2018年07月15日

【今週の風考計】7.15─米軍ヘリ飛来で1日29回も避難する異常、もう基地はいらない!

米軍オスプレイ14機が、16日から2週間、静岡県御殿場・東富士演習場で本格的な訓練を始める。この1カ月半ほど、首都圏で飛行訓練を行ってきたが、8月には東京・横田基地に常駐配備する期日が迫り、仕上げの訓練だという。
38℃という猛暑の上空を、この夏、オスプレイが三沢や岩国、沖縄へと我が物顔に飛ぶ。立てる騒音は65デシベルを超え、かつ低周波音に悩まされる毎日が続くのは目に見えている。

山口県・岩国基地では、米軍の空母艦載機など120機が厚木基地などから移駐してきた。その離着陸訓練がすさまじい。空母艦載機が4機編隊で広島・厳島神社に向けて飛ぶ。大声を出さないと会話が聞き取れない70デシベルの騒音が、昨年1年で894回、前年より268回も増えている。
さらに低空飛行訓練が追い打ちをかける。中国地方には「エリア567」や「ブラウンルート」と呼ばれる低空飛行訓練エリアとルートがある。広島の住宅地を、なんと上空150メートル以下で飛ぶ。その騒音は110デシベル。西日本豪雨で被害に遭われた人々の心胆を寒からしめ、さらに身をすくませる低空飛行、政府は即時禁止を米軍に申し入れよ。

沖縄での米軍機の事故もあとを絶たない。先月11日にもF15戦闘機が那覇市の沖合に墜落した。昨年12月に、米海兵隊CH53E大型輸送ヘリの部品や窓枠が落下した普天間第二小学校では、半年たっても、同型ヘリが騒音をまき散らしながら飛来する。
そのたびに監視員の指示で校庭から校舎に走って避難するという。なんと合計635回、多い時は1日29回。「45分の体育時間に3回も中断があったら授業は成り立たない」(琉球新報)。

米朝首脳会談の実現によって「北朝鮮の脅威」は遠のいた。もはや沖縄に米軍「基地」を置く根拠はない。沖縄を「基地」のくびきから解き放す絶好の時だ。(2018/7/15)
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2018年07月14日

≪おすすめ本≫佐藤 慧・文 安田菜津紀・写真『しあわせの牛乳』─大自然の中で牛を育て放牧酪農に励む男の姿に迫る=酒井憲太郎(フォトジャーナリスト・元朝日新聞写真部記者)

 「牛乳が幸せになる」?表題に首を傾げた人も、牛乳を出す牛が「幸せになる」と分かれば納得。

 プロローグで「牛乳はどうやって作られる?」と問う。答えは「日本の牛たちは狭い牛舎で暮らし、牛乳パックの絵にある光景は見られない」と明かす。日本の牛は圧倒的に不幸せなのである。
 そんな不幸せな牛に比べ、「自由に大自然の中で暮らしている」牛が、岩手県の牧場にいる。そこが、放牧酪農・山地(やまち)酪農の牧場、この本の舞台である。

 牧場長・中洞(なかほら)正さんは、1952年岩手県宮古市の生まれ。高校1年の時、埼玉の牧場を見学し、百頭もの牛が、狭い牛舎で外に出ることもなく暮らすのが近代酪農だと教えられた。
 しかし、1965年には「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の考え方が、すでに英国で提唱されていた。また中洞さんが東京農業大学に入り、映画「山地酪農に挑む」を見たのもその頃だ。

 卒業後、5ヘクタールのジャングル牧場を始め、1982年には7千万円も借金し、50ヘクタールに広げ、「なかほら牧場」が産声をあげた。
だが理想の実現は簡単ではない。気温零下20度の放牧、乳脂肪3・5%の壁など難問が続いた。何とか、しぼりたて牛乳の訪問販売を試み、購買客を増やした。
 さらに低温保持殺菌法を取り入れ、ガラス瓶容器を導入するなど、様々な工夫が功を奏し、1992年に「なかほら牧場牛乳」が誕生した。
これで、「牛もしあわせ!おれもしあわせ!」が始まり、「しあわせの牛乳」が出来上がる物語となった。
(ポプラ社1200円)
「しあわせの牛乳」.jpg
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2018年07月08日

【今週の風考計】7.8─貿易戦争と「スムート・ホーリー法」の教訓、いまトランプさんが学ぶべき大事なこと

<貿易戦争>が深刻になっている。トランプ大統領が踏み切った中国に対する制裁関税は、年間で340億ドル(約3.7兆円)、中国も負けじと米国に同規模の報復関税をかける選択に踏み切った。
これだけで済まない。さらにトランプ大統領は、20日ごろを視野に、第2弾の160億ドル(約1.8兆円)分の追加制裁を発動する。ゆくゆくは5000億ドル(約55兆円)規模にまで追加制裁を拡大する方針だ。

こうなれば中国ならずとも、世界各国が反発するのは必定である。WTOルールを無視して制裁に走るトランプ政権の「ディール」外交が、報復が報復を呼び、中国だけでなく、EUやカナダ、ロシアといった国からまで反発され、報復関税に踏み切らざるを得ない誘引剤をバラ撒いている。
11月の中間選挙、2年後の大統領選での再選を視野に、自己チュウ極まりない経済政策は、「自分の足をピストルで撃つ」(寺島実郎)結果になるのは目に見えている。共和党のトランプ大統領は、まず自国の歴史の教訓に学ぶがよい。

浜矩子氏が指摘しているのだが、「スムート・ホーリー法」である。1930年に米国の共和党フーバー政権下で成立した関税法である。1929年に始まった大恐慌にどう対処するか、フーバー大統領は、国内産業保護のため、農作物など2万品目の輸入品に、平均50%引き上げの関税を課した。これに対し多くの国が報復措置として米国商品に高い関税をかけたため、ますます世界貿易が停滞し、あの大恐慌をいっそう深刻化させたのである。
4年後には民主党のルーズベルト大統領が、この法を葬る「互恵通商協定」を成立させた。すなわち相互に市場を開放し、今あるところのWTOルールに従って貿易はしましょう、ということである。

教訓に学ばざる者は、木から落ちる猿の如し。(2018/7/8)
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2018年07月07日

≪お知らせ≫7・13講演会:自衛隊が戦争に征くとき─この危ない実態を抉る

南スーダンの首都ジュバでは、何が起きていたのか。
隠蔽された活動の記録・日報を詳細にトレースし、
自衛隊のPKO活動が直面した戦場の実態を明かす。
日本を「戦争する国」へと駆り立てる
安倍政権の暴走に警鐘を乱打する!


講師:布施祐仁 氏(ジャーナリスト、「平和新聞」編集長)
略歴:1976年、東京都生まれ。『ルポ イチエフ 福島第一原発レベル7の現場』(岩波書店)でJCJ賞を受賞。著書に『日報隠蔽─南スーダンで自衛隊は何を見たのか』(集英社)など。
日時:7月13日 (金)18時30分開会(18時15分開場)
場所:YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 ☎ 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html

参加費:800円(会員・学生500円)

《主催》 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2018年07月06日

≪リレー時評≫ ひとり出版社から本の大切さを学ぶ=守屋龍一(JCJ代表委員)

  絵本『花ばぁば』(クォン・ユンドク絵/文)が、4月末に出版された。日本軍「慰安婦」にされた韓国人女性シムさんの物語である。彼女の好きだった花を、著者は水彩タッチで描き、全42ページを使って展開する〈恐ろしい話〉の絵の周囲に、今は亡き彼女の霊を癒すように散りばめている。
  声高に叫ぶのでなく、淡い色の滲む絵が、戦時性暴力に対する深い洞察へと昇華されていく。読後、熱き想いに浸された。

  この絵本を出版した、ひとり出版社「ころから」(東京都北区赤羽)を訪ねた。代表の木瀬貴吉さんは、
  「ある出版社でとん挫した翻訳刊行を、うちで手掛けることになったんです。だが多額な製作費の捻出に困り、今年の1月、製作費の一部をクラウド・ファンディングで募ったところ、開始から4日目で目標額95万円を突破、最終的には202人188万円の資金が寄せられた。お蔵入りの危機を救ったのは、日本の良心ある人達でした」
  と、述懐する。
  木瀬さんは、ピーズボードの事務局で15年、その後、出版社で3年修行し、2013年1月に「ころから」を起ちあげた。〈コロから車輪へ〉と発展するよう願っての命名という。
  2014年3月11日刊の加藤直樹『九月、東京の路上で─1923年関東大震災ジェノサイドの残響』が評判となり、今や6刷まできた。
 木瀬さんは「直に介入する官庁がない出版はフェアな業界、まず企画で勝負、資本の大きさではない」と言うものの、「『花ばぁば』を置いてくれる書店が極めて少ない」事態には、眉をしかめる。
 始業して5年、21点刊行、順調に進級している。

 一方、4月末、ひとり出版社「リベルタ出版」(東京都千代田区猿楽町)が、31年の出版活動に幕を下ろした。このほど代表・田悟恒雄さんの慰労を兼ねた卒業式≠ェ、後楽園「涵徳亭」で賑やかに行われた。
  田悟さんは大月書店の編集者を経て、イタリアのマルクス主義思想家アントニオ・グラムシ『獄中ノート』(校訂版)を翻訳刊行したく、1987年9月に創業。社名もイタリア語の自由=リベルタからとっている。
  だが最初に刊行したのは、前年に起きたチェルノブイリ原発事故がテーマの、ウラジーミル・グーバレフ『石棺─チェルノブイリの黙示録』。以後、年間ほぼ6冊、原発・環境・メディアを柱に約210点を刊行してきた。田悟さんは言う。
  「他人に迷惑をかけず、本カバーのPP貼りを止めるなど環境に負荷をかけず、ひとりでどこまでできるか、これを目標にやってきた」。さらに「出版とは自己実現の手段であり、人と人との出会いを媒介する重要な仕事。そこから生み出される豊かな関係は、カネで贖えるものではない」と。

  ひとり出版社の2人の歩みを聞かせていただくと、出版の大切さが身に染みる。
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2018年07月05日

≪おすすめ本≫ 白井 聰『国体論 菊と星条旗』菊と星条旗の結合を通して、戦後の対米隷属・日本の「国体」が誕生=鈴木 耕(編集者)

 正直に言って、私は「国体」など考えたことがなかった。敗戦と同時に消え失せたものとばかり思っていた。天皇が「統帥権」を喪失した段階で、国体は「国民体育大会」の略称に萎んだはずだった。ところが本書を読んで考え込んでしまった。
 現代日本の対米隷属のあまりの惨状を読み解くには、ピッタリな言葉がこれだったのだ。なぜ日本がかくまで星条旗に跪くのか。それを誰も不思議に思わぬばかりか、沖縄の米軍基地強化にみられるように、なぜ次々に貢物を差し出すのか。「天皇」の代替に「米国」を数式に代入してみれば、その疑問は解けていく。だが事は単純じゃない。

 天皇自身が、現在の政権(安倍と言い換えても可)への闘争宣言ともいえる「お言葉」を、なぜ発しなければならなかったか、解読が鮮やかだ。
 明治という近代国家の形成期を過ぎ、天皇と臣民という疑似家族がつくられ、やがてそれは「国体」として絶対服従のシステムの構築に至る。統治機能の絶対化である。
ところが敗戦により、もろくも崩れ去る。「第四章 菊と星条旗の結合」で、「戦後の国体の起源」という新しい視座が示される。この辺りから、私は目が離せなくなった。

つまり「アメリカの日本」としての「戦後の国体」という選択こそが、この異様なほどの対米隷属日本の在り様に、そしてついに「発狂した奴隷たち」と、為政側にある人達への痛烈な批判に辿り着く。いま憲法9条と日米安保体制の狭間の矛盾が火を吹きだしている。
(集英社新書940円)
「国体論」.jpg
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2018年07月01日

【今週の風考計】7.1─7年ぶりの中道左派サンチェス政権のもと、アンダルシアからカタルーニャを旅して

◆中道左派のサンチェス政権が誕生して間もないスペインを、<キホーテと女サンチョ>さながらに、妻と共に10日ほど旅してまわった。
◆マドリードではソフィア王妃芸術センターで、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」に再会した。もう防弾ガラスはない。原田マハ『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)を思い浮かべ、フランコ将軍の意を汲んだドイツ軍の空爆とニューヨーク9・11同時多発テロ、そして米国のイラク空爆への道筋をたどると、おもわず緊張が走った。決して過去のことではない。

◆足を延ばしてセゴビアへ。ローマ時代に作られた水道橋の精巧さに驚き、アルカサール城に至る道の脇に立つヒマラヤ杉のてっぺんで、コウノトリが子育てに懸命だ。続いてトレドのカテドラルを見学し、サント・トメ教会のエル・グレコ「オルガス伯爵の埋葬」を鑑賞する。
◆ラマンチャ地方を抜けてアンダルシアへ。この地にイスラム帝国が残した文化遺産は計り知れない。コルドバのメスキータにあるアーチ状の柱列、グラナダのアルハンブラ宮殿内に施されたアラベスク模様にはドキモを抜かれた。

◆その途次、渓谷の上にあるロンダの街へも立ち寄った。W杯サッカー・日本対セネガル戦を、ホテルのロビーで観る。引き分けの結果に大満足し、ソコーロ教会の前にある広場へ出かけ、赤ワインを飲みつつ食べたオックステールの煮込みが、これまた格別。
◆バレンシア港での難民受け入れの様子を報ずるTVニュースを見ながら、一足飛びにバルセロナへ。ここでは風も爽やかに連日38℃を超す気温が気にならない。2日かけてガウディが手掛けたカサミラやグエル公園、サグラダ・ファミリアをめぐって歩く。

◆目立つのが通りの街並みに沿って上に伸びる居住階のベランダにかけられた、カタルーニャ独立を標榜する「アスタラーダ」の旗である。黄色いリボンの旗も多い。前ラホイ政権の手によって収監された、カタルーニャ州政府の幹部・活動家を支援するシンボルだという。
◆昨年10月、独立への住民投票を進めた、同州のカルレス・プッチダモン前首相と前閣僚5人は、逮捕を逃れて亡命、あるいはドイツなどで身柄拘束されている。スペインに残った4閣僚は拘留されており、合わせて25人が反乱罪や国家反逆罪などの容疑で起訴されている。<LLIBERTAT PRESOS POLITICS!>「政治犯を解放せよ」と書かれた旗が目立つ。カタルーニャ音楽堂の前の3階ベランダにも掲げられている。

◆この音楽堂、ガウディと同時代に活躍したドメネク・イ・モンタネールが建築した。この地に生まれたパブロ・カザルスも演奏した。現在でもコンサートホールとして使われ、1週間前に、サイモン・ラトルがベルリンフィルを指揮している。近くにピカソ美術館もある。スペイン内戦でくくれば、チリの詩人パブロ・ネルーダを加えて<3人のパブロ>がそろう。
◆そして今日、W杯サッカー決勝トーナメント、スペイン対ロシア戦が始まる。まさにイベリア半島全体が熱狂に包まれている。(2018/7/1)
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2018年06月28日

《焦点》 鳩山元首相インタビュー 「国交正常化なしでは拉致解決せず」 東京五輪を対話のチャンスに=橋詰雅博 

――日本人拉致問題の解決法は?
 トランプ大統領や韓国の文在演大統領に頼っていてはダメです。安倍晋三首相と金正恩委員長がお互い心を開く状態にならない限り、本音は出ません。ではどうすればいいのか。金委員長は「いつでも話し合いましょう」と言っているのだから、日朝会談を実現する。会談を通じて国交正常化に向けて話を進め、信頼を高める過程で、拉致問題をきちんと取り上げる。そうすれば明快な方向性が出てきます。

日本に分断の責任

 そもそも朝鮮半島の南北分断は、日本が半島を植民地支配(1910年から45年の35年間)したことに起因している。日本に分断の責任があります。世界はそういう立場から日本を見ている。韓国も北朝鮮も日本のおかげでこうなったという気持ちがある。国家の分断の歴史をつくった日本の責任は重い。お互い過去の歴史を冷静に見ながら拉致問題を話し合う。結局は、日朝国交正常化することが拉致問題の解決につながる。
――安倍首相の外交政策をどう評価していますか。
 安倍首相は、「大日本主義」すなわち日本を強い国家にしたいという願望がある。敵視する中国と北朝鮮の脅威論を高め世論を煽る一方で、日米同盟を強化し、自衛隊の増強と配備を拡大、自衛隊を海外派遣するため安保法制を成立させた。私は安倍首相が描く大日本主義に真っ向から反対です。武力による平和はあり得ない。中国も北朝鮮も日本に侵略する可能性はゼロです。しかし、とくに北朝鮮の脅威がなくなると自衛隊増強の理由などが成り立たないから、北朝鮮を悪者と決めつけ、「対話の時代は終わった」とか「最大限の圧力をかけ続ける」と経済制裁を含む圧力の強化というメッセージを発信している。諸問題を対話路線で解決を目指す世界の潮流から安倍外交はかけ離れている。
南北首脳会談に端を発し中国、ロシア、アメリカが朝鮮半島の平和のため対話路線にのっている。支持率のアップを狙い拉致問題に取り組んでいるというポーズだけのPRはもう止めて、安倍首相は日朝会談に踏み込むべきです。

日中韓五輪会議を

――提唱する「東アジア共同体」構想にどんなプラスがありますか。
 この地域における経済の発展は重要だが、それ以上に不戦共同体≠構想でイメージしている。今までは北朝鮮はそこから抜けていた。米朝首脳会談によって、北朝鮮が不戦共同体に組み込める環境づくりの第一歩になった。ようやく方向性が見えてきた。
――2月の平昌冬季五輪に南北統一チームが参加し盛り上がった。20年の東京五輪、22年の北京冬季五輪に北朝鮮をどう組み込むか重要になってきますね。
――昨年11月末にヨーロッパでギリシャのパパンドレウ元首相と会ったとき、彼から「来年から4年間でアジアでは3回もオリンピックが開かれる。北朝鮮と対話するチャンス」とアドバイスされた。ギリシャはオリンピック発祥の地ですから五輪への思い入れが強いので、そういう言葉が出てきたのでしょう。私のおじぃちゃんの一郎が文部大臣とき、「スポーツ選手は、なみの外交官よりも外交官だ」と評価していたことをどこかの本で読んだことがある。米中関係の改善につながったピンポン外交=i1971年、名古屋市で開かれた世界卓球選手権に出場した中国選手が米国選手らを自国に招待)や今年の平昌五輪の成功を見ると、そう思います。日中韓の担当者レベル会議を設け、北朝鮮とどう協力するかなどを話し合い、平和の祭典に相応しい五輪にしてほしい。日本政府に動いてもらいたいですね。

人の命奪ったのに

――安倍首相夫妻が深く関与するモリカケ疑惑をどう思いますか。
――誰が見ても安倍首相はウソをついている。自身も分かっているけど、長く総理を続けたいから粘り腰を発揮している。私は失敗した人間だが、総理在任中、ウソは1回もついていない。それだけは言える。しかも森友学園問題では近畿財務局職員が自殺している。自殺者まで出ているのに総理を続けたいのか。人の命を奪ったという厳粛な事実をどう受け止めているのか。私なら、申し訳ないと毎日さいなまれる。潔く、総理を辞めるべきです。そうしないと日本の風土にとってよくない。子どもたちが大きくなっても、平気でウソをついてもいいという感情が頭の中に残ります。
 官僚も立身出世が目標だから官邸のいいなりです。国民不在の政治と行政に成り下がっている。こうした事態に陥らせた責任は、国民の信頼を失いかけているメディアと自己保身に走る与野党にもあります。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号8面

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2018年06月27日

《焦点》 米朝首脳会談 半島非核化への第一歩 「ディール外交」功を奏す 鳩山元首相インタビュー=橋詰雅博

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との史上初の米朝会談は、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた具体策がなく、日本人拉致問題の前進もなかった。中身に乏しい会談だったが、歴史的な米朝首脳の対面は思わぬ成果を生み出し、米朝関係は改善に大きく踏み込んだ。東アジアの平和と安定を目指す「東アジア共同体」構想を唱える鳩山友紀夫元首相(71)は、本紙のインタビューに応じ、歴史的な米朝会談などについて語った。(橋詰雅博JCJ事務局長兼機関紙編集長)

米本土に攻撃可能

――米朝首脳会談をどう見ますか。
 会談に向かわせた大きな要因になったのは、北朝鮮が昨年11月に発射した大陸間弾道ミサイル「火星15号」(ICBM)の成功です。
すでに核実験はうまくいっていたし、これでミサイルもアメリカ本土まで届くということが証明された。今までアメリカの核兵器やミサイルの威力におびえていた北朝鮮は、この成功でアメリカ本土を攻撃できる核弾頭搭載のミサイルを用意できたわけです。本当に届くかどうかわかりませんが、北朝鮮はアメリカと対等に交渉できると考えた。つまり自分たちも非核化を追求するが、アメリカも朝鮮半島から手を引いてほしいという交渉力を持つことで、非核化が現実的な意味をもつ出来事だったと思います。このことで、もしかしたら大きな動きが出てくると予測していたら、北朝鮮は翌年2月の平昌冬季五輪に参加し、アッという間に4月の南北首脳会談まで進展した。
 北朝鮮が金日成時代からほかのことを犠牲にしてまでずっと核・ミサイル開発を進めてきたのは、アメリカとの交渉能力を持つという一点だけだった。

一朝一夕は無理だ

――アメリカの政治状況の変化も要因に?
 戦争を仕掛け利益を求める軍産複合体にのるヒラリーが大統領だったら、米朝首脳は実現しなかったでしょう。トランプ大統領は軍産複合体と距離を置いている。アメリカファーストによって政治面でも経済面でも世界をリードしていくにはディール(取引)が必要とトランプ大統領は考えている。
得意のディールで史上初の米朝会談をうまく乗り切れば、11月の中間選挙で勝てるし、2020年の大統領選での2期目の勝利を得られるという戦略を立てていたと思う。大統領がトランプだったから、アメリカも歴史的な会談のチャンスをつかむことができた。
――米国の方針「朝鮮半島の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)は実現できるのでしょうか。
 1回の首脳会談でCVIDの達成は無理です。完全な非核化は一朝一夕に行かない。首脳会談はこの先も開かれる。北朝鮮が対米交渉能力を持ったということは、朝鮮半島を核のない平和な状態にしたいという思いも北朝鮮にあるのは確かだ。アメリカと北朝鮮がどうやって核兵器や武力の両レベルを下げていくかが課題です。交渉は時間かけて段階的にステップを踏んで進めていくべきです。おそらく非核化にメドをつけるには数年かかるでしょう。
8面に続く
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月25日

《焦点》 反撃パワーがすごい韓国の放送局=橋詰雅博

 安倍晋三首相は陰に陽に放送局に手を突っ込み自分に都合のよい報道をさせようとしている。突然言い出した放送法4条撤廃はその代表格で、政権寄りの番組を増やす狙いがあった。政府の規制改革推進会議では反対意見が続出し、安倍首相に4条撤廃見送りを答申した。  
 しかし、首相は撤廃方針案を断念したわけではない。再び方針案を持ち出す危険性がある。
 政権批判報道を封じ込めるため放送局支配≠ニいう悪だくみをめぐらすのは時の権力者の常だ。民主化から31年たつ韓国でも、李明博大統領ら保守政権が強権を発動して放送局を占領≠オた。この言論統制に抵抗する記者やプロデューサーを中心にしたドキュメンタリー映画「共犯者」を都内で見た。李大統領(2008年から13年)は公共放送のKBS(韓国放送公社)と公営放送のMBC(文化放送、公営財団・放送文化振興会が大株主)にお友達をトップに送り込んで、政権批判の番組を廃止に追い込んだ。KBSとMBCの労働組合は抗議の声が上げたが、組合員は解雇、配置転換、停職、出勤停止、減給などの懲戒処分を受けた。
 権力と手を組み放送局を台無しにした「共犯者」元社長・幹部をカメラの前に立たせた崔承浩監督は、MBCの調査報道番組プロデューサーとして活躍したが、12年に不当解雇された。上映後、崔監督は 「権力による無慈悲な弾圧に対して言論の自由の確保と、市民からの『キレギ』(キジャ=記者とスレギ=ゴミの合成語。マスゴミとかゴミ記者の意味)と蔑まされたメディアの信頼を回復させるため私たちジャーナリストは闘ってきた」と強調した。
 長期ストライキなどの約9年間に及ぶ闘争でポチ社長≠追放し、KBSもMBCも正常な放送局にやっと戻る。崔監督は昨年末にMBC社長に就任した。昨年5月に革新系の文在演大統領が誕生したことも背景にある。
 ともあれ韓国放送局の権力への反撃はすさまじい。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年6月25日号
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2018年06月24日

【今週の風考計】6.24─続出する大学トップの醜態、典型は加計孝太郎理事長!

このところ大学の理事長・学長らの不見識極まりない対応が続く。

一つは日大アメフット選手の試合で犯した危険タックル事件への大学側首脳陣の呆れた対応である。日大アメフット関係のOB・父母、教職員組合などが、田中永寿・日大理事長に現理事の解任と体制刷新を要望しているにもかかわらず、無視し続ける。記者会見は、ワイドショーなどで「笑いものにされて、利用されるだけ」だから行わないと、理事長は白をきる。

二つはレスリング選手に対するパワハラ問題での至学館大学・谷岡郁子学長の発言である。「そもそも伊調馨さんは選手なんですか?」の言辞は、怖い学長からのパワハラそのもの。くわえて同大学レスリング部・栄和人監督の謝罪に続いて解任。それにしても、レスリング大会の開催中に、同大学教授の籍を持つ監督が、キャバクラへ遊びに行く神経には、首をかしげる。

極めつけは、岡山理科大学総長・加計学園の加計孝太郎理事長である。1年以上にわたって国会やメディアから逃げ回っていた本人が、19日の午前、岡山の加計学園で急きょ記者会見を開いた。しかも25分間で打ちきり。
安倍首相との面会については「いっさいない、記憶にも記録にもない」の連発。加計学園事務局長が、加計氏と安倍首相との面会を捏造し、愛媛県と今治市に虚偽報告をしたのは、「嘘を吐いてでも実現を願って」との言い訳でごまかした。会ったという公文書が存在しているのに、否定する根拠を示す資料などは示されず。

この日の記者会見は、朝、急に決まったという。まさに大阪北部地震への対応で忙殺され、ジャーナリストらが辿り着けないタイミングを、狙ったのではないか。「大地震を利用して、アリバイ作りの不誠実な回答に終始する記者会見を開いた」疑念はぬぐえない。しかも質問する側のマイクが、音量を絞ってあり、聞き取りにくい状態にあったのも不自然だ。なぜか岸信介元首相を思い出す理事長の顔を、つくづく凝視した。(2018/6/24)
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2018年06月21日

≪おすすめ本≫ 瀬畑 源『公文書問題 日本の「闇」の核心』─具体的な政治案件を俎上にのせ、公文書廃棄への「抜け道」を追究する=日下部 聡(毎日新聞記者)

 公文書管理とは何か、なぜそれが大切なのか。説明の分かりやすさで本書は抜きんでている。理由の一つは、具体的なニュースに即して、叙述されているからだろう。
 森友・加計両学園、陸上自衛隊の南スーダンPKO日報、特定秘密保護法、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉に始まり、内閣法制局が集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更の協議記録を残していなかった問題など、メディアを賑わしたニュースについて、公文書管理の観点から何が問題なのかを平易な言葉で説き明かす。

 たとえばPKO日報が「廃棄」後に見つかった事例や、当初は財務省が森友関連文書を廃棄したとする説明の背景に関しては、行政側が「軽微」と判断した文書は、事実上、自由に捨てることができる「抜け道」があると指摘する。
 「保存期間を『一年未満』『一年』『三年』といった短めに設定し、期間が満了したら『廃棄』扱いにする。そして『廃棄した文書』を、こっそり内部で抱え込むことで、公文書管理法や情報公開法の適用を逃れようとする手口。そうすれば、情報公開請求を受けても『廃棄済なので不存在』と『合法的』に言える」
 著者の「本業」は日本近現代史の研究者である。天皇制研究のために、情報公開制度を使ったことが、公文書問題に興味を持つきかっけとなった。

本書にも随所に歴史的な視点がちりばめられ、深く理解するうえで助けとなる。何より公文書管理や情報公開制度について、利用者として、あるいは主権者としての視点が貫かれているところに、本書の分かりやすさの根底があるように思う。
(集英社新書740円)
「公文書問題」.jpg
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2018年06月17日

【今週の風考計】6.17─〈慰霊の日〉が近づく今こそ、沖縄戦の「真実」を広く伝えよう!

サッカー・ロシアW杯が熱い。寝不足の毎日が続くことだろう。だが23日だけは沖縄に目を注いでほしい。沖縄戦で亡くなった全ての人々を追悼する日である。

20万あまりの尊い命が、「あらゆる地獄を集めた戦場」で失われた。今から73年前の6月23日、沖縄戦を指揮した牛島満中将が、糸満の摩文仁にある第32軍司令部の「壕」で自決し、日本軍の組織的な戦闘が終結した。
だが不幸は続く。牛島中将は自決に先立って、全将兵に「最後まで敢闘し悠久の大義に生くべし」と命令した。降伏も停戦もせず、最期の一人まで戦えと命じたのだ。その結果、日本の将兵は信じられない蛮行を重ねた。

軍事「作戦」の名の元に、あろうことか沖縄住民の「食料」を強奪し、「壕」から米軍の砲火が飛び交う中へ婦人や子供・老人を追い出し、さらには集団自決を強要し、スパイ容疑をかけて虐殺するまでにエスカレートしたのだ。当時の状況を「米軍よりも日本軍のほうが怖かった」 と証言する人は数多い。

この沖縄戦の「真実」が、政府の策動で消されようとしている。検定により住民虐殺の記述が教科書から削除、沖縄平和祈念資料館の展示改ざん、第32軍司令部「壕」説明板の文言削除、枚挙にいとまがない。
さらには沖縄戦の生存者がいなくなる時には、戦争被害の体験をすり替え、住民が積極的に日本軍の戦闘に協力し、「壕」から追い出されたのではなく自ら軍人に提供したのだとさえ、書き換えられる危険が高まっている。

東京新聞・大図解シリーズ「変質する沖縄戦」(6/17付)が、分かりやすく役に立つ。また、シンポジウム「沖縄とともに−1945年6月23日を心に刻む」が、23日(土)12時35分〜 東京・弁護士会館2階講堂クレオBC(地下鉄「霞が関」駅下車)で開催される。
詳細:https://www.toben.or.jp/know/iinkai/jinken/cat188/2018okinawa.html
(2018/6/17)
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2018年06月13日

≪おすすめ本≫ 岩本 努『13歳からの教育勅語 国民に何をもたらしたのか』─御真影が教員に強いた数多の悲劇=梅田正己(歴史研究者)

 敗戦の年7月3日深夜、姫路市は米軍戦略爆撃機の大空襲を受ける。市内が炎に包まれる中、城陽国民学校の校長と教諭は奉安殿に駆けつけ、御真影と教育勅語を取り出し、避難場所へ向かう。
 途中、焼夷弾が校長の腹部を直撃、「御真影を頼む」と言われ教諭が代わって背負うが、ひん死の校長はなおも虫の息で「御真影は、御真影は」と問い続ける。やむなく御真影をおろして抱かせると「畏れ多くも御真影を包みし白布はために真紅に染まる」…。

 以上はその教諭による手記の一部だ。このように空襲下、御真影と教育勅語を守って殉職したケースは11件に上ると著者は記す。
 帝国憲法で天皇の「神聖不可侵」が確定されて以降、文部省は天皇・皇后の肖像写真「御真影」と教育勅語を全国の学校に下付し、儀式のたびに掲げ、朗読することを定める。以後、校長にはこの二つを命に代えても守る責任が課された。その実例は早くも明治29年、三陸大津波で示され、その後も断続的に続く。

 昭和期に入ると学校の敷地内にミニ神殿が造られ、御真影と教育勅語はそこに安置される。学校が、御真影を神体とし最大の布教の場とされた。
 本書には教育勅語のなりたちや内容も平明に解説されている。しかしその三分の二は、先述のような御真影と教育勅語謄本を守って殉死した教員の叙述に割かれている。
 そのことが近代日本の天皇崇拝がまさに天皇教≠セったことを実証すると著者が考えているからであろう。
(かもがわ出版1600円)
「13歳からの教育勅語」.jpg
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2018年06月10日

【今週の風考計】6.10─落語家:志らくと談之助の奮闘に乾杯! 庶民の気持ちを代弁!

■“志らく株”が沸騰している。落語家の立川志らくさん(54歳)である。今や茶の間の人気者。TBSの情報番組<ひるおび!>に、月から金までコメンテーターとして出ずっぱり。
■黒縁のまる眼鏡をかけて、“ゆるキャラ”のような風貌の下から痛烈なコメントが飛び出す。時には口をとんがらして言葉を吐く。その感情込めた直截なコメントは、私たち庶民の胸にすっと落ちる。

■22歳の時に立川談志さんに入門。1995年11月に「真打」昇進。いま落語界を牽引する、志の輔、談春、志らく、談笑の“立川流四天王”の一人だ。

■6日の<ひるおび!>では、5歳女児虐待事件に関連して、「悪魔だ!この父親は、この世に誕生しなければよかった!」と、怒りをぶつけた。
■それもそのはず、志らくさんは、5歳の娘にメロメロ、朝6時に起きて、娘の通う幼稚園のお弁当作りに始まり、子育ての全てをこなすのだから、許せないのも当然だ。

■もう一人、落語家を紹介しよう。立川談之助さん(65歳)だ。長く取り組んでいるのが「禁演落語」。為政者などにより自粛を強いられ、事実上、上演禁止となった落語のことである。
■日本が真珠湾に奇襲攻撃を仕掛けて太平洋戦争に突入した昭和16年10月30日、廓噺や間男の噺などの53演目が、時局柄にふさわしくないと見なされて、浅草寿町にある長瀧山本法寺境内の<はなし塚>に葬られた。

■この貴重な「禁演落語」を復活させることを通して、「戦争と平和」や「表現の自由」など、いま憲法を取り巻くきな臭い現実を告発している。22日(金)18:30〜 出版労連会議室、参加費500円で、立川談之助さんの「禁演落語」を聴くことができる。詳細:http://union-nets.org/ (2018/6/10)
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2018年06月06日

《焦点》 改憲反対署名活動に不当な妨害 小金井署市民3人連行事件=橋詰雅博

 安倍晋三政権による憲法改正に反対する署名活動にブレーキをかけるようなイヤな事件が東京・小金井市であった。

護送車も来た
 事件のあらましはこうだ。
 ―小金井市に在住する70代から80代の市民3人が3月31日午前10時30分ごろ、賃貸マンションで戸別訪問を行い、インターホンを介して改憲反対の署名を要請した。また、留守宅のドアポストに署名活動にも触れている共産党の水上ひろし市議の市政報告を入れた。
マンションは3階建てだが、2階と3階はメゾネットタイプで2階の室内階段から3階に上がる。部屋は1階と2階に9戸ずつある。正面の出入口を挟む左側と右側の各壁には〈ビラ配り、押売り、その他許可のない方の立入りを禁止します。管理者〉などと書かれたプレートが貼られている。ただし、出入口には門扉はなく、2階へは外階段から直接上がれる。訪問者をチェックする管理人もない。
 3人は別の賃貸マンションで署名要請の活動した後、帰り道の途中、問題のマンション前にいた私服警察官2人に呼び止められ「このマンションの敷地に入ったでしょう。ビラ禁止の張り紙を見てください」などと3人に言い、マンション住民から100番通報があったことを告げた。 
11時すぎ、パトカー3台に護送車1台が到着。動員された警察官は制服と私服を合わせ10数人で、3人は「住居侵入罪」容疑で連行され、各人パトカーに乗せられ小金井警察署へ。
 水上市議から連絡を受けた東京都立川市の三多摩法律事務所に所属する2人の弁護士が13時30分ごろ、小金井署で3人と面会。市民と弁護士が小金井署から出たのは14時20分ごろだ―。

調書署名せず
事情聴取された81歳の男性Aさんはこう言う。
 「警察官に連行されたのもパトカーに乗せられたのも初めて。あのマンションは誰でも自由に出入りできる構造になっている。『住居侵入』と言われ、ビックリした。
事情聴取はおよそ1時間行われ、調書にはサインも押印もしませんでした。というのは上がることできないのに『3階まで行っただろう』と強要し、ざっと目を通した調書に言ってもいないのに『昨年の10月ごろから計画を練っていた』と書かれていたからです。取調官は『もう一度警察にくるのは大変だろうからここで調書にサインしろ』と迫りましたが、共謀罪の適用も考えているのではと思い、拒否しました。同じく連行された2人に後日、法律事務所で会いましたが、2人とも『調書にサインしていない』と言っていました」
 小金井署を出る直前に3人に向かって私服警察官が吐いた「必ず(調書に)署名してもらう。もう一度署に来てもらう」という言葉が、Aさんの頭の中に鮮明に残っているという。
 「自宅の電話が鳴るたびに警察からの呼び出しかと思い、不安にかられ、ストレスがたまります」(Aさん)
 三多摩法律事務所の長尾宜行弁護士は「住居侵入罪にあたらない。署名活動は憲法21条1項に定める表現活動であり、警察の取り調べは人権侵害行為だ」と捜査を批判している。また警察の狙いについて、水上市議は「改憲反対署名活動を萎縮させようとしているのではないか」と推測する。

4回抗議行動
 不当連行された3人を支援するグループは、捜査の中止と3人への謝罪を求め小金井署前で今まで4回、抗議行動をした。16日には「守る会」も結成した。
 本紙の捜査をやめないのはなぜかなどの質問に対し、事件を扱う警視庁広報課広聴係は16日「小金井警察署において、適切に対応したものと承知している」と答えた。木で鼻をくくったような回答にとうてい納得できない。事件の行方をこの先も注視していく。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年5月25日号
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2018年06月03日

【今週の風考計】6.3─トランプ大統領のポチ・安倍首相、「G7サミット」で、どう尾を振るか?

世界中をヤキモキさせた「米朝首脳会談」が、前の決定通り12日にシンガポールで開催される。北朝鮮問題で蚊帳の外に置かれた安倍首相、急きょ7日に訪米しトランプ大統領と会談する。
必死に認識をすり合わせ、翌日8日、カナダで開かれるG7サミットに列席する。この会議には韓国も加わる方向で調整中だ。

朝鮮半島の非核化は、もう「米・韓・朝」の論議が肝心要となっている。いくらあがいても安倍さんがG7サミットの舞台で出る幕はない。しかも、このG7サミット、米国との間で討議が紛糾すること間違いない。
米国が発動する鉄鋼などの輸入制限に、EU諸国・カナダ・日本も含め、こぞって「懸念と失望」を表明し、対立は深まるばかり。米国の金利引き上げによる新興国の通貨暴落も深刻だ。米国アマゾンなどの多国籍企業への課税も緊急テーマとなっている。トランプ大統領のポチ・安倍さんは、どう対応するのか。

イタリアでは国債などの巨額な累積債務がGDP比130%・世界6位と悪化し、スペインでも政権与党の構造汚職が糾弾されて政権交代するなど、<南欧リスク>が高まっている。日本だって<債務リスク>に直面している。累積債務は1311兆円・GDP比236%・世界でトップ。安倍さん、どうするの?

「モリ・カケ疑惑」が再炎上、国会での追及を逃れるために、矢継ぎ早の外遊日程を組んでもダメ! 20日には通常国会の会期末を迎えるが、7月10日頃まで会期を延長し、カジノ悪法などの強行可決をもくろむ。
しかも安倍さん、もう7月12日には、日本博「ジャポニスム2018」の開幕に合わせ、フランス訪問を計画する。総裁3選に向け、昭恵夫人ともども日本を留守にしていたい思惑が見え見えだ。(2018/6/3)
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2018年06月01日

≪おすすめ本≫ 相川俊英『清流に殉じた漁協組合長』─アユが生息する清流にダム建設、痛ましい結末の背景に迫るルポ=鈴木耕(編集者)

 哀しい本だなあ…。読後の感想である。ひとりの男が自死した。なぜ自死したのか、ジャーナリストが背景を追う。そこに露呈するのは、あまりにありふれたこの国の公共事業の姿だった。
 山形県の最上小国川(もがみおぐにがわ)はアユ釣りの本場として名高い清流である。その上流に「水害対策」としてダム建設案が浮上する。アユ釣りの聖地として、この清流を守るべきと考える漁協組合長は、ダム建設に反対するが、その途上で自死する。ダム賛成派と反対派の板挟み。
 だが結局、裏に潜むのは行政のある種の裏切り。切り崩され孤立していく反対派の人々。むろん、巨大公共事業に絡むさまざまな疑惑も吹き出す。

 この国の公共事業には、必ずつきまとう賛成反対両派の分断による地域感情の対立。それは原発立地自治体で、嫌になるほど見せつけられたお馴染みの光景だ。そして結局は個人の苦悩に収斂され、時にはこんな痛ましい結末を迎える。
 最終の第10章「ごまかしと穴だらけの地方創生」で、著者は行政(山形県)の7つのウソを激しく追及する。
 山形県が作成したチラシには「流水型ダムがアユ等の生息環境に影響が小さいとしても、これまでの『ダムのない川』以上の清流・最上小国川を目指し総合的な取組みを進める」という、ほとんど日本語とは思えない意味不明の文章が躍る。実態を誤魔化そうとすれば、実体のない言葉を羅列するしかない。
 著者は口の重い現地の人たちを丹念に訪ね歩き、執拗に地方自治の在り方を問い続ける中で、抱いた怒りが直に伝わってくるルポルタージュである。
(コモンズ1600円)
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2018年05月30日

《焦点》 自衛隊憲法明記で社会は変貌する=橋詰雅博

 安倍晋三首相が主張する自衛隊を憲法に明記する案が国民投票で過半数を占め改憲が実現したら、社会はどう変わるのだろうか。
 安倍首相は「何も変わりません」というが、これもウソだ。5月12日に東京・千代田区の弁護士会館で行われた「憲法
改正と国民投票」と題した集会にパネリストとして参加した伊藤真弁護士(日弁連憲法対策本部副本部長)は、国民に認められたことを理由に自衛隊があらゆる場面で前面に出てきて、国内外の社会の空気がガラリと変わる危険性があると指摘し、こう述べた。
 「力がものをいい、寛容性に欠ける社会や異論・反論・批判を許さない社会に変貌する。また、大学の研究も企業も自衛隊との関わりを積極的、肯定的にとらえて推進しようとする社会になる。今の対米従属はさらに促進される。自衛隊を軍隊と見なす外国は憲法に軍隊を書きこんだことで、日本は好戦国になったと判断する。日本の軍拡を恐れるムードが国際的に一段と高まる」
 加えて防衛費の増加、自衛隊配備の拡張、軍需産業の育成、武器輸出の推進、自衛官募集の強化、国防意識の教育現場での強制などが実施される。かくして国防の名目で自由や人権が抑圧される国に落ちぶれる。
 徴兵制≠フ復活もあり得る。
 「ロシアに脅威を抱くスウェーデンは、徴兵制を今年復活させ、テロを警戒するフランスのマクロン大統領も徴兵制復活に意欲を示している。徴兵制は国家的な一体感の醸成には効果的です。ただし、日本では徴兵制という言葉は使わないだろう。『ふるさと守る体験学習』とか『助け合い技術習得訓練』などといった柔らかな言葉を持ち出して、悲惨さを打ち消すように誤魔化すはず。集団的自衛権行使容認を解釈改憲で堂々とやる安倍内閣なら、徴兵制違憲の解釈など一晩で変える」(伊藤弁護士)
 拠り所の文民統制も公文書改ざん、隠ぺい、破棄といった現実の政治を見てしまうと、幻想≠ノ過ぎない。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2018年5月25日号
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2018年05月27日

【今週の風考計】5.27─2015年2月25日のミステリーと「何でも官邸団」の醜態

2015年2月25日─その日、安倍首相と加計学園の加計孝太郎理事長が面会し、安倍首相は「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と加計氏に答えたという。だが安倍首相は、この事実を記載した「新・愛媛文書」を否定した。

その後、今治市長も、この内容を追認する報告の存在を明らかにしたにもかかわらず、なんと「加計学園」が、「新・愛媛文書」にある面会という記述をめぐり、奇想天外な言いわけコメントを発表した。「実際は面会していない」のに、県と市に「面会があったかのような誤った情報」を伝えた結果だという。
なんと虚偽の説明までして、<首相案件>であると確信させ、県と市を国家戦略特区の申請に踏み切らせ、学校予定地36億の無償譲渡と建設総事業費190億への半額補助、べらぼうな公金支出を承認させたことになる。ひどすぎる!

安倍首相は第2次政権が発足して以降、2013年4月から2016年12月24日までの3年半の間に、加計氏と「首相動静」に記された14回、その他に5回、面会・同席している。面会が増えるたびに農獣医学部新設が進展している。これでも2017年1月20日に初めて知ったと強弁し続ける。

新聞の「首相動静」欄に載らない面会など、いくらでもある。総理番記者は総理執務室のある官邸5階には入れない。しかもここには官房長官らの部屋もあり、表からは見えない通路で行き来ができるという。面会先を別の名前にすれば、いいだけだ。
官邸は各省の幹部人事を握るため内閣人事局を設けた。しかも省庁を横断する国家戦略特区構想などの 企画立案は、首席首相秘書官の今井尚哉氏を司令塔とする経産官僚たちに委ねている。柳瀬唯夫・首相秘書官もメンバーの一人だった。いまや「経産省内閣」と皮肉交じりに呼ばれている。これでは忖度・改ざん・虚偽答弁など、すべてあり! まさに「何でも『官邸団』」だ。(2018/5/27)


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2018年05月20日

【今週の風考計】5.20─出版界を脅かすアマゾン膨張と「デジタル課税」の必要性

★アマゾン膨張が激しい。日本での2017年度売上高が1兆3335億円(前年比14.4%増)となった。そのうち出版物の売上げは5400億円を超す。日本の出版物販売額の30%を占める。
★しかしアマゾンジャパンへの課税は1割でしかない。日本で生じた売上高の約9割を米国本社に計上し、日本での課税を逃れているからだ。いまやアマゾンは税金を払わない企業のトップをいく。日本のみならず世界中で問題になっている。

★世界各国にあるアマゾンの子会社は、本社からの「物流・管理業務の委託」であり、販売業務はしていないという契約形態をとり、海外で稼いだ利益の9割を、アメリカ本社に収めるカラクリを取っているためだ。販売による利益がないのだから、現地国へ法人税を支払う必要はないという論理だ。
★しかも日本の税法では恒久的施設がなければ、事業利得には課税されない。アマゾンは、この税法をずる賢く使い、日本に設置したネット通販事業用の物流センターは単なる倉庫だと主張し、課税を逃れている。

★アマゾン本社は、子会社を税金の安いタックスヘイブンに置き、グループ全体の利益をそこに集中させて、節税をしている。アメリカ本国でもアマゾンの年間売り上げが10兆円をこえるのに、税金は560億円ほど。これではアマゾンのジェフ・ベゾスCEOに非難が集まるのも無理はない。
★国際的な課税逃れに走るアマゾンやグーグルから、どうやって税金を徴収するか。3月中旬、EUは国際的な巨大ネット企業を対象とした「デジタル課税」の導入を加盟国に提案した。売上高の3%を課税する案である。日本も急ぎ検討すべきだ。(2018/5/20)
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2018年05月16日

≪おすすめ本≫ 青木 理『情報隠蔽国家』─国家権力による情報隠蔽と市民監視の実態を鋭く抉る=倉重篤郎(毎日新聞専門編集委員)

 『日本会議の正体』(平凡社新書)、『安倍三代』(朝日新聞出版)と、安倍一強・右傾化社会の深部を抉るノンフィクションを、立て続けに出した著者が、今度は日本国家の防衛省、公安調査庁、警察庁といった諜報組織の実態と、その情報隠蔽体質を俎上に上げた。
 冒頭の「現職自衛官実名告白」の項が興味深い。防衛省情報本部で、ある情報漏洩事件が発覚、漏洩元と疑われた3等陸佐が無罪を訴え、ついには国を相手取り損害賠償請求訴訟を起こした。
 フットワークのいい著者はこれを見逃さない。被疑自衛官にインタビューし、国家機密の中枢で何が起きているかを浮き彫りにし、漏洩されたとする黒塗り機密文書(自衛隊統幕長と米陸軍参謀総長の会談記録)から米側から命じられ、日本側が摺り寄っていく日米同盟の本質を読み込む。
 「日本の公安警察」(講談社現代新書)という著作もある筆者だ。加計問題を告発した前川喜平前文部事務次官が、出会い系バーに通っていた、と読売新聞に報道されたことにも切り込む。

 読売報道以前に前川氏は首相官邸の杉田和博副長官から警告を受けていた。となると官邸からのリークによる読売報道ではなかったか。著者はその答えを断定しないが、杉田氏の出身母体である公安警察という組織が、左翼勢力の監視だけでなく、幅広い政治情報の収集に路線を変え、それを利用することで存在感を誇示するようになった、との背景を抉っている。
 保坂正康氏との対談では、この情報隠蔽社会では、告発する第二、第三の前川氏を生み出すような環境作りが大切だと、一致した意見だ。私も同感だ。
(河出書房新社1600円)
「情報隠蔽国家」.jpg
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2018年05月13日

【今週の風考計】5.13─「加計疑惑」への柳瀬答弁に加え、改ざん前の「森友文書」公開で、進退窮まった安倍政権!

「加計疑惑」をめぐる国会での柳瀬答弁が、もう出鱈目でズタズタにされた。愛媛県の中村時広知事が、面会した日付のある柳瀬氏の名刺と柳瀬発言をまとめた職員メモを公開し、反論したからたまらない。
柳瀬氏と打ち合わせをし、白々しい芝居を打たせ嘘をつかせているのは、加計孝太郎氏と腹心の友である安倍首相に他ならない。「膿を出し切る」どころか、いかに加計学園が“特別な厚遇”を受けてきたか、さらに浮き彫りとなった。

暴言居士・麻生太郎財務相の進退も窮まった。「セクハラ罪っていう罪はない」の発言、二次被害など眼中にない。「森友文書」改ざんでは「どの組織だって改ざんはありえる話。個人の問題ではないか」と応ずる。
公文書改ざんという国家的犯罪をしでかしたのに、そのトップが堂々と開き直る始末だ。しかもこれに関わった職員が自殺する事件まで出たというのに、責任を「個人」に押しつける。政治家が最低限もち合わせるべき倫理観すらない。

18日には改ざん前の「森友文書」が国会に提出される。改ざんは14件の文書で確認され、改ざん前文書の全文は本省分1件のみ公表されていたが、残る近畿財務局分の13件についての全文が提示される。かつ森友学園側とのやりとりを記した近畿財務局のメールなども数百ページ分、残っていたという。
ともあれ改ざんの動機について、どのように言及するのか。安倍首相への忖度があったのは間違いない。当時の佐川宣寿理財局長に虚偽答弁を強要し、行政だけでなく国会さえも歪めてきた安倍首相の責任は重大だ。このまま逃がすわけにはいかない。(2018/5/13)
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2018年05月10日

≪出版界の動き≫ 4月─海賊版「漫画村」サイトの遮断に潜む危険

●3月の書籍・雑誌販売金額1625億円(前年比8.0%減)。雑誌608億円(同15.0%減)、返品率は書籍27.1%、雑誌42.0%。
●KADOKAWAが、東京・飯田橋の自社ビル9階にレストラン「INUA」を開業。スウエーデンの高級料理店「noma」のシェフが調理責任者となり、同社の100%子会社Ks Labが運営する。
●講談社は5月からスカイマークの機内誌を全面プロデュースする。毎月1日発行。スカイマークの月間搭乗者70万人に向け、空の旅が充実する上質で魅力的な誌面づくりを目指す。
●CCCは大阪と東京の旭屋書店と資本提携し、2社が発行する株式の3割強を取得。計14店舗を運営する。CCCの脇尊裕氏が新代表取締役社長に。

●出版協が4月25日、自民党文教議員と文部官僚による前川氏講演への言論弾圧と教育現場への不当介入に抗議する声明を発表。 3月11日には東京都迷惑条令の「改正」案は、捜査機関による恣意的運用が拡大される危険、および言論表現の自由、知る権利などが脅かされるとして、廃案を求める声明を発表した。 

●海賊版「漫画村」サイトの遮断に潜む危険─政府は漫画が無料で読める海賊版サイトの「ブロッキング認可」方針を打ち出した。法整備に至る間の緊急措置として、著作権などの権利保護ができない以上、刑法37条の「緊急避難」を適用すれば、憲法違反にはならないと判断している。
しかし憲法第21条2項には「検閲はしてはならず、通信の秘密を侵してはならない」とあり、電気通信事業法でも事業者に2つの厳守を義務づけている。政府が憲法違反になりかねないブロッキングを、民間のプロバイダーに直接要請する措置は、経済的利益の侵害を優先するあまり、司法面からの検討も仰がず、関係する現場の意見や議論を抜きにした拙速な措置だ。
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2018年05月06日

【今週の風考計】5.6─北東アジアの平和と安倍政権の視野狭窄、北朝鮮への圧力一辺倒の愚かさ

西武新宿駅沿い職安通りの手前に、ジャージャー麺の美味しい店がある。料理人も給仕も中国人、狭い店内は若い中国人客で溢れる。
そこへ珍しく中年の在日韓国人・女性二人が訪れ、小生と円卓で隣り合わせになった。日本語も理解し喋れるので、おすすめメニューなどを教える。

さらに話が弾んで、南北首脳会談の「板門店宣言、おめでとう」と声をかけると、「ありがとう、日本人からお祝いの言葉をかけられたのは、あなたが初めて」と、握手された。このやり取りや会話が理解できたのか、向かいの中国人も頷いている。心和む出会いとなった。

9日、日中韓首脳会談が東京で開かれる。中国・韓国がそろって、北朝鮮の非核化に向けて対話を重視しているのに対し、日本は圧力政策の維持を訴えるばかり。
安倍政権は「非核化が検証可能かつ不可逆的な方法で実現するまで圧力を維持すべきだ」と、この1年叫び続けてきた経済制裁の路線を変えようとしない。これでは建設的な提言や仲介の役割など、できるはずがない。

中韓両国は「朝鮮戦争の終戦宣言や休戦協定の平和協定への転換」を目指し、朝鮮半島の平和的枠組みの構築、ひいては北東アジアの安全保障まで視野に入れ、米朝会談に備える。いまや米国のトランプ大統領すら、2万3500人に及ぶ在韓米軍の縮小を念頭に、大胆な発言をしている。
日本は米国との「異様な隷属関係」に准じているうち、国際的な激動の舞台から蚊帳の外に置かれ、今や肝心の拉致問題でも、米国・韓国にすがって、北朝鮮に取り次いでもらう体たらく。

「キャンドル革命」で誕生した韓国の文在寅大統領は、ノーベル平和賞の候補にもなり、10日には就任1周年を迎える。翻って安倍首相は、この1年、改ざん・隠蔽・セクハラのウミまみれ。哀しくないか!(2018/5/6)
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2018年04月29日

《焦点》 日本は「ギャンブル依存症大国」へまっしぐら=橋詰雅博

 安倍晋三首相は日本でのカジノ解禁に前のめりだ。カジノを「経済成長戦略」と言い放ち、2016年末にカジノ解禁推進法を成立させた。そして与党の公明党を抱き抱き込んでカジノ実施法案を4月末に国会に提出し、強行成立を目論む。同法案のポイントは日本人及び国内在住外国人を対象とした入場料は6000円、日本人の入場回数は週3回、月10回まで、設置は最大3カ所だ。
 パチンコ店があちこちにある日本は、ギャンブル依存症の割合は成人の3・6%と推定されている。欧米諸国の1%台に比べて突出して高い。そこにカジノが出現したら、入場回数制限などの規制があっても、ギャンブル依存症がさらに増えると懸念されるのは当然だ。
 カジノで思い出すのは大王製紙前会長の井川意高さん。マカオやシンガポールのカジノで丁半バクチと同じようなルールのトランプゲーム・バカラの虜になった彼は、なんと106億8000円もスッてしまった。借金を返済するため子会社から金を借り入れ、特別背任容疑で11年11月に東京地検特捜部に逮捕される。最高裁で懲役4年の実刑判決が確定し、16年12月に仮出所。昨年10月に刑期が満了した。著書「熔ける」(幻冬舎文庫)によると、数百万円から20億円まで勝つなど〈億単位の勝利を収めた成功体験は忘れがい快哉をもたらした〉ことが破滅まで突き進んだ原因と書いている。
 先月取材した鶴見大学名誉教授でカジノ誘致反対横浜連絡会共同代表の後藤仁敏さん(歯学博士=解剖学)は「バクチでの勝利の味は頭から消えない」と前置きした上で、理由をこう述べた。
 「バクチで勝つと脳から快楽物質≠ェどんどんと出ます。世の中で自分ほど幸せな人間はいないという陶酔感にひたる。負けた記憶は消えるが、陶酔感はいつまでも残る。だからバクチにのめり込んで、ギャンブル依存症に陥る」
 カジノ解禁で日本はギャンブル依存症大国≠ヨまっしぐらだ。


 
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【今週の風考計】4.29─いま、若き2人の民権家の足跡を辿り、民衆憲法の原点に寄り添う。

●先週、夏を思わせる一日だが、めげずに武蔵五日市へ遠出をした。新井勝紘『五日市憲法』(岩波新書)に触発されて、その源郷を見ておきたかったからだ。

●JR五日市線の終点を下車して北西に向かい、三内川を遡るようにして約50分、大内橋の手前を右に行くと、黒い板塀と白漆喰の壁がある屋敷に辿りつく。むせるような新緑に覆われ、静かな佇まいを見せていた。
●そこが深沢家の屋敷跡地である。なんと50年前の8月27日、その土蔵から千葉卓三郎が起草した、いわゆる「五日市憲法草案」が見つかったのだ。約135年前、明治15年頃にまとめた草案は、和紙24枚に細かな文字で清書され、5篇204条から構成されていた。

●なんで深沢家にあったのか? 深沢家は江戸時代の中頃に名主を務め山林地主として財をなした旧家。その長兄・権八も、村民を集め学芸懇談会を組織するなど、自由民権の普及活動に専心。さらに地元の勧能学校を通して千葉卓三郎と出会い、彼の学識を深く敬愛し憲法研究におしげもなく資金をつぎ込んだという。
●千葉卓三郎とはどんな人物なのか。その生涯がユニークだ。仙台藩の下級武士として、16歳で戊辰戦争に従軍したが敗退し、明治維新後に上京し、ロシア宣教師ニコライから洗礼を受けたり、安井息軒に入門したり、精神的遍歴を重ねた。明治13年には五日市町の小学校である勧能学校に赴任し、その後、校長になった。

●土地の平民など多くの人が憲法論議に加わることによって、「国民の権利、人権の尊重、教育権の保障、地方自治権の確立」など、今の憲法に匹敵するか、それ以上に明確な考え方を、憲法草案に盛り込むことが可能となった。
●千葉卓三郎は明治16年(1883)11月12日に31歳で、深沢権八も明治23年(1890)12月24日に29歳で夭折している。若き民権家の魂に黙祷。(2018/4/29)
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2018年04月28日

≪おすすめ本≫ 佐古忠彦『瀬長亀次郎の生涯 「米軍が恐れた不屈の男」 』 ─沖縄県民の基地問題へのこだわりと“オール沖縄”の絆の力強さ=諌山 修

 写真が一枚―敗戦の7年後に首里城跡地で開かれた琉球政府創立式典。当選したばかりの立法院議員全員が起立脱帽するなか、ただ一人、鳥打帽をかぶったまま最後列に着席し宣誓を拒否する男。トップ当選の瀬長亀次郎だ。「米民政府と琉球住民に厳粛に誓います」の“米民政府”という文言への抗議であった。
 沖縄人民党、立法院議員、那覇市長、衆院議員。あるいは戦前に治安維持法違反で旧制高校を放校、米軍事裁判で懲役2年の実刑など、米軍事基地反対、本土復帰を目指す波乱の人生の中で「理屈の通らないことには絶対従わない」という、この《不屈》の生き方は、終生変わらなかった。

 那覇市長時代の第5章が圧巻。1956年暮れの那覇市長選で、カメジローがまさかの当選。米軍は那覇市への補助金打ち切り、水道供給を止めた。市議会保守派が瀬長市長の不信任案可決。議会解散による出直し選挙で保守派が議席を減らすと、米軍は過去に投獄された者は立候補不可の「布令」まで作って亀次郎を締め出す。だが1958年始めの市長選で勝ったのは、瀬長の身代わり統一候補だった。
 沖縄県民の基地問題へのこだわりと、“オール沖縄”の絆の力強さのルーツが、よく分かる。

 この本の著者・佐古忠彦君はTBS報道局で、年齢的には親子といってもいい私の後輩である。仕事熱心で存在感のある若手キャスターだった。彼自身が監督した長編映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男」も見たが、テンポのいい編集で、当時の空気を見事に表現していた。
 今度はテレビでも本でも、日本や世界が直面する「今」の新しいテーマに取り組んで欲しい。
(講談社1600円)
「瀬永亀次郎の生涯」.jpg
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2018年04月22日

【今週の風考計】4.22─「核廃棄」はチェルノブイリから板門店へ、熱い視線が注がれる!

4月26日午前1時23分44秒、原子炉が爆発。放射性物質を大量に吹き上げる。32年前のチェルノブイリだ。今は巨大な「石棺」で覆われ、周辺地域はゴーストタウンと化したまま。
ウラジーミル・グーバレフ『石棺─チェルノブイリの黙示録』(リベルタ出版1987年)が、史上最大の悲劇と事故の真相に迫る。避難者32万6千人、被曝後4〜5年目から子どもの甲状腺がんが急増する。

そして7年前の3・11福島原発事故、その当時、誕生した子どもは小学校に入学する。子どもの甲状腺検査は約38万人を対象に行なわれ、甲状腺がんが発見された子どもは197人に上る。しかし、政府は稼働40年の老朽原発・東海第二原発の再稼働を始め、「原発ゼロ」の世論に背を向け続ける。

こうした「核」の悲劇は世界に拡がる。27日、板門店で11年ぶりの南北首脳会談が行われる。まさに朝鮮半島の“非核化”がテーマとなる。北朝鮮・金正恩委員長の「核実験・ミサイル試射の中止」宣言を踏まえ、韓国は1992年の南北非核化宣言の実効と朝鮮戦争の終結から平和協定へと、会談を進展させたいと願っている。
それには粘り強い対話によって、「約束対約束・行動対行動」の積み上げを図り、6カ国も共同して努力するのが要だ。性急な「核放棄」のロードマップ作りに突っ走って、これまで繰り返された愚に陥ってはならない。

果たして今の安倍政権は、その責務が担えるのか。こうまでウミがたまっている総身の立場では、世界から信用されまい。(2018/4/22)

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2018年04月20日

≪おすすめ本≫ 内田博文『治安維持法と共謀罪』─国民の人権と個人の尊厳を奪う 「準戦時治安法制」の危険=増本一彦(治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部会長)

 1941年、アジア・太平洋戦争に突入する前夜、天皇制政府は、治安維持法を全面改悪して、「非日本的な共産主義、社会主義、民主主義、自由主義、個人主義、反戦主義を根こそぎ奪う」ために、「国体の変革、「私有財産制度否認の目的の結社」のみならず、これを「準備する結社」「支援する結社」の「目的遂行のためにする行為」までも厳罰に処することにしました。こうして、「自由な言論も、自由な社会」もなくなりました。

 著者は、本書において刑法学の立場から、「歴史的なものを理論化する」方法論を用い、この戦前・戦中の治安維持法など戦時治安法を俎上にのせて、果敢にその運用を検証し総括します。
 そして、日本国憲法の下でも、違憲立法審査権、三審制、弁護権などが国民の人権と個人の尊厳を擁護し救済する機能を果たしていないことを、私たちの前に赤裸々に告発して、特定秘密保護法、共謀罪など「準戦時治安法制」のいっそうの危険を訴えています。
 著者は、別著(『刑法と戦争』みすず書房2015年)で、「量の民主主義(多数決)は「悪法」を作る」といい、人間の尊厳と少数者の権利を守るための「質の民主主義」をどう立ち上げるかと問いかけていますが、本書では、日本国憲法の保障する諸権利を行使して、反対し抵抗する意欲と力と勇気を持とうと結んでいます。
 平和、自由、民主、正義と真理を尊ぶ皆さんに是非ご一読をお勧めしたい一冊です。
(岩波新書840円)
「治安維持法と共謀罪」.png
posted by ロバの耳 at 09:11| Comment(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする