官僚がメディアに情報を流したからです。世耕大臣に対して安倍首相などが激怒したそうです。結局、この投資話は首脳会談では出ませんでした。またロシア経済分野協力担当相を兼任する世耕大臣は策ン年末の日露会談でも成果を挙げられなかった。安倍首相の信頼を取り戻すため情報管理の徹底に手をつけたと思います」
前代未聞の措置
 杉尾議員はこう続ける。
「経産省の特定秘密保護法に基づく特定秘密指定件数は数件。極めて少ないのに全執務室の施錠、職員への取材対応マニュアルの配布は、やりすぎ、前代未聞。これでは職員は委縮するし、記者も職員との接点をなくす。お互い切磋琢磨する機会が奪われる。プラスにならない」
 目下、世耕大臣と記者会はケンカ状態だ。
 安倍政権下では、南スーダンの日報を破棄したと非開示(後日、保管が判明)、大阪府の国有地の売却記録を財務省が破棄と情報隠しが目立つ。経産省施錠もその延長線上にある。
 国民の知る権利が損なわれる。オープンな経産省に戻すべきだ。

 
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2017年03月26日

≪お知らせ≫ 4月8日(土):JCJ出版部会 総会&例会

 いま出版界は未曽有の危機に直面しています。売り上げは最大の落ち込み・ピーク時の半分です。
 この1年で「町の本屋さん」は740店が閉鎖しました。取次では帳合い競争が激しさを増し、書店の系列下に躍起です。
 再販契約なしの「アマゾン商法」も大手をふるい、出版界を席巻しています。
 総会&例会への参加を呼びかけます。そして、この事態にどう立ち向かうか、知恵を集め行動をおこそうではありませんか。

日時:4月8日(土)
 13:00〜 総会:活動報告と方針討議
 14:30〜 講演:星野渉(「文化通信」編集長)「出版界の現状と打開への道」

場所:JCJ事務所・会議室 地下鉄「神保町」駅A5出口3分、千石屋ビル4F


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2017年03月24日

《遠吠え》カゴイケ証人喚問に、木っ端役人の繰り出す投げ縄に抗い堂々渡り合う石川五右衛門の姿を見た!=田悟恒雄

 いやー、実に堂々たる風格でした。与党議員の質問風景から、私ゃ、「木っ端役人に囲まれた石川五右衛門」の姿を思い浮かべてしまいました。
 ホントはスネに傷ある与党議員連中が、「何とか偽証罪に引っ掛けてやろう」「証言の信用性を貶めてやろう」と、何本もの投げ縄を蜘蛛の糸のように繰り出す中、堂々と渡り合うカゴイケ証人…。
 そんな証人の繰り出す証言は、なかなかのものでした─。
 「事実は小説より奇なり」には、思わず吹き出してしまいましたが、「議員の言っていることは的外れ」は、毎度おなじみ菅官房長官の常套句「それは当たらない」のしらじらしさに比べれば、胸の空くほど共感できるものでしたし、「たたみかけるようで非常に失礼だ」は、証人席に立つカゴイケセンセの「並々ならぬ決意と覚悟」を知るに余りあるものでした。
 なかでも、「一私人付きの政府職員(!?)」谷査恵子氏がカゴイケセンセの依頼を受けて、財務省に照会したことを明瞭に示すファクスの出現は、「一私人」アベ昭恵氏のこのスキャンダルへの関与を疑わせるに十分なものがありました。
 で、「虚偽陳述をすれば偽証罪に問われる」証人席で「一民間人」が、重大なリスクを負いながらあれだけの証言をしているというのに、「一私人」ファーストレディ氏の方は、「昭恵夫人は中身には全く関与していない」などと官房長官に言わせているというのは、どう考えてもおかしい。
これはもう、アベ昭恵氏始め、事件への関与を疑われる政治家や官僚たちの証人喚問が欠かせない、ということです。

(「零細出版人の遠吠え」03/24より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年03月19日

≪おすすめ本≫ 山下幸夫編『共謀罪なんていらない!? これってホントに「テロ対策」?』─安倍政権の嘘と偽りの手口を暴露、現代版<治安維持法>そのもの=丸山重威(元関東学院大学教授)

「一般の人が対象になることはない」「法案を整備しなければ東京オリンピックをできないと言っても過言ではない」というのは安倍首相、「法案が提出されてから議論してほしい」というのは金田勝年法相。ともにテロ対策を名目に共謀罪を入れようという「組織犯罪処罰法改正案」についての国会答弁だ。
 共謀罪は過去に3回廃案になった。それを政府は今度、「五輪」と「テロ」を口実に、名前を変えて出すというのだ。

 本書では、ジャーナリストの斎藤貴男、前衆院議員の保坂展人・世田谷区長、刑法学者の足立昌勝・関東学院大名誉教授、日弁連の海渡雄一・元事務総長、山下幸夫・共謀罪法案対策本部事務局長の5人が様々な角度から批判している。
 斎藤氏はこの法案が特定秘密保護法や戦争法や盗聴を拡大した刑事法の改正などと関連して「戦争できる国造り」に向かう安倍内閣の思想から出ていることを指摘。足立教授は、刑法は何らかの罪を犯したものを罰するもので、心の中で何を考えていても罰することはできないのが「近代刑法の基本」だと強調した。
 保坂氏は自らの国会審議を引いて「目くばせも意思の伝達」との政府答弁や「平成の治安維持法を作った総理と言われたくない」と強行採決を見送った小泉元総理のエピソードも紹介した。
 また「五輪」を使った宣伝もウソで、条約批准にも必要がないことを海渡弁護士が解説。山下弁護士も「現代の治安維持法の危険」を書く。

 共謀罪は、勿論いらないし、どんな名前でも心を縛る法案を作らせてはならない。共謀罪の狙いと法案の理解に、言論人はもちろん、広く国民みんなに読んでほしい。

(合同出版1400円)
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2017年03月17日

《遠吠え》「小學院」の庭から次々出てくる怪しげなゴミは「底なしの一大スキャンダル」になる予兆か?=田悟恒雄

 15日に日本外国特派員協会で予定されていた森友学園・籠池泰典理事長の記者会見が急遽、「延期」されました。その理由は明かされていませんが、「その筋からの何らかの圧力」があったであろうことは、容易に推察されます。
 それにしてもこのスキャンダル、「小學院」の庭を掘れば掘るほど、連日のように「怪しげなゴミ」がザックザク出てくるのは驚きです。そして、この日のサプライズ─。

 「〔国有地売却問題が発覚・報道されてから〕籠池氏の弁護士が財務省の佐川宣寿理財局長から『10日間でいいから身を隠してくれ』と連絡を受けた」(!)

 カゴイケさんがそう言っている、とノンフィクション作家・菅野完さんが記者会見で明かしました。さらに、この弁護士がその事実を否定したきり辞任してしまったというのも、イマイチひっかかるところ。
 「佐川理財局長」といえば、このところ頻繁に国会委員会席に立ち、木で鼻を括ったような答弁を乱発しているお役人。しばしば「逆ギレ」するかの不誠実な答弁姿勢は、かえって「首相の覚えがめでたい」と言われます。
 問題はさっそく15日の国会質問でも採り上げられましたが、そこは厚顔無恥な財務官僚、「隠れてくれなどと言った事実はない」と言下に否定はしたものの、実は内心「カゴイケセンセの捨て身の逆襲」に戦々恐々としていることでしょう。
 サプライズは止まることを知りません─。翌16日には、カゴイケさんの自宅から出てきた4人の野党議員(そこには「天敵」共産党のコイケ書記局長の顔も)とともに、カゴイケセンセがインタビューを受ける光景をテレビニュースで見せられます。
 先だって「あんな学校つくらせちゃいけない。野党には頑張ってもらいたい」と、逆の立場からの「仰天発言」をされたコーノイケセンセなぞ、どこかへ吹っ飛んでしまったかのようです。
 そしてついに、政権が最も怖れていた「カゴイケセンセの捨て身の逆襲」が炸裂、「疑惑」は一気に首相の首のあたりにまで迫ります─。

 「平成27年(2015年)の9月に安倍昭恵夫人が私どものところに講演会に来られた時、どうぞ、これお使いくださいと。どなたからですかと(聞くと)、安倍晋三からです、とおっしゃった。…領収書はどうしましょうかって(聞くと)、それはもう結構でございますということで…」

 学校を現地視察した参院予算委員会メンバーに対し、カゴイケセンセは、そうぶちまけます。
 そうなるともう、「民間人だから」などという逃げ口上は使っていられません。「これは放っておけない」ということで、「参考人招請」どころか急転直下、「証人喚問s」が実現することになったというわけ。
 それもこれも、この事件が「イナダ防衛相問題」と密接にリンクして、「底なしの一大スキャンダル」に発展する可能性を示唆しているのかもしれません。

(「零細出版人の遠吠え」03/16-17より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年03月14日

≪おすすめ本≫ 北 健一『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないのか』─残業を隠す「私事在館」が招いた悲劇の真相=上西充子(法政大学教授)

 2000年の最高裁「電通事件」判決は、過労自死に対する使用者の損害賠償責任を初めて認めた画期的な判決である。
 その電通で、入社間もない若手社員の過労自死が再び起きた。本書によれば自死に至った高橋まつりさんは、この25年前の過労自死に関する記事を母親に示し、「こうなりそう」と打ち明けたという。

 なぜ同じ悲劇が繰り返されるのか。その問いに対し、電通が抱える問題に焦点を当てながらも、広く日本の企業社会が抱える問題へと読者をいざなうのが、本書である。
 労災認定後に明らかになったのは、表向きの法令順守のために残業時間の過少申告が現場で強いられていた実態である。三六協定の上限時間を超える残業をなくすために、超過時間は表向きには「私事在館」と位置付けられた。

 法人としての電通と幹部が書類送検された12月28日に電通が開いた記者会見の様子も本書には収録されている。三六協定の上限時間を超えた者を「協定を違反して仕事した人」と表現し、労基署が業務と認定した時間についても「私事在館」の表現を使い続けた様子が記録されることは、重要だ。

 いま国会では三六協定の上限労働時間法定が議論される一方で、労基法の労働時間規制の適用対象外である高度プロフェッショナル制度の新設と、残業代負担の打ち止めを可能とする裁量労働制の拡大を狙う労基法改正案の成立が狙われている。法案が成立すれば、形だけの法令順守へと各企業が流れることが危惧される。
 「働き方改革」の内実に目を向けよと、本書は警告する。

(旬報社1000円)
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2017年03月13日

≪出版界の動き≫2月~3月─電子版コミック誌の売り上げが前年比155%、著しい伸びを示す!

●2017年1月の書籍雑誌・推定販売金額963億円(前年比7.3%減)。書籍508億円(同6.0%減)、雑誌455億円(同8.7%減)。返品率:書籍36.4%、雑誌45.3%。昨年末の特別発売日の試みが、功を奏しなかったことを意味する。

●日販が「輸配送問題」に取り組む輸配送改革推進室を新設。雑誌の流通・販売量が減少しても継続できる物流センターのあるべき姿をプランニング。王子流通センターには書籍送品物流再構築PTと開発品物流構築PTを置く。

●トーハンのグループ会社、あおい書店19店舗をブックファーストなどに事業移管する。店舗エリアを見直し組織再編する。

●2016年のコミック市場全体の推定販売金額は4454億円(前年比0.4%増)。紙版コミック本1947億円(同7.4%減)、紙版コミック雑誌1016億円(同12.9%減)、電子版コミック本が1460億円(同27.1%増)、電子版コミック雑誌31億円(同55.0%増)。電子版の伸びが著しい。

●2016年の総広告費6兆2880億、5年連続増。マスコミ4媒体広告費2兆8596億円(前年比0.4%減)、インターネット広告費1兆3100億円(同13.0%増)、プロモーションメディア広告費2兆1184億円(同1.1%減)。なお新聞5431億円(同4.4%減)、雑誌2223億円(同9.0%減)、ラジオ1285億円(同2.5%増)、テレビメディア1兆9657億円(同1.7%増)。
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2017年03月11日

≪メディア随想≫ 福島原発処理費21兆を捻出するカラクリ

 満6年になる<3・11フクシマ>─いまも流出する放射能汚染水は1日200トン。トリチウムを含む高濃度汚染水に、除染処理中の汚染水まで加えると、なんと100万トンが福島原発構内のタンクに貯蔵されている。

 山野の木を切り倒し、地面を「フェーシング」舗装した敷地に、1000基のタンクが林立する。周辺は場所によって放射線量が大きく変わる。炉心溶融した原子炉建屋の近くでは、毎時300マイクロシーベルトを超える。20キロ離れたJヴィレッジ建屋内は毎時0.07マイクロシーベルト。

 ところがイチエフから北西24キロにある浪江町赤宇木は、被災地の中でも放射線量が高い。現在も「帰還困難区域」に指定されている。3日の放射線量測定値は、毎時3.335マイクロシーベルトを示し、他の「南相馬0.08、いわき0.07」と比較しても、格段に高い。

 廃炉や賠償の道筋も見えない。経産省が算定した福島原発処理費11兆円が、3年もたたずに21兆5千億円に膨らむ。しかも、今回の算定には炉内にある廃棄物(燃料デブリ)の処分費は含まれていない。かつ21兆円のうち2兆4千億円を、送電網を利用する際に徴収する託送料金から捻出するという。原発を持たない新電力にも適用される。

 すなわち国民の電気代に上乗せして徴収するというのだ。国会での法律改正も必要とせず経産省の省令で実施できる。まさに東京電力の賠償責任を不問にし、消費者に負担を強いるのは大問題だ。6年たっても…いや、いつまでたっても駄目な政府ね。

【今週の風考計】3.5より
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2017年03月09日

《焦点》 上智大でジャーナリズムを研究する元北海道新聞記者の上出義樹さん(新聞学博士)=橋詰雅博 

 メディアによる安倍政権への批判が影を潜めている。その原因の一つとして「自己規制」が挙がっている。報道の自己規制をテーマに上智大大学院で研究し、血液のがんである悪性リンパ腫と闘いながら昨年3月新聞学博士号を取得したのが上出義樹さん(71)だ。
 上出さんは元北海道新聞記者で、退社後の2010年4月に上智大大学院に入学。ジャーナリズムの研究をしながら、フリー記者として閣僚や官庁の記者会見に出席し、記事やメディア批評を書いてきた。報道の現場を知っている研究者というのが強み。これを生かし、原発報道や安倍政権報道などについて新聞や放送各社の記者らに聞き取り調査を実施。約300人の調査に基づき、報道の自己規制とは、@取材対象者との癒着・もたれ合いA取材対象者などからの圧力B取材対象への共感・同情C所属する報道機関の編集方針や上下関係など組織内のあつれき―など6つに分類される分析した。組織内のあつれきではこんなエピソードを明かした。
 「親しくなった総務省担当の記者から『大臣や官僚に取材しにくくなるような質問をするなと上司から言われている』『自分が下手な質問して当局と気まずい関係になると会社や後任者に迷惑がかかる』と打ち明けられた。大臣が嫌がる質問は避け総務省とは良好な関係を保っておきたいのでしょう。日本のメディアの負の構造が読み取れる」
 昨年8月に「報道の自己規制」(リベルタ出版)を出版。現在、上智大メディア・ジャーナリズム研究所スタッフとして研究を続けている。

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2017年03月08日

《遠吠え》つくづく「オトモダチ」っていうのはありがたいもんだ、と思わせてくれる実に「麗しいお話」=田悟恒雄

 校庭に埋まっていたゴミとともに、次から次へと不可解な事実が掘りだされる「森友学園スキャンダル」…。
そのゴミの間に間に、怪しげな政治家たちのシルエットが見え隠れします。しかもそこには、今を時めく宰相やファーストレディの名も、しばしば出てくるのです。
 なーんて書きだすと、「印象操作だっ!」と、やたらムキになって取り乱した声が聞こえてきそうですが、「第2の森友学園疑惑」なんて話も出てきたのには、すっかり度肝を抜かれてしまいました(「リテラ」)─。

 「…じつはもうひとつ、森友学園と似た構図の疑惑が安倍首相にもちあがっている。
 昭恵夫人が名誉園長を務め、自分の親友が経営する学校法人のために規制緩和をして、結果、この学校法人が経営する大学に約17万平方メートル、開発費も含めると37億円におよぶ土地が無償譲渡される予定になっているというのだ。」

 この学校法人の加計理事長は、アベ首相の古くからの「オトモダチ」にして、頻繁にお食事をともにしたり、ゴルフをプレイしたりする「腹心の友」だそう。
 そしてくだんの学校法人が運営する岡山理科大に獣医学部を新設、そのキャンパスを今治に置くという構想になかなか国の認可が下りなかった2015年12月、アベ首相が国家戦略特区諮問会議で、今治市を全国10番目の特区にすることを決定、翌年11月には獣医学部の新設に向けて制度を見直すことを表明します。すると…

 「国が認めてこなかった10年がまるで嘘のように、安倍首相の決定によってあまりにも順調に進んでいった加計学園の新学部開設。そして、安倍首相の『腹心の友』の経営する学園はその結果、37億円もの値段の土地をタダで手に入れた」

 つくづく「オトモダチ」っていうのはありがたいもんだ、と思わせてくれる実に「麗しいお話」でした。

(「零細出版人の遠吠え」03/07より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年03月07日

≪おすすめ本≫中澤誠・水谷和子・宇都宮健児『築地移転の闇をひらく』─「のり弁」黒塗り書類を読み解き、ズサンな豊洲計画の闇と利権に迫る=森山高至(建築エコノミスト)

 移転予定ギリギリで、問題が大きくクローズアップされた豊洲市場移転問題。それ以前から10年以上の長きにわたって粘り強く問題提起に取り組んだのが、著者の中澤誠さん、水谷和子さん、宇都宮健児さんらである。

 本書はこれまでの経緯を、原因から問題の推移まで、特に中澤・水谷の二人が対談形式で語り尽くし、現在、巷で語られている豊洲市場問題における、正確でかつ根本的情報が開陳されている。

 この問題の本質は、公共事業における公の概念を、真っ向から否定したことにある。卸売市場における公益性とは、生鮮食品の安定供給と適切な価格形成にある。そのために市場には非常に数多くの職種の関係者が、複雑な関係性を保ちつつ従事している。

 ところが、計画を急ぐあまりに用地取得を強引に進め、施設設計の内容について、市場関係者の合意を得ることなく設計や施工が開始された。その杜撰なプロセスにより、公共施設として必須な検討事項や機能性、安全性が、疎かにされてきた。

 もし予定通り移転していたなら、即日、市場機能は混乱を来たし、その後は永遠に機能回復しない可能性もあったのだ。
 いわゆる「のり弁」と揶揄される黒塗りの行政開示書類を読み解きながら、欠けたジグソーパズルのピースを組み合わせ、最終的にその実態を詳らかにしていく経緯が、まるで遺跡発掘や事件捜査のようなノンフィクションドラマみたいに小気味よく、時にユーモアも交えながら展開していくのも本書の魅力である。

(大月書店1200円)
posted by ロバの耳 at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする