ロシアの電撃的侵略から一年が経った。
ジャパンプレスの佐藤和孝記者は、3月にリビウに入り、キーウなど戦場を40日間取材。その生々しいルポと写真を収載したのが本書である。
ロシアがこれでもかと撃つミサイルは、ウクライナ市民の生命と住居、インフラを破壊し、厭戦に追い込むのが狙いだ。
でも市民は、深さ100メートル余あるキーウの地下鉄へ逃れ、抵抗を続ける。子供たちへのオンライン授業も続く。
ブチャでは410人が惨殺された。拷問、強姦 のあげくだ。ジャーナリストへの狙撃は18人に及ぶ。著者は「ロシアが意図的に狙ったのは明白だ」と言う。難民は1400人以上となった。
リビウで市民に「前線に行くのは怖くない?」と聞くと、「それは怖いけど、でも自分の死への恐怖より、この国がなくなる方がもっと怖い」と答える。
ウクライナは1991年に独立した。再びロシアに支配されるのは死ぬより怖い≠フだ。ゼレンスキーが抗戦を訴えると「41%の支持率が91%に激増」する。侵略との 戦いは国民を一つにする。侵略は許せない、抵抗は正義なのだ。
「ウクライナは米欧の代理戦争」とする論は、ロシアの主張である。ベトナム戦争でも「中ソの代理」説が出た。「つまらん抵抗をやめたら」と。
プーチンはネオナチと戦うと叫ぶ。だが本音はクリミアと東部四州の簒奪にある。
この侵略に終わりは見えない。でもこれが通るなら「世界の独裁者らがお墨付きをもらう」こととなる。空論でなく「生の情報から学んで頂きたい」と、著者は命がけの 取材で訴える。(有隣堂1000円)
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