今回の事件が発覚するまでの半年間の経緯をみれば、日米政府は捜査・司法当局も含めて、県民に対して事件を隠ぺいしたと言わざるを得ない。
沖縄県民の安全や尊厳をないがしろにする姿勢が暴露されたのである。人々の知る権利を支えるジャーナリズムにとっても、その役割を果たしえなかった痛恨の事態である。当局の隠ぺいに抗議する。
昨年12月24日、沖縄本島中部の公園で16歳未満の少女が米兵に誘拐され、性的暴行を受けた。少女の帰宅後に、110番通報により沖縄県警が米兵を在宅のまま捜査し、今年3月11日、わいせつ誘拐・不同意性交容疑で書類送検された。
同27日に同罪で起訴され、日本側が勾留した。その後、保釈金が支払われて保釈が認められ、米兵は米軍の管理下に置かれている。米軍関係者以外ではこのような対応はあり得ず、米軍特権が際立 っている。
起訴の時点で外務省はエマニュエル駐日米大使に抗議した。しかし、沖縄県には連絡し なかった。県警も県と情報共有をしなかった。
今回のような事案があれば、学校も地域社会も、警戒を呼びかけ対策を講じなければならない。結果として、行政も、メディアも、果たすべき役割を果たし得なかった。
この間も米兵の犯罪は、コンビニ強盗、住居侵入など日常茶飯事のように起きていた。 県民の安全を守り信頼を得る立場にあるはずの沖縄県警は、メディアへの広報も県への報 告もしなかった。県公安委員会と共に、県民への背信の意味を重く顧みるべきである。
外務省が米大使に抗議した後、日米首脳会談、エマニュエル駐日大使の石垣・与那国訪問があり、沖縄県議会議員選挙があり、首相や米軍関係者も参列する沖縄戦慰霊の日の追悼式があった。
これらに影響を与えないようにするという意図を当局は否定するが、信じることができない。被害者のプライバシー保護のためとするが、他事例と比較すれば説得 力はない。
米軍の特権を支えるために県民を犠牲にする日本政府や当局に断固抗議する。
2024年6月27日
日本ジャーナリスト会議・沖縄