2023年02月26日

【今週の風考計】2.26─「Colabo」への異常なバッシングを許すな!

歌舞伎町の「バスカフェ」
★「Colabo」に対するバッシングや妨害が激しくなっている。「Colabo」は、東京都からの委託を受けて、性搾取や虐待の被害に遭う若年女性や少女に寄り添い、支援事業をする一般社団法人である。
★2013年に立ち上げ、これまで続けてきた地道な活動に対し、ハンドルネーム<暇空茜>(ひまそらあかね)なる人物が、ネット上で「Colabo」に関するデマや中傷攻撃を始め、その後フォローワーの一部には過激な書き込みだけでなく、直接の妨害行動に及ぶなどエスカレートしている。
★居酒屋や風俗店が並ぶ東京・新宿区歌舞伎町。その中の新宿区役所前に「Colabo」が運営するピンクの改装バスを駐車し、無料で利用できる10代向けの夜カフェ「Tsubomi Café」をオープン。周囲にテントやイスなどを置き空腹の女性たちへの食料提供や家に帰りたくない少女らを受け入れる居場所&シェルターとなっている。
★現場を取材した安田浩一さんは、「家出してスーツケースを引っ張る10代女性や薬物の影響らしくもうろうとして倒れ込んでいる若年女性を目の前で見ました。…そいう女性を救済するColaboの役割は、絶対に重要です」と述べている。

「Colabo」に対するヘイトクライム
★ところが大事な役割を果たしている「バスカフェ」近くに、複数の男性が無言で立ち、利用者や関係者を撮影、その映像をネットに投稿し中傷するなど、深刻な事態が生まれている。女性を食い物にする性産業従事者の影も見え隠れする。
★こうした行動を誘引するきっかけとなったのが、ハンドルネーム<暇空茜>なる人物のネット上の書き込みである。この人物は東京在住・40代の男性と分かっているが、彼は「Colabo」の委託料の精算内容に不正があるとして、東京都に住民監査請求を起こした。だが監査結果は、「不法・違法・不正は認められない」となった。
★なのに、いまだに「Colabo」への攻撃をやめず、またフォローワーも「Colabo」を面白おかしく揶揄し中傷する動画や投稿を大量に流している。1月22日、弁護団は「若年女性の居場所事業への深刻な憎悪犯罪(ヘイトクライム)」だとして、抗議声明を発表している。

異常な国会での「Colabo」攻撃
★にもかかわらず、あろうことか「日本維新の会」浅田均・参議院会長が、1月27日の参院本会議で東京都の「Colabo」支援に関連し、「無駄な行政支出」であり、「利益誘導」があるなどと攻撃する異常な事態が起きている。
★再度、歌舞伎町の「バスカフェ」現場の映像を見て驚いた。1月18日夜8時ごろ、NHK 党の新宿区議候補が黄色いコートに名前入りのタスキをかけ、「NHK撃退」と書かれたノボリの傍でカセットから音声を流し、「バスカフェ」に出入りする女性の数をカウントするなど、信じがたい迷惑行動を繰り広げていた。なぜなのか。
★2月22日の参院本会議である。NHK党の浜田聡・政調会長の発言を聞いて頷いた。なんとガーシー議員への懲罰に対する、同党の弁明発言の中で「Colabo」問題を持ち出したのだ。
 ガーシー議員が最近立て続けに「Colabo」の不正や利権につき、数多くの質問主意書を提出している。その現状を踏まえれば、「ガーシー議員を除名に追い込み、質問主意書を提出できなくすることで、このColabo問題 に注目が集まることを防ごうとしている可能性をここで指摘させていただきます」と、懲罰の不当性を主張したのだ。
 かつ日本維新の会や都議会・自民党が「Colabo問題」 の追究に奮闘していることに敬意を表し感謝するとまで持ち上げた。呆れて開いた口がふさがらない。
★ジェンダー平等・女性差別の禁止など、大きな流れに挑戦するかのような日本維新の会やNHK党の動きは、ますます「Colabo」に対するネット上のデマや中傷をあおり、バッシングに手を貸すのは目に見えている。その責任は重大で見逃すわけにはいかない。(2023/2/26)
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2023年02月23日

【焦点】来年1月の台湾総統選は、対中国政策のゲームチェンジャーになり得る=橋詰雅博

 中国は2027年までに軍事力で台湾に攻め込み統一を実現するのではないかと米国や日本などで喧伝されている中で、台湾の政治情勢に注目が集まっている。というのは2024年1月に総統選挙(1996年直接選挙が行われて以降4年に1回実施)が行われるからだ。この選挙で中国と距離を置き独立志向が根強い与党・民進党から親中国派の最大野党・国民党に政権が交代したら、声高に言われている今の台湾有事の勢いが止まる可能性がある。

 次の総統選では民進党は頼清徳副総裁が最有力候補だ。昨年11月の統一地方選で敗北した責任を取り主席を辞任した蔡英文総統の則近で、20年5月から副総裁を務める。副総裁就任前は、「一つの中国」を認めない対中強硬派と見られていたが、主席就任の記者会見では「台湾はすでに独立国家だと現実的に位置付けている。改めて台湾独立を宣言する必要はない」と述べ、蔡総統路線を継承する方針だ。
 一方、国民党はまだ正式な候補者は決まっていないが、朱立倫主席や新北市長の候友宣、大手電機メーカー・ホンハイ精密工業の創業者・郭台銘らの名前が挙がっている。
 対中関係が争点となる総統選では、統一地方選の結果がそのまま反映しないという見方があるが、国民党の政権奪還はあり得る。

 1月下旬にオンライン講演した元共同通信論説委員でジャーナリスト・岡田充氏(香港、台北、モスクワ各特派員を務めた)はこう言った。
 「統一地方選で民進党が惨敗したのは、蔡政権の抗中保台$ュ策が国民の離反を招いたからです。従って来年1月の総統選でも対中関係の見直しの世論が高まれば、政権交代の可能性はあります。そうなったら緊張関係を続けてきた中台関係は大きく改善する。『有事』が宙に浮きます。まさに総統選はゲームチェンジャーになる」
 となると米国の戦略に沿い大軍拡に走る岸田政権への風当たりが強まり、軍事力増強路線に疑念が生まれる。岡田氏は「進めるべきは、中国敵視をやめて、停止状態の日中首脳交流を再開して信頼醸成を図ること。外交を正常に戻すことです」と強調した。
 台湾有事を煽り中国の台頭を阻む米戦略への追従は日本の国益を大きく損なうのである。
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2023年02月19日

【今週の風考計】2.19─ウクライナ戦争を、どうやって終わらせるか

熾烈なバフムト攻防
ロシアのウクライナ侵攻から1年となる2月24日が近づく。いまや双方で20万近い兵士が死傷し、5万人の民間人が亡くなり、数百万の難民が生まれている。
 これまでロシア軍は1800両の戦車と3950台の装甲車両、810台の多連装ロケット弾発射システム、戦闘機400機に加え、30万人の兵士を送り込んできたが、ここにきてウクライナ東部のドネツク州バフムトの攻略作戦を強化している。
この作戦にはロシアの民間軍事会社「ワグネル」に雇われた戦闘員5千人が送り込まれ、戦闘の激しさは日を追うごとに増している。バフムトはロシア軍の東側からの攻撃だけでなく、南北からも包囲され苦戦を強いられている。水も電気もない凍てつく町に残る住民の多くは高齢で、退避も容易ならない。
だがロシア軍にも、ウクライナ軍の反撃で死傷者数が急増し、直近の一日当たり死傷者数は平均824人、去年6〜7月と比べ4倍以上といわれる。訓練を受けた兵士の不足や士気の低下、軍備品の補給不足が指摘されている。
 これまでもロシア正規軍と「ワグネル」間の軋轢が言われてきたが、「ワグネル」内にも戦線離脱のケースが増えている。いかに高給が支給されようとも軍事訓練もなく、いきなり戦場に投入されるのだから無理もない。

民間の傭兵組織「ワグネル」
この「ワグネル」の正体とは何か。改めておさらいをしておこう。ロシアがウクライナのクリミア半島を強制的に併合した2014年、「ワグネルグループ」が創設された。その創設者がプリゴジン氏で、<プーチンの料理人>というニックネームを持ち、ロシア政府の行事に料理を供給する飲食事業を経営していた。
その後、「ワグネルグループ」は軍事会社を立ち上げ、民間から傭兵を募集し「ワグネル」の戦闘員として世界各地の紛争地に、ロシア側の便益に資するよう送り込んでいた。今回のウクライナ戦争には「ワグネル」の傭兵5万人が投入されたが、このうち刑務所で募集された囚人が4万人に達する。
傭兵の月給は少なくとも24万ルーブル(約56万円)、ウクライナなど戦地への「出張」期間が4カ月に及ぶとボーナスまで支給する。囚人傭兵には月給5千ドル(約73万円)、死亡した場合には遺族に数万ドルが支払われるという。

武器供与が何をもたらすか
さて、ここにきてゼレンスキー大統領は、欧米に「戦車を300両よこせ、F16を送れ、長距離ミサイルも」と、武器供与の要求はエスカレートの一途を辿っている。ドイツは世界最強の主力戦車<レオパルト2>の供与も含め23.4億ユーロ(3323億円)、英国は23億ポンド(3800億円)、米国は229億ユーロ(4兆6千億円)を、ウクライナに供出している。
ウクライナ戦争の終結、和平に向けた全体的な政治的・戦略的な青写真がないなかで、武器供与だけがエスカレートすれば、もうロシアとNATO との戦争へ行き着く危険性は避けられない。それでいいのか。
 ウクライナ戦争は、ウクライナとロシアの国家間戦争である。そしてウクライナにおける分離独立を巡る内戦でもある。ロシアの侵攻1カ月後には停戦の条件を巡って両国は交渉に入ったものの、停戦の話は沙汰止みとなり、ウクライナは米英NATOの全面支援を頼りに、ロシアとの本格的な戦争に突入してしまった。今や米国とロシアの代理戦争ともなっている。

大事なOSCEでの討議
それではウクライナ戦争をどう終わらせるか。まずはウクライナに侵攻したロシアが戦闘を停止し、正式に停戦会談を開始することだ。ウクライナとロシアの停戦がなれば、両国は双方の平和と独立を守る公約や順守義務などを討議し、合意した内容を国連や世界各国に発表し、干渉を排して確実なものとしていけばよい。
そのためには「ミンスク合意」に、もう一度立ち戻ることではないか。2014年にロシアがクリミア半島を併合し、かつウクライナ東部のドネツク、ルガンスクの2州をウクライナから独立させ分断してしまった。
 この問題に対し、2015年2月、ウクライナとロシアおよび独・仏の4首脳がベラルーシの首都ミンスクで討議のうえ、和平への道筋を示したのが「ミンスク合意」である。
しかし、この8年間で「ミンスク合意」は棚あげにされ、さらに複雑さが増したウクライナ情勢を打開するには、もう一回り大きいロシアも参加する欧州安全保障協力機構(OSCE)を活用すべきではないか。
 OSCEは欧州の安全保障に関わる全ての国が同じテーブルにつく唯一の組織である。欧米にとってのNATO と同じように、ロシアにとってのレッドラインである黒海地域に対する安全保障の枠組みも含め、ロシアの立場も視野に入れて討議すべきだ。(2023/2/19)
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2023年02月16日

【おすすめ本】飯出敏夫『温泉百名山』─自ら登って入湯し選んだ100座の魅力がいっぱい=三浦佑之(古代文学研究者)

 登山歴60年、温泉紀行ライターに特化して40年という、山と温泉の専門家が、おのれの足と肌と五感を総動員して書き上げた著作が、おもしろくないわけがない。
 深田久弥『日本百名山』に敬意を表しつつ、品格・歴史・個性を備えた温泉付きの百名山を選定し、自ら登り入湯した記録を写真とともに紹介する。取りあげたすべての山にはルートや難易度、温泉には泉質や宿の情報も抜かりなく、写真も美しい。紀行文&旅行ガイド&写真集の三位一体、一冊で三つの味が楽しめる。
 著者が百の名山と温泉を組み合わせて紹介しようと思い立ったのが、難病の悪性リンパ腫を克服し古希を迎えてからだというから驚いた。そして脊柱管狭窄症や変形性膝関節症といった登山家には致命的な病も乗り越えて最後に残した北岳に登頂したと知った時には、思わずバカかと呟いた。

 しかし本人には悲壮感など欠片もなく、山を楽しみ温泉を楽しんでいる。同じ悪性リンパ腫を克服し車を住み処に山登りを続ける老齢男性との邂逅や若い温泉仲間たちとの交流を語り、時には専門家らしく湯づかいへの苦言も呈している。
 この本には、人懐っこく飄々として、がまん強い飯出君の人柄と山と温泉への愛情が溢れており、読むだけで癒される。そして思うのだが、家族の献身的な支えがなければこの本は完成しなかったに違いない。その点でも売れて当然の本だと、昔一緒に知床半島を縦走した私はしみじみと思う。
 近く写真を全てカラー化した電子版が出るというから、文字と共に拡大して楽しみたい。(集英社インターナショナル2200円)
『温泉百名山』.jpg
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2023年02月12日

【今週の風考計】2.12─日本を襲う2つの大地震、そして原発事故の恐しさ

トルコ・シリア大地震の恐怖
トルコ・シリア大地震による死者は2万3千人、建物の倒壊はトルコ国内だけでも6500棟を超え、さらに被害は拡大している。 震源の深さは本震(マグニチュード7.8)が地下18q、余震(M7.5)が地下10q、浅い所で発生したため地表の揺れは極めて激しく、建物の倒壊に拍車が掛かったとみられる。
今回の地震の震源地ガジアンテプの地底では、複数のプレートが衝突し、その境界には「東アナトリア断層」など、複雑な断層がひしめいている。そのため歪みがたまりやすく、蓄積されたエネルギーが放出されて起きる地震の多発地帯だった。
 だが、この地域では200年以上、大きな地震がなく、警戒すべき兆候もなかったため、耐震対策や救援体制が不十分だったので、被害を大きくしている。

首都直下地震と南海トラフ地震
さて日本はどうか。世界で起きるM6.0以上の地震のうち、その2割が日本で発生している。まさに地震多発国、心配がつのる。内閣府の発表によると、今後30年以内に発生する確率が70%の大規模地震には、首都(東京)直下地震と南海トラフ地震の2つがある。
まず首都(東京)直下地震は、どこで起きるか。東京のど真ん中でとは限らない。予測では東京駅を中心に直径100km円内のどこかで、M7.0ほどの地震が起きる。すなわち東は千葉県・銚子、西は静岡県・熱海、南は房総半島南端、北は群馬県・高崎までが含まれる。
こうした範囲の地下深くには複数のプレートが集まり歪みが生じやすく、国内でも地震の多い地域である。もし起きれば都内の死者は最大6200人、火災や倒壊による建物被害は約19万4400棟と予測している。くわえて国の中枢機能が集中しているだけに、日本全体が沈没するほど、甚大な影響を受ける。
南海トラフ地震はどうか。静岡県・駿河湾から熊野灘、土佐湾を経て宮崎県・日向灘沖にかけて、海溝「南海トラフ」が伸びている。その下に「フィリピン海プレート」が太平洋側から年間数センチほど潜り込むために歪みが生じ、その限界が来ると「陸のプレート」が跳ね上がって地震が発生する。
 太平洋沿岸の東海地方から九州地方にかけ、10mを超える大津波の襲来も予測され、西日本側の広い地域に甚大な被害をもたらす。

<3・11フクシマ>から12年
この2つの地震以外にも、日本全国には約2,000もの活断層があり、近い将来、大地震を起こす可能性の高い活断層も明らかにされている。いつどこで大きな地震が起きてもおかしくない。
 日本で最大のM9.0を記録した東日本大地震から12年。その余波が、いまもなお続いているのを忘れてはならない。
昨年3月16日には、牡鹿半島沖の深さ60kmを震源とするM7.4、震度6強の揺れを観測する地震が、宮城県と福島県で起きている。この地震により3人が死亡、247人が負傷し5万棟近くの住家が被害を受けた。東北新幹線の車両が脱線事故を起こすなど、甚大な被害が発生している。
加えて原発事故を伴った<3・11フクシマ>の被害は、子々孫々に及ぶ世界にも例を見ない規模となった。いまだに原発廃棄物デブリや汚染土の処理、被害者救済のロードマップも遅々として進まない。
 南海トラフ地震が起きたら、もろに被害がおよぶ浜岡原発。太平洋に面する静岡県・御前崎の突端にある。すでに稼働40年を超え老朽化し、稼働を停止しているとはいえ、耐震性や防波壁も不十分、住民の不安は尽きない。

原発稼働を無期限化する妄動
ところが岸田政権は、<3・11フクシマ>の教訓を反故にし、突如として原発再稼働・稼働期間の延長・新規建設をぶち上げ、国会審議にもかけず突っ走り、10日には閣議決定までしてしまう。
また司法も事故を起こした電力会社の社会的責任は問わず、政府の意向に追随する。原子力規制委員会に至っては、原発稼働は「原則40年・最長60年」の規制を骨抜きにし、60年を超えても老朽原発が稼働できる道を整えてやるのだから呆れる。こんな乱暴な原発推進が、いかなる結果をもたらすか、国を亡ぼすのは目に見えている。(2023/2/12)
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2023年02月09日

【出版界の動き】電子出版の伸長が鈍化、本屋から複合文化施設へ転換

●22年12月の出版物販売金額972億円(前年比5.7%減)、書籍522億円(同3.5%減)、雑誌449億円(同8.2%減)。月刊誌388億円(同9.1%減)、週刊誌61億円(同1.8%減)。返品率は書籍29.0%、雑誌37.8%、月刊誌36.4%、週刊誌45.3%。

●22年1年間の紙・電子合わせて出版物販売金額は1兆6305億円(前年比2.6%減)。紙製では書籍6497億円(同4.5%減)、雑誌4795億円(同9.1%減)。月刊誌4017億円(同9.7%減)、週刊誌778億円(同5.7%減)。
電子では販売金額5013億円(同7.5%増)。コミック4479億円(同8.9%増)、書籍446億円(同0.7%減)、雑誌88億円(同11.1%減)。

●これまで2ケタ増を続けてきた電子出版市場は、2014年1144億円と比較すれば、この8年で約4.4倍の市場に成長した。だが電子版の書籍・雑誌はマイナス成長の急ブレーキがかかり、なかでも電子コミックの大幅な売り上げ増が見込めなくなり、さらにコロナ禍による巣ごもり需要も終わり、物価高による買い控えが出版市場を冷え込ませている。

●KADOKAWA、取締役の過半数を社外取締役にして、取締役会に対する監督機能を強化する。東京五輪を巡る汚職事件に関与した前会長・角川歴彦被告への「過度の忖度とそれを醸成した企業風土があった」として、再発防止に向けた対策。

●21年の書店の売り場面積300坪以上の新規出店を見ると、24店のうちツタヤ関連が12店と半分を占め、続いて駿河屋3店、未来屋、三洋堂が各2店となっている。

●CCCが軽井沢町に敷地面積3500坪・建物9棟などの複合施設を作り、そこに平安堂軽井沢店の跡地に出した軽井沢書店の支店を設けるほか、インターナショナルスクール、カフェなどを備え、一大文化拠点をつくる。

●「LAWSONマチの本屋さん」の出店が神奈川・神戸・青森にも。神奈川のローソン向ヶ丘遊園南店125坪のうち25坪を書店とし6000点の出版物を扱う。神戸のジェームス山店では88坪の売場のうち15坪を書店とし3000点の出版物を扱う。青森の田子町店は93坪の売場の23坪を書店とし6000点を扱う。これで総計7店舗。これまでの出版物の売上高は導入前に比べて20倍、女性や家族・シニアの来店が増えているという。

●1922年に創刊の「週刊朝日」が6月9日号で休刊、101年の歴史を閉じる。2022年の平均発行部数7万部。朝日の雑誌休刊をたどってみると、1992年に「朝日ジャーナル」、「月刊Asahi」「科学朝日」「アサヒカメラ」「週刊アサヒグラフ」「論座」と続く。各誌とも一定の読者を持ち役割を果たしてきただけに惜しまれる。いまや残っているのは「AERA」「月刊Journalism」2誌のみ。
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2023年02月05日

【今週の風考計】2.5─子育てに「N分N乗方式」は効果あるのかという疑問

自民党の反省って本当か?
岸田首相は「異次元の少子化対策」というが、国会答弁を聞いても、具体策は「未定」、中身が全く分からない。これまで13年間、自民党や政府は、あの統一協会と軌を一にして「子育ては親・家庭が担うもの」とし、所得制限のない「子ども手当」の創設すら反対してきた。
 民主党政権の提案を採決する際には、丸川珠代議員は「愚か者めが」と大声で罵倒し、その文字ロゴ入りTシャツまで作って販売したというから呆れる。他の自民党議員も「子育てを家庭から奪い取る国家化・社会化」の社会主義思想、ポルポトと同じとまで誹謗した。
ところが突如、今国会で自民党の茂木幹事長が「児童手当の所得制限を撤廃する」と言い出した。丸川議員も首相も「これまでの対応を反省する」というが、どこまで反省しているのか、<日光猿軍団>の反省で終わらなければと願う。

今や常識、子育ては社会全体で
子供を産み育てる経済的保障も含め、社会環境の充実こそ求められているのに、いまだに「少子化の原因は晩婚化だ」と女性に責任を押しつける元首相を始め、明治以来の家父長制や男尊女卑の考え方が、根強く自民党のセンセイ方にあるからだ。
 ジェンダー平等の社会への改革・転換は停滞したまま、男女の賃金格差は生涯賃金で1億円、女性に安い賃金で働かせ、かつ子どもを産み育てる責任まで負わせる仕組みを変えなきゃダメ。
とりわけ子育てに大きな負担のかかる2歳までの保育費と18歳までの医療費は無料にすべきだ。義務教育での給食費は完全無償化も、戦争に使う5年間で43兆円の軍事費を充てれば100年間は維持できる。
 また教育費にかかわる学費や入学金の軽減、奨学金制度の見直しも、絶対に必要だ。入学してもいないのに取られる入学金徴収はヤラズブッタクリ、すぐやめるべきだ。

「N分N乗方式」への疑問
さて、これらの子育て・少子化対策にすぐ役立つ提案の議論は脇に置いて、自民・維新・国民各党そろい踏みで所得税の徴収を「N分N乗方式」にする提案が飛び出した。
 所得税の課税対象を「個人」ではなく「世帯」とし、1世帯分の所得を合算したうえで、子どもなど扶養家族も含めた人数で総所得を割り、その数字を元に所得税の徴収額を決め納税する仕組みだ。世帯当たりの収入が同額ならば、子供が多ければ多いほど納税額は低く抑えられる。
この「N分N乗方式」は、今から77年前の1946年フランスで採用され、徐々に出生率の増加に寄与したといわれる。ただしフランスの子育て支援に投ずる公的支出はGDP比3.6%、日本はGDP比1.7%、フランスの半分にも及ばず、平均2.24%のOECD諸国では下位。その状況を忘れてはならない。
こうした貧弱な日本の子育て環境下で、「N分N乗方式」を導入したらどうなるか。まず高額所得者は、所得額を世帯人数で割るために低い徴収税率に移行し、納税額が大幅に減りメリットが大きい。社会全体にとっても所得税の再分配機能が低下する。
 肝心なのは翌年に反映する減税分が子育てに回るだろうか。実際は賃上げ不十分・物価高が続く以上、日々の家計に使われてしまうのが落ちではないか。
子育てに直結する費目への現金支援、すなわち子ども手当の増額、各種の保育・教育費目の無償化や減額こそ、いま急がれる対策だ。
 子育てへの公的支援に占める現金・現物支給の額はGDP比で、日本は0.65%、英国は2.12%、フランスは1.42%、あまりにも低水準すぎる。「異次元の小子化対策」は待ったなし。6月まで「未定」で済ますわけにはいかない。(2023/2/5)
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2023年02月02日

【焦点】東京五輪選手村訴訟:原告側の不動産鑑定意見書を証拠採用─第3回控訴審3月14日=橋詰雅博

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原告側らが発行する最新会報誌

  都民が小池百合子都知事らを相手取った東京五輪選手村訴訟の控訴審第3回口頭弁論は3月14日(火)午前11時20分から101号法廷で開かれる。

 昨年12月15日に開かれた第2回口頭弁論では選手村土地を9割引とした日本不動産研究所の価格評価の間違いを明らかにした田原拓治不動産鑑定士の鑑定意見書が証拠として採用された。原告側には大きな収穫だ。原告団からこの報告を聞いた田原氏は「よくぞ裁判官に証拠として採用させたと、その努力に敬服いたします。少し明るい光が見えてきたように感じられますと」と感想を述べた。
 被控訴人(都側)は田原意見書への反論書を裁判所に2月末まで提出するが、被告がよりどころとした選手村要因を考慮した土地価格は開発法でしか算出できない点について、田原意見書はこう指摘している。ちなみに開発法はこの土地にマンションなどを建てて販売したら、いくら儲かるかを基準としたデベロッパー目線による評価方式だ。

 <選手村要因は建物の工事費の問題であり、土地価格への影響を考慮して判断すべきという前提自体が誤り。従って、取引事例比較法による正常価格を出せるし、これと方法が違う開発法のみでの価格決定は複数の手法で価格評価すべしという鑑定基準に違反する。また近隣の公示価格とも比べないのは公示価格法違反である>
 裁判長は、被告の反論書をみてから田原氏の法廷での証人尋問が必要かどうか判断するという。被告・東京都の反論書の内容が見ものだ。

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