このほどMICフリーランス連絡会に参加する「出版ネッツ」が、その取り組みの意義について、改めてコメントしている。その内容をお知らせしたい。
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労働委員会は「労働者が団結することを擁護し、および労働関係の公正な調整を図ることを任務とする」行政委員会です。
しかし、私たちフリーランスのユニオンが申し立てた不当労働行為事件では、「労組法上の労働者性」という入り口の問題で書面の交換が延々と続く事態に直面します。その間、使用者は「労働委員会で審理中である」ことを理由に団体交渉の申し入れに応じず、組合員は深刻な状況に置かれています。
そこで、都労委ユーザーの立場から、7項目にわたる要望を記した要望書を提出することにしたのです。
その申し入れと説明の場に、労組側は計11名が参加、都労委側は審査調整課長と審査調整課審査担当の方が出席し、約1時間懇談をしました。提出した7項目について、明確な回答があったわけではありませんが、フリーランスのユニオンが労働委員会を活用する中で感じている困難や課題・要望を伝えることができました。要望内容ならびに私たちの声は、公労使委員にも共有してもらえるとのことでした。
「出版ネッツ」は、7項目のうち特に「3 『労組法上の労働者性』が争点になっている事件でも和解解決を促進するため、期日間の交渉、協議(団交かどうかはともかく)を被申立人に促すこと」を強く要望しています。
「出版ネッツ」は現在、2件の不当労働行為救済申し立てをしており、いずれも労組法第7条1号に定める不利益取り扱いと、同条2号に定める団交拒否についての救済を求めています。
1件は世田谷区事件における団交拒否です。ここでの団交議題は、区史編さん委員の委嘱、区史のために執筆した原稿の著作権の取り扱いとハラスメントです。もう1件はRプロダクション・I出版社事件です。ここでの団交議題は、就業場所と時間外割増手当の支払いです。
どちらも就業環境と就業条件、生活にかかわる切実な問題です。本来、労働委員会での手続きと並行して自主的な交渉を行うことに何ら問題はなく、労働委員会へ救済申し立てをしていることが団体交渉拒否の理由にはなりません。
いま世界的には、「適切な社会的保護の実現」「社会的排除に対する取り組み」などと並んで、「労使対話の促進」が目指されています(EUや韓国など)。雇用形態にかかわらず、働く人の団結権・団体交渉権の擁護・確立を社会の“当たり前”にしていかなければなりません。
今後とも私たちは、労働委員会にその役割を果たすよう求めていくとともに、企業活動にかかわる人々、発注先企業の労働者・労働組合に対しても、フリーランスの団結権・団体交渉権擁護の重要性について訴えていきたいと考えています。(「出版ネッツ」杉村和美)