2019年07月14日

【今週の風考計】7.14─いま迫ってくる「報道の自由」への牙

★「報道の自由のための国際会議」が、10日と11日、ロンドンで開催された。100以上の国から閣僚級の代表者や学者、報道関係者など約1500人が参加。サウジアラビア人記者カショギ氏殺害事件やミャンマーでの記者収監など、報道の自由の侵害状況や改善策について意見交換したという。
★だが英国とカナダ政府が主催する会議で、「権力を監視・批判するメディアが報道の自由」を、権力者とともに論ずる居心地の悪さは、ぬぐえなかったと漏らす参加者も多かったという。

★さて「国境なき記者団」の調査によると、昨年、報道によって殺害されたジャーナリストは少なくとも99人、前年より15%増えている。新たに投獄された被害者は348人、人質となった者60人。しかし殺害犯が責任を問われることはほとんどない。
★4月半ばには、2019年の「報道の自由度ランキング」も発表している。180カ国・地域のうち、トップはノルウェー、2位がフィンランド。米国は「報道の自由度」が、初めて「問題あり」に格下げ、「トランプ大統領のフェイク・コメント」やジャーナリストへの敵対的な風潮が要因となり、45位から48位に順位を落とした。

★日本は前年と同じ67位だが、沖縄の米軍基地などを取材するジャーナリストへのバッシング攻撃が指摘されている。とりわけ安倍政権の報道対応が国際的な関心事となり、官邸における新聞記者への質問制限について、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、<日本は報道の自由が憲法で保障されている民主国家だが、時には独裁政権のように振る舞っている>と批判している。
★記事は、これまでの官邸における経過を紹介したうえで、<情報が取得できなくなることを恐れ、多くの記者が当局との対立を避ける中、「日本の報道の自由」にとって東京新聞の女性記者は庶民の英雄になっている>と指摘。
 さらに、記者クラブ制度について、<多くの記者の調査意欲をそぎ、国民が政治について知ることを妨げている>という識者らの声を伝えている。同感だ。映画「新聞記者」がヒットしているのも頷ける。(2019/7/14)
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2019年07月12日

【おすすめ本】神保太郎著+『世界』編集部編『メディア、お前は戦っているのか メディア批評 2008-2018 』─強権政治とメディアの対応を「集合知」で明かす綿密な記録と分析=吉原 功(明治学院大学名誉教授)

2008年1月に連載が始まった雑誌『世界』の「メディア批評」は11年目に入った。この長期連載の最初の十年を纏めたのが本書。割愛部分はあるが本文だけで500頁を超える大著となった。

連載の執筆者は神保太郎となっているが、実は時代状況とメディアの対応に危機感をもって参集した現役、フリージャーナリストらの集合名である。4人で構成され毎月、何をどのように書くか意見交換し、執筆は二人ずつ隔月に分担しているという。途中で二名が交代しているので、本書の執筆陣は計6名となる。

「集合知」という概念が「まえがき」で強調されている。「『言葉の墓場』のような安倍政権に対抗するには、不可欠だった」と。読み進めると、ジャーナリストたちにこそ、プロとしての「集合知」が欠かせないことが、切実に伝わってきて、本書のタイトルに思いが込められているのに気づく。

本書が対象としているのは、戦後日本を根本的に変質させかねない事態が進行する10年間である。特定秘密保護法、集団的自衛権容認の閣議決定、安全保障関連法など戦争を可能にする法律の制定、改憲に向けての策動、日米同盟という名の対米従属深化、沖縄差別、アベノミクス、消費税、東日本大震災をはじめとする大災害の続発と原発事故、メディアに対する執拗な介入などなど。

これらに対してメディアがどのように報道したかしなかったか、それこそ「集合知」で明らかにしているのが本書だ。メディア関係者はもちろん、大学のテクストとしても活用して欲しい貴重な記録と分析である。(岩波書店3900円)
『メディア、お前は戦っているのか』.jpg
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2019年07月09日

【私のオピニオン】元徴用工問題に抜け落ちた歴史認識=梅田正己(歴史研究者)

 韓国人の元徴用工への損害賠償問題がこじれて、ついに韓国への輸出に規制がかけられ、韓国経済の大黒柱である半導体の生産が土台から揺らぐ事態となった。
 問題の発端は元徴用工の日本企業に対する賠償請求の訴えと、それを認めた昨秋の韓国最高裁の確定判決である。
 元徴用工の要求の背景には、第二次大戦の末期、日本人の青壮年が根こそぎ軍に召集されたことで欠乏した労働力を補充するため、朝鮮から約70万人の労働者を徴用した歴史的事実がある。人々は賃金を強制貯金させられ、半数以上がそのままとなった。
 元徴用工の要求には正当な根拠がある。しかし日本政府は、1965年の日韓基本条約で請求権問題は個人を含め「完全かつ最終的に解決された」としている。
 だが当時の韓国は軍事独裁国家だった。そのあと甚大な犠牲を払った民主化運動により、韓国は民主主義国家に生まれ変わった。軍事政権下で結ばれた条約の文言を金科玉条としてはねつけるだけでいいのだろうか。
 ドイツもナチス時代に他国民に強制労働をしいたが、2000年、その補償のための基金「記憶・責任・未来」を創設、半分を政府が持ち、残りを企業が負担した。その中にはフォルクスワーゲンやジーメンスも含まれている。
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2019年07月07日

【今週の風考計】7.7─参院選挙の焦点、鋭く深く捉えよう!

安倍1強政治に、審判を下す参議院選挙が始まった。6年半という異例の長期政権の実態を明らかにし、人間の尊厳が大切にされ、希望を持って働き生活できる日本へ、どうすべきか真剣に考えたい。

この間の国会運営は、あまりにも議会制民主主義を無視した、強権・横暴の連続だった。官邸は内閣人事局を通じて各省庁の人事を掌握、官僚による改ざん・忖度が蔓延した。
 森友問題では財務省による公文書改ざん、加計学園問題では「総理の意向」を忖度し、厚労省・総務省では毎月勤労統計の不正が発覚、これらいずれも検証は不十分、説明責任は果たさず、「不都合な事実」の先送りに終始した。
さらに異常なのは、国会での強行採決のオンパレードである。知る権利が侵害される「特定秘密保護法」(2013年12月)、集団的自衛権の行使を可能にする「安全保障関連法」(2015年9月)、犯罪を計画段階から処罰できる「共謀罪処罰法」(2017年6月)、残業代ゼロをもくろむ「働き方改革法案」(2018年6月)、カジノ賭博を認める「IR法案」(2018年8月)、外国人労働者の受け入れを拡大する「改定出入国管理法」(2018年12月)などなどだ。

与党が圧倒的多数の国会審議は結論ありきで進み、政策論議は深まらないどころか、首相は批判に耳を貸さず、予算委員会すら開かず、国会を空洞化させて恥じない。自民党国会議員の暴言もきりがない。
会期末に野党が提出した安倍首相問責決議案に対し、参議院の本会議で自民党の三原じゅん子参議院議員は「安倍首相に感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、愚か者の所業、恥をしりなさい」と、言い募る。
 自民党の二階俊博幹事長までが、参院選・立候補予定者の激励会で「選挙を頑張ったところに予算をつけるのは当たり前」と、国民の税金による露骨な利益誘導に走る。この議員モラルの崩壊は底なしだ。

さらには野党やメディアを乱心・偏向などと漫画入りで攻撃する、発行元が出所不明の自民党パンフレットを自党の国会議員に各20部も配布。首相の遊説日程まで、街頭の有権者から浴びる叱声を恐れて隠す。
今回の選挙に備え、自民党の党利党略から参議院の議員定数を6つ増やし、そのうち4つは「特定枠」として、選挙運動をしない比例候補者を優先的に当選させる仕組みを作った。そこに自民党は2人を当てた。有権者の審判を仰がないまま、国会議員が誕生する悪法がまかり通る。

重大な関心テーマである老後の生活費が2000万円不足する年金問題も、<年金100年安心・消費税10年無用>などというだけで、根本的な議論から逃げ回っている。ある試算では65歳までに2000万円貯めるには、金利3%として、30歳から毎月2万8千円を充当させなければ不可能という。
しかし2人以上の世帯では貯蓄ゼロが急増、非正規雇用者が300万人も増え、労働者の4割を占める。賃金は上がらず、どうやって毎月3万円近くの原資を捻出できるのか。
 かつ現行のマクロ経済スライドでは7兆円も年金資金が削減される。ならば高額所得者も均等負担をし、負担と給付の総合的な見直しを通して、減らない年金額にするのが緊急テーマとなっている。
少子高齢化が進む上に、6年後の2025年には団塊世代が後期高齢者となり社会保障費の急増は待ったなし。どうするのか。

消費税10%の増税も、2度延期した時よりも経済指標の数字も傾向も悪化しているのに、断行すれば日本経済をメチャクチャになる。改憲どころではない。
10月22日の「天皇即位パレード」は、自民党本部前を通過するコースに変更され、安倍総理、菅官房長官がパレードの車列に加わる。改元「令和」や天皇即位の政治利用も注意が肝心。21日の投票に向け、しっかり政権の動きを見極め、悔いのない1票を行使しよう!(2019/7/7)
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2019年07月05日

【おすすめ本】吉田敏浩『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁 』─米軍のために1都6県の空を明け渡す密室合意の実態に迫る=半田 滋(「東京新聞」論説兼編集委員)

 「横田空域」は東京、神奈川、埼玉、群馬、栃木、福島、新潟、長野、山梨、静岡の1都9県の上空を覆う。高度約2450〜七千メートルの空間を、6段階に分けた巨大な「空の壁」である。
 日本の旅客機は迂回を強いられ、航路は集中、ニアミスの危険や燃料の無駄遣いが強いられる。
 米軍は横田空域を持つことで、横田基地の聖域化を実現させている。オスプレイの配備、パラシュート降下訓練など、やりたい放題だ。都心にある米軍ヘリポートや専用ホテルと連携して日本を支配する最有力な道具となっている。

 著者は横田空域に国内法上の法的根拠はなく、日米の密室協議にもとづく合意があるだけだと喝破する。日本の官僚と在日米軍幹部による協議機関「日米合同委員会」の関与が強く疑われるが、その合意文書や議事録は非公開のため、全貌は闇に包まれている。
 横田基地を離陸した米軍機は北上し、群馬が中心の空域で激しい訓練を繰り返す。その結果、米軍機騒音への苦情が日本一多いのは、米軍基地を持たない群馬、という意外な事実を明かす。
 山積する米軍の問題を解決するどころか譲歩を続け、ついに提供空域以外での訓練も、容認するようになった日本政府。「我関せず」の姿勢は強まる一方だ。
 全国知事会が日米地位協定の見直しや米軍に国内法の適用を求める提言をまとめたのは一条の光明かもしれない。
 本書は、今も続く「日本占領の構図」を解きあかし、解決策の方向性を示す。
(角川新書840円)
『横田空域』.jpg
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2019年06月30日

【今週の風考計】6.30─「捏造」を免罪する植村裁判 呆れる忖度判決

「植村裁判」とは何か。元朝日新聞記者・植村隆さんが執筆の紹介記事「元朝鮮人従軍慰安婦/重い口開く」(「朝日」大阪版1991年8月11日付)に対し、23年も経過した2014年2月6日号「週刊文春」で、西岡力氏が「事実を捏造して書いた記事」だと執拗に誹謗したのを機に、植村さんへの執拗なバッシングが集中し、かつ家族の命まで危険に晒されたため、やむを得ず2015年1月、法的手段に訴えた事案である。

その「植村裁判」の判決が、26日、言い渡された。傍聴していて、東京地裁103号法廷に響く女性裁判長の<相当性とか真実性とか公益性>とかいう言葉に、何度も首を傾げざるを得なかった。

異動した原克也裁判長に代わって、判決主文を代読しているのだが、被告西岡力氏と文藝春秋の表現と記事は「名誉毀損に該当する」が、その責任は免ぜられるとして請求を棄却したのである。
「理由の要旨」は、<各表現は、公益性を考えて行われ、意見論評の前提としている摘示事実には真実性があり、また真実であると信ずる相当の理由がある、かつ意見ないし論評の域を逸脱したものでもないから、被告は免責される>というのだ。
待てよ、「○○性」の連発だが、その判断はどういう基準でなされたのか。市民感覚からして、納得がいかないモヤモヤ感が堆積していた。その後、植村訴訟東京弁護団や原告・植村隆さんの声明を読んで、疑問が晴れると同時に事の本質について、理解を深めるのに役立った。ここにまとめておきたい。

相手を「捏造」などの激しい表現で非難した場合、その表現や論述に妥当性があり、かつ公益性や真実相当性を認めるには、それを裏付ける取材とそこで得られた確実な資料が必要である。これが、これまでの判決の前提である。
 だが本件の判決には、そのような根拠・資料がないばかりか、植村さんの執筆意図などについて確認取材すらせず、「捏造」と表現した西岡氏の記事を免責する。何事か。
 かつ西岡氏自身が、自ら名乗り出た元慰安婦の金学順氏の証言を、勝手に創作して自説を補強していたという。まさに自ら「捏造」行為をしていたことも、法廷で明らかとなった。

なのに、なぜか免責する。「慰安婦問題は解決済み」という政権の姿勢を忖度した判決としか言いようがない。(2019/6/30)
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2019年06月29日

【出版界の動き】幻冬舎・見城社長の変身 「安倍応援団」中心メンバー 権力にすり寄る、その先は……

 幻冬舎は見城徹社長と社員一同の名前で、作家・津原泰水氏へのお詫びを5月23日に自社ホームページに掲載した。ツイッターによる津原氏著作の実売部数さらし≠謝罪したのだ。
 しかし、彼の文庫本の刊行中止について言及も謝罪もない。「著作者の自由と権利を守り、制圧または干渉には排除する」という出版倫理綱領にも反しているのに、その経緯を明かさない幻冬舎の責任は、厳しく問われるべきだ。
 ベストセラーづくりの名物編集者・見城氏が、なぜか安倍晋三首相が第一次政権を放り出した07年以降、安倍応援団≠買って出る。12年9月の自民党総裁選の20日前には、小川榮太郎氏の『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)を刊行、大々的に新聞広告を打って安倍を援護射撃した。

「首相動静」から消失
 さらに自分の知人・友人を安倍首相に引き合わせている。テレビ朝日の早河洋会長(75歳)もその一人。13年3月22日に続き、翌年の7月4日には早河会長、吉田純一社長、見城氏の3人で安倍首相と2時間会食している。
 その見城氏は、07年7月からテレビ朝日の番組審議会委員になり、14年4月には委員長のポストに座る。途端に「首相動静」に見城氏の名前が載らなくなった。時の権力者とべったりの人物が番組審議会委員長となれば、「報道の自由」など守れないという批判への対応に他ならない。

 代わりに16年3月にテレビ朝日が40%出資し、開設したネット放送局AbemaTVを活用する。見城氏が司会する「徹の部屋」(現在、番組中止)を7月に立ち上げる。17年衆院選公示2日前の10月8日の「徹の部屋」に、安倍首相を生出演させた。
 見城氏自ら「日本の国は安倍さんじゃなきゃダメだ」「ハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔ですよ」などと太鼓持ち発言≠連発。出版社のトップが総選挙公示直前に安倍ヨイショ≠するのは前代未聞だ。

「アベ友」著作続々
 幻冬舎の出版物に話を戻そう。16年参院選を控えた6月10日、山口敬之氏の『総理』の出版広告が、新聞に大きく掲載された。官邸筋に頼んでレイプ事件をもみ消したアベ友記者≠フ本だ。それ以降、百田尚樹『日本国紀』など、安倍応援団の著書がタイミングよく出版され、安倍政権をバックアップしている。
 恩返しか、安倍首相は昨年末のフェイスブックで〈年末年始はゴルフ、映画鑑賞、読書とゆっくり栄養補給したいと思います。購入したのはこの三冊〉と書き込み、『日本国紀』の画像をアップし、PRに一役買った。

どうする出版界
 出版社が権力者にすり寄ればどうなるか。戦前を思い出してほしい。満州事変勃発を機に、日中戦争に入るや、大政翼賛会による国家総動員体制下で、出版界は「言論・表現の自由」を奪われ、戦意高揚へ全面協力させられた。この苦い教訓を持っているからこそ出版人は「権力からの自立」をめざし努力を重ねてきた。
 にもかかわらず、1950年生まれで「平和憲法」のもとで育ったはずの出版人が、「戦争する国」に突っ走る安倍政権に、これほどまでに擦り寄るとは、恐るべき事態だ。
 この危機的状況にどう立ち向かうか、出版界は問われている。
編集部

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月27日

【焦点】 「38度線」大自然と人との共存計画進行=橋詰雅博

 北緯38度線は朝鮮半島を南北に分断する停戦ラインだ。このラインから南北2`bずつ帯状のエリアは非武装地帯(DMZ=248`b)と呼ばれる緩衝地帯になっている。1953年の停戦後に軍事活動は許されなかったが、300万個ともいわれる地雷が埋められている。このため65年もの長きにわたり人が立ち入れることがなかった。皮肉にも今ではツキノワグマなど101種の絶滅危惧種を含む5057種の生き物がすむ豊かな大地に生まれ変わっている。
 戦争によって生み出されたこの豊かな生態系を守り、後世に手渡そうというプロジェクトがあることはあまり知られていない。そのプロジェクトは「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト) 」で、2014年からスタートしている。立ち上げたのは53年にソウルで生まれた崔在銀さんだ。76年に来日し、東京で華道を学び、草月流と出会う。3代目の家元であり、映画監督の勅使河原宏のアシスタントを務め映画制作など日本で活動した。崔さんは多くの野生動物が生息するDMZの自然と人間との共存をめざし、世界の美術家や建築家などにアイデアを求めてきた。
 それを可視化した展示会「自然の王国」が東京・品川区の原美術館で開かれている。
 同美術館担当者は目玉作品をこう説明する。
 「空中庭園の設置を日本の建築家・坂茂さんが提案しています。DMZに東西南北合わせ全長20`bに及ぶ巨大な計画です。竹のパサージュ(小道)≠設け人の自然への介入を防ぎ、地雷から人を守ります。その一部を2分の1サイズの模型で提示しています。韓国のチョウミンスクさんは発見されたトンネルを活用し、植物の種子や本、フィルムを保存する貯蔵庫のアイデアを公開しています」
 崔さん自身はDMZで使われていた鉄条網を溶かした鉄板を出展した。憎しみは雪のように溶けるという意味を込めている。7月28日まで。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年6月25日号
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2019年06月23日

【今週の風考計】6.23─G20大阪サミット<会議は踊る されど…>?

★28日からのG20大阪サミットを始め、今週は世界各地で国際会議が開かれる。

★25日はアラビア半島の東側・ペルシア湾内にある33の島からなる国バーレーンで、中東和平国際会議が開催される。イスラエルがゴラン高原を<トランプ高原>と改名し、さらに緊張を増長させているパレスチナとの和平をめぐる駆け引きが注目だ。
またホルムズ海峡近くのオマーン湾で、タンカー2隻に加えられた爆撃に関連し、米国とイランの間で軍事行動へエスカレートしかねない危機が募る。会議の行方に世界の眼が集まる。

★26日にはベルギー・ブリュッセルでNATO国防相会議。加盟国のトルコが、ロシア製ミサイル防衛システムの導入を計画している事態に、米国が制裁を科すと警告している。この会議もまた紛糾しそうだ。
★27日、大阪で米中首脳会談が持たれる。米中貿易戦争の行方が占われる。トランプ大統領は、会談で貿易協議が進展しなければ、中国からの輸入品に追加関税を課すと表明。いっぽう中国は、米国のハイテク製品に不可欠なレアアースの輸出を、制限するとまでほのめかしている。米国はレアアースの供給を中国に依存しているだけに、頭の痛いアキレス腱となる。

★さて28日、初めて日本が議長国になるG20大阪サミット、「最高のおもてなしでお迎えしましょう」とハッパをかけるが、果たして肝心の世界経済に関する課題や貿易・投資・地球環境・気候・エネルギーなどのテーマについて、どれだけの成果が得られるのか。
★「自由貿易の重要性や貿易摩擦の緩和」に背を向け、保護主義に突っ走る米国トランプ大統領に、NOと言えず、シッポを振るだけの安倍政権では、<会議は踊る、されど進まず>が、正直な結果になるだろう。(2019/6/23)
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2019年06月19日

【お知らせ】JCJ出版部会は下記の内容で講演会を開催、ぜひ参加を!

「出版ニュース」 編集50年
─いま出版界に大切なこと─


75 年の歴史を持つ「出版ニュース」が、休刊の秋を迎えた。
出版界の動きを総合的に捉え、的確な分析や提言など、
出版関係者や愛書家には貴重な雑誌!
編集長・清田義昭さんが、歩んだ軌跡と出版界への思いを語る。

講師 清田義昭 氏 (「出版ニュース」編集長)
日時 6月28日(金) 18時30分開会(18時15分開場)
場所 YMCAアジア青少年センター 3階会議室
〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2 - 5 - 5 Tel : 03-3233-0611
アクセス地図 http://www.ayc0208.org/hotel/jp/access-access.html
参加費 800円(JCJ会員・学生500円)
チラシPDF版出版部会6・28清田義昭氏の講演会チラシ(完全版).pdf

日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版部会
〒101-0051千代田区神田神保町1-18-1 千石屋ビル402号
03-3291-6475 fax03-3291-6478
メールアドレス:office@jcj.sakura.ne.jp
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2019年06月16日

【今週の風考計】6.16─争点隠して「年金詐欺」に奔る愚の行方

「年金が毎月5.5万円ほど不足するから、老後に備え2000万円貯蓄せよ」―金融庁の報告書が波紋を呼び、「<100年安心の年金>なんて大ウソ」と、怒りの声が安倍政権を直撃している。

しかも5分で読める報告書を、麻生担当大臣は「冒頭部分に一部、目を通しただけで、全体を読んでいるわけではない」と開き直り、あげくに、この報告書は受け取らないという愚挙に出た。
みずから諮問した市場ワーキング・グループが、昨年9月から12回も議論を重ね、「政府の政策スタンス」に沿って、かつ金融庁内部の了承を得てまとめあげた報告書まで、ついに「消してしまう」のだから呆れる。

ネット上は<年金詐欺(笑)ホント、そうだよな>であふれ、「#年金詐欺」というハッシュタグまで作られるほどだ。なかには「2000万円って、麻生さんの1年に使う“飲み代”だろ」―政治資金の使い途から推し量った意見まで、登場してきた。
現に、麻生氏が代表を務める資金管理団体「素淮会」の17年度・政治資金収支報告書によると、有名寿司店に高級和食店、馴染みの会員制サロンなどに支払った、飲食を伴う「会合」費は、1年間だけで計2019万6547円にも及ぶ。
この政治資金の使いみちからして、庶民とはかけ離れた感覚の持ち主である78歳の麻生さん、自分が年金を受給しているかどうかすら「記憶がない」のだから無理もない。

さらに許せないのは、5年ごとに年金の給付水準の長期的な見通しを示す、財政検証の結果を公表しないことだ。従来では6月初めに公表しているのだが、見通しによると約15兆円もの運用損が出るといわれている。参院選の投票に及ぼす影響が大きいから、「公表を参院選後に回す」争点隠しに躍起だ。
昨年の森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんといい、厚労省のデータ統計不正が発覚するなど、「都合の悪いことは全て隠滅・改ざん・破棄し、現場に押しつける」安倍政権の退廃ぶりは極まる。(2019/6/16)
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2019年06月15日

【おすすめ本】佐藤広美『「誇示」する教科書 歴史と道徳をめぐって』─歴史的事実の究明を阻害し、国家への忠誠を煽る危険と狙い=俵 義文(子どもと教科書全国ネット21代表委員)

 まず著者は本書のタイトルについて、「日本の歴史や文化を強く押し出し」「ことさらに誇り、誇示する」教科書と定義する。
具体的には、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の扶桑社版・自由社版と日本教育再生機構の育鵬社版歴史・公民教科書、さらに同機構が作成した日本教科書の中学校道徳教科書が、「誇示する教科書」だと指摘。

 これらの歴史教科書は、「日本のアジア政策の記述から植民地主義を消し去り、アジア諸国に近代化をもたらしたのは日本のアジア政策であった」という考えに立って、日本の侵略や加害、植民地支配を正当化している。
 著者は、この教科書をつくった人々は、「日本の近現代史をパワーゲームに見立てて叙述し」「科学的な歴史研究(歴史的事実の究明)を国家への忠誠と日本人の誇りの涵養という教育目的に従属させる」ものだと批判する。
 また「再生機構」理事長の八木秀次氏が関わった公民教科書と道徳教科書には、「人権が無軌道な子どもを作り出す、人権が家族の絆を脅かす、人権がジェンダー・フリーを煽って女性を不幸にする」と主張するこうした考えが強く反映していると指摘している。

 実は、これら教科書の内容が安倍晋三首相の考えや「教育再生」政策と共通していることを明らかにしている。
 本書の論述の基本は、著者が2003年〜15年に雑誌『教育』などに掲載した論文を基に構成、出版に当たって加筆したものである。
今日の歴史修正主義や「つくる会」系教科書の問題を掘り下げ、採択阻止、安倍教育政策反対の運動にも大いに役立つ好著だ。
(新日本出版社1700円)
「誇示する教科書」.jpg
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2019年06月09日

【今週の風考計】6.9─「キムリア」3350万円が投じた複雑な波紋

白血病で闘病している競泳女子の池江璃花子選手が、5日、1カ月ぶりに自分の公式サイトを更新し、「先日、数日間の一時退院をしました」と明かした。
「治療は続いており、体調が優れない日もあります。(中略)一日一日を何とか乗り越えています」と綴っている。白血病やリンパ腫の治療に役立つ画期的な新薬「キムリア」の投与は、検討されているのだろうか。早い復帰を願うだけに、いらぬ心配までしてしまう。

この「キムリア」、スイスの製薬会社ノバルティスファーマが開発した特効薬といわれる。だが価格は投与1回で3349万円もする。「キムリア」を使う患者は年間200人ほどといわれ、販売額は約72億円と見込まれる。
5月22日、日本での公的医療保険の対象となった。保険適用になれば、高額の新薬も一定の自己負担で利用できる。「キムリア」の場合、年収370万〜770万円なら自己負担は40万円程度。残りは公的医療保険から支払われる。
これまたノバルティスが開発した「ソルゲンスマ」も、難病の脊髄性筋萎縮症の遺伝子治療薬として、早ければ年内にも日米で承認される見込み。価格は2億3200万円ともいわれる。

それにしても新薬の価格算定をめぐる不透明さはぬぐえず「まるでブラックボックス」との批判が噴出している。
いま日本の年間医療費は42兆円を超える。そのうち7兆7000億円が薬代。がん治療薬の「オプジーボ」など保険適用される高額な薬が年々増えていることも関係している。飲み忘れなどの残薬は、年間500億円ともいわれ、過剰な処方による投薬を減らす対策も必要だ。
合わせて東京新聞のシリーズ<税を追う>が告発する、製薬会社71社で288億円という大学病院や学会への寄付など、「製薬マネー」にも、メスを入れなければならない。

<団塊の世代>が後期高齢者となる2022年以降、ますます医療費の増加に拍車がかかる。この10年で個人が負担する健康保険料は年間38万円が50万円となり、2022年には55万円となる。医療保険制度の抜本的な改善は待ったなし。(2019/6/9)
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2019年06月06日

【おすすめ本】安田浩一×倉橋耕平『歪む社会 歴史修正主義の台頭と虚妄の愛国に抗う』─事実を無視し差別・排外主義に走る右派言説の流れを徹底的に検証!=吉原 功(明治学院大学名誉教授)

 本書は、現場取材をもとに、現代日本に鋭く斬り込む著作を出し続けているジャーナリスト安田浩一さんと、メディア文化論、サブカルチャー論などで斬新な分析をして注目される少壮社会学者倉橋耕平さんの対談を書籍化したものである。
 テーマは「とどまることを知らない」現代日本の右派現象。

 現代右派現象の中で重要な道具となるのはネットだが、ウインドウズ95年が発売された当時は、マスメディアにはない「自由な言論空間」ができるとの期待感が支配的だった。
 同時にこの時期、「新しい教科書を作る会」や「日本会議」が設立され、小林よしのりなどの影響もひろがっていたこと、つまり歴史修正主義の運動化がはじまっていることなどから90年代後半は現代右派にとってエポックメイキングの時となった、そう両者は語っている。

 2000年代に入ってネット右翼が注目されるが、意外とその人数は少ないという。だが政治家や財界と共振し、嫌韓・嫌中本の隆盛に連動している。事実を無視し、差別や排外主義を助長する右派言説が商売になる現代日本なのである。出版界のみならず、新聞や放送などもその影響を受けて腰が引けている。本書はその危険性を多様な側面から警告している。リベラルや左派に有効な対応策を呼びかけつつ、安田さんは次のように書き、本書をまとめている。
 「これ以上、壊されてたまるか。社会も、地域も、そこで暮らす人々も。憎悪の火を囲んで踊りつづける者たちに、私たちはきちんと示さなければならない。真っ当な怒りと、真っ当な情けと、そして冷静な知識を抱えて」と。
(論創社1700円)
『歪む社会』.jpg
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2019年06月02日

【今週の風考計】6.2─<トゥク トゥク トゥク>と働くセミ

★ショーン・タン『セミ』(岸本佐知子訳・河出書房新社)に魅了された。A4変形版32ページの絵本である。表紙を開けると、見返し2頁にわたって、高さがバラバラな墓石を思わせる、蒼い鉛色の積み木が並ぶ。左下に、小さく蝙蝠のような飛形で飛ぶセミが一匹、描かれている。

★続いてページを繰ると、なんと薄みどり色のセミが背広を着て無機質なオフィスで働いている。しかもニンゲンからコケにされ、昇進もせず、17年間ケッキンなし、<トゥク トゥク トゥク>と働いてきた。
★そして定年、送別会もない、セミは高いビルの屋上に行く、そろそろお別れの時間、屋根の縁に立つ。それから一気に10ページにわたって、心を打つドラマが描かれる。
★朱赤で描かれる無数のセミの抜け殻が空を舞う。絵を見ながら、まさにセミの甦り、17年目の新たな出発への飛翔、そんな感動に包まれた。最終ページに、芭蕉の句<閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声>を載せている。

★ショーン・タンは、1974年オーストラリア生まれのマルチ・アーチスト、絵本のみならず彫刻、映画、舞台などで活動を続けている。絵本では『アライバル』ほか、アンデルセン賞をはじめ数々の賞を受賞、作品は世界中で翻訳出版されている。

★実は、彼について知ったのは、つい最近だ。先週末、1万歩ウオーキングがてら、「ちひろ美術館・東京」に立ち寄ったところ、<ショーン・タンの世界展>が併催されていたからである。
★展示されている作品を、まず一巡。そして二巡目で、一つ一つじっくり見入る。なんとも不思議な、奇妙で懐かしい、どこでもないどこかへ連れていってくれる余韻に浸った。すぐに『セミ』とショーン・タン展覧会の公式図録を買い求めた。今も座右において、このコラムを書いている。(2019/6/2)
ショーン・タン「セミ」.jpg
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2019年05月29日

【焦点】 欧州では外国軍管制空域はゼロだ=橋詰雅博

 日本弁護士連合会(日弁連)が主催した「日米地位協定を検証する〜ドイツ・イタリアと比較して〜」と題するシンポジウムが5月11日に弁護士会館2階講堂で開かれた。当日は定員280人の講堂に約400人が参加。日弁連は「こんなに大勢くるとは予想していなかた」とうれしい悲鳴を上げていた。
 パネリストとして琉球新報の島袋良太記者や日弁連基地問題担当の福田護弁護士、沖縄弁護士会の松崎暁史弁護士らと共に沖縄県の池田竹州知事公室長も出席した。沖縄県は駐留米軍活動を対象としたドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス4カ国の地位協定などを調査した報告書を4月に発表した。各国の取材をした池田さんは報告書作成の中心メンバーだ。
 欧州各国への調査動機について池田さんはこう語った。
 「2016年末に名護市でオスプレイが墜落し、翌年10月には東村高江でヘリ不時着炎上事故が起きた。しかし、日米地位協定により米軍が現場を封鎖し、県の事故調査は阻まれた。当時の翁長雄志知事が『日本の米軍専用施設は沖縄に70%集中しているが、残る30%は本土にある。米軍機事故は日本全体の問題。外国はどう対応しているか調査したい』と言ったのがきっかけでした。2年前から調査を開始した」
 日本では米軍が航空管制業務を行う空域があり、特に横田基地管制官が担当する横田空域は有名。新潟県から静岡県まで1都9県に及ぶ広大なエリアだ。欧州の事情はどうなっているのか。
 「航空関係機関のヒアリング調査では、横田空域のような外国軍が占有する空域の存在は確認できませんでした」(池田さん)
 池田さんによると、横田空域や沖縄周辺の20カ所に広がる米軍訓練空域の話を航空関係者にしたら「日本は本当に主権を回復しているのか」と驚いていたという。
 しかも4カ国とも、駐留米軍の活動に対して国内法を適用している。国内法が適用されない日本とは雲泥の差だ。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年5月25日号
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2019年05月26日

【今週の風考計】5.26─15日夜、首相官邸から出た車の駐車場所

新聞に掲載の「首相動静」欄は、しっかり目を通したほうがよい。とりわけ最終行、18時頃からの面会・会食の相手には注意がカンジンだ。
その一例が5月15日の当該欄である。安倍首相は<午後7時30分、公邸、末延吉正東海大教授らと食事。10時6分末延氏ら出る。>と記されている。

末延吉正東海大教授といえば、山口県出身、建設業の御曹司。若い時から安倍晋三と面識があった。1979年に早大卒業後、テレビ朝日に入社。政治部長の時、部下に対する暴力事件で2004年に退職。
 現在はテレビ朝日の<大下容子ワイド!スクランブル>などでコメンテーターを務め、安倍首相を擁護しまくっている、典型的なマスコミ内の政権応援団の一人だ。

だが、ここに名前の載らない人物がいたという。幻冬舎の社長・見城徹氏が同席していた、という告発である。
「本と雑誌の知を再発見する」と謳うニュースサイト<LITERA>の編集部が、2019.05.21 10:55付けでWEBに公開している。
 その追撃取材によると、15日夜10時6分、首相公邸から出てきた車「黒いアルファード」が、渋谷区千駄ヶ谷にある幻冬舎本社の駐車場に停めてあったのを確認し、かつ官邸詰め記者が控えていた車のナンバーと照合したところ、一致したというのである。
首相公邸での15日夜7時30分からの会食に、同席していたもう一人の人物は、見城氏であるのは明らかだという。
 なぜ見城氏の名前だけが「首相動静」から隠されているのか。2014年7月から、彼の名は完全に秘密扱いになっている。その理由の解明が待たれる。

この15日前後は、見城氏にとって<嵐の1週間>となっていた。順に辿ってみたい。
 12日には、映画「空母いぶき」(5月24日公開)に総理大臣役で出演の俳優・佐藤浩市のコメントは、安倍首相を揶揄したものであり、「これは酷い。見過ごせない。」と、見城社長がツイッターで攻撃した。これに百田尚樹氏や阿比留瑠比氏ら安倍応援団と一緒になって、佐藤発言を歪曲して騒ぎが拡大。
4月に幻冬舎から刊行する津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』の文庫版を、突然、出版中止。その背景には、百田尚樹『日本国紀』(幻冬舎)を、コピペ疑惑や事実誤認などについて指摘した津原泰水氏への対抗処置があるとされ、批判が起きていた。15日当日、対応は<訴訟するしかなくなる>と強気のツイートを投稿。
16日、幻冬舎で刊行した津原氏2作品の実売部数までツイッターで公表し、著名な作家たちから、厳しい批判の声が嵐のように巻き起こり、猛抗議を受けていた。
 高橋源一郎氏は、「出版社の社長が、<こいつは売れない作家だ>とばかりに部数をさらしあげるなんていうのは、出版人の風上にもおけない行為である」と、痛烈な苦言を呈した。
17日、テレビ朝日の600回「番組審議会」に委員長として出席。19日、見城社長は深夜にツイッターを閉鎖。20日には、テレビ朝日と藤田晋氏のサイバーエージェントが共同出資して始めたAbemaTVの「徹の部屋」に出演し、「お詫び申し上げます」と謝罪、同番組の終了を宣言した。
 同番組は、見城社長がホストを務める2時間生放送のトーク番組。これまで安倍晋三首相や百田尚樹氏、有本香氏などのメンバーが出演してきた。
23日、幻冬舎の見城徹社長と社員一同の名前で、改めて津原泰水氏へのお詫びを、自社のホームページに掲載した。

しかし、幻冬舎は作家の“実売部数さらし”は謝罪したが、文庫本の刊行中止については、言及も謝罪もない。「表現や出版の自由」を擁護し出版文化を担うはずの出版社が、中止の理由に口を閉ざすのであれば、自ら「表現や出版の自由」を抑圧・封殺したと、批判されてもいたしかたない。

さて、15日の夜7時30分から10時6分までの2時間36分、見城氏は安倍首相と末延吉正氏を交えた会食で、何を話し合ったのか。<謀は密なるを以って良し>を決めこみ、<藪の中>にしていいのだろうか。(2019/5/26)
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2019年05月22日

【おすすめ本】成田龍一『近現代日本史との対話 幕末・維新−戦前編&戦中・戦後−現在編』─国家システムの3区分を軸に民衆の生活や文化の動向まで言及=鈴木耕(編集者)

 「平成最後の〇〇」のフレーズが、TV画面から流れない日はない。多分、この騒ぎは「令和最初の××」に引き継がれる。悪乗りライタ―が「平成史」と題した拙速本を出版するのも時間の問題だろう。そんな本は無視、本書を読んでもらいたい。
本書には元号などほとんど出てこない。歴史を通観するには、元号は邪魔なだけ。新書とはいえ戦前編と現在編2冊を併せると2千ページを超える大著だが、一気読みの面白さは抜群。
 斬新なのは、近現代日本をA・B・Cという国家システムの区分で見ていくという部分にある。すなわち、ATでは明治維新から西南戦争を経て近代国家への萌芽、AUが戦争の時代への国家体制の整備である。
BT―BUでは敗戦を挟んで55年体制による政治と経済、若者の叛乱と東京五輪やオイルショック、そしてCTが冷戦の終わりと阪神淡路大震災、オウム事件、最後にCU(もしくはシステムD)では2011年の東日本大震災と福島原発事故へと詳述していく。
 歴史的事件は意外に淡々と記述するが、特長的なのは文化芸術、世相、流行などの分野に、深く分け入っての叙述だ。文学や演劇、映画、漫画などの大衆文化、さらには新聞・雑誌・TVというマスメディアの功罪まで言及し、庶民とかけ離れた英雄譚や雲上人の記述は、極力抑えられている。女性や家族問題、在日外国人への眼差しまで網羅した一般歴史書は珍しい。
 現在もなお不当な圧政に呻吟する沖縄や福島の現状にも触れているが、それらを支えるのが巻末に記された膨大な資料。『日本コピペ紀』の百田某など本書の著者の爪の垢でも煎じて飲むがいい。(集英社新書1300円・1400円)
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2019年05月19日

【今週の風考計】5.19─市民感覚からズレる裁判官の「常識」

女性に対する“性暴力”への無罪判決が相次いでいる。父親からの性的虐待や泥酔させての準強姦事件などに、どう裁判官は向き合ったのか。市民感覚からのズレの大きさには呆れる。

21日は裁判員裁判が始まって10年になる。9万人という多くの市民が、重大な刑事事件を扱う裁判員裁判に参加してきた。20歳以上の有権者から抽選で選ばれた裁判員6人が裁判官3人と合議で審理にあたる。
もし強姦致傷罪に当たる事件を、裁判員裁判で担当したら、「防御・抵抗することは可能であった」などの理由で、無罪判決が出せただろうか。職業裁判官ならではの矜持、詭弁を弄した法解釈と訴訟テクニック、さらには上昇志向からくる行政への配慮・忖度などが、審理では働きがちである。
そんなことは気にせず、新鮮な気持ちで裁判に向き合える市民の参加は意義が大きい。これまでの書面中心の審理から法廷での証言が重視され、社会常識とかけ離れた判決を出させないうえで、裁判員制度は刑事裁判に大改革をもたらした。

こうした経過を踏まえるとき、元朝鮮人慰安婦をめぐる「植村裁判」についても、触れざるを得ない。いま捏造記者とバッシングされた元朝日新聞記者・植村隆さんの名誉棄損回復裁判は、札幌地裁での不当判決に抗し、札幌高裁で控訴審が行われている。
先月末の第1回口頭弁論で、植村裁判弁護団は、
<櫻井よしこ氏は、1992年ごろ元慰安婦の強制連行体験や境遇に、心を寄せた記事を書きながら、突然22年後になって、明確な根拠を示さずに「人身売買説」を主張し、植村バッシングを始めた。しかも櫻井氏は植村氏への裏付け取材を怠り、また資料の引用や理解で誤りを繰り返している。なのに「捏造」と思いこむ「真実相当性」があるから、名誉棄損に当たらないとする免責判断は、あまりにも公正さを欠き、歴史に残る不当判決だ>
と訴えている。

少なくとも櫻井氏がジャーナリストを標榜する以上、テーマが重大であればあるほど、論評や記事の裏付け取材は、常識も常識。裁判官がこの社会常識すら無視して判決を下すなら、非常識も極まる。(2019/5/19)
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2019年05月17日

【私のオピニオン】代替わり狂騒の裏側で隠された改憲のたくらみ=梅田正己(歴史研究者)

〈「憲法を守り」が令和で「のっとり」に〉
 今年5月3日の「朝日川柳」のトップにあった牧和男さんの作である。お気づきのように、30年前の前天皇の「即位後朝見の儀」での「おことば」では「日本国憲法を守り」とあったのが、今回の新天皇の第一声では「憲法にのっとり」と変わったのをとらえた川柳である。
 この「即位後朝見の儀」は天皇の「国事行為」として「内閣の助言と承認により」(憲法7条)行われた。当然、「お言葉」も閣議決定を経ている。だから先の牧さんの作に続く岩井廣安さんの川柳もこううたっていた。

〈検閲が済んだ「おことば」我ら聴く〉
 この天皇の「即位宣言」に対して安倍首相が述べた「国民代表の辞」にはこんな言葉が散見された。
 「ここに英邁なる天皇陛下から」「日本国憲法にのっとり」「国民統合の象徴として仰ぎ」「誇りある日本の輝かしい未来、人々が美しく心を寄せ合う中で」「令和の御代(みよ)の平安と、皇室の弥栄(いやさか)をお祈り申し上げます」
 弥栄(ますます栄える)などという言葉は初めて聞く若い人が多かったのではないだろうか。戦前は天皇をたたえる際の慣用語だった。「万歳!」の代わりに「弥栄、弥栄、弥栄!」と叫んだりしたのである。
 安倍首相の「悲願」は改憲である。今年の憲法記念日でも「2020年までの改憲の実現」を公言している。だから「英邁なる天皇陛下」に「憲法を守る」と言われてはまずかったのである。
 「のっとり」は漢字では「則り」と書くが、また「乗っ取り」とも書ける。「憲法にのっとり」とした背景には「憲法乗っ取り」の意図が隠されていたと読んでも、あながち的外れとは言えないのではないか。

 あまり報道されていないが、今回の代替わりを前に、政府は4月2日、全国の学校や地方公共団体に対し、国旗掲揚を促すことを閣議決定した。文部科学省はそれを受け、全国の教育委員会に国旗掲揚を通達した。
 国旗国歌をめぐって東京、大阪をはじめ各地の入学式や卒業式でどれほど大量の「目に見えぬ流血」があったか、心ある人にはわかっているはずである。
 その上さらに自民党改憲草案は、現行の日の丸・君が代を単に国旗国歌とすると規定しただけの「国旗国歌法」に、「国民の尊重義務」すなわち強制条項を付け加えている。
 今回の代替わりではメディアを挙げて狂騒曲に舞い踊ったが、その裏ではひそかに改憲の手が打たれていたのである。
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2019年05月15日

【出版部会4月例会】星野 渉氏が講演<いま出版は? 再生への道>

JCJ出版部会恒例の出版界定点観測。4月6日に文化通信編集長・星野渉さんが講演。いま直面する未曾有な出版界の「危機」をめぐり、その実態について分析し、いかに脱却するか、鋭い問題提起を行った。書店、取次、出版社が、それぞれ自分の枠を大きく超え、出版文化の守り手として、真剣な論議が必要だと説く。
下の文字をクリックする↓
https://www.youtube.com/watch?v=fLAmIQzHkt4
いま出版は?.jpg
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2019年05月12日

【今週の風考計】5.12─追加関税25%が世界経済にもたらす弊害

米中での関税制裁をめぐる激しい攻防は、チキンレースの様相を呈してきた。米国は昨年7月以降、中国製品2500億ドル(約27兆円)に対する追加関税を、3回にわたって発動している。10日には、昨年9月、2000億ドル(約22兆円)の中国製品に課した10%の追加関税率を、さらに税率25%へ引き上げる「制裁第3弾」を発動した。

その制裁に加え、トランプ大統領は、立て続けに過酷な中国への関税制裁を拡大し、まだ制裁対象になっていない3000億ドル(約33兆円)規模の製品にも、追加関税を課す準備を始めた。この「制裁第4弾」まで発動されれば、中国からの輸入品には全て追加関税が課されることになる。
米国の市民に身近なハイテク製品、スマホやノートパソコン、デジカメ、玩具などにも25%の関税が上乗せされる。値上がりは必至、生活を直撃する。これらのハイテク製品は、いずれも世界中から部品を調達し、中国で組み立てている。米国アップルが25%の追加関税を小売価格に転嫁した場合、主力モデルのアイホンは160ドル(約1万7600円)の値上げになると試算している。

日本や韓国、台湾などアジアに広がるサプライチェーンへの影響も避けられない。ユニクロも中国の工場から米国市場に衣類などを輸出している。主力の衣類が25%関税の対象となれば、大きな影響を受けるのは避けられない。中国での自動車やスマホ需要、ハイテク製品の輸出が縮小すれば、日本の電子部品や工作機械の受注も、「リーマン・ショック級」の打撃をこうむりかねない。

米中の貿易戦争が激しくなればなるほど、両国が排他的な「ブロック経済圏」を築き、世界経済が混乱する事態に追い込まれる。とりわけトランプ大統領が、国際的な枠組みからの「離脱」、そして「制裁」に走り、この2年ほどの間に<TPP、パリ協定、イランとの核合意、ユネスコ>の全てから離脱した。最悪のWTO離脱までささやかれる始末。自らの覇権のために世界を巻き込むことは許されない。(2019/5/12)
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2019年05月05日

【今週の風考計】5.5─見えぬ<ネット・ゼロ・エミッション>の姿

フランス本土の広さを持つ南極最大のロス棚氷が、これまでの3倍近い速度で融解している。昨年夏、世界を襲った異常気象は、北半球の上空1万メートル付近を吹くジェット気流の変化が原因─科学者の国際グループが、相次いでショッキングな見解を発表した。まさに地球温暖化による気候変動、海水と大気の温暖化が原因だと指摘している。

8日から気候変動に関する政府間パネル(IPCC)総会が、「京都議定書」誕生の地・京都で開かれる。2015年に採択されたパリ協定の実現に向け、シンポジウムをはじめ各種の討議が12日まで重ねられる。
特に昨年10月、IPCCが2050年までに「地球の気温上昇を1.5℃までに抑える」<ネット・ゼロ・エミッション>という目標を提起した。これは人間活動による温室効果ガスの排出量を、実質的にゼロにする目標であり、脱化石燃料へと舵を切る大々的な経済・社会の抜本的転換が必要となる。

ところが日本政府は、大規模排出国の一員であるにもかかわらず、石炭火力の廃止について明言せず、石炭火力発電所を国内の各地に新設する計画まで打ち出した。かつ途上国の火力発電建設には、莫大な融資を続けている。こうした措置は世界から厳しく批判されている。
あげくには「低炭素電源」の要になるとして、原発の活用まで声高に唱えている。脱炭素経済へ移行するうえで核となる炭素税と排出量取引についても、取り組みは不十分だ。現行の日本の炭素税率は、世界と比較して非常に低く、排出1トン当たり289円でしかない。フランスは5600円だ。世界レベルの炭素税を導入しなければ、温室効果ガスの抑制にはつながらない。

6月28日から大阪で開かれるG20では、日本政府としての「2050年への長期戦略」を、どのような内容で明らかにするのか、提出が義務付けられているだけに、G20議長国となる日本の真価が問われる。
9月23日にはニューヨークで国連気候変動サミット、11月にはチリで気候変動枠組条約・締約国会議COP25が開催される。もう待ったなしの日程が迫っている。(2019/5/5)
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2019年04月30日

【焦点】 目標額未達成なら手数料不要=橋詰雅博


 先のJCJ総会でも話題になったクラウドファンディング―。このごろネットや新聞などで名前をよく目にする新しい資金調達法・クラウドファンディングについて、ぼんやりと分かっている程度の人も多いだろうから、改めてどんなものなのかを調べた。これは大衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語で、インターネットを介して自分が描いたプロジェクトを発信することで、これに共感する人から資金を募る仕組みだ。ソーシャルファンディングとも呼ばれる。
 プロジェクトは、映画、映像、演劇、出版、ファッション、食品や精神障害児の就労支援施設をつくるなどの社会貢献など多岐にわたる。要するにありとあらゆるものが対象になるのだ。お金を出す立場から見てクラウドファンディングは、おおむね寄付型、購入型、投資型の3種に分かれる。寄付型は出資者に大きな見返りがなく、購入型は出来上がった製品などを見返りとして受け取れ、発展途上国の事業者や株式、不動産などをターゲットとした投資型は分配金が見返りだ。投資型は支援よりも資産運用に重点が置かれている。
 総会で指摘されたJCJ賞カンパ活動でクラウドファンディングを使いお金を集めるとしたら寄付型で行うことになる。現在、カンパは目標額800万の半分にも達していない。期限の8月集会まで、あと4カ月余り。クラウドファンディングの利用で目標額に近づけたいのはやまやまだが。
 寄付型を取り扱う会社は「Makuake」、「Readyfor」、「CAMPFIRE」が代表格だ。IT企業のサイバーエージェントが親会社であるMakuakeは、プロジェクトの相談や審査に合格後のサイトでのプロジェクトの掲載は無料。目標額を達成した場合、手数料として20%支払う。一方、未達成なら手数料の支払いはない。また支援金は出資者に返される。
 利用する、止める―悩んでしまう。
橋詰雅博
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2019年4月25日号
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2019年04月28日

【今週の風考計】4.28─AIやロボットを超える「余暇」の大切さ

10連休のゴールデンウイークが始まった。旅行、スポーツ、孫と遊ぶ、ボーッと充電もあろう。仕事を離れて自由に使える時間=余暇を楽しみたい。
だが休みをとれない人もたくさんいる。4月から施行された「働き方改革法」は、残業時間の罰則付き上限規制が導入されたとはいえ、働かせ放題につながる「残業代ゼロ制度」の導入など、長時間や過密労働の解消にはほど遠い。

そのうえ、急速に進化する「人口知能(AI)」やロボットの導入によって、「自分の仕事がAIなどで自動化され、失職するのではないか」─そんな危機感を覚えている人も増えている。あるシンクタンクのレポートでは、「今後20年以内に、労働人口全体の49%が人工知能(AI)やロボットに仕事を奪われる」という。

いかに対抗するか。まずロボットが持てないスキルを身につけることが、自分の仕事を守る鍵となる。ロボットは想定外の動きに対応できない。人間はチームワークよろしく、臨機応変に対処できる能力に優れている。異常な事態に直面しても状況を見極め、複数の仕事をこなしながら、協力して事態を解決する。
これは人間だけが持つ「社会性」にあるという。他人の感情を理解し、自分とは違う他人の視点から物事を観察し、状況に対処する能力に優れる。この社会性と柔軟な対応力を発揮すれば、ロボットにはできない仕事がこなせる。それには「しっかり余暇を楽しむこと」であると、欧米の科学者は指摘している。

余暇を楽しむという行為は、ロボットやAIにはできない。すでに多くの企業や組織は、社員の「燃え尽き症候群」を防ぎ、生産性を向上させるには、余暇が重要であるという認識を持ちつつある。私たちは余暇を楽しむことで、よりよい思考が生まれ、創造性のある仕事ができるようになる。
その「余暇」を、上からの押しつけでなく、みずからが望むときに有効に使えるよう、メーデーを前にして、「政労使」は真剣に考えてほしい。(2019/4/28)
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2019年04月21日

【今週の風考計】4.21─ブレグジットと女性ジャーナリストの死

★ついに英国の「EU離脱」問題=ブレグジットは、女性ジャーナリストの死にまで行き着いた。英国の領土である北アイルランド・第2の都市ロンドンデリーで、18日深夜に暴動が起き、取材していた女性ジャーナリスト(29歳)が被弾し死亡した。
★警察が市内の複数の過激派拠点を家宅捜索したところ、反発を招き暴動に発展。銃撃戦での悲劇である。21日のイースターを前に、アイルランド独立につながった<1916年イースター蜂起>を祝い、英国への帰属に反発する武装グループ「新IRA」が関与したテロ事件とみて捜査している。

★英国の「EU離脱」問題が、再び北アイルランド内で、英国からの独立・アイルランドへの帰属を望むカトリック教徒と英国残留を望むプロテスタント教徒の対立を誘発させかねない。さらに国境管理にも複雑な暗い影を落としている。
★アイリッシュ海を隔てて、英国の向いにあるアイルランドは、れっきとした独立国である。かつEUの加盟国である。だが、アイルランドの北の一部は、英国の領土・北アイルランドが占める。同じ島の中にアイルランドと北アイルランドの国境が500キロにわたって存在している。

★今は国境が開かれているので、自由にアイルランドに行けるが、もし英国が「EU離脱」すれば、チェックの厳しい国境に一変し、大きな影響が出るのは間違いない。こうして小さな地域に押し込められる北アイルランドの人々にとって、国境付近に監視塔や軍の検問所が乱立する「ハード・ボーダー」への逆行は、美しい風景が破壊され、民兵組織の攻撃で多くの血が流れた日々を思い出させるのだ。
★ようやく1998年のベルファスト合意で、アイルランドと北アイルランドの国境が開放され、物と人が自由に往来できるようになった。だが20年後に、またも紛争が再燃するかと慄く北アイルランドの人々は、多くがEUに残り今の平和と自由を維持したいと思っている。

★くしくもイースターの21日は、エリザベス女王93歳の誕生日。在位は世界最長の67年に及ぶ。この英国を混乱の極みに追い込んでいる「EU離脱」問題は、10月31日まで期限が延長されたものの、深刻な分断の傷が、ますます鋭く深く英国の人々や心を痛めつけている。(2019/4/21)
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【おすすめ本】伊藤真・神原元・布施祐仁『9条の挑戦 非軍事中立戦略のリアリズム』─9条が切り開く「平和の展望」、その大きな可能性と実現性を解く=菅原正伯

 憲法に自衛隊の存在を書き込む安倍改憲の策動が強まっている。また護憲派の陣営にも、憲法に自衛隊を明記したうえで、その任務を個別的自衛権の行使に限定するという「立憲的改憲論」なども登場している。
 こうした改憲論に弁護士(伊藤、神原)と平和活動家(布施)が3者3様のアプローチで「挑戦」したのが本書だ。

 伊藤氏(第1章)は安全保障の前提問題として「軍隊をもつのか持たないのか」の選択を検証する。「国民の生命と財産を守るために」「隣国の軍事力増強に対抗するため」など、あまたの「軍隊必要」論をとりあげ、噛んで含めるように反論。満州でも沖縄でも軍は国民を守らなかったし、明治以降、日本は朝鮮・中国に何度も侵攻したが逆はない、と。これまでの軍事力中心の「常識」が次々に覆されて小気味よい。

 一方、神原氏(第2章)は、9条を政策学の視点からとらえ、戦後憲法学の成果を検証する。小林直樹氏(1975年)、深瀬忠一氏ら(1987年)などの憲法学者が提起した自衛隊や安保条約の廃止・再編をふくむ安保提言は、今日の「非軍事中立」戦略にも参考になると指摘する。

 布施氏(第3章)は、日米同盟と「専守防衛」の関係(矛と盾)を、より軍事的視点から分析。米軍との一体化が進んだ結果、専守防衛はますます「米軍防衛」に変質し、敵地攻撃能力の保有や空母の導入など、「盾」からの脱皮さえ進んでいることを告発している。
 異なった視点から中国や北朝鮮への誇大な「脅威」論のリアルな分析も興味深い。憲法9条が切り開く平和の展望の大きな可能性と現実性をしめす一書である。(大月書店1600円)
「9条の挑戦」.jpg
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2019年04月14日

【今週の風考計】4.14─「F35」147機・6兆円購入と政治の荒廃

岩屋防衛相は、日本の軍事費が「今後5年の間に、GDP比で最大約1.3%に達する」旨の見解を、9日の昼、国会で明らかにした。
これまで日本は軍事大国化への歯止めとして、軍事費を国内総生産GDP比で1.0%以内に抑えるのが原則である。しかし米国トランプ大統領の増額要請に抗しきれず、今年の軍事費は5兆円を超え、過去最高を更新した。それでもGDP比では0.929%と1%以内に収まっていた。

ところがここにきて、さらなる最新鋭ステルス戦闘機「F35」の爆買いなど、軍事費の予算総額を約27兆円も積み増す動きが急だ。いよいよ自民党が掲げる軍事費のGDP比2%へと舵が切られ始めている。

9日の夜、「F35A」が青森県三沢基地から東へ135キロの太平洋上に墜落した。すでに5日が立つ。今なお水深1.5キロの海底に沈んでいる機体は、1機116億円。米国の軍事史上、「最も高価な最新鋭ステルス戦闘機」である。
オッとどっこい、米国政府の監査院はF35戦闘機シリーズには、966件の未解決の欠陥があると指摘していた。昨年9月の墜落に始まり、パイロットの生命維持装置である酸素レベル低下事態が6回、タイヤの耐久性への疑念、一時は飛行中止の措置まで取られている欠陥戦闘機だ。カナダでは「F35」65機の購入を白紙に戻している。

だが安倍政権は、この欠陥戦闘機「F35」43機の購入に加え63機の追加発注、さらにヘリ空母「いずも」と「かが」に搭載する「F35B」42機の調達まで決めた。1機あたり運用30年とみて、その整備費307億円を合わせると、なんと合計147機の購入・整備費は6兆2000億円に達する。
人の命を奪うだけの軍事費の増額に向け、躍起の政治家、次の事実にどう顔を向けるのか。「F35A」1機分116億円あれば、日本全国に90の認可型保育所が新設できる。また福島県から原発事故で自主避難した人たちへの住居支援、このほど打ち切られたが、その額は約80億円、給付型奨学金だって105億円、1機分の額より少ない。どちらが命に貢献するか、はっきりしている。(2019/4/14)
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2019年04月09日

【私のオピニオン】沖縄から見る「平成30年」=梅田正己(歴史研究者)

 「平成」から「令和」への転換を前に「平成30年」とは何だったのか、がしきりに問われている。よく聞かれる答えが「戦争のなかった30年」である。昨年12月23日「天皇誕生日」の天皇の「おことば」でも、こう述べられていた。
 「平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが……」
 たしかに日本が主体的に戦った戦争はなかった。でも本当に「戦争から無縁だった」「戦争を経験しなかった」と言えるだろうか。

 1989年(平成元年)以前と、それ以後とで、決定的に変わったことが一つある。89年以前は決して海外に出ることのなかった自衛隊が、以後は海外に出動できるようになったことである。

 転換は早くも91年から始まった。クウェートに侵攻したイラクに対し、米国を主体とする多国籍軍が攻撃、イラクの完全敗北により湾岸戦争が終わった後、ペルシャ湾の機雷除去のため海上自衛隊の掃海部隊(母艦1隻と掃海艇4隻に補給艦1隻)が出動したのである。
 次いで92年にはPKO協力法が成立、陸上自衛隊のカンボジア派遣を皮切りに、以後モザンビーク、ルワンダ、ゴラン高原、東ティモール、南スーダンと自衛隊の海外出動が常態化していった。

 2001年、9・11同時多発テロ事件が起こると、ブッシュ米大統領は“主犯”のオサマ・ビンラディンをアフガニスタンのタリバン政権がかくまっているとしてアフガンへの空爆を命じる。その空爆を小泉政権はただちに支持、特急で「テロ対策特別措置法」を制定し、海上自衛隊の補給艦をアラビア海に派遣した。
 以後、海自の補給艦は米国をはじめ英国ほかの参戦諸国の軍艦に燃料補給を続ける。海上の無料スタンドとして歓迎された。航空自衛隊もまた米軍兵士を輸送して米軍の作戦行動に協力した。

 03年、ブッシュ大統領はイラクが大量破壊兵器を隠し持っているとして、アフガンに続きイラクへの攻撃を再開する。そのイラク戦争に、小泉政権は「イラク復興支援特別措置法」をつくり、04年初頭から陸自の派遣を始める。
 派遣部隊は1回が500人、それが06年まで10次にわたって行われたから、合計5000人の陸自隊員が“戦地”を体験したことになる。
 一方、空自も04年から08年まで16次にわたって派遣された。こちらは1回あたり200人だったから、延べ3200人の空自隊員が“戦地”を経験したわけである。

 こうして自衛隊の海外出動を積み重ねた上に、15年7月、安倍政権はいわゆる安保関連法を成立させる。それにより、政府が「存立危機事態」と認定すれば、自衛隊は米軍と一体となって作戦行動をとることができる、また「重要影響事態」と認定すれば、米軍だけでなく他の外国の軍とも地理的な制約なしに提携・協力して行動できる、となった。
 さらにもう一つ、新たに「国際平和支援法」を作ったことにより、諸外国の軍隊に対する協力支援活動ができることになった。つまり、そのつど「特措法」を作らなくとも、「国際平和共同対処事態」だと認定すれば自衛隊は多国籍軍に参加できることにしたのである。
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2019年04月07日

【今週の風考計】4.7─一刻も早く消費税10%中止を決断せよ!

もう消費税増税10%は止めるしかない! 10月に実施すれば、日本経済も国民生活もズタズタだ。
このほど日銀が発表した企業の景況感を示す業況判断指数は、企業規模を問わず軒並み7〜10ポイントも下がった。8年前の東日本大震災直後の11ポイント低下に匹敵する。

勤労者の実質賃金は2カ月連続で前年比1・1%減少。消費の冷え込みは続くうえに、米中の貿易摩擦や英国のEU離脱による輸出の不振が、日本経済を揺さぶり、国民生活にしわ寄せがきている。
そこへ消費税増税10%を浴びせたら、「令和」の世に東京オリンピック開催などと、浮かれてはいられなくなる。

あるシンポジウムで、岩田規久男・前日本銀行副総裁までが「日本は年金生活者や非正規労働者といった消費税増税に弱い人が多い」と語り、デフレ脱却のため「増税は凍結すべきだ」と訴えるに至った。これまでの消費税アップが、ことごとく個人消費の冷え込みを促進し、国民が貧困化していく事実を直視すべきだという。
安倍政権のもと「アベノミクス」を担当した、元内閣官房参与の藤井聡・京大教授も「消費税増税自体が景気を悪化させ、財政の基盤を破壊する。消費税増税は影響が半永久的に続く」と懸念している。

そもそも消費税は経済を不安定化し、貧しい者ほど負担が重くなる逆進性を持つため、国内の所得格差は拡大し、しかも消費を減退させ、デフレを継続させる欠陥税制であるのは、はっきりしている。
いくら軽減税率の導入とかポイント還元だとか、弥縫策を取ろうとも、その本質は変わらない。10月の消費税10%の凍結・延期の判断は、5月20日前後がデッドラインと言われるが、安倍首相は、もう一刻も早く中止を決断すべきだ。(2019/4/7)
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