◆県警・不祥事の3カ月
鹿児島県警の元巡査長による捜査資料漏えい事件の発生から、すでに3カ月以上が経過する。県警は4月8日、県警に批判的な報道を続けるニュースサイト運営者を漏えい事件の関係先として家宅捜索し、パソコンのデータを押収し、その内容をもって巡査長を地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕した。
この捜索で得た関連資料や証拠を基に、さらに前県警生活安全部長も漏洩容疑で逮捕した。このような漏洩事件が起きる背景には、県警トップの事件もみ消し・隠蔽の動きに対し、不満が県警内に充満していたと考えられる。
現に逮捕された当事者からは、「資料を公表して県警内の体質を変えたかった」と、動機の説明がなされている。
◆踏みにじる「情報源の秘匿」
しかも県警が行ってきた一連の捜査は、極めて異常なやり方だといわざるを得ない。パソコンのデータを始め、メールや携帯でのやりとりなど、捜査・検索・閲覧の範囲そして押収は通常の限度を超えている。
こうした捜査に対して、新聞社の「社説」および新聞労連や出版者協議会を始め、メディアにかかわる多くの組織や有識者が、鹿児島県警による異様な「情報源暴き」に抗議の声を挙げてきた。
そこには「捜査権の乱用」のみならず、「情報源の秘匿・保護」や「表現・報道の自由」が脅かされる重大な危険がはらんでいるからだ。民主主義社会では許されない権力の暴走を感じ取ったからに他ならない。
◆公益のための内部通報
この暴走をくい止めるため、東京都の出版社「リーダーズノート出版」の木村浩一郎社長は、鹿児島県警トップの野川明輝本部長らを、特別公務員職権乱用などの罪に当たるとして告発した。ところが鹿児島地検は7月5日付で、野川本部長らを嫌疑なしで不起訴処分とした。
しかし同社長は、地検の不起訴処分は不当だとして、7月10日、鹿児島検察審査会へ審査を申し立てたと明らかにした。「不法・不当に当該報道機関の強制捜査を行った疑惑があり、強制捜査は取材源の秘匿に関わり、日本国憲法にも違反する」うえに、「地検の捜査は短期間で不十分だ」という世論もあるとしている。
とりわけ逮捕された前生活安全部長は「県警本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしたことが許せなかった」「書類を送れば積極的に取材してくれると考えた」と述べているだけに、隠された組織内部の腐敗を告発しようとする公益通報の意図が明確である。こうした事情をどう汲みあげるのか、これからの審査が注目される。
2024年07月15日
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