◆2023年10月の出版物の販売金額848億円(前年比0.4%増)。書籍498億円(同2.8%増)、雑誌350億円(同2.9%減)。月刊誌295億円(同0.2%減)、週刊誌54億円(同15.6%減)。返品率は書籍33.8%、雑誌44.9%、月刊誌43.7%、週刊誌50.4%。週刊誌の月次の50%超えは初めて。
なお書籍の売り上げは9月に続いて2ヵ月連続のプラス。これは初版30万部の『続 窓ぎわのトットちゃん』(講談社)の刊行や既刊の平均価格アップに依るところが大きい。
◆日販による「出版物販売額の実態」最新版(2023年版)によると、2022年度の出版物総売り上げは1兆4020億円(前年比3.1%減)。
販売ルート別にみると書店経由8157億円(全体比58.2%)、インターネット経由2872億円(同20.5%)。インターネット経由の出版物販売額は著しい成長率を見せ、出版物の総売り上げに占めるシェアを拡大しつつある。
とりわけ電子出版物の市場は、2022年度 6670億円(前年比7.5%増)という伸長ぶりからして、ますますインターネット経由での購入が増えるのは確実だ。
これまで出版物は本屋さんでの購入が唯一のルートだったが、今やコンビニやインターネット経由での購入が強まり、電子出版の購入に至ってはインターネット経由が急増(前年度比でプラス7.5%)している。
◆今年の出版業界は、電子出版の市場拡大に負うところが大きい1年となった。2023年度の出版物推定販売金額は約1兆1千億円(前年比3.7%減)と低迷が見込まれる中で、電子出版市場だけは約5千億円(同 7.1%増)を超える見通しで、その勢いは止まらない。
紙の出版物が大幅な販売減に陥いり、それを補うのが電子出版市場の成長だと言える。この成長の背景には、米Amazon社が販売する「Kindle電子書籍リーダー」など、読書端末の技術開拓と高度化がある上に、各出版社が多様なコンテンツを提供するようになり、販売面でもオンライン販売やプラットフォームの拡大を進め、ユーザーの利便性とアクセス可能性を向上させているからだ。この流れを無視しての出版事業は、もう成り立たないのではないか。
◆イーロン・マスクCEOのX(旧ツイッター) に見切りをつける大手広告主の動きが加速している。その引きがねの一つとなったのが、彼の反ユダヤ主義的な発言を含むコメントにある。IBM、Apple、CNN、ディズニーなどの大手広告主がXへの広告出稿を停止している。
一方、マスク氏は、広告ボイコットを一種の陰謀と見なし、広告主を糾弾しているため、さらなる打撃をこうむる可能性がある。これまでXの経営陣は、他のプラットフォームと比較して、広告主との関係を第一優先にせず、広告主との溝を深めているという背景も指摘されている。
◆欧州連合(EU)が世界で初となる人口知能(AI)を包括的に規制する法案を発表した。EU域内人口4億5千万人に適用する「AI法案」は、今後、「世界標準」になる可能性がある。EUは細部を詰めたうえで2026年には施行を目指すという。
この法案は、基本的人権の尊重を前提にして、AIの利用を@容認できないA高いB限定的C最小限の4段階に分け、段階ごとに義務を課す。まず最も危険な分類@「許容できないリスク」では、行政が経歴などを使って個人を点数化してAIに信用評価をさせたりすることや政府が個人の遠隔生体認証に使うことが禁止される。
2番目に危険とされる分類A「高リスク」には、プロファイリングによる犯罪予測や入試・採用試験での評価などが入り、企業はどのようにAIを使ったか追跡や監査ができるよう記録を残す義務が課される。さらに生成AIの「チャットGTP」や「汎用AI」にも、厳しいルールを課す。
対応を怠った企業には、最も重い違反の場合「3500万ユーロ(約54億円)」か「年間世界売上高の7%」を上限に制裁金を科す。