2023年10月30日

【焦点】出版界の常勤型フリーランスはどんな働き方をしているのか=橋詰雅博

  常勤型で働くフリーランスが急増している。労働力不足を補うため会社が積極的に活用しているこの常勤フリーは、人材会社などから派遣された、あるいは個人で業務委託契約を結んだ会社に自分のデスクがあり、週に何回か出向き、その日に数時間仕事をする。契約期間については定めがないなどさまざま。
 メリットは比較的自由に働けてスキルが高いと、高報酬を得られる。一方で労働基準法が適用される社員と違い、労災保険や雇用保険に入れず、有給休暇もほとんどなく、会社都合でクビを切られる可能性があるなどデメリットもある。

 出版界でも常勤フリーは少なくない。フリーライター、フリー編集者らが加盟する「ユニオン出版ネットワーク」(略称出版ネッツ)が出版労連の協力得て昨年12月から今年2月まで実施した常勤フリーアンケート調査報告書は、回答者42人と少ないものの実態が垣間見える。主な項目と回答は以下の通り。

仕事=校正・校閲が25人と最も多く、その次が編集・編集補助。営業にも3人いた。
就業時間=1カ月に「161時間以上」働く人が12人とトップ。
報酬はどこから=出版社から直接が26人と最も多く、プロダクションの13人がその次。
契約期間=「1年」が25人と6割近く占め、「期間の定めがない」も12人いた。
報酬形態=「月額固定給・年俸」が20人と50%近かった。
1日に8時間以上、週に40時間以上働くことは=「ある」は過半数を占め、残業は当たり前になっている。
残業した場合、割増額は支払われるか=支払われるのは5人。ほとんどは無報酬だ。
有給休暇はあるか=「ある」は4人。「ない」は30人と最も多かった。
交通費は支払われるか=「支払われる」は18人で「支払われない」が22人。ほぼ二つに分かれる。
今の仕事は年収の何割くらい占めるのか=「9割以上」が30人でトップ。ちなみに7割以上が約88%を占める。その会社への経済的依存度が大きいことがわかった。
 出版ネッツは「常勤フリーの働き方は非常に労働者性が高いことを再確認できた」と指摘した。
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2023年10月26日

【おすすめ本】四國 光『反戦平和の詩画人 四國五郎』―哀惜と尊崇の念を込めて描く人間像=鈴木耕(編集者)

 まれびと(希人)という言葉がある。折口信夫(歌人・釈超空)の民俗学を知る上での重要な用語で、異界から訪れる霊的な人という意味だという。むろんその定義にはそぐわないけれど、この評伝に描かれた四國五郎こそは、類い希な人、という意味での真の「まれびと」だと思う。
 五郎は徴兵されソ満国境で敗戦を迎え、シベリアへと抑留される。五郎は手製の小さな手帳に克明に抑留生活をメモし、検閲の目を逃れて日本へ持ち帰る。帰国して最愛の弟・直登が原爆死したことを知る。痛恨の涙。
 絵と詩の才能に恵まれながら、専門教育を受けられなかった五郎の「反戦平和」の活動は、ここから凄まじいと言っていいほどの熱量で開始される。持ち帰ったメモをもとに、多くの絵を描く。『原爆詩集』の峠三吉との出会い、広島での反戦平和運動への傾注。それはまさに獅子奮迅の活躍といっていい。

 五郎の息子の光さんが哀惜と尊崇の念を込めて五郎の姿を描き出す。ことに「辻詩」という活動は、まるで時代を超えた手作りのSNS(ソーシャル・ネットワーク)のごとく、広島の街に巨大な火を灯す。手描きのポスターの絵に詩を書き入れ、官憲の目を逃れて街角に貼り出しては撤収する。途中で紛失することの多い、徒労ともいうべき活動だが、五郎は数百枚の辻詩を書いた。
 現存するものは数枚しかないが、著者は父への敬愛を込めて活動を描き出す。読み手の胸と目頭を熱くさせる文章。家庭で見せる静かで寡黙な、絵を描く父の後ろ姿。そして、哀切極まる晩年の…。
 繰り返すが、本書はそんな「まれびと」の、類い希なる評伝文学の傑作である。(藤原書店2700円) 
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2023年10月19日

【余生私語録】第7回─猛暑を避けて憧れの<宮沢賢治>を訪ねる=守屋龍一

花巻駅前の「銀河ポッポ」
 先月9月21日は宮沢賢治の没後90年。彼は37歳の若さでこの世を去った。私にとっては、小学生時代から思春期を経て老年になっても、絶えず刺激ある思いを駆り立ててくれる作家である。
 はからずも先月末、岩手県・花巻に行く所用が生じ、猛暑の東京を離れて、憧れの<宮沢賢治>を訪れる絶好の機会に恵まれた。
 東北本線・花巻駅に降りると、銀色に光って林立するポールが目に飛び込む。先端のカザグルマが風に吹かれてクルクル回っている。「風の鳴る林」と名づけられている。シンセサイザーのBGMも流れている。
 少し駅前を歩いてみると、あちこちに賢治の童話に登場するキャラクターのミニチュアが置かれている。南側にある建物の玄関上部には、毎正時にオープンするカラクリ時計があった。「銀河ポッポ」という。
 タイミングよく扉が開いて、カラクリ舞台「銀河鉄道の夜」が、「星めぐりの歌」のメロディーにあわせて始まった。ジョバンニとカンパネラが登場し仲間たちと踊りだす。可愛いい機関車も周りを走る。3分ほどのドラマを仰ぎ見ながら堪能した。

「よだかの星」への想い
 所用を済ませた翌日からは、案内を得て宮沢賢治ゆかりの場所を巡った。賢治が愛した胡四王山(こしおうざん)の山頂近くに、「宮沢賢治記念館」がある。入口前には童話「よだかの星」を象徴するレリーフの刻まれた大きな黒御影石が立つ。
 この童話、ストーリーは<醜い鳥・よだかは、他の鳥たちから嫌われ、いじめられていた。居場所を失い夜の空へ飛び立つ。上り続けて息絶えるが、いつしか青白く燃えあがる「よだかの星」となり、今でも夜空で輝いている>。私の大好きな一篇だ。
 小学5年生頃だったか、先生に引率されて学校演劇「よだかの星」を観に行った。舞台には、横に細長い灰色の布シートが、雲をかたどるように段を重ねて伸びている。それをかき分けるように、「よだか」が必死に天空へともがいている。あのシーンが忘れられない。
 想いを胸に館内に入ると宮沢賢治の世界が、同心円状に展開されている。外側の円の壁面には、彼が携わったフィールドを5つに分けて、分野ごとに自筆原稿などの拡大写真が四角い枠内に展示されている。

<あめゆじゆとてちてけんじや>
 私の好きな詩「永訣の朝」の原稿も、その一部が写真展示されている。2歳年下の最愛の妹トシが、死の間際に<あめゆじゆとてちてけんじや>と賢治に頼む。その声を行間に挟みこむ58行にも及ぶ長い詩だ。トシが24歳で亡くなる1922年11月27日に作られた。
 「木の枝に積もった雨雪(みぞれ)を取ってきて口に含ませてくれないか」と。そして「もうけふおまへはわかれてしまふ (Ora Orade Shitori egumo) ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ」と続く。帰宅して読み返し胸が熱くなる。
 私が中学2年の時、先生が「永訣の朝」を朗読してくれた。あの<あめゆじゆとてちてけんじや>の響きが、今でもよみがえる。また2018年に芥川賞を受賞した若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出文庫)のストーリーも頭をよぎる。

賢治の楽曲づくり
 館内の奥へ回っていくと、賢治の愛用したチェロがガラスケース内に展示されている。賢治が熱心にチェロを練習する日々の体験から、童話「セロ弾きのゴーシュ」が生まれた。しかも展示のチェロで、世界的に有名なチェリスト・ヨーヨーマが、「セロ弾きのゴーシュ」に出てくる「トロイメライ」を弾いていたと分かる(横田庄一郎『チェロと宮沢賢治』岩波現代文庫)。
 賢治は自ら楽曲づくりも手掛け、作詞は25曲以上、うち8つに作曲までしているとは驚きだ。 2016年に亡くなった富田勲の「イーハトーヴ交響曲」(DENON COGO62)は、まさに宮沢賢治へのオマージュだが、その中で賢治作曲の「牧歌」「星めぐりの歌」や「剣舞の歌」などが使われている。一聴してみてほしい。

詩碑「雨ニモマケズ」
 記念館から出ると、賢治が設計した花壇や日時計のある「ポランの広場」を通って、「イーハトーブ館」「宮沢賢治童話村」を巡る。そこから南西方向に車を走らせて、「羅須地人協会」跡地に建つ「雨ニモマケズ」の後半部が刻まれた詩碑を見に行く。高村光太郎の書。
 賢治は30歳を前にして花巻農学校を3月に退職、4月には宮沢家の別宅があった下根子(現在の桜町4丁目)に移り、「羅須地人協会」を開設。独居自炊で農耕生活をはじめながら、農民に化学・土壌などの講義をしている。
 「雨ニモマケズ」の詩は、賢治が38歳で亡くなる2年前、自分の黒革手帳に病臥のまま、鉛筆で11月3日に記している。その写真が記念館に展示されていた。
 詩碑の前からは「下ノ畑ニ居リマス 賢治」とある賢治自耕の地が一望できる。北上川に向かって歩いていくと、その自耕の畑には、晩夏の陽を浴びる白菜が広がっていた。

白金豚と藤三旅館
 最後は「食」と「湯」である。賢治の童話「ブランドン農学校の豚」は、農学校で飼育されている食用豚の苦悩を描いて、「命の大切さ」を教えてくれる。この童話から命名された花巻のブランド豚「白金豚(はっきんとん)」を教えられ、さっそくトンカツを味わった。一言で旨い。
 「湯」は鉛温泉。花巻駅から真西の豊沢湖近くにある。これもまた賢治の童話「なめとこ山の熊」に出てくる名湯。そこの藤三(ふじさん)旅館に泊まる。玄関の構えから映画「千と千尋の神隠し」に登場する建物を思い浮かべる。
 そこの「白猿の湯」がいい。天井の高さは10メートルもあろうか。風呂の水深は1メートル50センチ、立って入らなければ溺れてしまう。源泉が足もとから噴き出している。併設の露天風呂も豊沢川の流れがすぐ目の前。疲れを癒やした。宮沢賢治に感謝!感謝!(2023/10/19)
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花巻駅前の「なはんプラザ」にあるカラクリ時計「銀河ポッポ」
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2023年10月16日

【出版トピックス】21歳の読書率─1カ月に読んだ本「0冊」が62.3%

10年で一気に落ち込む読書量
 文科省が2022年に行った「21世紀出生児縦断調査」の結果内容を公開した。これは少子化対策を企画立案するため、2001年度から始めた調査だ。すなわち2001年に生まれた特定の子供に対し、毎年多岐にわたる質問をして、その後の変化を調べている。今回は21歳になる約2万2千人分の回答を分析した。
 その質問の一つとして、「この1カ月に読んだ紙の書籍(本)の数」を尋ねたところ、なんと「0冊」が62.3%、「1冊」は19.7%、「2〜3冊」が12.3%、「4冊以上」は5.8%だった。電子書籍(本)の数を尋ねても「0冊」が78.1%を占めた。
 同じ特定の子供が10歳の時には「1カ月に0冊」は10.3%(保護者からの回答を集計)だった実態と比べて、10年の間に読書量が大きく落ち込んでいるのが顕著になっている。本を読まないだけでなく新聞を読みテレビをみる若者もかなり減っているという。

「読書離れ」を深く考える
 背景には何があるのだろう。交流サイト(SNS)や動画投稿サイトの普及が一因と指摘されている。その一方で若者たちの社会参画の機会が増え、読書以外に目が向くようになったというポジティブな要因も考慮すべきだろう。
 21歳という時点に限っての結果だけで、若者の「読書離れ」を論ずる危惧も指摘されている。10歳から21歳、さらには30歳へと成長していく過程で、人生にも変化が起き、図書館の充実・文化施設の拡充などの社会環境の変化と合わせ、一人ひとりに訪れる転機や機会を得て「読書」に戻ることもある。
 こうした視野を踏まえての議論が必要になっているのではと思う。この6月に刊行された飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)は、この20年間でV字回復した小中学生の読書力を考察し、21歳以降の若者たちへ示唆に富む提言をしている。読書を通じZ世代のカルチャーにも迫る。参考になる一冊だ。
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2023年10月12日

【出版界の動き】売り上げ急減、雑誌再建、フリーランス保護へ

出版の売り上げが今夏は急減し、前年8月と比較して11.3%も落ち込んだ。8月の出版物販売金額711億円(前年同月比11.3%減)、書籍378億円(同10.6%減)、雑誌350億円(同0.5%増)。月刊誌277億円(同12.0%減)、週刊誌55億円(同12.0%減)。返品率は書籍40.2%、雑誌44.4%、月刊誌43.7%、週刊誌47.6%。いずれも40%を超える高返品率が続く。出版物販売金額の減少は23年4月の12.8%に続く二桁マイナス。猛暑が影響したか。

1999年にオープンした「SHIBUYA TSUTAYA」が、改装のために10月1日から一時休業し、来年春に再開業する。DVDやCDのレンタル業態の旗艦店として、地上2Fから屋上まで11フロアを有し、雑誌・書籍も販売してきた。その一方、TSUTAYAの大型店が閉店する流れは加速し、8月も6店が閉店している。

朝日新聞出版が10月5日、国内の一般向け科学雑誌「Newton」(発行元・ニュートンプレス)を買収。40年以上の歴史を持つ「Newton」は、創刊当時は数十万部を発行し、1980年代の科学雑誌ブームの火付け役となった。だが現在の販売数は約8万部と低迷。負債総額は約18億円。
 科学雑誌ブームも2000年代に入ると逆風にさらされ、朝日新聞発行の「科学朝日」(1941年創刊)が2000年に休刊、驚異的な部数を誇っていた学研の小学生向け「科学」(1946年創刊)も2010年に休刊。その後 、2022年夏に「学研の科学」として復刊した。
 「Newton」の発行元・ニュートンプレスも経営危機に陥ったが、2020年9月に民事再生手続きが終結。今後は事業基盤の安定化に向けた再生計画の推進を、朝日新聞グループが全面的にサポートしながら、2024年に民事再生債権の完済を予定しているという。「Newton」の紙面充実を図り、新たな読者獲得に全力を挙げる。

東京地裁は10月10日、出版大手KADOKAWAの元専務に、懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。東京五輪のスポンサー契約をめぐる汚職事件で、大会理事に約7000万円の賄賂を渡した罪が問われた。
 裁判長は「大きなビジネスチャンスを得たいなどという利己的な動機から相当高額な賄賂を渡し、大会に汚点を残した。専務として違法行為の可能性を十分認識しながら元理事の要求に応じ、臭いものに蓋をしたまま犯行に及んだ」と指摘した。

「フリーランス新法」が2023年4月28日に成立し、来年11月に施行される。それまでに指針・政省令を策定する。現在、策定に向けた検討会が開かれ、フリーランス各団体へのヒヤリングが行われている。
 出版ネッツは厚生労働省や公正取引委員会等からヒヤリングを受け、すでに実施したフリーランス新法アンケート調査結果(https://union-nets.org/archives/9110)をもとに、出版・WEB関連で働くフリーランスの実態と声を伝えている。
 「取引条件の明示事項」に入れてほしいものとして、<契約についての教育・研修の実施と、契約書に関する相談窓口の設置>などを挙げ、「就業環境整備」に関しては、<妊娠や子育てを理由に発注取り消しや契約打ち切りを行わないこと、勤務時間の変更や納期についての配慮>などを要望している。

イーロンマスクがツイッター社を買収し、ブランド名をTwitterからXに変更して以降、力を入れていたニュース部門を縮小し大量のレイオフを行なった。その結果、広告主が離れ広告収入が50%減少する中で新しいCEOを雇い、立て直しをはかっている。コンテンツ収益化を打ち出し、メディアに積極的なプロモーションをかけている。だが「メディア側は用心したほうが良い。ニュース部門を縮小させている以上、Xの狙いがどこにあるか、吟味したほうが得策だ」という識者の声を尊重したい。
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2023年10月09日

【出版の現場】インボイス制度による価格・報酬の引き下げを許すな!=萩山 拓

もうシワ寄せが
 10月1日に施行されたインボイス制度で、もうフリーランスら小規模事業者が影響を受けている。フリーランスの一部には、9月いっぱいで契約終了、10月から報酬を2%引き下げると、発注者から言われる事例が発生している。
 とりわけ雑誌などの出版分野で働くフリーランスには、「このイラスト1点4千円で、この取材記事1200字2千円で」といった、狭い人間関係による口約束での仕事が多い。税抜きか税込みかの区別もなく、中には振り込まれるまで金額が分からず、あいまいな受発注による仕事が横行している。その上にインボイス制度で、消費税分を収めるとなれば、踏んだり蹴ったりになるのは目に見えている。

発注事業者への勧告
 こうしたフリーランスの実態を受けてか、政府はインボイス制度の運営を巡り、施行直前の9月29日、関係閣僚会議を開いた。インボイス登録申請件数は、9月15日時点で約403万件。売り上げが年間1000万円以下の免税事業者が、インボイス登録を申請したのは約111万者。免税事業者160万者の約7割にあたる。
 経産省は「中小企業・小規模事業者が、消費税負担によって生じる減収分を、発注事業者に取引価格に上乗せできるよう、環境整備と対策を粘り強く継続していきたい」という。
 さらに公正取引委員会は、これまでに寄せられた相談約3,000 件に対応し、価格転嫁の円滑化にそぐわない優越的地位の濫用につながる事案が35件に上り注意したという。
 公取では引き続き、違反行為の未然防止を図り、独占禁止法や下請法に違反する行為には厳正に対処していくとしている。

必要な価格転嫁
 政府として、弱い立場におかれるフリーランスや小規模事業者が、インボイス制度によって、発注業者から強要される「報酬・取引価格」の引き下げを防ぎ、価格転嫁をバックアップする姿勢を明示したのは前進だが、有効に実行されるか、それが肝心だ。
 フリーランス協会では、報酬適正化に向けた価格転嫁の重要性と、「買いたたき」など法令違反の取り締まりが必要だと言い続けている。人出不足の中、優秀なフリーランスと取引するには、適正な価格・報酬を支払わなければダメ。その企業責任を、事業者は自覚すべきである。
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2023年10月05日

【シンポジウム】統一教会への解散命令請求を問う

統一教会への解散請求.jpeg


 今月12日、文科省は東京地裁に統一教会の解散命令を請求するという。これまで統一教会が行ってきた、反社会的な活動は多岐にわたる。
 統一教会と自民党との関係は一体どこまで清算されたのか。山上徹也被告による安倍元首相銃撃事件・安倍元首相と統一教会のかかわりは、どこまで解明されたか。多くの市民に被害を及ぼした霊感商法・高額献金問題はどうなっているのか。人権や信教の自由を侵された宗教2世たちのその後は?

 こうした多くの問題が未解明のままだが、今回のシンポジウムでは、文化庁が統一教会に質問権を繰り返し行使して請求を準備した「宗教法人の解散命令」は、どんな意味を持ち、今後にどのような影響を及ぼすのかについて議論する。

パネリスト鈴木エイトさん(2023年度JCJ大賞受賞 ジャーナリスト)
       金平茂紀さん(兼司会 ジャーナリスト)  
日時10月7日(土)14:00〜16:00(開場13:30)
会場渋谷勤労福祉会館・第一洋室(定員90名・先着順・予約不要)
参加費800円
同時配信:Peatix https://onl.sc/W5NpZjS を通して申し込む。申込費500円(後日録画配信あり)

  主催:NHKとメディアの今を考える会 
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2023年10月02日

【焦点】インボイス反対36万筆の署名提出 経済悪化を招く消費増税 稀代の悪法中止・延期を=橋詰雅博

署名提出.jpg

 10月1日からスタートしたインボイス(税率や税額が記載された適格請求書)制度に反対する市民団体「インボイス制度を考えるフリーランスの会(通称STOP!インボス)」は、9月4日東京都内で集会を開き、2021年12月からネットで集めた反対署名36万筆(ネット署名数では東京五輪開催中止46万筆に次ぐ)を財務省、国税庁、公正取引委員会=写真=や各党国会議員に提出した。
 運動の呼びかけ人の小泉なつみ氏(ライター兼編集者)は「ネット署名はこの1カ月余で15万筆も増えて驚異的なスピードでした。法制化以降7年間もマスコミは黙殺≠ナしたから、これほどまでに反対の声が集まったことを、マスコミは重く受け止めてもらいたい」と話し、「インボイス制度はこの国の文化と産業を壊し、分断と増税、混乱をまねく稀代の悪法です」と制度を批判した。

 今回のインボイス制度を簡単に言えば、これまで免税だった売り上げ1000万円以下の事業者も消費税の納税対象になる。政府が広報に消極的で制度の理解に乏しい人からは、「納税」は当然、それに反対する免税事業者は「脱税」「ピンハネ」を継続したいからという声が後を絶たなかった。

 集会に講演者として参加した京都大学大学院の藤井聡教授は「テレビのコメンテーターは言うに及ばず、学者までもピンハネという間違ったコメントをしていた」と明言したうえでこう説明した。
 「財務省自ら消費税に『預かり金』はないという見解を国会で示している。つまりネコババ≠ヘないということです。それでは誰が増税分を支払うかだが、財務省は免税事業者、課税事業者、消費者(価格に上乗せされるケース)の中で、誰でもいいから支払えという考えです。すなわちインボイス制度は純然たる消費税の増税です。日本経済が極めて厳しい状況下でのインボイス制度の導入は、経済成長に悪い影響を及ぼすのは明白だ。今は実施すべきではない」と断固反対した。

 賛同人120名の一人である元朝日新聞記者の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏は財務省が導入にこだわる理由を「まず財務省の力を見せつけること。フリーランスには国家権力を批判するジャーナリストも多い。消費税を強化し、税務調査で圧力をかけるカードを握ることができる。もう一つは税理士利権の拡大で業界を潤わせることによって、財務省から税理士業界への天下りを増やすこと」だとコメントを寄せている。

 こうした背景を踏まえて市民団体は、経済的「成長」も、事業を継続していける「安心感」も、個人情報が守られる「安全性」(国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトのセキュリティが脆弱)も、免税事業者への「尊厳」も、すべて欠けているインボイス制度の実施は中止を主張し、最低でも延期を訴える提言書も発表した。
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