2017年06月24日

≪部会レポート≫「日米合同委員会」の正体を暴く─講演&クロストーク:吉田敏浩+末浪靖司

 出版部会は、9日、都内で〈日本の憲法より上にある「日米合同委員会」─その正体を暴く〉というテーマで、講演&クロストークを開催した。
 第1部で吉田敏浩(立教大学特任教授)さんが講演。自著『「日米合同委員会」の研究』をもとに、詳細なレジメと資料を参加者に配布し熱弁をふるった。以下、講演要旨。

 戦後70年、今もって日本政府は、在日米軍の基地や活動を規制することができず、事実上の治外法権下に置かれ、真の独立国といえない状態にある─この現実を直視することが肝心。
 米軍機が墜落事故を起こしても日本は手が出せない。米軍人・軍属の犯罪は公務中であれば、第1次裁判権は米軍側にある。これら米軍の特権を担保する裏の仕組みが、秘密に包まれた「日米合同委員会」である。

月に2回開かれる密室会議
 1952年に発足し、日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人で構成。日本側代表は外務省北米局長、アメリカ側代表は在日米軍司令部副司令官。11の分科委員会と5つの部会を持ち、米軍基地の運用や米軍人・軍属に関する全ての問題が協議される。
 本会議は毎月、隔週の木曜日午前11時から、外務省の会議室と、ニューサンノー米軍センター(東京都港区南麻布・米軍の高級宿泊施設)にある在日米軍司令部専用の会議室で、交互に開かれる。関係者以外立ち入り禁止の密室で協議が重ねられ、議事録や合意文書は非公開だ。
 まさに日本の主権を侵害し、日本の「憲法体系」を無視して、米軍に特権を認める「日米合同委員会」の密約は膨大な数にのぼる。

米軍の特権を保障する密約
 たとえば米軍人の「身柄引き渡し密約」は、刑事特別法という国内法の規定に違反しているにもかかわらず、裏マニュアルで米軍に有利に処理する仕組みがある。
 「航空管制委任密約」も、日本の飛行機が自由に飛べず、米軍・戦闘機の訓練飛行や輸送機の発着などに独占的に使用することを認めている。
 「日米合同委員会」の密約は、憲法にもとづく国権の最高機関・国会にすら公開せず、主権者である国民・市民に対して秘密にしたまま「日米両政府を拘束」し、日本の立憲主義を侵食する闇の核心部となっている。
 まず私たちは、国政調査権を行使し、「日米合同委員会」の合意文書や議事録を全面公開させる。そして米軍の特権を認める合意・密約を廃棄し、「日米合同委員会」そのものを廃止する。真の主権回復と主権在民を実現する要だ、と強調した。

ジャーナリズムの原点にある体験
 第2部で『対米従属の正体』を著わした末浪靖司さんとのクロストークが行われ、貴重な体験が披露された。
 吉田さんはビルマの辺境民族を取材した『森の回廊』(NHK出版)で、1996年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞されている。なぜ彼が「日米合同委員会」をテーマにするのか、貴重な体験を披露してくださった。
 今から27年前、ビルマ(ミャンマー)北部のカチン族を取材する中で、政府軍とカチン独立軍が内戦を繰り広げ、人びとが死や苦難に追いこまれる現実に遭遇してきた。また今も語り継がれる「ジャパン・マジャン」(日本語に直すと「日本戦争」)による悲惨な体験を耳にしてきた。フィリピンでは「キャプテン・ヨシダ」の部隊が村人を殺した話を聞かされ、「その親戚か?」と詰問された苦い思いがある。
 旧日本軍によるアジア侵略の爪痕を見聞するにつけ、再び日本が他国の人びとを殺傷し、苦しめる事態にしてはいけないと痛感した。「海外派兵して戦争のできる国」にさせないためにも、「日米合同委員会」の追求は欠かせない、という。
 末浪さんは米国公文書館での地道な英文書類の精読の日々を語り、「自衛隊が米軍の指揮下で戦争する〈指揮権密約〉の存在」を指摘され、危険性を訴えた。(文責:守屋龍一)
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2017年06月20日

《遠吠え》首相のウソ臭い独演会ををオビでダラダラ流していては、まるでどこかの独裁国みたいに=田悟恒雄

 昨夕、急遽もたれたアベ首相記者会見。テレビ東京のアニメ以外は、TV各局どこもこれ。同じ「役者」が同じ顔して、早口でしゃべりまくっています。
 「率直な反省」だの、「真摯な説明責任」だの、「丁寧に説明する努力」だの、およそこの男には似つかわしくないフレーズが、いかにも軽くあたりを浮遊しています。如何せん、「所詮は儚いシャボン玉」のようなものですから、じきにパチンとはじけます。
 えっ、何ですって? 「政策とは関係のない議論ばかりに多くの審議時間が割かれた」ですって? 「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう」ですって?
 冗談言っちゃいけません。そんな議論の原因を作ったのは、あんた方「アベ一族」と「アベ一強政治」じゃないですか? しかも、ひたすらその疑惑の解明を妨げるために、あるものをないとするなど、見苦しいあがきを続けたんじゃないですか? 自分の非をすぐ他人になすりつけようとする「幼児的印象操作」は、そろそろ止めにしてはいかが?

 で、視聴者が「もういい加減にしたら?」と思い始めた頃合いを見計らったわけでもないでしょうが、テレビ朝日とTBSはほどなくCMに入り、その後は別のニュースに。念のため他局も覗いてみると、NHK、日本テレビ、フジテレビは、まだ飽きがこないよう。
 でも、しばらくしてまた覗くと、民放はすべて撤退、NHKの独壇場となっていました。そりゃそうですよねぇ、こんな「ウソ臭い独演会」をオビでダラダラ流していたのでは、どこかの独裁国みたいですもんね。いや待てよ、この国はもう、そんな地点に来ているのかもしれませんよ。

(「零細出版人の遠吠え」06/20より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年06月15日

≪おすすめ本≫ 三上智恵『風(かじ)かたか 「標的の島」撮影記』─沖縄の島々を<風よけ>にするのは誰か=鈴木耕(編集者)

 私は長年、雑誌や書籍の編集という仕事をしてきた。だから、作家やジャーナリストなど物書きの方々の知人友人も多い。そういう方の本の書評を頼まれることもよくある。親しい人の本の書評は難しい。書きながら、著者の顔が浮かぶからだ。
 本書の著者とは、もう十年来の友人。だが本書の書評はまったく難しくない。とにかく素晴らしいのだから、素直に推奨すればいい。

 表題は、沖縄方言で「風よけ」のことをいう。誰のために、何から何を守るための風よけなのか。それが痛いほど伝わってくる。帯に「辺野古・高江・宮古・石垣―島々を“風よけ”にしようとするのは誰なのか?」とある。それが本書の叫びだ。
 著者は<標的の島>という優れたドキュメンタリー映画を撮りながら、ウェブ上の「マガジン9」に、リアルタイムの報告と現場の怒りの声を連載。それが本書となった。

 冒頭に掲げられる、まるで詩のような美しい文章に胸がつまる。「この本を辺野古の平和運動の象徴だった嘉陽宗義さんに捧げます」とあるように、著者の心の支えでもあった、おじいへのオマージュ。それはまた、屈せぬ著者の決意の詩でもある。闘う人に著者の目はフォーカスされる。

 高江の大弾圧、辺野古での座り込み、宮古島要塞化計画、ヒロジさんや文子おばあの闘い、素知らぬ顔をし続ける本土、翁長知事の決意……そして「残酷な12月」の辺野古工事再開。
 どこを開いても、私は拳を握り締め、また沖縄へ行かなければ…と思うのだ。

(大月書店1500円)
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2017年06月13日

《遠吠え》「アマゾンのインセンティブ」に目が眩んでしまう前に、よーく心しておきたい2つのポイント=田悟恒雄

 いま、わが出版界を揺るがすのは、何と言っても「アマゾンのバックオーダー発注終了」問題でしょう。と言っても、業界外の方には何のことやらさっぱりわかりません。
 そこで、ごく大ざっぱな「絵解き」を試みますと─、

 アマゾン社は日本の出版物の調達を、書籍は主として日販(一部は大阪屋)から、雑誌・コミックはトーハンからというように、取次店(出版物問屋)を使い分けています。つまりアマゾンは、出版取次業界1〜3位の取次店を束ねた "3頭立ての馬車" を操っていると言えます。
 うち、日販を通じた既刊書の取引には、在庫商品仕入(スタンダード発注)と、非在庫商品の取り寄せ(バックオーダー発注)とがあります。
 で、たとえばリベルタの本のようにあまり動きの芳しくない本は、常時在庫は無駄ということで、アマゾンが受注してから、まずは日販に「バックオーダー発注」がかけられます。そして、この方式を今月でやめてしまうという、突然の通告なのです。
 では、その後はどうしたら? アマゾン社はしきりと、同社との直接取引「e託」なるものに出版社を引き込もうとしています。つまりは、「取次外し」というわけです。
 そんなアマゾンの「お触れ」が、連休直前、零細出版社にも届いたのですが、休み明けになるとこんどは、これに対する日販の「見解」が追い討ちをかけます─。

 「今回のお申し入れのままでは、出版社の取引の選択が狭められ、対応ができない社が出ることも懸念されます」

 というのです。さもありなん。真っ先に「対応できなくなりそうな」零細出版者としては、尻に火がついた格好です。
 ところで、このたびアマゾンがこのように乱暴とも思える挙に出た背景には、「取次の足元を見た」こともあるのかもしれません。というのは、とりわけ1980年代以降に創業した「新規出版社」の間には、取次によるさまざまな「差別取引」に苦しめられてきたところが多いからです。
 そんな中小零細版元にしてみれば、アマゾンが鼻先に突き付ける直取引の条件は、あからさまな「差別」は見えにくく、一見「好条件」と映らなくもありません。
 しかし、「アマゾンのインセンティブ」に目が眩んでしまう前に、よーく心しておきたい2つのポイントを、零細出版人の歯に衣を着せぬ "恨み節"「前門のアマゾン、後門の取次」から引いておきましょう─。

 「まずは、その初期の契約条件がせいぜい1〜2年限りのものでしかないこと。先方の間尺に合わなくなれば、いつでも無慈悲に破棄されることを覚悟しておかなければならない。
 そして、くだんの『e託販売サービス規約』第7条には、『甲(アマゾン)は単独の裁量で、乙(出版社)のタイトルの小売価格を決定します』と、白昼堂々『再販制崩し』を宣言していることも、見逃してはなるまい。」

(「零細出版人の遠吠え」06/12-13より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年06月10日

≪おすすめ本≫ 後藤政子『キューバ現代史 革命から対米関係改善まで』─「社会主義」キューバの歩み、原点にあるホセ・マルティの思想=吉原功(明治学院大学名誉教授)

 1959年、カリブ海の島国キューバで革命運動が勝利した。当初、社会主義をめざしたわけではない革命政府は、米国による反革命攻撃、経済的締め付け、ソ連の援助申し出などがあり、やがて社会主義を宣言する。
 米国フロリダからわずか145qの小国。米国の厳しい経済封鎖、絶え間ない政府転覆策謀や指導者フィデル・カストロの暗殺計画にもかかわらず、この国の「社会主義」が、半世紀を超えて生きながらえている謎に答えてくれるのが本書だ。

 キーポイントは「(19世紀末の独立運動の指導者)ホセ・マルティの思想」、「人間は自由な存在」であり「自由とは他者の自由の拡大」であり、独立後の社会は「すべての人びとの幸せ」「最も虐げられた人びとの解放が最優先」などを核とする思想が「キューバ革命の基本理念」にある。
 「貧困層の生活向上や黒人や女性の平等」「教育や医療の無償化」などが、革命後の政策に具体化されている。

 ソ連圏の崩壞によってキューバの社会主義は存亡の危機に直面するが、克服できたのは80年代を通して「社会主義見直し」運動による、という指摘は興味深い。
 20年の経験を総括し、キューバの特性・課題に適合した社会主義、マルティの人間主義的思想に、さらに近づく社会主義への道を、模索しはじめたのである。

 トランプ政権の誕生により米国との「正常化交渉」は不透明になったが、マルティ思想を活かしつつ経済的豊かさをも享受できる社会を目指すキューバ社会の動向は、人間社会全体にとっても重要な意味をもっていよう。本書は格好の教材だ。

(明石書店2800円)
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2017年06月07日

《遠吠え》私らの戴く政府は「印象操作」で議論を閉ざし、5歳児レベルの同義反復フレーズにしがみつく=田悟恒雄

 えっ、ナニ !? 5日夜のNHKのニュースを視ていて、思わず耳の穴をほじくってしまいました─。

 「『加計学園』が計画している獣医学部をめぐり、『官邸の最高レベルが言っていること』などと記された文書は文部科学省内の複数の課の少なくとも10人以上の職員にメールで複数回、送信され、今も個人のパソコンの中などに保管されていることがNHKの取材でわかりました。」

 「加計学園疑惑」が公になってから、どうにも煮え切らない報道ぶりが目に付いたアノNHKが、ようやく本気になって追及し始めたのでしょうか?

 「職員の1人は『専門教育課が大臣の説明資料として作成したもので、私も文書を持っている』と話しています。これまで文部科学省は文書について職員に聞き取ったほか、共有フォルダーなどを調べた結果、『文書の存在は確認できなかった』と発表し、個人のパソコンについては今後も調べるつもりはないと述べていました」とも。

 何せ世論調査では、この問題での政府の説明に「納得できる」人はたったの16%、「納得できない」人は72%にも及びます(JNN)。視聴者・国民のほとんどは、ナントカの一つ覚えの「印象操作」に惑わされなくたって、「王様は裸」に気づいているということ。
 だからNHKだって、いつまでも「裸の王様」の行列のお供をしているわけにもゆかなくなったのでしょう。

 で、翌6日の東京新聞夕刊によると、このNHK報道について、松野博一文科相はこう語っています─。

 「報道があったことは承知しているが、実際にそれが文部科学省の職員から発言があったかどうかについて確認することができないので、それを前提にした質問に答えることは差し控えたい」と。

 もう「何が何でも調べたくない」ってことなのでしょう。でも、こうも言っています─。

 「こういったところから出て、ということが明らかになれば、調査に関して対応をしっかり検討する」

 つまり、実名を明かして顔出ししてくれれば「対応を検討」してやろうか、というわけです。どこまでも「不正の内部告発はさせまい」という不誠実な態度に終始しています。おそらくは前川喜平さんの言うとおり、文科省は「ヘビに睨まれたカエル」で、情けないことに竦みきっているのでしょう。
 「官邸の最高レベル」から「劣化閣僚」の面々に至るまで、アベ政権のこの間の一連の対応を見ていて、私は昔、5歳の息子が書いた日記のフレーズを思い出してしまいました─。

 「きょうは、つまらないからつまらなかった。」

 私らの戴く政府は、「印象操作だっ!」の連発で議論をシャットアウトしたうえで、「5歳児レベルの同義反復フレーズ」にしがみついている、といった格好なのかもしれません。

(「零細出版人の遠吠え」06/06-07より。 http://www.liberta-s.com/
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≪出版界の動き≫ 「アマゾンのバックオーダー発注中止」の波紋

●アマゾンジャパンは一部の既刊本について日販への発注を6月末で取りやめる。日販に在庫がない書籍を調達する場合は、アマゾンが出版社から直接取り寄せる方式に順次改める。書店がアマゾンに蚕食されつつあるなか、取次という物流までもがアマゾンに支配される。

●新栄堂書店は池袋サンシャイン店を5月28日に閉店、約38年間の営業を閉じる。その後は、くまざわ書店が出店の予定。新栄堂書店は新宿パークタワー店だけとなるが、7月には東京・南池袋に新規出店の計画がある。

●取協・雑協が「12月31日特別発売、年末年始キャンペーン」の総括を発表。12月29日〜1月4日の販売実績を前年比で調査。12月31日特別発売の「雑誌」は17.3%増、発売日が設定されない1月4日の販売は「雑誌」22.2%減。7日間の年末年始の総計では「雑誌」1.5%増。

●4月の返品率は書籍26.5%(278億円)、雑誌40.0%(286億円)。雑誌返品率は3ヵ月連続40%を超える。週刊誌・月刊誌は断裁。紙の浪費・資源問題にリンクしかねない。

●「朝日新聞『押し紙率32%』に愕然」の記事(『FACTA』5月号)は、1999年の発行部数829万4千部、実売771万3千部、残紙58万1千部。2016年の発行部数654万部、実売444万7千部、残紙209万3千部・残紙率32%となり、3部に1部が毎日廃棄されているという。2020年には発行部数463万部、実売部数324万部まで落ちこむと予測。なにも押し紙は朝日のみならず読売や日経も同じで、毎日新聞や産経新聞はさらに深刻といわれている。

●ブックオフ─2017年3月期第3四半期(H28.4.1〜同12.31)の売上高600億(前年同期比7.0%増)。しかしアルバイト増員による人件費、新規出店費用の増加などで、営業損失5億1200万円。2年連続の赤字で社長交代。
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2017年06月05日

≪お知らせ≫ 講演&クロストーク《日本の憲法より上にある「日米合同委員会」の正体を暴く》=出版部会6月例会

 日本のエリート官僚と在日米軍の幹部が集まり、「日米合同委員会」という名の会議が、毎月2回、開かれている。
 その協議は、厚い秘密のベールに包まれたまま。決まった内容は、国会も関与できず、憲法よりも優先される。
 1952年の発足以来、日本の主権を侵害し続ける、“影の政府”の実像と権力構造の正体に迫る。

日時:6月9日 (金) 18時15分〜20時50分
会場:YMCAアジア青少年センター3階会議室
  (東京都千代田区猿楽町 2-5-5 ☎03−3233−0611 JR水道橋駅・東口改札出る)
講演:吉田敏浩(立教大学特任教授)
クロストーク:末浪靖司(ジャーナリスト)&吉田敏浩
資料代:500円(会員・学生300円)

<主催>日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
連絡先:電話03-3291-6475 メールアドレス:office@jcj.gr.jp
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2017年06月03日

≪メディア時評≫ 内心の自由を「黙示的共謀」で縛る危険な狙い= 守屋龍一

 安倍政権・自公両党と別働隊日本維新の会は、「共謀罪」法案を強行可決。この暴挙を許すな!
 あらためて確認しよう。「共謀罪」法は、犯罪行為の「予備」や「未遂」よりも前の行為を処罰する法律だ。その法でいう「準備行為」とは何か。「組織の変質」は誰が判断するのか。「一般人」に及ばないという規定は、どこにあるのか。

 それらの認定や判断は、全て捜査機関や裁判所に委ねられている。「内心」や「準備行為」を探るには、日常的な監視、メール・LINE の盗み読みが不可欠。さらには逮捕、自白の強要、証拠のねつ造すらありうる。「共謀罪」は死刑から懲役4年以上。誰でも犯罪者や死刑囚になりうる。

 藤原聡・宮野健男『死刑捏造─松山事件・尊厳をかけた戦いの末に』(筑摩書房)は、24歳の若者が逮捕され、自分の留置場に送りこまれた警察ダミーに「自白」をそそのかされ、殺人犯にデッチあげられ死刑が確定。だが獄中29年の闘いで、無罪を勝ちとる軌跡を追う。
 共著者の一人・藤原聡さんは「足利事件の無罪といい、袴田事件の冤罪も含め、死刑まで捏造して、無実の人間がズタズタにされる悲劇を繰り返してはならない。今も代用監獄での取り調べ・自白の強要が続き、捜査や刑事司法の在り方が問われている」と言う。

 最近でも、風力発電所の建設に反対する一般市民の言動や集まりを警察が監視する大垣事件が起きている。刑事が情報収集を目的に忍びこみ、内容を電力会社に提供していた。まさに「一般人」がターゲット。

 日本の刑法では、犯罪が成り立つには「共謀」や「準備行為」だけではダメ。最低「実行に移した」という「事実」が必要となる。
 しかし「共謀罪」が成立すれば、「共謀」「準備行為」で犯罪となるから、捜査機関は監視、盗聴、潜入、密告奨励、挑発へと拡大させ「内心」捜査に必死となる。

 くわえて「共謀」の概念に、「未必の故意」の「黙示的共謀」まで、取りこむ危険性がある。現に昨年9月の静岡地裁は、立候補予定者のチラシを配布した事件に対し、「黙示的な共謀があった」と認定、6人全員に有罪判決を出した。
 「あうんの呼吸、暗黙の了解」すら「共謀」とみなし、犯罪とするのだから、冤罪事件が発生するのは目に見えている。

 〈森友疑惑〉や〈加計学園問題〉が象徴するように、政治家・官僚の「忖度」がはびこる。「共謀」と勘繰られてもおかしくない。だからか政治家が関係する犯罪は「共謀罪」の適用から外されている。
 しかし「共謀」の概念を恣意的に使い、「一般人」への適用に及べば、「テロ防止」など吹っ飛び、「政治権力にとって目障りな人々や組織を、監視・処罰する」法律へ一変する。
 力を合わせ廃案へ追いこもう。
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2017年06月02日

《遠吠え》「ウソやごまかし」で汚濁しきった永田町・霞が関界隈にも、これほどの人格者が潜んでいた!=田悟恒雄

 昨夜の「報道ステーション」の「加計学園問題…前川前次官に単独取材」。富川キャスターのインタビューを受ける前川さんの受け答えは、実に誠実かつ堂々たるものでした。
 なかでも零細出版人の関心を引きつけたいくつかの論点─。

▽「政治主導」と「官邸主導」
 小泉政権時は「総理指示」は明確に言われたが、それに対して明確に反対することもできた。しかし、「報復人事」のようなものはなかった。現在は、「指示」があいまいな形で伝わってくる。意思決定が踏むべきステップを踏んでいない。

▽「情報公開」と「守秘義務」
 国民のコントロールの及ばない権力はダメ。それには国民が知っている必要がある。それを知らせるのはメディアの役割。よく公務員の「守秘義務」が言われるが、そもそも「秘」にしてはいけないものを「秘」にしてしまうことこそが問題。

▽「文科省文書」
 文科省は問題の文書は「確認できなかった」と言っているのであって、「なかった」とは言っていない。おそらく「確認できないような探し方」をしたのだろうが、それは「ウソ」とはならないギリギリの説明。

▽「表現の自由」
 私の座右の銘は「面従腹背」。これは役人の心得として必要なもの。官僚を辞めたいまは「面従」は不要になったので、「面背腹背」。「表現の自由を100%享受できる喜び」は大変なもの。

いやー、すっかり圧倒されてしまいました。「ウソやごまかし」で汚濁しきった永田町・霞が関界隈にも、これほどの人格者が潜んでいたっていうことです。

(「零細出版人の遠吠え」06/02より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年06月01日

≪おすすめ本≫沖縄タイムス編集局 編『これってホント? 誤解だらけの沖縄基地』─沖縄の現実から目をそらし基地撤去の願いに背く風潮を問う=川村史子(JCJ北海道支部)

「広辞苑」によると「誤解」とは、意味をとり違えること、間違った理解をすること−と定義されている。日々の生活に米軍基地が関わり合う沖縄の人々に対し、単に誤解で済ませてよい問題だろうか。読み進むうちにそんな気持ちになってきた。

 本書は昨年1月から8月まで沖縄タイムスで連載された「誤解だらけの沖縄基地」をベースに再構成し加筆したものだ。文章は平易で図表なども多く、基地問題は苦手な人でも読みやすい。

 ネットや口コミで流される各種の誤解を「在日米軍」「基地経済」「普天間」「海兵隊の抑止力」などにジャンル分け。「地理的に重要だから沖縄に海兵隊を置くのか?」「日本防衛の義務、在日米軍にあるのか?」「基地がなければ沖縄経済は破綻?」などの質問に、公表された統計データや史実を基に丁寧に反証する。

 ところでこれらの「誤解」は、どこから生まれるのか。沖縄に行った経験がない人でも、沖縄に米軍基地が集中し犯罪や騒音などで沖縄県民が苦しんでいる現状は知っているはずだ。そして日米安全保障条約に基づく日米同盟のため在日米軍基地が不可欠なことも。
だから国民も自分の近くに米軍基地が来ないよう沖縄の現実から目をそらし、話題にするのを避けているように思う。

 本土メディアにも責任はないのか。「辺野古移設が唯一の解決策」を固持する日本政府の方針も広い意味では「誤解」だ。辺野古の新基地建設に根強く反対する沖縄の人々の視点に立ち解決策を探る報道がもっと多くあってもよい。

(高文研1700円)
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2017年05月29日

《焦点》 「押し紙」国会で35年ぶりに論議、新聞の弱み握る安倍政権、メディア操作に利用=橋詰雅博

 国会で35年ぶりに「押し紙」問題が論議された。新聞配達もしたことがある日本共産党の清水忠史衆院議員が、3月末の衆院消費者問題委員会と4月中旬の経済産業委員会で取り上げた。清水議員は、所管する経済産業省に実態調査を提案。世耕弘成大臣は「(新聞販売店を束ねる)日本新聞販売協会から相談があれば、対応したい」と答弁した。新聞社が部数を水増しするため販売店に無理やり買い取らせる読者のいない新聞「押し紙」を長年追及してきたジャーナリストの黒薮哲哉さん(59)に聞いた。

全国紙で30%

――「押し紙」の現状はどうなっているのか。
 昨年3月24日に公正取引委員会は、朝日新聞社に対して(押し紙)は独占禁止法違反につながる恐れがあるとして、違法行為(不公正な取引方法)の未然防止を図る観点から注意をしている。その朝日の「押し紙」の割合だが、清水議員はある朝日新聞販売店のケースでは約30%と指摘していた。私が入手している複数の資料でも30%程度なので、朝日の押し紙の割合を推測する目安になります。朝日以外の全国紙の押し紙も少なくても30%はあると見ています。また、清水議員は読売の販売店では、押し紙が混ざって、前日の新聞が誤って配られた事例や毎日が現在、販売店との間で押し紙裁判を抱えている事実も明らかにした。
――販売店に買い取らせている押し紙で新聞社はどのくらいの収入を得ているのか。
 少し古い数字だが、2004年に外部に漏れた毎日新聞の「朝刊発証数(読者に発行される領収書の数)推移」をもとに試算した。02年10月当時、毎日新聞の発行部数は約395万部。発証数251万分を差し引くと144万部が押し紙。144万部をすべて朝刊だけと前提にする。毎月の購読料約3000円の半分を販売店は新聞社に上納し、残る1500円が収入になる。144万部の押し紙を徴収した場合の毎日の収入は月額21億4000万円。年間では259億2000万円にのぼる。ただし、本当にすべての押し紙について、集金が完了しているかどうか分からない。担当者の裁量である程度、免除されていることもある。ともあれ、押し紙を介して巨額の資金が販売店から新聞社に流れるシステムが構築されている。

90年代から変質

――世耕大臣が名指した日本新聞販売協会(日販協)はなぜ動かないのか。
 日販協は80年代のころまでは、押し紙問題解決に向けて熱心に取り組んでいた。ところが90年代ころから変質。再販売価格維持制度(再販)の指定から新聞を除外しようと政府が動き出したのが主因。再販の指定から外れたら購読料は自由競争になり、業界は大混乱に陥る。新聞社の経営は大打撃を受ける。再販維持のため日販協は、結成した日販協政治連盟を通じて自民党や公明党の国会議員にかなりの額の政治献金をしている。選挙では自公候補者を推薦。14年暮れの総選挙は、139人推薦し、131人が当選。こうした政界工作の背景には19年10月に実施される消費税10%の値上げに際して、新聞を軽減税率の対象に加えてほしいという狙いもあります。
――押し紙を買い取る代わりに新聞社から補助金を受け取る販売店が押し紙拒否の訴訟を起こすのはなぜか。
 折り込みチラシ広告が急減し、読者は減り続け、押し紙をさばき切れない。そっくりそのまま古紙にしている現状はまともな商売ではないと考える店主は増えている。押し紙を断り正常な商売をしたいという思いが訴訟に踏み切らせている。ただ、訴訟になっても販売店と新聞社が和解するケースが目立ってきた。敗訴の判例を残したくない新聞社が和解金を販売店に支払っている。裁判官も新聞社を批判した判決文を書きたくないので、和解をすすめる。和解を受け入れると大喜びする裁判官もいます。

新聞社つぶしも

――押し紙は読者にどんな不利益をもたらすのか。
 安倍首相は、小泉内閣時代に官房長官を務めていた06年3月の国会答弁で、押し紙があることを認める発言をしている。経産省も公取委も実態を知っている。それなのになぜ公取委は押し紙排除措置命令を出さないのか。弱みの押し紙を握ることで、新聞社に無言の圧力をかけて意のままに操ろうと安倍政権は考えている。メディアコントロールです。反政府的言動が強まれば、押し紙問題にメスを入れて、新聞社潰しが可能な状態にしているのだ。これでは言いたいことが言えない紙面になってしまい、本当のことが読者に伝わらない。ジャーナリズムの役割を果たしていません。正確な情報を得られない読者は不利益を被っている。押し紙に加えて再販維持、軽減税率は新聞社の3大弱みだ。
聞き手 橋詰雅博
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2017年05月27日

《焦点》 やくざは取材対象者と押し切る=橋詰雅博

 ドキュメンタリー映画で観客動員数が1万人を超えるとヒットというのが業界の見立てだ。その4倍の4万人の観客を動員したのが東海テレビ制作の「ヤクザと憲法」(2016年1月公開)。異例の大ヒットだが、長編アニメ映画「君の名は。」は1500万人だから同じ映画なのに置かれている状況は雲泥の差。それでも東海テレビはドキュメンタリー映画の制作に情熱を燃やし続けている。
 4月下旬に都内でこの傑作「やくざと憲法」の上映会が開かれた。主催した憲法と表現の自由を考える出版人懇談会から招かれたプロデューサーの阿武野勝彦さんと監督の土方宏史さんが映画制作の舞台裏を語った。指定暴力団「二代目東組」の二次団体「二代目清勇会」の大阪府堺市にある事務所内に撮影カメラが入ったこの映画は、やくざの日常生活を完全密着取材。やくざの生態が洗いざらい映っている。暴力団対策法(91年)に続く自治体の暴力団排除条例によってやくざは「すべての国民は法の下に平等」とうたった憲法14条の埒外に置かれ、人権がない捨てられた国民≠ノなっている。しかし人間であることに変わりない。映画はそうした視点が内在しているのだが、制作前の15年3月末に東海テレビで72分間に編集されたものが放送された。
 実は局内では放送するかやめるかで揉めたそうだ。なぜならば日本民間放送連盟は、暴排条例が全国の自治体で施行された11年10月に「出演契約における反社会的勢力排除についての指針」を発表し、やくざの出演を禁じたからだ。
阿武野さんはこう言った。
「放送反対派は『やくざと憲法』は指針にふれるのではないかいう意見でした。結局、『彼らは出演者ではなく取材対象者だ』という我々の主張が受け入れられた。やくざを取材対象者にしただけで、同調も同化もない。ジャーナリズムの役割を果たせたと自負している」


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2017年05月25日

《焦点》 沖縄差別は「琉球処分」が原点、琉球新報東京支社報道部長が語る=橋詰雅博

  琉球新報社の東京支社報道部長の新垣毅さんは(45)、赴任して2年目に入った。昨年4月に赴任する1カ月間前に部屋探しのため上京し、気に行った物件があったので、部屋を貸してほしいと申し込んだところ、「琉球新報には貸せない」と断られた。それを書いたTWが当時、話題になったが、そのおかげか「琉球新報記者ならぜひ貸したい」という大家が現れ、しかも相場より安い家賃で部屋に入居できたそうだ。「東京も捨てたものではない」と思ったという。  
新垣さんは琉球王国の歴史がライフワークだ。琉球王国を語る上でターニングポイントになったのは、明治政府が強制的に併合した1879年の「琉球処分」。その5年前の72年5月に当時の大蔵省の大輔(だいゆう=現在の事務次官級)の井上馨が最高政治機関・正院に提出した建議が起点だ。清(中国)と貿易を続け独自外交を展開する琉球を天皇に背く不臣(不忠不義の民)の罪としてとがめ併合すると書かれていた。
「建議には琉球国王を『酋長』と蔑称で呼び、軍事の観点から琉球を『要塞』と位置付け、『皇国の規模拡張』を目指す内容でした。天皇と関係ない琉球に不臣の罪をかぶせる一方的なデッチあげです。琉球と中国の関係を絶ち、日本が琉球を専属するこの提案こそが琉球処分論議のベースです」
 沖縄差別の原点となるのが琉球処分である。
 「現在、大きな差別は2つある。米軍基地の押しつけと、基地反対の沖縄住民を反日と排外する。とりわけ排外主義の台頭が心配です」

 
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《遠吠え》メディアの幹部に物申す。"加計ゲート" で火だるま状態の首相とご会食している場合かっ!!??=田悟恒雄

 「ロシアゲート事件」で尻に火がついた大統領は初の外遊に出ましたが、「"加計ゲート事件" で火だるま状態の首相」の方も本日、シチリア島はタオルミーナで開かれるG7へと向かいます。
 ところが「火だるま」の火元となった「加計学園疑惑」は、松野文科相が「内部調査で確認できなかった」などと強弁したにもかかわらず、動かぬ証拠となる「文科省文書」が次々出現、もはや下手な弁解などやっていられない事態に。
 で、首相お出かけのはなむけに(?)、『週刊文春』が号砲1発。文科省前事務次官・前川喜平さんの独占インタビューを掲載しています─。

 「『総理のご意向』文書は本物です」

 公平のために付記しておきますと、目下、中吊り広告問題で『週刊文春』と険悪な関係にある『週刊新潮』も、「加計学園疑惑」を扱っています─。

 「安倍官邸が暴露した『文書リーク官僚』の風俗通い」

 こちらの方の主眼はどうやら「場外乱闘」にありますが、全体のトーンとしては、「下半身問題」そのものよりも、「読売スクープ」の出所が官邸だったこと、その目的が、前川さんの「実名告白」報道の牽制にあったこと、に力点をおいているようです。
 けさの朝日新聞は「前川氏の一問一答」を報じていますが、昨夜のテレビ朝日『報道ステーション』は、おとといの参院決算委員会で共産党の小池晃議員が暴露した「新たな文科省内部文書」を、ようやく1日遅れで伝えたばかりでした。
 朝日新聞の「首相動静 5月24日」に、「6時41分、東京・赤坂の日本料理店『古母里』。テレビ朝日の早河洋会長、篠塚浩報道局長と食事。」とありましたが、まさかそれで丸め込まれたってわけじゃないでしょうね。
 このタイミングでの、このお食事会。マスメディア幹部には、誤解を生むような行動は厳に慎んでもらいたいものです。

(「零細出版人の遠吠え」05/25より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年05月22日

≪メディア時評≫ いまや世界が危惧する「共謀罪」を廃案に!

 「共謀罪」が強行採決された。人の「内心」を探るには、日常的に市民や団体を監視し、メールやSNS・ LINEの盗み読みは不可欠。
 捜査機関は盗撮、密告奨励、スパイ潜入など、あらゆる手法を使うにきまっている。
 さらには別件で逮捕し、留置場という「代用監獄」で長期勾留、執拗な自白の強要、証拠のねつ造へとエスカレートするだろう。

 ここに一冊の本がある。藤原聡・宮野健男『死刑捏造─松山事件・尊厳をかけた戦いの末に』(筑摩書房)だ。
 24歳の若者が別件逮捕され、自分の留置場に送りこまれた前科5犯の警察スパイから「自白」をそそのかされ、殺人犯にデッチあげられた。死刑が確定。
 だが獄中29年の闘いで、証拠とされた血痕が、警察の捏造であるとされ、無罪を勝ちとる軌跡を追うドキュメント。

 共著者の一人・藤原聡さんは「足利事件の無罪といい、袴田事件の冤罪も含め、死刑まで捏造して、無実の人間がズタズタにされる悲劇を繰り返してはならない。今も代用監獄での取り調べ・自白の強要が続き、捜査や刑事司法の在り方が問われている」と言う。
 さらに無実なのに虚偽自白した事例の研究では「取り調べが6時間を超えると虚偽自白が増える」という報告もある。

 昨年10月に逮捕され、5カ月も長期勾留された沖縄平和運動センターの山城博治議長は、6月中旬にスイスのジュネーブで開かれる国連の人権理事会で、「表現・内心の自由」が侵害されている実態などについて発言する。
 また国連特別報告者ケナタッチ氏は、「共謀罪」がプライバシーや表現の自由を侵す危険を指摘する書簡を、安倍晋三首相宛てに送り、回答を求めている。いまや世界が危惧する「共謀罪」を廃案に追いこもう。

【今週の風考計】5.21より
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2017年05月21日

≪おすすめ本≫ 本田雅和『原発に抗う 「プロメテウスの罠」で問うたこと』─読むのが苦しいほどの<哀しみと怒りと呻き>=鈴木耕(編集者)

 私は時間と体調さえ許せば、毎週金曜日の夕方、首相官邸〜国会議事堂前の反原発デモに参加する。
 そのデモの場で何度か不思議なものを見た。鉄骨で造られた牛の像だ。その異様な像を乗せたトラックから「被曝した牛を飼い続ける哀しみと怒り」を語る野太い声が響いていた。それが本書の主人公のひとり「希望の農場」の吉沢正巳さんだった。

 本書は、評価の高かった朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」の中から、原発事故に翻弄されながらも、意志を捨てずに“抗い続ける人たち”を取りあげたルポルタージュ。凡百の小説を超える迫力と哀切に満ちている。
 中でも胸に突き刺さるのは、被爆牛の命を守ることで国家に異議申し立てをし続ける吉沢さんの姿だ。立ち向かおうとすれば過激といわれる。だが、真の過激こそが人を動かす。この生き方は凄いとしか言いようがない。

 小学生の時に「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語を作った大沼勇治さん。事故後、この標語が書かれた双葉町の看板が、撤去されることに怒り、「原発事故の痛みを伝え続けるために残すべき」と主張し続ける。
 その標語の陰で展開された双葉町の原発を巡る政治の変遷。反対派のリーダーが容認派の町長になる葛藤。

 また自死した妻への謝罪を求め続けた渡辺幹夫さんの東電と国との闘い。花好きで陽気な妻のはま子さんは、なぜ追い詰められたのか。読むのが苦しい。それは他の人たちにも共通する。原発とは人間を破壊するシステムだという著者の呻きが響く。

(緑風出版2000円)
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2017年05月15日

《遠吠え》「これ以上つまらないことはない」といった風情の記者会見は、またまたの「電波ジャック」か?=田悟恒雄

 毎週日曜日の朝、NHK地上1の「自然百景」と「小さな旅」を楽しみにしている零細出版人なのですが、きのうは「小旅」が始まったばかりの8時02分、突如「プツッ」と放送中断。旅人の女性アナウンサーの映像は、「世の中にこれ以上つまらないことはない」といった表情で鬱陶しそうにしゃべる官房長官の緊急記者会見へと切り替わってしまいました。
 で、「北のミサイル発射」について、記者たちが次々質問するのですが、官房長官氏はますますつまらなそうに、「それはまだ調査中」を繰り返すだけ。「じゃあ何でいま、そんな問答を聞かされなきゃいけないんだっ!?」と、何だか無性に腹が立ってきました。
 そんな程度の話だったら、通常番組を中断させることもなく、ストレートニュース枠で伝えるだけで十分じゃないですか? だって、「北のミサイル」なるものは、とっくに日本の排他的経済水域の外に落下していて、これからこっちに向かって翔んでくるという話じゃないのですから。
そういえば先月末の「北ミサイル発射失敗騒ぎ」では、東京のメトロが全路線で10分間運転を見合わせ、1万3000人に影響したなんてこともありました。
「そもそも」この手の「重大情報」が、ことさら大げさに流布されだしたのは、忘れもしません、3月10日のことでした─。あの日、森友学園・カゴイケセンセの記者会見がいよいよ佳境に入らんとするとき、突如、「南スーダンPKO撤収」のテロップが入り、カゴイケセンセそっちのけで、「アベ首相独演会」へと切り替えられ、官邸はまんまと「電波ジャック」に成功したのでした(Cf.「零細出版人の遠吠え」03/13)。
 マスメディアは、官邸の姑息な思惑に簡単にノセられることのなきよう、十分心していただきたいもの。いつまでもこんな馬鹿げたことを続けていると、いまに「狼少年」の話のようになってしまうのがオチじゃないか、と憂える次第です。

(「零細出版人の遠吠え」05/15より。 http://www.liberta-s.com/
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≪メディア時評≫ 限りなく不透明な「共謀罪」法案の罪と罰

「共謀罪」法案の強行採決を許すな! 疑問は解明されず、ごまかし答弁の30時間で採決する暴挙に怒りが湧く。

「共謀罪」にいう「団体の性格」「準備行為」とは何か。判断するのは誰か。「一般人」に及ばないという根拠は? 疑問は限りない。
「共謀罪」で処罰するには準備行為が必要となるが、どんな行為が該当するのか。
 実は捜査当局の判断・解釈に委ねられる。まず逮捕し、代用監獄で長期拘留のうえ自白の強要、証拠のねつ造など、恣意的な捜査・検挙による事件は、これまでに数多くの事例がある。
 最近でも、風力発電所の建設に反対する一般市民を警察が監視する大垣事件が起きている。現職の刑事が情報収集を目的に忍びこみ、内容を電力会社に提供していた。

 このように市民運動がターゲットになりうる。またメールやLINE の盗み読みも進むだろう。いったん「共謀罪」の仕組みを作ると、捜査機関は結果を出そうと、任意捜査から盗聴・密告奨励、挑発など、成績主義に走るのは目に見えている。
 その結果、さらに冤罪事件が発生しかねない。いまの日本の刑法では、犯罪が成り立つのは「着手したが完遂できなかった」事実が必要となる。「計画」だけでは犯罪にはならない。

 だが「共謀罪」が成立したら、「未必の故意」の黙示的「共謀」まで含まれてしまう。<森友疑惑>が象徴するように、「空気」「忖度」が行われる日本の社会では、「共謀罪」の適用範囲が極めてあいまいで、大きくなってしまう危険性をはらんでいる。
 ところが日本の政治家が関係する犯罪は、なんと「共謀罪」の適用対象から、ちゃんと外されているのだ。

【今週の風考計】5.14より
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2017年05月10日

《遠吠え》首相を拡張団にお迎えしてほくそ笑む「オトモダチ新聞」と「やじ馬回帰?」の週刊誌=田悟恒雄

 憲法記念日に大々的に「2020年改憲」を打ち出したアベ首相(いえいえあれは、「自民党総裁として」言ったことなんだそう)、8日の党役員会でも、「本年いよいよ歴史的な一歩を踏み出したい」と、いよいよもって前のめり。
 それにしても、「二つの顔」を持っているというのは、コンビニも顔負けするほど便利なことこの上ない─。
 で、衆院予算委員会の集中審議でくだんの発言の意図や具体的な改憲項目について問われた「かい人二面相」氏、「首相としてこの場に立っているので詳細は控える」などと、今度は都合よくスルリと逃げの一手。そればかりか、「総裁としての考えは読売新聞を熟読していただきたい」などと、「オトモダチ新聞」の拡張員のような答弁までして、予算委員会委員長に注意される始末。

 「『2020年に新憲法施行を』とまで明言したのは首相本人だ。ところが国会で質問されると、首相と総裁の立場を使い分け、『後は与野党で』とゲタを預けてしまう。
 これではあまりに無責任でご都合主義だ。首相が狙ったという『憲法議論の活性化』も阻むことになる。」

 「首相答弁に改めて驚」いたのは、9日の毎日新聞社説子だけではないでしょう。

 それにしても、首相の口から出た「読売新聞熟読推奨」発言ほど、昨今のこの国の政治の歪みを端的に表すものはないのではないか、と思います。
 そもそも、国会論戦で野党議員から問われた首相が、質問に対してはまともに答えず、「一新聞のインタビュー記事を読め」ということからして国会軽視の極みなのですが、「そう言われて(おそらく)喜んでいる報道機関」があることは、それと同じくらいおかしな話。
 「権力監視」(Watch dog)という「ジャーナリズムのレゾンデートル」をかなぐり捨てたマスメディアが、この国の民主主義をどれだけ壊してしまったか、改めて深く考えてみる必要があろうというものです。
 そんなとき、けさの新聞の週刊誌広告に、おやっと思わせる見出しを見つけました─。

 「被害女性が告発! 『警視庁刑事部長』が握り潰した
 『安倍総理』ベッタリ記者の『準強姦逮捕状』」

 『週刊新潮』5月18日菖蒲月増大号の全5段広告です。このところスクープを続ける『週刊文春』に触発され、『新潮』もおおっぴらに「権力批判」のスタンスを強めたということなのでしょうか?

 「安倍総理がもっとも信頼しているジャーナリストは誰か? 現時点では、元TBSワシントン支局長にして、『総理』の著書もある山口敬之氏(51)に違いない。だが、連日、テレビで安倍官邸の動向を解説する彼には、人に言えない過去があった。2年前、婦女暴行の嫌疑を掛けられ、逮捕状まで発付されていたのだ。逮捕の寸前、彼を救ったのは、安倍官邸で重用され、大出世した刑事部長。一強の権力者への忖度は犯罪まで消してしまうのか」と。

 かつての『週刊新潮』のスタンスを知る者としては、これは大変驚愕すべき事象なのですが、週刊誌というメディアが「やじ馬ジャーナリズム」という本来的な使命を取り戻しつつあるのだとすれば、大いに歓迎すべきことです。
 となれば、いつまでも「オトモダチ新聞」に安住している読売新聞は、やがて読者から見放されていく運命にあるのかもしれませんよ。

(「零細出版人の遠吠え」05/09-10より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年05月07日

≪おすすめ本≫カジノ問題を考える大阪ネットワーク編『これでもやるの? 大阪カジノ万博』─昔の栄光と誇大な経済効果にすがるカジノ万博の欺瞞を正面から衝く=松本創(ノンフィクションライター)

 2025年万博の大阪誘致が正式決定され、誘致活動が本格化する。だが、「いのち輝く未来社会」を掲げる博覧会の中身は、遺伝子データ活用の「万博婚」や死を体感するバンジージャンプなど空疎で悪趣味なもの。
 しかも博覧会事務局に提出する招致提案書では、万博とセットで進むカジノ計画には、一切触れないのだという。宗教上の理由から、ギャンブルをタブー視する国も少なくないからだ。

 こうした動きは、「万博にかこつけてカジノ」という本書の指摘を裏付けている。「健康と長寿の万博」は方便で、真の目的は賭博解禁、産廃の島・夢洲の開発、それに伴う巨大なインフラ整備と大企業の利益なのだ。市民の生活や福祉の向上は一切考慮されていない。
 本書では、各分野の専門家が、この計画に潜む数多くの問題点を列挙し、警鐘を鳴らしている。

 カジノ法案の拙速な審議と可決。地震が起これば津波と液状化に襲われる夢洲の防災上の欠陥。背景にある大阪湾岸開発失敗の歴史。ギャンブル依存対策がないまま賭博を解禁する危険性。本書に引用されている、パチンコ依存の母親に育てられた人の告白は痛ましい。

 そもそも万博がどれほどの意味を持つのか。都市の「成長戦略」や「経済効果」につながるのか。1970年の大阪万博は、高度成長期ゆえに成立した過去の神話に過ぎないのではないのか。
 昔日の栄光にすがり、誇大な経済効果を夢見て強引に計画を進める大阪政界と財界の欺瞞を正面から突く検証の書である。

(日本機関紙出版センター900円)
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2017年04月29日

《焦点》 長時間残業を認める「働き方改革」では過労自殺減らない=橋詰雅博

 長時間残業など「勤務問題」を原因とする正社員の過労自殺者は、年間2000人を超えている(昨年10月に厚労省が初めて公表した「過労死等防止対策白書」)。1日に5、6人が亡くなっているのだ。安倍内閣は過労自殺などの元凶となる長時間残業の是正などを中心とした働き方改革実行計画をまとめ、2019年度から実施する見込み。
 注目された残業時間の上限規制は、繁忙期の特例として「単月100時間未満」「2〜6カ月平均80時間」の上限を設けた。厚生労働省は、「1カ月に100時間か、2〜6カ月に月80時間を超える残業は過労で亡くなる恐れがある」として、過労死認定の基準としている。定めた上限規制は過労死認定基準と同じ水準であり、これでは長時間残業にお墨付きを与えるものだ。実際、15年末、過労自殺した電通の新入社員・高橋まつりさんの母・幸美さんは「(過労死を)なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません」と批判した。
 まつりさんの労災認定を勝ち取った代理人の川人博弁護士は、3月末にJCJ広告支部例会で「過労死問題」を報告した際、安倍内閣の実行計画についてこう述べた。
 「最近、各企業では月の残業時間を100時間切るとか80時以下にするなど長時間残業を抑制していこうという流れになっていた。そこに月100時間残業を認めた実行計画が出てきたことで、100時間残業はOKになった、それならば抑制に走らなくてもいいという心理が働きます。残業時間を減らすという流れがストップする恐れがある」
 しかも研究部門で働く人は対象外で、運輸や建設の従事者、医師も最低5年間適用されない。
 「特に研修医に過労死が目立ちます。医師は死んでもいいのかと思ってしまうほど医療現場は深刻だ」(川人弁護士)
 関連法案は秋の臨時国会で審議される。このままでは過労死・自殺は減らない。

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2017年04月28日

《焦点》 豊洲市場への移転反対運動を続ける東京中央卸売市場労組の中澤委員長にインタビュー=橋詰雅博

 豊洲市場への移転派と反対派が真っ向からぶつかる築地市場問題。移転の可否を東京都の小池百合子知事は、今夏にも総合的に判断して下す。個人加盟の東京中央卸売市場労働組合委員長で10年前から築地市場内で反対運動を展開し、昨年末に共著「築地移転の闇をひらく」(大月書店)を出版した中澤誠さん(52)に築地問題でインタビューした。
     ☆
 ―都議会百条委員会の証人喚問で証言した浜渦武生元副知事の偽証の疑いが濃厚になったが、どう思うか。
 浜渦さんは副知事を辞職した後、06年7月に参与に任命されて東京都に戻った。13年3月末まで参与を務めた。副知事、参与を通じて築地移転問題に深く関与していた。市場内の移転反対運動が盛り上がってきた07年ごろ、それを見るためかマスクをかけた浜渦さんが目撃されています。また、市場事業者らに土地の値段を聞いて回っていたとある団体の理事長から聞いた。01年7月の都と東京ガスとの基本合意以降、担当を外れたと浜渦さんは証言したが、彼が都政を牛耳っていたのは事実です。
 ―三つのグループが市場問題を検証している。まず3月19日に5回目の会合を開いた豊洲市場の土壌汚染対策専門家会議への評価は。
 一般傍聴者からの質問にも答えるという討議を公開する姿勢は高く評価できる。19日の報告で「(市場がある)地上部分は安全」とマスコミは報じたが、これはミスリード。報告では「将来想定されるリスク」があると指摘していて、さまざまな対応策を挙げている。豊洲移転派にとっては厳しい内容だ。
 ―次に都知事特命の「市場問題プロジェクトチーム」の小島敏郎座長(元青山学院大教授で弁護士)らは8日に築地は7年計734億円で整備でき、維持管理費も豊洲より安いとする案を提示。実現性はあるのか。
 事業者などに十分に聞き取り調査していないので、たくさん問題が出てくるだろうが、現在地での再整備計画のたたき台として優れた案で実現性がある。最大の魅力は、いまの築地市場の扇型の形状をそっくり取り入れている点です。この形状だと、デットスペースが少なく、車両が入り込めて、卸業者と仲卸業者が密着しているから、市場の基本である水産物の「集荷」と「分化」の作業が引き裂かれず効率よくできる。営業を続けながら工事をするので、店舗などの仮移転先となる「種地」が必要ですが、手当てできる。たとえば昨年11月オープンした市場に隣接した場外の「築地魚河岸」(2棟に分かれ、広さは合計約8000平方b)はその有力候補施設。1990年代に400億円を投じて築地再整備を進めて頓挫したころと比べて、水産物取扱数量は70%に減っていて、事業者も減少している。99年に卸売市場法が改正されてセリが撤廃された。セリの時間がなくなった分、市場の混雑が分散した。こうした状況を踏まえると、営業しながら建て替えはできる。
 ―庁内組織「市場のあり方戦略本部」をどう見るか。
 本部長の中西充副知事は豊洲移転推進派だが、頭がきれる真っ当な人。会合を1回開いただけだが、公正に運営することを期待している。
 ―豊洲市場への移転に反対する最大の理由は何か。
 豊洲市場は真ん中を通る道路によって施設が左右に分断されている。土地の形状が市場に向いていない。4階建ての立体配置も問題。要するに品物を動かす物流が非効率の極みだ。物流コストがはね上がり、利益が見えない。採算性が不透明な市場と分かっていながら、そこに投資しろというのは、理不尽な話だ。大規模な土壌汚染がなくても反対します。
 ―移転に反対する市場の事業者はどのくらいいますか。
 築地市場には卸や仲卸など合わせて約1000事業者がいる。その多くが移転に反対。仲卸業者の場合、移転のための設備費用を半分ほどすでに使っている。移転延期によって、残ったお金を築地に再び投資している。お金がない状態なのに、豊洲市場への早期移転を都議選の公約に掲げた自民党は簡単に考えている。豊洲に移転が決まったら100事業者は廃業する。また、大手スーパーなどの小売業者は通告通り安心・安全でない豊洲市場から食品を購入しなくなります。
 ―築地市場の土壌汚染も問題視されているが、大丈夫か。
 検出されたフッ素やヒ素などは自然由来と考えられ、懸念する必要はない。アスベストも問題にならない程度だ。戦後、米軍のクリーニング工場があり、いろんな薬品が使われたが、その場所は市場の端っこで、汚染はごく一部。約100億円かけても土壌汚染対策に失敗した豊洲は、汚染を片づけられないから強引に施設を建てた。事情がまったく違う。


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2017年04月26日

《遠吠え》劣化閣僚の辞任劇を見ていてガッテン、「正直者はバカを見る」ってのは、やっぱりホント=田悟恒雄

 「バッカだねぇー」は、車寅次郎氏の "おいちゃん" の常套セリフですが、そう言ってみたくもなります─。

 「皆さまのおかげで東日本大震災の復興も着々と進んでいる。…これがまだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な、甚大な被害があったと思っている。」

 つい先だっては、原発事故の自主避難者に対し「自己責任だ」と言い放ち、しぶしぶ発言を「謝罪」したばかりの今村雅弘復興相が、またまたやってくれました。
 このご仁、ご自分のバカさ加減が一向にお分かりいただけないようで、「辞任」は遅すぎたくらい。
 で、その「バカさ加減の因って来るところは奈辺にあるのか?」といえば、弱者(この場合は東北地方)に対する「救いがたい差別意識」ではないかと思われます。
 でも、これは決して今村氏に限ったことではありません─。もっぱら大都市で大量消費する電力を確保するのに、「原発の危険」は過疎地に押し付けてしまう。迷惑千万な「米軍基地の危険」は、地元の民意を踏みにじってまで、狭い沖縄に押し付けてしまう。
 今村某氏は、そうした「弱者差別」という政権中枢の本心を、2度もポロッと漏らしてしまっただけなのかもしれません。というわけで、 "おいちゃん" のセリフを投げつけられはしても、「実は正直者なんだ」と言えなくもありません。
 だって、思い起こしてもみてください。稲田朋美防衛相や財務省・佐川宣寿理財局長らは、国会の場で、いまだに見え透いた虚偽答弁を繰り返していても、決しておとがめを受けることなく、平然としていられるじゃありませんか。
 それに、忘れちゃいけません。「森友問題」で尻尾を掴まれたアベ首相夫妻も、「疑惑の解明」どころか、もっぱら「逃げ切り」を図るばかりじゃないですか。
「正直者はバカを見る」ってのは、やっぱりホントなんですかね。

(「零細出版人の遠吠え」04/26より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年04月24日

《メディア時評》 天皇「退位」問題の本質は何か=梅田正己

 天皇「退位」の問題が、与野党間で政治問題化している。
 昨年8月のテレビ放送による「天皇メッセージ」は国民の多くの共感を呼んだ。翌9月の朝日新聞の世論調査では、退位の「恒久制度化」を求める声が76%に上り、「今の天皇に限り」というのは17%しかなかった。
 この国民世論に従えば、皇室典範の一部を改正するだけでさしたる問題もなかったはずである。
 しかし政府はそうしなかった。有識者会議なるものを設け、専門家からのヒアリングを重ね、なんとか理屈をつけて退位の「恒久制度化」を阻止しようとしてきた。なんで、だろうか。
 根底にあるのは「一世一元」制の問題である。一人の天皇には一つの元号、譲位は死去によってしか行われず、したがって元号もその際にしか改元しないという、この「一世一元」制が、生前譲位を認めれば崩れてしまうということから、政府は手段を尽くしてその実現を阻もうとしているのである。
*        *

 しかしこの「一世一元」制にはまだ一五〇年の歴史しかない。それ以前の千数百年に及ぶ天皇家の歴史においては「生前譲位」がむしろ常態だった。そのため天皇と共にその父の太上天皇(だいじょうてんのう、略して上皇または院)が存在するのが普通であり、平安時代の末期にはその上皇による「院政」が百年も続いた。
 また元号も、一代の天皇の間にも吉兆や凶兆に応じて改元された。明治天皇の父の孝明天皇の場合は在位21年の間に嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応と6回も改元されている。
 それを、慶応4年から明治元年へと切り替えた一八六八年9月、維新の新政権は「一世一元」制へと根底から転換したのである。
 なぜか。新たに創ってゆく中央集権国家の政治的・理念的支柱として、神の権威・権力をそなえた絶対的な「神権天皇」が必要だったからである。
 もともと元号というのは、君主が土地、人民とともに時間をも支配するという観念からつくられた。その原理どおり、天皇は即位から死去するまでその生涯をつうじて在位し、元号も一つで通すことにしたのである。
 こうして、明治天皇の在位期間がそのまま「明治時代」として国民に意識されることになった。徳富蘆花は日誌風の随想集「みゝずのたはごと」に、明治天皇逝去の翌日、大正元年7月31日の日付でこう書いている。
 「陛下の崩御は明治史の巻を閉じた。明治が大正となって、余は吾生涯の中断されたかの様に感じた。明治天皇が余の半生を持って往っておしまひになったかの様に感じた」
 明治天皇の死が、「明治」という一つの時代の終焉を痛切に蘆花に伝えたのである。
*        *

 この「一世一元」制は昭和20年まで続いたが、アジア太平洋戦争での敗戦により大日本帝国が崩壊し、「神権天皇制」が「象徴天皇制」へと転換するとともに連合国の民主化政策によって皇室典範から除かれた。
 しかしやがてその復活の動きが始まる。一九六六年、建国記念の日(旧紀元節)の制定が実現すると、のちに今日の日本会議へと発展する政治勢力の運動によって一九七九年、「元号法制化」が実現する。これにより実質的に「一世一元」制もよみがえった。
 その「一世一元」制が、敗戦時はまだ11歳、その後は「平民」出身の皇后とともに戦後民主主義の時代を生き、一九八九年に「即位以来…日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごしてきた」(放送メッセージ)天皇によって修正されようとしているのである。
 安倍政権が「生前譲位」を食い止めようと躍起になっている背後にはこういう・歴史≠ェある。現在公表されている自民党の改憲草案では、天皇は国家の「元首」と位置づけられている。

DailyJCJ04月22日より
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2017年04月20日

《遠吠え》森友問題で「誰よりも名を上げた」佐川理財局長のウソを完膚なきまで暴く財務省新発掘資料=田悟恒雄

 つい「原発事故なんかなかったかのように」思えてしまうこの国で、「まるで何もなかったかのように」消え行く森友疑惑。
 この問題が明るみに出てから「誰よりも名を上げた男」財務省・佐川宣寿理財局長のウソを完膚なきまで暴き出す「新資料」が発覚しました。
 これを発掘したのは、フリーライターの菅野完さん。菅野さんがかざすその紙には「今後の手続きについて(説明資料)」とあります。書いたのは、財務省近畿財務局。
菅野さんの「絵解き」に耳を傾けると─、

 「この紙で説明される内容は、土地取得要望書の提出から始まり、国有財産近畿地方審議会が平成27年2月に開催される予定であることや、財務局と航空局による現地確認のスケジュール感、有益費に関す事項や、定借後の定期報告のあり様などなど、微に入り細にわたっており、かつまた、網羅的だ。さらには、貸付契約の話だけでなく、最終的に売買契約に至る道筋まで、すべて、完全に説明しきっている。…近畿財務局は森友学園に『もっとも手早く土地を入手する方法』を手取り足取り教えているとしか思えない。」

 こんな文書が何と2014(平成26)年12月17日に、森友学園側に手渡されていたのです。
 この間、何度も国会答弁に立った佐川理財局長は、「第123回国有財産近畿地方審議会より前に、貸せるだろうとの見通しや、売買契約の見通しを伝えたことはない」などと明確に否定していたのですが、それがまったくの虚偽であったことを、この近畿財務局資料が雄弁に明かしてくれました。
 菅野さんの手元にはまだ「段ボール4箱ほどの〔カゴイケセンセからの〕資料の束」があるそうで、「もう少し丹念にこの資料の束を掘り返してみるとする。佐川局長は期待して待っていてほしい」と言っています。
 そりゃあ、こちとらも大いに楽しみ。

(「零細出版人の遠吠え」04/20より。 http://www.liberta-s.com/
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2017年04月19日

≪おすすめ本≫ 山城博明 写真 伊波義安 解説『沖縄 抗う高江の森 なぜ世界の宝を壊すのだ!』─60年余も虐げられてきた沖縄の人びとの抵抗の記録=中村梧郎(フォトジャーナリスト)

 やんばる…。沖縄本島北部全域を亜熱帯の照葉樹林が覆う。イタジイの下には巨大シダ(ヘゴ)が林立する。高江のヘリパッド周辺では絶滅危惧種・貴重種に指定される植物、1313種が確認されている。動物ではノグチゲラや飛べないヤンバルクイナなど、5種の絶滅危惧種が細々と生きる。

 70年代から沖縄を記録してきた写真家・山城博明は、もともとは読売新聞の写真部員であった。後に琉球新報に転じ、2015年以降はフリーとなった。本書は、60年余の写真報道をまとめた抵抗の記録である。
 彼は、辺野古の人々、壊されるやんばる、米軍・北部演習場という三つの角度から沖縄を見据える。ヤンバルは南ベトナムの森に似ている。当時米軍はそこをベトナムでの訓練の場とした。森に「ベトコン」村が作られ、村民として高江の住民が駆り出された歴史もある。

 北部訓練場が部分返還される代わりに、6つのヘリパッドが高江に作られる。既設とあわせれば28ヵ所。そこをオスプレイが飛び回る。昨年暮れ、米海兵隊中将が「不時着だ、沖縄は感謝せよ」との傲慢な発言をした墜落機も山城はいち早く撮っている。
 本書の記録は、虐げられた沖縄の歴史を反映する。機動隊に抗う非暴力の人々の表情も印象的である。年初に東京MXTVが沖縄の運動を「金で雇われている」とデマ放送したのは許しがたい事件であった。虚報はジャーナリズムではない。

 今年末からはオスプレイが本土上空のコースを飛ぶ。沖縄はまさに日本全体の問題なのである。

(高文研1600円)
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2017年04月12日

≪おすすめ本≫ 小笠原みどり『スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録』─「日本で成立した秘密保護法は、実はアメリカがデザインした」=桂 敬一(元東京大学新聞研究所教授)

 ジュリアン・アサンジによるアメリカの戦争をめぐる秘密情報の暴露(ウィキリークス・2010年)に続き、かつてCIAの職員だった、エドワード・スノーデンによる米NSA(国家安全保障局)の世界同時監視の実態暴露(2013年)も、国際的に大きな衝撃を与えた。

 本書は、そのスノーデンとのインタビューの記録である。なぜそうしたインタビューを思いつき、実現することになったかを著者が述懐する序章が、まず興味深い。
 朝日の若手女性記者だった著者は、自衛隊出動体制整備のための「新ガイドライン関連法案」・「周辺事態法案」などと共に、盗聴法や住民基本台帳ネット=国民総背番号制の仕上げを急ぐ政府の動きや、至るところに監視カメラが増える社会の変化を追い、国民全部が権力にすっかりプライバシーを奪われていくことに危惧を深めてきた。

 ところが、そうした感度が鈍磨した社内の出来事に遭遇、失望するに至って退社を決意、カナダの大学に留学、監視社会の研究に本格的に取りかかったのだ。本題とは逸れるが、メディア内の危機感の衰えという問題も、実は今、たいへん重たい意味を持つ、と思えるのだ。

 著者は、スノーデンが横田基地にもいたことを知り、当時の工作活動の内容にも興味を持ち、モスクワに亡命中の彼を大学のビデオ会議室のスクリーンに呼び出し、約二時間半に及ぶインタビューを実現した。
 その内容は、現代の監視社会の危うさを証す重要な情報を多く含んでおり、実に参考になる。「日本で近年成立した秘密保護法は、実はアメリカのデザイン」という証言には、愕然としながらも、否応なく納得させられてしまった。

(毎日新聞出版1400円)
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2017年04月10日

≪出版界の動き≫ いま出版社・取次・書店・愛書家を襲う6つの激動の波

 先日、「出版界の動向を予測する」と題した、星野渉(「文化通信」編集長)氏の講演を拝聴した。とりわけ深刻な問題として6つのポイントを挙げ、詳述された内容に衝撃を受けた。

 1つは、出版物流の危機である。運転手不足やマージンの低さがネックとなり、書店やコンビニに本を配送できない事態が生まれている。運賃を2倍の要求に、どう取次や出版社が応えるのか、激しい攻防が予測される。

 2つは、アマゾンが出版社との直接取引で仕入れた書籍をネット販売し、かつ重版未定の本でもプリント・オンデマンドで、1冊から注文に応ずるなど、書籍流通の見直しが起きている。

 3つは、雑誌の電子化・デジタル化が加速し、コンテンツもネットやイベント、通販などと連携したサービス提供にシフトするという。

 4つは、紙媒体のコミックが激減し、電子版コミックが1460億円(前年比+27%)の売り上げ、急速に伸びている。

 5つは、書店の統廃合が進行する。トーハン・日販の2大取次による書店系列化のあおりを受け、1万4千軒の本屋さんが半減の7千軒になるといわれる。いま日本全国で2割の自治体が、新刊を扱う書店ゼロだ。町の本屋さんは消えるのみ。

 6つは、出版社のコングロマリット化・再編に向けた動きが顕在化する。KADOKAWAは、所沢市に図書館・美術館・博物館を融合させた文化コンプレックスを建設する。また蔦屋書店などを経営するCCCグループが、徳間書店を子会社化して、CCCの映像・音楽事業と連携した出版物の刊行を手がける。
 この激動に愛書家の不安は尽きない。

【今週の風考計】4.9より
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2017年04月06日

《焦点》 客観報道が沖縄ヘイトを煽ると沖縄タイムス東京支社報道部長語る=橋詰雅博

 沖縄タイムス社の東京支社報道部長の宮城栄作さん(45)が4月から那覇市の本社に戻る。宮城さんは、14年11月に翁長雄志沖縄県知事が誕生後に東京支社に赴任した。
 「当時、辺野古新基地建設阻止を掲げる翁長県知事の発言を本土メディアは大きく報道し、沖縄への関心が高まっていると感じた。市民運動も沖縄問題を取り上げ心強く思った。だが、一方で日本の国防のためには沖縄の米軍基地は必要だからお前たち黙っていろ、基地に反対するのは日本人じゃないというヘイト発言が目立った。やりきれない気持ちでした」
 最近では東京MXテレビ番組「ニュース女子」の沖縄ヘイトデマ放送がその代表格だ。
 「沖縄への偏見とデマが地上波で放送される事態にまでなった。取材・事実に基づかない伝聞情報だけで番組をつくるのは、報道とはいえない。地上波は拡散力が強く、市民に浸透しやすい。にもかかわらずデマを流すのは、日本社会が危ない状況になっているからだと思う。本土と沖縄の分断につながります」
 また「ニュース女子」問題について全国紙の報道も「甘い」と指摘する。
「例えば朝日新聞は、放送の中身が正しいのかそうでないのか自ら取材・調査すべきなのに、専門家と称する人のコメントを中心とした記事でした。こんな客観報道は、ヘイト発言を容認することなる。ネット空間にあふれる沖縄ヘイトを煽ります。両論併記は悪しき記事だ」
 住民の暮らしや安全、人権に軸足を置く報道が沖縄メディアの特徴だという。
 宮城さん、今後は政経部で仕事をする。

 
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