旧「統一教会」の全体像と本質を、長くウォッチしてきた筆者が新書にまとめた。
教義に始まり、国際勝共連合などの政治活動、霊感商法などの経済活動、北朝鮮人脈とカネ、さらには「非公然軍事部隊」の影まで、「宗産複合体」の全容を本書は手際よく描いた。
教祖・文鮮明の最終目標は「政治権力と相互補完関係を保ち(略)影響力を強め(略)『世界の王』となること」だったと筆者は言う。文は12年に死去、妻の韓鶴子がその座を継いでいる。
興味深いのは、日本の政界への接近の分析だ。岸信介元首相との反共の連携はよく知られるが、本格的な政治への侵食は、中曽根政権の衆参同日選(1986年7月)の応援に運動員、カネをつぎ込んでからだという。
この結果、統一教会系の「勝共推進議員」が約130人に達した。ほとんどは自民党議員だ。同年8月には全国から女性信者を集め、「秘書養成講座」を開く。修了者は、国会議員の公設、私設秘書になって行った。
統一教会は日本だけでなく世界各国にも進出したが、警戒を持って見られた。
米下院のフレイザー小委員会は1977〜78年、教団の実態を調査・分析している。報告書の内容は本書に詳しい。文はその後、米国で脱税に問われて服役。フランスの統一教会の事務所トップも脱税で起訴されたという。ひるがえって日本の対応はなぜか実に甘い。
今後、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件について山上徹也被告の裁判が始まる。宗教法人法の解散命令も予想されるが、彼らは任意団体として活動を続けるだろう。監視を続けて行かねばならない。(集英社新書960円)
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