2019年09月22日

【今週の風考計】9.22─気候変動と災害に備える安全への視点

「グローバル気候マーチ」が、20日、日本や世界各地で一斉に取り組まれた。日本では23都道府県で5000人、世界では163か国400万人が参加した。「気候正義が、今ほしい!」と、気候対策を求める活動が世界中に広がっている。

翌日、小泉進次郎環境相が、23日からニューヨークで開催される国連気候行動サミットへ初外遊した。「環境分野において、日本の存在感を発揮していければと思います」と、表情も変えずに意気込みをアピールする。
ちょっと待って、小泉環境相の地元である横須賀では、8月1日から石炭火力発電所の建設工事が始まっている。この事態はどうするの?
サミットを主催するグテーレス国連事務総長も、重要なテーマが石炭火力発電所の削減であり、世界各国に新設中止を要請している。だが日本は国のエネルギー政策の「ベースロード電源の一つ」と位置づけ、100基の石炭火力発電所が稼働し、加えて22基が計画および建設中だ。
菅官房長官の口説きにからめとられ、安倍首相の軍門に下った以上、どこまで二酸化炭素の削減に向け具体的な提案ができるのか。

小泉環境相の後を追うように、千葉県全域に甚大な被害をもたらした台風15号に続き、台風17号「ターファー」が、沖縄から対馬海峡を経て日本海に進み、日本列島全体を襲ってくる。これも気候変動がもたらした台風の進路だ。
集中して襲ってくる台風への対策はどうなっているのか。内閣改造やラグビー観戦もいいが、その前にやることがあるだろう。大規模停電の長期化など被害が拡大している。非常用発電機の拡充など、この現実を解決する手立てを急ぎ講じるべきだ。

26日は、史上最悪の伊勢湾台風が襲来して60年になる。台風は紀伊半島を縦断、伊勢湾に大きな高潮を発生させ、堤防を決壊させた。死者行方不明5098人の被害をもたらした。
地震や台風などの自然災害への対応は、「東電無罪判決」を目の当たりにするにつけ、石橋をたたいても「絶対的安全の確保」を大前提にし、経済的な事情は二の次にして、人命を優先する対策をとるべきだ。この教訓を忘れてはならない。(2019/9/22)
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2019年09月19日

【おすすめ本】山崎雅弘『歴史戦と思想戦 歴史問題の読み解き方』─右派が説く「歴史戦」の中身を追い、ルーツは陸軍省の戦前思想にありと解く=鈴木耕(編集者)

 本書の著者・山崎雅弘氏には、ほんとうに頭が下がる。なぜか? 私なら吐き気がしてとても読み通せないだろう多くの“クズ本”を懸命に読み込んで、それらをきちんと批判するという作業を行ったことに感心したのだ。苦行だったろうな。

 例えばあの『ニュース女子』で、沖縄辺野古の座り込み現場から数十キロも離れた場所で「もうとても危険でこれ以上近づけない」などと、でたらめレポートをして一躍有名になった井上和彦の「大東亜戦争の真髄」(「正論」2015年4月号)を取り上げ、記事の中のシンガポール・ルポのウソを完膚なきまでに暴く。ケント・ギルバートの著書に示される参考文献は、なぜ日本語の本だけなのか、という謎も解明される。つまり“日本人スタッフ”の存在だ。本人は書いていないらしい。

 だが本書の優れている点は、そんなダメ本批判にあるのではなく、戦前の多くの文献を発掘し、そこから見えてくる「思想戦」と産経新聞や雑誌「正論」などの右翼誌が煽り立てる「歴史戦」とのつながりまでをも明らかにしたことだ。
 これまでの「自虐史観」を覆し、日本人としての誇りを取り戻そう…というのが「歴史戦」の主張だが、実はそのルーツは、戦前の陸軍省軍事調査部による「思想戦」にあるという。まるで新しい概念のように産経などが振り回す「歴史戦」は、実は古ぼけた戦前思想の焼き直しにすぎない点を、文献上から明らかにしていく手つきはまことに鮮やか。
 本来ならSNS上に跋扈するネット右翼諸士にぜひ読んでいただきたい本なのだが、それは無理か(苦笑)。
(集英社新書920円)
「歴史戦と思想戦」.jpg
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2019年09月15日

【今週の風考計】9.15─「嫌韓」をけしかけているのは誰だ!

★この2カ月、ほぼすべてのワイドショーが「嫌韓報道」に狂奔し、韓国ヘイトをあおってきた。武田邦彦・中部大学教授などは、「日本男子も韓国女性を暴行しなけりゃ」(ゴゴスマCBCテレビ)とまで言い募る。元駐韓大使の武藤正敏氏を含め、他のコメンテーターにしても、隣国を罵るヘイト発言を頻発している。
★韓国の「玉ねぎ男」=゙国(チョ・グク)氏をめぐる蓄財疑惑や娘の不正入学スキャンダルを、朝・昼のべつ幕なし、一週間以上も取り上げている。陰に陽に「嫌韓」をあおっているのは間違いない。もういい加減にしたらどうか。

★放送だけに限らない。出版でも<嫌韓炎上商法>が大手を振っている。「週刊ポスト」(9/13号)は「怒りを抑えられない韓国人という病理」、「週刊文春」(9/12号)も、「文在寅の自爆が始まった」、「週刊新潮」(同)も「韓国大統領の『玉ねぎ男』大臣任命強行で検察が法曹を逮捕する日」という特集をやっている。

★こうしたメディア状況や社会の風潮を憂慮し、新聞労連が6日付で<「嫌韓」あおり報道はやめよう>との声明を発表した。大切な視点と提起が込められている。要点を挙げておこう。
<他国への憎悪や差別をあおる報道をやめよう。
 国籍や民族などの属性を一括りにして、「病気」や「犯罪者」といったレッテルを貼る差別主義者に手を貸すのはもうやめよう。(中略)
「国益」や「ナショナリズム」が幅をきかせ、真実を伝える報道が封じられた末に、悲惨な結果を招いた戦前の過ちを繰り返してはならない。そして、時流に抗うどころか、商業主義でナショナリズムをあおり立てていった報道の罪を忘れてはならない>

★メディアは、視聴率稼ぎや販売部数増を狙って、韓国ヘイトに血道をあげ、「玉ねぎ男」スキャンダルの追っかけに走る前に、わが国の足元にある消費税10%増税、年金問題、さらには内密にされている日米経済交渉の中身を追跡したらどうか。
 外交面でも、安倍首相はトランプ米大統領にこびへつらい、ロシアのプーチンには騙され続け、中国の習近平からは三等国扱いされている。この体たらくを、もっと追究したらどうか。
★もう8年近く安倍政権が続く。一向に景気は良くならず、生活の苦しさだけがつのる。国民の不満は高まるばかり。それをそらすには、安倍首相お気に入りの学者・作家・タレントらを動員し、韓国バッシングに走るのが得策と踏んでいるのだ。この策謀にメディアが手を貸す愚はない。(2019/9/15)
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2019年09月11日

【おすすめ本】樋口直人ほか著『ネット右翼とは何か』─誤った「ネット右翼」像を覆す実証研究=菅原正伯

 6人の研究者による調査・研究だが、従来の「ネット右翼」像の見直しを迫る成果をあげている。
 たとえば永吉希久子・東北大学大学院准教授は、「3・11後の社会運動」に関する8万人規模の調査に「ネット右翼」の項目を加えて調査した。
その結果、典型的なネット右翼の割合は全体の1・5%にすぎず、積極的な政治参加意識や伝統を重んじる権威主義的な態度などの共通性はあるものの、低学歴で不安定雇用の社会的に孤立した若者層という従来のイメージは、どの統計データからも浮かび上がってこなかった(第1章)。
 
 一方、樋口直人・徳島大学准教授は、2015年の日韓両政府の「慰安婦」合意に対し、安倍首相のフェイスブックに書き込まれた、右から批判する2500件のコメントを調査した。
 そのうち学歴・年齢などが判明した735人分を分析すると、大学卒業者が60%を占め、年齢もほとんどが30代から50代であった。経済的に弱い若者像ではない。
 職業が判明した289人のうち自営・経営者が137人(46%)を占めた点も注目された(第3章)。

 2014年総選挙のさいのネット右翼のツイッター投稿を分析した、ドイツの日本研究者の論文では、ネット右翼は安倍の隠れた応援団となって、botという自動投稿拡散システムを利用し、彼らを実態以上に大きく見せる世論操作的役割をはたしていると分析している(第5章)。
 市井でごく普通に暮らしている人々が、ネット右翼の担い手になりうる社会の到来は、やはり民主主義の一つの危機だと感じた。
(青弓社1600円)
「ネット右翼とは何か」.jpg
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2019年09月08日

【今週の風考計】9.8─重陽の節句から「憲法99条」への想い

重陽の節句には、菊を浮かべた<菊湯>に入り、<菊酒>を酌む習慣がある。山形では食用菊「もってのほか」のおひたしが食卓を飾る。このシャキシャキ感がいい。
もう一つ加えれば、9日は<「チョロQ」の日>。タカラトミーが“チョロチョロ走るキュートな車”をキャッチコピーに1980年に発売。子供にも大人にも広がる大ブームを起こした。わが本棚にも飾ってある。

お隣の朝鮮半島に目を向ければ、9日は朝鮮民主主義人民共和国の建国記念日。朝鮮半島の支配権をめぐる米ソの対立から、38度線以南の地域を単独で収める大韓民国が、1948年8月15日に李承晩を首班として樹立される。朝鮮半島の分断が決定的となった。
これに対抗して38度線以北でも独立運動が加速し、同年9月9日に金日成首相の下で朝鮮民主主義人民共和国が樹立された。しかし、70年以上が経過しても統一の悲願は遠のくばかり。

こうして9と9をたどってくると、日本の憲法9条、さらには99条に目を向けざるを得ない。安倍政権の動きを見るにつけ、今ほど99条が大事な条項に浮上している秋はない。
 日本国憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明記している。
この条文の主語は「公務員」とあるのが重要だ。「公務員」とは国家権力の行使を担う人たちである。だからこそ「国家権力の横暴を戒め、監視と抑制を行う最高の法律である」憲法の99条に、「憲法尊重擁護義務」を明記したのだ。
 この規定は、単に憲法を尊重するだけでなく、違反行為を防ぎ、憲法を守るために積極的に努力することを含んでいる。

ところが行政府の長である内閣総理大臣という「公務員」が、国会の施政演説や自衛隊観閲式の場で、改憲を勧める所信を表明し訓示を垂れるなど、99条に背く憲法違反を平気で行う事態だ。
 もともと内閣は憲法改正の提案や意見表明はできない。憲法の定める三権分立を侵しても、立法府に干渉するという異常さは極まる。さらには参議院本会議で「愚か者、恥を知れ!」と野党を罵る、自民党・女性議員まで入閣するとの噂が立つ第5次安倍改造内閣、さらなる改憲策動を許してはならない。(2019/9/8)
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2019年09月04日

【本をめぐる状況】公共図書館の民間委託 弊害多し 新政策を=守屋龍一

 今夏の猛暑続きは世界規模。中国ではエアコンの効いた場所へ、避暑めあてに移動する「納涼族」が急増したという。書店内もイス持参の子ども連れがいっぱい。書棚の本を持ち出し読みふける映像に衝撃を受けた。
 日本だって地域の図書館は、「納涼族」格好の場所だ。お盆のさなか、住まいの近くにある図書館を訪れると、26℃に調整してある館内は高齢者ばかり。中には居眠りしている老人もいる。
 図書館の利用がこれでいいのか。5月末、岩波ホールで観た映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を想起しながら、考えさせられた。

 6月24日、活字文化議員連盟・公共図書館プロジェクトが、〈公共図書館の将来─「新しい公共」の実現をめざす〉(答申)を発表した。子細に読むと頷ける点が多く、5つの提言についても示唆に富む内容が豊富である。
 まず小泉内閣が進めた規制緩和や民間委託、郵政民営化につながる政策の是非が問われ、公共図書館の運営についても、民間委託の指定管理者制度そのものにメスを入れる、これが緊急テーマに浮上したと指摘する。

 民間委託した図書館の貸出点数の推移を調査したところ、ほぼ2〜3年で貸出率が下がり、5年以上では20〜30%以上も減少し、住民の図書館離れが始まるという。
 さらに民間業者の目先の利益が優先し、長期に図書館の発展を目指す姿勢がない。地域に密着した図書館サービスの提供に向けて、必要不可欠な専門知識のある人材が育成・蓄積されない。
 まずやるべきは図書館職員の劣悪な労働条件の改善だと提言。司書の6割が非正規で働き、賃金は経験を積んだ30代後半でも月13万円。専門職としての能力に応じた十分な賃金を支払い、雇い止め≠見直し、司書が継続して安心して働ける労働環境づくりが必要だと説く。

 いま日本全国にある公共図書館は3300館。そのうち民間業者に指定管理者委託をしているのは640館を超える。なかでも図書館流通センター(TRC)の占有は激しく、333館(全体の65・5%)になる。
 昨年11月、神奈川県海老名市の公共図書館の管理運営を、市は図書館流通センターと「TSUTAYA図書館」(CCC)による合弁事業とし、今後5年間、毎年3・2億円の委託契約を更新。年間の税金投入は市が直営時の2倍となり、市民から批判の声が挙がる。
 公共図書館に納める図書も、いまや図書館流通センターが独占し、〈町の本屋さん〉は、公共図書館という安定した書籍の販売先を失ってしまった。
 図書納入にあたっては地域書店からの直接購入を優先し、装備作業は無償サービスではなく、福祉施設に業務委託して効用促進を図るなど、新たな地域循環型の経済効果を生み出す図書館政策の確立が必要である、と提言する。即実行を願う。
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2019年09月01日

【今週の風考計】9.1─よみがえれ! 蒸気機関車「東村山D51」

蒸気機関車を見ると童心に帰る。お盆休みには<煙を吐いてシュッポ、シュッポ…>田舎へ帰る列車の窓から流れ込む煙の臭いが懐かしい。
 旅をしては秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車に胸躍らす。町を歩いては展示されている新橋駅前や中野紅葉山公園のC11型、川崎・生田緑地公園のD51型機関車に見とれる。まさに日本の文化遺産だ。

ところが筆者の住む東京・東村山市の運動公園に展示されている蒸気機関車「D51684」が、市民には何も知らされないうちに、解体・撤去されることになった。この3日から撤去工事が始まる。
市当局は5月末に目視による劣化度調査を行い、鉄錆が広がり枕木も腐食し、地震で脱輪・横転する危険性が高いとの報告を受け、6月7日の定例市議会で、修繕・維持費も高額になる以上、解体・撤去するとの方針を打ち出した。
 しかも議会最終日の7月2日には、解体工事費2030万円を盛り込んだ補正予算を提案し、審議も説明も不十分なまま自民・公明などの賛成で可決・成立させてしまった。展示されて43年間、市民の見学に供してきたのだが、ペンキの塗り直しは僅か4回。風雨にさらし放置してきた責任は免れない。

さっそく市民有志や全国のSLファンらが連絡を取り、「東村山D51684保存会」を立ち上げた。市民の力で<よみがえれ! 運動公園の機関車>を合言葉に、専門家や研究者の知恵を集め、また解体・撤去を取りやめた自治体の経験を活かしたいと張り切っている。
ちなみに市当局が挙げる修繕費1億2300万円は、「全国で実施されてきたSLの生態保存と比べて、ケタ違いの数字であり、必要のない作業を含め、意図的に膨らませていたとしか考えられません」と、SL修繕専門家は言う。
錆びた表面の薄い鉄板を張り替え、ペンキを塗りなおすなどの工事費は、100万円ほどで対応できるし、ボランティアによる協力やクラウドファンディングにも取り組めば、保存は実現可能だと強調している。解体・撤去の契約が成立しても、解体を取りやめた自治体は数多くある。諦めないで「東村山D51」を復活させよう!(2019/9/1)
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2019年08月30日

【焦点】米国への忖度で「ひろしま」幻の映画に=橋詰雅博

 幻の映画「ひろしま」を10日午後、都内で見た。奇しくも、その日の夜11時、NHKがETV特集「忘れられたひろしま=`8万8千人が演じたあの日=`」(映画はETVで17日深夜放映)を放送した。上映を主催した憲法を考える会が配布した資料と特集番組から「ひろしま」が製作された経緯はこうだ。

 映画の原作は「原爆の子〜ヒロシマの少年少女のうったえ」だ。自らも被ばくした教育学者・長田新が原爆の惨状を残したいと、子供たち105人の被ばく手記を編纂し、本は1951年に出版された。累計27万部売れ、原爆の恐怖と悲惨さを多くの国民に知らせるきっかけになった。手記を寄せた少年が映画化を発案し、日本教職員組合が製作に乗り出す。カンパを募り、総額4千万(現在の貨幣価値で2億5千万)の製作資金を集めた。監督は「きけ、わだつみの声」などの作品を手がけた関川秀雄、助監督に熊井啓、音楽が伊福部昭で、一年後にあの「ゴジラ」のテーマ曲をつくった。当時の人気女優・月丘夢路が主演し、8万8千の市民が出演。これは日本映画史上空前絶後のスケールだ。原爆が投下された直後の広島市を再現した映画は53年に完成した。

 ところが国内上映直前にアクシデントに見舞われる。試写を見た大手映画会社が反米的と配給を拒否。どこがそうなのか、例えば「日本人が新兵器の『モルモット実験にされた』」というセリフを挙げた。

 筆者はこうも感じた。上映時間104分のうち惨状シーンは30分も続き、強烈な印象を受け、見ているうちに原爆を投下した米国に怒りがこみあげてきた。

 映画は自主上映で公開され、55年ベルリン国際映画祭長編映画賞に輝いたが話題にならず、いつの間にか忘れ去られた。現在、原爆のむごさを後世に伝えるため映画関係者が上映会を各地で開いている。しかし、外交、経済、防衛などあらゆる面で日本は、米国への忖度を続けている。

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2019年08月25日

【今週の風考計】8.25─2つのアマゾン、焼失と支配の恐ろしさ

●ブラジル・アマゾンで大規模な森林火災が発生している。年初からの8か月間で7万5000件も発生し、昨年比185%、過去10年で最大となっている。その主要な原因は、同国のボルソナロ政権が、環境保護より開発を優先し、森林を焼いて家畜の放牧地や畑を作るための意図的な放火を奨励したことにあると指摘されている。
●アマゾンの熱帯雨林は二酸化炭素を吸収し地球温暖化を防ぐ大事な要となっている。まさに「地球の肺」とも呼ばれている。だがそこでの火災で、1億7千万トン相当もの二酸化炭素が、逆に排出される事態となった。

●さらに煙はアマゾン地域から3200キロも離れたブラジルの最大都市サンパウロの空を覆い、街は暗闇に包まれる被害も出ている。ヴェネズエラやボリヴィアにも森林火災は広がっている。
●ボルソナロ大統領の怠慢や対策を取らない姿勢に、世界から抗議が起きている。フランスのマクロン大統領は、G7でもアマゾン問題を取り上げると言明し、ついにボルソナロ大統領は、消火活動に軍の出動を指示した。

●さてアマゾン問題は、もう一つある。26日閉幕するG7首脳宣言が見送られる背景には、アマゾンを含む米国の巨大IT企業を対象とした、フランスの「デジタル課税3%」に対し、トランプ大統領が、2020年末のOECD合意を待たずに先行導入するとは何事か、と猛反発した経緯がある。

●なにもアマゾンへの課税だけでなく、大規模通信障害を始め、膨大な個人情報の収集は、きわめて深刻な問題をはらんでいる。アプリを使い検索・閲覧・買い物まですれば、自分の個人情報は全て分析されて、そのデータが時には第3者に売買されるに至る。
●現に、就職情報サイトの大手会社が、学生の閲覧履歴を分析し、内定辞退率の予測データを企業に400万〜500万円で売っていた。知らぬ間に自分が売り買いされている、オソロシイ事態が来ているのだ。

●日本の公正取引委員会も、アマゾンなど巨大IT企業による個人情報の収集に対して新しいガイドラインを策定した。8月にも公表し年内にも実施するという。まずはSNSやネット検索を控えるのも一法だ。(2019/8/25)
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2019年08月18日

【今週の風考計】8.18─『放射能測定マップ』の成果 !

17日、第62回JCJ賞贈賞式が日本プレスセンターで行われた。JCJ大賞は東京新聞の「税を追う」キャンペーンに、またJCJ 賞は4作品に贈られた。なかでも受賞した『図説17都県 放射能測定マップ+読み解き集』(みんなのデータサイト出版)への受賞理由や受賞者スピーチには、感銘を受けた。
「市民による市民の調査が結実した貴重な特筆すべき成果。我々が見習うべき調査報道の在り方を示す」と、選考委員のメンバーが絶賛する。この本に目を通していた筆者には、改めて認識を新たにした。少し、この本の内容を記しておくべきだろう。

「市民放射能測定室」のネットワークである「みんなのデータサイト」のメンバーが、なんと東日本の青森県から静岡県までの17都県3400地点の土壌サンプルを、延べ4000人の協力で採取し、セシウム134とセシウム137の測定結果から得たデータを、地図上に分かり易くカラーでマッピングし、合わせて各県ごとに解説を加えた画期的な本なのだ。

8年前の3・11福島事故以降、政府は放射能汚染の影響を軽視し、その正確な実態調査を怠ってきた。福島事故の放射能汚染の実態は、今どうなっているか、多くの人々が知りたいと思っている。
国は、空間線量を測って公表はしているものの、長期に放射線の影響を調べるには、土壌の汚染調査は欠かせない。だがこの調査はしていない。にもかかわらず避難者へ、帰還するよう煽り急かせている。こうした事態に危うさを感じた上記メンバーが、「避難する人、しない人、すべての人に被ばくを避け、人間らしく生きる権利を!」と、土壌調査プロジェクトをスタートさせ、2014年から3年かけて測定した数値を、2011年3・11時点に合わせて汚染状況を再現した。

この取り組みの趣旨を表現した横断幕を用意し、6人のメンバーとともに登壇した受賞者代表の女性は、こう語る。
「縦10センチ、横20センチ、深さは地上から5センチ下の土壌を測ります。これはロシアのチェルノブイリと同じ方法です。採取法マニュアルを分かりやすく漫画で作り、WEBサイトに公開し多くの人に理解を促しました。根気よく呼びかけていくと、測定ポイントが増えていく喜びは格別。集まった東日本全域のデータの貴重さ、これをいかにわかりやすく市民に伝えるか、ここからみんなの議論が始まりました」

その後、議論を重ねるうちに、必要な食品についてもデータを集め加えることになった。さらにクラウドファンディングを活用し、自分たちの出版社を立ち上げるまでになる。その結果、A4版・オールカラー200ページ、チェルノブイリとの比較も視野に「日本版アトラス」を目指し、20年後・100年後の状況も加えて仕上がった。 ぜひ読んでほしい。発行所:みんなのデータサイト出版 https://minnanods.net/map-book/ (2019/8/18)
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2019年08月16日

【おすすめ本】ダニエル・エルズバーグ著 梓澤 登+若林希和訳『国家機密と良心 私はなぜペンタゴン情報を暴露したか』─広島・長崎への原爆投下─議論した13歳の授業が原点に=猿田佐世(新外交イニシアティブ代表・弁護士)

 エルズバーグは、米国防総省の機密文書「ペンタゴンペーパー」を暴露した本人であり、非暴力活動の重要性を説く人物である。生命や憲法を壊す策動には、「間違っている。続けるならまず私を逮捕してからだ」と声をあげる。
 彼は当時、泥沼化していたベトナム戦争が、すでに手詰まりであると知りながら、米国政府はそれを隠して戦争を続けた。政府高官としてこの7千頁の機密文書作成に関わった内部告発が、米国のベトナム戦争撤退の大きなきっかけを作った。

 なぜそのような行為に出たのか。ここまで確信に支えられた背景を知ることは、今なお新鮮だ。
 彼は、その後、多くの平和活動に没頭するが、そのきっかけの一つは、学校教育であったことも示唆的である。彼が広島・長崎への原爆投下を、他の米国人と違い、非人道的だと捉えたのは、13歳の頃に“原爆製造は世界にとって善いものか”を議論する機会を、授業で与えられたからだった。
 生徒がみな「人類にとって悪い知らせ」という結論を出したその後、1年もしないうちに、米国は原爆を投下する。この衝撃がその後の彼の原点となった。

 また彼は、徴兵拒否活動に取り組む先駆的な人物に励まされ、自分も行動に出たという。今、スノーデン氏が「エルズバーグがいなければ自分はなかった」との発言を誇りにしている。
 彼は秘密保護法が制定され憲法9条をないがしろにする日本政府に、もっと抗う必要性を問う。先駆者である彼の覚悟を知った私たちが、今どう動き次の世代に何を残すのか問われている。(岩波ブックレット740円)
「国家機密と良心」.jpg
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2019年08月11日

【今週の風考計】8.11─脅迫の電凸が、憲法21条をつぶす危機!

<あいちトリエンナーレ2019>の企画展「表現の不自由展・その後」が、脅迫の電凸・メル凸、さらには「撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔する」というテロ予告FAXまで送られる事態に及んで、ついに中止を余儀なくされた事件は、国内外に大きな波紋を呼んでいる。

慰安婦問題に焦点を当てる「平和の少女像」や憲法9条をテーマにした俳句、天皇に関する作品など、各地の美術館から撤去させられた20数点を展示。それを主催側の会長代行である河村たかし名古屋市長自らが、展示場に乗りこんで「日本国民の心を踏みにじる行為」などと言い、展示物を検閲するかのように、自分ひとりの判断で中止を求めるなど言語道断だ。「言論・表現の自由」を保障する憲法21条を踏みにじる、まさに最悪の違憲行為だ。
そのうえ、官邸や一部の政治家が悪のりし、主催団体や自治体などに圧力をかけ、補助金の支給にまで言及するなどして、ヘイトを増長させる。

今回の展示がこのまま中止となれば、「脅せば表現は封印できる」前例となり、同様の事件が急増するのは必定だ。また事件を恐れて萎縮が広がる可能性は高い。芸術家や日本ペンクラブ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、憲法・歴史学者、市民らが抗議と展示の再開を求めて行動に立ちあがっている。

にもかかわらず神戸市が、9〜11月に開催する「現代美術の祭典」の関連行事として、いま渦中にある津田大介氏を加え、3人による鼎談シンポジウムを中止すると決めてしまった。理由は抗議電話ばかりでなく、自民党市議からも津田氏の参加を断るよう要請されていたからだという。
「抗議電話によって催しが潰れることが続けば、気に入らない言論・表現活動は潰してしまおうとする人たちは勢いづき、次のターゲットを探すだろう」(江川紹子)。
 
自治体や主催団体は、とりわけ右派からの動きを忖度し、次なるターゲットにならないよう、物議をかもすような人物やテーマ、企画表現は除外しておこう、という空気が広がるのは目に見えている。こうして日本の「言論・表現の自由」が骨抜きにされていく。それが怖い。(2019/8/11)
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2019年08月08日

【‘19緑陰図書─私のおすすめ】歴史否定や陰謀のパラレル・ワールドを撃つ=倉橋耕平(立命館大学 非常勤講師)

 「自分が信じたいものだけが正しい」。そんな空気が、この四半世紀を貫き、パラレル・ワールドがあるのかとすら思える昨今。それが国の政治の中心にあるとなれば、寒気しかしない。
 山崎雅弘『歴史戦と思想戦』(集英社新書)は、右記の疑問を戦中の「思想戦」と産経新聞が主導する60年代の「歴史戦」との接点を、「トリック」の構造的類似性から解き明かしてくれる良書だ。日本ではなく「大日本帝国」に同一化する右派論壇の論理矛盾を解明する。
 読みどころは、第三、四、五章の展開である。戦前の「思想戦」が国益を損ね、「歴史戦」がいかに戦前の古臭い手法の焼き増し・相似形であるかが如実にわかる。山崎はいう。「『歴史戦』の論客は、戦前と戦中の「大日本帝国」の名誉を回復することではなく、戦後の『日本国』の名誉や国際的信用を高めるような方向へと論戦を転換」するべきだと。全くその通りである。

 そうした大きな流れと対照的に、斉加尚代『教育と愛国』(岩波書店)は、現代の現場レベルで教育・教科書が標的とされる事例を、深く追った労作。毎日放送の『映像‘17』で、同書の内容を見た方も多いだろう。本書は放送の「完全版」である。同作は第55回ギャラクシー賞大賞になったことでも話題を集めた。
 書籍版は、映像にはなかった各種詳細や放送できなかった部分と放送後の反応が描かれていて、その部分だけでも興味深い。個人的には、伊藤隆東大名誉教授の話が克明に記述されている点に価値があると思う。放送では、「(歴史から)学ぶ必要はないんです」「ちゃんとした日本人を作る…左翼ではない」といった言葉が強烈だったが、書籍版ではWGIPの洗脳説、歴史学会=左翼説、日教組=マルクス主義説という、とんでもない右派のロジックの根幹が、そのまま語られている。
 二書が、歴史否定論や陰謀論を放置して善いことなど何もないことを「歴史」が教えてくれる。
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2019年08月04日

【今週の風考計】8.4─制裁が席巻する世界、おかしくないか?

■地球規模の気候変動によって、世界各地で「史上最も暑い月」が続く。そのせいだろうか、制裁・除外・失効・離脱─なんとも知恵のない非生産的な言動や措置が、いま世界各国で乱舞し<いがみ合いのルツボ>と化している。

■まずは日本政府が下した2日の閣議決定である。韓国を輸出管理の優遇対象「ホワイト国」から除外する措置は、日韓両国の関係を根本的な危機に陥れかねない。元徴用工への賠償問題に端を発した日韓外交の頓挫が、韓国民衆の反日感情を煽り、さらに観光・文化・スポーツ交流の中止に加え、東京五輪ボイコットの動きすら出ている。
■8月下旬には更新期限を迎える、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が破棄される可能性も含め、東アジアの安全保障まで不安定となりかねない。北朝鮮のミサイル発射、ロシア・中国の両国軍機による竹島領空侵犯も、日韓対立のスキをついた揺さぶりとみられている。

■続くは米国・トランプ大統領の中国への経済制裁だ。新たに中国の輸出産品3千億ドル(約32兆2千億円)に、9月1日から10%の追加関税を課すと表明。トランプ大統領による対中制裁は1年半に及ぶ。米国の小売業界も衣料品や玩具、家庭用品、パソコンなど日用品の価格が上昇し、家計が圧迫されると反発。加えて原油相場は8%近く下落し、世界経済への影響は計り知れない。

■31年前、米ソ冷戦後の核軍縮の柱となった「中距離核戦力(INF)廃棄条約」すら、2日失効してしまった。「核なき世界」を目指す国際的な軍縮の機運が後退するのは必定だ。現に米国の国防長官が、「中距離ミサイルの開発を加速させる」と表明した。
■被爆から74年、今週8・6広島と8・9長崎を迎える。いま日本政府にとって最も緊急な課題は、核兵器禁止条約に参加し、核兵器廃絶に向けて世界の先頭に立つ、これに尽きる。(2019/8/4)
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2019年07月30日

【清田義昭氏・講演会レポート】「出版ニュース」編集50年─いま出版界に大切なこと

 「出版ニュース」誌と『出版年鑑』で知られる出版ニュース社が今春、惜しまれつつ経営の幕を降ろした。その代表で、長年JCJ賞選考委員も務めた清田義昭さんが、6月28日の出版部会例会で、「『出版ニュース』編集50年―いま出版界に大切なこと」―と題して語った。

 清田さんは冒頭、比較哲学への関心を経てアカデミズムについて考えるようになり、その中で出版への興味を深めて出版ニュース社に入社したことなど、出版界との関わりの原点を振り返った。
 出版ニュース社は当時、国会図書館への納本事務を行っていて、常に新刊に目を通せたこと、入社2年目以降は自分のプランが誌上で実現できるようになったことから、清田氏は、自身と『出版ニュース』の業界ウォッチとしての役割を自覚するようになったという。

出版支える再販制
 出版は、多品種・少量生産で、ときには反公共的な面もある点で、大資本で公共性や公益性を求められる新聞、放送とは、大きく異なる。そこから清田さんは、出版・表現の自由は流通の自由なくしてはありえないことを強く意識するようになった。そして出版・表現の自由は「守る」のではなく「拡げる」ものだと強調。現在も年間出版点数は8万点もあるが、誰もが手がけられるメディアとして当然なことで、それを支えているのが再販制(再販売価格維持制度)と委託販売だと、講演の主題へ話を移した。
 オイルショックでも成長を続けた出版業界に対し、公正取引委員会が、定価の高さ、断裁の無駄、流通の非効率などから出版物の再販制廃止を言い出し、騒然となったのが78年。業界側は、寡占化や流通の困難、中小出版の経営悪化の恐れなどを挙げて反論し、『出版ニュース』も「再販ニュース」と言われるほど、この問題に取り組んだ。
 公取委は結局、2001年に再販制存置を決めたが、電子出版物は除外。同じ著作物でありながらそうなったのは問題だと、清田さんは指摘した。

深刻なアマゾン問題
 出版業界は80年代以降、雑誌が牽引する「雑高書低」の成長を続けたが、1995年がピークで、同年、ウィンドウズ95が発売されたのが大きな分岐点となったと分析。以後、右肩下がりが止まらず、いまや「雑低書高」となり、雑誌の時代は終わった。それが中小書店の経営を打撃し、日書連の書店は3000店にまで減少したこと、2000年のアマゾン参入後は、ポイント制や割引販売、出版社との直接取引などで再販制が事実上、無視されていることを述べた。
 一方、業界は出版社、取次、書店とも対応はバラバラだ。その結果、再販制がなくなればかつて業界が危惧したことが起きるだろう。「制度疲労」といわれるが、どこがなぜ疲労しているのか、運命共同体である業界三者で議論・検証する必要があると主張した。
 国会の活字文化議員連盟の「公共図書館プロジェクト」が出した答申でも、書店の疲弊と図書館問題を取り上げているが、書店は読者と出版界が向き合う最前線であり、その問題を起点に再販制の議論をしていくべきだと提案して、講演を終えた。

 講演後の質疑応答でも再販制とアマゾンが話題となり、この問題の大きさが改めて浮き彫りにされた。  

土居秀夫

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年7月25日号
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2019年07月28日

【今週の風考計】7.28─「祇園祭」に厄除・無病息災への願いを込めて

今年の祇園祭は、創始1150年のアニバーサリーイヤー。平安時代初期の貞観11年(西暦869年)、京の都に疫病が大流行したとき、厄災の除去を祈ったことから始まる。7月1日から1カ月間続く。

念願かなって、7月24日の後祭・山鉾巡行を観にいくことができた。山鉾巡行は、八坂神社に鎮座の牛頭天王を楽しませる神賑わいとしての行事。
蝉が御池通りの街路樹でうるさいほどに鳴いている。この日、朝9時にして32度を超える真夏日。烏丸御池をスタートした「橋弁慶山」を先頭に、山鉾11基が、それぞれの町の伝統と歴史と誇りをかけて、意匠を凝らした金糸銀糸のきらびやかな前・胴・見送り懸けや欄縁が台車に巡らされている。

最重量は12トンにおよび、最高は地上から山鉾のてっぺんまで25メートルになる。巡行に就く者は、武士の正装によるお供が二十数名、鉾に乗る人形方数名、コンチキチンと祇園囃子を奏でる鉦・笛・太鼓の囃子方40人、曳き手46人、そのほか約30人。
とりわけ北観音山、南観音山、掉尾の大船鉾、この3山鉾の壮観さには圧倒された。御池河原町の四つ辻で、竹を敷きならべて車輪を90度回す辻回しの掛け声や一気に力を合わせる曳き手の捌きは見事だ。
続く花傘巡行も2年ぶりの開催。色とりどりの花傘の女性や4花街の芸妓・舞妓が載る屋台、子ども神輿が練り歩く。
翌日、帰宅して玄関口に粽を飾った。厄除けと幸せを祈願する「蘇民将来子孫也 大船鉾」の護符が添えてある。

その後、祇園祭の大切な神事は、山鉾巡行後の夕刻より始まるのを知った。24日夜の「還幸祭」である。17日から四条御旅所に鎮座していた3基の神輿を、白い法被姿の担ぎ手たちが、「ホイット、ホイット」の掛け声とともに、頭上に掲げて激しく揺さぶり、飾り金具の音を響かせながら八坂神社へ戻す神事。
さらに28日夜8時からの神輿洗い。四条大橋の中ほどで鴨川から汲みあげた水で、神輿を清める。31日は疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)。八坂神社内の摂社・疫神社で祇園祭を締めくくる最後の行事。
神前に粟餅を供え、鳥居に茅の輪(ちのわ)を設けて厄除・無病息災を祈願する。茅の輪を八の字を描くように合計3回くぐると、厄除けのご利益があるという。(2019/7/28)
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【おすすめ本】松岡哲平『沖縄と核』─核の島♂ォ縄への変貌を明かし、米海兵隊が想定した中国への核攻撃=菅原正伯

 本書は、NHKテレビ番組を書籍化したものだが、海兵隊の移駐が沖縄を核の島≠ノ変貌させる過程をリアルにとらえた秀作である。

 1953年、朝鮮戦争の対応をめぐってアイゼンハワー大統領は「緊急時の使用に備えて、核兵器を沖縄に配備する」ことを決定した。伊江島では「低高度爆撃法」という核爆弾投下訓練を実施する爆撃場が作られ、島民の家が焼かれた。
 54年末からは核巡航ミサイルなど18種類の核兵器が沖縄に搬入され、ピーク時の67年には1300発、東アジアで最多の核配備地となった。
それだけではない。98年に発見された海兵隊文書によると、50年代後半、沖縄駐留の米軍は、旧ソ連など敵の侵攻を受けた際に備え、海兵隊が核兵器で自らの基地を破壊することまで計画していた、という。
 この沖縄焦土化′v画は、沖縄戦における日本軍の行動を想起させて、衝撃を与えた。

 本書のハイライトは、死者も出た核ミサイル・ナイキの暴発事故(59年)の究明と、キューバ危機のさい中国各都市に向け発射寸前までいった沖縄の中距離弾道核ミサイル(62年)のことだろう。海兵隊の中国への核攻撃に対してソ連の側も10メガトンの核爆弾(広島型原爆の約七百倍の威力)で反撃してくるという海兵隊の戦慄すべき想定には、言葉もない。
 いまトランプ政権は「使いやすい核兵器」の開発を豪語し、辺野古では海兵隊の最新鋭の出撃基地の建設が強行されている。日本が新たな核持ち込みの危険に直面していることをひしひしと感じないわけにはいかなかった。
(新潮社1800円)
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2019年07月21日

【今週の風考計】7.21─参院選後、すぐに襲ってくる3つの危機

参院選が終わったとたん、安倍首相が封印し、国民の前に明かさなかった安倍・トランプ密約″が暴かれる。日本の「農産物や自動車・サービス」へ、米国から要求される法外な内容を、暗黙に受け入れるという疑惑取引である。
TPPを離脱したトランプ政権が、日本を2国間交渉のFTAに引きずり込み、8月中にも、日本が輸入拡大で大幅に譲歩する日米合意へもっていく狙いだ。24日にはワシントンで日米両国の事務レベル交渉が始まる。

さらにトランプ大統領はイラン包囲網を視野に、「有志連合」構想をブチあげた。19日には日本も含む世界60か国の外交関係者を招いて、非公開の説明会を開いた。ホルムズ海峡の安全確保に向けて、各国は護衛艦や要員の派遣あるいは経済的な支援を選択肢として挙げている。さっそく日本の防衛省が検討に入った。
それにしてもトランプ大統領の「自作自演」ぶりには呆れる。イランとの緊張を高めたのは、イランとの核合意を離脱し、イラン産原油の禁輸報復に加え、戦争ボタンを押す寸前までの冒険をしたトランプ本人にある。その責任はどうなるのか。
日本は25日のフロリダで開かれる、「有志連合」オペレーション検討会議に、どのような顔して参加するのか。大いに気になる

日韓関係も緊張が深まるばかり。日本は徴用工問題と絡めての半導体材料の輸出規制など、韓国への経済制裁がエスカレート、対立は長期化しそうだ。G20大阪サミットで、自由貿易の原則を再確認したばかりなのに、政治的テーマに絡めての経済制裁は「禁じ手」とのそしりは免れない。韓国は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)も再検討カードに入ると示唆する。
徴用工問題は、1965年の日韓基本条約で国家間の請求権は放棄されても、被害者個人の請求権は残っている。日本企業に補償を求める行為は、裁判所の判決でも認められている。この前提で、被害者の名誉や尊厳を回復するため、人道上の解決に向け、両国政府は全力を挙げるべきだ。(2019/7/21)
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2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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2019年07月12日

【おすすめ本】神保太郎著+『世界』編集部編『メディア、お前は戦っているのか メディア批評 2008-2018 』─強権政治とメディアの対応を「集合知」で明かす綿密な記録と分析=吉原 功(明治学院大学名誉教授)

2008年1月に連載が始まった雑誌『世界』の「メディア批評」は11年目に入った。この長期連載の最初の十年を纏めたのが本書。割愛部分はあるが本文だけで500頁を超える大著となった。

連載の執筆者は神保太郎となっているが、実は時代状況とメディアの対応に危機感をもって参集した現役、フリージャーナリストらの集合名である。4人で構成され毎月、何をどのように書くか意見交換し、執筆は二人ずつ隔月に分担しているという。途中で二名が交代しているので、本書の執筆陣は計6名となる。

「集合知」という概念が「まえがき」で強調されている。「『言葉の墓場』のような安倍政権に対抗するには、不可欠だった」と。読み進めると、ジャーナリストたちにこそ、プロとしての「集合知」が欠かせないことが、切実に伝わってきて、本書のタイトルに思いが込められているのに気づく。

本書が対象としているのは、戦後日本を根本的に変質させかねない事態が進行する10年間である。特定秘密保護法、集団的自衛権容認の閣議決定、安全保障関連法など戦争を可能にする法律の制定、改憲に向けての策動、日米同盟という名の対米従属深化、沖縄差別、アベノミクス、消費税、東日本大震災をはじめとする大災害の続発と原発事故、メディアに対する執拗な介入などなど。

これらに対してメディアがどのように報道したかしなかったか、それこそ「集合知」で明らかにしているのが本書だ。メディア関係者はもちろん、大学のテクストとしても活用して欲しい貴重な記録と分析である。(岩波書店3900円)
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2019年07月09日

【私のオピニオン】元徴用工問題に抜け落ちた歴史認識=梅田正己(歴史研究者)

 韓国人の元徴用工への損害賠償問題がこじれて、ついに韓国への輸出に規制がかけられ、韓国経済の大黒柱である半導体の生産が土台から揺らぐ事態となった。
 問題の発端は元徴用工の日本企業に対する賠償請求の訴えと、それを認めた昨秋の韓国最高裁の確定判決である。
 元徴用工の要求の背景には、第二次大戦の末期、日本人の青壮年が根こそぎ軍に召集されたことで欠乏した労働力を補充するため、朝鮮から約70万人の労働者を徴用した歴史的事実がある。人々は賃金を強制貯金させられ、半数以上がそのままとなった。
 元徴用工の要求には正当な根拠がある。しかし日本政府は、1965年の日韓基本条約で請求権問題は個人を含め「完全かつ最終的に解決された」としている。
 だが当時の韓国は軍事独裁国家だった。そのあと甚大な犠牲を払った民主化運動により、韓国は民主主義国家に生まれ変わった。軍事政権下で結ばれた条約の文言を金科玉条としてはねつけるだけでいいのだろうか。
 ドイツもナチス時代に他国民に強制労働をしいたが、2000年、その補償のための基金「記憶・責任・未来」を創設、半分を政府が持ち、残りを企業が負担した。その中にはフォルクスワーゲンやジーメンスも含まれている。
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2019年07月07日

【今週の風考計】7.7─参院選挙の焦点、鋭く深く捉えよう!

安倍1強政治に、審判を下す参議院選挙が始まった。6年半という異例の長期政権の実態を明らかにし、人間の尊厳が大切にされ、希望を持って働き生活できる日本へ、どうすべきか真剣に考えたい。

この間の国会運営は、あまりにも議会制民主主義を無視した、強権・横暴の連続だった。官邸は内閣人事局を通じて各省庁の人事を掌握、官僚による改ざん・忖度が蔓延した。
 森友問題では財務省による公文書改ざん、加計学園問題では「総理の意向」を忖度し、厚労省・総務省では毎月勤労統計の不正が発覚、これらいずれも検証は不十分、説明責任は果たさず、「不都合な事実」の先送りに終始した。
さらに異常なのは、国会での強行採決のオンパレードである。知る権利が侵害される「特定秘密保護法」(2013年12月)、集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年9月)、犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪処罰法」(2017年6月)、残業代ゼロをもくろむ「働き方改革法案」(2018年6月)、カジノ賭博を認める「IR法案」(2018年8月)、外国人労働者の受け入れを拡大する「改定出入国管理法」(2018年12月)などなどだ。

与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらないどころか、首相は批判に耳を貸さず、予算委員会すら開かず、国会を空洞化させて恥じない。自民党国会議員の暴言もきりがない。
会期末に野党が提出した安倍首相問責決議案に対し、参議院の本会議で自民党の三原じゅん子参議院議員は「安倍首相に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、愚か者の所業、恥をしりなさい」と、言い募る。
 自民党の二階俊博幹事長までが、参院選・立候補予定者の激励会で「選挙を頑張ったところに予算をつけるのは当たり前」と、国民の税金による露骨な利益誘導に走る。この議員モラルの崩壊は底なしだ。

さらには野党やメディアを乱心・偏向などと漫画入りで攻撃する、発行元が出所不明の自民党パンフレットを自党の国会議員に各20部も配布。首相の遊説日程まで、街頭の有権者から浴びる叱声を恐れて隠す。
今回の選挙に備え、自民党の党利党略から参議院の議員定数を6つ増やし、そのうち4つは「特定枠」として、選挙運動をしない比例候補者を優先的に当選させる仕組みを作った。そこに自民党は2人を当てた。有権者の審判を仰がないまま、国会議員が誕生する悪法がまかり通る。

重大な関心テーマである老後の生活費が2000万円不足する年金問題も、<年金100年安心・消費税10年無用>などというだけで、根本的な議論から逃げ回っている。ある試算では65歳までに2000万円貯めるには、金利3%として、30歳から毎月2万8千円を充当させなければ不可能という。
しかし2人以上の世帯では貯蓄ゼロが急増、非正規雇用者が300万人も増え、労働者の4割を占める。賃金は上がらず、どうやって毎月3万円近くの原資を捻出できるのか。
 かつ現行のマクロ経済スライドでは7兆円も年金資金が削減される。ならば高額所得者も均等負担をし、負担と給付の総合的な見直しを通して、減らない年金額にするのが緊急テーマとなっている。
少子高齢化が進む上に、6年後の2025年には団塊世代が後期高齢者となり社会保障費の急増は待ったなし。どうするのか。

消費税10%の増税も、2度延期した時よりも経済指標の数字も傾向も悪化しているのに、断行すれば日本経済をメチャクチャになる。改憲どころではない。
10月22日の「天皇即位パレード」は、自民党本部前を通過するコースに変更され、安倍総理、菅官房長官がパレードの車列に加わる。改元「令和」や天皇即位の政治利用も注意が肝心。21日の投票に向け、しっかり政権の動きを見極め、悔いのない1票を行使しよう!(2019/7/7)
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2019年07月05日

【おすすめ本】吉田敏浩『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁 』─米軍のために1都6県の空を明け渡す密室合意の実態に迫る=半田 滋(「東京新聞」論説兼編集委員)

 「横田空域」は東京、神奈川、埼玉、群馬、栃木、福島、新潟、長野、山梨、静岡の1都9県の上空を覆う。高度約2450〜七千メートルの空間を、6段階に分けた巨大な「空の壁」である。
 日本の旅客機は迂回を強いられ、航路は集中、ニアミスの危険や燃料の無駄遣いが強いられる。
 米軍は横田空域を持つことで、横田基地の聖域化を実現させている。オスプレイの配備、パラシュート降下訓練など、やりたい放題だ。都心にある米軍ヘリポートや専用ホテルと連携して日本を支配する最有力な道具となっている。

 著者は横田空域に国内法上の法的根拠はなく、日米の密室協議にもとづく合意があるだけだと喝破する。日本の官僚と在日米軍幹部による協議機関「日米合同委員会」の関与が強く疑われるが、その合意文書や議事録は非公開のため、全貌は闇に包まれている。
 横田基地を離陸した米軍機は北上し、群馬が中心の空域で激しい訓練を繰り返す。その結果、米軍機騒音への苦情が日本一多いのは、米軍基地を持たない群馬、という意外な事実を明かす。
 山積する米軍の問題を解決するどころか譲歩を続け、ついに提供空域以外での訓練も、容認するようになった日本政府。「我関せず」の姿勢は強まる一方だ。
 全国知事会が日米地位協定の見直しや米軍に国内法の適用を求める提言をまとめたのは一条の光明かもしれない。
 本書は、今も続く「日本占領の構図」を解きあかし、解決策の方向性を示す。
(角川新書840円)
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2019年06月30日

【今週の風考計】6.30─「捏造」を免罪する植村裁判 呆れる忖度判決

「植村裁判」とは何か。元朝日新聞記者・植村隆さんが執筆の紹介記事「元朝鮮人従軍慰安婦/重い口開く」(「朝日」大阪版1991年8月11日付)に対し、23年も経過した2014年2月6日号「週刊文春」で、西岡力氏が「事実を捏造して書いた記事」だと執拗に誹謗したのを機に、植村さんへの執拗なバッシングが集中し、かつ家族の命まで危険に晒されたため、やむを得ず2015年1月、法的手段に訴えた事案である。

その「植村裁判」の判決が、26日、言い渡された。傍聴していて、東京地裁103号法廷に響く女性裁判長の<相当性とか真実性とか公益性>とかいう言葉に、何度も首を傾げざるを得なかった。

異動した原克也裁判長に代わって、判決主文を代読しているのだが、被告西岡力氏と文藝春秋の表現と記事は「名誉毀損に該当する」が、その責任は免ぜられるとして請求を棄却したのである。
「理由の要旨」は、<各表現は、公益性を考えて行われ、意見論評の前提としている摘示事実には真実性があり、また真実であると信ずる相当の理由がある、かつ意見ないし論評の域を逸脱したものでもないから、被告は免責される>というのだ。
待てよ、「○○性」の連発だが、その判断はどういう基準でなされたのか。市民感覚からして、納得がいかないモヤモヤ感が堆積していた。その後、植村訴訟東京弁護団や原告・植村隆さんの声明を読んで、疑問が晴れると同時に事の本質について、理解を深めるのに役立った。ここにまとめておきたい。

相手を「捏造」などの激しい表現で非難した場合、その表現や論述に妥当性があり、かつ公益性や真実相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要である。これが、これまでの判決の前提である。
 だが本件の判決には、そのような根拠・資料がないばかりか、植村さんの執筆意図などについて確認取材すらせず、「捏造」と表現した西岡氏の記事を免責する。何事か。
 かつ西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を、勝手に創作して自説を補強していたという。まさに自ら「捏造」行為をしていたことも、法廷で明らかとなった。

なのに、なぜか免責する。「慰安婦問題は解決済み」という政権の姿勢を忖度した判決としか言いようがない。(2019/6/30)
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2019年06月29日

【出版界の動き】幻冬舎・見城社長の変身 「安倍応援団」中心メンバー 権力にすり寄る、その先は……

 幻冬舎は見城徹社長と社員一同の名前で、作家・津原泰水氏へのお詫びを5月23日に自社ホームページに掲載した。ツイッターによる津原氏著作の実売部数さらし≠謝罪したのだ。
 しかし、彼の文庫本の刊行中止について言及も謝罪もない。「著作者の自由と権利を守り、制圧または干渉には排除する」という出版倫理綱領にも反しているのに、その経緯を明かさない幻冬舎の責任は、厳しく問われるべきだ。
 ベストセラーづくりの名物編集者・見城氏が、なぜか安倍晋三首相が第一次政権を放り出した07年以降、安倍応援団≠買って出る。12年9月の自民党総裁選の20日前には、小川榮太郎氏の『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)を刊行、大々的に新聞広告を打って安倍を援護射撃した。

「首相動静」から消失
 さらに自分の知人・友人を安倍首相に引き合わせている。テレビ朝日の早河洋会長(75歳)もその一人。13年3月22日に続き、翌年の7月4日には早河会長、吉田純一社長、見城氏の3人で安倍首相と2時間会食している。
 その見城氏は、07年7月からテレビ朝日の番組審議会委員になり、14年4月には委員長のポストに座る。途端に「首相動静」に見城氏の名前が載らなくなった。時の権力者とべったりの人物が番組審議会委員長となれば、「報道の自由」など守れないという批判への対応に他ならない。

 代わりに16年3月にテレビ朝日が40%出資し、開設したネット放送局AbemaTVを活用する。見城氏が司会する「徹の部屋」(現在、番組中止)を7月に立ち上げる。17年衆院選公示2日前の10月8日の「徹の部屋」に、安倍首相を生出演させた。
 見城氏自ら「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「ハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと太鼓持ち発言≠連発。出版社のトップが総選挙公示直前に安倍ヨイショ≠するのは前代未聞だ。

「アベ友」著作続々
 幻冬舎の出版物に話を戻そう。16年参院選を控えた6月10日、山口敬之氏の『総理』の出版広告が、新聞に大きく掲載された。官邸筋に頼んでレイプ事件をもみ消したアベ友記者≠フ本だ。それ以降、百田尚樹『日本国紀』など、安倍応援団の著書がタイミングよく出版され、安倍政権をバックアップしている。
 恩返しか、安倍首相は昨年末のフェイスブックで〈年末年始はゴルフ、映画鑑賞、読書とゆっくり栄養補給したいと思います。購入したのはこの三冊〉と書き込み、『日本国紀』の画像をアップし、PRに一役買った。

どうする出版界
 出版社が権力者にすり寄ればどうなるか。戦前を思い出してほしい。満州事変勃発を機に、日中戦争に入るや、大政翼賛会による国家総動員体制下で、出版界は「言論・表現の自由」を奪われ、戦意高揚へ全面協力させられた。この苦い教訓を持っているからこそ出版人は「権力からの自立」をめざし努力を重ねてきた。
 にもかかわらず、1950年生まれで「平和憲法」のもとで育ったはずの出版人が、「戦争する国」に突っ走る安倍政権に、これほどまでに擦り寄るとは、恐るべき事態だ。
 この危機的状況にどう立ち向かうか、出版界は問われている。
編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月27日

【焦点】 「38度線」大自然と人との共存計画進行=橋詰雅博

 北緯38度線は朝鮮半島を南北に分断する停戦ラインだ。このラインから南北2`bずつ帯状のエリアは非武装地帯(DMZ=248`b)と呼ばれる緩衝地帯になっている。1953年の停戦後に軍事活動は許されなかったが、300万個ともいわれる地雷が埋められている。このため65年もの長きにわたり人が立ち入れることがなかった。皮肉にも今ではツキノワグマなど101種の絶滅危惧種を含む5057種の生き物がすむ豊かな大地に生まれ変わっている。
 戦争によって生み出されたこの豊かな生態系を守り、後世に手渡そうというプロジェクトがあることはあまり知られていない。そのプロジェクトは「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト) 」で、2014年からスタートしている。立ち上げたのは53年にソウルで生まれた崔在銀さんだ。76年に来日し、東京で華道を学び、草月流と出会う。3代目の家元であり、映画監督の勅使河原宏のアシスタントを務め映画制作など日本で活動した。崔さんは多くの野生動物が生息するDMZの自然と人間との共存をめざし、世界の美術家や建築家などにアイデアを求めてきた。
 それを可視化した展示会「自然の王国」が東京・品川区の原美術館で開かれている。
 同美術館担当者は目玉作品をこう説明する。
 「空中庭園の設置を日本の建築家・坂茂さんが提案しています。DMZに東西南北合わせ全長20`bに及ぶ巨大な計画です。竹のパサージュ(小道)≠設け人の自然への介入を防ぎ、地雷から人を守ります。その一部を2分の1サイズの模型で提示しています。韓国のチョウミンスクさんは発見されたトンネルを活用し、植物の種子や本、フィルムを保存する貯蔵庫のアイデアを公開しています」
 崔さん自身はDMZで使われていた鉄条網を溶かした鉄板を出展した。憎しみは雪のように溶けるという意味を込めている。7月28日まで。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月23日

【今週の風考計】6.23─G20大阪サミット<会議は踊る されど…>?

★28日からのG20大阪サミットを始め、今週は世界各地で国際会議が開かれる。

★25日はアラビア半島の東側・ペルシア湾内にある33の島からなる国バーレーンで、中東和平国際会議が開催される。イスラエルがゴラン高原を<トランプ高原>と改名し、さらに緊張を増長させているパレスチナとの和平をめぐる駆け引きが注目だ。
またホルムズ海峡近くのオマーン湾で、タンカー2隻に加えられた爆撃に関連し、米国とイランの間で軍事行動へエスカレートしかねない危機が募る。会議の行方に世界の眼が集まる。

★26日にはベルギー・ブリュッセルでNATO国防相会議。加盟国のトルコが、ロシア製ミサイル防衛システムの導入を計画している事態に、米国が制裁を科すと警告している。この会議もまた紛糾しそうだ。
★27日、大阪で米中首脳会談が持たれる。米中貿易戦争の行方が占われる。トランプ大統領は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明。いっぽう中国は、米国のハイテク製品に不可欠なレアアースの輸出を、制限するとまでほのめかしている。米国はレアアースの供給を中国に依存しているだけに、頭の痛いアキレス腱となる。

★さて28日、初めて日本が議長国になるG20大阪サミット、「最高のおもてなしでお迎えしましょう」とハッパをかけるが、果たして肝心の世界経済に関する課題や貿易・投資・地球環境・気候・エネルギーなどのテーマについて、どれだけの成果が得られるのか。
★「自由貿易の重要性や貿易摩擦の緩和」に背を向け、保護主義に突っ走る米国トランプ大統領に、NOと言えず、シッポを振るだけの安倍政権では、<会議は踊る、されど進まず>が、正直な結果になるだろう。(2019/6/23)
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2019年06月19日

【お知らせ】JCJ出版部会は下記の内容で講演会を開催、ぜひ参加を!

「出版ニュース」 編集50年
─いま出版界に大切なこと─


75 年の歴史を持つ「出版ニュース」が、休刊の秋を迎えた。
出版界の動きを総合的に捉え、的確な分析や提言など、
出版関係者や愛書家には貴重な雑誌!
編集長・清田義昭さんが、歩んだ軌跡と出版界への思いを語る。

講師 清田義昭 氏 (「出版ニュース」編集長)
日時 6月28日(金) 18時30分開会(18時15分開場)
場所 YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 Tel : 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費 800円(JCJ会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会6・28清田義昭氏の講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2019年06月16日

【今週の風考計】6.16─争点隠して「年金詐欺」に奔る愚の行方

「年金が毎月5.5万円ほど不足するから、老後に備え2000万円貯蓄せよ」―金融庁の報告書が波紋を呼び、「<100年安心の年金>なんて大ウソ」と、怒りの声が安倍政権を直撃している。

しかも5分で読める報告書を、麻生担当大臣は「冒頭部分に一部、目を通しただけで、全体を読んでいるわけではない」と開き直り、あげくに、この報告書は受け取らないという愚挙に出た。
みずから諮問した市場ワーキング・グループが、昨年9月から12回も議論を重ね、「政府の政策スタンス」に沿って、かつ金融庁内部の了承を得てまとめあげた報告書まで、ついに「消してしまう」のだから呆れる。

ネット上は<年金詐欺(笑)ホント、そうだよな>であふれ、「#年金詐欺」というハッシュタグまで作られるほどだ。なかには「2000万円って、麻生さんの1年に使う“飲み代”だろ」―政治資金の使い途から推し量った意見まで、登場してきた。
現に、麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の17年度・政治資金収支報告書によると、有名寿司店に高級和食店、馴染みの会員制サロンなどに支払った、飲食を伴う「会合」費は、1年間だけで計2019万6547円にも及ぶ。
この政治資金の使いみちからして、庶民とはかけ離れた感覚の持ち主である78歳の麻生さん、自分が年金を受給しているかどうかすら「記憶がない」のだから無理もない。

さらに許せないのは、5年ごとに年金の給付水準の長期的な見通しを示す、財政検証の結果を公表しないことだ。従来では6月初めに公表しているのだが、見通しによると約15兆円もの運用損が出るといわれている。参院選の投票に及ぼす影響が大きいから、「公表を参院選後に回す」争点隠しに躍起だ。
昨年の森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんといい、厚労省のデータ統計不正が発覚するなど、「都合の悪いことは全て隠滅・改ざん・破棄し、現場に押しつける」安倍政権の退廃ぶりは極まる。(2019/6/16)
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2019年06月15日

【おすすめ本】佐藤広美『「誇示」する教科書 歴史と道徳をめぐって』─歴史的事実の究明を阻害し、国家への忠誠を煽る危険と狙い=俵 義文(子どもと教科書全国ネット21代表委員)

 まず著者は本書のタイトルについて、「日本の歴史や文化を強く押し出し」「ことさらに誇り、誇示する」教科書と定義する。
具体的には、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の扶桑社版・自由社版と日本教育再生機構の育鵬社版歴史・公民教科書、さらに同機構が作成した日本教科書の中学校道徳教科書が、「誇示する教科書」だと指摘。

 これらの歴史教科書は、「日本のアジア政策の記述から植民地主義を消し去り、アジア諸国に近代化をもたらしたのは日本のアジア政策であった」という考えに立って、日本の侵略や加害、植民地支配を正当化している。
 著者は、この教科書をつくった人々は、「日本の近現代史をパワーゲームに見立てて叙述し」「科学的な歴史研究(歴史的事実の究明)を国家への忠誠と日本人の誇りの涵養という教育目的に従属させる」ものだと批判する。
 また「再生機構」理事長の八木秀次氏が関わった公民教科書と道徳教科書には、「人権が無軌道な子どもを作り出す、人権が家族の絆を脅かす、人権がジェンダー・フリーを煽って女性を不幸にする」と主張するこうした考えが強く反映していると指摘している。

 実は、これら教科書の内容が安倍晋三首相の考えや「教育再生」政策と共通していることを明らかにしている。
 本書の論述の基本は、著者が2003年〜15年に雑誌『教育』などに掲載した論文を基に構成、出版に当たって加筆したものである。
今日の歴史修正主義や「つくる会」系教科書の問題を掘り下げ、採択阻止、安倍教育政策反対の運動にも大いに役立つ好著だ。
(新日本出版社1700円)
「誇示する教科書」.jpg
posted by ロバの耳 at 09:53| Comment(0) | おすすめBOOK | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする