2024年10月03日

【マスコミ評・新聞】慰霊碑破壊を声高に叫ぶ右派団体=白垣詔男(JCJ代表委員)

 1923年の関東大震災時に虐殺された朝鮮人問題について、非常に強く印象に残る記事を読んだ。
 9月4日、毎日新聞(西部版)夕刊2面「特集ワイド」の吉井理記記者の報告だ。
「関東大震災の朝鮮人虐殺『否定派』が今年も集会/一線越えた『慰霊碑破壊』予告/『なかったこと』に101年前と変わらず」
 という見出しが示すように、朝鮮人虐殺犠牲者の慰霊碑(1973年建立)がある東京・両国の都立横網町公園で行われた追悼式典の同時刻に、2017年から、追悼式典そばで「そよ風」という団体が中心となって始めた「真実の慰霊祭」なる集会を取材、検証した内容。

 吉井記者は「忘れたい失敗はだれにでもある。でもホントに忘れたらどうなるか。近年、関東大震災があった9月1日に、差別に基づくデマで日本人が多くの朝鮮人を虐殺した大失敗について、『なかったこと』にしたい人たちの奇妙な運動が続いている」と前文に書いているように、この「奇妙な運動」を確かな視点で掘り下げる。
 ただ「そよ風」の集会は、部外者には目に触れないように白い幕で「目隠し」をしており、取材も拒否したという。

 記事の中で私が一番衝撃を受けたのは、「そよ風」集会の中心人物の一人で、作家・三島由紀夫が作った「盾の会」元会員が、「6000人虐殺というウソの慰霊碑、これを我々は必ず撤去します。破壊します!」と「破壊予告」をした大声を聞いたというくだり。
 また、吉井記者は「思えば『そよ風』が集会を始めた2017年は、歴代都知事が続けてきた朝鮮人追悼式典への追悼文の送付を、小池百合子都知事が取りやめた年でもある」と書く。
 さらに、ジャーナリスト安田浩一さんの発言「最大の問題は、差別と偏見を真っ先に止めるべき行政や政治家が、こうした風潮を助長しているとしか受け取れないことです。…小さな差別は積み重なって大きな差別を伴い、『殺しても構わない』という社会を招く」を紹介する。

 「関東大震災時の朝鮮人虐殺」については朝日新聞が8月30日付社説「朝鮮人虐殺 史実の黙殺は許されぬ」、毎日が9月6日付社説「朝鮮人虐殺の歴史 向き合わぬ政治の不誠実」の見出しで、行政の歴史に向き合わない修正主義を声高に批判している。
posted by ロバの耳 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア時評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする