2020年09月27日

【今週の風考計】9.27─今こそ必要なコロナに立ち向かう世界の連帯

◆新型コロナウイルスの感染者が、中国・武漢で最初に見つかってから9カ月が経過した。武漢で何が起きていたのか。1月20日に都市封鎖令が出されて以降の状況を伝えるドキュメントが刊行された。
◆方方『武漢日記─封鎖下60日の魂の記録』(河出書房新社)である。一気に読んだ。
 武漢に住む65歳の高名な女性作家が、自身のブログで武漢の実情を、当局の手で削除されたり、中国の極左分子「ネトサヨ」から攻撃されたり、様々な圧力や妨害にもめげず、日記の形で綴った感動にあふれる書だ。
 ⾝近な⼈が次々と死んでいく悲惨な状況、医療現場の疲弊と焦燥、とりわけ殉職医師・李文亮への思い、事実を隠ぺいした当局者への怒り、メディアの怠慢など、著者の目線の厳しさが、ひしひしと伝わってくる。
 武漢だけで感染者5万人、死者3800人という深刻な結果となったが、それに立ち向かった庶民の苦労や悲哀へ注ぐ目線は極めて温かい。

◆いま武漢はコロナ感染が収束し、10月1日から8日までの「国慶節」の連休には、武漢の名所「黄鶴楼」への旅行が人気トップだという。中国内を6億人も移動するが、コロナ感染拡大の懸念はないのか。いま中国全体で感染者9万人・死者4700人に上るというのに。
◆さらに深刻なのは世界全体で感染者3257万人、死者98万人を超えたことだ。感染者が最も多いのは、先進国ナンバーワンの米国で703万人、2位インド590万人、3位ブラジル468万人となる。上位3カ国に世界の感染者の54%が集中する。
 しかも米国は死者が20万人を超え、今もなお1日に新規感染者が5万人もふえ、かつ1日に960人近くが死亡するという、世界各国の中でも最悪の事態が続いている。

◆だがトランプ大統領は、国連総会の演説で「武漢肺炎によるパンデミックを引き起こした原因は中国にあり、責任を取らせねばならない」と激しい言葉で各国に同調を促した。
 その背景には、トランプ大統領が11月の選挙で再選を狙うため、感染防止対策を軽視した責任を中国に転嫁し、自らの「コロナの影響は大きくない、8月にも沈静化する」との発言を取り繕うためといわれている。
◆75周年となる国連のグテーレス事務総長は「コロナの感染拡大は医療危機、経済不況と大量失業、さらに人権侵害という脅威を同時にもたらしている」と述べ、危機打開に向け各国に結束と連帯の必要性を訴えた。
 自国第一主義による他国非難や経済制裁をやめるよう促し、さらにはコロナ・ワクチンの自国向け独占取引・ウラ取引など、いわゆるワクチン国家主義へ警鐘を鳴らした。

◆いま欧州ではコロナ感染がフランスやスペインで1日に3万人の規模で増え、集会や外出の禁止など、再規制に躍起となっている。
 ところが菅政権は「Go Toキャンペーン」を拡大し、さらに全世界から外国人の入国受け入れを決めた。当面は3カ月以上滞在する医療従事者、スポーツ選手、留学生などに限るとはいえ、解禁で感染拡大の危険が強まるのは火を見るより明らかだ。止めたほうがいい。(2020/9/27)
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2020年09月23日

【おすすめ本】木内みどり『またね。 木内みどりの「発熱中!」 』─あっという間に逝った著者のステキな文章に「さよなら」=鈴木耕(編集者)

 表紙を見ただけで胸がつまり、普通の書評のように平静な気分では書けません。これは昨年急逝した木内みどりさんの「遺稿集」のような本。 私は木内さんとはほんの少しの友人でした。だから書評が「さよなら」の 文章になってしまうのは悲しすぎるのです。
 私たちが運営しているウェブサイト「マガジン9」は今年、創刊15年になる小さなネット週刊誌です。その「マガ9」連 載の木内さんのコラムを編集したのが本書です。帯に「世の中を本気で変えようとした女優がつづったひとりの人間としての『生』の記録」とある 通り、まさに木内さんの本気が溢れています。
 反原発集会で司会を務め、改憲反対のデモを歩き、自分がいいと思った候補者の選挙運動に参加する。なぜその人を推薦するのかを、じっくりと勉強した上で、コラムに書く。
 芸能界では政治に関わったら損だよ、などと言われても、そんなことを言う人とは疎遠になってもかまわないわ、フフフ…と笑顔を浮かべて先頭に立ち続けたのです。
 私は、そんな木内さんが大好きでした。だから「マガ9」への連載をお願いしたのです。「私は 中卒だし、知識なんかまったくないのだけど、それでいいのかしら」。い いんですよ、もちろん。 だってこんなステキな文章を書ける人、そんじょそこらにはいませんよ。
 ここに収められた文章は多岐にわたります。原発、政治、憲法、環境、そして旅や親しい人たち。自由奔放にして優しさに満ちた文章。文は人を表します。その通りの生き方をした木内さんでし た。あっという間に去っていった大切な友人に、私が書けるのは、やっぱり「さよなら」と淋しさ だけでした。(岩波書店1800円)
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2020年09月20日

【今週の風考計】9.20─コロナ禍で進む「ふるさと納税」の歪み

コロナ禍での「ふるさと納税」が、菅義偉首相の誕生により再び注目を集めている。この制度は、菅氏が総務相時代の2007年に制度創設を表明し、翌年からスタートさせた。2012年には官房長官に就任、その3年後には税額控除を倍増させた。

「ふるさと納税」は、自治体に寄付すると、額に応じた魅力あふれる返礼品がもらえる。かつ自己負担の2000円を除いた寄付金は、そのまま住民税から控除される。寄付をすればするほど寄付者が“もうかる”仕組みだ。
 現に高額所得者が、自分の住んでいる自治体には税金を払わず、地方から贈られる高級和牛やカニなどを堪能している。こんな不合理がまかり通るようになった。居住する地域の医療や図書館など、公共施設の運営に要する税を負担しないとは。
 日本に在住している外国人が、子供を日本の学校に通わせながら、「税金は母国に払う」と言ったらどうするか。
 まさに「ふるさと納税」は税制度の根幹を揺るがしている。

今や寄付額は08年度81億円から18年度は395万人が5127億円まで急増し、税金の控除額は3265億円に達した。こうなると各自治体は、何が何でも寄付額を増やそうと、自治体間での返礼品競争が激しくなる。
 地方の特産品どころか、アマゾンのギフト券を返礼品として配る大坂・泉佐野市も出てきた。事実上の現金還元だ。
 最近では長野県御代田町が、町内の遺跡から出土した縄文土器の実物大レプリカを、「ふるさと納税」の返礼品にした。5万円以上の寄付が前提にもかかわらず即完売。神奈川県南足柄市への寄付額が2019年は27億円、前年の約8倍に激増した。これも丹沢山系の水を利用したビールを返礼品に加えたためである。

財政が逼迫している地方の自治体には、「ふるさと納税」は降ってわいた財源、よだれが出るほど欲しい。地方自治体間で「ふるさと納税」の取り合いである。「地方創生・産業振興」への取り組みなど、すっ飛んでしまう。
その一方、「ふるさと納税」に流れて税収が減った、首都圏を中心にした自治体の悲鳴は深刻になるばかり。東京・渋谷区は26億円もの住民税が流出する、いわば“ふるさと納税貧乏”状態だ。同じ杉並区では2019年度25億円近くの財源が流出した。
 コロナ感染拡大に対応しての緊急な財政支出がかさみ、そのうえ税収が減れば、道路や公園など公共空間や施設の維持・管理は滞る。街灯の電球が交換されなくなり、廃棄物の収集回数は減るなど、深刻な事態が進む。

コロナ禍で巣ごもり需要による「ふるさと納税」の伸びが目立つ背後で、所得の高いものほど税額控除が大きくなる矛盾、そして自治体間の無用な競争をあおり、<税の応益負担>へ不信が募る、ここに目を向けなければダメ。(2020/9/20)
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2020年09月16日

【おすすめ本】水島久光『戦争をいかに語り継ぐか 「映像」と「証言」から考える戦後史』─もどかしい戦争報道の歩み、語り部と対話し問答する大切さ=菅原正伯

 戦争体験を語るさい、「あの戦争」とよぶ人が少なくないのはなぜか。本書はそんな疑問を手がかりに、NHKやTBSのドキュメンタリー番組を主な素材にして、戦争体験を語り継ぐことのもどかしさや難しさの要因を考察している。
 戦後60年(二〇〇五年)、戦後70年(二〇一五年)に、テレビ各局は競って百を超える戦争番組を作った。だが語り部は自分の言葉が聞き手に届かない悩みを、抱えていた。
それは戦後、知識人と大衆、語り手と聞き手に加え、「知る者と知らざ る者」の分断によって、戦争に関わる語り(テレビ報道)が「一方向性」に傾斜したからだと、著者は言う。
 第二章は「戦争を知らない子供たち」と戦争体験者とのコミュニケーションの「断絶」を、フォークソングや戦争マンガの考察から文化的に明らかにし、示唆に富む内容がいっぱいである。
断絶があるがゆえに「問答」や「対話」による克服が大切になるが、原爆など「なぜこんな悲惨なことが…」という聞き手の問いかけは、話し手との圧倒的な情報量の差を前にして、「だから 戦争はいけない」という結論に短絡しがちだったと、著者は指摘する。厳しい批判だが、その底には戦後第一世代の努力にたいし、大いなるエールが込められている。
 語り部が高齢化し「語り手なき時代」の到来が迫っている。それだけに著者はテレビ各局が製作した膨大なドキュメンタリーのアーカイブ化を図って活用することや、この間、戦前のニュース映画や映像の新たな発掘が続いていることに期待を寄せている。(NHK出版1500円)
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2020年09月13日

【今週の風考計】9.13─憲法の「非戦・平和主義」を骨抜きにしてきた7年8カ月

<最後っ屁>とはいうが、安倍首相が放ったのはイタチよりひどい。あと7日もない首相の座から「敵基地攻撃能力」の保有を促す談話を発表した。自民党内の討議も経ず、閣議決定もなし。自民党内ですら「辞めていく首相が方針を決めるのはおかしい」と、反発の声が出ている。
これまで政府は、「敵基地攻撃能力」について、憲法上は保有を認められるが、専守防衛の観点から政策判断として持たないとの立場を維持してきた。
 こうした方針を大転換させる談話で、よしみを通じるとはいえ、次期の「菅政権」に年内という期限付きで政策決定を求めるのは言語道断だ。
 「ミサイル反撃」と言うが、他国の領域を標的にする兵器の使用は、専守防衛を逸脱するのは明白なうえ、先制攻撃にもなりかねない。まさに憲法9条が死滅する。

「ミサイル反撃」への対応にしても、まず他国から発射されるミサイルを正確に予測し把握せねばならず、宇宙空間での監視が不可欠。そのため早期警戒衛星の打ち上げが必要になる。日本が独自に持つと年間850億円かかる。さらなる地対空誘導弾パトリオットの拡充も迫られる。
いま防衛省が準備している「敵基地攻撃」の一つには、北朝鮮や中国、ロシア沿岸部に到達する射程500キロの弾道ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」(ノルウェー製)がある。それを2022年3月までに購入し、航空自衛隊のF-35Aステルス戦闘機に搭載して運用する計画だ。
 これも専守防衛との整合性について議論を尽くさずに導入を決定した。
さらに敵基地のレーダーや通信などの防空網をかいくぐって攻撃するには、電子戦機やステルス戦闘機が必要になる。電子戦機もステルス戦闘機も1機100億円。その維持費や要員の訓練なども含む経費を考えれば、年5兆円の防衛予算が、さらに拡大の悪循環に陥る。

安倍政権の7年8カ月、日本の安全保障を脅かす暴挙が、どれだけ繰り返されてきたか。
 2014年4月には「積極的平和主義」の名の下、武器輸出の禁止を解除。7月には憲法解釈の変更で、集団的自衛権の行使容認を、国会での議論を経ずに、閣議決定で一方的に決定した。翌年9月には学者や国民の反対にもかかわらず、安保関連法を強行採決で成立させた。
 自衛隊が地理的な制限もなく海外に派遣される攻撃部隊と化し、米軍との一体化が加速、憲法の「平和主義」が骨抜きにされた。
その間、トランプ大統領のご機嫌を伺い、兵器の爆買いに奔った。核兵器禁止条約には背を向け、「東アジア平和共同体」構想など視野にもない。
 安倍政権の一強支配による権力行使の7年8カ月は、日本を「戦争する国」へと歩ませる道程だったといっても過言ではない。(2020/9/13)
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2020年09月11日

【2020年度第63回JCJ賞】大賞はしんぶん赤旗日曜版 桜疑惑のスクープ報道=JCJ賞選考委員会

【JCJ大賞】 <安倍晋三首相の「桜を見る会」私物化スクープと一連の報道> しんぶん赤旗日曜版
 しんぶん赤旗日曜版は2019年10月13日号で、桜を見る会に首相の地元山口の数百人の後援会員を大量招待していた事実をスクープした。参加者の証言をもとに、安倍事務所が取り仕切り、高級ホテルで開いた前夜祭に山口の参加者を招待、税金でもてなした疑惑を告発。政権与党にも招待数を割り当てていた実態を明らかにした。この記事を契機に田村智子参院議員が国会で追及し、「桜」疑惑が一気に国政の重大課題に浮上。地道な調査報道を重ね、安倍政権の本性を明るみにしたスクープは国政、メディアに大きなインパクトを与えた。

【JCJ賞】
 ●三上智恵 『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)  
 終戦末期の沖縄、中野学校出身者の指揮のもと、二つの「護郷隊」が諜報、防諜、宣伝、謀略の秘密戦を戦った。著者は映画「沖縄スパイ戦史」完成後も徹底取材を継続敢行した。少年ゲリラ兵、その隊長たち、全国で準備された住民による遊撃戦、地上戦の恐怖、虐殺者たち、軍の「戦争マニュアル」に至る、長く封印されてきた凄まじい証言ばかりである。ここに沖縄戦−国内唯一のゲリラ戦が浮かび上がる。そしてこれは現代への鋭い警告である。

 ●吉田千亜『孤塁 双葉郡消防士たちの3・11』(岩波書店)
 2011年3月11日の巨大地震につづく福島第一原発の爆発。「おきるはずのない」事故がおきた。著者は、これまで報道されず記録もされていなかった現地消防士たちの必死の活動(住民避難誘導、救助活動、原発内の火災・給水活動等)を1年かけて克明に取材。刻々と変化する事態を追いつつ、125名中66名から聞き取ったエピソードを組み込んだルポルタージュが胸に迫る。事実の恐ろしさ、国と東電の後手後手で杜撰な対応を告発

 ●「 森友問題で自殺した財務省職員の遺書の公開 」赤木雅子 相澤冬樹
 森友問題での安倍首相の「私や妻がかかわっていれば首相も議員も辞める」との答弁をきっかけに、当時の財務省佐川宣寿理財局長は公文書改ざんを指示する。改ざんを強要された近畿財務局職員赤木俊夫さんは抗い、経過を克明に「遺書」として残してくれた。それは妻雅子さんの決意とジャーナリスト相澤冬樹氏によって白日の下に曝された。断罪されるべき相手は明らかだ。改ざん事件発覚後、安倍政権による国の私物化の責任はまだ誰も負っていない。

 ●「ヤジと民主主義〜小さな自由が排除された先に〜」 北海道放送
 2019年7月の参議院選の時に札幌で自民党の応援に入った安倍首相に、ヤジを飛ばした男女や無言でプラカードを掲げようとした人たちが警官に取り囲まれて排除された。番組では当時の映像を集め、元警察官や専門家、治安維持法違反で投獄された方などに問題点を聞き多角的に検証。特に撮影された現場の警察官の対応は命令に盲目的に従って権力行使をする末端という問題点を明瞭に映像化した。ヤジすら言えない社会の先に民主主義が問われていると警鐘を鳴らす。

なおJCJ賞の贈賞式は10月10日(土) 14:00〜 エデュカス東京(東京・麹町)で行います
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2020年09月06日

【今週の風考計】9.6─またも「大阪都構想」を住民投票に付す愚の行き着く先

◆人口270万の大阪市をつぶし、4つの特別区に分割する「大阪都構想」が、5年前に住民投票で否決されたにも関わらず、再び是非を問う住民投票が、18歳以上の大阪市民を対象に11月1日に行われる。公明党は都構想に反対してきたが、大阪府内で得た4議席に、維新が対抗馬をぶつけると脅し、無残にも賛成に転じたためだ。
 コロナ禍が拡大する中、なぜ今再び? の疑問や批判の声は大きく広がる。

◆北区、中央区、天王寺区、淀川区に分割される特別区といえども、その業務遂行には、膨大なコスト・経費がかかる。そのうえ大阪市という大きな財源を背景に実施してきた独自の住民サービスが、維持できなくなる危険は大きい。
 これまで大阪市は、18歳までの医療費助成、地下鉄・市バスの敬老パス、ひとり親家庭への医療費助成、新婚・子育て世帯向けに分譲住宅の購入には利子補助など、数多くの住民サービスを実施してきた。それが脅かされるのだ。
◆「水道」「消防」「都市計画」にかかわる権限も全て府に奪われ、特別区の住民の生活環境の保全が危うくなり、経済政策と連動した税収確保にも大きな影響が出てくる。
 「介護保険」についても、その事務作業は「府」と「特別区」に分けられないので、年間予算6400億円、400人の職員を抱える「一部事務組合」を新設して、そこで一括して担うというのだ。こんなムダはいらない。
◆国からの地方交付税も、4つの「特別区」それぞれが必要経費を算出して交付を受けるのではなく、今後も「大阪市」が存続しているとみなして計算し、大阪府が交付を受けるという。これでは「特別区」が実際に必要とする額には、200億円も不足するといわれる。

◆特別区の区役所はどこになるのか。はじめは4つの特別区に新庁舎を設置するとしていたが、600億円も必要となり、公明党の要望を受け、いまの大阪市役所・中之島庁舎を北区とともに合同で使う案が浮上した。淀川区の職員は8割、天王寺区の職員は5割が、中之島庁舎へ通い、間借りして仕事をこなすことになる。
 行政サービスは、「ニア・イズ・ベター」が鉄則だが、災害時の復旧・復興の拠点ともなる市役所が、そばにないとなれば、住民の不安は増すばかりだ。住民の住む自治体の区域外に本庁舎がある例は、鹿児島と沖縄の離島だけ。
◆「大阪都構想」の問題を深く掘り下げるオンライン講演会が開催されます。ぜひ参加を!
JCJオンライン講演会:大阪都構想 七つの大罪
日時:9月13日(日)午後2時〜3時30分
講演@「大阪都構想、七つの大罪」ジャーナリスト・幸田 泉さん
講演A「維新の歴史と大阪のたたかい」大阪市をよくする会・中山直和さん

参加費:500円
【参加ご希望の方は https://peatix.com/event/1606843 をパソコンなどで開きpeatixを通じてお支払い手続きをしてください。講演前日の9月12日にZoomのURLをメールでお送りします】
(JCJ会員とメディアを考える会・大阪の会員は無料。onlinejcj20@gmail.comに別途メールで申し込んでください)
主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)関西支部、メディアを考える会・大阪
お問い合わせ:03・6272・9781(JCJ事務所)または090・6673・7377(清水)へ
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2020年09月05日

【焦点】「従来のような五輪の開催は無理」東京都医師会長が発言=橋詰雅博

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  東京都医師会の尾崎治夫会長と言えば、安倍晋三首相のコロナ対策に不満をぶちまけた医師だ。自民党支持者でありながら、「無為無策」と痛烈に批判した上で「国には頼らない」とまで言い切った。その尾崎会長、来年の東京五輪・パラリンピック開催について、朝日新聞が主催した8月7日のオンラインイベントでこんな発言をしている。
 「日本だけならコロナを封じ込めることができるかもしれない。しかし、五輪では世界中から選手や役員、観客などが大勢の人が、日本にやってくる。世界のコロナ感染状況は、欧米を始めアフリカ、中東、アジアなどで広がっている。とりわけアフリカの感染者数はそれが本当かどうか不明だ。7月、8月は、はしかや風疹、熱中症などにかかる人が出ます。それにコロナ患者が加わります。これらの患者に対応できる医療体制が心配です。やれる体力が残っていますかね」
 極めて有効なワクチンが出来ない限り「かなり(規模を)制限された五輪にならざるを得ない。皆さんが従来からイメージする五輪ができるかというと無理だと思う」。
 残念だったのは、東京五輪は再延期かあるいは中止にすべきかと会長に対して、朝日の記者が突っ込んだ質問をしなかったことだ。
 橋詰雅博
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2020年09月02日

【焦点】コロナin海外 英国・読書時間が倍増 仏国・バカンスは中止 台北・渡航用グッズ売れる=橋詰雅博

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    ロンドンの日曜の地下鉄車内、乗客が見当たらない=右下の園部さんが撮影
 
 新型コロナが世界中に蔓延して6カ月近くがたった。朝日新聞GLOBE編集部が英国、フランス、台湾のコロナ禍最新事情を7月20日にオンラインによってライブ中継した。英国は欧州の中で死者数4万1千超と最多、フランスは7月中旬から屋内施設でのマスク着用を義務化した(違反者は罰金135ユーロ=1万6千円)、台湾はコロナ抑え込みに成功。
 ロンドン在住の園部哲さん(翻訳者)、パリのセザール・カステルビさん(大学博士研究員)、3人の子どもがいる台北の李玲瑜さん(会社員)が現状などを語った。カステルビさんも李さんも日本に留学経験があるので日本語は上手だ。

財務相人気高まる  
【ロンドン】都市封鎖措置が段階的に緩和になり、街中に人は増えてきているが、コロナ禍前の20分の1、30分の1程度といった感じの人出です。ある世論調査では、35%の人が感染を恐れ外出したくないと答えています。巣ごもりの人が多くなったせいか、本好きの英国人の1週間の読書時間が3時間から6時間に倍増した。
 3月下旬の都市封鎖発令前までコロナ対策に手をつけなかったジョンソン首相は、支持が急落だ。閣僚の中ではリシ・スナク財務相の人気が高まっている。打撃を受けたレストランやパブなどでの飲食の付加価値税を20%から5%に引き下げ、集客政策を実施したからです。

24年五輪無関心
【パリ】(都市封鎖が大幅に解除され)今はキスやハグをする人が多くなっている。しかし、パリの観光スポットにはEUからの観光客は少ない。僕はバカンスで南仏とスペインに行く予定でしたが、コロナ禍ですからやめました。バカンスのスケジュールは決まっていません。
 パリの2024年五輪パラリンピック開催を危ぶむ話題は上がっていませんね。そもそも市民は五輪に関心がない。24年をどうするのかという話はまったく出てきていません。
 大学に限れば、オンライン授業が中心でテストもオンラインで実施した。新学期が始まる9月以降、リアルとオンラインの授業割合のルールは決まってなくて、大学に任されている。学生が多い授業はオンライン、少人数ならリアルが向いているようです。

カッコ悪いと拒む
【台北】コロナ禍前の通常の生活に戻っている。もちろんマスク着用もなしです。コロナ流行時、海外から帰国したビジネスマンや学生は、国内でコロナを感染流入させる心配がありましたが、皆、温かい心で帰国者を迎えていた。
 アメリカの大学に留学していた20歳と19歳の息子を帰国後に2週間自宅で待機させました。つくった食事は部屋に持ち込むことはできませんでしたからそれぞれの部屋の前に置きました。食べ終わった食器は毎回、買った小型消毒機で洗って使うようにしました。二人ともオンライン授業で勉強していた。
 長男は8月に大学に戻りますが、その際、コロナ対策をして飛行機に乗る予定です。台北では白い防護服、ゴーグル、手袋、マスク、靴カバーなどがセットになったものが売られています。息子は最初、「ヘンなカッコで嫌だ」と身につけるのを拒みましたが、アメリカのコロナ感染再拡大のニュース映像を見て心配になりしぶしぶ身につけていくことになりました。

評判落した3人
 園部さんによると、英国のメディアは真っ当なコロナ対策をできず評判を落した政治家として自国のジョンソン、ブラジルのボルソナロ大統領、そして安倍晋三首相(8月28日に首相を辞任)の3人をあげている。
橋詰雅博
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2020年08月30日

【今週の風考計】8.30─黒人銃撃と「自警団」そして関東大震災・亀戸事件

米国のウィスコンシン州ケノーシャで、23日、黒人男性が警官に背後から至近距離で7発もの銃撃を受け、半身不随の重傷となった事件は、またまた大きな波紋を広げている。
 28日には、キング牧師が「私には夢がある」と演説したワシントン大行進から57年を迎え、一連の黒人銃撃に抗議し「人間の権利と平等と融和」を訴える数千人規模の大集会が、ワシントンで開かれている。
プロテニスの大坂なおみ選手は、ツイッターで「私はアスリートである前にひとりの黒人女性です。(中略)警察の手により黒人が虐殺され続けるのを目にすることは、正直言って吐き気がします」と、内外に訴えている。
 彼女は、5月25日の警官によるフロイドさん殺害事件への抗議デモにも参加し、これまで熱心に黒人差別に対するプロテストと思いを発信している。

ところが25日の夜、米国ケノーシャでの抗議デモに参加した市民が、なんと17歳の白人の少年にライフル銃で撃たれ、2人が死亡、1人が重傷を負った。
 少年は、警官にシンパシーを寄せるだけでなく、地元の白人中心の武装組織「自警団」と一緒に行動していたという。1月にはアイオワ州でのトランプ大統領の集会に出かけ、最前列に座ってエールを送るなど、熱烈なトランプ支持者だという。
 17歳の少年までも銃口を人に向ける現状に、米国社会の病巣の深刻さが浮き彫りになっている。
しかし、トランプ大統領は、現地に州兵の派遣を表明、大統領選に向けて支持拡大の「法と秩序」の維持を掲げ、黒人差別への抗議デモと警官・「自警団」との対立をあおり、市民を分断し「憎悪の連鎖」に巻き込む危険を、ますます拡大させている。

日本はどうか。「自警団」といえば、いま日本の各地に「コロナ自警団」がはびこっている。コロナへの恐怖心に付け入り市民を相互監視、自粛に従わない人や休業しない店舗、さらには感染者を「コロナをうつす加害者」扱いして責める。この「コロナ自警団」が、正義の鉄槌を下すとばかりに攻撃衝動を発散している。
 政府・自治体にとって「コロナ自警団」は、行政の怠慢は棚上げし、かつ上からの行動規制は推進してくれる、まさに一石二鳥の存在だ。

思い出してほしい。今から97年前の9月1日、関東大地震が発生、その直後から「朝鮮人が暴動を起こした!」「井戸に毒を入れた」などの恐怖をあおる流言が意識的に拡散され、多くの朝鮮人が虐殺された事態である。
 政府や警察みずからデマを広げ、<不逞鮮人の襲来>に備えて、在郷軍人・青年団・消防団を中心に「自警団」を組織するよう促した。その数は関東一円で3000とされる。
 国の「お墨付き」による「自警団」は、棍棒・竹槍・日本刀・鳶口・猟銃などで武装し、通行人を検問、朝鮮人とみるや迫害・虐殺した。2日夜から3日にかけての蛮行はすさまじい。犠牲者は数千人に及ぶ。
9月3日になると、さらに「不逞鮮人を煽っているのは主義者だ」のデマが流される。市民の同調圧力にも助けられ、警察と軍は大手を振って、社会主義者を一挙に根絶やしにする作戦に出る。
 東京・南葛飾地域の労働組合青年幹部ら10人を、相次ぎ亀戸署に留置、軍に引き渡してのち、5日未明、近衛師団の騎兵第13連隊の兵士によって刺殺された。「亀戸事件」である。

米国であれ日本であれ、昔も今も「自警団」が組織されるとき、それを権力者や警察が利用する恐ろしさは、十二分に認識・警戒しておかなければならぬ。(2020/8/30)
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2020年08月28日

【焦点】売り上げ激減の音楽エンタメ業界 オンラインライブが希望の星=°エ詰雅博

 ぴあ総研によると、音楽ライブ・エンタテインメント市場は、2019年は過去最高の約6300億円を記録したが、20年はコロナ禍のせいで約1840億に激減する見込み。前年より3割にも満たないことになる。

 音楽イベントを手がけるロッキング・オングループ社長で音楽評論家の渋谷陽一さん(69)は、8月18日、日経Web中継セミナーに出演し、エンタメ業界の現状と、先行きなどについて語った。
 「今のエンタメ業界は死にかけている。深刻な事態だ」という。コロナ禍前のような仕事ができないからで、事業者は収入がほとんどなく、ミュージシャンやスタッフなどに報酬を支払えない状況がずっと続いている。近ごろはやっとライブ演奏ができるようになったが、しかし、国のコロナ感染拡大防止ガイドラインにより会場の定員の半分しかお客を入れることができないのがネックだ。
 「定員1000人のところは、最大で500人までです。売り上げが半分に落ちても収入があるからいいじゃないかと思う方が多いだろうが、そうではない。ミュージシャンやスタッフなどへの報酬の支払いを考えると、完全に赤字です。定員の半分では利益を得られない。赤字を生むだけです」
 だからマスク着用や検温、消毒、換気を徹底するから定員まで入れることを国が許可してほしいと要望する。
 「そうすれば、間違いなく業界は息を吹き返します。『3密状態をつくるのか、バカなことを言うな』と思われるかもしれませんが、このままの状況を続くと、業界の多くの人は食べていけなくなる。コロナウイルスというリスクを恐れながらも、ビジネスが成り立つように知恵を働かす時期にきている」
 こうした苦しいもとで、オンラインライブが希望の星≠ノなると断言する。

「韓国の男性ヒップポップグループ『BTS』(防弾少年団)のオンラインライブは2時間のコンテンツで約65万人が視聴し、20億円の収入をあげた。たった1回でこれだけの収入です。インパクトはものすごい。日本に目を転じればサザンオールスターズ6億5千万円、星野源3億円、それぞれ収入があった。オンラインライブなら演出を変えて、2カ月から3カ月に1回できる。エンタメのビジネスモデルを根底から崩す転機になれる。コロナ禍によってVR(仮想現実)ゴーグルを装着すれば配信されたコンサートの臨場感を味わえるといったテクノロジーの発展と共にオンラインライブという有望ビジネスの誕生が速まった。そのマーケット規模は大きくなる可能性を秘めている」
 あるライブ・エンタメ市場調査では、5年後に占めるオンラインライブは市場の10%を超えるそうだ。
橋詰雅博
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2020年08月26日

【おすすめ本】野田正彰『社会と精神のゆらぎから』─権威や偏見に抗い、苦しむ人々に寄り添う精神医学を築く=山田寿彦(元毎日新聞記者)

 社会と人間の精神を物理的にゆらぎ合う共振の関係としてとらえた本書は、精神病理学的分析手法による、社会の歪みを徹底的に批判する精神医学を切り開いた、その到達点を示唆している。著者の出身地高知県の地元紙に寄稿した連載をまとめた回想記である。
 著者は社会と人間への洞察を欠いた既成の精神医学・医療を根底から否定し、その作り直しをライフワークとしてきた。
 15年間の臨床現場における医療改革の闘い、それに続く評論・執筆活動から生まれた、ノンフィクション文学の形態を取った社会批評は権力を痛打するだけではなく、市民の側の思考停止にも厳しい批判を向けてきた。

 「野田精神医学」(勝手に呼ばせてもらう)は、文献の渉猟と徹底した取材、時にはニューギニア現地人の精神分析にまで足を運ぶ知力と行動力を基礎として確立された。
 人間の精神とは何か。答えを求める思索の旅路を縦糸に、社会問題との格闘、悲哀を抱える人々への寄り添いを横糸に回想が織りあげられる。
 1944年生まれ。 北大医学部で医学連・青医連の活動家として批判力のインフラを鍛えながら、苦しむ人々に寄り添う精神医学の在り方を考え始める。野田精神医学が、支配層の育成を目的とした旧帝大の中にあって、「自由・平等・博愛」のクラーク精神を持つ稀有な学府から始まったのは偶然ではないだろう。
 一人の精神科医が「自分はこう生きてきた」と振り返る書物が、さて、あなたはどう生きてきた(いる)のか、どう社会のことを考えてきたのかと問いかけているように思えるのは、本書が哲学の書となりえていることが大きな理由だろう。(講談社1600円)
「社会と精神のゆらぎから」.jpg
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2020年08月23日

【今週の風考計】8.23─国債乱発! コロナ後にくる財政破綻の危機

コロナ感染拡大による経済の停滞・混乱は深刻さを増し、倒産や失業は増える一方だ。今年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、年率換算で−27.8%、戦後最悪のマイナス幅となった。世界を見ても今年の経済成長率は−5%、落ち込みは「大恐慌以来最悪」になるという。

一方で、株価は上昇を続け「コロナ長者」まで生まれている。実体経済とかけ離れた“危うい株高”を支えているのは何か。安倍政権の国債乱発と日本銀行・黒田東彦総裁による国債「買い支え」策にある。市場には「経済が悪化しても日銀が支えてくれる」との期待があるからだ。
 もともと日銀は、国債の買い付けが禁止されている。ただし特別の事由がある場合、国会の議決を経たときは許されている。この「禁じ手」を使って、日銀は国債を無制限に買い続けている。
証券会社が利子もつかない国債を買うのは、金利が上がった際には、「日銀トレード」という日銀への転売で、利ざやが稼げるからという。
 加えて日銀は上場会社の投資信託(ETF)を年間12兆円も購入し、社債の買い入れ枠も3倍に増やし、株価の下落を食い止めている。
 この安倍・黒田二人三脚の「財政ファイナンス」が、株価の下支えをしているのだ。

いまや日銀は「通貨の番人」として「政府からの自立」という矜持や使命まで投げ捨て、せっせと市場を通じて国債を大量に購入し、政府の借金を肩代わりする組織となり下がった。
 2020年度に発行する新規国債だけ見ても、過去最大の90兆円になる。国の歳出額の半分以上が国債で賄われている。世界各国も国債を発行しているが、国内総生産(GDP)の40%前後にとどまる。だが日本は突出、なんとGDPを大きく上回る120%も発行する異常な事態だ。
その国債を日銀が買ってくれるのだから鬼に金棒、国債が「打ち出の小槌」となっている。加えてコロナ感染「第2波」のまっただ中にいる現在、人々の生活を支える給付金や休業補償などへの再対応が急がれ、政府の国債発行や日銀の国債「買い支え」の弊害を指摘する声は、ほとんどない。

国債は、歳入不足の穴埋めに発行する国の借金証書。現在、借金額は1千兆円、驚異的な水準に達している。赤ちゃんから老人まで、国民一人あたり900万円の借金をしている勘定だ。いつ借金を返すのか、何ら明らかにされていない。
しかも日銀が、国債1千兆円の半分500兆円を所有している。日銀こけたら、国債もパー、国家財政の破綻へと行き着く。2009年ギリシャ危機の悲劇を、将来世代へおっかぶせる無責任は許されない。
 政府のコロナ対策の補正予算58兆円にも“厳しい目”が必要になる。1兆7000億円もの支援事業「Go Toキャンペーン」のズサンさ、不必要・不透明な事業への中止など、野放図な国債発行による財政出動はストップ!(2020/8/23)
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2020年08月19日

【おすすめ本】籠池泰典+赤澤竜也『国策不捜査 「森友事件」の全貌』─国家によるカゴイケ切り捨て、裏で公文書改ざんの暴挙=河野慎二

 森友事件の被告席に立たされた籠池氏が事件の全貌をまとめた。その中で彼は「本物の首謀者が国家の中枢で未だに権勢を振るっている」と、安倍首相に最大級の非難の言葉を浴びせる。
 その原因は、安倍首相の「手のひら返し」にある。首相は園児に教育勅語を暗唱させる籠池氏の特異な幼稚園教育に共鳴し、国有地買収計画に
「神風」を吹かせたが、国会で追及されると一転「国家によるカゴイケ切り捨て」の挙に出た。
 籠池氏は「手のひら返しと決裁文書改ざんは一体のもの」と喝破。「安倍官邸は公文書を改ざんさせ、官僚に国会でウソをつかせ、議会を毀損した」と首相の罪状≠告発する。
 彼は「国家は言葉で成り立つ」との考えのもとで「憲法、法令、統計、決済文書など、公的な言葉に信頼を置くがゆえ、議員に権限を付託する」と指摘。「言葉をないがしろにする人間に、国家にとって最も崇高な言葉である『憲法』を語る資格があるのか」と、安倍改憲をこき下ろす。

 また検察にも厳しい批判の目を向ける。検察内部には、立件すべき理由があるのに、政治的思惑に基づき、「不起訴ありき」という前提で立件を見送る「国策不捜査」方針がまかり通っていると指摘する。
 実際、森友事件は籠池氏の詐欺事件に矮小化され、国の背任容疑や公文書改ざん問題は闇に葬られた。彼は「公訴権を濫用し、政治権力の犬に成り下がった特捜部は即刻廃止すべきだ」とも、主張している。
 さらに「この国の報道機関のあり方が、いまほど問われている時はない」と指摘しつつ、「希望は捨てていない」と述べ、メディアへの批判と期待に力を込める。(文藝春秋1700円)
「国策不捜査」.jpg
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2020年08月16日

【今週の風考計】8.16─リムパックから馬毛島へ─「積極的平和主義」の欺瞞

◆戦後75年、「終戦の日」戦没者追悼式での安倍首相の式辞には、戦争への「深い反省」はない。さらに、これまで盛り込まれていた「歴史と向き合う」趣旨の文言まで削除してしまった。加えたのが「積極的平和主義」なる文字。この正体がクセモノダ。

◆15日が明けるや否や自衛隊と米軍の合同軍事演習が始まる。「リムパック2020」だ。17日から31日まで、米国ハワイ沖で行われる。世界的なコロナ感染拡大を踏まえ、中止に傾いていたのが、米海軍への安倍政権の強力な働きかけで開催されることとなった。
◆日本からは、海上自衛隊のヘリコプター空母「いせ」とイージス駆逐艦「あしがら」に加え、搭載航空機2機、隊員約550人が参加し、対空戦、対水上戦、対潜戦訓練などを行う。しかしコロナの影響は甚大で、実施期間も3分の1の2週間に短縮され、参加国も10か国を下回り3分の1となる。
 自衛隊員のコロナ感染不安も募る。さらに肝心の米海軍にしても、演習の中心となる航空母艦が参加しない。それでも「積極的平和主義」の実践に、自衛隊を参加させたい狙いが透けて見える。

◆「リムパック」参加だけではない。防衛省は鹿児島県・種子島から西12キロほど離れた東シナ海上の馬毛島に新基地を作ると公表した。米軍空母に艦載する戦闘機の離着陸訓練を行うため、馬毛島に滑走路2本を新設し、かつ自衛隊基地の施設配置案も提示した。
 自衛隊員150〜200人の常駐を前提に、F35B戦闘機や輸送機オスプレイの訓練を想定している。
 8月中にも地元説明会を開く予定で、秋にはアクセス評価の手続きに入り、早期着工を目指す。工期は4年程度を見込み、早ければ6年後には米軍と自衛隊との共同訓練が始まる。
 この米軍空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)とは、地上の滑走路を甲板に見立てて、空母からの離着陸をスムーズに行う訓練である。今から9年前、太平洋の硫黄島で実施している米軍のFCLPを、馬毛島に移す共同文書が交わされたことに始まる。

◆昨年11月、トランプ大統領にせかされたのか、安倍政権は馬毛島の大部分を所有し、かつ島内での違法な開発・森林伐採が指摘されている会社と、急きょ評価額45億円の3倍を超える160億円で買収合意した。
 これまた「森友学園への国有地払い下げ」の逆バージョンばりに、なぜ3倍も高い買収額、すなわち国民の税金を支払ったのか、その算定根拠や経過は闇のまま。

◆国会も開かずダンマリ、安倍政権の無責任体質は底なしだ。コロナだけではない。辺野古新基地の海底にある軟弱基盤へのズサンな対応といい、秋田と山口での「イージス・アショア」の配備撤回、敵基地攻撃能力の保有を検討するなど、説明責任を果たさず、地方自治をないがしろにするのは許されない。
 しかも「積極的平和主義」なるフレーズで、憲法にも関わる国の安全保障政策を決めるなど、思い上がりも甚だしい。(2020/8/16)
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2020年08月14日

【焦点】<文春オンライン>月間4億超PV その秘密を編集長が語った=橋詰雅博

 一般社団法人「電子出版制作・流通協議会」(電流協)が実施している「第3回電流協アワード2020年受賞者が語る」が8月7日、オンライン中継された。デジタル展開に積極的だったとして特別賞に選ばれたのが『文春オンライン』だ。初代編集長・竹田直弘さん(47)は「3年前の2017年に始まった最初の月は600万PVでした。いまでは4億PVを超える月もあります。出版社のニュースサイトではナンバー1です。ライバルと目されている『東洋経済オンライン』は2億PVですから、だいぶ引き離している」と胸を張った。
  竹田さんは、3年間で月間PVを飛躍的に伸ばした主な理由を3つ挙げた。

 一つめは自社の媒体を有効活用することだ。
「とかく編集者はウエブ上で新しいことをやる場合、新しい何かをしなければと意識しすぎてしまう。僕も最初はそうでしたが、それをあらため伝統がある『週刊文春』や『月刊文藝春秋』で力のあるいい記事を有効に活用すれば活路が開けると考えました。当初は、それらの記事を宣伝するつもりで『文春オンライン』に載せましたが、オンラインのPVが大きく上がったことで、雑誌の売り上げアップにも貢献できたと思います。今は発売前日の水曜日に『週刊文春』のスクープを含め強力な記事3本を要約して載せています」
 二つめがPVという数字に真剣に向き合うこと。
「いいものをつくれば利益につながるという編集者特有の固定観念を捨てました。目の前のPVの数字をいかにあげるかに集中した。そのためデジタル向けに見出しや記事を変えるなどをしている。変えるに当たっては、担当編集者を尊重しながら社内調整しています」
 三つめは何かを決める重要な会議は全員参加が原則だ。
「編集者もそうでない人も出席します。編集者以外の人が記事に口出すのはOKです。社内でこういうやり方の会議をしているところはなかなかないですよ」

 こうして月間PVを3億とか4億に伸ばし、それに伴い広告量が増大、その結果、大きな利益をあげている。
橋詰雅博
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2020年08月12日

【’20緑陰図書─私のおすすめ】 コロナ禍で表出した差別の構造=武田砂鉄(ライター)

武田砂鉄.jpg 現在の政権は、次々と不祥事を起こしながらも、次の不祥事を起こすことで、一つ前の不祥事をメディアや国民に忘れてもらうという強引な政権運営を続けてきた。
 だが、政府の顔色を窺うわけではない新型コロナウイルスの猛勢は、日本社会の様々な問題点を一気に表出させた。「アフターコロナ」などと題した議論も盛んだが、コロナ以前から抱えていた問題が、コロナによって浮き彫りになったという着眼が必要ではないか。
 沖縄の米軍基地では、多くのコロナウイルス感染者が生じたにもかかわらず、その詳細は明かされず、政府はいつも通りアメリカの言うことに従った。阿部岳『ルポ沖縄 国家の暴力 米軍新基地建設と「高江165日」の真実』(朝日文庫)で、人権をないがしろにするアメリカ政府、そして日本政府の暴力性を改めて知ることができる。
 そこに「(高江の抗議活動の)中核は、はっきり言います。中国の工作員です」(百田尚樹)と根も葉も無いことを言い切って喝采を浴びる物書きが加わる。沖縄に押し付ける構図が変わらない。変えようとしない人たちがいるからだ。

 コロナで働き方が変わり、「おうちにいよう」などと生温いメッセージが繰り返されたが、とりわけ子供を育てながら働く女性たちの環境が激変した。「リモートワークでよろしく」と宣言するのは簡単だが、実際に切り替えるのは容易ではない。
 小林美希『ルポ 保育格差』(岩波新書)は、いま子育ての現場が直面する差し迫った危機を知らせる。様々な家族形態で、様々な育て方がある、ということさえ理解しようとしない政治が、現場の軋みに拍車をかける。
 アメリカを中心に、黒人差別に対する抗議運動が膨れ上がった。1980年代、様々な黒人女性の声を聞き取った藤本和子『塩を食う女たち 聞書・北米の黒人女性』を再読すると、変わらぬ差別構造が見えてきた。
「ルポ沖縄」.jpg
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2020年08月09日

【今週の風考計】8.9─見上げてごらん、コロナ禍の夏の夜の天空を。

この5日、明るい星のように光る球体が、19時45分ごろ西の低空から浮かびあがり、3分後の49分には南西45度の天空で最高点に達し、19時51分ごろ南の低空へ移動し消えた。わずか6分のドラマを、東京郊外の自宅の2階ベランダから、孫と一緒に見つめた。
 地上から約400kmの上空に建設された実験施設・国際宇宙ステーション(ISS)が、地球を周回する光跡である。ISSはサッカー場くらいの大きさを持ち、約90分で地球を一周している。残念ながら我がカメラでは、その光る球体を撮ることができなかった。

天空に関心が及ぶこの1週間、6日の広島・9日の長崎に投下された原爆を思い、「キノコ雲」と「黒い雨」の怖ろしさを噛みしめる。
 75年前の8月6日午前8時15分、米軍が広島市にウラン235原子爆弾を投下。上空 580mで爆発、市街3分の2を破壊し56万人が被爆、年末までに14万人が死亡した。
 そして3日後の8月9日午前11時2分、米軍は長崎市にプルトニウム239原子爆弾を投下。上空 500mで爆発、市域は半分が破壊され、年末までに7万人が死亡した。
 唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器禁止条約の批准すらしない。核保有国では核軍拡が進む中、「橋渡し」などの詭弁で逃げるとは何事か。

35年前の8月12日午後6時56分、日本航空123便が御巣鷹山に墜落、乗客乗員520人が死亡、生存者4人。事故は、ボーイング社による後部圧力隔壁の修理が不完全なため損壊し、操縦ができなくなり墜落したといわれる。だが今もなお事故原因や墜落への疑問・謎は尽きない。
 今年の8月12日は深夜から13日の未明にかけて、北東の空にペルセウス座流星群が放射状に流れ星を光らせる。哀悼の光だろう。
また16年前の8月13日、宜野湾市の沖縄国際大学構内に、米軍普天間飛行場に所属するCH53D大型輸送ヘリが墜落・炎上した。飛散したヘリの破片は多くの民家や車両などに被害を与えたが、死者が出なかったのは奇跡というほかない。
 いまだに米軍ヘリや戦闘機の不時着・炎上・部品落下などの事故が、後を絶たない。重大な問題は、事故現場が日本の民間地にもかかわらず、日本の捜査権が及ばない、まさに「治外法権」がのさばっている実態にある。

コロナ禍の暑い夏、天空を見上げながら、「キノコ雲」や山のかなたに消えた機影、そして落ちてくる米軍機や部品に思いを広げる。そうだ! これらは自然災害じゃない、まさに人災だ! その現実のむごさに、鳥肌が立つ。(2020/8/9)
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2020年08月05日

【‘20緑陰図書─私のおすすめ】 大地の上に立つ民衆の一人として生きる=渡辺一枝(作家)

渡辺一枝.jpg 1990年代から「グローバル化」がしきりに言われ、一方でナショナリズムに喚起された国民国家論が声高に叫ばれるようになってきている。その危険性がコロナ禍で一層鮮明になった時に読んだ3冊を通し私は「国家」は虚構であり日本政府発行の旅券を私が持つのは、便宜上のことでしかないと改めて思う。
 奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(亜紀書房)は、ボルネオ島サラワク州をフィールドにした著者のエッセイだ。マレーシアは小学校が義務教育だが、プナン人は学校の存在意義を感じず学校教育は定着しない。それは我々の社会での「不登校」とは次元の違う話だ。剥き出しの自然に向き合う中で、困難を乗り越え知恵を紡ぎ、物の見方ややり方を築いてきた森の民は、私たちに異なる生の可能性を示唆しているのではないか。
 熱帯の森で狩猟を生業にするプナン人と長期にわたり継続的に交流してきた著者は、プナン人は私たちには「あって当たり前」の反省や感謝の念が無いが、それは単に彼らの生き方が私たちと異なるからということでしかないという。

 原発事故後の福島を伝える本は数多いが、自分史を交えての飯館村の歴史、事故で破壊された暮らし、国や行政、東電との闘い、避難生活と生活再建の道を、地に足がついた著者の言葉で克明に丁寧に記録した菅野晢『全村避難を生きる』(言叢社)は「農の本質」は種を蒔き、収穫して喜びを分かちあうことで、そのためには土地がなければならないと、国家の論理ではなく民衆の論理として強く説く。
 もう一冊、本橋成一『世界はたくさん、人類はみな他人』(かもがわ出版)は、5歳の時に東京大空襲を体験し、長じて筑豊や賭場など日本の市井の人々を、またチェルノブイリやイラクなど世界を写し撮ってきた写真家による、笹川良一が喧伝した「世界は一家、人類はみな兄弟」に対する強烈なアンチテーゼだ。
 私は、大地の上に立つ民衆の一人として生きていきたい。
「ありがとうもごめんなさいも…」.jpg
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2020年08月02日

【今週の風考計】8.2─米国が求める<ジャガイモ協定>は拒否せよ!

コロナ禍の中、家での飲食が多くなった昨今、ご飯のおかずは肉ジャガ、酒のつまみにポテサラ、TVを見ながらポテチと、ジャガイモをお供にすることが増えた。それにしても長梅雨・日照不足により野菜が高騰、ジャガイモ1個で100円とは恐れ入る。
 そんなところに「生食用バレイショ 米国が輸入解禁要求」という見出しに目がいった。「赤旗」(8/1付)の4面最下段である。紙智子参院議員と農水省とのやり取りを読んで、にわかに興味を覚え、少し調べてみた。

まずは「生食用バレイショ」が気になる。「バレイショ」は「馬鈴薯」だと気づく。ジャガイモの形が馬につける鈴に似ていることから名づけられたという。だが「生食用」が分からない。
 ジャガイモには生食用と加工用があるのだ。料理や自家製コロッケに使うジャガイモが生食用で「男爵」や「メークイン」、筆者の好きな「インカのめざめ」などがある。加工用ジャガイモは主にポテトチップスに使い、「トヨシロ」や「スノーデン」などの種類があるそうだ。
これら日本のジャガイモ総生産量は240万トン、消費量は1人1年あたり25s、世界平均で32.4s、ベラルーシは171.2kgだから意外に少ない。

ジャガイモは連作ができない。生育が悪くなるうえに病害や寄生虫が発生しやすくなる。とくにジャガイモシロシストセンチュウにかかると、広く伝染し深刻な被害に遭う。このセンチュウは地中で増殖し、10年以上も生存し続け根絶が難しい。
そのため日本では、植物防疫法の指定種苗とされ、検疫を受けていないジャガイモの直接持ち込みは禁止とし、1950年以降、ジャガイモがかかるシロシストセンチュウが米国で発生していることを理由に、米国産の生食用ジャガイモの輸入を禁止してきた。この間にも米国産ジャガイモの輸入をめぐる攻防は続き、押し込まれる事態が進んできた。
ついに2017年9月、安倍政権は米国トランプ大統領の圧力に負け、アイダホ州産の加工用ジャガイモの輸入を、シロシストセンチュウ侵入リスクの低下を理由に解禁した。

さらに米国はこの3月末、生食用のジャガイモまで輸入解禁を求める要請を日本政府にしてきたのだ。もし輸入を認めれば、ジャガイモの国内生産への影響やシロシストセンチュウの流入リスクなど、計り知れない被害が出るのは明らかだ。
 ジャガイモ生産者だけでなく消費者・国民に知らせず、トランプ大統領の再選目当ての支持者向け<ジャガイモ協定>に屈服するのは断じて許されない。(2020/8/2)
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2020年07月29日

【焦点】佐川再喚問を求める署名13万筆を提出 ウヤムヤ許さず 市民団体の活発な活動つづく=橋詰雅博

 森友事件で財務省の公文書改ざんの中心人物の佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での再喚問を求める署名約13万筆が、森友事件を追及する野党合同チーム座長・川内博史衆院議員(立民)に6月中旬に手渡された。
 この署名活動は事件の口火を切った大阪府豊中市の木村真市議らがつくった市民団体「森友学園問題を考える会」が昨年10月から始めた。本来は4月に川内議員に渡す予定だったが、コロナ禍のため実現できなかった。ただ、署名募集期間が結果的に伸びたため署名は13万筆を超えた。
 「森友学園問題を考える会」ニュース7月号で同会は、こう訴えている。
〈国会では残念ながら、森友問題を「終わった話」として片づけようとする自民・公明・維新が圧倒的多数を占めており、追及を続けようという野党は少数に過ぎません。私たち市民が「森友学園問題は終わっていない!」「うやむやのまま幕引きは許されない!」という声をあげ続けないと、国会の中だけではどうにもなりません。引き続き、「モリ・カケ・サクラ」に象徴される政治と税金の私物化、ウソ・隠蔽・改ざんの安倍政権の責任を追及していきましょう!〉
 同会は毎月第2木曜18時から豊中市内各駅前、第4木曜17時30分から自殺した赤木俊夫さんが職員として勤めていた近畿財務局前で、それぞれ街頭アピール≠行っている。
橋詰雅博
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2020年07月26日

【今週の風考計】7.26─「陸・海・空」から宇宙へ拡大するミサイル防衛の怖さ

★政府は、4500億円もの巨費を投ずる迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を断念した。設置予定の秋田県からの強い反対に加え、検討すらしていなかったブースター落下の危険、さらにこれを統御する追加改良への疑問が募り、すでに米国企業に支払った200億円は戻らないのを承知で決断した。
 しかし自民党と安倍政権は転んでも只では起きない。ミサイル防衛を巡り「敵基地攻撃能力」の保有や「陸・海・空」のみならず宇宙にまで広げる軍事計画へと、議論を加速させている。9月にも国家安全保障会議(NSC)で方針をまとめるという。
★計画断念に至る経緯も検証せず、いきなり「敵基地攻撃能力」の保有に奔るとは呆れる。自民党内からは「自衛反撃能力」と言い換え、「専守防衛」の範囲内と強弁し、本質を隠ぺいする姑息な動きも強まっている。

★とりわけ北朝鮮の軍事動向に対応する議論は、危険きわまりない。北朝鮮の弾頭ミサイルは日本全域を射程に収め、発射台つき車両に搭載のうえ地下施設に収容されている。
 すでに数百発は保有し、短時間で発射できるよう実践配備している。さらにミサイルの種別や運用方法も多様化し、同時発射能力や奇襲能力などを高めているという。
 日本による「敵基地攻撃能力」の保有が、北朝鮮のミサイル発射を抑止する保障など一つもない。かえって日朝間の緊張を高め戦争誘発へと導きかねない。
★来年3月には海上自衛隊イージス艦8隻の態勢が整う。防衛省は、さらに2隻増やす検討に入った。日本海に2隻配置し展開すれば、日本のほぼ全域に飛来する北朝鮮からの弾道ミサイルを迎撃できるという。本当かいな。
 しかも2隻で計4千億円の建造費と600人の乗組員が必要となる。コロナ第2波の襲来で未曾有の規模の財政支出が必至、かつ景気低迷が続く中で、さらなる予算計上が許されるのか。訓練も含め600人の乗組員の確保だって、ただでさえ自衛隊員の募集がままならない中で、本当に可能か。

★防衛省は、さらに中国海軍の尖閣諸島への接近など、中国の軍事攻勢に神経をとがらせている。中国は日本を射程に収める弾道ミサイルの増強や宇宙空間での軍拡、マッハ5を超える極超音速ミサイル兵器の開発に傾注している。
 そこで防衛省は、コロナで緊急事態宣言が出されている5月18日、航空自衛隊に部隊員20人の「宇宙作戦隊」を創設した。東京・府中基地を拠点に、将来100人態勢を目指し、昨年末に発足した米国の「宇宙軍」と連携を強めている。
★背景には宇宙空間に広がる中国・ロシアの軍事的脅威がある。航空自衛隊「宇宙作戦隊」が取り組む、人工衛星の防衛や衛星キラーおよび発射ミサイルの早期探知などは、宇宙空間で展開される米・ロ・中の軍事作戦に巻き込まれる危険は大きい。
 いや防衛省は積極的に、電磁波を使って他国の衛星通信を妨げる装備の開発や日本独自の宇宙監視衛星の打ち上げすら計画している。安全保障の基本方針である「専守防衛」を踏み外すことに、つながりかねない。
★安倍首相に問う、コロナ禍の中、1か月以上も記者会見すら開かず、国民の前から雲隠れしている陰で、憲法「九条」をぶち壊す策動をしているとは、どういう神経か。(2020/7/26)
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2020年07月22日

【おすすめ本】渡辺一枝『聞き書き 南相馬』─3・11以後の福島に寄り添い、ひとりひとりの肉声を掬いあげる=鈴木耕(編集者)

 言葉が生きている。切なくて重い言葉が。人間の生を語る言葉が、こんなに切ないものであっていいはずがない。しかし、それを聞き取って記しておかなければ、生そのものが残らない。だから著者は、黙って耳を傾け記す。本書は「3・11」に衝撃を受けた作家が被災地へ通いつめ、心を開いて聞き続け、そして書き綴った真摯な記録である。
 たくさんの人たちが死んだ。たくさんの人たちが家を失った。そしてたくさんの人たちが病んだ。多くの人が「気の毒な人に寄り添う」などと簡単に言う。だが住んでいた共同体をなくし、よりどころを失った人たちの復活は、“寄り添う”ことでなしうるか。著者は結論を出さない。「理解した」などとは言わない、ひとりひとりの肉声を、静かに聞いてゆくだけだ。
 ペットに援けられた人、パチンコ屋に行くしかない人、酒に逃げる人、仮設住宅の中で黙り込む人、親族を亡くし、悪夢にうなされる人…。だがみんな、生きるために何かにすがり、生きる方法を探している。やがて人は「生き甲斐づくり」の種を蒔く。そこに救いはある。

 広島に、長崎に、そして沖縄に、思いを寄せてきた著者が、福島を我がこととして捉えられか、自問して辿り着いたのが、“通う” ことだった。「南相馬のビジネスホテル六角」を拠点に、まずボランティアとしての活動を始める。通いつめるうちに、ホテルの主人の大留隆雄さんと親しくなり、大留さんは「この人、東京から来たんだけど、あんたの話を聞かせてやって」と訪ねる先々で頼み込む。やがて著者は、ひとりひとりの物語を忘れないために、伝えなければと思う。読んでいて胸が詰まった。(新日本出版社1700円)
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2020年07月19日

【今週の風考計】7.19─コロナ第2波のなか「Go Toトラベル」強行の愚

「東京外し」でコロナが収まるの? 経済が活性化するの? 「Go Toトラベル」が「Go Toトラル」に陥るのが関の山。政府はコロナ第2波が急拡大しているさなか、1か月も前倒しのうえ22日から始める。あるネット調査では「今はどの地域でも実施すべきではない」が81%を占める。

東京を除外したからといって、コロナ禍が解消されるわけじゃない。東京のコロナ新規感染者数は、この17日には1日当たり過去最多の293人。この数字に注目が集まるが、日本全国に目を向ければ、直近の1日当たり新規感染者数は662人、4月10日の600人を超えている。
今もなお首都圏や地方の都市部を中心に感染が広がっている。夜の街でのクラスター(感染集団)発生に加え、エピセンター(感染集積地)まで形成されている。かつ感染者の半分近くが感染経路不明とくるから恐ろしい。
 コロナ感染の不安を抱え、行く側も受け入れる側も疑心暗鬼での観光旅行なんて、消費喚起どころか、名所を楽しく歩くこともままならない。

4月7日に閣議決定した「Go Toキャンペーン」は、「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」に実施するとされていた。感染が収まってもいない状況で、1兆3500億円もの税金を投入して「Go Toトラベル」を始めること自体が大間違い、即刻中止すべきだ。
 もともと「Go Toキャンペーン」は、官邸の<アベトモ補佐官>が発想し、経産省や財務省の<安倍ライン>で練り上げられたシロモノ。まさに安倍政権の側近官僚の手で、1兆7000億円もの巨額予算が、費用対効果の点検もなく計上されたのである。
感染を防ぎながら、経済を回す状況をつくり出すには、まずPCR検査を大規模に実施し、感染者の把握、隔離・療養に全力を挙げ、職場や学校・家庭での感染リスクを低くするのが先決だ。
 コロナ第2波が来て、東京の医療現場は逼迫の状況を加速させている。軽症者の宿泊施設の確保もままならない。まずそこへの集中した支援、資金援助も含めた対策が緊急ではないか。

いま世界はコロナ感染が、米国・ブラジル・インドなどで急拡大し、感染者は1400万人、死者は59万人を突破。1日の新規感染者は23万7千人に上る。「パンデミック」は深刻化の一途をたどっている。
 日本は「間違った方向に」舵を切っている。世界から「マスク2枚と10万円の国」と揶揄されるうえに、さらに「Go Toトラベル」などで騒いでいる時ではない。日本も全世界の英知に参加・協力して、コロナ感染症の対策に全力を挙げるときだ。(2020/7/19)
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2020年07月15日

【焦点】黒人世帯の資産は白人世帯の13分の1!―ピケティ理論℃vい出す=橋詰雅博

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が7月4日に行った第1回オンライン講演は、「黒人が殺される国 アメリカの深層」がテーマだった。話したのは近刊『アメリカ白人が少数派になる日 「2045年問題」と新たな人種戦争』(かもがわ出版)の著者でジャーナリスト・矢部武さん。アメリカの社会、政治、経済を約40年間ウオッチしている矢部さんは、アメリカの根深い黒人差別問題などを平易に解説してくれた。
 講演の中で、白人と黒人との経済的な格差が大きいことを指摘。世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」(PRC)が2014年の国勢調査をもとにつくった調査によると、黒人世帯の所得中央値は約4万3300ドル(約465万円)、白人世帯は約7万1300ドルで、白人世帯は黒人世帯の1・6倍以上収入が多い。
 また、資産保有額の中央値(2013年)では、白人世帯は14万4200ドル(約1546万円)で、黒人世帯1万1200ドルの約13倍もの資産を所有していることになる。黒人世帯の保有額が圧倒的に少ないのは、黒人は長い間差別され、土地・建物を所有することや、その購入資金も借りることが禁止されていたことも関係している。ということは子どもらがもらえる相続財産があまりないのだ。

 ここで思い出したのは、高額経済本(日本では約6千円)にもかかわらず300万部売れた世界的なベストセラー『21世紀の資本』(みすず書房)だ。著者のフランス経済学者トマ・ピケティは、こう分析した。相続財産に恵まれた富裕層は、投資によって不労所得を稼ぎ、政府の減税の恩恵を受ける、その一方では資金に余裕がない人は、いくら働いても富裕層との格差は開き、縮まらない。つまり相続財産の多寡が人生を決める。
 アメリカの白人と黒人の資産保有額の格差は、このピケティ理論≠ェピタリと当てはまる。しかし、白人が少数派になる2045年以降、白人と黒人の立場は逆転するかもしれない。
橋詰雅博
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2020年07月12日

【今週の風考計】7.12─大雨が続く中、一輪のバラとダンディと宮沢賢治

この1週間、降り続いた雨が小止みとなり、家の周りの花々を見てきてほしいと妻にせっつかれ、重い腰をあげた。
 まずはベランダの手すりにかけたプランターを眺めると、アイビーゼラニウムが赤や白の房状の花を元気に広げている。枯れた花殻を摘み取る。レトリスに絡む朝顔は紫の大輪を、誇らしく5つも葉の陰から浮かびあがらせている。

庭に下りてバラに目を凝らせば、バラの若い葉裏に黒い1センチほどのシャクトリムシが付いている。コンチクショウとつぶやきながら、ワリバシで摘まんではサンダルの足で踏みつぶす。
 これは「ヨトウガ」の幼虫で、新芽は食いつぶし、蕾だって中を通り抜けながら食べるので、花が咲くと穴が等間隔に開いて、無残な姿になっている。頭にくる。
3年前に河津町のバガテル・バラ園で購入した「伊豆の踊り子」が、輝くような黄色の花弁を開く。ピンクの大輪「プリンセス・ドゥ・モナコ」や名前は忘れたが白いバラも開花している。ベゴニアやマリーゴールドも色鮮やかだ。
 小さな鉢に植えた赤いミニバラの中から、一輪の花が咲く一枝をハサミで切り、部屋に戻って備前焼の小さな一輪挿しの花瓶に投げ入れる。テレビ台の前の床には、これまた紫色のちっこい花をつけたセントポーリアの鉢がある。やっと腰を下ろし、テーブルの上に広げた朝刊のまわりが、いやに明るく見える。

さて紙面に目を通しながら聴く今日のCDは、ヴァンサン・ダンディ「フランスの山人の歌による交響曲」OP 25、デュトワ指揮・モントリオール交響楽団(DECCA430 278-2)である。コロナ禍の中、毎朝、適当に選んでクラシックを聴く。
 ダンディが毎年夏を過ごした、フランス中部山岳地方セヴェンヌの山々を望む土地ペリエで耳にした牧歌が、主題に充てられている交響曲。35歳の時に作った独奏ピアノが入る珍しい曲だ。ホルンやフルートなど管楽器が多彩に使われ、さわやかなメロディが心地よい。
どこかで聞き覚えのあるメロディ、気になって調べてみると、4年前に亡くなった富田勲の「イーハトーヴ交響曲」(DENON COGO62)、まさに宮沢賢治へのオマージュの中で、多く使われているのが分かった。
 筆者には「フランスの山人の歌による交響曲」の第3楽章が、とりわけ印象に残っているので、「イーハトーヴ交響曲」にある、宮沢賢治作詞・作曲の<剣舞/星めぐりの歌>を聞くと、オオそっくりだと声が出てしまう。

それにしても宮沢賢治という作家は多才である。自ら楽曲づくりも手掛け、作詞は25曲以上、うち8つは作曲もしているとは驚きだ。ダンディの交響曲だって聞いていたに違いない。富田勲の「イーハトーヴ交響曲」には、宮沢賢治の作詞・作曲が3つ入っている。聴いてほしい。
 さらに付け加えれば、賢治は旅好きだった。梯久美子『サガレン』(KADOKAWA) は、宮沢賢治が亡き妹トシの魂を探して、サハリン(樺太)を旅する姿を丁寧に追っている。(2020/7/12)
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2020年07月09日

【焦点】トランプ大統領がコロナ感染拡大を放置する理由=橋詰雅博

 米国の新型コロナウイルス新規感染者数が6月頃からウナギ登りだ。全米50州のうち42州で増加し、近ごろは毎日4万から5万人と高い水準で推移している。にもかかわらずトランプ大統領は、ウイルスは「99%無害」とか「いつかいなくなる」「(感染拡大は)コントロールされている」などと言い放っている。ワシントン・ホスト紙は、大統領の主張は「致命的な妄想だ」と社説で切って捨てた。トランプはなぜ我関せずの姿勢を続けるのか。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が7月4日に開いた「黒人が殺される国 アメリカの深層」をテーマにオンライン講演したジャーナリスト・矢部武さんは、その理由についてこう述べた。
 新型コロナ感染者急増や反黒人差別デモの対応がまずく、トランプは批判を浴びている。このため11月の大統領選に向けた各種世論調査の支持率は、野党・民主党候補のバイデン元副大統領に10ポイント以上差をつけられている。トランプ再選は危うい。ならばひと暴れする。
 「そこでコロナ感染拡大阻止に積極的に取り組まない。感染がどんどん広がり、感染者が今の2倍や3倍になれば、大統領選は延期や中止もあり得ます。混乱が大好きなトランプならば、それを狙っているのではないか。しかし、そうなってもホワイトハウスに居座り続けられるのは任期が切れる来年1月までですが……。大統領が不在となった場合、民主党のペロシー下院議長が代行を務めます」(矢部さん)

 また、大統領選が実施されてバイデンが勝った場合、トランプは難癖をつけて選挙無効を主張するシナリオも考えられる。彼のメイン支持者である白人をそそのかし、武装市民≠ェホワイトハウスを取り囲む可能性もある。トランプ支持の武装市民は200万から300万人いるという。
 一筋縄ではいかないトランプゆえに何を仕掛けてくるか予測不能だ。
 橋詰雅博
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2020年07月05日

【今週の風考計】7.5─香港の人権を抑圧する「国家安全法」は撤回せよ!

◆「デジャヴ」(既視感)に襲われた。1カ月前に米国の黒人男性が警官に首を膝で抑えつけられ、「I can't breathe」と叫んでいる写真と、まさにそっくりのショットが、香港返還記念日にあたる7月1日に、香港市街で撮影されていた。
 警官がヘルメットをかぶりゴーグルをつけ、スネ宛てなどの重装備で、街頭デモに参加していた男性の首根っこを締め上げ、催涙弾ピストルをデモ参加者に向けている衝撃的な写真だ。
 これは先月30日に中国が強行した「香港国家安全維持法」に抗議する、市民デモへの弾圧現場をとらえた写真である。

◆香港の繁華街や銅鑼湾地区で300人が、即座に「国家安全法」違反の容疑で逮捕されている。荷物検査まで行い「香港独立」と書かれた旗を隠し持っていたとの理由で検挙している。
 こうした深刻な現実を招来させたのは、ほかでもない中国・習近平政権だ。これまで香港の「高度な自治」を認めてきた方針を投げ捨て、香港の人々の人権を抑圧するだけでなく、中国自らが国際的に公約した、「一国二制度」をブチ壊す暴挙である。
 香港議会での審議も抜きにして、中国政府が一方的に押し付けるなど、民主的手続きを無視しての強行は断じて許されない。
◆しかも香港政府内に、中国政府の出先機関「国家安全維持公署」を新設し、香港における市民的・政治的行動を取り締まるため、中国当局が直接介入し、弾圧ができるようにするとは、中国自らが署名・支持してきた国際人権規約にも反する。
 66条からなる「香港国家安全維持法」は、国家分裂や政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国の安全に危害を与えたり、威嚇したりする行為を取り締まる。最高刑は終身刑だ。外国人も含め、香港にいる全ての者が処罰の対象だ。裁判の管轄権は中国政府が握る。

◆香港は英国から中国に返還される際、当時のケ小平国家主席は、2047年までの50年間、香港を社会主義化しない「一国二制度」を守ると約束をし、「高度な自治」が保障されてきた。
 香港市民は自らを「香港人」と捉え、とりわけ若者たちの間では自治と司法の独立を誇りに、「雨傘運動」「人間の鎖」など、強圧的な中国への抵抗を繰り広げてきた。
◆しかし、今や一部の活動家グループは「国家安全法」の対象となることを恐れ、香港離脱や活動停止表明をしている。街中でも商店主らが反政府デモを支持するポスターを撤去する動きがみられる。このまま中国に屈服してしまうのか。
 9月6日には香港立法会の議員選挙がある。7月18日から立候補の受け付けが始まる。民主派団体や組織は11日〜12日に候補者を決める予備選を行う。だが選挙管理委員会は、施行された「国家安全法」に反対する候補者は受け付けないのではとの懸念が高まっている。
 それにしても中国政府は、30カ国近くの国際的な批判に対し、「内政干渉」だと一蹴するが、基本的人権を踏みにじっての暴挙には、内政も外政もない。謙虚に耳を傾け香港への「国家安全法」は撤回すべきだ。(2020/7/5)
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2020年07月02日

【おすすめ本】矢部 武『アメリカ白人が少数派になる日 「2045年問題」と新たな人種戦争』─人種差別という感染症 「白人至上主義」が行き着く先=山田順(ジャーナリスト)

本書を手にしたとき、アメリカは「コロナ禍」の真っ最中だった。だから、このテーマは著者が長年にわたって追い続けたものだけに、惜しいなと思った。
しかし、その後「フロイド事件」(警官による黒人暴行死)が起こり、全米各地で大規模な抗議デモが続いたので、本書のテーマは今もっともタイムリーなものになった。つまり、本書は、いま真っ先に読むべき本だ。11月の米国大統領選を考えるうえでも、必読の1冊だ。

 人種差別。これは捉え方によっては、新型コロナウイルス以上に人間を蝕む感染症である。この感染症にアメリカは400年以上にわたって悩まされてきた。公民権法ができて半世紀も経つというのに、いまだに差別は続いている。
 著者は、70年代にアメリカに留学し、以来ずっとアメリカ人とアメリカ社会、その“映し鏡”としての日本人と日本社会を見つめてきた。私は著者と同じ世代なので、いつも著者の見方に共感してきた。編集者時代は著者の本を編集させてもらい「多文化主義」を巡り意見交換したこともある。
 もし、多文化主義という人類の理想社会を実現させるとしたら、それは「自由の国」アメリカ以外にない。また、人種差別はアメリカだけの問題ではない。アメリカに「白人至上主義」があるように、日本にも「日本人至上主義」がある。

 本書に詳述されているように、2045年、白人は人口優位性を失う。その前までにアメリカは変われるのか? トランプのような「白人至上主義者」が、あと4年も大統領を続けられるのか? その答を本書から読み取ってほしい。(かもがわ出版1800円)
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2020年06月28日

【今週の風考計】6.28─「BLACK LIVES MATTER」を深く考えるための2冊の本

米国の黒人男性ジョージ・フロイドさんが、20ドルのニセ紙幣を使ったとの疑いで、白人警官に暴行され、死亡した事件から25日で1カ月。
 事件を機に、「黒人の命は20ドルの価値しかないのか?」と起ちあがった抗議デモは、全米50州1700を越える都市に拡大した。差別撤廃や警察の組織改革を訴え、奴隷制など歴史認識の再考も迫る広範な反差別運動に発展している。
 黒人差別解消を求める公民権運動が広がった1950〜60年代以来の規模に膨れあがり、いまや「BLACK LIVES MATTER」を掲げるデモは、欧州やアジアなどにも波及し、国際的なうねりとなった。

米国における黒人差別は、米国社会が宿す根深い腫瘍。南北戦争後の1865年、黒人は奴隷の軛から解放されたとはいえ、「KKK」などの「白人至上主義」組織による<黒人リンチ>が1950年代まで公然と行われてきた。
 木に吊るされて焼き殺されたり、遺体をバラバラに切断されたり、しかも暴徒たちはその遺体の破片を「戦利品」として、持ち帰ったというから恐ろしい。1877年から1950年代の間に、米国南部12州で4084人がリンチで殺害されたことが判明している。
おぞましい<黒人リンチ>の歴史を経て、やっと1964年に差別禁止の公民権法が成立し、黒人は政治制度としては平等の権利を獲得した。しかし実態は安い賃金奴隷という、新たな搾取の罠に陥る犠牲に追い込まれただけである。今もなお白人との格差は歴然とし、深刻さは増している。

警察の暴力を記録する団体の調査によると、2019年に警官に殺された市民は1098人。そのうち白人が406人で37%、黒人が259人で24%という。米国の人口に占める白人の割合は60%、黒人は13%という人口比を考えれば、警官の黒人に対する殺害率は極めて高い。
 刑務所に収容されている囚人の数にしても、人口10万人あたりでは、黒人1501人、ヒスパニック797人、白人268人。これも黒人が白人の5.6倍と異常なほど突出している。マリフアナ所持で逮捕される率は、白人1人に対し黒人4人というデータもある。 警察の捜査や取り締まりは、確実に肌の色に基づいていると言ってよい。

なぜそうなっているのか。矢部武『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)と渡辺靖『白人ナショナリズム』(中公新書)が、きわめて明快に述べている。
前書は、2045年を境に米国全土で白人の占める割合が50%を切り、白人が少数者になるという怯えのあるところに、黒人初のオバマ大統領が誕生し、米国に根深くはびこる「白人至上主義」が「炎上」し、「白人の米国第一主義」を掲げるトランプ大統領を誕生させた、と分析する。
後書は、さらに「白人至上主義」を唱える「オルトライト」(新極右)というキーワードを軸に、米国社会の潮流を解明する。<ハイル・トランプ!>などとナチス流の敬礼でトランプ大統領を祝福するリチャード・B・スペンサーが、12年前に立ちあげた運動である。
 今や米国の白人の6%近く、約1100万人が「オルトライト」に共鳴している。共和党を排外的な国粋主義政党に変え、スティーブ・バノンやスティーブン・ミラーを送り込み、トランプ政権への影響を強めている。怖いほどに草の根のリアルな動きが迫る。

だが、コロナ禍への対応や黒人暴行死事件への抗議の高まりを受け、トランプ大統領への支持は急降下している。11月の大統領選で勝敗の鍵を握る6州すべてで、民主党のバイデン前副大統領への支持が、6〜11ポイントも上回っている。<哀れ! トランプ>。(2020/6/28)
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