2018年02月19日

《遠吠え》「今だけ、金だけ、自分だけ」の風潮が蔓延する中、背筋を伸ばし続ける注目の経済人=田悟恒雄

 「こんな経済人がもっといたらなぁ」─。
 『日刊ゲンダイ Digital』の「注目の人 直撃インタビュー」(「吉原毅氏突く原発推進の矛盾 "自然エネは儲かる" が新常識」)を読んで、そんな思いをいたしました。
 今回「注目される人」は、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟会長の吉原毅さん。先月、小泉純一郎元首相らと「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表しています。
 ところがこれに対し、政権ご用達の産経新聞が、1月14日付社説で、「自然エネルギー=高コスト論」という使い古された謬論を盾に噛みつきます。曰く、「亡国基本法案だ」「夢想の虚論だ」「これでは国が立ちゆかぬ」と。
 しかし、そこは「コスト計算」が専門の元城南信用金庫理事長氏。一知半解の産経社説子に、含んで聞かせます─。

 「海外で言ったら、笑われますよ。世界の常識を全くご存じない。自然エネ価格は世界規模で急速に低下し、比較的低コストの石炭や天然ガスよりも安くなっています。太陽光の最安値は1キロワット当たり1.77セント。円換算で2円を切る。風力も肉薄しています」と。

 なのにこの国は、いまだに「原発はベースロード電源」などと言い続けているものですから、自然エネルギー開発では世界に大きく後れをとるばかり。
 では何で、政府はそこまで「原発」に固執するのでしょう?

 「原子力ムラのエゴイズムです」

 吉原さんはこう言いきります。それは「今だけ、金だけ、自分だけ」の発想だ、と。

 「政官財ともリーダー不在で、誰もが政策転換の責任を負うのを恐れている。戦前の日本軍も…時代遅れの『大艦巨砲主義』に固執し、…この国は一度、滅びたのです。現政権は同じ轍を踏んでいるように見えます。」

(「零細出版人の遠吠え」02/19より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年02月18日

【今週の風考計】2.18─幕山ハイクと羽生結弦選手の金メダルと3・11、この不思議な遭遇

友達6人と湯河原梅林を見ながら、幕山ハイクを楽しんだ。快晴の空に浮かぶ梅4千本。「紅千鳥」や「白加賀」などの梅が、香りを漂わせながら、もう一杯に赤や白の花弁を広げて咲きほこる。

梅の散策路を過ぎ登山道に入ると、きつい傾斜の木の階段が続く。つづら折りに伸びる山道に、ハーハー息が出る。五郎神社の標識を超え、しばらく行くと大きな岩に出会う。その平らな面に、「追悼 2011年3月11日 東日本大地震 落石」と記されている。7年目の3・11が近いと思いながら、岩のわきを抜ける。
パッと展望が開ける。眼下に湯河原の街、春霞にけぶる相模灘、初島、ぼんやり大島まで見える。さらに登る。やっと標高626mの頂上。真鶴半島が真下に突き出ている。おにぎりの旨いこと。

帰りは一瀉千里、転ばぬようバランスを保つのが精いっぱい。湯河原駅近くの湯場で汗を流す。その湯上りロビーにあるテレビが、羽生結弦選手の快挙を映している。ソチ五輪に続き、平昌五輪でも金メダル獲得、66年ぶりの連覇だ。数々の試練を乗り越え、今や伝説のスケーターになった。
2011年3月11日、彼は東北高校1年・16歳の時、東日本大震災に遭遇した。被災した自分の家族の苦労と合わせ、「ガスや、電気、水道も止まって大変でした。それ以上に、苦しんだ人たちがたくさんいて、特に津波、原発事故の被害にあった地に行って思った」と、多くの被災者への思いも口にしている。ジーンと胸が熱くなった。(2018/2/18)
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2018年02月11日

【今週の風考計】2.11─「マンデラ・ルール」に違反しても、籠池夫妻を6カ月拘留する不可解な理由

■「マンデラ・ルール」とは? 監獄に収容された人たちへの拷問や非人道的な取り扱いを禁じ、定期的に家族や友人との連絡を保障する国際基準である。不条理で苛酷な27年もの長期投獄に屈せず、南アフリカ大統領となった故ネルソン・マンデラさんを讃えて名づけられたという。

■参議院議員の山本太郎さんが、このルールを国会質問で取りあげ、安倍首相に迫る内容が喝采を浴び、広く知られるようになった。「籠池氏と奥様は半年以上にもわたり独房で長期間拘束。総理ご自身が口封じのために長期拘留を指示したなんてありませんよね?」という質問だ。
■これまで安倍首相が「この籠池さん、真っ赤な嘘、嘘八百ではありませんか」と誹謗し、「詐欺を働く人物」とこき下ろす、あの森友学園の前理事長・籠池泰典さんと妻の諄子さんの事態が深刻なのだ。夫妻の勾留が、なんと6カ月に及んでいる。

■検察は証拠品を押収し関係者の聴取を終えたが、完全黙秘を続けている以上、さらに証拠隠滅の恐れがあるという理由で、起訴後も拘留を続けている。いま大阪拘置所に収監されている籠池泰典さんは、窓のない新館の独居房に入れられ、諄子さんは窓はあってもエアコンがない旧館に収容されている。家族との接見もできない。まさに「マンデラ・ルール」に違反しているではないか。
■ひるがえって、森友への国有地売却の橋渡し役を務めたとされる昭恵夫人は平然と海外を経めぐる。しかも音声データがあるにもかかわらず、「私こそ真実を知りたい」と言いつくろい、偽証罪に問われかねない証人喚問に応じない。

■財務省は破棄したはずの資料を、1年近くたってポロりポロりと出してくる。佐川宣寿・前理財局長の国会出席に踏み切り、累を昭恵夫人に及ばさないための戦術との声も挙がる。国民を馬鹿にするな。(2018/2/11)
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2018年02月07日

≪おすすめ本≫伊勢崎賢治+布施祐仁『主権なき平和国家』─日米地位協定こそ諸悪の根源、いかにして改定するか、その提案=鈴木耕(編集者)

 本書は、自衛隊日報問題を暴いたジャーナリスト布施祐仁氏が、かつてPKOで武装解除に携わった東京外語大教授の伊勢崎賢治氏に長時間インタビューをし、それを布施氏がまとめ、さらに伊勢崎氏が加筆した。
布施氏が文献や資料を克明に漁り、伊勢崎氏がそれを確認する。見事な共同作業の成果である。
 「憲法観」だけに限れば、両者は必ずしも意見が一致するわけではない。布施氏が9条改憲に反対の立場なのに対し、伊勢崎氏はいわゆる「護憲的改憲論者」である。しかし、立場の違いを越えて「日米地位協定こそが諸悪の根源」であり、その改定がすべての大前提との主張で一致する。

 では、その「改定」とは何か? それは「在日米軍基地が日本の施政下以外の他国、領域への武力行使に使われることの禁止」であるとする。ただし、米国側が在日米軍基地の日本領域外への作戦使用を完全禁止する地位協定改定などに同意するはずもない。
 したがって、そのような場合は米国側が日本政府の了解を義務づけるよう、日米地位協定を改定するのが絶対条件だ。それを実現させるためには何が必要か。
 そこで、米国が各国と結んでいる地位協定と日米地位協定とを克明に比較する。ドイツ、イタリア、オランダ、イギリス、さらにはトルコやイラク、アフガニスタンでさえ日米地位協定よりも主権を確立しているという。そこから浮かび上がるのがタイトルの「主権なき平和国家」の意味だ。
 それを正す方策が「第五章 日米地位協定改定案」に結実する。ここが本書の白眉だ。日米安保体制を考えるなら、これを読め!と声を大にして言いたい本である。
(集英社クリエイティブ1500円)
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2018年02月05日

《遠吠え》「"サンチョ・パンサもびっくり" の類いまれな従者ぶり」は、もはや世界の笑いもの=田悟恒雄

 米国防総省が新たな核体制の見直し(NPR=Nuclear Posture Review)を発表。オバマ前大統領の「核なき世界」から、「トランプ米大統領がより積極的、衝動的に核を使用できるようにする」(米シンクタンク軍備管理協会のダリル・キンボール会長、東京新聞2月4日付)へと方針転換しました。
 さっそくこれに「恭順の意」を表明した「属国」外務大臣の談話を読んでビックリ─。

 「今回のNPRは、…北朝鮮による核・ミサイル開発の進展等、安全保障環境が急速に悪化していることを受け、米国による抑止力の実効性の確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしています。我が国は、このような厳しい安全保障認識を共有するとともに、米国のこのような方針を示した今回のNPRを高く評価(!)します」ですと。

 「核兵器禁止条約」の交渉に参加せず、「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のノーベル平和賞受賞には祝意すら示さなかった「"唯一の被爆国ニッポン" の政府の本心ここに見たり」といったところ。
 「"サンチョ・パンサもびっくり" の類いまれな従者ぶり」は、もはや世界の笑いものでしかありません。

(「零細出版人の遠吠え」02/05より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年02月04日

【今週の風考計】2.4─トランプの「使いやすい核」を、高く評価する日本政府の異様な感覚

「炎と怒り」に駆られたトランプ大統領は、<脱オバマ>なら何でもあり、ついには「核なき世界」を目指すオバマ宣言まで廃棄した。
「柔軟な核オプションを拡大する」ために、敵国の重要施設を、ピンポイント攻撃できる態勢づくりに向け、使いやすい核の開発に全力を挙げるというのだ。

長崎に投下した原爆の爆発力を、ほぼ4分の1に抑えた小型核弾頭を開発し、水上艦・潜水艦を問わず、搭載した弾道ミサイルに装着する企てだ。核兵器を使う基準についても「国民やインフラ、核施設などへの通常兵器による重大かつ戦略的な攻撃も含まれる」と記し、核が使える機会を拡大させた。
この約20年で世界が保有の核弾頭7万発を、1.5万発まで削減してきた。にもかかわらず「核弾頭を格納庫から運び出し、改良を加え最新モデルにして使う」とは。ICANがノーベル平和賞を受賞するほど、核兵器廃絶の流れは世界に広がる。それに逆らう蛮行そのもの。

驚くのは世界で唯一の戦争核による被爆国・日本政府の態度だ。事前に米国から説明を受けるや、世界のトップを切って「高く評価する」とは、なにごとだ。被爆者・平和団体は「悪魔に魂を売り渡した」と、怒りの声を挙げている。「トランプ大統領は核被害に無知・無関心だ。広島・長崎に来て被爆者の話を聞き、核の恐ろしさを実感すべきだ」と話す。

先月末、人類が滅亡する「地球最後の日」へ残り2分、30秒早める宣告が出された。午前0時と定めた「終末時計」の残り時間は、どんどん短くなり、過去最短となっている。さらにトランプと日本が早めたのは間違いない。(2018/2/4)
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2018年02月02日

《焦点》 核禁止条約反対「ムダな抵抗」ノーベル平和賞ICAN国際運営委の川崎さんへのインタビュー=橋詰雅博

 国連での核兵器禁止条約の採択に尽力した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」へのノーベル平和賞は昨年、世界に深い感銘を与えた。しかし、唯一の戦争被爆国である日本政府は条約を黙殺=B日本の多くの国民はもとより世界の人々も安倍晋三首相の冷たい態度に落胆、失望した。安倍首相はICANに対してそっぽを向くが、どこまでも「核兵器なき世界」を追求するICAN国際運営委員でNGOピースボート共同代表の川崎哲さん(49)が本紙のインタビューに応じた。条約発効の見通し、将来日本の参加はあり得るのかなどに答えた。
☆  ☆
――核兵器禁止条約に署名した国は56カ国で、批准は3カ国(ガイアナ、バチカン、タイ)ですが、どう思いますか。
 まず核兵器禁止条約は反核運動として理想に近いもので、核兵器廃絶への道筋ができた。
メキシコ批准済み
 条約の批准に関してメキシコは昨年12月に議会で批准している。ただ、国連への文書提出が遅れている。正確に言えば批准国は4カ国。しかし、条約発効に必要な50カ国には遠く及ばす、国連で122カ国が条約に賛成したにもかかわらず署名は56カ国にとどまっている。
――署名・批准が進まない理由は何ですか。
 2つ挙げられる。一つはどこの国も政治課題を抱えていて、そちらを優先しているので署名・批准には時間がかかる。単純な理由です。もう一つは米国など核武装国(9)が「役に立たない条約だ」とネガティブキャンペーンを打って、「署名・批准するな」と言っているからだ。2つの理由でいまのような状態になっている。私は前者の理由が大きいと思う。
 昨年末、早期に禁止条約の署名・批准を求める国連決議に120カ国以上が賛成している。署名・批准へ各国の世論が盛り上がれば、批准国は増えるはず。決して核武装国の圧力に屈服してはいません。条約の署名・批准案を国会で審議する順位をより高めるため世論喚起が必要です。
――それにはどうすればいいですか。
 ICANの今年の課題だが、ピースボートの場合、いままでやってきた広島・長崎の被ばく者の方を海外にお連れして核兵器廃絶を訴えてもらう取り組みを継続させて発展させることです。生き残った被ばく者の話は、地元メディアが大きく報じるし、高いレベルの政治家にも被ばく者は会える。気運を高めれば、必ず批准は実現できる。
協力国を揺さぶる
――格武装国と、米国の核の傘に依存する日本のような核武装協力国(約30)をどう攻略≠キるのか。
 核兵器武装国の条約への参加は当面、望み薄。条約を速く発効させれば、武装国も無視できなくなる。これに力点を置く。このため格武装協力国を揺さぶる。私が見るところ、これらの国は一枚岩ではない。核兵器を受け入れる積極派とお付き合い程度の消極派に分かれる。
 北朝鮮の核・ミサイル開発に向きあう日本と韓国、ロシアの核兵器に脅威を抱くバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)やドイツ、オランダ、ベルギー、トルコ、ポーランドなどの積極派を落すにはやはり時間を要する。このため消極派にターゲットを絞る。NATO(北大西洋条約機構、29カ国で構成)に加盟するノルウェーは議会で政府に条約加盟への可能性を検討するよう求める決議が可決される。同じくNATO加盟のアイスランドは自国の軍隊がなく、NATO駐留軍もいない。格兵器を受け入れる気持ちはさらさらない。米国の核兵器を配備して積極派と見られるイタリアでも、議会は、禁止条約に参加できるかどうか政府に求める動議を可決している。
 また、欧州では自治州の力が強い。条約賛成の自治州が中央政府にプレッシャーをかけると効果は大きい。消極派の国々や自治州などを落すのがICANの次の戦略だ。
条約は防衛に貢献
――日本が条約に署名・批准する可能性は。
 どんな総理大臣でも毎年8月に被爆地で核兵器廃絶を求める演説を行う。それなのに核兵器禁止条約に参加していない。先だって民放で核問題の特集番組を放送していたが、その実態を知らされた若いタレントは「えー」と驚いていた。多くの国民もこのタレントと同じで、それをよく知りません。日本は被爆国でありながら禁止条約に参加しないという二重性≠フ側面を持っている。このことを常識化させて、国民的な議論を巻き起こす。「条約にコミットしないのは被爆国として理解しがたい、おかしい」という声が大きくなると、日本政府の政策が転換する可能性がある。
 122カ国の賛成を得た禁止条約はいずれ発効する。格武装国と格武装協力国はムダな抵抗を止めるべきだ。条約は、核武装廃棄や国際的査察を義務付けるなども盛り込んでいる。自国防衛のためにも条約を役立てることをめざして知恵を絞ることが日本には重要です。
聞き手 橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号
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2018年02月01日

≪おすすめ本≫ 藤田知也『強欲の銀行カードローン』─利用者の人生を狂わせても儲けを優先するモラル欠落の実態=栩木誠

 「2016年の自己破産の申立数、13年ぶりの増」「銀行のカードローンが原因か」─こうした指摘が、朝日新聞・経済記者である著者を銀行のカードローンに目を向かわせた。実際、何気なく見ているテレビでも目立つのが、有名俳優などを起用したメガバンクのカードローンCMである。
 「審査回答最短30分」、「コンビニATM手数料0円」など、誰でも簡単に口座開設ができるというCMが、生活苦にあえぐ利用者の心をくすぐる。その結果が「サラ金地獄」に代わる「銀行カードローン地獄」の招来だ。

 かつて大きな社会問題化した消費者金融など、貸金業者の貸出残高が減少の一途を辿る一方、銀行カードローンの貸出残高は増加傾向を続ける。その背景に「貸出額を年収の3分の1以下とする総量規制が消費者金融には適用されるが、銀行にはされない」ことにある。
 破たんする「アベノミクス」の金融政策の影響もあり、経営苦境にあえぐ銀行が「ラストリゾート」として、標的にするのが個人である。そこには、傘下に収めた消費者金融企業と二人三脚で、サラ金経営のノウハウが活用されている。

「『利便性』のまやかし」「『顧客目線』無視、業界の論理」「利益優先でノルマ促進」など、著者は地道な取材を通して、利用者の人生を狂わせても利益を優先する銀行の強欲さ、モラル欠落の実態を明らかにする。
本書は文末で「銀行の自浄作用」への期待を挙げるが、モラルハザードが常態化しつつある日本の金融界や経済界には、「ないものねだり」なのかもしれない。
(角川新書800円)
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2018年01月30日

《遠吠え》いつもの話しっぷりからすれば何とも歯切れの悪い、実に「ミゾユーウ」な複雑構文=田悟恒雄

 きのう始まった衆院予算委員会。小泉進次郎氏の「トンデモ発言」どおり、森友問題をめぐって「何度も同じような質問」が繰り返されました。
 だって、あれだけ「あまりに不誠実な答弁」が次々繰りだされれば、「同じような質問」が止まなくなって当たり前。
 たとえば、財務省の佐川宣寿・前理財局長(現国税庁長官)が何度も「廃棄した」と説明していた近畿財務局の文書が、会計検査院の検査報告の前日になって、やっとのことで提出されたことを追及された麻生太郎財務相─。

 「〔会計検査院の〕検査の過程で、法律相談の記録があることに気付く状態に至らなかった」と。

 いつもの話しっぷりからすれば何とも歯切れの悪い複雑構文。実に「ミゾユーウ」のことです。
 しかも、「一連の虚偽答弁の論功行賞でご栄転」と巷間ささやかれる国税局長官氏が、いまだに就任記者会見を行なっていないことを追及されたアッソーさんの答弁が、これまた振るっています─。

 「所管の行政以外に関心が高まっていたことから実施しなかったと聞いている。適切な対応だ」と。

 これはもう、「政権ぐるみで真相隠しをやっていると言われても仕方ない」(共産党・小池晃書記局長)。「問題答弁の白眉」と言えるほどのものじゃないですか!?

(「零細出版人の遠吠え」01/30より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年01月28日

【今週の風考計】1.28─仮想通貨<NEM>580億の不正流出が示すズサン管理の行方

「やばいよ、やばいよ」─お笑い芸人の出川哲朗さんも真っ青。年末から「コインチェック」のCMに出演していたからたまらない。持ちネタが現実になってしまったのだ。
「コインチェック」が扱う、仮想通貨<NEM>がハッキングされ、580億円が不正流出した。その原因は、インターネットから隔離して管理する「コールドウォレット」が施されておらず、さらに秘密鍵を複数に分割して別々に管理する「マルチシグ」も使わず、信じられないほどの、セキュリティ保全のズサンによる「やばい」ものだった。

盗まれた<NEM>を追跡捜査しつつ、当面、保有者26万人に日本円で返済するというが、加熱する仮想通貨市場へ冷や水を浴びせた。ビットコインやリップル、イーサリアムなど他の仮想通貨も値下がりし、商品やサービスの決済にも影響が広がっている。

3年前に約480億円分の仮想通貨を消失させた、日本のマウントゴックスは経営が破綻。金融庁も仮想通貨取引所への管理監督を強化し、野放図な開設をストップさせるべきだ。中央銀行の保証がない仮想通貨の取引を禁止、法規制する国や地域も出てきている。
昨年、世界中でランサムウェアやサイバー攻撃による大規模な情報漏えいが起きた。また日本ではマイナンバーに基づく情報管理がいい加減との指摘もある。高い情報セキュリティを確保したシステムの構築が急がれる。

個人・組織を問わず、さまざまな狙いや意図をもって、情報のハッキングやサイバー攻撃にさらされる危険は募る。くしくも2月2日は「情報セキュリティの日」、まず金融庁は肝に銘じよ。(2018/1/28)
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2018年01月25日

《焦点》 「都政版森友疑惑」異様な「デベロッパーファースト」=橋詰雅博 

 都民が東京都を相手取り、2020年東京五輪・パラリンピック選手村用地として都有地を不動産会社11社にたたき売りしたのは違法だとする住民訴訟の第2回口頭弁論が2月27日(火)、15時から東京地裁419号法廷で開かれる。周辺価格の10分の1でつまり9割値引きで売却されたことから8億円値引きされて国有地が売られた森友疑惑になぞらえて「都政版森友疑惑」裁判とも呼ばれている(本紙17年10月25日号で既報)。
 昨年11月17日の第1回口頭弁論では、小池百合子都知事らに差額分約1209億円の請求を求めた原告33人を代表して中野幸則さん(66)が意見陳述した。陳述の中で中野さんは「本件は都が官民癒着、官製談合のもとで、市街地でない土地を市街地再開発事業と称して、『大地主』・『監督官庁』・『施行者』を演じた一人三役の『一人芝居』であり、デベロッパーファーストとも言うべき異常なものです」と訴えた。そして「(都有地の)売却はやめて定期借地権に変更して、数十年後には土地をとり戻すべきではないか」と主張した。
 実は被告弁護団団長の外立憲治弁護士は、中野さんらの陳述を阻む行為に出ていた。原告が読むことを認めないよう求める上申書を提出したのだが、清水千恵子裁判長はこれを却下したのだ。その腹いせなのか、外立弁護士は、中野さんと原告代理人の各陳述が終わった後、事前提出していない陳述書を読み上げ「(原告の主張は)言いがかり」と反論。このいきなりの陳述に対して原告代理人が抗議する一幕があった。
原告弁護団は「(上申書提出や通告なし陳述を行った)被告は、ムキになっている。焦りと危機感のあらわれ」と相手の胸中を推し量った。
 訴訟を広く知ってもらうため2月17日(土)には「都有地投げ売りシンポジウム」を13時半から16時半まで専修大神田校舎で開く。「都政版森友疑惑」裁判にもっと都民は関心を。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年1月25日号

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2018年01月22日

《遠吠え》「モリもカケも食い飽きた」とおっしゃる皆様の鼻先に突き出された「怪しげな麺類」?=田悟恒雄

 昨年12月、国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から助成金や無利子融資をだまし取ったとして、東京地検特捜部に詐欺罪で逮捕されたスパコン開発会社「ペジーコンピューティング」前社長・斉藤元章容疑者が、法人税法違反容疑でも立件される模様(朝日新聞、1月22日付)。
 なにせ、この男が騙し取ったとされるカネは、半端なものじゃありません。零細出版人には、気も遠くなるような金額です─。経産省所管のNEDOからペジー社への助成金は総額35億円以上、それに文科省所管の国立研究開発法人「科学技術振興機構」(JST)から、同じく斉藤氏が経営するExaScaler社への無利子融資が52億円(限度額は60億円)… etc.
 ではなぜ、これほどのカネ(もとはと言えば、すべて税金)が動いたのでしょう?
 『週刊新潮』1月25日号「スパコン事件が風雲急!『総理ベッタリ記者』の携帯電話を押さえた特捜部のターゲット」が伝える「特捜部の関係者」の証言を引かせていただくと─、

 「山口がペジーの顧問になって以降、彼と齊藤が経産省に担当者を訪ねたことがあります。その席で2人は『官邸が了解しているのになぜ急がないのか』というような問いを投げかけたとされている」

 「ベッタリ記者」とは、伊藤詩織さんへのレイプ疑惑ですっかり有名になった、元TBS記者・山口敬之氏のこと。それにしても、あれっ、どっかで聞いたようなセリフですね。 そうでした「総理のご意向(ご威光?)」ってやつです。
 疑惑の糸をたぐっていくと、「モリ・カケ疑惑」に続いて、またまた「怪しげな麺類(?)スパ」がご登場、というわけです。

(「零細出版人の遠吠え」01/22より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年01月21日

【今週の風考計】1.21─国会審議では忘れずに 「もり・かけ・スパ」三点セットで追求を

▼150日に及ぶ通常国会が始まる。政府は過去最大の総額97兆7千億を超える予算案をトップに、「残業代ゼロ法案」にも等しい「働き方改革」関連法案を含め、64本の法案成立をもくろむ。
▼9条つぶしの改憲にも拍車がかかる。2月中旬には憲法審査会での議論を始め、年内にも国会発議を目指す方針だ。バラバラと揶揄される野党も、国会審議では足並みそろえ、法案の狙いを明らかにし、国民の負託に応えてほしい。

▼ここにきて急浮上しているスパコン疑惑への解明も、疎かにしてはならない。経産省からの助成金4億円の詐欺で逮捕されたベンチャー企業の斎藤元章社長は、安倍政権の有識者会議の委員を務めていた経歴がある。かつ自社の顧問に月額200万円払って就任していたのが、あの安倍政権と近い元TBS記者の山口敬之氏というから、問題の根は深い。
▼また山口氏の生活拠点である永田町・キャピトルホテル東急にある一室への賃貸料(月額70万円ほど)も負担していたという。山口氏といえば、伊藤詩織さんレイプ事件で訴えられた立場にある人。
▼かつ斎藤氏と共同で立ち上げた財団法人「日本シンギュラリティ財団」は、その事務所の土地家屋の所有者の住所が、山口氏の実家と同じ住所だという。また山口氏は斎藤氏のセミナーにも参加して、彼の実績をほめあげる仲だ。これほどまでの蜜月は何故?

▼「もりそば・かけそばだけでなく、スパゲッティまで出てきた」と、立憲民主党の辻元清美国対委員長は言う。森友学園・加計学園問題に続く疑惑に発展しうる、重要なテーマだ。「もり・かけ・スパ」疑惑の三点セットで追及してほしい。(2018/1/21)

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2018年01月17日

《遠吠え》「北朝鮮の核・ミサイル」を理由に「国難意識」が永田町界隈を広くじわじわ蝕んでいる=田悟恒雄

 来日中のノーベル平和賞受賞国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)事務局長、ベアトリス・フィンさんが、昨年12月から2度にわたって安倍首相との面会を求めていたが、断られたと言います。

 「日程の都合上難しいということで、それ以上でもそれ以下でもない」

 菅官房長官はそんなことを言っているそうですが、ならば「唯一の被爆国」の政府として、礼の尽くし方はもっとあるはず。
 菅氏が本心を語ってなどいないことは、なによりも日本が「核兵器禁止条約」の交渉にも参加せず、ICANの平和賞受賞に祝意すら示していないことからも明々白々。

 「長崎、広島の価値観と、政府の政策に大きなギャップがあると感じた。日本は行動しなくてはいけないし、国民がそれを求めてほしい」

 大いに落胆させられたであろうベアトリスさんは、そう語っています。
 日本政府がそんな冷淡な対応をするのは、想定内のことだったでしょう。しかし、きのう国会内で開かれた、フィン事務局長と与野党代表らの公開討論会も、「いささか拍子抜け」の感がありました。
 「核兵器禁止条約」に理解を示したのは、共産党、社民党、自由党と沖縄選出参院議員くらいのもので、立憲民主党の福山哲郎幹事長は、北朝鮮の脅威を挙げて「日本は核抑止に依存する安保政策をとっている」などと、民進党の岡田克也常任顧問も、「核抑止に依存している事実は非常に重い」などと語って(東京新聞)、明言を避けたそうじゃないですか。
 北朝鮮の核・ミサイル問題に発する「国難意識」は、いまや永田町界隈を広くじわじわと蝕んでいるのかもしれません。

(「零細出版人の遠吠え」01/17より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年01月14日

【今週の風考計】1.14─トランプ大統領と<核の傘>が、ほんとに「やばい」。

20日に就任1年を迎える米国のトランプ大統領─今なお品格が問われる、呆れた事態が続く。移民政策をめぐり「野外便所のような国の人々を、なぜ米国に受け入れるのか」と発言。
度し難い人種差別の発言に、メキシコのビセンテ・フォックス元大統領は、「トランプの口は世界一汚いケツの穴だ」とツイートした。

さらには以前に性的関係を持ったポルノ女優に対し、「個人的な弁護士を通じ13万ドル(約1443万円)の口止め料を、投票日を控えた昨年10月に支払っていた」とまで暴露される始末。
マイケル・ウォルフ『炎と怒り:トランプ政権の内幕』も、いかにトランプが「無知」で「臆病」かに始まり、トランプ一族と側近たちの確執、「ロシア疑惑」の真相、髪型の秘密までが赤裸々に記され、1月5日の発売から1週間で100万部を超えたという。邦訳版は早川書房から2月に刊行される。

こうした人物が権力を握る米国政権は、オバマ前政権の「核なき世界」という方針を大転換し、核兵器の役割を拡大させ、海洋発射型の核巡航ミサイルを新たに開発し、艦船への配備を計画している。通常兵器に反撃する場合でも核の使用は排除しない方針だという。ノーベル賞を受賞したICANのベアトリス・フィン事務局長は「核兵器が使われる危険性の高い状態」と批判する。

品格の疑われる権力者が<核のボタン>を握っている怖さが身に迫る。現にハワイでは、弾道ミサイル飛来との緊急警報に避難の大騒ぎ。なんとボタンの押し間違いによる誤報!
新しい広辞苑の発売広告にあるコピーじゃないが、まさに「やばい」。そんな米国本土に、初めて日本で生産された最新鋭ステルス戦闘機F35Aを運び、点検確認を受け、航空自衛隊に42機配備する段取り。この配備も米国の<核の傘>を補完するため。ほんとに「やばい」。(2018/1/14)
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2018年01月12日

《遠吠え》世の「好景気」をよそに、わが出版界だけが「ブラックホールのようにポッカリと」?=田悟恒雄

 けさの朝日新聞文化文芸面に、出版取次の窮状を伝える記事がありました(「出版取り次ぎ『もう限界』/一晩で配送55店、積み荷は激減」)。
 「出版市場の縮小」で積み荷が激減しているのに、配送先は増えているというアンバランスが、取次業務の非効率を生んでいる、と。
 その背景には、コンビニ軒数の激増(この1年で1000店以上も増加)があるということですが、これは主として「雑誌」や「コミック」の世界のお話。
 しかし、コンビニでは販売していない「書籍」の場合も、事情は似たりよったり。根本的な原因はやはり、出版物売上げの大幅減にあるということなのでしょう。
 1996年のピークを境に右肩下がりの出版市場ですが、昨年末(17年11月)には、ついに以下のような惨憺たるありさま─。

 出版物全体の販売金額:1069億円(前年比−7.8%)
 うち書籍      : 515億円( 同 −3.1%)
 うち雑誌      : 554億円( 同 −11.8%)

 世の中の景気が上向いているなどと伝えられる昨今、わが出版界だけが「ブラックホールのようにポッカリと」取り残されてしまった、ってこと? やれやれ…

(「零細出版人の遠吠え」01/12より。 http://www.liberta-s.com/
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2018年01月07日

【今週の風考計】1.7─年始の早々から気がかりな三つの動静

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。さて、年始の1週間、気になって気になって、しまいに腹が立ってきた三つの動静を挙げておきたい。

まずは安倍首相の日々だ。渋谷・富ケ谷に豪邸がありながら、昭恵夫人ともども都心の高級ホテルに連泊しゴルフ三昧、そして昼となく夜となく3つ星クラスの料理店で贅沢な食事。これらの費用は税金から? 昭恵夫人は自宅で朝の味噌汁など作らないのか? もしや森永ビスケットで済ませてしまうのか? 私たち庶民には、すぐに浮かぶ素朴な疑問だ。

二つは、9日に開催される韓国と北朝鮮との高官級会談に対する日本政府の態度である。2年ぶりの対話による南北関係の改善は、北朝鮮の非核化に向けた環境づくりに役立つのは間違いない。大歓迎だ。
だが政府は南北会談を歓迎し成功を祈るどころか、北朝鮮の脅威を「国難」と煽り、制裁・圧力に血道をあげるだけ。北朝鮮にミサイル核の放棄を求めるのなら、まず国連で可決された核兵器禁止条約に賛成するのが先だろう。戦争核による唯一の被爆国・日本が、いまだに反対し続ける態度に、ブーイングの声は世界中に広がっている。
あまつさえ、安倍首相は12日から東欧6カ国を訪問し、「北朝鮮への制裁・圧力強化に向け緊密な連携を強化したい」と意欲マンマンだ。

三つには原発への態度だ。「原発輸出」に拍車をかけ、担う民間企業には、巨額な銀行融資が可能となるよう、政府保証まで与えて厚遇する。10日には小泉・細川元首相らが、脱原発運動を積みあげてきた成果を踏まえ、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表する。22日に召集の通常国会に提出するという。世界から拍手や歓迎の声が挙がるだろう。安倍首相、少しは煎じて飲んだらよい。(2018/1/7)
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2018年01月05日

≪おすすめ本3冊≫ まず伊藤詩織『Black Box』─性暴力被害に屈せず闘い続ける強い矜持=伊藤和子(弁護士/「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長)

 作年6月、デイビッド・ケイ国連特別報告者は日本の表現の自由に関する調査報告書を国連に提出、報道の自由を確保するよう勧告した。
 彼は「日本のメディアは政府からの圧力を跳ね返す力が弱い」とし、記者クラブ制度など報道機関と政権の癒着に疑問を呈し、ジャーナリストの横の連帯、調査報道の環境醸成を訴えた。この提起は主要メディア内では、必ずしも掘り下げられなかったが、現状を打ち破る新しい動きが起きた。

 東京新聞の望月衣塑子記者による政権追及である。著書『新聞記者』 (角川新書)には、記者を志した軌跡、官邸会見で追及する心の葛藤や熱い想いが綴られている。
 多くの記者が政権幹部に踏み込んだ追及をしなくなる中、あえて質問を重ねる勇気を支えるのは権力監視というジャーナリストとしての強い使命感だ。「前川さんや詩織さんがたった一人でも戦おうとし、社会的に抹殺されるかもしれないリスクと背中合わせで疑惑を追及している。2人の勇気をだまって見ているだけでいいのか」と問う。

 その詩織さんは、首相に近い元テレビ記者による性的暴行被害を告訴、逮捕状執行が直前で見送られ不起訴に。検察審査会でも「不起訴相当」。それでも諦めず記者会見で被害を実名告発し、伊藤詩織『Black Box』 (文藝春秋)を出版した。
 屈せずに闘い続ける動機は「自分の中で真実に向き合えないのであれば、私にこの仕事をする資格はないだろう」というジャーナリストの強い矜持にある。性暴力被害者に泣き寝入りを強いる日本の社会的法的システムを、実体験から克明に問題提起した価値ある一冊だ。

 最後に横田増生『ユニクロ潜入一年』 (文藝春秋)を挙げたい。企業内部の過酷労働の実態を追及するため、自ら働き、潜入調査するという究極の調査報道姿勢に心から敬意を表したい。圧巻のルポだ。彼らに孤独な戦いをさせてはならない。社会が、そしてジャーナリストの横の連帯がこれを支え、真実に迫り権力を監視する報道が強まることを期待する。
「BlackBox」.png
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2018年01月03日

JCJに多額遺贈 元出版部会の阿部丈夫さんは「静」と「動」の人だった=池田隆(出版部会世話人)

 出版部会会員だった阿部丈夫さんは「静」と「動」の人でした。1953年4月に日本出版販売(日販)に公募1期生として入社し、7年間ほどは「自称」文学(演劇)青年として活動、青春を謳歌。動の人生に入った転機は、60年「安保闘争」だった。労組執行委員としてデモ行進に参加、壮大さに触発、感動、その後23年間組合役員として活動した。私と阿部さんとの出会いは67年の青年部結成でした。69年から8年間書記長として民主的労使関係の確立に向け千代田区労働組合協議会(千代田区労協)、75年には日本出版労働組合連合会(出版労連)に参加し、その先頭に立って実現した。背景には常に民主的出版物の普及に貢献したいという信念でした。
 退職後は、23年間の運動を記録した組合機関紙や資料を、過ぎた事として廃棄するのは忍び難いと7年間にわたって住まいがあった草加市であったことから「想過思今」として編集、かつての仲間に送付。その集大成は全3巻私家版「日販労働運動史」として刊行された。「出版流通九条の会」の結成にも尽力された。
 阿部さんは81歳で一昨年4月に亡くなられたが、相思相愛、同志でもあった夫人の明子さんが今年4月に亡くなられ、生前お二人の遺志で何らかの費用に活用してほしいということでJCJに遺贈された。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
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2017年12月31日

【今週の風考計】12.31─私たちは「ウオッチ・ドッグとして歩んでいきたい」──新たな決意

ゆく年くる年、酉が飛び立ち、戌が走ってくる─使い納めとなる年賀52円はがきに、「9条が正念場、懐憲ストップ! 力を合わせよう」と認め、投函する。

このほど組まれた防衛予算を見れば、背筋が寒くなる。なんと5兆2千億、6年連続の増額、過去最高となる。弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入だけではない。射程千キロに及ぶ巡航ミサイルを、ステルス戦闘機に搭載するシステムの予算化まで図る。
加えて護衛艦<いずも>を「攻撃型空母」へ改修する計画だ。空母化すれば米軍のステルス戦闘機F35Bが垂直のまま離着陸できる。まさに「専守防衛」どころか「敵基地攻撃能力」を持つ兵器の導入と活用のオンパレードじゃないか。憲法9条2項「戦力の不保持」を踏みにじる“戦争予算”と言っても過言ではない。

政官歩調を合わせ、南スーダンPKO部隊に派遣された自衛隊の「日報隠し」に始まり、<モリ・カケ>疑惑にはフタをし、「ご意向や忖度」にキュウキュウとする。国会では「共謀罪」法を強行可決し、準備・計画・未遂の行為まで処罰する。政治権力にとって、目障りな人々や組織を監視・処罰する法律に一変するのは必定だ。

あらためてJCJは、「忠犬ポチでなく、ウオッチ・ドッグ」に徹したい。しかも市井に暮らす人びとの心に寄り添い、危険を嗅ぎとったら鋭く吠える役目を果たしたい。
お年玉は、初読みにおすすめの一冊、ボストン・テラン『その犬の歩むところ』(文春文庫)をあげよう。犬も人間も等しく翻弄され過酷な目に遭うが、互いに助け合いながら逆境を克服していく感動の物語だ。(2017/12/31)
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2017年12月30日

日本ジャーナリスト会議と東海大学のジャーナリズムプロジェクトが共同制作した冊子を12月1日発刊=橋詰雅博

               編集雑記
 8月19日に東京・内幸町のプレスセンターホールで開かれた日本ジャーナリスト会議(JCJ)主催による2017年度JCJ賞贈賞式を記録した冊子「JOURNALISTs」をお届けします。 
 昨年号に続き東海大学の公認団体「JPOT」(東海大学ジャーナリズムプロジェクト)の学生が取材し編集しました。今回作成にかかわった学生は15人と、昨年よりも6人増えました。そのうち男子が2人で残る13人は女子でした。女子が圧倒的に多かった理由は定かではありませんが、会場と受賞者らを交えた懇親会での女子学生の取材によってイベントは盛り上がりました。
 参加者が増えたのは、今年2月15日付東京新聞に「ジャーナリストってなんだ。」をテーマに東海大文学部広報メディア学科の学生が冊子を作成と大きく報じられたことが要因ではないでしょうか。学生と、指導する羽生浩一教授がおさまる大きな写真が入った5段記事で、目立ちました。もちろん冊子の評判がよかったことも要因として挙げられます
 今号では新しいチャレンジもしています。2人のJCJ賞選考委員へのインタビュー、JCJ賞受賞した富山県の北日本新聞とチューリップテレビの両本社での取材、学生座談会などです。昨年号より4ページ増えた24ページ建てです。
 来年号も東海大学のJPOTとJCJが共同制作したいと思います。
JCJ事務局長・橋詰雅博

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2017年12月27日

《おすすめ本》 「亡国の武器輸出」池内了+青井美帆+杉原浩司編=橋詰雅博

 2014年4月、安倍晋三内閣は「防衛装備移転三原則」を閣議決定。武器輸出三原則が撤廃されて武器の輸出が全面解禁になった。「平和国家」から武器輸出を国家の「成長戦略」として政策が転換されたことで、大物防衛利権フィクサーが再び蠢動している。
 秋山直紀氏だ。秋山氏は防衛利権に絡んだ事件で約1億円の脱税容疑によって11年10月に懲役3年執行猶予5年の有罪判決が確定した人物。彼の復活を印象付けたのは16年5月都内のホテルでの現職の国会議員と防衛官僚による講演会の仕掛け人として名前が挙がったのだ。自ら理事を務める国際平和戦略研究所の代表理事、久間章生元防衛相を呼びかけ人として講演会開催を企画した。ただ、講演会は、直前に中止になった。本書執筆陣の一人であるジャーナリストの田中稔氏は、その理由を有罪になった人物が関係する会合で国会議員らが講演するのはまずいと防衛省などが判断したと指摘する。
 本書は武器輸出の問題点を15人が多面的に摘出した好著。
(合同出版1650円)

 
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《焦点》 戦争の危機迫る 自衛隊員の心境は=橋詰雅博

 安倍晋三政権は安保法成立など戦争する国に向かい着々と手を打っている。戦争の最前線に立つことになる自衛官は今、何を思っているのか。東京・練馬区の陸上自衛隊駐屯地を中心に部隊の行動の監視と自衛官への接触を行う練馬平和委員会の坂本茂事務局長(64)に今の自衛官の心境を聞いた。
☆  ☆
――安倍政権が戦争する国づくりを進めていることに自衛官はどう感じているのか。
 昨年10月16日に中央観閲式予行訓練が陸上自衛隊朝霞駐屯地訓練場で行われた際、一般向け入場券で駐屯地内に入った。警務隊などが尾行していましたが、「安保法をどう思うか」「8月、家族向けに配布された安保法解説書の感想は」などの質問を自衛官にぶつけた。「安保法は違憲」「入隊する際に署名捺印する『服務の宣誓書』には日本国憲法及び法令を遵守と書かれており、これと矛盾する」「解説書は美辞麗句だらけでインチキ」などと答えた。
20人が答える
また、PKO(国連平和維持活動)の新任務である駆け付け警護の訓練を経験した自衛官(1曹)は「海外に派遣されたら死ぬかもしれない」ともらした。3年に1回実施される中央観閲式は自衛隊のひのき舞台。予行演習とはいえ、本来は一般の人とのおしゃべりは厳禁です。にもかかわらず直撃インタビューに20人もの自衛官が答えたのは、命が危ういという不安の現れだと思います。
――九条改憲について何か言っていますか。
 九条改憲には口を閉ざしているが、自衛隊のイラク派遣(2003年12月から09年2月)でこんなエピソードがあります。イラクに6カ月間派遣されて帰国した幹部自衛官は、私に「九条があったから生きて帰れた」と話してくれました。憲法改正についてどうなのかと尋ねると「政治問題には答えられない」と言いました。
ドタキャン増加
――志願者の大幅減により自衛官募集も相当減っているそうですが……。
13年から一般曹候補生(正社員に当たる)募集は毎年2割ペースで激減している。1年を通して募集している非正規雇用に当たる自衛官候補生(陸自2年、海自・空自3年の任期制)も同じペース。
最近目立つのが試験当日のドタキャンです。母親や祖父などから『紛争地への海外派遣もあり得る。命は一つ。受験は止めなさい』と忠告されて止めるという。ある自衛官募集担当者は「上官から縁故募集も命令されている。わが子は自衛隊以外の仕事に踏み出したので、内心ホッとしている」と話した。若者の自衛隊離れは加速しています。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年12月25日号
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《焦点》 タックスヘイブン(租税回避地)三つの問題点=橋詰雅博

 巨大企業や富裕層、特権層が納税を逃れ秘密裏に資産を増やすために利用するタックスヘイブン(租税回避地)。その正体が明るみに出た昨年の「パナマ文書」に続く第2弾「パラダイス文書」が11月に報道されて世界に再び衝撃を与えた。
 これを受けてEU(欧州連合)の議会組織で開会中だった欧州議会では、タックスヘイブンへの批判が集中した。ベルギーのランバーツ議員は「租税回避は民主主義を掘り崩す行為だ」と強調。モスコヴィシ税制担当委員も「もしこれが合法だと言うのなら、法の方を変えなければならない」とまで言及した。
 12月3日の民間税制調査会(座長・三木義一青山学院大学学長)でパラダイス文書などについて講演した北海道大学法学研究科博士課程の津田久美子さんは、こう述べた。
 「タックスヘイブンの主な問題点は三つあります。不平等の温床、マネ―ロンダリングなど犯罪の助長、過剰なマネー取引による金融危機発生に加担です。独自の対抗策としてEUではマネロンを防ぐ案の検討や多国籍企業への課税強化、タックスヘイブンブラックリストの作成、パナマ文書に対する調査機関の設置などを挙げています」
 特に過剰に生み出されるグローバル・マネーを制御する試みとしてEU金融取引税(FTT)の導入に向けてフランスやドイツを中心とした10国が取り組んでいる点に注目が集まる。
 「当初は11カ国でしたが、経済の効率性が阻害されるとFTTに反対する金融業界などのロビー活動によりエストニアが離脱し、活動が停滞しました。とりわけ株式や債券などで運用する年金基金がFTT導入で損害を受ける可能性が大きな問題になりました。この数年は総論賛成、各論反対で税制の詳細を詰めるプロセスが頓挫していました。しかし、最近はEUの新財源として再び脚光を集めつつあります」(津田さん)
 日米は反対だが、EUのFTT導入への挑戦は注視すべきだ。


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2017年12月26日

《焦点》 「政治資金センター」を立ち上げた元NHK記者の立岩陽一郎さん=橋詰雅博

 衆参両院議員約700人の13年から15年分の政治資金収支報告書を大阪市の公益財団法人「政治資金センター」は今年2月からネットで本格公開し注目されている。ジャーナリストの立岩陽一郎さん(50)は同センターの立ち上げの中心メンバーで理事を務める。同報告書は保存期間が3年間。「資料として残すことに意義がある。政治家がどういう活動をしているか市民が調べたいときに有効です。加計学園と入力すれば、学園が献金した政治団体と献金額が分かります」
 立岩さんは一橋大卒業後、NHKに入局。テヘラン特派員、社会部記者、国際報道部デスクなどを経験。環境省担当のとき、同省の随意契約実態を調査報道で突き止め公表、政府の随契禁止のきっかけをつくった。10年から1年間、米国アメリカン大学に留学し調査報道を研究。「パナマ文書」の取材・分析に関わった。16年末にNHKを退職した後、調査報道ニュースサイト「iAsia」を運営する認定NPO「iAsia」で活動し、1月に同サイトの編集長に。10月、同サイトは「ニュースのタネ」に改名した。 
また、立岩さんはフェイクニュースのチェックを支援する「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」設立メンバーでもある。実際、10月の総選挙では、FIJが音頭をとり「ニュースのタネ」のほか3つのネットメディアが組んで政治家の発言などのファクトチェックを実施。
「大阪府の松井一郎知事は大阪で教育無償化を実現していると強調したが、チェックすると、事実ではなかった。ネットでそれを流した後、言い方を変えていた。ある程度効果はあった」


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2017年12月25日

《遠吠え》政治の欺瞞と対峙するには、人々のモヤモヤした感情をどれだけ言葉にできるかが鍵=田悟恒雄

 けさの朝日新聞、編集委員・高橋純子さんのコラム(政治断簡)は、「ドナドナと革命、荷馬車はゆれる」でした。
 いつもながら曰くありげな表題に釣られて食いつくと、なんと大杉栄「鎖工場」を引きながら、アベ政権の「革命の大安売り」─「人づくり革命」と「生産性革命」をやっつけています。
 そろそろお上お仕着せのラインや荷馬車から降りて、どう生きるか、どんな社会に暮らしたいか? 自分なりの選択肢を見つけるようにしてはいかが? と。
 テンポのいい文章に、「なんかいい気分」になっていたところ、『日刊ゲンダイ』の「注目の人 直撃インタビュー」に、高橋さん独特の文体の「誕生秘話」(?)が明かされていました─。

 「読者に読んでもらうには身体性のある表現が必要だ…極端に言うと、論の精緻さよりも、筆者の感情を込めた文章です。筆者がこれだけ怒っているとか、うれしいとか悲しいとか、…筆者の体温が感じられるように書くことが大切だ…」

 で、言葉のすり替えやごまかしが当たり前になっている「アベ一強政治」のもとだからこそ、そんなスタンスが求められるのでは? と─。

 「欺瞞を正面から論破するのは難しい。だから『なんか嫌だ』『どっか気持ち悪い』などといった自分のモヤモヤした感情をなんとか言葉にして読者に伝えないと、権力に対峙したことにならないんじゃないかと思うんです」

 そういえば石破茂氏もいつぞや、まるで正反対の立場から、選挙民のあいだにそうした「モヤモヤした感情」が生まれることを危惧していましたっけ。

(「零細出版人の遠吠え」12/25より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年12月24日

【今週の風考計】12.24─<'17読書回顧─おすすめ3冊>が、切り拓いた新しい世界

わが機関紙「ジャーナリスト」<書評欄>を担当して10年。今年も掲載できなかった良書は数多い。とりわけ小説や境界領域の本は採用できず、無念の思いがよぎる。

濯ぐ意味もこめ<私のおすすめ3冊>を挙げておきたい。まずは文藝賞を受賞した若竹千佐子さんの小説「おらおらでひとりいぐも」。東京新聞「本音のコラム」で斉藤美奈子さんの紹介エッセイを記憶し、河出書房新社から刊行されるのを待って購読した。
夫をなくした悲しみを超え、残りの人生は自分なりに生きようと、新たな「老いの境地」を描く。遠野の口承文芸にも通じる会話文と地の文章が重なり合う叙述に圧倒された。

実は、このタイトルが、宮沢賢治「永訣の朝」にある<Ora Orade Shitori egumo>に由来しているのを知った。以来、宮沢賢治の詩集を引っ張り出して読み直し。続けて『銀河鉄道の夜』も再読。
そんなところへ門井慶喜『銀河鉄道の父』(講談社)が目に留まり一気読み。人間・宮沢賢治を、父・政次郎の視点から、その家族と紡いだ日常生活を通して描き出す。これまで政次郎について書かれた本は一冊もない。著者がコツコツと調べ続けて完成させた、賢治一家の再発見となる稀有な物語である。

最後は伊沢正名『葉っぱのぐそをはじめよう』(山と渓谷社)。ノグソを続けて43年、「糞土思想」が地球を救うと述べる著者は、ノグソは人が自然と共生する最良の方法だという。その熱い想いが80種以上の葉っぱのカラー写真と共鳴して響き合う。
山に行けば<お花を摘みに行ったり、雉撃ちに行く>のはよくある事。また『うんこ漢字ドリル』(文響社)が累計281万部の時代、決してビロウな本だと忌避してはならない。(2017/12/24)

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2017年12月23日

≪おすすめ本≫末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究』─戦争する国へ導く「米日統合司令部」を暴く=吉田敏浩(‘17JCJ賞受賞者/ジャーナリスト)

 北朝鮮の核・ミサイル問題で、トランプ・安倍両政権は軍事的圧力、武力の威嚇を強めている。
 日本海などで米軍の空母や爆撃機と自衛隊の艦船や戦闘機が、共同訓練を繰り返している。安保法制=戦争法制による米艦防護まで実施した。
 武力の威嚇は憲法違反だが、強引な解釈改憲で違憲の集団的自衛権の行使容認に踏み出した安倍政権にとっては、戦争体制づくりの規定路線であろう。
 それは米国の世界戦略に従って、地球的規模で米軍の戦争に自衛隊が協力し加担する体制の構築と結びついている。

 本書は、そうした恐るべき米日軍事一体化の流れを、占領時代からの米国による日本再軍備の策動の歴史に遡って検証し、核心を抉り出している。
 著者が米国立公文書館に通い、膨大な米国政府・軍の解禁秘密文書を精査した末に明らかになったのは、戦時に自衛隊は米軍の指揮下に入るという、1952年の当時の吉田茂首相とクラーク極東米軍司令官との口頭による「指揮権密約」だ。
 以来、自衛隊は米国製兵器で武装し、米軍事顧問団の指導を受け、米軍と共同訓練・演習を重ねてきた。米軍と自衛隊の基地の共同使用も拡大し、横田・横須賀・キャンプ座間の各基地では司令部機能の統合も進む。
 2015年の「日米防衛協力のための指針」により、米政府高官・米軍幹部と日本政府高級官僚・自衛隊幹部から成る機関「同盟調整メカニズム」、事実上の米日統合司令部も機能している。戦力も情報力も米側が格段に上で、「指揮権密約」もあり、米軍が自衛隊を指揮する統合司令部だ。 
 まさに日本は再び海外派兵をし、米国の下で戦争をする国に変貌しつつある。その危険な動きを止めるのは、戦争体制反対の世論の高まりしかないという著者の問題提起は実に重い意味を持つ。(創元社1500円)
「日米指揮権密約」.png
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2017年12月18日

《遠吠え》ヒャクタさん、「これぞSNS時代のメディア・リテラシー」やったっちゅうことです=田悟恒雄

 保育園の屋根にヘリの部品が落下(12月7日)、小学校の校庭にヘリの窓が落下(同13日)と、米軍普天間基地を抱える沖縄県宜野湾市で米軍ヘリによる重大事故が相次ぎました。
 これに対し日本政府は、米軍に「飛行停止」を要請するのではなく、米軍に判断を任せる「飛行自粛」の申し入れに留めています。
 そして海兵隊が「飛行中に落下した可能性は低い」と事実を否定すると、あろうことか保育園には「自作自演だろう」「嘘をつくな」といった誹謗中傷の電話やメールが寄せられるようになりました。
 これに悪乗りし、率先してデマを拡散しているのが、あの百田尚樹氏。12日放送の『真相深入り! 虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)で、こう言いきっています(「リテラ」)─。

 「どうも調べていくと、これ全部嘘やったっちゅうことです」
 「どうもこれは全部捏造やったちゅう疑いがほぼ間違いない」

 と、毎度のことですが、このお方、何の論証を添えることもありません。
 SNS全盛の昨今、ネット上には、この手の「乱暴な物言い」が大手を振るっているのですが、これと正面から向き合っているのが、琉球新報の「モバプリの知っ得!」というコーナー─。

 「まとめサイト『だけ』を見ると、自作自演論が大量にならび、『みんな言っているから確かにそうかも...』と一瞬、錯覚してしまいます。…
 こうした眉唾なまとめサイトの情報に『お墨付き』を与えるのは、多くのファンを持つ、論客・オピニオンリーダーです。メディアへの出演、著書などを多数出版し、ツイッターでのフォロワー(観覧者)も多い彼・彼女らが、『マスコミが報道しない真実』などと一言添えて拡散します(事実に基づかないから報じないのは当たり前だろ!と思わずツッコミたくなります)。
 思い込みの書き込みも、大量に集まることで事実のように見え、さらには論客が後押しすることで説得力が増したように感じます(『エコーチャンバー』『サイバーカスケード』現象)。
 インターネット、特にソーシャルネットワーキングサービス(SNS)では似たような意見の人と繋がることが多く、意見が偏りやすいのです。
 情報や意見を受け取る場合は、事実が明らかになっていることを基本に考え、推測が入る場合は割り引いて考え、断言しないこと。そして多方面からさまざまな意見を見聞きすることがネット時代では大事だと感じます。」

 これぞ「SNS時代のメディア・リテラシー」ではないかと、強く共感する次第です。

(「零細出版人の遠吠え」12/18より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年12月17日

【今週の風考計】12.17─いまベートーベン<第九>が、日本で担わされた運命を考える 

◆今日はベートーベンの誕生日。1770年12月17日ボンで生まれ、1827年3月26日ウィーンで死去。没後190年を迎える。あの<第九>は、ほぼ耳が聞こえなくなった54歳のときに作曲された。
◆日本では年末になると、<第九>の第4楽章「歓喜の歌」が、よく演奏される。欧米では祝典や歴史的な行事の際に演奏され、年末は関係ない。第二次世界大戦後の1951年7月29日、フルトヴェングラーがバイロイト音楽祭で指揮した記念碑的演奏は、今でもLPやCDのロングセラーになり、筆者も愛聴している。

◆なぜ日本では年末恒例となったのか。それは1943年、東京音楽学校(現在の東京芸術大学)の上野奏楽堂で行われた、12月の学徒壮行音楽会での<第九>演奏といわれる。学徒出陣のため12月に卒業繰り上げとなった学生たちを激励するためであった。戦後も1947年12月30日には、同じ場所で戦没学徒兵を追悼する演奏会を行っている。

◆「レコード芸術」12月号で、等松春夫氏が「大日本帝国と≪第九≫」と題して、時の政局との関係を紹介している。皇紀は2600年の昭和15年(1940年)、大政翼賛会が設立され、愛国精神の高揚を図る数々の大イベントの締めくくりとして、大晦日の午後10時半、ローゼンシュトック指揮・新交響楽団(NHK交響楽団の前身)がスタジオから実況放送をしている。
◆そして「戦時下の3年8カ月の間に<第九>の演奏は全国各地で22回にも上り、多くの青年たちが『歓喜に寄せて』に送られて戦地へ向かい、そして還らなかった。…大日本帝国にとって、<第九>とは『マルスに招かれたミューズ』だったのであろうか。」と結ぶ。

◆いま国会では、まさにローマ神話の軍神「マルス」が徘徊しているだけに、うかうかしてはいられない。(2017/12/17)

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