日本軍による慰安婦問題で「ねつ造記者」と烙印をおした文藝春秋と東京基督教大学の西岡力教授への名誉棄損を訴えた元朝日新聞記者の植村隆さん(57)の4回目の口頭弁論が17日に東京地裁で行われた後、16時から参院議員会館で報告集会が開かれた。
第2部のフリージャーナリスト・青木理さんとの対談で、植村さんは2014年8月5日付朝日新聞が掲載した慰安婦問題検証記事について、実は自ら朝日新聞に検証してほしいと要望し、それが実ったことを明らかにした。
「記事をねつ造したとしたら、私は犯罪者になります。従ってそうではないと関係資料を持参し朝日新聞を訪ねて検証記事の掲載をお願いした。朝日側も吉田証言や慰安婦、植村記事を交通整理しようと考えていた時期だったようで、私の要望が検証に踏み出すひとつのきっかけになったと思う。検証記事では、植村の記事は事実のねじ曲げはないと結論づけたわけで、期待していた通りで無罪となり安心した。ところが逆に植村バッシングが激しさを増し、非常勤講師を務めていた北海道札幌市の私立北星学園大に植村を辞めさせろという抗議がたくさんきた。検証作業はよかったが、結果は予想外でした」
植村さんは当初、孤立無援で闘っていたが、TBS報道番組「ニュース23」が植村バッシングを取り上げたことに感動したという。
「番組アンカーの岸井成格さんの『このバッシングの背景には歴史を否定する勢力がいる』と指摘したコメントは、素晴らしかった。勇気をもらいました」
そして今の言論状況に植村さんの危惧は募る一方だ。
「自由にものが言えない社会に傾いている。言論の不自由時代に入っている。どん底から這い上がった私は、元気になったが、メディアの委縮が進んでいる風潮にすごく心配しています」
植村さんは、バッシングと闘った手記「真実 私は『捏造記者』ではない」を岩波書店から26日に刊行する。なお、北星学園大の非常勤講師を退職した植村さんは、3月から韓国ソウル近郊の私立カトリック大の客員教授として東アジアの平和と文化についてペラペラの韓国語で講義する。